特許第6342758号(P6342758)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6342758
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】積層鉄心及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/18 20060101AFI20180604BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20180604BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20180604BHJP
   H01F 27/24 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
   H02K1/18 B
   H02K15/02 F
   H01F41/02 B
   H01F27/24 Q
【請求項の数】13
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-184391(P2014-184391)
(22)【出願日】2014年9月10日
(65)【公開番号】特開2015-97466(P2015-97466A)
(43)【公開日】2015年5月21日
【審査請求日】2016年7月20日
(31)【優先権主張番号】特願2013-212046(P2013-212046)
(32)【優先日】2013年10月9日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000144038
【氏名又は名称】株式会社三井ハイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(72)【発明者】
【氏名】福本 崇
(72)【発明者】
【氏名】小田 仁
(72)【発明者】
【氏名】手塚 昇吾
(72)【発明者】
【氏名】緒方 萌
【審査官】 津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−282392(JP,A)
【文献】 特開2007−124791(JP,A)
【文献】 特開2012−115057(JP,A)
【文献】 特開2011−097742(JP,A)
【文献】 特開2013−139085(JP,A)
【文献】 特開昭57−068648(JP,A)
【文献】 特開2013−179775(JP,A)
【文献】 特開2003−009476(JP,A)
【文献】 実開昭61−144786(JP,U)
【文献】 特開2012−130130(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0234363(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/00− 1/34
H02K15/02
H02K15/12
H01F41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の鉄心片が積層された単位積層鉄心を転積して、該転積した単位積層鉄心を接合した積層鉄心において、
前記単位積層鉄心は、複数の樹脂孔を有し、軸心方向に連通する前記樹脂孔に充填される樹脂によって前記単位積層鉄心が連結され、
前記各単位積層鉄心を連結する前記樹脂孔の軸心は同一直線上にあって、かつ前記単位積層鉄心の軸方向一端部又は両端部の鉄心片に形成されている前記樹脂孔の直径は、他の前記鉄心片の樹脂孔の直径より大きくなっていることを特徴とする積層鉄心。
【請求項2】
複数枚の鉄心片が積層された単位積層鉄心を転積して、該転積した単位積層鉄心を接合した積層鉄心において、
前記単位積層鉄心は、複数の樹脂孔を有し、軸心方向に連通する前記樹脂孔に充填される樹脂によって前記単位積層鉄心が連結され、
前記各単位積層鉄心の樹脂孔の軸心は僅少の範囲でずれて、かつ前記単位積層鉄心の軸方向一端部又は両端部の鉄心片に形成されている前記樹脂孔の直径は、他の前記鉄心片の樹脂孔の直径より大きくなっていることを特徴とする積層鉄心。
【請求項3】
請求項又は記載の積層鉄心において、前記単位積層鉄心は、かしめによって前記各鉄心片が接合されていることを特徴とする積層鉄心。
【請求項4】
請求項のいずれか1記載の積層鉄心において、前記積層鉄心は固定子積層鉄心であることを特徴とする積層鉄心。
【請求項5】
請求項のいずれか1記載の積層鉄心の製造方法であって、前記単位積層鉄心を個別に製造し、複数の前記単位積層鉄心を転積した状態で、樹脂注入型と受け型との間に配置し、前記樹脂注入型に設けられた樹脂ポットから前記樹脂孔に樹脂を注入することを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項6】
複数枚の鉄心片が積層され、該各鉄心片は積層鉄心を積層方向に貫通する複数の樹脂孔(磁石挿入孔を除く)に樹脂を充填して積層方向に連結される積層鉄心の製造方法において、前記積層鉄心は、軸方向両端部に設けられている前記鉄心片(A)と樹脂との接合面積を、軸方向両端部以外に配置されている前記鉄心片(U)と樹脂との接合面積より大きくして、前記鉄心片(A)の接合強度が確保され、しかも、軸孔の周囲に複数の前記磁石挿入孔が設けられた回転子積層鉄心であって、前記磁石挿入孔への永久磁石の樹脂封止と、前記樹脂孔の樹脂封止は同時に行うことを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項7】
複数枚の鉄心片が積層され、該各鉄心片は積層鉄心を積層方向に貫通する複数の樹脂孔(磁石挿入孔を除く)に樹脂を充填して積層方向に連結される積層鉄心の製造方法において、前記積層鉄心は、軸方向両端部に設けられている前記鉄心片(A)と樹脂との接合面積を、軸方向両端部以外に配置されている前記鉄心片(U)と樹脂との接合面積より大きくして、前記鉄心片(A)の接合強度が確保され、前記鉄心片(A)の樹脂孔(B)の積層方向に平行な平面における断面積を前記鉄心片(U)の樹脂孔(H)の積層方向に平行な平面における断面積より大きくし、しかも、軸孔の周囲に複数の前記磁石挿入孔が設けられた回転子積層鉄心であって、前記磁石挿入孔への永久磁石の樹脂封止と、前記樹脂孔の樹脂封止は同時に行うことを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項8】
複数枚の鉄心片が積層され、該各鉄心片は積層鉄心を積層方向に貫通する複数の樹脂孔(磁石挿入孔を除く)に樹脂を充填して積層方向に連結される積層鉄心の製造方法において、前記積層鉄心は、軸方向両端部に設けられている前記鉄心片(A)と樹脂との接合面積を、軸方向両端部以外に配置されている前記鉄心片(U)と樹脂との接合面積より大きくして、前記鉄心片(A)の接合強度が確保され、前記鉄心片(A)の樹脂孔(B)の直径が前記鉄心片(U)の樹脂孔(H)の直径より小さく、しかも、軸孔の周囲に複数の前記磁石挿入孔が設けられた回転子積層鉄心であって、前記磁石挿入孔への永久磁石の樹脂封止と、前記樹脂孔の樹脂封止は同時に行うことを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項9】
複数枚の鉄心片が積層され、該各鉄心片は積層鉄心を積層方向に貫通する複数の樹脂孔(磁石挿入孔を除く)に樹脂を充填して積層方向に連結される積層鉄心の製造方法において、前記積層鉄心は、軸方向両端部に設けられている前記鉄心片(A)と樹脂との接合面積を、軸方向両端部以外に配置されている前記鉄心片(U)と樹脂との接合面積より大きくして、前記鉄心片(A)の接合強度が確保され、前記鉄心片(A)は1枚又は2枚以上の鉄心片から構成され、しかも、軸孔の周囲に複数の前記磁石挿入孔が設けられた回転子積層鉄心であって、前記磁石挿入孔への永久磁石の樹脂封止と、前記樹脂孔の樹脂封止は同時に行うことを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項10】
複数枚の鉄心片が積層され、該各鉄心片は積層鉄心を積層方向に貫通する複数の樹脂孔(磁石挿入孔を除く)に樹脂を充填して積層方向に連結される積層鉄心の製造方法において、前記積層鉄心は、軸方向両端部に設けられている前記鉄心片(A)の樹脂孔(B)に、充填される樹脂によって形成される掛止部を設け、前記鉄心片(A)が軸方向両端部以外に設けられている前記鉄心片(U)から剥離するのを防止し、しかも、軸孔の周囲に複数の前記磁石挿入孔が設けられた回転子積層鉄心であって、前記磁石挿入孔への永久磁石の樹脂封止と、前記樹脂孔の樹脂封止は同時に行うことを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項11】
複数枚の鉄心片が積層され、該各鉄心片は積層鉄心を積層方向に貫通する複数の樹脂孔(磁石挿入孔を除く)に樹脂を充填して積層方向に連結される積層鉄心の製造方法において、前記積層鉄心は、軸方向両端部に設けられている前記鉄心片(A)の樹脂孔(B)に、充填される樹脂によって形成される掛止部を設け、前記鉄心片(A)が軸方向両端部以外に設けられている前記鉄心片(U)から剥離するのを防止し、前記鉄心片(A)に設けられた樹脂孔(B)は外側に開くテーパー孔となって、前記掛止部は前記テーパー孔に充填される樹脂によって形成され、しかも、軸孔の周囲に複数の前記磁石挿入孔が設けられた回転子積層鉄心であって、前記磁石挿入孔への永久磁石の樹脂封止と、前記樹脂孔の樹脂封止は同時に行うことを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項12】
複数枚の鉄心片が積層され、該各鉄心片は積層鉄心を積層方向に貫通する複数の樹脂孔(磁石挿入孔を除く)に樹脂を充填して積層方向に連結される積層鉄心の製造方法において、前記積層鉄心は、軸方向両端部に設けられている前記鉄心片(A)の樹脂孔(B)に、充填される樹脂によって形成される掛止部を設け、前記鉄心片(A)が軸方向両端部以外に設けられている前記鉄心片(U)から剥離するのを防止し、前記鉄心片(A)に設けられた樹脂孔(B)は、該樹脂孔(B)の外側に設けられ、前記鉄心片(U)の樹脂孔(H)より直径の大きい大径部及びその厚み方向内側にある小径部によって形成される段付き孔からなって、前記掛止部は該段付き孔に充填される樹脂によって形成され、しかも、軸孔の周囲に複数の前記磁石挿入孔が設けられた回転子積層鉄心であって、前記磁石挿入孔への永久磁石の樹脂封止と、前記樹脂孔の樹脂封止は同時に行うことを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項13】
複数枚の鉄心片が積層され、該各鉄心片は積層鉄心を積層方向に貫通する複数の樹脂孔(磁石挿入孔を除く)に樹脂を充填して積層方向に連結される積層鉄心の製造方法において、前記積層鉄心は、軸方向両端部に設けられている前記鉄心片(A)の樹脂孔(B)に、充填される樹脂によって形成される掛止部を設け、前記鉄心片(A)が軸方向両端部以外に設けられている前記鉄心片(U)から剥離するのを防止し、前記鉄心片(A)は1枚又は2枚以上の鉄心片から構成され、しかも、軸孔の周囲に複数の前記磁石挿入孔が設けられた回転子積層鉄心であって、前記磁石挿入孔への永久磁石の樹脂封止と、前記樹脂孔の樹脂封止は同時に行うことを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂孔(貫通孔)に充填された樹脂によって各鉄心片が連結された積層鉄心(回転子積層鉄心及び固定子積層鉄心を含む)及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層鉄心の製造方法として、例えば厚みが0.3mm以下の鉄心片を積層し、かしめ、溶接等で鉄心片を接合し、積層鉄心とすることが広く行われている。しかし、かしめや溶接によって鉄心片を接合すると、鉄心片が積層方向に導通することとなり、渦電流損が発生してモータ性能が低下してしまうという問題がある。
【0003】
この問題を解決するために、図13(A)、(B)に示すように、鉄心片90に設けた複数の貫通孔を積層方向に連通させた樹脂孔91に樹脂92をそれぞれ注入し、硬化させることで、鉄心片90を接合して積層鉄心93を製造する方法がある。樹脂92は絶縁体であるので、隣接する鉄心片90が導通することなく、渦電流損の発生を防止できる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2003−529309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の技術において、樹脂92として、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を使用する場合、樹脂孔91に樹脂92を注入した直後は、図14(A)に示すように、樹脂孔91内の全体に樹脂92が充填されており、十分な接合強度を有しているが、鉄心片90と樹脂92の熱膨張率が異なるので、冷却する過程で樹脂92の方がより収縮してしまう。
【0006】
その結果、図14(B)に示すように、積層方向端部の鉄心片90と樹脂92との接着面積(接合面積)が減少することとなり、接合強度が低下して端部の鉄心片90が剥離するという問題が発生する。
【0007】
これらの問題に対し、接合強度を上げるために樹脂孔を追加する、又は樹脂孔の径を大きくすることも考えられるが、樹脂孔が増えることで積層鉄心の磁気的特性が低下するという、新たな問題が発生してしまう。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、樹脂を主体として各鉄心片を連結接合する積層鉄心及びその製造方法において、軸方向端部に設けられている鉄心片の接合強度の増加を行った積層鉄心及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的に沿う第1の発明に係る積層鉄心の製造方法は、複数枚の鉄心片が積層され、該各鉄心片は積層鉄心を積層方向に貫通する複数の樹脂孔(磁石挿入孔を除く)に樹脂を充填して積層方向に連結される積層鉄心の製造方法において、前記積層鉄心は、軸方向両端部に設けられている前記鉄心片(A)と樹脂との接合面積を、軸方向両端部以外に配置されている前記鉄心片(U)と樹脂との接合面積より大きくし、前記鉄心片(A)の接合強度確保され、しかも、軸孔の周囲に複数の前記磁石挿入孔が設けられた回転子積層鉄心であって、前記磁石挿入孔への永久磁石の樹脂封止と、前記樹脂孔の樹脂封止は同時に行う
なお、ここで、前記鉄心片(A)は軸方向端部に配置される一枚の鉄心片の場合もあり、軸方向端部に配置されている複数枚の鉄心片の場合もある(以下、同じ)。
【0010】
第2の発明に係る積層鉄心の製造方法は、複数枚の鉄心片が積層され、該各鉄心片は積層鉄心を積層方向に貫通する複数の樹脂孔(磁石挿入孔を除く)に樹脂を充填して積層方向に連結される積層鉄心の製造方法において、前記積層鉄心は、軸方向両端部に設けられている前記鉄心片(A)と樹脂との接合面積を、軸方向両端部以外に配置されている前記鉄心片(U)と樹脂との接合面積より大きくして、前記鉄心片(A)の接合強度が確保され、前記鉄心片(A)の樹脂孔(B)の積層方向に平行な平面における断面積を前記鉄心片(U)の樹脂孔(H)の積層方向に平行な平面における断面積より大きくし、しかも、軸孔の周囲に複数の前記磁石挿入孔が設けられた回転子積層鉄心であって、前記磁石挿入孔への永久磁石の樹脂封止と、前記樹脂孔の樹脂封止は同時に行う
【0011】
第3の発明に係る積層鉄心の製造方法は、複数枚の鉄心片が積層され、該各鉄心片は積層鉄心を積層方向に貫通する複数の樹脂孔(磁石挿入孔を除く)に樹脂を充填して積層方向に連結される積層鉄心の製造方法において、前記積層鉄心は、軸方向両端部に設けられている前記鉄心片(A)と樹脂との接合面積を、軸方向両端部以外に配置されている前記鉄心片(U)と樹脂との接合面積より大きくして、前記鉄心片(A)の接合強度が確保され、前記鉄心片(A)の樹脂孔(B)の直径前記鉄心片(U)の樹脂孔(H)の直径より小さく、しかも、軸孔の周囲に複数の前記磁石挿入孔が設けられた回転子積層鉄心であって、前記磁石挿入孔への永久磁石の樹脂封止と、前記樹脂孔の樹脂封止は同時に行う
第4の発明に係る積層鉄心の製造方法は、複数枚の鉄心片が積層され、該各鉄心片は積層鉄心を積層方向に貫通する複数の樹脂孔(磁石挿入孔を除く)に樹脂を充填して積層方向に連結される積層鉄心の製造方法において、前記積層鉄心は、軸方向両端部に設けられている前記鉄心片(A)と樹脂との接合面積を、軸方向両端部以外に配置されている前記鉄心片(U)と樹脂との接合面積より大きくして、前記鉄心片(A)の接合強度が確保され、前記鉄心片(A)は1枚又は2枚以上の鉄心片から構成され、しかも、軸孔の周囲に複数の前記磁石挿入孔が設けられた回転子積層鉄心であって、前記磁石挿入孔への永久磁石の樹脂封止と、前記樹脂孔の樹脂封止は同時に行う
なお、明細書に記載した発明においては、樹脂孔が平面視して円形でない場合もある。この場合、平面視した樹脂孔の面積を測定し、同一面積を有する円の直径を樹脂孔の直径とする。
【0012】
の発明に係る積層鉄心の製造方法は、複数枚の鉄心片が積層され、該各鉄心片は積層鉄心を積層方向に貫通する複数の樹脂孔(磁石挿入孔を除く)に樹脂を充填して積層方向に連結される積層鉄心の製造方法において、前記積層鉄心は、軸方向両端部に設けられている前記鉄心片(A)の樹脂孔(B)に、充填される樹脂によって形成される掛止部を設け、前記鉄心片(A)が軸方向両端部以外に設けられている前記鉄心片(U)から剥離するのを防止し、しかも、軸孔の周囲に複数の前記磁石挿入孔が設けられた回転子積層鉄心であって、前記磁石挿入孔への永久磁石の樹脂封止と、前記樹脂孔の樹脂封止は同時に行う
【0013】
の発明に係る積層鉄心の製造方法は、複数枚の鉄心片が積層され、該各鉄心片は積層鉄心を積層方向に貫通する複数の樹脂孔(磁石挿入孔を除く)に樹脂を充填して積層方向に連結される積層鉄心の製造方法において、前記積層鉄心は、軸方向両端部に設けられている前記鉄心片(A)の樹脂孔(B)に、充填される樹脂によって形成される掛止部を設け、前記鉄心片(A)が軸方向両端部以外に設けられている前記鉄心片(U)から剥離するのを防止し、前記鉄心片(A)に設けられた樹脂孔(B)は外側に開くテーパー孔となって、前記掛止部は前記テーパー孔に充填される樹脂によって形成され、しかも、軸孔の周囲に複数の前記磁石挿入孔が設けられた回転子積層鉄心であって、前記磁石挿入孔への永久磁石の樹脂封止と、前記樹脂孔の樹脂封止は同時に行う
【0014】
の発明に係る積層鉄心の製造方法は、複数枚の鉄心片が積層され、該各鉄心片は積層鉄心を積層方向に貫通する複数の樹脂孔(磁石挿入孔を除く)に樹脂を充填して積層方向に連結される積層鉄心の製造方法において、前記積層鉄心は、軸方向両端部に設けられている前記鉄心片(A)の樹脂孔(B)に、充填される樹脂によって形成される掛止部を設け、前記鉄心片(A)が軸方向両端部以外に設けられている前記鉄心片(U)から剥離するのを防止し、前記鉄心片(A)に設けられた樹脂孔(B)は、該樹脂孔(B)の外側に設けられ、前記鉄心片(U)の樹脂孔(H)より直径の大きい大径部及びその厚み方向内側にある小径部によって形成される段付き孔からなって、前記掛止部は該段付き孔に充填される樹脂によって形成され、しかも、軸孔の周囲に複数の前記磁石挿入孔が設けられた回転子積層鉄心であって、前記磁石挿入孔への永久磁石の樹脂封止と、前記樹脂孔の樹脂封止は同時に行う
【0015】
の発明に係る積層鉄心の製造方法は、複数枚の鉄心片が積層され、該各鉄心片は積層鉄心を積層方向に貫通する複数の樹脂孔(磁石挿入孔を除く)に樹脂を充填して積層方向に連結される積層鉄心の製造方法において、前記積層鉄心は、軸方向両端部に設けられている前記鉄心片(A)の樹脂孔(B)に、充填される樹脂によって形成される掛止部を設け、前記鉄心片(A)が軸方向両端部以外に設けられている前記鉄心片(U)から剥離するのを防止し、前記鉄心片(A)は1枚又は2枚以上の鉄心片から構成され、しかも、軸孔の周囲に複数の前記磁石挿入孔が設けられた回転子積層鉄心であって、前記磁石挿入孔への永久磁石の樹脂封止と、前記樹脂孔の樹脂封止は同時に行う
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
の発明に係る積層鉄心は、複数枚の鉄心片が積層された単位積層鉄心を転積して、該転積した単位積層鉄心を接合した積層鉄心において、
前記単位積層鉄心は、複数の(例えば、一定半径位置に等角度で形成される)樹脂孔を有し、軸心方向に連通する前記樹脂孔に充填される樹脂によって前記単位積層鉄心が連結され、
前記各単位積層鉄心を連結する前記樹脂孔の軸心は同一直線上にあって、かつ前記単位積層鉄心の軸方向一端部又は両端部の鉄心片に形成されている前記樹脂孔の直径は、他の前記鉄心片の樹脂孔の直径より大きくなっている。
【0022】
【0023】
【0024】
10の発明に係る積層鉄心は、複数枚の鉄心片が積層された単位積層鉄心を転積して、該転積した単位積層鉄心を接合した積層鉄心において、
前記単位積層鉄心は、複数の樹脂孔を有し、軸心方向に連通する前記樹脂孔に充填される樹脂によって前記単位積層鉄心が連結され、
前記各単位積層鉄心の樹脂孔の中心は異なり、即ち軸心は僅少の範囲でずれて、かつ前記単位積層鉄心の軸方向一端部又は両端部の鉄心片に形成されている前記樹脂孔の直径は、他の前記鉄心片の樹脂孔の直径より大きくなっている。
11の発明に係る積層鉄心は、第、第10の発明に係る積層鉄心において、前記単位積層鉄心は、かしめによって前記各鉄心片が接合されている。
12の発明に係る積層鉄心は、第〜第11の発明に係る積層鉄心において、前記積層鉄心は固定子積層鉄心である。
【0025】
【0026】
【0027】
13の発明に係る積層鉄心の製造方法は、第〜第11の発明に係る積層鉄心の製造方法であって、前記単位積層鉄心を個別に製造し、複数の前記単位積層鉄心を転積した状態で、樹脂注入型と受け型との間に配置し、前記樹脂注入型に設けられた樹脂ポットから前記樹脂孔に樹脂を注入する。
【0028】
【発明の効果】
【0029】
第1〜第4の発明に係る積層鉄心の製造方法は、軸方向両端部に設けられている鉄心片(A)と樹脂との接合面積を、軸方向端部以外に配置されている鉄心片(U)と樹脂との接合面積より大きくしているので、端部に設けられている鉄心片(A)の接合強度を確保し、剥離を防止できる。
【0030】
第2の発明に係る積層鉄心の製造方法は、鉄心片(A)の樹脂孔(B)の断面積を鉄心片(U)の樹脂孔(H)の断面積より大きくしたので、樹脂が鉄心片(A)に接する面積が増加して、鉄心片(A)の接合強度が確実に増加する。
【0031】
第3の発明に係る積層鉄心の製造方法は、鉄心片(A)の樹脂孔(B)の直径を鉄心片(U)の樹脂孔(H)の直径より小さくしたので、最端部の鉄心片(U)から突出する樹脂は、鉄心片(A)の片面に接しており、結果として、特定の条件で、樹脂の接合面積が増加し接合強度が向上する。
【0032】
〜第8の発明に係る積層鉄心の製造方法は、軸方向両端部に設けられている鉄心片(A)の樹脂孔(B)に、充填される樹脂によって形成される掛止部を設けているので、鉄心片(A)が軸方向端部以外に設けられている鉄心片(U)から剥離するのを防止できる。
【0033】
の発明に係る積層鉄心の製造方法は、鉄心片(A)に設けられた樹脂孔(B)が外側に開くテーパー孔となっているので、掛止部はテーパー孔に充填される樹脂によって形成され、樹脂を鉄心片(A)から突出させない状態で鉄心片(A)の剥離防止ができる。
【0034】
の発明に係る積層鉄心の製造方法は、鉄心片(A)に設けられた樹脂孔(B)が、樹脂孔(B)の外側に設けられ、鉄心片(U)の樹脂孔(H)より直径の大きい大径部及びその厚み方向内側にある小径部によって形成される段付き孔からなって、掛止部は段付き孔に充填される樹脂によって形成されるので、樹脂を鉄心片(A)から突出させない状態で掛止部を形成でき、鉄心片(A)の剥離防止ができる。
【0035】
ここで、鉄心片(A)が軸方向両端部に、その内側に鉄心片(U)が積層されて、それぞれの鉄心片(A)と鉄心片(U)の樹脂孔が軸方向に連通する積層鉄心を、対向配置された樹脂注入型及び受け型で押圧挟持し、樹脂注入型に設けられている樹脂ポットから樹脂孔に樹脂を充填する場合は、樹脂孔の周囲が密閉され、樹脂充填が確実に行える。
【0036】
また、樹脂注入型が樹脂孔に接する部分に、樹脂孔に連続する空間部を設け、積層鉄心の少なくとも軸方向一端部に形成される鉄心片(A)の樹脂不足分を空間部に充填される樹脂で補う場合は、鉄心片(A)の樹脂孔(B)に樹脂が不足なく充填され、鉄心片(A)と樹脂の接合面積も増える。
【0037】
間部の直径が鉄心片(A)の樹脂孔(B)の直径より大きく、積層鉄心の樹脂孔を充填する樹脂の端部に掛止部を形成する場合は、確実に掛止部で鉄心片(A)がロックされ、剥がれ落ちない。
【0038】
心片(A)の樹脂孔(B)の直径が、鉄心片(U)の樹脂孔(H)の直径より小さい場合は、樹脂の使用量を減らして樹脂ロックができる。
【0039】
心片(A)の軸方向外側に掛止部が設けられている場合は、鉄心片(A)の脱落を防止できる。
【0040】
鉄心片が、樹脂孔に充填された樹脂で連結されている他、かしめ部によっても連結されている場合は、多少の渦電流損は発生するが、鉄心片の固定が更に安定する。
【0041】
〜第11の発明に係る積層鉄心は、複数枚の鉄心片が積層された単位積層鉄心を転積して、転積した単位積層鉄心を接合した積層鉄心において、単位積層鉄心は、一定半径位置に等角度で形成される複数の樹脂孔を有し、軸心方向に連通する樹脂孔に充填される樹脂によって単位積層鉄心が連結されているので、単位積層鉄心の間の渦電流を防止できる。
【0042】
11の発明に係る積層鉄心は、単位積層鉄心は、かしめによって各鉄心片が接合されているので、単位積層鉄心の結合はより強固になる。なお、本発明においては、単位積層鉄心の接合は樹脂孔を挿通する樹脂によって行ってもよいし、溶接、接着剤による接合もあり得る。
【0043】
の発明に係る積層鉄心は、各単位積層鉄心を連結する樹脂孔の軸心が同一直線上にあって、かつ単位積層鉄心の軸方向一端部又は両端部の鉄心片に形成されている樹脂孔の直径は、他の鉄心片の樹脂孔の直径より大きくなっているので、樹脂による単位積層鉄心の結合力が高まる。
【0044】
10の発明に係る積層鉄心は、積層方向に隣り合う単位積層鉄心の樹脂孔の位置がずれているので、ずれた位置での樹脂が隣り合う単位積層鉄心の掛止部となり、単位積層鉄心の接合強度を高める。また、単位積層鉄心の軸方向一端部又は両端部の鉄心片に形成されている樹脂孔の直径が、他の鉄心片の樹脂孔の直径より大きいので、拡径した部分の樹脂が掛止部となり、単位積層鉄心の結合力が高まる。
【0045】
ここで、積層鉄心が分割積層鉄心である場合は、分割積層鉄心を環状に並べた積層鉄心においても渦電流損を減少できる。
【0046】
1〜第8の発明に係る積層鉄心の製造方法は、積層鉄心が軸孔の周囲に複数の磁石挿入孔が設けられた回転子積層鉄心であるので、渦電流損の少ない回転子積層鉄心を製造できる。
【0047】
13の発明に係る積層鉄心の製造方法は、単位積層鉄心を個別に製造し、複数の単位積層鉄心を転積した状態で、樹脂注入型と受け型との間に配置し、樹脂注入型に設けられた樹脂ポットから樹脂孔に樹脂を注入するので、樹脂孔の周囲の隙間を無くして樹脂孔を樹脂封止できる。
【0048】
そして、第1〜第8の発明に係る積層鉄心の製造方法は、磁石挿入孔への永久磁石の樹脂封止と、樹脂孔の樹脂封止を同時に行うので、生産効率が向上する。この場合、樹脂を供給する樹脂ポットと磁石挿入孔及び樹脂孔はランナーで結合してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】(A)は本発明の第1の実施の形態に係る積層鉄心の部分断面図、(B)は同変形例に係る積層鉄心の部分断面図である。
図2】同第1の実施の形態に係る積層鉄心の斜視図である。
図3】本発明の第2の実施の形態に係る積層鉄心の部分断面図である。
図4】(A)は本発明の第3の実施の形態に係る積層鉄心の部分断面図、(B)は同変形例に係る積層鉄心の部分断面図、(C)は本発明の第4の実施の形態に係る積層鉄心の部分断面図である。
図5】本発明の第5の実施の形態に係る積層鉄心の部分断面図である。
図6】(A)は本発明の第6の実施の形態に係る積層鉄心の部分断面図、(B)は本発明の第7の実施の形態に係る積層鉄心の部分断面図である。
図7】(A)は本発明の第8の実施の形態に係る積層鉄心の断面図、(B)は同斜視図である。
図8】本発明の第9の実施の形態に係る積層鉄心の部分断面図である。
図9】(A)は本発明の第10の実施の形態に係る積層鉄心の部分断面図、(B)は本発明の第11の実施の形態に係る積層鉄心の部分断面図である。
図10】(A)は本発明の第12の実施の形態に係る積層鉄心の斜視図、(B)は同平面図である。
図11】本発明の第13の実施の形態に係る積層鉄心の部分斜視図である。
図12】本発明の第14の実施の形態に係る積層鉄心の斜視図である。
図13】(A)は従来例に係る積層鉄心の斜視図、(B)は同断面図である。
図14】(A)、(B)はそれぞれ従来例に係る樹脂を用いた積層鉄心の連結状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
続いて、添付した図面を参照し、本発明を具体化した実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、積層鉄心の一方側(具体的には上端)の鉄心片について説明しているが、他方側(具体的に下端)の鉄心片についても同一構造となっていてもよい。
また、以下の実施の形態においては、主として固定子積層鉄心について説明しているが、回転子積層鉄心についても適用される。
【0051】
更に、以下の実施の形態を含む本発明においては、軸方向端部にある鉄心片を鉄心片(A)とし、それ以外の鉄心片を鉄心片(U)としており、単に「鉄心片」と称する場合は、鉄心片(A)と鉄心片(U)を含む場合、又は一般的に鉄心片を総称する場合をいう。
なお、本発明において、積層鉄心は鉄心片が単に積層されている場合、かしめによって接合されている場合、樹脂孔を挿通する樹脂によって接合されている場合を含む。
また、単に「樹脂孔」と称する場合は、鉄心片の樹脂孔をいう場合と、複数の鉄心片を積層した積層鉄心の連通孔をいう場合がある。
【0052】
図1(A)、図2に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る積層鉄心10は、環状のヨーク片部11とその内側に形成された複数の磁極片部12をそれぞれ有する鉄心片(A)13と、外形が鉄心片(A)13と同一形状の鉄心片(U)14とを積層して形成される。ここで、鉄心片(A)13は積層鉄心10の軸方向両端部に設けられ、鉄心片(U)14は複数枚あって、積層方向端部に配置される鉄心片(A)13の間(軸方向内側)に配置されている。なお、鉄心片(A)は一枚であるのが好ましいが、鉄心片(A)が2枚以上重なっている場合もある。
【0053】
鉄心片(U)14のヨーク片部11には、円周方向に沿って複数(以下の実施の形態においても同じ)の樹脂孔(H)15が形成され、鉄心片(A)13のヨーク片部11には、樹脂孔(H)15に軸心を合わせて樹脂孔(B)16が形成されている。樹脂孔(B)16の直径d1は、樹脂孔(H)15の直径d2より大きくなっている。即ち、樹脂孔(B)16の断面積は、樹脂孔(H)15の断面積より大きい。ここで、鉄心片(A)13の樹脂孔(B)16に樹脂が接する面積は、樹脂孔(B)16に残った樹脂の高さをh1とすると、接触面積(接合面積)S1=πd1×h1となり、鉄心片(U)14の樹脂孔(H)15に接する樹脂の面積(接合面積)S2=πd2×t(tは鉄心片の厚み)となり、d1を大きくすると、S1>S2とすることができる。これによって、鉄心片(A)13の積層鉄心本体21への接合をより強固にできる。更に、鉄心片(A)13内の樹脂はπ(d12 −d22 )/4の面積だけ鉄心片(U)14の上面に接していると共に、樹脂孔(B)16内の樹脂がストッパーとして機能する。
【0054】
これらの鉄心片(A)13、鉄心片(U)14は、金型によって打ち抜き形成された後、図示しない搬送トレイ上で位置決めして積層され、対向配置された樹脂注入型と樹脂受け型との間に配置され、押圧挟持されて、樹脂注入型に設けられている樹脂ポットより吐出する樹脂によって、積層鉄心10を積層方向に貫通する複数の樹脂孔18が樹脂封止される。これによって、鉄心片(A)13と鉄心片(U)14は積層方向に連通される(他の実施の形態においてもこの作業は同じ)。
【0055】
図1(A)に示すように、樹脂は鉄心片(A)13の外表面の位置まで充填されるが、液体から固体になる過程、及び固体になった後の収縮によって、鉄心片(A)13の外表面側に空間部19が形成される。20は収縮樹脂を示すが、S1>S2の必要があるので、直径d1が所定値以上に大きい必要がある。
【0056】
図1(B)に示すように、鉄心片(A)13を複数枚(この実施の形態では2枚)の鉄心片(A)13a、13bとすることもできる。この場合、鉄心片(A)13a、13bの樹脂孔(B)16の拡径部分で鉄心片(A)13a、13bがより強固に鉄心片(U)14に、大径の収縮樹脂(凝固樹脂)20を介して接合している。
【0057】
次に、図3を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る積層鉄心22について説明する。この積層鉄心22においては、軸方向端部にある鉄心片(A)23の樹脂孔(B)24の直径をd、樹脂の付着高さをhとし、その内側にある鉄心片(U)14の樹脂孔(H)15の直径を(d+c)、厚みをtとすると、樹脂が鉄心片(A)23に付着している接合面積S3は、「π(2dc+c2 )/4+πdh」となり、樹脂が樹脂孔(H)15に付着している接合面積S4は、πt(d+c)となるので、S3>S4の場合に、鉄心片(A)23の付着強度が増大し、鉄心片(A)23が鉄心片本体21から外れにくい。この積層鉄心22においては、樹脂の使用量が比較的少ないという利点がある。
【0058】
図4(A)を参照して、本発明の第3の実施の形態に係る積層鉄心25について説明する。積層鉄心25は、複数枚の鉄心片、即ち、鉄心片(A)27と鉄心片(U)14が積層され、各鉄心片は積層鉄心25を積層方向に貫通する複数の樹脂孔28に樹脂を充填して積層方向に連結される。
鉄心片(A)27の樹脂孔(B)29は外側に開くテーパー孔となって、充填される樹脂によって掛止部30が形成され、鉄心片(A)27が軸方向端部以外に設けられている鉄心片(U)14、即ち積層鉄心本体21から剥離するのを防止した。
【0059】
図4(B)には、第3の実施の形態に係る積層鉄心25の変形例を示すが、鉄心片(A)27が複数枚(この実施の形態では2枚)の鉄心片(A)27a、27bにより構成されている。これによってより大型の掛止部30aが形成され、鉄心片(A)27a、27bを鉄心片(U)14に接合できる。
【0060】
図4(C)には、本発明の第4の実施の形態に係る積層鉄心31を示すが、鉄心片(A)32に設けられた樹脂孔(B)33は、樹脂孔(B)33の軸方向外側に設けられ、鉄心片(U)14の樹脂孔(H)15より直径の大きい大径部34及びその厚み方向内側にある小径部35によって形成される段付き孔36からなって、掛止部37は段付き孔36に充填される樹脂によって形成される。これによって、鉄心片(A)32が積層鉄心本体21から分離するのを防止している。なお、この実施の形態では小径部35の直径が樹脂孔(H)15の直径と同一となっている。
【0061】
図5に本発明の第5の実施の形態に係る積層鉄心38を示すが、樹脂孔(B)40に充填される樹脂が、軸方向端部にある鉄心片(A)39の外側端面まで延在している。これによって、鉄心片(A)39も、その他の鉄心片(U)14と同一条件で樹脂に接することになり、鉄心片(A)39の樹脂に対する接合強度を確保でき、積層鉄心本体21から剥がれにくくなる。
【0062】
この積層鉄心38の製造方法は、樹脂注入型が樹脂孔(B)40に接する部分に、樹脂孔(B)40に連続する空間部41を設け、積層鉄心38の少なくとも軸方向一端部に形成される鉄心片(A)39の樹脂不足分を空間部41に充填される樹脂で補い、鉄心片(A)39の樹脂孔(B)40に樹脂が不足なく充填される。
この場合の空間部41の平断面積は鉄心片(U)14に形成されている樹脂孔(H)15と同一の断面積となって、その高さは積層鉄心38の樹脂孔42に充填される樹脂の縮み量と一致又は僅少の範囲で大きくする。
【0063】
図6(A)に本発明の第6の実施の形態に係る積層鉄心43を示すが、第5の実施の形態に係る積層鉄心38において、更に空間部41の直径を樹脂孔(B)40の直径より大きくした空間部44を使用している。製造方法は、積層鉄心38と同様である。
この空間部44に充填された樹脂(樹脂孔42を充填する樹脂の軸方向外側端部)が掛止部45となって、鉄心片(A)39が積層鉄心本体21から剥がれるのを防止している。
【0064】
図6(B)には、本発明の第7の実施の形態に係る積層鉄心47を示すが、積層鉄心47の両側端部にある鉄心片(A)48の樹脂孔(B)49の直径が、他の鉄心片(U)14の樹脂孔(H)15の直径より小さくなって、挿通する樹脂孔50の一部に括れを形成している。これによって、樹脂の軸方向外側端部が掛止部51を形成し、鉄心片(A)48の剥離を防止している。
【0065】
図7(A)、(B)には、本発明の第8の実施の形態に係る積層鉄心52を示すが、この積層鉄心52は、図示しないかしめ部を介して鉄心片がかしめ積層された単位積層鉄心53を45度、90度又は180度転積を行って、各単位積層鉄心53の樹脂孔54の位置を合わせて、樹脂注入型と受け型との間に位置決めして配置し、樹脂注入型に設けられた樹脂ポットから積層方向に連通する樹脂孔54に樹脂を流して、複数の単位積層鉄心53を一つにしている。これによって、各単位積層鉄心53を絶縁して渦電流損の発生を防止している。樹脂孔54は円周方向に等角度(360/n、nは整数)、かつ同一半径位置に形成されている。なお、単位積層鉄心53はそれぞれ独立に製造されている。
【0066】
各単位積層鉄心53において、最下部の鉄心片55はかしめ突起は有せず、代わりに直上部の鉄心片のかしめ突起が嵌入するかしめ孔を有している。各樹脂孔54は環状のヨーク部56に円周方向に沿って均等角度で設けられ、ヨーク部56の内側には磁極部57が設けられている。
この実施の形態においては、単位積層鉄心53はかしめ積層されているが、他の手段、樹脂孔、接着剤、溶接などによって各鉄心片を接合することもできる。
【0067】
図8は単位積層鉄心58を複数組接合した本発明の第9の実施の形態に係る積層鉄心58aを示す。各単位積層鉄心58の形状は同一であり、単位積層鉄心58の樹脂孔59の軸心は同一直線上にある。即ち、積層方向上下に貫通する樹脂孔59は同一軸心上にある。ところが、単位積層鉄心58の積層方向両端部に位置する鉄心片58b、58cの樹脂孔58d、58eの直径は、他の鉄心片58fの樹脂孔58gの直径より大きくなっている。これによって、樹脂孔58d、58eの樹脂の接合面積が増加するので、単位積層鉄心58間の接合力が増加する。
【0068】
図9(A)は本発明の第10の実施の形態に係る積層鉄心61を示すが、この積層鉄心61は複数の単位積層鉄心62を用意し、それぞれの単位積層鉄心62に設けられた樹脂孔62aが複数の単位積層鉄心62を連通している。そして、各単位積層鉄心62は転積され、しかも単位積層鉄心62の両側端部に設けられている鉄心片63、64の樹脂孔65、66の径は他の鉄心片67の樹脂孔68の径より大きくなっている。これによって、樹脂孔65、66に充填される樹脂によって掛止部が形成されると共に、樹脂と鉄心片63、64との接合面積が増加し、積層方向に隣り合う単位積層鉄心62の結合力が強くなる。
【0069】
図9(B)は、本発明の第11の実施の形態に係る積層鉄心69を示すが、単位積層鉄心70を複数個、転積しながら積み重ねている。単位積層鉄心70は樹脂孔71に充填された樹脂によって連結される。この場合、積層方向に接する単位積層鉄心70の樹脂孔71の軸心は少しの範囲(例えば、直径の0.1〜0.3倍)でずれており、更に各単位積層鉄心70の片側端部の鉄心片72の樹脂孔73の径は、他の鉄心片74の樹脂孔74aの径より大きくなっている。
これによって、鉄心片72の拡径した樹脂孔73に充填される樹脂によって、掛止部が形成され、積層方向に隣り合う単位積層鉄心70の結合力が大きくなる。
【0070】
図10(A)は本発明の第12の実施の形態に係る積層鉄心の一例である分割積層鉄心75を示すが、複数の分割積層鉄心75によって図10(B)に示すように環状の積層鉄心76が形成される。この分割積層鉄心75においても、樹脂孔77を有し、樹脂によって連結され、渦電流の発生を防止している。なお、各分割積層鉄心75の鉄心片を積層方向に連結する機構又は方法として、以上に説明した第1〜第7の発明に係る積層鉄心に適用した技術が使用できる(以下の実施の形態においても同様)。
【0071】
図11は本発明の第13の実施の形態に係る積層鉄心78を示す。この積層鉄心78においては、軸方向端部に配置される鉄心片(A)79の樹脂孔(B)80が平面視して、非円形(具体的には矩形、多角形、楕円)となっている。そして樹脂孔(B)80の軸心と他の鉄心片(U)81の樹脂孔(H)82の軸心とは一致し、樹脂孔(B)80の断面積が樹脂孔(H)82の断面積より大きくなっている。従って、積層鉄心78を積層方向に貫通した樹脂孔81aに樹脂を充填すると、表面側の樹脂孔(B)80に充填された樹脂が掛止部となって、ストッパーの役目を果たす。
【0072】
図12は、本発明の第14の実施の形態に係る積層鉄心(回転子積層鉄心)83を示すが、中央に軸孔84を、周囲に複数の磁石挿入孔85を有している。積層鉄心83を形成する各鉄心片には樹脂孔が設けられ、これによって、積層鉄心83を積層方向に貫通する樹脂孔86を形成している。樹脂孔86及び磁石挿入孔85には樹脂が充填され、この樹脂によって、各鉄心片が連結されている。
【0073】
この磁石挿入孔85及び樹脂孔86の樹脂の充填は、磁石挿入孔85に永久磁石が挿入された積層鉄心83を樹脂挿入型と受け型の間に配置し、樹脂挿入型と受け型で積層鉄心を押圧挟持し、樹脂注入型に設けられている樹脂ポット(樹脂溜めポット)から樹脂を磁石挿入孔85及び樹脂孔86に同時に注入して行う。なお、積層鉄心83は搬送トレイに搭載された状態で、樹脂挿入型と受け型の間に配置され、かつ封止した樹脂の剥離が容易にできるダミー板(カルプレート)を配置することもできる。
【0074】
本発明は前記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で形状変更、数字変更は可能である。また、本発明の第1〜第14の発明に係る実施の形態を組み合わせて積層鉄心の軸方向の両端部に鉄心片の接合強度を増加する機構をそれぞれ形成する場合も本発明は適用される。
【符号の説明】
【0075】
10:積層鉄心、11:ヨーク片部、12:磁極片部、13、13a、13b:鉄心片(A)、14:鉄心片(U)、15:樹脂孔(H)、16:樹脂孔(B)、18:樹脂孔、19:空間部、20:収縮樹脂、21:積層鉄心本体、22:積層鉄心、23:鉄心片(A)、24:樹脂孔(B)、25:積層鉄心、27、27a、27b:鉄心片(A)、28:樹脂孔、29:樹脂孔(B)、30、30a:掛止部、31:積層鉄心、32:鉄心片(A)、33:樹脂孔(B)、34:大径部、35:小径部、36:段付き孔、37:掛止部、38:積層鉄心、39:鉄心片(A)、40:樹脂孔(B)、41:空間部、42:樹脂孔、43:積層鉄心、44:空間部、45:掛止部、47:積層鉄心、48:鉄心片(A)、49:樹脂孔(B)、50:樹脂孔、51:掛止部、52:積層鉄心、53:単位積層鉄心、54:樹脂孔、55:鉄心片、56:ヨーク部、57:磁極部、58:単位積層鉄心、58a:積層鉄心、58b、58c:鉄心片、58d、58e:樹脂孔、58f:鉄心片、58g:樹脂孔、59:樹脂孔、61:積層鉄心、62:単位積層鉄心、62a:樹脂孔、63、64:鉄心片、65、66:樹脂孔、67:鉄心片、68:樹脂孔、69:積層鉄心、70:単位積層鉄心、71:樹脂孔、72:鉄心片、73:樹脂孔、74:鉄心片、74a:樹脂孔、75:分割積層鉄心、76:積層鉄心、77:樹脂孔、78:積層鉄心、79:鉄心片(A)、80:樹脂孔(B)、81:鉄心片(U)、81a:樹脂孔、82:樹脂孔(H)、83:積層鉄心、84:軸孔、85:磁石挿入孔、86:樹脂孔
図1
図2
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図7
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図9
図10
図11
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図13
図14