(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
5箇所又は9箇所の前記模擬胸側部は、前記肋骨を模した凸部の部位において、前記模擬筋肉脂肪層部の外側から前記基台部に向けてゴム・プラスチック硬度計を垂直に押し付けた際の硬度が、ボディコンディションスコアーに応じて、等しいか又は略等しい間隔で段階的に変化するように、前記模擬筋肉脂肪層部や前記模擬皮膚被毛部の厚さや弾性が各々設定されている請求項1記載の犬猫用栄養診断補助具。
5箇所又は9箇所の前記模擬胸側部は、一方向に連設配置された連設模擬体として一体となって設けられており、前記肋骨を模した凸部の部位において、前記模擬筋肉脂肪層部の外側から前記基台部に向けてゴム・プラスチック硬度計を垂直に押し付けた際の硬度が、連設配置された一方向に順次段階的に大きくなるように、前記模擬筋肉脂肪層部や前記模擬皮膚被毛部の厚さや弾性が各々設定されている請求項1又は2記載の犬猫用栄養診断補助具。
前記基台部は、樹脂材料又は木製材料を用いて形成されており、前記模擬筋肉脂肪層部は、ゴム板からなる筋肉層を含んで形成されており、前記模擬皮膚被毛部の被毛部は、獣毛又は起毛した布材を含んで形成されている請求項1〜3のいずれか1項記載の犬猫用栄養診断補助具。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1〜3に示す本発明の好ましい一実施形態に係る犬猫用栄養診断補助具10は、目視や触診によって簡易に得られるBCSを介して犬や猫の栄養状態を診断する方法として、例えば5段階法によって犬や猫の栄養状態を診断する際に、特に胸側部への触診による判定結果が、ばらつきなく精度良く得られるようにするための補助具として用いられる。本実施形態の犬猫用栄養診断補助具10は、従来の、BCSによる犬や猫の栄養状態の診断方法によれば、特に胸側部への触診によって犬や猫のBCSを判定する際の判定結果は、主観によるものとなるため、ばらつきなく客観的に判定するには相当の慣れや熟練を要することになり、例えば獣医師や専門家でなければ、信頼性のある診断結果を得ることができないといった技術的課題があったことを鑑みて開発されたものである。本実施形態の犬猫用栄養診断補助具10は、犬や猫の胸側部を触診してBCSを判定する際の補助具として用いられて、例えば触診に慣れていないペットの飼い主等でも、ばらつきの少ない精度の良い判定結果が得られるように補助することで、犬や猫の栄養状態を適正に管理できるようにする。
【0013】
ここで、BCSによる犬や猫の栄養状態の診断方法は、アメリカ動物病院協会(AAHA)や日本動物病院協会(JAHA)によって認定された、臨床現場で一般的に用いられている公知の診断方法であり、目視による観察によって、犬や猫の腰部や腹部のくびれ具合等から栄養状態を評価すると共に、胸側部を触診することによって、肋骨の触れ具合から犬や猫の栄養状態を評価して、BCSを判定することで、5段階法や9段階法によって犬や猫の栄養状態を診断するようになっている。
【0014】
具体的には、例えば5段階法による診断では、BCS1(やせすぎ)については、「肋骨や腰骨の骨格がはっきりと浮き出て、簡単に骨がわかる。上から見ると砂時計のような体形になっている。」、BCS2(体重不足)については、「肋骨が少し浮き出ていて、なでると骨がわかる。上から見ると腰にくびれがあり、横から見たウエストも細くなっている。」、BCS3(理想体重)については、「肋骨が薄い皮下脂肪で覆われていて、なでると骨がわかる。上から見た腰のくびれはゆるやか。横から見たウエストがゆるやかに細くなっている。」、BCS4(体重過剰)については、「厚い皮下脂肪で覆われ、見た目では肋骨はわからない。上から見ると、かろうじてくびれがあり、横から見たウエストは引き締まっていない。」、BCS5(肥満)については、「非常に厚い皮下脂肪で覆われ、見た目でも触っても肋骨がわからない。上から見て腰のくびれがなく寸胴。横からは腹が張り出し垂れ下がっている。」といった評価基準に従って、犬や猫の栄養状態を判定できるようになっている。
【0015】
また、特に胸側部の触診によるBCSの判定では、BSC1(やせすぎ)については、「肋骨が脂肪によって覆われておらず、容易に触知できる。」、BSC2(体重不足)については、「肋骨がごく薄い脂肪によって覆われており、容易に触知できる。」、BSC3(理想体重)については、「肋骨がわずかに脂肪によって覆われており、触知できる。」、BSC4(体重過剰)については、「肋骨が中程度の脂肪によって覆われており、触知が困難。」、BSC5(肥満)については、「肋骨が厚い脂肪によって覆われており、触知が非常に困難。」といった評価基準に従って、犬や猫の栄養状態を診断できるようになっている。
【0016】
本実施形態の犬猫用栄養診断補助具10は、特に、このような犬や猫の胸側部の触診によるBCSの判定を、例えば触診に慣れていないペットの飼い主等であっても、ばらつきを少なくして、精度良く行えるようにするための補助具として採用されたものである。
【0017】
そして、本実施形態の犬猫用栄養診断補助具10は、BCSにより犬や猫の栄養状態を診断するために用いる補助具であって、
図1〜
図3に示すように、BCSによる5段階法又は9段階法(本実施形態絵では5段階法)の各段階に対応させた、5箇所又は9箇所(本実施形態では5箇所)の模擬胸側部11〜15を有しており、各々の模擬胸側部11〜15は、肋骨を模した複数の凸部17を表面に備えると共に、硬質材料からなる基台部16と、この基台部16を覆って配設される模擬筋肉脂肪層部18と、この模擬筋肉脂肪層部18を覆って配設される模擬皮膚被毛部19とを含んで構成されている。5箇所又は9箇所(本実施形態絵では5箇所)の模擬胸側部11〜15は、模擬皮膚被毛部19の被毛部19aを除いた状態で(
図2、
図3参照)、肋骨を模した凸部17の部位において、模擬筋肉脂肪層部18の外側から基台部16に向けてゴム・プラスチック硬度計30(
図2参照)を垂直に押し付けた際の硬度が、BCSに応じて段階的に変化するように、模擬筋肉脂肪層部18や模擬皮膚被毛部19の厚さや弾性が各々設定されている。これによって、5段階法又は9段階法(本実施形態絵では5段階法)の各段階に対応させた触診感覚を容易に得ることができるようになっている。
【0018】
また、本実施形態では、5箇所の模擬胸側部11〜15は、模擬皮膚被毛部19の被毛部19aを除いた状態で、肋骨を模した凸部17の部位において、模擬皮膚被毛部19の外側から基台部16に向けてゴム・プラスチック硬度計30を垂直に押し付けた際の硬度が、BCSに応じて、等しいか又は略等しい間隔で段階的に変化するように、模擬筋肉脂肪層部18や模擬皮膚被毛部19の厚さや弾性が各々設定されている。
【0019】
さらに、本実施形態では、5箇所の模擬胸側部11〜15は、一方向に連設配置された連設模擬体20として一体となって設けられており、模擬皮膚被毛部19の被毛部19aを除いた状態で、肋骨を模した凸部17の部位において、模擬筋肉脂肪層部18の外側から基台部16に向けてゴム・プラスチック硬度計30を垂直に押し付けた際の硬度が、連設配置された一方向に順次段階的に大きくなるように、模擬筋肉脂肪層部18や模擬皮膚被毛部19の厚さや弾性が各々設定されている。
【0020】
本実施形態では、犬猫用栄養診断補助具10は、例えば縦横20〜30cm程度の大きさの木製の矩形平板形状を有する薄板基板21の上面に、当該薄板基板21の中央部分を横断するようにして、5体の模擬胸側部11〜15を、一方向に連設させて並べて配置することにより形成されている(
図1参照)。各々の模擬胸側部11〜15は、これらの基台部16の底面を、薄板基板21の上面に接合することによって、薄板基板21の中央部分に一体となって取り付けられている。模擬胸側部11〜15は、好ましくは基台部13の側端面を互いに当接させた状態で、薄板基板21の横断方向に連続して取り付けられていると共に、5箇所の模擬胸側部11〜15の全体が、模擬皮膚被毛部19の被毛部19aを構成する一枚の起毛した布材22によって覆われていることで、別々に分離していることなく、一方向に一体として連設配置された連設模擬体20を形成している(
図1参照)。
【0021】
また、矩形平板形状の薄板基板21の上面における、5体の模擬胸側部11〜15による連設模擬体20と、模擬胸側部11〜15が連設する一方向に沿った当該薄板基板21の一辺部との間の部分には、各々の模擬胸側部11〜15を触診することによって判定されるべきBCSの値(BCS値)が、例えば「1」から「5」までの英数字23によって表示されている。
【0022】
連設配置された各々の模擬胸側部11〜15を構成する基台部16は、本実施形態では、硬質の樹脂材料として、例えばポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂、アクリロニトリルブタジエン樹脂、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、テフロン(登録商標)、根知可塑性ポリイミド等の合成樹脂を用いたプラスチック成形品となっている。基台部16は、
図2及び
図3に示すように、例えば縦横10〜20cm程度の大きさの矩形平面形状を有すると共に、5〜50mm程度の厚さを備える、駒板形状の部材となっている。各々の基台部16の上面(表面)には、肋骨を模した複数の凸部17が形成されている。本実施形態では、肋骨を模した凸部17は、例えば幅が2〜10mm程度、高さが2〜10mm程度の大きさの、略半円の断面形状を備える線状の凸部となっている。肋骨を模した凸部17は、好ましくは模擬胸側部11〜15が連設する一方向に延設して、直線状に形成されていると共に、延設方向とは垂直又は略垂直な方向に例えば2〜10mm程度の中心間ピッチで、間隔をおいて平行又は略平行に配置されて、複数本(本実施形態では6本)設けられている。
【0023】
本実施形態では、5体の基台部16は、上述のように、これらの底面を、薄板基板21の上面に接合すると共に、好ましくはこれらの側端面を、互いに当接させた状態で接合することによって、同様の高さ(厚さで)で薄板基板21に一体として取り付けられている。薄板基板21に取り付けられた基台部16の上方には、模擬筋肉脂肪層部18が、
図2及び
図4に示すように、異なる厚さで各々配設される。なお、基台部16は、各々の模擬胸側部11〜15の基台部16として個々に成形されたものの他、5箇所の各模擬胸側部11〜15の基台部16が、予め一体として成形されたものであっても良い。
【0024】
図3及び
図5(a)〜(e)にも示すように、各々の基台部16を覆って配設される模擬筋肉脂肪層部18は、例えば厚さが1〜4mm程度のゴム板からなる筋肉層18aを含んで形成されている。また、本実施形態では、BCS値が「3」、「4」、又は「5」となる、第3模擬胸側部13、第4模擬胸側部14、及び第5模擬胸側部15では、基台部16の上方に配設される模擬筋肉脂肪層部18は、例えば厚さが1〜10mm程度の発泡ゴムからなる脂肪層18bを含んで形成されている。第3模擬胸側部13、第4模擬胸側部14、及び第5模擬胸側部15では、BCS値の増加に応じて脂肪層18bの厚さが順次増加するように、模擬筋肉脂肪層部18が設けられている。BCS値が「1」となる第1模擬胸側部11やBCS値が「2」となる第2模擬胸側部12では、模擬筋肉脂肪層部18は、発泡ゴムからなる脂肪層18bを含んでおらず、筋肉層18aのみによって模擬筋肉脂肪層部18が形成されている。
【0025】
本実施形態では、各々の模擬胸側部11〜15の模擬筋肉脂肪層部18を覆って配設される模擬皮膚被毛部19は、被毛部19aとして、上述のように、一枚の起毛した布材22を含んで構成される。布材22は、各々の模擬筋肉脂肪層部18の上方を個別に覆うのではなく、連設する5箇所の模擬胸側部11〜15の全体を一度に覆うようにして取り付けられる(
図1、
図4参照)。また、本実施形態では、BCS値が「2」、「3」、「4」、又は「5」となる、第2模擬胸側部12、第3模擬胸側部13、第4模擬胸側部14、及び第5模擬胸側部15では、模擬筋肉脂肪層部18の上方に配設される模擬皮膚被毛部19は、例えば厚さが1〜4mm程度のゴム板からなる皮膚層19bを含んで形成されている。BCSの値が「1」となる第1模擬胸側部11では、模擬皮膚被毛部19は、ゴム板からなる皮膚層19bを含んでおらず、起毛した布材22による被毛部19aのみによって、模擬皮膚被毛部19が形成されている。
【0026】
本実施形態では、上述の模擬筋肉脂肪層部18の筋肉層18aや脂肪層18b、或いは模擬皮膚被毛部19の皮膚層19bの厚さや弾性を適宜調整することによって、模擬皮膚被毛部19の被毛部19aを除いた状態で(
図2参照)、肋骨を模した凸部17の部位において、模擬筋肉脂肪層部18の外側から基台部16に向けてゴム・プラスチック硬度計30を垂直に押し付けた際の硬度が、5段階のBCSに応じて段階的に変化するように、各々の模擬胸側部11〜15を設定することができるようになっている。
【0027】
そして、本実施形態の犬猫用栄養診断補助具10では、5箇所の模擬胸側部11〜15は、模擬皮膚被毛部19の被毛部19aを除いた状態で、肋骨を模した凸部17の部位において、ゴム・プラスチック硬度計を垂直に押し付けた際の硬度が、好ましくは10〜90の範囲で段階的に変化するように、模擬筋肉脂肪層部18や模擬皮膚被毛部19の厚さや弾性が各々設定されている。これによって、犬猫用栄養診断補助具10の5箇所の模擬胸側部11〜15を、手の指を押し付けることで触診した際に、犬や猫の胸側部を触診した際に得られる感触と同等の感触を、効果的に得ることが可能になる。
【0028】
ここで、肋骨を模した凸部17の部位において、模擬筋肉脂肪層部18の外側から基台部16に向けて押し付けることで、各々の模擬胸側部11〜15の硬度を計測するゴム・プラスチック硬度計30としては、ゴム・プラスチック硬度計として知られる公知の種々の硬度計30を用いることができる。より具体的には、商品名「デュロメーター」(株式会社佐藤商事製)を、ゴム・プラスチック硬度計30として好ましく用いることができる。
【0029】
また、本実施形態の犬猫用栄養診断補助具10では、5箇所の模擬胸側部11〜15は、模擬皮膚被毛部19の被毛部19aを除いた状態で、肋骨を模した凸部17の部位において、模擬皮膚被毛部19の外側から基台部16に向けてゴム・プラスチック硬度計30を垂直に押し付けた際の硬度が、BCSに応じて、等しいか又は略等しい間隔で段階的に変化するように、模擬筋肉脂肪層部18や模擬皮膚被毛部19の厚さや弾性が各々設定されている。より具体的には、例えば、BCS値「1」に対応させた第1模擬胸側部11における硬度が70〜90、BCS値「2」に対応させた第2模擬胸側部12における硬度が40〜60、BCS値「3」に対応させた第3模擬胸側部13における硬度が25〜40、BCS値「4」に対応させた第4模擬胸側部14における硬度が15〜25、BCS値「5」に対応させた第5模擬胸側部15における硬度が10〜15となるように、BCSに応じて、等しいか又は略等しい間隔で、5箇所の模擬胸側部11〜15の硬度が段階的に変化するように設定されている。これによって、犬猫用栄養診断補助具10の5箇所の模擬胸側部11〜15を、手の指を押し付けることで触診した際に、犬や猫の胸側部を触診した際に得られるBCS値1〜5に対応する感触と同等の感触を、段階的に変化する明らかに異なる感触として、より精度良く得ることが可能になる。
【0030】
さらに、本実施形態の犬猫用栄養診断補助具10では、5箇所の模擬胸側部11〜15は、一方向に連設配置された連設模擬体20として一体となって設けられており、模擬皮膚被毛部19の被毛部19aを除いた状態で、肋骨を模した凸部17の部位において、模擬筋肉脂肪層部18の外側から基台部16に向けてゴム・プラスチック硬度計30を垂直に押し付けた際の硬度が、連設配置された一方向に順次段階的に大きくなるように、模擬筋肉脂肪層部18や模擬皮膚被毛部19の厚さや弾性が各々設定されている。より具体的には、本実施形態の犬猫用栄養診断補助具10では、例えば
図2及び
図4において左側の端部に配置されたBCS値「1」の第1模擬胸側部11から、右側に向けて、右側の端部に配置されたBCS値「5」の第5模擬胸側部15まで、5箇所の模擬胸側部11〜15の硬度が、連設配置された一方向に順次段階的に大きくなるように設定されている。これによって、犬猫用栄養診断補助具10の取り扱い易さを、効果的に向上させることが可能になる。
【0031】
そして、上述の構成を備える本実施形態の犬猫用栄養診断補助具10によれば、5箇所の模擬胸側部11〜15は、肋骨を模した複数の凸部17を備える基台部16と、基台部16を覆って配設される模擬筋肉脂肪層部18と、模擬筋肉脂肪層部18を覆って配設される模擬皮膚被毛部19とを含んで構成され、模擬胸側部11〜15は、肋骨を模した凸部17の部位において、模擬筋肉脂肪層部18の外側からゴム・プラスチック硬度計30を垂直に押し付けた際の硬度が、BCSに応じて段階的に変化するように各々設定されている。
【0032】
したがって、本実施形態によれば、例えば一般の臨床現場において、獣医師や専門家が、犬猫用栄養診断補助具10をそばに置いて、触診すべき犬や猫の胸側部と、用栄養診断補助具10の1箇所又は複数箇所の模擬胸側部11〜15とを交互に触診しながら、犬や猫の胸側部への触診による感触が、5箇所の模擬胸側部11〜15のうちのいずれを触診した際の感触に相当するかを判断することによって、5段階法の各段階に対応させた触診感覚をより客観的に得ることが可能になる。これによって相当すると判断された模擬胸側部11〜15に対応するBCS値から、犬や猫の胸側部を触診することによる診断結果を、精度の良い信頼性のある診断結果として、効率良く得ることが可能になる。
【0033】
また、本実施形態の犬猫用栄養診断補助具10によれば、例えば動物医療教育機関において、教育訓練用の補助具として用いることもできる。すなわち、動物医療教育機関等で教育訓練を受ける生徒は、犬猫用栄養診断補助具10の模擬胸側部11〜15を、手の指を押し付けることで触診することによって、5段階法の各段階に対応させた触診感覚を容易に学習することができるので、実際に犬や猫の胸側部を触診して栄養状態を診断する際に、学習した触診感覚に基づいて、BCSを精度良く判定することが可能になる。
【0034】
さらに、本実施形態の犬猫用栄養診断補助具10によれば、例えば動物病院の待合室や、飼い主の家に当該犬猫用栄養診断補助具10を置いておくことで、飼い主は、犬や猫の胸側部と、犬猫用栄養診断補助具10の1箇所又は複数箇所の模擬胸側部11〜15とを交互に触診することによって、自身でBCSを判定して、犬や猫の栄養状態を手軽に把握することが可能になると共に、犬や猫の健康管理への意識を高揚させることが可能になる。また飼い主は、例えば
図6に示すようなBCS診断表を参照することによって、BCSによる犬や猫の栄養状態の診断の、栄養学的な理解を深めることが可能になると共に、栄養状態に関する問題を解決するための、具体的な改善策やアクションをとることが可能になる。
【0035】
したがって、本実施形態の犬猫用栄養診断補助具10によれば、上述のように、BCSによる簡易な方法によって、犬や猫の栄養状態が、ばらつきなく精度良く診断されるように効果的に補助することが可能になる。
【0036】
図7(a)、(b)は、本発明の好ましい他の実施形態に係る犬猫用栄養診断補助具24を説明するものある。
図7(a)、(b)に示す他の実施形態の犬猫用栄養診断補助具24では、上記実施形態の5箇所の模擬胸側部11〜15と同様の構成を備える、第1模擬胸側部11’、第2模擬胸側部12’、第3模擬胸側部13’、第4模擬胸側部14’、及び第5模擬胸側部15’が、略正5角柱形状を有する回転支持体25の各々の面部に取り付けられて、周方向を一方向として連設配置されることにより、回転可能な回転連設模擬体26を形成している。回転支持体25の両側の端面には、これらの中央部から外側に突出して、回転軸部25aが設けられている。
【0037】
本他の実施形態の犬猫用栄養診断補助具24は、例えば
図8に示すような犬のぬいぐるみ27における、胸背部に開口形成されたくり抜き開口部28に、回転可能に取り付けて用いることができる。すなわち、犬猫用栄養診断補助具24は、回転支持体25の両側の回転軸部25aを、くり抜き開口部28の胴長方向に対向する一対の内壁面に回転可能に支持させると共に、回転連設模擬体26の5箇所の模擬胸側部11’〜15’のうちのいずれかを、くり抜き開口部28の開口面に臨ませることが可能な状態で、犬のぬいぐるみ27に取り付けて用いることが可能である。
【0038】
本他の実施形態の犬猫用栄養診断補助具24によっても、5箇所の模擬胸側部11’〜15’は、肋骨を模した凸部の部位において、模擬筋肉脂肪層部の外側からゴム・プラスチック硬度計30を垂直に押し付けた際の硬度が、BCSに応じて段階的に変化するように各々設定されているので、これらの模擬胸側部11’〜15’を触診することによって、上記実施形態の犬猫用栄養診断補助具10と同様の作用効果が得られる。また、本他の実施形態の犬猫用栄養診断補助具24によれば、例えば犬のぬいぐるみ27に取り付けて用いることによって、例えば教育訓練用の補助具として使用したり、飼い主の家に置いて使用する際に、犬や猫の胸側部の正しい位置で触診がなされるように学習させることで、さらに精度の良いBCSの判定結果が得られるように誘導することが可能になる。
【0039】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、本発明の犬猫用栄養診断補助具は、9段階法のBCSによる診断方法の各段階に対応させて、9箇所の模擬胸側部を有していても良い。5箇所又は9箇所の模擬胸側部は、一方向に連設配置された連設模擬体として一体となって設けられている必要は必ずしも無く、個々の模擬胸側部に分離した状態で設けられていても良い。模擬筋肉脂肪層部を覆って配設される模擬皮膚被毛部の被毛部もまた、個々の模擬胸側部を覆うように分離した状態で設けることができる。
【0040】
肋骨を模した凸部を備える基台部は、硬質材料として、硬質の樹脂材料の他、竹材を含む木製材料を用いて形成することもでき、鉱物(石膏、セラミックなど)や金属等の、その他の種々の加工が容易な硬質材料を用いて形成することもできる。模擬筋肉脂肪層部を構成する筋肉層は、ゴム板の他、同様の物性を備えるその他の種々の材料を用いて形成することもでき、脂肪層は、発泡ゴムの他、同様の物性を備える軟質素材として、エラストマー素材や人肌ケル等の、その他の種々の材料を用いて形成することもできる。模擬皮膚被毛部を構成する皮膚層は、ゴム板の他、同様の物性を備えるその他の種々の材料を用いて形成することもできる。被毛部は、起毛した布材の他、獣毛等を用いて形成することもできる。特に兎の被毛の付いた皮を、被毛部として好ましく用いることができる。
【0041】
また、基台部の表面の肋骨を模した複数の凸部は、間隔をおいて平行又は略平行に配置された複数の直線状の凸部となっている必要は必ずしも無く、曲線状の凸部や、平行又は略平行に配置されてない線状の凸部であっても良い。肋骨を模した複数の凸部は、肋骨の間隔と同様又は略同様の間隔をおいて基台部の表面に分散して配置された、点状の凸部であっても良い。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により、本発明の犬猫用栄養診断補助具をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0043】
図1〜
図3に示す上記実施形態の犬猫用栄養診断補助具10と同様の構成を備える補助具を用いて、体脂肪率の異なる複数頭の犬を対象に栄養診断を実施し、本発明の犬猫用栄養診断補助具による効果を検証した。評価者は、動物看護学を学ぶ学生121名とした。評価者は、BCSによる診断の経験の少ない学生であったため、予めBCSによる診断方法について説明した。その後、評価者を2群に分け、一方の群(n=61)は、診断方法の説明のみで犬猫用栄養診断補助具を用いずに触診させ、他方の群(n=60)は、犬猫用栄養診断補助具を用いて触診させた。犬猫用栄養診断補助具の有無で診断のバラツキに差がでるか否かを、F検定を用いて検定した。検定結果は、箱ヒゲ法により表示した。検定結果を
図9に示す。
【0044】
図9に示す検定結果によれば、犬猫用栄養診断補助具を用いた他方の群の診断のバラツキは、補助具を用いることなく説明のみで診断した一方の群と比較して、BCS3とBCS4において統計的に有意に減少した。BCS1、BCS2、BCS5については、被検個体である犬の頭数が少ないため、統計的な有意差は認められなかったが、バラツキの程度は、犬猫用栄養診断補助具を用いたことで少なくなる傾向を示した。これらの検定結果から、BCSによる犬や猫の栄養状態の診断のために開発した本発明の犬猫用栄養診断補助具を用いることで、BCSによる犬や猫の栄養状態の診断の精度が向上することが判明する。