特許第6342702号(P6342702)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6342702
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】硬貨類収納装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 9/00 20060101AFI20180604BHJP
【FI】
   G07D9/00 410B
【請求項の数】10
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-97602(P2014-97602)
(22)【出願日】2014年5月9日
(65)【公開番号】特開2015-215723(P2015-215723A)
(43)【公開日】2015年12月3日
【審査請求日】2017年4月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124154
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 直樹
(72)【発明者】
【氏名】中澤 好孝
【審査官】 大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−086165(JP,A)
【文献】 実開昭54−131896(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0195792(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自装置に対して投入された硬貨類を所定の方向に誘導する傾斜部を有する硬貨類誘導手段と、
前記硬貨類誘導手段により誘導された前記硬貨類を収納可能な硬貨類収納筐体の内部に設けられ、前記硬貨類を載置可能な載置面を有する硬貨類載置手段と、
一端側が前記硬貨類載置手段に当接し、他端側が前記硬貨類収納筐体に当接することにより、前記硬貨類載置手段を弾性的に支持し、
前記硬貨類収納筐体の底面から、前記硬貨類載置手段に載置された前記硬貨類の頂点までの高さを所定の上限高さに維持可能な弾性定数を有する
弾性手段と、
前記硬貨類が載置された前記硬貨類載置手段が、前記弾性手段を圧縮、あるいは、引き延ばすことにより、前記硬貨類収納筐体における所定の位置まで移動したことを検知可能な収納状況検知手段と、を備えることを特徴とする、
硬貨類収納装置。
【請求項2】
前記弾性手段は、前記硬貨類収納筐体の底面から、硬貨類が載置されていない状態における前記硬貨類載置手段の載置面までの高さを、前記所定の上限高さに維持可能な弾性定数を有することを特徴とする、
請求項1に記載の硬貨類収納装置。
【請求項3】
前記弾性手段は、圧縮バネであり、
前記弾性手段の一端側は、前記硬貨類収納筐体の底面側と対向する前記硬貨類載置手段の底面に固定され、
前記弾性手段の他端側は、前記硬貨類収納筐体における内壁の底面に当接し、
前記硬貨類載置手段に前記硬貨類が載置されることにより、当該硬貨類の質量に応じて圧縮されることを特徴とする、
請求項1または請求項2に記載の硬貨類収納装置。
【請求項4】
前記硬貨類収納筐体は、少なくともその一部に開放部を有し、
前記上限高さは、前記上限高さに位置する前記硬貨類、または、前記上限高さに位置する硬貨類載置手段の載置面に対して前記硬貨類誘導手段により誘導された前記硬貨類が衝突した際に、当該衝突により反跳した前記硬貨類が、前記開放部から前記硬貨類収納筐体の外部に放出されない高さであり、
前記弾性手段は、前記上限高さに基づいて設定された前記弾性定数を有することを特徴とする、
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の硬貨類収納装置。
【請求項5】
前記硬貨類載置手段は、前記硬貨類収納筐体の底面と対向する側に検知指標を備え、
前記硬貨類が載置された前記硬貨類載置手段が前記弾性手段を圧縮することにより、前記硬貨類載置手段が前記硬貨類収納筐体の底面側に移動し、
前記収納状態検知手段は、
前記硬貨類収納筐体の底面側に移動した前記硬貨類載置手段における前記検知指標を検出することにより、前記硬貨類載置手段が前記硬貨類収納筐体の内部における所定の位置まで移動したことを検知し、
当該検知結果に基づいて、前記硬貨類収納筐体が満杯状態であるか否かを判定することを特徴とする、
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の硬貨類収納装置。
【請求項6】
前記硬貨類誘導手段における前記傾斜部は、前記硬貨類を自由落下によって誘導する傾斜面を有し、
前記傾斜面の終端部は、当該終端部から放出された前記硬貨類が、前記硬貨類載置手段における中央部、あるいは、略中央部付近において、前記硬貨類載置手段、または、前記硬貨類載置手段に載置された他の前記硬貨類に接触する位置に設けられることを特徴とする、
請求項1乃請求項5のいずれかに記載の硬貨類収納装置。
【請求項7】
前記硬貨類誘導手段における前記傾斜部は、前記硬貨類を自由落下によって誘導する傾斜面を有し、
前記傾斜面の終端部は、当該終端部から放出された前記硬貨類が、前記弾性手段の圧縮方向の中心軸よりも、前記硬貨類収納筐体の内壁面に近い位置において、前記硬貨類載置手段、または、前記硬貨類載置手段に載置された他の前記硬貨類に接触する位置に設けられることを特徴とする、
請求項1乃請求項5のいずれかに記載の硬貨類収納装置。
【請求項8】
前記弾性手段は、当該弾性手段の伸縮方向に前記硬貨類載置手段を摺動可能に保持し、
前記硬貨類載置手段は、前記傾斜部における終端部から放出された前記硬貨類と、当該硬貨類載置手段、あるいは、当該硬貨類載置手段に載置された他の前記硬貨類との衝突に起因した前記弾性手段の伸縮によって当該弾性手段の伸縮方向に摺動することにより、当該硬貨類載置手段に積み上げられた前記硬貨類を、当該硬貨類載置手段において略均一に載置されるように崩すことを特徴とする、請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の硬貨類収納装置。
【請求項9】
前記硬貨類載置手段の載置面に、少なくとも1以上の凹部、及び、凸部のいずれかが設けられていることを特徴とする、
請求項1乃至請求項8のいずれかに硬貨類収納装置。
【請求項10】
前記収納状態検知手段は、光電センサであり、
前記検知指標は、光電センサを遮蔽可能な遮光板であることを特徴とする
請求項5に記載の硬貨類収納装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬貨(コイン)やメダル等を含む硬貨類を収納する技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種自動販売機、現金自動預け払い機(ATM:automated teller machine)、両替機、及び、遊戯機械等、各種硬貨(コイン)やメダル等(以下、本願においてはまとめて「硬貨類」と称する)受け付ける硬貨類処理装置が広く普及している。
【0003】
このような硬貨類処理装置においては、例えば、硬貨投入口より投入された硬貨が、硬貨の金種や、メダルの種類等を識別可能な識別装置(以下、「硬貨類識別装置」と称する)により識別及び分類され、分類された種類毎に収納容器等に保管される。
【0004】
このような硬貨類処理装置として、例えば、図16に例示する硬貨処理装置が知られている。図16に例示する硬貨処理装置においては、硬貨類識別装置1605において識別された硬貨類1601が、投入口1602から硬貨類収納容器1603に投入される。図16に例示する硬貨類処理装置は、センサ1604を用いて、集積された硬貨類の頂点を検出することにより、収納容器の集積状態(満杯状態か否か)を検出する。
【0005】
ここで、図16に例示する硬貨処理装置の他に、硬貨類を収納する技術として、例えば、下記特許文献が開示されている。
【0006】
特許文献1は、現金出納機における貨幣収納処理に関する技術を開示する。特許文献1に開示された現金出納機は、貨幣を収納する収納庫と、収納された貨幣の満杯状態を検出するフル検出部とを有する。特許文献1に開示された現金出納機は、収納庫の下端部にフル検出装置を設け、収納庫において貨幣が載置される昇降ステージが下端部に達したことを検知することにより、貨幣の満杯状態を検出する。
【0007】
特許文献2は、硬貨を安定した配置状態にして収納する硬貨処理装置に関する技術を開示する。特許文献2に開示された硬貨処理装置は、硬貨を収納する収納筒と、当該収納筒の底面に設けられた振動付与手段を有する。係る硬貨処理装置は、振動付与手段が備えるピン体を収納筒内部に出入りさせることで、収納筒内部の硬貨に振動を与える。これにより、特許文献2に開示された技術は、収納筒内部に立位にて収納された硬貨を、安定した配置状態(倒立状態)にする。
【0008】
特許文献3は、メダル、硬貨等を均一に収納する硬貨収納庫に関する技術を開示する。特許文献3に開示された硬貨収納庫は、硬貨受け入れ口の下部に、斜面と、当該斜面から連続して受け入れ口から硬貨を遠ざけるための通路とを有する。特許文献3に開示された収納庫によれば、硬貨受け入れ口から投入された硬貨は、上記斜面により運動量を付与されて上記通路を転がり、受け入れ口から離れた部分から順次収納される。
【0009】
ところで、収納対象が硬貨類ではないものの、収納容器の満杯状態を検出する技術に関連して、特許文献4が開示されている。
【0010】
特許文献4は、廃トナーを収納するトナー回収箱を備えた印刷装置に関する技術を開示する。特許文献4に開示された印刷装置は、トナー回収箱を支持するスプリングと、トナー回収箱の満杯状態を検出するトナーフル検出用センサとを備える。特許文献4に開示された技術によれば、トナー回収箱に収納されたトナーの重量によりスプリングが圧縮され、トナー回収箱が特定の高さまで下がったことを、トナーフル検出用センサが検出する。そして、検出用センサは、当該検出結果を用いて、トナー回収箱が満杯か否かを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2011−107753号公報
【特許文献2】特開平8−329310号公報
【特許文献3】実開平6−004869号公報
【特許文献4】特開平2−251983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ここで、図16に例示する硬貨処理装置においては、投入された硬貨類が、一部に集中して集積され、収納容器内に均一に積み上がらない場合がある。例えば、図17に例示するように、一部に集中して集積された硬貨類1601がセンサ1604によって検知されてしまうと、硬貨類収納容器1603には空き領域があるにもかかわらず、満杯であると判定されてしまう。即ち、係る硬貨処理装置においては、硬貨類収納容器1603の空間を十分に活用できないという問題が生じる場合がある。
【0013】
また、図18に例示するように、硬貨等1601が、センサ1604にて検出されない領域に偏って集積された場合、硬貨類1601が収納容器の外部にあふれ出てしまう可能性がある。即ち、係る硬貨処理装においては、硬貨類1601が偏って集積されることにより、硬貨類1601のあふれ(オーバーフロー)が発生するという問題が生じる場合がある。
【0014】
更に、係る貨幣処理装置においては、硬貨類1601が硬貨類収納容器1603に投入された際に、硬貨類収納容器1603の底面や、収納された他の硬貨類1601と衝突して跳ね返ることにより、硬貨類収納容器1603の外部に飛び出してしまうという問題が生じる場合がある。このような硬貨類の飛び出しは、硬貨類のあふれ(オーバーフロー)に類する問題とも考えられる。
【0015】
また、係る貨幣処理装置においては、積み上がった硬貨類の上端を検知することにより、収納容器が満杯か否かを判定している。このため、硬貨の積み上がり具合によって満杯と判断される硬貨類の枚数(個数)にバラつきがあるという問題が生じる場合がある。このような問題を回避するため、硬貨類が均一に積み上がった場合の体積よりも若干大きめの体積を有する収納箱を採用した場合、装置が大型化するという問題が生じる場合がある。
【0016】
ここで、特許文献1に開示された収納庫は、収納される貨幣が紙幣束や包装硬貨であることを前提としており、収納される硬貨類に偏りが生じない。このため、特許文献1に開示された技術は、収納される貨幣に偏りが発生しうる状況における上記問題の解決には不十分である。
【0017】
また、特許文献2は、振動機構や搖動機構により、収納される硬貨類の配置を均一化する技術を開示するが、複雑な機構が必要となり、部品点数の増加や、装置の大型化等の問題がある。
【0018】
また、特許文献3に開示された技術は、収納される硬貨が増大するに従い、通路が埋められていくことから、硬貨が部分的に積み上がる可能性がある。
【0019】
また、特許文献4に開示された技術によれば、収納されたトナーの重量に基づいて、満杯状態を検出可能であるが、収納されるトナーに偏りが生じる可能性がある。重量のみに基づいて満杯状態を検出する場合、偏って積載された収納物の一部が収納箱の上端に達しても、収納物の重量によっては満杯状態とは検出されない場合がある。このため、上記したように、収納物(トナー)のあふれ(オーバーフロー)が発生する可能性がある。
【0020】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものである。即ち、本発明は、硬貨類が収納容器からあふれないように、略均一に収納可能な硬貨類収納装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記の目的を達成すべく、本発明の一態様に係る硬貨類収納装置は、以下の構成を備える。即ち、本発明の一態様に係る硬貨類収納装置は、自装置に対して投入された硬貨類を所定の方向に誘導する傾斜部を有する硬貨類誘導手段と、上記硬貨類誘導手段により誘導された上記硬貨類を収納可能な硬貨類収納筐体の内部に設けられ、上記硬貨類を載置可能な載置面を有する硬貨類載置手段と、一端側が上記硬貨類載置手段に当接し、他端側が上記硬貨類収納筐体に当接することにより、上記硬貨類載置手段を弾性的に支持し、上記硬貨類収納筐体の底面から、上記硬貨類載置手段に載置された上記硬貨類の頂点までの高さを所定の上限高さに維持可能な弾性定数を有する弾性手段と、上記硬貨類が載置された上記硬貨類載置手段が、上記弾性手段を圧縮、あるいは、引き延ばすことにより、上記硬貨類収納筐体における所定の位置まで移動したことを検知可能な収納状況検知手段と、を備える。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、硬貨類が収納容器からあふれないように収納容器内に略均一に収納可能である。このため、収納した硬貨類の質量に基づいて収納容器における収納状態(満杯か否か)を検知可能であり、収納容器の空間を有効に利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本願発明の第1の実施形態に係る硬貨類収納装置の全体構成を例示する断面図である。
図2図2は、本願発明の第1の実施形態に係る硬貨類収納装置を説明する各断面図の切断箇所を説明する図である。
図3図3は、本願発明の第1の実施形態に係る硬貨類収納装置のA−A’断面図である。
図4図4は、本願発明の第1の実施形態に係る硬貨類収納装置のB−B’断面図である。
図5図5は、本願発明の第1の実施形態に係る硬貨類収納装置のC−C’断面図である。
図6図6は、本願発明の第1の実施形態に係る硬貨類収納装置を構成するバネ部材の一例を例示する図である。
図7図7は、本願発明の第1の実施形態に係る硬貨類収納装置を構成するバネ部材の他の例を例示する図である。
図8図8は、本願発明の第1の実施形態に係る硬貨類収納装置の全体構成において、センサ及び検知指標の配置を例示する図である。
図9図9は、本願発明の第1の実施形態に係る硬貨類収納装置に硬貨類を載置した場合の、センサ及び検知指標の配置を例示する図である。
図10図10は、本願発明の第1の実施形態に係る硬貨類収納装置に硬貨類を載置した場合の、収容筐体の底面から載置された硬貨類の頂点までの距離を例示する図である。
図11図11は、本願発明の第1の実施形態の第1の変形例に係る硬貨類収納装置の全体構成を例示する図である。
図12図12は、本願発明の第1の実施形態の第2の変形例に係る硬貨類収納装置の全体構成を例示する図である。
図13図13は、本願発明の第1の実施形態の第3の変形例に係る硬貨類収納装置の全体構成を例示する図である。
図14図14は、本願発明の第1の実施形態の第4の変形例に係る硬貨類収納装置の全体構成を例示する図である。
図15図15は、本願発明の第2の実施形態に係る硬貨類収納装置の全体構成を例示する図である。
図16図16は、本願発明に関連する技術である、硬貨類収納装置の全体構成を例示する図である。
図17図17は、本願発明に関連する技術である、硬貨類収納装置に硬貨類が収納された状況を例示する図である。
図18図18は、本願発明に関連する技術である、硬貨類収納装置から硬貨類があふれる状況を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明を実施する形態について図面を参照して詳細に説明する。以下の実施の形態に記載されている構成は、単なる例示である。本願発明の技術範囲は、それらには限定されない。
【0025】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る硬貨類収納装置の構成を表す図である。図2は、本実施形態における硬貨類収納装置の横断面図を説明する図である。図3は、図2に例示するA−A’断面における硬貨類収納装置の断面図であり、断面を図2に例示する矢印a方向から見た図である。図4は、図2に例示するB−B’断面における硬貨類収納装置の断面図であり、断面を図2に例示する矢印b方向から見た図である。図5は、図2に例示するC−C’断面における硬貨類収納装置の断面図であり、断面を図2に例示する矢印c方向から見た図である。なお、図2乃至図5においては、説明を容易にするため、図1に例示する硬貨類収納装置が備える一部の構成要素を省略している。
【0026】
図1に例示するように、本実施形態における硬貨類収納装置100は、収納筐体101と、硬貨類107が載置される硬貨集積部(以下、「集積プレート」と称する)102とを有する。なお、集積プレート102は、収納筐体101の内部に設置される。また、上記硬貨類収納装置100は、上記収納筐体内部において、上記集積プレート102を上記収納筐体に対して弾性によって支持(弾性支持)するバネ部材(弾性部材)103を有する。また、上記硬貨類収納装置100は、上記収納筐体101の硬貨類収納状況(満杯か否か)を検出可能なセンサ104を有する。また、上記硬貨類収納装置100は、後述する硬貨類入力部106aから入力(投入)された硬貨類を所定の方向に誘導する(移動させる)傾斜部105を有する。
【0027】
なお、本実施形態においては、上記硬貨類収納装置100とは別に硬貨類処理部106を設けてもよい。そして、係る硬貨類処理部106が有する硬貨類入力部106aから、本実施形態に係る硬貨収納装置100に、硬貨類107を入力(投入)してもよい。なお、以下の説明においては、硬貨類107を、単に「硬貨類」と称する場合がある。以下、上記各構成要素について説明する。
【0028】
収納筐体101は、後述する集積プレート102と共に、本実施形態において硬貨類を収納可能な収納部を構成する。即ち、収納筐体101の内壁面と、後述する集積プレート102の上面(硬貨類が載置される面)とにより図1に例示する収納空間101aを構成する。本実施形態における硬貨類収納装置101においては、係る収納空間101aに硬貨類が収納される。
【0029】
収納筐体101は、その一部に開放部101bを有してもよい。図1に例示する構成においては、収納筐体101の上面(図1における上方向、後述する硬貨処理部106と対向する面)に、開放部101bが設けられる。なお、上記に限定されず、開放部101bをどこに設けるかは、適宜定めてよい。硬貨類107は、当該開放部101bを介して、収納筐体101に対して投入されてもよい。また、収納筐体101に収納された硬貨類は、係る開放部101bから取り出されてもよい。
【0030】
収納筐体101は、収納したい硬貨の量(枚数)に応じて、適切な寸法(サイズ)に形成される。また、収納筐体101は、硬貨類収納装置100が配置される機器の形状や構成等に応じて、適切な形状に形成される。例えば、収納筐体101は、略立方体形状としてもよく、略円柱形状としてもよい。
【0031】
また、収納筐体101は、本実施形態における硬貨等収納装置100を任意の硬貨処理装置内に脱着可能に配置するための、係止部101cを有してもよい。係る係止部101cの形状及び配置については、本実施形態における硬貨等収納装置100の配置方法や配置位置などに応じて、適宜定めてよい。
【0032】
次に、本実施形態における集積プレート102について説明する。集積プレート102は、上記の通り、収納空間101aを構成する底面として、集積された硬貨類を保持する。集積プレート102は、図3に例示するように、上面方向から見た場合(図2に示す矢印aの方向から見た場合)上記収納筐体101の内壁面により構成される形状と、略同一の形状を有する。
【0033】
集積プレート102は、上記収納筐体101の内壁面と接してもよい。また、集積プレート102は、上記収納筐体101の内壁面との間に僅かな間隙(クリアランス)を有してもよい。当該僅かな間隙は、例えば、収納する硬貨類が係る間隙を通じて収納筐体底部101dに落下しない程度の寸法としてもよい。
【0034】
集積プレート102は、後述するバネ部材103により、静止状態において、収納筐体底部101dと平行または略平行な状態に弾性支持される。集積プレート102は、後述するバネ部材103の伸縮に伴い、収納筐体101の内部をバネ部材103の伸縮方向に摺動可能である。集積プレート102の上面に硬貨類が集積された場合、後述するバネ部材103が、集積プレート102及び集積された硬貨類の質量によって圧縮される。これにより、集積プレート102は収納筐体101の底部101dに近接する方向(降下する方向)に摺動する。
【0035】
集積プレート102に硬貨類が載置されていない場合の初期位置は、投入された硬貨類が集積プレート102の上面に衝突した際に、その衝突に伴い生じる反力(跳ね返り)によって開放部101bから収納筐体101の外部に飛び出さない(放出されない)位置となる。なお、係る初期位置は、収納筐体101の底面101dから、集積プレート102の上面までの高さを表す。係る初期位置の具体的な設定方法については後述する。
【0036】
また、集積プレート102は、後述するセンサ104により検知される、検知指標部102aを有してもよい。係る検査指標部102aをどのように構成するかは、後述するセンサ104の種類及び配置等に応じて適宜定めてよい。図1に例示する構成においては、後述するセンサ104が、収納筐体の底部101d側に配置される。このため、検知指標部102aは、集積プレート102の下面(収納筐体の底部101dと対向する面)に設けられる。この場合、検知指標部102aは、図4に例示するように、集積プレート102の下面の一部に固着された略板状の部材としてもよい。なお、本実施形態はこれに限定される、検知指標部102aは、集積プレート102の一部を突出することにより形成されてもよい。
【0037】
次に、本実施形態におけるバネ部材103について説明する。本実施形態におけるバネ部材103は、一端部(一端側)が上記集積プレート102に当接し、他端部(他端側)が上記収納筐体101の内壁に当接するよう、上記収納筐体101の内部に配地される。このような構成を有するバネ部材103は、上記集積プレート102を上記収納筐体101に対して弾性保持することから、当該バネ部材103の伸縮に伴い、上記集積プレート102は、収納筐体101の内壁に沿って摺動する。
【0038】
図1に例示する構成においては、バネ部材103の一端部103aは、集積プレート102の下面と当接し、バネ部材103の他端部103bは、収納筐体101の底面101dと当接する。この場合、バネ部材103の一端側103aは、集積プレート102の下面に固定あるいは固着されてもよい。また、バネ部材103の他端側103bは、収納筐体101の底面101dに固定あるいは固着されてもよい。係る固定あるいは固着方法は、例えば、各種接着剤などによる接着、溶接、ねじ等による締着(螺合)、各種係止部材による係止等、任意の方法を採用してよい。
【0039】
図1は、バネ部材103として圧縮バネを採用した構成を例示する。係る圧縮バネは、例えば、渦巻バネやコイルバネであってもよい。この場合、集積プレート102に硬貨類107が載置されていない状態が、バネ部材103が最も圧縮されていない状態である。収納筐体101が硬貨類107により満杯となった状態が、バネ部材103が最も圧縮された状態である。
【0040】
なお、本実施形態におけるバネ部材103は上記限定されず、集積プレート102を、収納筐体101に対して弾性保持可能な任意のバネを採用してよい。このため、例えば、図6に例示するように、係るバネ部材は、コイル状の引張りバネを用いて実現されてもよい(図6に例示するバネ部材603)。この場合、バネ部材603の一端部に集積プレート102が吊架され、他端側が収納筐体101の端部に固着される。また、図7に例示するように、係るバネ部材は、略ぜんまい状のバネ部材703を用いて実現されてもよい。この場合、バネ部材703の一端部に集積プレート102が吊架され、他端側が収納筐体101の端部に固着される。
【0041】
再び図1を参照し、集積プレート102に硬貨類が載置された場合、集積プレート102は、バネ部材103を圧縮して降下する。バネ部材103は、集積プレート102に載置された硬貨類と投入された硬貨類とが衝突した際に、跳ね返った硬貨類が開放部101bから収納筐体101の外部に飛び出さない(放出されない)位置に、集積プレート102を弾性保持する。即ち、バネ部材103は、集積プレート102に載置された硬貨類の上面が、収納筐体101における開放部101bから一定または略一定の距離となるように、集積プレート102を弾性保持する。このようなバネ部材103におけるバネ定数(弾性定数)の設定については、後述する。
【0042】
次に、本実施形態におけるセンサ104について説明する。本実施形態におけるセンサ104は、集積プレートの位置を検知することにより、収納筐体101にどの程度硬貨類が収納されているか(特に、満杯か否か)を判定する。センサ104は、機械的なセンサ(例えば、各種プッシュスイッチ等)でもよく、あるいは、光学式のセンサ(例えば、各種光電センサ等)でもよい。センサ104として、どのような種類のセンサを採用するかは、センサ104の配置場所や、検出対象である集積プレートの配置や形状等に応じて、適宜選択してよい。例えば、光電センサを採用する場合、センサ104は、LED(Light Emitting Diode)等の光源を用いて出力光を発射し、検出対象の物体によって反射あるいは遮蔽(遮光)される光(光量)の変化を受光部で検出することにより、検出対象の物体の有無などを検知してもよい。光電センサは、周知の技術を採用してよいため、詳細な説明は省略する。
【0043】
本実施形態においては、図5に例示するように、センサ104は、収納筐体101の底部101dの一部に配置されてもよい。このように配置された場合、センサ104は、図8及び図9に例示するように、硬貨類が載置された積載プレート102がバネ部材103を圧縮することにより、所定の位置まで降下した際に、検出指標102aを検出する。なお、センサ104の配置を説明するため、図8は、バネ部材103を破線にて図示する。
【0044】
例えば、センサ104として光電センサを採用する場合、集積プレート102に硬貨類が載置されていない状況において(図8)、検出指標102aは、センサ104を遮蔽しない位置に保持される。集積プレート102に硬貨類が載置されることにより、集積プレート102が降下した場合(図9)、検出指標102aがセンサ104を遮蔽する。即ち、この場合、検出指標102aは、センサ104を遮蔽可能な遮光板として機能する。これより、光電センサであるセンサ104が、検出指標102aの存在を検知する。センサ104は、係る検出結果に基づいて、収納筐体101の収納状況(満杯か否か)を判定する。センサ104は、例えば、検出指標102aによってセンサ104が遮蔽される程度を検出することにより、収納筐体101の収納状況(満杯か否か)を判定してもよい。
【0045】
なお、センサ104として、例えば、各種の機械的なスイッチや、押圧センサを採用した場合、集積プレート102に硬貨類が載置されることにより降下した集積プレート102における検出指標102aがセンサ104を押圧する。センサ104は、係る押圧を検出することにより、収納筐体101の収納状況(満杯か否か)を検出してもよい。
【0046】
次に、本実施形態における傾斜部105について説明する。傾斜部105は、後述する硬貨類入力部106aに面した傾斜面105aを有する。後述する硬貨類入力部106aから入力(投入)された硬貨類は、自由落下を経て傾斜面105aに当たり、所定の方向に誘導される。そして、傾斜面105aに沿って誘導された硬貨類は、傾斜面105aの終端部105bから放出され、集積プレート102の上面に集積される。
【0047】
傾斜面105aの角度や、傾斜面105aの終端部105bをどこに設けるかは、集積プレート102の形状や配置、バネ部材103の形状や配置、収納筐体101の形状等に基づいて、適切に選択してよい。より具体的には、硬貨類107を集積プレート102の載置面のどの部分に落着させるかに応じて、傾斜面105aの角度や、傾斜面105aの終端部105bの配置が定められる。この場合、傾斜部105の形状及び配置は、終端部105bから放出される硬貨類107の運動量や、終端部105bから集積プレート102までの距離(即ち、硬貨類107の落下距離)等に基づいて理論的に求められる。そして、当該理論的に求められた形状及び配置に基づいて、更にシミュレーションや試作品を用いた実験等を繰り返すことにより、傾斜部105の具体的な形状及び配置が求められる。
【0048】
例えば、硬貨類107が集積プレート102の長手方向の中心部付近に落着するよう、傾斜部105が設けられる場合、硬貨類107は、集積プレートの載置面における中心部付近から積み上げられる。この場合、後述するように、バネ部材103の伸縮に伴う集積プレート102の上下方向の摺動によって、積み上がられた硬貨類107が崩される。崩された硬貨類107が、集積プレート102の中心付近から、周縁部に均一または略均一に分散した状態で載置される。
【0049】
傾斜部105は、例えば、収納筐体101とは別個の部材として形成し、当該形成した部材を収納筐体101に任意の方法で固着してもよい。また、傾斜部105は、収納筐体101を一部を変形させることにより、収納筐体101と一体として形成してもよい。より具体的には、例えば、収納筐体101の一部を突出させることにより、傾斜部105が形成されてもよい。また、収納筐体101の端部から延設するように、傾斜部105を形成する折り曲げ部が設けられてもよい。
【0050】
次に、本実施形態における硬貨類処理部106について説明する。硬貨類処理部106は、例えば、図示しないユーザ等によって投入された硬貨類の金種等を識別し、係る識別結果に基づいて、硬貨類を硬貨類収納装置100に入力する。硬貨類処理部106は、硬貨類入力部106aを介して、硬貨類を収納筐体101の開放部101bに入力してもよい。なお、本実施形形態においては、硬貨処理部106がどのような処理を実行するかは適宜定めてよい。
【0051】
次に、本実施形態における硬貨類107について説明する。本実施形態における硬貨類107は、貨幣である各種硬貨(コイン)や、各種メダル等であってよい。係る硬貨類107をどの程度収納するかに応じて、収納筐体101や集積プレート102のサイズや、バネ部材103のバネ定数等が定められる。なお、本実施形態における硬貨類収納装置100は、単一の種類(金種)である硬貨類を収納するよう構成してもよく、複数の金種(種類)を混在して収納するよう構成してもよい。
【0052】
次に、上記のように構成された本実施形態における硬貨類収納装置100の動作について説明する。
【0053】
まず、図示しないユーザによって、硬貨処理部106に硬貨類107が投入される。投入された硬貨107は、硬貨処理部106により、例えば、金種毎の分別や、金額認識等の処理が実行される。その後、係る硬貨類107は、硬貨入力部106aから、本実施形態における硬貨収納装置100に入力される。
【0054】
入力された硬貨類107は、傾斜部105に設けられた傾斜面105aに衝突し、傾斜面105aに沿って誘導される。より具体的には、傾斜面105aに衝突した硬貨107は、例えば、傾斜面105aを転がるか、あるいは滑落することにより、傾斜面105aにおける終端部105bから、集積プレート102の上面に落下する。
【0055】
ここで、集積プレート102に硬貨類107が載置されていない状態(図10に例示する「非載置状態」)における、集積プレート102の初期位置について説明する。本実施形態においては、当該初期位置は、集積プレート102の上面に衝突した硬貨類107が跳ね返ることにより、収納筐体101の外部に飛び出さない位置に設定される。
【0056】
図10に例示するように、初期位置における集積プレート102の上面と、収納筐体101における開放部101bとの間の距離をh2とする。この場合係るh2は、集積プレート102の上面に衝突した硬貨類107が跳ね返ることにより、収納筐体101の外部に飛び出さない距離拒理(高さ)である。係るh2の具体的な設定方法は、後述する。
【0057】
次に、図示しないユーザ等によって硬貨類107が投入されるたびに、図10に例示する「載置状態」のように、投入された硬貨類107が集積プレート102に載置される。この際、硬貨類入力部106aより入力された硬貨類は、傾斜部105を経由して集積プレート102に放出され、集積プレート102に載置された他の硬貨類107と衝突する。
【0058】
本実施形態においては、載置された硬貨類107の頂点と、収納筐体101における開放部101bとの間の距離(高さ)がh2となるよう、バネ部材103のバネ定数を設定する。即ち、硬貨類107同士が衝突した際の跳ね返りにより、いずれかの硬貨類107が収納筐体101の外部に飛び出さないように、バネ部材103のバネ定数が設定される。具体的なバネ定数の設定については後述する。
【0059】
なお、図10に例示する載置状態において、新たに投入された硬貨類107が集積プレート102に衝突するたびに、係る衝撃が集積プレートを弾性支持するバネ部材103に伝達される。係る衝撃により、バネ部材103は、上下方向(収納筐体101の底面101dに略垂直な方向)に伸縮する。このようなバネ部材103の伸縮に伴い、バネ部材103に弾性支持される集積プレート102が、上下方向に摺動する。係る摺動は、集積プレート102に載置された硬貨類107に伝達される。このため、仮に、集積プレート102の上面に硬貨類107が偏って載置された場合であっても、係る摺動によって、偏って載置された硬貨類107が崩される。結果として、硬貨類107は、集積プレート102の上面と、収納筐体101の内壁とにより構成される収納空間に、均一に載置される。
【0060】
次に、硬貨類107が投入され続けた結果、図10に例示する「満杯(フル)状態」のように収納筐体101が満杯状態となって場合、センサ104が収納筐体101の満杯状態を検出する。
【0061】
上述したように、センサ104は、集積プレート102の降下に伴い降下した検知指標102aを検知することにより、上記図10に例示する収納筐体101の満杯(フル)状態を判定する。収納筐体101が満杯状態であると検知した場合、センサ104は当該判定の結果を、本実施形態における硬貨類収納装置100を備える任意の硬貨処理装置(不図示)に通知してもよい。収納筐体101が満杯である旨の通知を受け付けた場合、任意の硬貨処理装置(不図示)は、それ以上硬貨類107を受け付けないよう制御してもよい。また、任意の硬貨処理装置の管理者は、収納筐体101が満杯である旨の通知に基づいて、硬貨類収納装置100に収納された硬貨を回収してもよい。なお、当該管理者は、必要に応じて、収納筐体101が満杯になる前に、硬貨類収納装置100に収納された硬貨を回収してもよい。
【0062】
本実施形態においては、収納筐体101が満杯状態である場合も、載置された硬貨類107の頂点から、開放部101bまでの距離(高さ)が上記h2以上になるように、バネ部材103のバネ定数を設定する。
【0063】
以下、本実施形態における、バネ部材103が有するバネ定数の設定について説明する。
【0064】
まず、上述したように、本実施形態においては、傾斜部105から放出された硬貨類107が、集積プレート102の上面、あるいは、集積プレート102に載置された他の硬貨類107と衝突した際に、収納筐体101の外部に飛び出さないように、上記h2を設定する。
【0065】
係るh2は、例えば、以下のように求めることが可能である。
【0066】
まず、硬貨類107、及び、集積プレート102の材質及び形状等から、硬貨類107と集積プレート102との間、あるいは硬貨類107同士の間の反発係数が求められる。次に、傾斜部105から放出された硬貨類107が、集積プレート102の上面、または、集積プレート102に載置された硬貨類の上面に衝突する直前の運動量を求める。係る運動量は、例えば、硬貨投入部106aから投入された硬貨類107の運動量の初期値、傾斜部105における傾斜面105aの長さ、係る傾斜部における各種抵抗(摩擦抵抗等)、及び、終端部105bから硬貨類107が自由落下する距離等に基づいて、理論的に求めることが可能である。そして、上記において求めた反発係数と、硬貨類107の運動量とを用いて、衝突した硬貨類107が跳ね返る高さの理論値が求められる。
【0067】
このようにして求めた理論値に基づいて、更に、シミュレーションや、実際に収納する硬貨類107等を用いた試作品による実験等を繰り返すことにより、硬貨類107が収納筐体101の外部に飛び出ない高さh2を求める。なお、この場合、集積プレート102の上面と、硬貨類107との反発係数が略等しくなるように、集積プレート102の形状や素材を適宜選択してもよい。
【0068】
次に、上記説明したh2を実現可能なバネ部材103について説明する。本実施形態においては、集積プレート102がバネ部材103により弾性的に支持され、集積プレート102に硬貨類が載置された際に、バネ部材103が圧縮される。このため、バネ部材103のバネ定数を適切に設定することにより、収納筐体101に設けられた開放部101bから非載置状態における集積プレート102の上面までの距離、または、集積プレート102に載置された硬貨類107の頂点までの距離を、上記h2とすることが可能である。以下、バネ部材103のバネ定数の設定について説明する。
【0069】
なお、収納筐体101の底面101dから、開放部101bまでの高さをHとし、底面101dから集積プレート102の上面、または、集積プレートに載置された硬貨類107の頂点までの距離をh1とすると、h2は式「h2=H−h1」として求まる。このため、以下においては、底面101dから集積プレート102の上面、または、集積プレートに載置された硬貨類107の頂点までの距離をh1とするバネ定数の設定について説明する。
【0070】
(i)まず、集積プレート102に硬貨類107を載置せず、集積プレート102の質量(重量)のみで、底面101dから集積プレート102の上面までの距離がh1となるようにバネ定数の候補を選定する。この場合、集積プレート102の形状や材質を適宜選択することにより、集積プレート102の質量(重量)が調整されてもよい。
【0071】
(ii)次に、収納筐体101に収納する硬貨類107の枚数と質量(重量)から、集積プレート102に載置した場合の集積の高さが求められる。より具体的には、例えば、A枚の硬貨類107を載置した場合、硬貨類107による質量(重量)は、C[g](グラム:単位)となり、集積される高さ(集積プレート102の上面に積み上がる高さ)は、B[mm](ミリメートル:単位)となることを求める。上記A、B、及び、C等の具体的な数値は、シミュレーションにより求めてもよく、実際の硬貨類及び硬貨類収納装置100の試作品等を用いた実験により求めてもよい。
【0072】
(iii)次に、上記において求めたA、B、及び、Cの関係から、バネ部材13のバネ定数が求められる。より具体的には、A枚(C[g])集積すると、B[mm]圧縮されるバネ定数が求められる。
【0073】
これにより、A枚集積した段階(B[mm]集積された状態)で、バネ部材がB[mm]分圧縮されるため、底面101dから集積プレート102に載置された硬貨類107の頂点までの距離がh1に保たれる。
【0074】
(iv)次に、上記において求めたバネ定数に基づいて、実際に収納する硬貨類107等を用いて実験を繰り返すことで、適切なバネ定数を有するバネ部材103が選択される。
【0075】
理論値としてのバネ定数は、例えば、上記A(枚数)を、収納筐体101が満杯となる硬貨107の枚数とし、Bを硬貨類107の体積と、収納筐体101の体積等から求め、CをA及び、硬貨類107の質量(重量)から求めることにより、計算されてもよい。
【0076】
なお、計算上の理論値のみでは考慮しにくい摩擦等の抵抗の影響もあることから、本実施形態においては、上記(ii)乃至(iii)により求めたバネ定数の理論的な計算値に基づいて、上記(iv)のような実験を実施することにより、実際に採用するバネ定数及び、当該バネ定数を有するバネ部材103が選択される。
【0077】
上記説明した、本実施形態における硬貨類収納装置100によれば、まず、収納筐体101に対する集積プレート102の位置により、収納筐体101の収納状態(満杯か否か)が判定される。即ち、収納された硬貨類107の質量(重量)に基づいて収納筐体101が満杯か否かが判定されるため、満杯と判定される硬貨類107の枚数にバラつきが少ない。
【0078】
また、集積プレート102の上面、あるいは、集積プレート102に載置された硬貨類107の頂点から、収納筐体101の開放部までの距離が一定または略一定に保持されるようなバネ定数を有するバネ部材103により、集積プレート102が弾性保持される。このため、投入された硬貨類107が、集積プレート102の上面や、載置された他の硬貨107に衝突して跳ね返ることにより、収納筐体101の外部に飛び出ることがない。即ち、硬貨類107の溢れ(オーバーフロー)を防止可能である。
【0079】
また、集積プレート102は、バネ部材103により、摺動可能に弾性保持される。バネ部材103の伸縮に伴う集積プレート102の摺動により、集積プレート102に部分的に積み上がった硬貨類107が崩される。このため、本実施形態における硬貨収納装置100は、硬貨類107を収納筐体101内部に均一に積み上げ、硬貨類107を密に収納可能である。よって、収納筐体のサイズを必要以上に大型化する必要もなく、また、硬貨類107を均一に載置するための振動機構等も不要であることから、本実施形態における硬貨収納装置100によれば、装置の小型化が可能である。
【0080】
更に、本実施形態における硬貨類収納装置100によれば、収納筐体101の開放部101bから、載置された硬貨の頂点までの距離が一定または略一定に保たれる。このため、例えば、収納された硬貨類107の枚数が少ない状態においても、収納筐体101の開放部101bを介して、硬貨を容易に回収可能である。
【0081】
以上より、本実施形態における硬貨類収納装置100によれば、硬貨類が収納容器からあふれないように、略均一に収納可能な硬貨類収納装置を提供することが可能である。
【0082】
<第1の実施形態の変形例>
以下、上記第1の実施形態の変形例について説明する。なお、以下の説明においては、上記第1の実施形態と相違する構成について中心的に説明すると共に、上記した第1の実施形態と同様な構成についての重複する説明は省略する。
【0083】
上記第1の実施形態の第1の変形例として、硬貨類収納装置100は、例えば、図11に例示するように、入力された硬貨類107が、集積プレート102の端部に落下するように傾斜部1105を設けてもよい。より具体的には、傾斜部1105から放出された硬貨類107が、上記説明した当接部103aと対向する位置から離間した、集積プレート102の端部に落着するように、傾斜部1105の形状及び配置を設定してもよい。なお、係る傾斜部1105は、上記第1の実施形態における傾斜部105に相当する。
【0084】
図11に例示するように、バネ部材103の伸縮方向の中心軸を「D」として、係る中心軸「D」の近傍において、集積プレート102とバネ部材103とが当接する場合を仮定する。
【0085】
この場合、例えば、傾斜部1105から放出された硬貨類107が、集積プレート上面において、上記中心軸Dよりも、収納筐体101の内壁面に近い部分に落着するよう、傾斜部1105を形成する。より具体的には、例えば、傾斜部1105が有する傾斜面1105aの終端部1105bが、上記中心軸Dよりも、収納筐体101の内壁面に近い部分に配置されるよう、終端部1105bを延設してもよい。
【0086】
また、図12に例示するように、上記第1の実施形態の第2の変形例として、硬貨類収納装置100は、入力された硬貨類107が、集積プレート102の上面において、上記説明した当接部103aと離間した部分に落着するように、傾斜部1205を設けてもよい。より具体的には、傾斜部1205が有する傾斜面1205aの終端部1205bから放出された硬貨類107が、集積プレート102の上面において、当接部103aと対向する位置から離間した位置に落着するように、傾斜部1205の形状及び配置を設定してもよい。なお、係る傾斜部1205は、上記第1の実施形態における傾斜部105に相当する。
【0087】
例えば、バネ部材103の伸縮方向の中心軸を「E」として、係る中心軸「E」が、集積プレート102の長手方向中心から離間している場合を仮定する。図12に例示するように、バネ部材103は、集積プレート102の長て方向中心部から外れた位置において、集積プレート103と当接する。
【0088】
この場合、傾斜部1205は、上記図11に例示した傾斜部1105と同様の構成としてもよい。また、硬貨類107が、集積プレート102の上面において、係る集積プレート102の長手方向中心の近傍に落着するよう、傾斜部1205を形成してもよい。
【0089】
図11、及び、図12に例示したように傾斜部(1105,1205)を配置した場合、上記第1の実施形態と比較して、集積プレート102に落着する硬貨107による衝撃が、バネ部材103の中心軸(例えば、図11における「D」、図12における「E」)離間した場所に加わる。
【0090】
バネ部材103から離間した場所に衝撃が加えられた場合、集積プレート102には、バネ部材103の伸縮による上下方向の搖動摺動に加えて、バネ部材との当接部103aを中心とした回転方向(ロール方向)の振動が発生する場合がある。このため、集積プレート102には、より大きな振動が加わることとなり、集積プレート107に偏って積み上げられた硬貨類107を、より効果的に崩すことが可能である。
【0091】
また、上記第1の実施形態の第3の変形例として、硬貨類収納装置100は、図13に例示するように、上記第1の実施形態における集積プレート102に相当する集積プレート1302を設けてもよい。図13に例示するように、集積プレート1302は、硬貨類107が載置される載置面(上面)の一部に凹部1302bが設けられている。
【0092】
硬貨類107の投入枚数が少ない段階においては、係る凹部1302bを設けることにより、硬貨類107が凹部1302bの方に傾斜した状況で積み上げられる。上記説明したバネ部材103の振動による集積プレート1302の上下動に伴い、凹部1302bの方に傾斜した状況で積み上げられた硬貨類107が容易に崩される。このため、硬貨類107を均一に載置する(積み上げる)ことが可能である。なお、係る凹部1302bは、集積プレート1302における任意の場所に設けてよく、複数個所に設けてもよい。
【0093】
また、上記第1の実施形態の第4の変形例として、硬貨類収納装置100は、図14に例示するように、上記第1の実施形態における集積プレート102に相当する集積プレート1402を設けてもよい。図14に例示するように、集積プレート1402は、硬貨類107が載置される載置面(上面)の一部に凸部1402bが設けられている。
【0094】
硬貨類107の投入枚数が少ない段階においては、係る凸部1402bを設けることにより、硬貨類107が凸部1402bの周囲に傾斜した状況で積み上げられる。上記説明したバネ部材103の振動による集積プレート1402の上下動に伴い、凸部1402bの周囲に傾斜した状況で積み上げられた硬貨類107が容易に崩される。このため、硬貨類107を均一に載置する(積み上げる)ことが可能である。なお、係る凸部1402bは、集積プレート1402における任意の場所に設けてよく、複数個所に設けてもよい。
【0095】
なお、上記説明した第1の実施形態の各変形例については、上記説明した各構成要素以外については、上記第1の実施形態と同等としてよい。
【0096】
<第2の実施形態>
次に、本願発明の第2の実施形態について説明する。図15に例示するように、本実施形態における硬貨類収納装置1500は、硬貨類を収納可能な硬貨類収納筐体1501と、当該硬貨類収納筐体1501の内部に設けられ、硬貨類を載置可能な硬貨類載置部1502と、を備える。また、硬貨類収納装置1500は、硬貨類載置部1502を弾性支持する弾性部材1503を更に備える。また、硬貨類収納装置1500は、上記硬貨類収納筐体1501における硬貨の収納状況(満杯か否か)を検出可能な、収納状況検知部1504を更に備える。また、硬貨類収納装置1500は、自装置に対して投入された硬貨類を、所定の方向に誘導可能な硬貨類誘導部1505を更に備える。以下、それぞれの構成要素について説明する。
【0097】
硬貨類収納筐体1501は、後述する硬貨類載置部1502と共に、自装置に対して投入された硬貨類を収納可能な収納空間を形成する。本実施形態における収納筐体1501は、例えば、上記第1の実施形態における収納筐体101に相当する。
【0098】
硬貨類載置部1502は、上記硬貨類収納筐体1501の内部に設けられ、自装置に投入された硬貨類を載置する載置面を有する。また、硬貨類載置部1502は、後述する弾性部材1503により、弾性的に支持される。本実施形態における硬貨類載置部1502は、例えば、上記第1の実施形態における集積プレート102に相当する。
【0099】
弾性部材1503は、一端側が上記硬貨類載置部1502に当接し、他端側が上記硬貨類収納筐体に当接することにより、上記収納部を弾性的に支持可能な、弾性部材である。また、弾性部材1503は、上記硬貨類収納筐体1501の底面から、上記硬貨類載置部1502に載置された硬貨類の頂点までの高さを、所定の上限高さに維持可能なバネ定数を有する。本実施形態における弾性部材1503は、例えば、上記第1の実施形態におけるバネ部材103に相当する。
【0100】
収納状況検知部1504は、硬貨類が載置された上記硬貨類載置部1502が、上記弾性部材1503を圧縮、あるいは、引き延ばすことにより、上記硬貨類収納筐体1501における所定の位置まで移動したことを検知可能な、センサ等である。本実施形態における収納状況検知部1504は、例えば、上記第1の実施形態におけるセンサ104に相当する。
【0101】
硬貨類誘導部1505は、自装置に対して投入された硬貨類を所定の方向に誘導する傾斜部1505aを有する。
【0102】
なお、本実施形態における硬貨類収納装置1500が収納可能な硬貨類は、硬貨(コイン)、及び、メダル、の少なくともいずれかを含む。
【0103】
上記のように構成された本実施形態における硬貨類収納装置1500によれば、自装置に対して投入された硬貨類が、硬貨類誘導部1505により誘導され、当該硬貨類誘導部1505の端部から放出される。放出された硬貨類は、上記硬貨類載置部1502の載置面に一様に載置され、係る硬貨類の質量(重量)により、硬貨類載置部1502が弾性部材1503を圧縮する。この際、硬貨類載置部1502に載置された硬貨類の頂点から、硬貨類収納筐体1501の底面までの距離が一定または略一定に保たれる。
【0104】
自装置に対して硬貨類が投入されて続けた結果、上記硬貨類載置部1502が弾性部材1503を圧縮または引き延ばすことにより所定の位置まで移動したことを、収納状況検知部1504が検知する。そして、硬貨類収納装置1500は、当該検知結果に基づいて、硬貨類収納筐体1501が満杯状態であることを判定する。
【0105】
以上より、本実施形態における硬貨類収納装置1500によれば、硬貨類収納筐体1501に対する硬貨類載置部1502の位置に基づいて、硬貨類収納筐体1501の収納状態(満杯か否か)が判定される。即ち、収納された硬貨類の質量(重量)に基づいて硬貨類収納筐体1501が満杯か否かが判定されるため、満杯と判定される硬貨類107の枚数にバラつきが少ない。
【0106】
また、硬貨類収納筐体1501の底面から、硬貨類載置部1502の載置面に集積された硬貨類107の頂点までの高さが一定または略一定に保たれる。このため、このため、投入された硬貨類107が硬貨類載置部1502の載置面に載置された他の硬貨類107に衝突して跳ね返ることにより、硬貨類収納筐体1501の外部に飛び出ることがない。
【0107】
また、硬貨類載置部1502は、弾性部材1503により、摺動可能に弾性保持される。このため、弾性部材1503の伸縮に伴う硬貨類載置部1502の摺動により、硬貨類載置部1502に部分的に積み上がった硬貨類が崩される。このため、本実施形態における硬貨収納装置1500は、硬貨類を密に収納可能である。よって、本実施形態における硬貨収納装置1500によれば、装置の小型化が可能である。



【0108】
以上より、本実施形態における硬貨類収納装置1500によれば、硬貨類が収納容器からあふれないように、略均一に収納可能な硬貨類収納装置を提供することが可能である。
【0109】
以上、本発明を、上述した模範的な実施形態に適用した例として説明した。しかしながら、本発明の技術的範囲は、上述した各実施形態に記載した範囲には限定されない。当業者には、係る実施形態に対して多様な変更または改良を加えることが可能であることは明らかである。そのような場合、係る変更または改良を加えた新たな実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれ得る。そしてこのことは、特許請求の範囲に記載した事項から明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、硬貨類を収納する収納部を有する、硬貨類処理装置に適用可能である。より具体的には、本発明は、例えば、硬貨類を収納するATMや両替機、各種自動販売機、各種遊技機等に適用可能である。
【符号の説明】
【0111】
100 硬貨類収納装置
101 収納筐体
102 集積プレート
103 バネ部材
104 センサ
105 傾斜部
106 硬貨類処理部
107 硬貨類
603 バネ部材
703 バネ部材
1105 傾斜部
1205 傾斜部
1302 集積プレート
1402 集積プレート
1500 硬貨類収納装置
1501 硬貨類収納筐体
1502 硬貨類載置部
1503 弾性部材
1504 収納状況検知部
1505 硬貨類誘導部
1601 硬貨類
1602 投入口
1603 硬貨類収納容器
1604 センサ
1605 硬貨類識別装置
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