(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記走行制御部は、前記距離判定部により前記新たに検出された物体が前記基準線から予め設定された距離よりも離れていると判定された場合、前記同位相のステアリング操作により、前記基準線に対する前記車体の平行状態を維持しつつ、前記新たに検出された物体を迂回する請求項1に記載の自動走行車両。
前記走行制御部は、前記距離判定部により前記新たに検出された物体が前記基準線から予め設定された距離以下の位置にあると判定された場合、前記第1車輪のみのステアリング操作と、前記第2車輪のみのステアリング操作と、前記逆位相のステアリング操作とのうちのいずれか1つのステアリング操作により、前記基準線に対して前記車体の平行状態を維持せずに、前記新たに検出された物体を迂回する請求項1又は2に記載の自動走行車両。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術では、予定走行路に沿って、予め光反射手段を設置しておく必要がある。また、特許文献2に記載の技術では、複数の反射板を予め設置しておき、当該設置位置を登録しておかなければならない。このため、特許文献1及び2に記載の技術では、移動体は予め光反射手段や反射板が設置されている場所でしか自動で走行することができない。
【0007】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、予め光反射手段や反射板が設置されていない場所であっても、自動で走行可能な自動走行車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る自動走行車両の特徴構成は、
自動走行を行う自動走行車両であって、予め設定された
検出範囲に向けて検出信号を送信し、前記検出信号に対する反射信号を取得して、前記予め設定された
検出範囲に存在する物体を検出する物体検出部と、前記物体検出部により検出された物体のうち、少なくとも2つの物体の位置に基づいて、当該少なくとも2つの物体を目標物として設定する目標物設定部と、前記目標物設定部により設定された少なくとも2つの目標物を通り、走行時の基準となる基準線を設定する基準線設定部と、前記基準線から車体までの距離を演算する距離演算部と、
前記自動走行前に、ラジコン操作によるティーチング走行により与えられたティーチング内容に基づいて、前記距離を予め設定された範囲内に維持しつつ、予め設定された区画内において前記基準線に沿って走行させる走行制御部と、前記物体検出部により新たに検出された物体が前記基準線から予め設定された距離より離れているか否かを判定する距離判定部と、
草刈りに使用する刈り刃を有する草刈装置と、を備え、前記走行制御部は、前記距離判定部の判定結果に基づいて、前記車体の車長方向の一端側の第1車輪、及び前記車長方向の他端側の第2車輪を同方向にステアリング操作する同位相のステアリング操作、又は前記第1車輪のみのステアリング操作と、前記第2車輪のみのステアリング操作と、前記第1車輪及び前記第2車輪の双方を逆方向にステアリング操作する逆位相のステアリング操作とのうちのいずれか1つのステアリング操作に切り替えて走行させると好適である。
【0009】
このような特徴構成とすれば、物体検出部が物体を検出し、その検出結果に基づき目標物設定部が目標物を設定することができるので、自動走行車両を走行させる区画において、予め光反射手段や反射板等を設置しておかなくても自動走行することが可能となる。また、物体検出部により新たに検出された物体が次の目標物であるか、或いは回避走行すべき障害物であるかを距離判定部が判定することができ、その判定結果に基づきその後の走行に係るステアリング操作を決定することができる。したがって、自動走行車両を蛇行させることなく、スムーズに走行させることが可能となる。
【0010】
また、前記走行制御部は、前記距離判定部により前記新たに検出された物体が前記基準線から予め設定された距離よりも離れていると判定された場合、前記同位相のステアリング操作により、前記基準線に対する前記車体の平行状態を維持しつつ、前記新たに検出された物体を迂回すると好適である。
【0011】
このような構成とすれば、基準線から予め設定された距離よりも離れている新たに検出された物体を迂回する際に、自動走行車両の車体を基準線に対して平行状態に維持できるので、迂回後、速やかに基準線に沿って走行することができる。したがって、障害物があった場合でも、自動走行車両をスムーズな動きで自動走行させることが可能となる。
【0012】
また、前記走行制御部は、前記距離判定部により前記新たに検出された物体が前記基準線から予め設定された距離以下の位置にあると判定された場合、前記第1車輪のみのステアリング操作と、前記第2車輪のみのステアリング操作と、前記逆位相のステアリング操作とのうちのいずれか1つのステアリング操作により、前記基準線に対して前記車体の平行状態を維持せずに、前記新たに検出された物体を迂回すると好適である。
【0013】
このような構成とすれば、基準線から予め設定された距離以下の位置にある物体を次の目標物として設定し、当該目標物に基づき設定された新たな基準線に沿って走行する際に、自動走行車両の車体を新たな基準線に対して迅速に平行にすることができるので、速やかに基準線に沿って走行することができる。したがって、目標物が直線状に並んでいない場合であっても、自動走行車両をスムーズな動きで自動走行させることが可能となる。
【0014】
また、前記基準線設定部により新たに設定された基準線が現在の基準線に対して平行に設定されているか否かを判定する基準線判定部を備え、前記走行制御部は、前記基準線設定部により新たに設定された基準線が現在の基準線に対して平行に設定された場合には、前記同位相のステアリング操作で前記基準線に対する前記車体の位置を調整しながら走行させ、前記基準線設定部により新たに設定された基準線が現在の基準線に対して非平行に設定された場合には、前記第1車輪のみのステアリング操作と、前記第2車輪のみのステアリング操作と、前記逆位相のステアリング操作とのうちのいずれか1つのステアリング操作で前記基準線に対する前記車体の位置を調整しながら走行させると好適である。
【0015】
このような構成とすれば、現在の基準線と新たに設定された基準線との位置関係に応じてステアリング操作を決定することができるので、夫々の基準線が互いに平行であれば、夫々の基準線に対して車体を平行に維持することができる。一方、夫々の基準線が互いに非平行であれば、新たな基準線に対して車体を速やかに平行にすることができる。したがって、自動走行車両をスムーズな動きで自動走行させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る自動走行車両は、予め設定された区画内において目標物を設定し、当該目標物に基づいて自動で走行可能に構成される。以下、本実施形態の自動走行車両1について説明する。本実施形態では、自動走行車両1は、
図1に示されるような果樹園Pに植えられている複数の樹木Kの間に生えている草を刈り取りながら自動走行するよう構成されている。この際、自動走行車両1は、果樹園Pの中央部では
図1において一点鎖線Aで示されるように樹木Kに沿って走行し、果樹園Pの進行方向の両端部では破線Bで示されるように前後進を繰り返して、自動走行車両1の位置を側方にずらすようにスイッチバックを行う。したがって、自動走行車両1は、果樹園Pの一方の端部から他方の端部に向って走行する場合と、果樹園Pの他方の端部から一方の端部に向って走行する場合とで進行方向を向く側が異なることになる。
【0018】
図2には本実施形態の自動走行車両1の側面図が示される。
図2に示されるように、自動走行車両1は、車輪2と走行機体3とを備えて構成される。車輪2は、車体の車長方向の一端側の第1車輪2A、及び車長方向の他端側の第2車輪2Bから構成される。走行機体3には、自動走行車両1の動力源であるエンジン4、エンジン4に供給する燃料が備蓄されている燃料タンク5、エンジン4により駆動される発電機6、発電機6により発電された電力を蓄電し、自動走行車両1が有する電気機器に電力供給するバッテリ7、自動走行車両1の自動走行を制御する自動走行制御装置10、バッテリ7から供給される電力に基づき第1車輪2Aの操向操作を行う第1車輪操向操作機構51、バッテリ7から供給される電力に基づき第2車輪2Bの操向操作を行う第2車輪操向操作機構52、エンジン4の回転力が入力され、草刈りに使用する刈り刃54を有する草刈装置53、第1車輪2A及び第2車輪2Bの少なくとも一方と草刈装置53とへのエンジン4の回転力の断接を行う動力伝達機構55を備えている。
【0019】
図3には、自動走行車両1の自動走行に係る機能部を示すブロック図が示される。自動走行車両1は、自動走行制御装置10、第1車輪操向操作機構51、第2車輪操向操作機構52、動力伝達機構55の各機能部を備えて構成される。自動走行制御装置10は、物体検出部11、目標物設定部12、基準線設定部13、距離演算部14、走行範囲設定部15、走行制御部16、物体数設定部17、物体計数部18、判定部19、迂回走行経路設定部20、距離判定部21、基準線判定部22の各機能部を備えて構成され、各機能部は、自動走行車両1の自動走行に係る種々の処理を行うためにCPUを中核部材としてハードウェア又はソフトウェア或いはその両方で構築されている。
【0020】
物体検出部11は、予め設定された範囲に向けて検出信号を送信し、当該検出信号に対する反射信号を取得して、当該予め設定された範囲に存在する物体を検出する。予め設定された範囲とは物体検出部11の検出可能な範囲であり、本実施形態では
図4に示されるような自動走行車両1を中心とする約270度の範囲Rである。検出信号とはレーザーや光や超音波等のように空中伝搬する信号である。このような検出信号は、物体に衝突すると反射される。物体検出部11は、検出信号を予め設定された範囲に送信し、衝突によって生じる反射信号を取得する。物体検出部11は、検出信号の送信方向に基づいて物体検出部11を基準とした物体が存在する方向を示す情報と、検出信号を送信してから反射信号を取得するまでの時間に基づいて演算した物体検出部11から物体までの距離を示す情報とを取得する。本実施形態では、物体検出部11は水平方向に、且つ、上述した範囲Rに対して例えば0.5度ピッチで検出信号を送信する。
【0021】
上述したように本実施形態では、物体検出部11が検出する範囲Rは自動走行車両1を中心とした全周囲のうち約270度の範囲である。そこで、自動走行車両1は
図4に示されるように、自動走行車両1が紙面上側の方向に向って走行する場合には進行方向を見て左側を検出し、自動走行車両1が紙面下側の方向に向って走行する場合には進行方向を見て右側を検出するよう構成されている。このように物体検出部11は、自動走行車両1の片側に存在する物体を検出する。自動走行車両1の片側とは、本実施形態では、
図4において車長延長線Sよりも左側をいう。もちろん、自動走行車両1が紙面上側の方向に向って走行する場合には進行方向を見て右側を検出し、自動走行車両1が紙面下側の方向に向って走行する場合には進行方向を見て左側を検出するよう構成することも可能であるし、自動走行車両1の両側に存在する物体を検出するよう構成することも可能である。また、必要に応じて物体検出部11を回転し、範囲Rが車長延長線Sに対して反転するように構成することも可能である。
【0022】
目標物設定部12は、物体検出部11により検出された物体のうち、少なくとも2つの物体の位置に基づいて、当該少なくとも2つの物体を目標物Oとして設定する。物体検出部11は、
図4に示されるように所定の範囲内に検出信号を送信し、範囲R内に存在する物体を検出する。ここで、本実施形態では自動走行車両1は樹木Kが植えられている果樹園Pを自動走行する。このため、果樹園P内の樹木Kや樹木Kを支持する支柱等から目標物Oが設定される。また、本実施形態では、自動走行車両1は少なくとも2つの物体を検出できれば目標物Oを設定することができる。本実施形態では、目標物設定部12は範囲R内において物体検出部11により検出された物体から2つの物体を用いて目標物Oとして設定するとして説明する。
【0023】
2つの目標物Oのうちの一方は、自動走行車両1から左側方を見て最も近い位置にある物体が選択される。
図4の例では、符号O1を付したものが相当し、この目標物O1は進行方向手前側の目標物Oに相当する。2つの目標物Oのうちの他方は、物体検出部11により検出された物体のうち、進行方向に沿って並んだ物体を用いて設定される。進行方向に沿って並んだ物体とは、先に設定された目標物O1から見て自動走行車両1の進行方向奥側に位置する物体である。ここで、進行方向奥側には、
図1に示されるように複数並んでおり、物体検出部11により複数検出されることもある。そこで、目標物設定部12は、現在、設定されている目標物Oから車長方向に沿って予め設定された距離内において新たな目標物Oを設定する。これにより、現在、設定されている目標物Oに近い位置にある物体を目標物Oとして設定することができるので、物体が配置されている形態に応じて自動走行車両1を走行させることが可能となる。また、予め設定された範囲内をフィルタリングして目標物Oを設定するので、目標物Oの設定に係る演算処理を軽減できる。このようなフィルタリングする範囲として、例えば基準線SLを中心とした幅180cmであって、進行方向奥側の目標物O2の前方150cm以上先とすると良い。更には、果樹園Pにおいては予め設定された距離毎に樹木Kを植えているので、所定距離毎に目標物Oが設定されない場合には、物体検出部11が異常であるか否かを判定することもできる。上述した予め設定された距離とは、例えば目標物設定部12が検出可能であり、死角とならない範囲とすることも可能である。
【0024】
本実施形態では、目標物設定部12により、先に設定された目標物O1から見て自動走行車両1の進行方向において最も近い物体が選択される。
図4の例では、符号O2を付したものが相当し、この目標物O2は進行方向奥側の目標物Oに相当する。目標物O1と目標物O2との間の距離は、目標物O1に係る物体検出部11の検出結果と目標物O2に係る物体検出部11の検出結果とに基づき、公知の三角測量法を用いて演算することができる。
【0025】
ここで、自動走行車両1は、進行方向がどの方向かを自ら認識することができないので、自動走行車両1に対して予めユーザが進行方向を設定しておくと好適である。もちろん、自動走行車両1の車長方向両端のうち、最初に進行する側の端部を設定しておき、当該端部が向いている側を進行方向として設定しても良い。
【0026】
基準線設定部13は、目標物設定部12により設定された少なくとも2つの目標物Oを通り、走行時の基準となる基準線SLを設定する。目標物設定部12により設定された少なくとも2つの目標物Oとは、本実施形態では上述した目標物O1及び目標物O2である。基準線設定部13は、自動走行制御装置10内で用いる座標系において、この目標物O1と目標物O2とを直線で繋いで基準線SLを設定する。基準線SLは、物体検出部11により一つの物体として検出された検出結果のうち、夫々の中央部分を通るように直線で繋いでも良いし、夫々の検出結果の一方の端部を通るように直線で繋いでも良い。或いは、夫々の検出結果のうち、物体検出部11に最も近い部分を通るように直線で繋いでも良い。もちろん、他の所定の条件の下、夫々の検出結果を直線で繋ぐことも可能である。このような基準線SLは後述するように自動走行車両1が自動走行する際に基準として利用される。
【0027】
距離演算部14は、基準線SLから車体までの距離を演算する。基準線SLから車体までの距離とは、上記座標系において基準線SLと車体とを最短で繋いだ距離である。このため、基準線SLから車体を通るように引いた垂線上での距離にあたる。
【0028】
走行範囲設定部15は、自動走行車両1が自動走行する走行経路に対して許容される走行範囲を設定する。本実施形態では自動走行車両1は自動走行しながら草を刈り取る。このため、自動走行車両1が自動走行する走行経路は、草を刈り取る経路に相当する。詳細は省略するが、刈り刃54は自動走行車両1の走行機体3の中央部の底面に車幅方向に亘って設けられる。自動走行車両1は果樹園Pの一方の端部から他方の端部まで自動走行する際、刈り漏れを防止するために先に走行した経路に対して刈り取る領域の一部(例えば20〜30cm)を重複させて自動走行する。上述した許容される走行範囲は、このような重複する幅の1/2〜1/3(例えば10〜15cm)程度に設定すると好適である。
【0029】
走行制御部16は、基準線SLから車体までの距離を予め設定された範囲内に維持しつつ、予め設定された区画内において基準線SLに沿って走行させる。基準線SLから車体までの距離は、上述した距離演算部14により演算され、順次、リアルタイムで走行制御部16に伝達される。予め設定された区画とは、自動走行車両1が自動走行を行う区画であり、本実施形態では草の刈り取り対象となる果樹園Pの一方の端部から他方の端部まで列毎に樹木Kにより仕切られる区画である。自動走行車両1は、このような区画内を往復走行しながら、草刈りを行う。
【0030】
上述したように、自動走行車両1はエンジン4を動力源として走行する。また、第1車輪2A及び第2車輪2Bは、夫々操向操作可能に構成され、夫々第1車輪操向操作機構51及び第2車輪操向操作機構52により操向操作が行われる。また、エンジン4により発生された回転力は、第1車輪2A及び第2車輪2Bの少なくとも一方に動力伝達機構55を介して伝達される。第1車輪2A及び第2車輪2Bに対する動力の伝達は、双方に行って自動走行車両1を4輪駆動としても良いし、一方に行って2輪駆動としても良い。また、第1車輪2A及び第2車輪2Bの夫々は、左右一対で構成されても良いし、少なくとも一方が1輪で構成されていても良い。走行制御部16は、基準線SLから自動走行車両1までの距離が予め設定された範囲内に収まるように、第1車輪操向操作機構51、第2車輪操向操作機構52、及び動力伝達機構55を制御して、基準線SLに沿って走行させる。
【0031】
自動走行車両1は、基準線SLに沿って走行しながら次の目標物Oとなる物体を検出する。現在の基準線SLの設定に係る進行方向前側の目標物O2近傍に達すると、当該目標物O2を進行方向手前側の目標物O1とし、新たに設定した目標物Oを進行方向奥側の目標物O2として設定する。これらの目標物O1及び目標物O2により基準線SLを設定し直して、当該基準線SLに沿って果樹園Pの一方の端部から他方の端部まで走行する。
【0032】
このように自動走行車両1は、目標物設定部12が目標物Oを更新しながら、果樹園Pの一方の端部から他方の端部まで走行するが、走行制御部16が自動走行を行わせる前に、基準線判定部22が基準線設定部13により新たに設定された基準線SLが現在の基準線SLに対して平行に設定されたか否かを判定する。新たに設定された基準線SLが現在の基準線SLに対して平行に設定されているとは、これまでの自動走行に用いられた基準線SLと新たに設定された基準線SLとが平行な状態で設定されていることを意味する。このため、基準線判定部22には、基準線設定部13から、現在の基準線SLを規定する座標、及び新たに設定された基準線SLを規定する座標が伝達される。基準線判定部22は、これらの座標を用いて、現在の基準線SLと新たに設定された基準線SLとが平行か否かを判定する。基準線判定部22による判定結果は、走行制御部16に伝達される。
【0033】
走行制御部16は、基準線設定部13により新たに設定された基準線SLが現在の基準線SLに対して平行に設定された場合には、同位相の4輪ステアリング操作で新たに設定された基準線SLに対する車体の位置を調整しながら走行させる。基準線設定部13により新たに設定された基準線SLが現在の基準線SLに対して平行に設定されたか否かは、上述の基準線判定部22からの判定結果で特定される。同位相の4輪ステアリング操作とは、第1車輪2Aと第2車輪2Bとを同方向に、且つ、同じ舵角でステアリング操作することである。このため、同位相の4輪ステアリング操作が行われた場合には、
図5の(A)で示されるように、自動走行車両1の車体は2点鎖線で示された現在の基準線SL及び実線で示された新たに設定された基準線SLに対して平行状態を維持して走行することになる。
【0034】
一方、走行制御部16は、基準線設定部13により新たに設定された基準線SLが現在の基準線SLに対して非平行に設定された場合には、第1車輪2Aのみのステアリング操作と、第2車輪2Bのみのステアリング操作と、第1車輪2A及び第2車輪2Bの双方を逆方向にステアリング操作する逆位相のステアリング操作とのうちのいずれか1つのステアリング操作で基準線SLに対する車体の位置を調整しながら走行させる。新たに設定された基準線SLが現在の基準線SLに対して非平行に設定されているとは、
図5の(B)で示されるように、2点鎖線で示されたこれまでの自動走行に用いられた基準線SLと、実線で示された新たに設定された基準線SLとが所定の目標物Oの基準に折れ曲がった状態で設定されていることを意味する。基準線設定部13により新たに設定された基準線SLが現在の基準線SLに対して非平行に設定されたか否かは、上述の基準線判定部22からの判定結果で特定される。
【0035】
第1車輪2Aのみのステアリング操作と、第2車輪2Bのみのステアリング操作と、第1車輪2A及び第2車輪2Bの双方を逆方向にステアリング操作する逆位相のステアリング操作とは、夫々上述した同位相の4輪ステアリング操作とは異なるステアリング操作であり、第1車輪2Aの舵角と第2車輪2Bの舵角とが、少なくとも異なるように操作するステアリング操作である。このため、これらのステアリング操作のいずれかが行われた場合には、自動走行車両1の車体は現在の基準線SLに対して平行な状態でなくなり、新たに設定された基準線SLに対して平行な状態となるよう走行することになる。
【0036】
このように自動走行車両1は、目標物設定部12が目標物Oを更新しながら、果樹園Pの一方の端部から他方の端部まで走行するが、本実施形態では、目標物設定部12は目標物Oを更新するにあたり、物体検出部11により新たに検出された物体が目標物Oとして設定しても良いか否かの判定を行っている。
【0037】
具体的には、目標物設定部12は、物体検出部11により新たに検出された物体が基準線SLから予め設定された距離内に位置する場合、この新たに検出された物体を新たな目標物O2として設定する。予め設定された距離とは、例えば数十cm程度とすると好適である。このような現在の基準線SLからわずかにずれた位置にある物体は新たな目標物O2として設定することで、自動走行車両1の走行経路を大きく蛇行させることがないので、果樹園Pの草刈りを効率良く行うことが可能となる。
【0038】
また、走行制御部16は自動走行する前に、距離判定部21が物体検出部11により新たに検出された物体が基準線SLから予め設定された距離より離れているか否かを判定する。走行制御部16は距離判定部21の判定結果に基づいて、同位相のステアリング操作、又は第1車輪2Aのみのステアリング操作と、第2車輪2Bのみのステアリング操作と、第1車輪2A及び第2車輪2Bの双方を逆方向にステアリング操作する逆位相のステアリング操作のうちにいずれか1つのステアリング操作に切り替えて走行する。
【0039】
具体的には、距離判定部21により物体検出部11により新たに検出された物体が基準線SLから予め設定された距離より離れていると判定された場合、迂回走行経路設定部20が当該新たに検出された物体を迂回する迂回走行経路を設定する。迂回走行経路とは、基準線SLから自動走行車両1までの距離に拘らず、現在の自動走行車両1の位置から新たに検出された物体を迂回し、更に基準線SLから所定の距離に自動走行車両1を走行させる経路である。このような迂回走行経路は、物体検出部11による検出結果に基づき、迂回走行経路設定部20が設定する。迂回走行経路設定部20は、迂回走行経路を設定するにあたり、目標物設定部12から前記情報が伝達された時点で迂回走行経路の全区間を設定しても良いし、自動走行しながら迂回すべき物体の位置を目標物設定部12で検出しながらリアルタイムで迂回走行経路を設定しても良い。
【0040】
このような迂回走行経路が設定された場合、走行制御部16は同位相のステアリング操作により、基準線SLに対する車体の平行状態を維持しつつ、迂回走行経路に沿って走行させて新たに検出された物体を迂回するように走行させる。したがって、自動走行車両1を基準線SLに沿って走行させることができるので、果樹園Pの草刈りを効率良く行うことが可能となる。この場合、走行制御部16は第1車輪2A及び第2車輪2Bの双方の舵角が常に同じ舵角となるように操舵して、基準線SLに対して自動走行車両1の車体の長さ方向が常に平行になるように走行させる。
【0041】
このような形態が
図6に示される。自動走行車両1は基準線SLに沿って走行している時に、ステップ#101に示されるように、前方の物体「▲(黒塗り三角)」で示された物体)が基準線SLからから予め設定された範囲(
図6の#101における「n」)内になければ、当該前方の物体を迂回する迂回走行経路が設定される。走行制御部16は、
図6の#102〜#104に示されるように、設定された迂回走行経路に沿って同位相のステアリング操作で自動走行させる。これにより、物体の迂回前から迂回後に亘って、基準線SLに対して車体を平行な状態に維持することができる。したがって、自動走行車両1が物体を迂回後、車体を基準線SLに対して平行にするステアリング操作が不要となるので、スムーズに基準線SLに沿って自動走行車両1を走行させることが可能となる。
【0042】
一方、距離判定部21が物体検出部11により新たに検出された物体が基準線SLから予め設定された距離以下の位置にあると判定された場合、走行制御部16は、第1車輪2Aのみのステアリング操作と、第2車輪2Bのみのステアリング操作と、第1車輪2A及び第2車輪2Bの双方を逆方向にステアリング操作する逆位相のステアリング操作のうちにいずれか1つのステアリング操作により、基準線SLに対する車体の平行状態を維持せずに、新たに検出された物体を迂回するように走行させる。したがって、物体を迅速に迂回し、その後、自動走行車両1を基準線SLに沿って走行させることができるので、果樹園Pの草刈りを効率良く行うことが可能となる。
【0043】
自動走行車両1は、果樹園Pの一方の端部から他方の端部まで基準線SLに沿って走行し、端部においてはスイッチバックをして、そこで設定された基準線SLに沿って走行する。スイッチバックとは、自車が区画の端部に達した際に前後進を繰り返して、自動走行車両1の位置を当該端部の位置から側方にずらすように移動する走行形態である。本実施形態では、自動走行車両1は自車が果樹園Pの端部に達した否かを物体の数によって認識するよう構成されている。すなわち、物体数設定部17が区画内において物体検出部11が検出する物体の数を予め設定しておく。区画内において物体検出部11が検出する物体の数とは、自動走行車両1は、果樹園Pの一方の端部から他方の端部まで走行する際に目標物Oとして設定する物体の数である。物体数設定部17は、このような物体の数を予め設定し、記憶しておく。
【0044】
この物体の数は、ユーザが自動走行車両1を自動走行させる前に、予め手動で入力して物体数設定部17に設定しておいても良いし、区画内に存在する物体の数を示すマップを物体数設定部17に読み込ませて自動で物体の数を設定しても良い。例えば、マップを用いて物体の数を設定する場合には、区画内に存在する物体の列数、及び夫々の列毎の物体の個数を記載しておくと良い。更には、自動走行車両1は基準線SLに沿って草を刈り取りながら走行する前に例えばラジコン操作によりティーチング走行を行い、当該ティーチング走行時に物体数設定部17が区画内の物体の数を計数し、当該計数した物体の数を基準線SLに沿って走行する際に目標物Oとして設定される物体検出部11が検出する物体の数として設定することも可能である。これにより、物体数設定部17は物体検出部11が検出する物体の数を容易に設定することが可能となる。
【0045】
物体計数部18は、区画の一方の端部から他方の端部に向って走行する際に、基準線SLの設定に用いた物体の数を計数する。物体計数部18は目標物設定部12が目標物Oを新たに設定した場合には、その旨を示す情報を取得し、当該新たに設定した目標物Oを用いて実際に基準線SLを設定に用いた物体の数を計数する。ここで、元々、進行方向奥側の目標物O2として設定していたものを、自動走行車両1の走行に応じて進行方向手前側の目標物O1として設定した場合には、双方を計数すると、同一の物体に係る目標物Oであることから重複して計数することになる。このような重複して計数することを避けるために、物体計数部18は、自動走行車両1が区画の一方の端部から他方の端部に向って走行する際に、予め決定された進行方向手前側に設定された目標物O1に係る物体及び進行方向奥側に設定された目標物O2に係る物体の何れか一方のみを計数し、当該計数結果に1を加えておくことで、区画の一方の端部から他方の端部に至るまで基準線SLの設定に係る物体を計数することが可能となる。
【0046】
判定部19は、物体計数部18の
計数結果が、物体数設定部17により設定された物体の数に達した場合に、自動走行車両1が区画の他方の端部に達したと判定する。これにより、走行制御部16はその位置で自動走行車両1を一旦、停車させ、当該停車した位置から自動走行車両1をスイッチバックさせて次に草を刈り取る分だけ位置をずらし、その位置から再度、目標物Oに基づき基準線SLを設定して自動走行しながら草を刈り取る。このようにして自動走行車両1は、自車で自動走行する際に基準となる基準線SLを設定し、自動走行することが可能となる。
【0047】
次に、自動走行車両1が自動走行を行う際の処理について
図7のフローチャートを用いて説明する。自動走行車両1が、任意の位置に配置される(ステップ#1)。この際、自動走行車両1は、自動走行車両1における最初に進行させる側の端部を自動走行させたい方向に向けておくと良い。
【0048】
物体検出部11は、所定の範囲について物体の検出を開始する(ステップ#2)。以後、物体検出部11は、自動走行車両1が自動走行を終了するまで継続して物体の検出を行う。検出された物体が、目標物Oとしての所定の条件を満たす場合には(ステップ#3:Yes)、当該物体を目標物Oとして設定する(ステップ#4)。この目標物Oの検出は、少なくとも2つの目標物Oが設定されるまで行われる(ステップ#5:Yes)。
【0049】
ここで、自動走行制御装置10内では、物体検出部11により取得された当該物体検出部11を基準とした物体が存在する方向を示す情報と、物体検出部11から物体までの距離を示す情報とに基づき、自動走行車両1を基準とした座標系において目標物O1及び目標物O2の座標が演算される。係る場合、自動走行車両1の座標が(0,0)として設定され、目標物O1の座標が(X1,Y1)、目標物O2の座標が(X2,Y2)として演算される。
【0050】
次に、基準線設定部13は、2つの目標物O1及び目標物O2を基準に基準線SLを設定する(ステップ#6)。この基準線SLは、物体検出部11により検出された目標物O1と目標物O2との夫々の外縁部を繋いだ線で設定される。
【0051】
次に、自動走行車両1が走行する基準線SLを基準とした走行経路を設定する。この設定は、基準線SLから走行経路までの距離に応じて設定される(ステップ#7)。この場合、当該距離の演算処理及び以降の処理を行い易くするために、自動走行制御装置10では、自動走行車両1を基準とした座標系から基準線SLをy軸とする座標系に座標変換が行われる。これにより、目標物O1の座標(X1,Y1)、及び目標物O2の座標(X2)が座標変換され、目標物O1の座標(0,y1)、及び目標物O2の座標(0,y2)となる。このような座標変換後の座標系において、基準線SLから走行経路までの距離がmとして設定される。この場合、自動走行車両1の座標は(x1,0)に変換される。また、この距離に対する許容範囲±aが設定される(ステップ#8)。
【0052】
この時、現在、自動走行に用いている基準線SLよりも先に設定されている基準線SLがない場合には(ステップ#9:Yes)、走行制御部16は、基準線SLから自動走行車両1までの距離が、設定された「m±a」に収まるように自動走行車両1を走行させる(ステップ#10)。基準線SLから自動走行車両1までの距離が、設定された「m±a」に収まらない場合には(ステップ#11:Yes)、走行制御部16は許容範囲内に収まるようにステアリングを操作する(ステップ#12)。この時のステアリングの操作は、同位相の4輪ステアリング操作であっても、その他のステアリング操作であっても良い。ステップ#11において、基準線SLから自動走行車両1までの距離が、設定された「m±a」に収まる場合には(ステップ#11:No)、走行制御部16はそのままの舵角で走行させる。なお、この場合、自動走行車両1の位置によって物体検出部11により検出される物体の検出結果が異なるので、都度、目標物O1,O2の座標変換を行いつつ、基準線SLを更新しながら自動走行が行われる。
【0053】
自動走行車両1が進行方向奥側の目標物O2に達し(ステップ#13:Yes)、且つ、当該目標物O2が区画の端部の目標物Oでなければ(ステップ#17:Yes)、目標物設定部12はこれまでの進行方向奥側の目標物O2を進行方向手前側の目標物O1に設定する(ステップ#18)。
【0054】
進行方向奥側に新たに検出された物体が、これまでに自動走行してきた際に用いた基準線SLから予め設定された範囲内にあれば(ステップ#19:Yes)、目標物設定部12は当該新たに検出された物体を目標物Oに設定し(ステップ#20)、ステップ#6から処理が継続される。
【0055】
ステップ#9において、現在、自動走行に用いている基準線SLよりも先に設定されている基準線SLがあり(ステップ#9:No)、先に設定されている基準線SLと現在用いている基準線SLとが平行である場合には(ステップ#14:Yes)、走行制御部16は同位相の4輪ステアリング操作で自動走行車両1を走行させ(ステップ#15)、処理を継続する(ステップ#11)。一方、先に設定されている基準線SLと現在用いている基準線SLとが平行でない場合には(ステップ#14:No)、走行制御部16は同位相の4輪ステアリング操作以外で自動走行車両1を走行させ(ステップ#16)、処理を継続する(ステップ#11)。
【0056】
ステップ#19において、進行方向奥側に新たに検出された物体が、これまでに自動走行してきた際に用いた基準線SLから予め設定された範囲内になければ(ステップ#19:No)、迂回走行経路設定部20が当該新たに検出された物体を迂回して走行する迂回走行経路を設定する(ステップ#21)。走行制御部16は、この迂回走行経路に沿って自動走行させ、迂回走行経路を完走後(ステップ#22:Yes)、ステップ#19から処理が継続される。
【0057】
ステップ#17において、目標物O2が区画の端部の目標物Oであれば(ステップ#17:No)、走行制御部16は自動走行車両1を停車させ(ステップ#23)、その位置からスイッチバックにより自動走行車両1の位置が変更される(ステップ#24)。スイッチバックについては、基準線SLからの距離に拘らず一定の動作で行われることから予めプログラミングしておくと良い。
【0058】
〔その他の実施形態〕
上記実施形態では、迂回走行経路設定部20は、物体検出部11により新たに検出された物体が基準線SLから予め設定された距離より離れている場合、新たに検出された物体を迂回する迂回走行経路を設定するとして説明したが、迂回走行経路設定部20は自動走行車両1と迂回すると判断された物体との位置関係に基づいて、当該物体の右側を走行する右ルート、及び左側を走行する左ルートの一方を選択すると良い。具体的には、自動走行車両1から物体を見て、物体が少なくとも車体の右側にあれば左側ルートを選択し、物体が少なくとも車体の左側にあれば右側ルートを選択すると好適である。
【0059】
上記実施形態では、物体検出部11により新たに検出された物体が基準線SLから予め設定された距離より離れている場合に、迂回走行経路設定部20が迂回走行経路を設定するとして説明したが、例えば自動走行車両1に物体検出部11が検出できない低背の物体を検出可能な接触センサ等を設け、当該接触センサが物体を検出した場合に迂回走行経路を設定する構成とすることが可能である。また、例えば物体検出部11に物体の配置を規定したマップを予め読み込ませ、マップに規定された物体に対して所定距離まで接近した場合に当該マップに基づき迂回走行経路を設定するよう構成することも可能である。もちろん、このようなマップには、物体検出部11が検出した物体を適宜、追加して更新するよう構成することも可能である。
【0060】
上記実施形態では、自動走行制御装置10において、自動走行車両1を基準とした座標系から目標物Oを基準とした座標系に座標変換を行って、自動走行に係る演算処理を行うとして説明したが、座標変換を行わずに自動走行に係る演算処理を行うことも可能である。