特許第6342707号(P6342707)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6342707-シート材のカッタ 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6342707
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】シート材のカッタ
(51)【国際特許分類】
   B26D 1/02 20060101AFI20180604BHJP
   B41J 11/70 20060101ALI20180604BHJP
   B26D 7/22 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
   B26D1/02 D
   B41J11/70
   B26D7/22 A
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-99856(P2014-99856)
(22)【出願日】2014年5月13日
(65)【公開番号】特開2015-214009(P2015-214009A)
(43)【公開日】2015年12月3日
【審査請求日】2017年4月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100105474
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 弘徳
(74)【代理人】
【識別番号】100192474
【弁理士】
【氏名又は名称】北島 健次
(72)【発明者】
【氏名】大橋 勇太
(72)【発明者】
【氏名】石川 満広
【審査官】 塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−161846(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3118314(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 1/02
B26D 7/22
B41J 11/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断刃基部と、切断刃基部の先端に設けられた刃先と、を有する切断刃と、
カバー基部と、カバー基部に連設されて前記刃先を保護する保護部と、を有する保護カバーと、
を備え、
前記切断刃及び前記保護カバーは、ロール状に巻かれたシート材の移動経路の途中に位置し、
前記カバー基部が、前記切断刃基部より前記シート材の移動方向の上流側に位置し、
前記切断刃及び前記保護カバーは、一枚の金属板材の一端側と他端側に一体に形成されており、前記切断刃及び前記保護カバーが同方向に折り曲げられることにより、前記保護部が、前記シート材に向けての前記刃先の高さよりも高い位置に位置し、
前記シート材が切断される場合、前記保護部が前記シート材により押されることで、前記保護部が、前記保護カバーの弾性変形により、前記シート材の移動方向の下流側に弾性変位し且つ前記刃先を保護する刃先よりも高い位置から前記刃先を前記シート材に向けて突出させる位置に弾性変位し、それにより前記刃先が前記シート材に当接する
ことを特徴とするシート材のカッタ。
【請求項2】
切断刃基部と、切断刃基部の先端に設けられた刃先と、を有する切断刃と、
カバー基部と、カバー基部に連設されて前記刃先を保護する保護部と、を有する保護カバーと、
を備え、
前記切断刃及び前記保護カバーは、ロール状に巻かれたシート材の移動経路の途中に位置し、
前記切断刃及び前記保護カバーは、一枚の金属板材の一端側と他端側に一体に形成されており、前記切断刃及び前記保護カバーが同方向に折り曲げられることにより、前記保護部が、前記シート材に向けての前記刃先の高さよりも高い位置に位置し、
前記シート材が切断される場合、前記保護部が、前記シート材により押されることで、前記刃先を保護する刃先よりも高い位置から前記刃先を前記シート材に向けて突出させる位置に弾性変位し、それにより前記刃先が前記シート材に当接し、
前記切断刃基部と前記カバー基部とが平板状の連結板部を介して互いに連結されることで、前記切断刃、前記連結板部及び前記保護カバーが一枚の金属板材によって一体に形成されており、
前記切断刃は、鋭角の屈曲部を介して前記連結板部の一端に連結されることで、前記保護カバー側に傾斜し、
前記保護カバーは、鋭角の屈曲部を介して前記連結板部の他端に連結されることで、前記切断刃側に傾斜し、
前記保護部が、前記刃先に対して平行に近接配置されている
ことを特徴とするート材のカッタ。
【請求項3】
切断刃基部と、切断刃基部の先端に設けられた刃先と、を有する切断刃と、
カバー基部と、カバー基部に連設されて前記刃先を保護する保護部と、を有する保護カバーと、
を備え、
前記切断刃及び前記保護カバーは、ロール状に巻かれたシート材の移動経路の途中に位置し、
前記切断刃及び前記保護カバーは、一枚の金属板材の一端側と他端側に一体に形成されており、前記切断刃及び前記保護カバーが同方向に折り曲げられることにより、前記保護部が、前記シート材に向けての前記刃先の高さよりも高い位置に位置し、
前記シート材が切断される場合、前記保護部が、前記シート材により押されることで、前記刃先を保護する刃先よりも高い位置から前記刃先を前記シート材に向けて突出させる位置に弾性変位し、それにより前記刃先が前記シート材に当接し、
前記切断刃基部と前記カバー基部とが連結板部を介して互いに連結されることで、前記切断刃、前記連結板部及び前記保護カバーが一枚の金属板材によって一体に形成されており、
前記切断刃と前記保護カバーが互いに平行に並べて形成されることで、前記保護部が、前記刃先に対して平行に近接配置され、
前記カバー基部は、湾曲形状のバネ部を介して前記連結板部に連結されている
ことを特徴とするート材のカッタ。
【請求項4】
前記連結板部が、カッタを支持部材に固定するための取付板部として構成されている
ことを特徴とする請求項2または3に記載のシート材のカッタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばロール状に巻かれたシート材(紙やテープ、フィルムなどのシート状の材料)を切断するカッタに係り、特に刃先を安全に保護する保護カバーを備えたシート材のカッタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、タクシーメータに接続されて領収書を印字するプリンタが記載されている。このプリンタには、ロール紙を切断するためのカッタが設けられている。従来のこの種のプリンタでは、カッタの刃先がむき出しになっているため、ロール紙を交換する際に刃が手指を傷つけてしまう恐れがあった。
【0003】
また、特許文献2には、カッタの刃先を安全に保護する保護カバーを備えたテープカッタが記載されている。この保護カバーは、柔軟で弾力性を有しており、テープを切断する際に、テープの押圧力によって切断刃より下方に変位あるいは変形することで、切断刃によりテープを切断できるようにしている。但しこの保護カバーは、金属製の切断刃とは別の樹脂で構成されており、切断刃とは別にテープカッタの本体部に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−205655号公報
【特許文献2】特開2008−195465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載されたタクシーメータ用のプリンタのカッタに、安全のために特許文献2に記載された保護カバーを取り付けることが考えられるが、そのまま保護カバーを取り付けようとすると、部品点数が増えて組付作業に手間がかかってしまう。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、保護カバーが付属するからといって、部品点数が増えることがなく、安価に製作することができると共に、製品への組み付け手間が増えることもないシート材のカッタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明に係るシート材のカッタは、下記(1)〜(4)を特徴としている。
(1) 切断刃基部と、切断刃基部の先端に設けられた刃先と、を有する切断刃と、
カバー基部と、カバー基部に連設されて前記刃先を保護する保護部と、を有する保護カバーと、
を備え、
前記切断刃及び前記保護カバーは、ロール状に巻かれたシート材の移動経路の途中に位置し、
前記カバー基部が、前記切断刃基部より前記シート材の移動方向の上流側に位置し、
前記切断刃及び前記保護カバーは、一枚の金属板材の一端側と他端側に一体に形成されており、前記切断刃及び前記保護カバーが同方向に折り曲げられることにより、前記保護部が、前記シート材に向けての前記刃先の高さよりも高い位置に位置し、
前記シート材が切断される場合、前記保護部が前記シート材により押されることで、前記保護部が、前記保護カバーの弾性変形により、前記シート材の移動方向の下流側に弾性変位し且つ前記刃先を保護する刃先よりも高い位置から前記刃先を前記シート材に向けて突出させる位置に弾性変位し、それにより前記刃先が前記シート材に当接する
ことを特徴とするシート材のカッタ。
(2) 切断刃基部と、切断刃基部の先端に設けられた刃先と、を有する切断刃と、
カバー基部と、カバー基部に連設されて前記刃先を保護する保護部と、を有する保護カバーと、
を備え、
前記切断刃及び前記保護カバーは、ロール状に巻かれたシート材の移動経路の途中に位置し、
前記切断刃及び前記保護カバーは、一枚の金属板材の一端側と他端側に一体に形成されており、前記切断刃及び前記保護カバーが同方向に折り曲げられることにより、前記保護部が、前記シート材に向けての前記刃先の高さよりも高い位置に位置し、
前記シート材が切断される場合、前記保護部が、前記シート材により押されることで、前記刃先を保護する刃先よりも高い位置から前記刃先を前記シート材に向けて突出させる位置に弾性変位し、それにより前記刃先が前記シート材に当接し、
前記切断刃基部と前記カバー基部とが平板状の連結板部を介して互いに連結されることで、前記切断刃、前記連結板部及び前記保護カバーが一枚の金属板材によって一体に形成されており、
前記切断刃は、鋭角の屈曲部を介して前記連結板部の一端に連結されることで、前記保護カバー側に傾斜し、
前記保護カバーは、鋭角の屈曲部を介して前記連結板部の他端に連結されることで、前記切断刃側に傾斜し、
前記保護部が、前記刃先に対して平行に近接配置されている
ことを特徴とするート材のカッタ。
(3) 切断刃基部と、切断刃基部の先端に設けられた刃先と、を有する切断刃と、
カバー基部と、カバー基部に連設されて前記刃先を保護する保護部と、を有する保護カバーと、
を備え、
前記切断刃及び前記保護カバーは、ロール状に巻かれたシート材の移動経路の途中に位置し、
前記切断刃及び前記保護カバーは、一枚の金属板材の一端側と他端側に一体に形成されており、前記切断刃及び前記保護カバーが同方向に折り曲げられることにより、前記保護部が、前記シート材に向けての前記刃先の高さよりも高い位置に位置し、
前記シート材が切断される場合、前記保護部が、前記シート材により押されることで、前記刃先を保護する刃先よりも高い位置から前記刃先を前記シート材に向けて突出させる位置に弾性変位し、それにより前記刃先が前記シート材に当接し、
前記切断刃基部と前記カバー基部とが連結板部を介して互いに連結されることで、前記切断刃、前記連結板部及び前記保護カバーが一枚の金属板材によって一体に形成されており、
前記切断刃と前記保護カバーが互いに平行に並べて形成されることで、前記保護部が、前記刃先に対して平行に近接配置され、
前記カバー基部は、湾曲形状のバネ部を介して前記連結板部に連結されている
ことを特徴とするート材のカッタ。
(4) 前記連結板部が、カッタを支持部材に固定するための取付板部として構成されている
ことを特徴とする上記(2)または(3)に記載のシート材のカッタ。
【0008】
上記(1)の構成のカッタによれば、刃先を保護する保護カバーが備わっているので、刃先に手指が当たらなくなり、ケガをする恐れがない。また、切断刃と保護カバーが、一枚の金属板材により一体に形成されているので、部品点数が増えることがなく、安価に製作することができる。さらに、保護カバーが付いているからといって、製品への組み付け手間が増えることがない。また、切断刃と保護カバーが、一枚の金属板材の一端側と他端側に形成された上で、同方向に折り曲げられることにより、保護部が刃先を保護する位置に配されているので、構成が簡単で容易且つ安価に加工することができる。さらに、シート材を切断する場合、シート材を保護部へ向け押し当てるだけで、保護カバーが弾性変形して刃先がシート材を切断できるように突出する。このため、保護カバーがシート材の切断の際の利便性を阻害せずに刃先の安全の確保を図ることができる。また、シート材の切断時、保護カバーの保護部が刃先よりも下側に変位するため、保護カバーがシート材と刃先の間に介在してカットミスが起こることがない。
上記(2)の構成のカッタによれば、切断刃と保護カバーを連結板部に対して鋭角に屈曲させることで、保護部が刃先を保護する位置に配されているので、シート材を保護部へ向け押し当てた際に保護カバーを容易に弾性変位させることができる。また、構造が簡単であり加工が容易である。
上記(3)の構成のカッタによれば、切断刃と保護カバーが互いに平行に並べて形成され、それにより保護部が刃先を保護する位置に配されているので、構造が簡単であり加工が容易である。また、カバー基部が湾曲形状のバネ部を介して連結板部に連結されているので、シート材を保護部へ向け押し当てた際に保護カバーを容易に弾性変位させることができる。
上記(4)の構成のカッタによれば、連結板部を取付板部としてカッタを固定するので、取り付けの利便性向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、保護カバーによって刃先を安全に保護することができるので、ロール紙の交換などの際に手指をケガする恐れがなくなる。また、シート材を切断する際には、シート材を刃先に向けて押し当てるだけ保護カバーが退避するので、切断時の利便性を阻害することがなく、保護カバーが原因のカットミスも起こらない。また、切断刃と保護カバーは、金属板材の一端側と他端側に一体に形成されているので、構造が簡単であり、部品点数が増えることがなく、安価に製作することができる。さらに、保護カバーが付いているからといって製品への組み付け手間が増えることがない。
【0010】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の第1実施形態のカッタを示し、図1(a)は斜視図、図1(b)は通常時の状態を示す側面図、図1(c)は切断時の状態を示す側面図である。
図2図2は、本発明の第1実施形態のカッタを装備したタクシー用のプリンタの構成図で、図2(a)はロール紙を切断する際に保護カバーが下方に変形して刃先が突出している状態を示す側面図、図2(b)はロール紙の交換時に保護カバーによって刃先が保護されている状態を示す側面図である。
図3図3は、本発明の第2実施形態のカッタを示し、図3(a)は斜視図、図3(b)は通常時の状態を示す側面図、図3(c)は切断時の状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態のカッタを示し、図1(a)は斜視図、図1(b)は通常時の状態を示す側面図、図1(c)は切断時の状態を示す側面図である。
【0013】
図1(a)に示すように、このカッタ10は、一枚の金属板材をプレスすることで構成されており、いずれも平板状に形成された切断刃11と、保護カバー12と、取付板部(連結板部)13と、を一体に有している。この場合、切断刃11と保護カバー12は、矩形の金属板材の一端側と他端側にそれぞれ形成され、取付板部13はそれらの中間に形成されている。
【0014】
取付板部13は、製品、例えばタクシー用のプリンタ、にカッタ10を取り付ける部分であり、複数の取付孔16を有する。取付孔16によって、カッタ10が後述するプリンタ100に取り付けられる。
【0015】
切断刃11は、矩形平板状の切断刃基部11aと、刃先11bとを有している。刃先11bは、切断刃基部11aの先端縁に波打刃として形成されている。刃先11bは、図1(c)に示すようにロールから引き出されたシート材Pが押し当てられることで、シート材Pを切断する。
【0016】
保護カバー12は、矩形平板状のカバー基部12aと、刃先11bを保護する保護部12bとを有している。保護部12bは、カバー基部12aの先端縁が相当する。
【0017】
切断刃11と保護カバー12は、同方向に折り曲げられることにより、保護部12bが、シート材Pに向けての刃先11bの高さよりも高い位置に位置している。具体的には、切断刃11は、鋭角の屈曲部11cを介して取付板部13の一端に連結されることで、保護カバー12側に傾斜している。また、保護カバー12は、鋭角の屈曲部12cを介して取付板部13の他端に連結されることで、切断刃11側に傾斜している。それにより、保護部12bが、刃先11bに対して平行に近接配置されており、しかも、保護部12bが、刃先11bの高さよりも高い位置に位置している。
【0018】
刃先11bは、図1(b)に示すように保護カバー12の保護部12bがロールから引き出されたシート材Pに押されていない通常時には、保護部12bによって該刃先11bの上方が覆われている。他方、図1(c)に示すようにロールから引き出されたシート材Pが保護部12bに押し当てられると保護カバー12が弾性変位し、刃先11bがシート材Pに向けて突出した形になり、この結果、刃先11bがシート材Pに当接して、シート材Pを刃先11bによって切断することができる。
【0019】
このカッタ10は、切断刃11及び保護カバー12がロール状に巻かれたシート材Pの移動経路の途中に位置する。このとき、保護部12bは、刃先11bよりシート材Pの移動方向Aの上流側に位置している。また、切断刃11と保護カバー12は、刃先11bと保護カバー12の先端部を上に向けて、且つ、シート材Pの移動方向Aに垂直な方向より移動方向Aの上流側及び下流側にそれぞれ傾斜した姿勢で、製品の支持部120に取付板部13によって取り付けられている。
【0020】
図2は、第1実施形態のカッタ10を装備したタクシー用のプリンタの構成図で、図2(a)はロール紙を切断する際に保護カバーが下方に変形して刃先が突出している状態を示す側面図、図2(b)はロール紙の交換時に保護カバーによって刃先が保護されている状態を示す側面図である。
【0021】
このプリンタ100は、プリンタ本体101と、プリンタ本体101の前面を塞ぐことでロール紙Rの収容空間103を画成する開閉自在な前カバー102と、ロール紙Rが使い切られて無くなったことを検知する光センサ104と、ロール紙Rから引き出されたシート材Pに印字を行う印字部105と、ロール紙Rから引き出されたシート材Pを切断する実施形態のカッタ10と、を備えている。カッタ10は、印字されたシート材Pの排出経路(移動経路)110の途中に設けられている。印字部105は、印字ヘッド106と、印字ヘッド106にシート材Pを押し付けながらシート材Pを送るローラ107と、からなる。
【0022】
このプリンタ100では、図2(a)に示すように、印字されたシート材Pが矢印A方向に排出され、その後、シート材Pが停止した状態で、図1(c)に示すように、排出されたシート材Pの先端Paを矢印Bのように下方に引き下げる。そうすると、保護カバー12が下方に弾性変形して、保護カバー12の切欠部12dより切断刃11の刃先11bがシート材P側に突出し、刃先11bによってシート材Pが切断される。
【0023】
また、保護カバー12は、弾性復元力を有するので、シート材Pによる押し下げ力が解除されると、図1(b)及び図2(b)に示すように自動的に上方の位置に戻り、切断刃11の刃先11bの上方を覆う。
【0024】
このように第1実施形態のカッタ10によれば、通常時に刃先11bを保護する保護カバー12が備わっているので、ロール紙Rの交換時に刃先11bに手指が当たらなくなり、ケガをする恐れがない。従って、ロール紙Rの取り付けや取り外しの作業性が向上する。また、シート材Pを切断する場合は、シート材Pを刃先11bに向けて押し当てるだけで、自動的に保護カバー12が弾性変形して刃先11bがシート材Pを切断できるように突出するので、保護カバー12がシート材Pの切断の際の利便性を阻害せずに、刃先11bの安全の確保を図ることができる。また、シート材Pの切断時、保護カバー12が刃先11bよりも下側に位置するため、保護カバー12がシート材Pと刃先11bの間に介在してカットミスが起こることがない。
【0025】
また、切断刃11、保護カバー12及び取付板部13は、一枚の金属板材により一体に形成されているので、部品点数が増えることがなく、安価に製作することができる。さらに、保護カバー12が付いているからといって、カッタ10の製品への組み付け手間が増えることがない。また、切断刃11と保護カバー12が、一枚の金属板材の一端側と他端側に形成された上で、同方向に折り曲げられることにより、保護部12bが刃先11bを保護する位置に配されているので、構成が簡単で容易且つ安価に加工することができる。
【0026】
また、切断刃11と保護カバー12を取付板部13に対して鋭角に屈曲させることで、保護部12bが刃先11bを保護する位置に配されているので、シート材Pを保護部12bへ向け押し当てた際に保護カバー12を容易に弾性変位させることができる。また、シート材Pの切断時に保護カバー12が弾性変形するので、シート材Pに作用する外力を和らげる効果もある。
【0027】
また、保護部12bは、刃先11bよりシート材Pの移動方向Aの上流側に位置している。さらに、切断刃11と保護カバー12は、刃先11bと保護カバー12の先端部を上に向けて、且つ、シート材Pの移動方向Aに垂直な方向より移動方向Aの上流側及び下流側にそれぞれ傾斜した姿勢で、製品の支持部120に取付板部13によって取り付けられている。このため、ロール紙Rから引き出したシート材Pを上向きの刃先11bに向けて押し下げることで、容易に保護カバー12を刃先11bの下方に撓ませることができ、無理なくスムーズにシート材Pを切断することができる。
【0028】
(第2実施形態)
図3は、本発明の第2実施形態のカッタを示し、図3(a)は斜視図、図3(b)は通常時の状態を示す側面図、図3(c)は切断時の状態を示す側面図である。
【0029】
図3(a)に示すように、このカッタ20は、一枚の金属板材をプレスすることで構成されており、いずれも矩形板状に形成された切断刃21及び保護カバー22と、それらを繋ぐ取付板部(連結板部)23と、を一体に有している。この場合、切断刃21と保護カバー22は、矩形の金属板材の一端側と他端側にそれぞれ形成され、取付板部23はそれらの中間に形成されている。
【0030】
取付板部23は、製品、例えばタクシー用のプリンタ、にカッタ10を取り付ける部分であり、図示しない複数の取付孔を有し、それら取付孔によって、カッタ20が前述したプリンタ100に取り付けられる。
【0031】
切断刃21は、矩形平板状の切断刃基部21aと、刃先21bとを有している。刃先21bは、切断刃基部21aの先端縁に波打刃として形成されている。刃先21bは、図3(c)に示すようにロールから引き出されたシート材Pが押し当てられることで、シート材Pを切断する。
【0032】
保護カバー22は、矩形平板状のカバー基部22aと、刃先21bを保護する保護部22bとを有している。保護部22bは、カバー基部22aの先端縁が相当する。
【0033】
切断刃21と保護カバー22は、取付板部23に対して同方向に、互いに平行に並ぶように折り曲げられることで、保護カバー22の先端の保護部22bが、シート材Pに向けての刃先21bの高さよりも高い位置に位置している。また、切断刃基部21aとカバー基部22aは、湾曲形状のバネ部21c、22cを介して連結板部23に連結されており、弾性変形しやすくなっている。また、切断刃基部21a及びカバー基部22aの途中には、鈍角の折れ曲がり部21d、22dが設けられており、それにより、刃先21bと保護部22bが、シート材Pに対して角度を持って当接するように構成されている。
【0034】
刃先21bは、図3(b)に示すように保護カバー22の保護部22bがロールから引き出されたシート材Pに押されていない通常時には、保護部22bによって該刃先21bの上方が覆われている。他方、図3(c)に示すようにロールから引き出されたシート材Pが保護部22bに押し当てられると保護カバー22が弾性変位し、刃先21bがシート材Pに向けて突出した形になり、この結果、刃先21bがシート材Pに当接して、シート材Pを刃先21bによって切断することができる。
【0035】
このカッタ20は、切断刃21及び保護カバー22がロール状に巻かれたシート材Pの移動経路の途中に位置する。このとき、保護部22bは、刃先21bよりシート材Pの移動方向Aの上流側に位置している。また、切断刃21と保護カバー22は、刃先21bと保護カバー22の先端部を上に向けて、且つ、シート材Pの移動方向Aに垂直な方向より移動方向Aの上流側にそれぞれ傾斜した姿勢で、製品の支持部120に取付板部23によって取り付けられている。
【0036】
このような構成のカッタ20を装備したプリンタ100では、図2(a)に示すように、印字されたシート材Pが矢印A方向に排出され、その後、シート材Pが停止した状態で、図3(c)に示すように、排出されたシート材Pの先端Paを矢印Bのように下方に引き下げる。そうすると、保護カバー22が下方に弾性変形して、保護カバー22より切断刃21の刃先21bがシート材P側に突出し、刃先21bによってシート材Pが切断される。
【0037】
また、保護カバー22は、弾性復元力を有するので、シート材Pによる押し下げ力が解除されると、図3(b)に示すように自動的に上方の位置に戻り、切断刃21の刃先21bの上方を覆う。
【0038】
このように第2実施形態のカッタ20によれば、通常時に刃先21bを保護する保護カバー22が備わっているので、ロール紙Rの交換時に刃先21bに手指が当たらなくなり、ケガをする恐れがない。従って、ロール紙Rの取り付けや取り外しの作業性が向上する。また、シート材Pを切断する場合は、シート材Pを刃先21bに向けて押し当てるだけで、自動的に保護カバー22が弾性変形して刃先21bがシート材Pを切断できるように突出するので、保護カバー22がシート材Pの切断の際の利便性を阻害せずに、刃先21bの安全の確保を図ることができる。また、シート材Pの切断時、保護カバー22が刃先21bよりも下側に位置するため、保護カバー22がシート材Pと刃先21bの間に介在してカットミスが起こることがない。
【0039】
また、切断刃21、保護カバー22及び取付板部23は、一枚の金属板材により一体に形成されているので、部品点数が増えることがなく、安価に製作することができる。さらに、保護カバー22が付いているからといって、カッタ20の製品への組み付け手間が増えることがない。また、切断刃21と保護カバー22が、一枚の金属板材の一端側と他端側に形成された上で、同方向に折り曲げられることにより、保護部22bが刃先21bを保護する位置に配されているので、構成が簡単で容易且つ安価に加工することができる。
【0040】
また、切断刃21と保護カバー22が互いに平行に並べて形成され、それにより保護部22bが刃先21bを保護する位置に配されているので、構造が簡単であり加工が容易である。また、カバー基部22aが湾曲形状のバネ部22cを介して取付板部23に連結されているので、シート材Pを保護部22bへ向け押し当てた際に保護カバー22を容易に弾性変位させることができる。また、シート材Pの切断時に保護カバー22が弾性変形するので、シート材Pに作用する外力を和らげる効果もある。
【0041】
また、保護部22bは、刃先21bよりシート材Pの移動方向Aの上流側に位置している。さらに、切断刃21と保護カバー22は、刃先21bと保護カバー22の先端部を上に向けて、且つ、シート材Pの移動方向Aに垂直な方向より移動方向Aの上流側にそれぞれ傾斜した姿勢で、製品の支持部120に取付板部13によって取り付けられている。このため、ロール紙Rから引き出したシート材Pを上向きの刃先21bに向けて押し下げることで、容易に保護カバー22を刃先21bの下方に撓ませることができ、無理なくスムーズにシート材Pを切断することができる。
【0042】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0043】
例えば、上記実施形態では、本発明のカッタをロール紙の切断に使用した場合を説明したが、本発明のカッタはテープカッタにも適用することができる。
【0044】
また、上記実施形態では、切断刃11、21と保護カバー12、22とを連結する部分に取付板部13、23を設け、この取付板部13、23でプリンタ等の取付対象部(支持部材)に固定する場合を示したが、必ずしも取付板部13、23でプリンタ等の取付対象部に固定する必要はない。例えば、切断刃基部11a、21aに取付孔などを設けて、切断刃基部11a、21aでカッタ10、20を取付対象部に固定することもできる。その場合は、取付板部23というよりも単に切断刃11、21と保護カバー12、22とを連結する連結板部ということになる。
【0045】
ここで、上述した本発明に係るシート材のカッタの実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]〜[4]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 切断刃基部(11a、21a)と、切断刃基部の先端に設けられた刃先(11b、21b)と、を有する切断刃(11、21)と、
カバー基部(12a、22a)と、カバー基部に連設されて前記刃先を保護する保護部(12b、22b)と、を有する保護カバー(12、22)と、
を備え、
前記切断刃及び前記保護カバーは、ロール状に巻かれたシート材(P)の移動経路の途中に位置し、
前記切断刃及び前記保護カバーは、一枚の金属板材の一端側と他端側に一体に形成されており、前記切断刃及び前記保護カバーが同方向に折り曲げられることにより、前記保護部が、前記シート材に向けての前記刃先の高さよりも高い位置に位置し、
前記シート材が切断される場合、前記保護部が、前記シート材により押されることで、前記刃先を保護する刃先よりも高い位置から前記刃先を前記シート材に向けて突出させる位置に弾性変位し、それにより前記刃先が前記シート材に当接する
ことを特徴とするシート材のカッタ。
[2] 前記切断刃基部(11a)と前記カバー基部(12a)とが平板状の連結板部(取付板部13)を介して互いに連結されることで、前記切断刃、前記連結板部及び前記保護カバーが一枚の金属板材によって一体に形成されており、
前記切断刃は、鋭角の屈曲部(11c)を介して前記連結板部の一端に連結されることで、前記保護カバー側に傾斜し、
前記保護カバーは、鋭角の屈曲部(12c)を介して前記連結板部の他端に連結されることで、前記切断刃側に傾斜し、
前記保護部が、前記刃先に対して平行に近接配置されている
ことを特徴とする上記[1]に記載のシート材のカッタ。
[3] 前記切断刃基部(21a)と前記カバー基部(22a)とが連結板部(取付板部23)を介して互いに連結されることで、前記切断刃、前記連結板部及び前記保護カバーが一枚の金属板材によって一体に形成されており、
前記切断刃と前記保護カバーが互いに平行に並べて形成されることで、前記保護部が、前記刃先に対して平行に近接配置され、
前記カバー基部は、湾曲形状のバネ部を介して前記連結板部に連結されている
ことを特徴とする上記[1]に記載のシート材のカッタ。
[4] 前記連結板部が、カッタを支持部材に固定するための取付板部として構成されている
ことを特徴とする上記[2]または[3]に記載のシート材のカッタ。
【符号の説明】
【0046】
10 カッタ
11 切断刃
11a 切断刃基部
11b 刃先
11c 屈曲部
12 保護カバー
12a カバー基部
12b 保護部
12c 屈曲部
13 取付板部
20 カッタ
21 切断刃
21a 切断刃基部
21b 刃先
22 保護カバー
22a カバー基部
22b 保護部
22c バネ部
23 取付板部
P シート材
R ロール紙
A 移動方向
図1
図2
図3