(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸の混合物は、前記脂肪族ジカルボン酸の固体粒子と前記芳香族ジカルボン酸の固体粒子の乾式ブレンド物である請求項3に記載の方法。
前記芳香族ジカルボン酸は、イソフタル酸、テレフタル酸もしくはナフタレンジカルボン酸、またはそれらの任意の組み合わせを含む請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
前記ジアミンと前記ジカルボン酸を、前記ジアミンを前記動状態のジカルボン酸粉末上に噴霧または滴下することにより接触させる請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
前記ジアミンと前記ジカルボン酸を、タンブルミキサー、プロシェアミキサー、コニカルミキサー、プラネタリスクリューミキサー、または流動層反応器内で接触させ混合する請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
前記ジアミンと前記ジカルボン酸が反応してジアミン/ジカルボン酸塩を生成する際に生じる中和熱を、熱交換機によって除去する請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
前記塩の、圧密応力σ1の一軸降伏強度σcに対する比(ffc)によって定義される流動性が、ASTMD6773に記載の剪断試験法による測定で、少なくとも10である請求項16または17に記載の塩。
前記塩は、微結晶を含む多結晶微粒からなる粒状物質であり、前記微結晶は、微粒の表面領域を撮像したSEM像のソフトウェア支援解析による測定で、体積基準d90が最大でも5μmである粒度分布を有する請求項16〜18のいずれか一項に記載の塩。
前記d10が20〜200μmの範囲にあり、d50が50〜500μmの範囲にあり、かつd90が200〜1000μmの範囲にある請求項16〜19のいずれか一項に記載の塩。
前記粒状物質は、比(TBD−ABD)/TBD*100%で表される圧縮率が、最大でも35%であり、ここで、ABDはゆるめ嵩密度、TBDはかため嵩密度であり、いずれもASTMD6393の方法により測定される、請求項16〜21のいずれか一項に記載の塩。
前記塩は、1,4−ブタンジアミンとテレフタル酸をベースとする塩、および/または1,6−ヘキサンジアミンとテレフタル酸をベースとする塩を含む請求項16〜22のいずれか一項に記載の塩。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は比較実験Aで得た4T塩のSEM像を示す。
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図2】
図2は実施例VIで得た4T塩のSEM像を示す。
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図3】
図3は実施例VIで得た4T塩のSEM像を示す。
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図4】
図4は実施例VIで得た4T塩のSEM像を示す。
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図5】
図5は実施例VIで得た4T塩のSEM像を示す。
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図6】
図6は4T微粒内部の微結晶質ドメインの画像である。
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図7】
図7は4T微粒内部の微結晶質ドメインの画像である。
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図8】
図8は4T微粒内部の微結晶質ドメインの画像である。
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図9】
図9は4T微粒内部の微結晶質ドメインの画像である。
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図10】
図10は4T微粒外面の微結晶質ドメインの画像である。
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図11】
図11は4T微粒外面の微結晶質ドメインの画像である。
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図12】
図12は4T微粒外面の微結晶質ドメインの画像である。
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図13】
図13は4T微粒外面の微結晶質ドメインの画像である。
【0012】
(d)および(e)を行う温度は、本明細書では処理温度ともいう。この温度は反応混合物内で測定される。
【0013】
用語、融点(Tm)は、本明細書では、ISO−11357−3.2、2009に規定するDSC法により、窒素雰囲気下、20℃/minの加熱および冷却速度で測定される温度であると理解される。本明細書では、Tmは第1の加熱サイクルにおける溶融ピークのピーク温度である。
【0014】
用語、ジアミンの沸点は、本明細書では、ジアミンを添加するときの一般的な圧力で測定される沸点であると理解される。好ましい実施形態では、(d)および(e)は、ジアミンを添加する際に適用する最も低い圧力で測定されたジアミンの沸点未満の温度で行われる。
【0015】
「徐々に加える」という表現は、本明細書では、粒子同士の粘着、目詰まり、および塊の生成を避けるために、いかなるときも粒子が過剰に濡れることがないよう、十分に少ない単位時間当たりの量でジアミンを加えることであると理解される。これは、ジアミンの全量を一度に添加するか、またはそれに近い場合を除外するものである。しかしながら、適度な短い時間に添加されるジアミンは、加えられたジアミンとジカルボン酸の反応は適度に速く、したがってジアミンが未反応の形態で蓄積することは防止されると考えられるため、除外されない。反応速度はジアミンおよびジカルボン酸の種類によるであろう。例えば、ジアミンとジカルボン酸の特定の組み合わせに対する、大規模操業に適した添加計画は、ルーチンの測定により、単に添加速度を変える、例えば低添加速度から始め、徐々に速度を増大させることによって決定することができる。
【0016】
添加完了直後から、反応混合物が引き続き常に動状態に保たれる最短の時間は、通常、プロセスが行われる反応器から排出されるときの粘着と凝集を防ぐのに少なくとも十分な時間であるように選ばれる。これは、添加速度、反応温度、および特定のジアミンとジカルボン酸の組み合わせなどの各種因子に影響される。時間は、10分から(10分を含む)1時間(1時間を含む)の範囲が適切である。時間はまた1時間より長くてもよい。処理条件によって、特に添加速度が非常に遅い条件、特にジアミン添加の終了時の添加速度が非常に遅い条件では、この時間は大きく短縮でき、例えば0〜10分に短縮することができる。
【0017】
初期にはジアミンに対してカルボン酸が大過剰に存在するというように、反応混合物中のジアミンおよびジカルボン酸は、広い範囲にわたって変化するモル比で存在させることができる。ジアミンを添加する間に、この過剰性は消失し、モル量は等量に近づき、そこで、さらにジアミンを加えるなら、二酸に対してジアミンが過剰になるであろう。ジアミンをいくらか過剰に加えても、依然として安定な固体粒子物質が得られるので、このことは問題にならない。
【0018】
しかしながら、モル比が等量から大きく外れると、ジカルボン酸が過剰の場合はジアミンの追加を必要とするであろうし、一方、ジアミンが過剰の場合は余分のジカルボン酸の追加を必要とするであろうし、かつ/または大過剰のジアミンは揮発性アミンの過大な損失をもたらすから、ポリアミドポリマーを製造する後の処理にとってあまり望ましくはないであろう。ジカルボン酸に対するジアミンのモル比(D/DA)は0.9〜1.1の範囲が適切である。モル比D/DAは、0.95〜1.05の範囲が好ましい。実際には、ジアミンが少なくとも等量、したがってD/DAが少なくとも1.0、またはD/DAモル比が約1.005〜1.02(ジアミンの0.5〜2%のモル過剰に相当)のように僅かに過剰であることが好ましい。したがって、D/DA比は1.00〜1.02の範囲にあることがより好ましい。そのように僅かな過剰であっても、または全く過剰でない場合でさえ、すなわち等モルのアミンであってさえ、反応は完全転換、または実質的に完全転換まで進行する。すなわち、ジカルボン酸の残留量は、たとえあったとしても、例えば広角X線回折(XRD)で少量が観察されるだけである。当然ながら、等モルより少ないジアミンであれば、一定量の残留ジカルボン酸の存在を排除することはできない。
【0019】
本発明の方法で使用するジアミンおよびジカルボン酸は、異なる化合物の混合物、すなわち、異なるジアミンの混合物および/または異なるジカルボン酸の混合物からなることが適切である。混合物は、要求されるポリマー特性に応じて、好ましい組成のコポリアミドポリマーが提供されるよう選択することができる。
【0020】
ある特定の実施形態では、ジカルボン酸は脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸の混合物である。これは、塩が固体粒子の形態であるだけでなく、商業規模で製造される数種の半芳香族ポリアミドに使われているようなジカルボン酸の混合物を含むという利点を有する。
【0021】
なお、本明細書では、語句「a]または「an」の使用、例えば上記「an aliphatic dicarboxylic acid(脂肪族ジカルボン酸)」および「an aromatic dicarboxylic acid(芳香族ジカルボン酸)」における使用は、他に特に明記しない限り、単数および複数形の両方を含むことを意図している。
【0022】
一般に、脂肪族ジカルボン酸および芳香族ジカルボン酸は、90:10〜10:90のモル比で存在することが適切であるが、特定のジアミンおよびジカルボン酸成分によっては、90:10以上の比を使用しても、依然、固体粒子物質が得られるであろう。モル比は80:20〜20:80(20:80を含む)の範囲にあることが好ましい。
【0023】
好ましい実施形態では、脂肪族ジカルボン酸および芳香族ジカルボン酸の混合物は、脂肪族ジカルボン酸の固体粒子と芳香族ジカルボン酸の固体粒子の乾式ブレンド物である。ジカルボン酸は塩の製造プロセスに先立って分子スケールで混合されてはいないが、脂肪族ジカルボン酸の対応する塩が、すなわち芳香族ジカルボン酸が存在しない場合に、固体粒子として生成し難いときでさえ、またはその生成が妨げられるときでさえ、塩は固体粒子の形態で得られることが観察されている。乾式ブレンド物を使用すれば、溶解、混合および沈殿工程などの複雑な予備混合工程がすべて不要となる。
【0024】
異なるジカルボン酸の組み合わせを使用する場合、特に異なるジカルボン酸を乾式ブレンド物の形態で使用する場合、異なる溶融ピークに反映されることができる異なる塩を生成することができる。処理条件を選択するときは、これらの融点を全て考慮すべきである。処理温度はそれぞれの融点未満に維持すべきである。
【0025】
ある特定の実施形態では、脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸は10:90〜50:50のモル比で存在する。
【0026】
他の特定の一実施形態では、ジカルボン酸は実質的に芳香族ジカルボン酸からなるが、これは、より詳しくはジカルボン酸が90〜100モル%の芳香族ジカルボン酸と10〜0モル%の脂肪族ジカルボン酸からなることを意味する。ジカルボン酸は、それぞれ95〜100モル%の芳香族ジカルボン酸と5〜0モル%の脂肪族ジカルボン酸からなることが好ましい。言及したモル百分率(モル%)は、脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸の全モル量に対するものである。
【0027】
芳香族ジカルボン酸は、固体粒子状物質としてジアミン/ジカルボン酸塩を生成させるのに有利であるばかりでなく、ジアミンとも容易に反応する。実質的に芳香族ジカルボン酸からなるジカルボン酸をベースとした塩は、ポリアミドの製造において、脂肪族ジカルボン酸をベースとした塩と組み合わせてさらに有利に使用される。本明細書では、脂肪族ジカルボン酸ベースの塩は、例えばナイロン6,6塩、すなわち1,6−ヘキサンジアミンとアジピン酸の塩を含むか、または、その塩そのものである。ナイロン6,6塩は、非常に大規模で製造されており、世界各国で入手可能である。これらの塩を組み合わせることにより、数多くの異なる塩の在庫を必要としたり、追加のアミンもしくは酸を混合させたりすることなく、広範囲にわたる種々の組成のポリアミドを製造することが可能になる。
【0028】
適切な芳香族ジカルボン酸の例には、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸および4,4’−ビフェニルジカルボン酸が含まれ、これらは個々にも、また任意の組み合わせでも使用することができる。芳香族ジカルボン酸は、2,6−ナフタレンジカルボン酸および/またはテレフタル酸を含むことが好ましい。芳香族ジカルボン酸は、テレフタル酸を少なくとも25モル%の量で含むことがより好ましく、少なくとも50モル%であることがより良好であり、少なくとも75モル%であることがさらに良好であり、テレフタル酸のみからなってもよい。ここでは、モル%は芳香族ジカルボン酸の全モル量に対するものである。
【0029】
本発明の方法における脂肪族ジカルボン酸は、非環状の直鎖または分岐ジカルボン酸であってもよく、環状のジカルボン酸であってもよい。脂肪族ジカルボン酸は、4〜18個の炭素原子、例えば6、8、10または12個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸であることが適切である。非環状ジカルボン酸は、1,6−ヘキサン二酸(アジピン酸としても知られる)、1,8−オクタン二酸、1,9−ノナン二酸、1,10−デカン二酸(セバシン酸としても知られる)、1,11−ウンデカン二酸、1,12−ドデカン二酸、1,13−トリデカン二酸、1,14−テトラデカン二酸、1,15−ペンタデカン二酸、1,16−ヘキサデカン二酸、1,17−ヘプタデカン二酸および1,18−オクタデカン二酸の群から選択することが適切である。適切な環状脂肪族ジカルボン酸は、trans−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸である。
【0030】
脂肪族ジカルボン酸はアジピン酸またはセバシン酸を含むことが好ましい。アジピン酸はポリアミドでは最も広く使用されている。セバシン酸は再生可能な資源から得られる。
【0031】
さらに、最終的に得られるポリマー製品の品質の要求に従い、必要量の一塩基酸、例えば安息香酸を酸の混合物に添加することができる。得られるポリアミドの分子量を制御するために、通常、約0.5〜3モル%(既に存在する酸に対して)の一塩基酸が、重合プロセスで使用される。塩の製造プロセスで使用するならば、モノカルボン酸の量は、ジカルボン酸の全モル量に対して0.01〜5、好ましくは0.1〜3モル%の範囲にあることが適切である。
【0032】
本発明の方法のジアミンは、ポリアミド製造用出発物質としての使用に適したジアミンから選択することができる。これらのジアミンには、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン、およびこれらの任意の混合物が含まれる。適切な芳香族ジアミンは、例えば、イソフェニレンジアミンおよびパラフェニレンジアミンである。脂肪族ジアミンは、2〜18個の炭素原子を有する脂肪族ジアミンが適切であり、これらは、直鎖もしくは分岐、または脂環式のいずれであってもよい。脂肪族ジアミンは、1,2−エチレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミンおよび2−メチル−1,8−オクタンジアミンなどの、1分子当たり2〜12個の炭素原子を有するものがより好ましい。適切な脂環式ジアミンの例としては、1,4−trans−シクロヘキサンジアミンおよび1,4−trans−ジアミノメチルシクロヘキサンが挙げられる。
【0033】
好ましいジアミンは、大規模で生産される半芳香族ポリアミドに最も広く使用されているものであり、これには、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミンおよび1,9−ノナンジアミンが含まれる。
【0034】
C8〜C18ジアミンなどのより長鎖のジアミンの場合、1分子当たり2〜7個の炭素原子を有するより短鎖のジアミンと比べて、反応は遅く、より長い添加時間、かつ/またはより高い反応温度が必要である。C8〜C18ジアミンはC2〜C7ジアミンと組み合わせることが好ましい。C2〜C7ジアミンの量は、比較的少量に維持することができ、これで反応速度に関しては既に大きな効果を有しており、それ故、添加時間をより短時間に、かつ/または反応温度をより高くすることができる。短鎖ジアミンと長鎖ジアミンのモル比は、1/99〜25/75、特には2/98〜20/80、さらには5/95〜15/85の範囲が適切である。当然ながら、より多いモル量の短鎖ジアミンを含む混合物も、塩の製造プロセスに適している。
【0035】
短鎖ジアミンはC2〜C6ジアミンが好ましい。本発明の方法で使用するジアミンは、1,4−ブタンジアミンおよび/または1,6−ヘキサンジアミン、より好ましくは1,4−ブタンジアミンを含むことがより好ましい。
【0036】
上述したように、本方法は、ジアミン添加時に広く使われている圧力で測定した沸点未満の温度で実施される。本発明の方法で使用するジアミンが、少なくとも2種の異なるジアミンの混合物である場合、プロセスの温度がそれ未満に維持されるべきジアミンの沸点(TbDiamine)は、少なくとも2種のジアミンの沸点と、もしそれらの共沸混合物が形成されるならばその沸点の中で最も低いものである。本明細書でそれぞれ沸点(the boiling temperature)および沸点(the boiling temperatures)と称するものは、それぞれ、接触と反応を実施するとき広く使用されている圧力で測定される沸点である。その目的は、ジアミンをジカルボン酸と接触させ、反応させることよりもむしろ、ジアミンの蒸発を防止することにある。
【0037】
好ましい実施形態では、処理工程(d)および(e)は、ジアミンを添加する間に加えた最も低い圧力で測定したジアミンの沸点未満の温度で行われる。少なくとも2種の異なるジアミンの混合物の場合、ジアミンの沸点は、少なくとも2種のジアミンの沸点と、もしそれらの共沸混合物が形成されるならばその沸点の中で最も低いものである。
【0038】
本発明の方法では、ジアミンとジカルボン酸は、液体のジアミンをジカルボン酸粉末に、ジカルボン酸粉末を常に動状態に保ちながら、徐々に添加することにより接触させる。ジアミンは、このプロセスが行われている反応器の側壁の一部と最初に接触しないように、ジカルボン酸粉末上に添加することが好ましい。これは、ジカルボン酸粉末やその後に生成される塩が側壁へ粘着し、塊を形成するのを防止するためである。接触は、動状態のジカルボン酸粉末にジアミンを噴霧するか、または滴下することにより行うことが適切である。
【0039】
本発明の方法は、原理的に、粉末物質を機械的撹拌により常に動状態に保つことができればいかなる型式の反応器であっても、実施することができる。機械的撹拌により、機械的に撹拌された粉末層が形成される。本方法を実施するのに好適な反応器は、例えば、タンブルミキサー、プロシェアミキサー、ナウタミキサーとしても知られるプラネタリスクリューミキサー、コニカルミキサー、および流動層、例えば循環流動層反応器である。混合機は、乾燥機では一般的な壁面加熱および/または冷却装置を具備していてもよい。前記の場合、混合器は、タンブル乾燥機、コニカル乾燥機、およびプラネタリスクリュー乾燥機のように、乾燥機とも称され得る。
【0040】
前記混合器は全て低剪断混合機である。これら、およびその他の低剪断混合装置のより詳しい情報は、「Handbook of Industrial Mixing−Science and Practice」、Paul,Edward L.;Atiemo−Obeng,Victor A.;Kresta,Suzanne M.編(出版社:John Wiley & Sons;2004;;ISBN:978−0−471−26919−9;Electronic ISBN:978−1−60119−414−5)という文献、特に第15章、パート15.4および15.11から得ることができる。
【0041】
本発明の方法は高剪断場を用いずに実施でき、それでも高い転換率を達成し得るという事実は、大きな驚きである。実際、本発明の方法の工程(d)および(e)における絶え間ない動きは、ジカルボン酸粉末の摩耗を回避する低剪断撹拌により達成することができる。そのような低剪断場では、塩粒子の大きな破壊もなく、より詳しくは、得られるジアミン/ジカルボン酸塩のd10は、出発ジカルボン酸粉末のそれと少なくとも同じである。実際、摩耗は非常に少ないか、または全く生じないことさえあり得るので、ジカルボン酸粉末粒子の粒径がジアミンとの反応中に増加することさえあり得るという事実を除けば、粒度分布は殆ど影響を受けない。
【0042】
そのようなジカルボン酸粉末が摩耗しない低剪断撹拌の利点は、処理の間に生成する微粉の量が少なく、かつファウリング、散粉、貯蔵時の沈下凝固、および微粉の目詰まりによる流動性の低下の問題が減少することである。
【0043】
本発明の方法の好ましい実施形態では、そこで使用するジカルボン酸粉末は、粒径の小さい粒子を少量含む。シャープな粒度分布を有するジカルボン酸粉末もまた好ましい。その利点は、そのように製造して得られるジアミン/ジカルボン酸塩もまた、それぞれ、より少量の微粒子、よりシャープな粒度分布を有し、また任意選択により、より良好な流動特性を有することさえあることである。少量の微粒子および/またはシャープな粒度分布を有するジカルボン酸粉末の使用と、低剪断撹拌とを組み合わせることが、適切である。
【0044】
ジカルボン酸粉末は、d10が最小でも15μmで、d90が最大でも1000μmである粒度分布を有することが適切である。ジカルボン酸粉末はまた、40〜500μmの範囲のメジアン粒径(d50)を有することが適切である。本明細書では、粒度分布は、レーザー粒度測定法のISO 13320に準拠する方法により20℃で測定する。
【0045】
ジカルボン酸粉末の粒度分布のd10は、15〜200μmの範囲にあることが好ましく、16〜160μmの範囲にあることがより好ましい。d90は、100〜1000μmの範囲にあることが好ましく、150〜800μmの範囲にあることがより好ましい。d50は、40〜400μmの範囲にあることが好ましく、40〜400μmの範囲にあることがより好ましい。また、ジカルボン酸粉末は、比(d84−d16)/d50で定義されるスパンが最大でも5である粒度分布を有することも好ましい。その利点は、得られるジアミン/ジカルボン酸塩もまたシャープな粒度分布を有し、かつ流動性がさらに改善されることにある。
【0046】
ジアミンとジカルボン酸の反応は、反応混合物が常に、実質的に固体粒子の形態にあるような条件下、すなわちジアミンの添加時間とその後の反応時間の全体を通して、粒子が分離して存在するような条件下で行われる。ジアミンとジカルボン酸の反応は、強い発熱反応であり、局所的な過熱により多少の凝集が生じ得るであろう。温度制御を行わなければ、使用する反応物質にもよるが、反応混合物は、実質的に固体粒子の形態に留まることはなく、ペーストを形成し、凝集して単一の塊を生成し得るであろう。しかしながら、ジアミンを徐々に添加し、かつジアミンの添加およびさらには反応の間、反応混合物を常に動状態に保持し、任意選択により外部温度制御手段からの支援を受ける本発明の方法を使用すれば、温度は容易に制御され、局所的過熱があったとしても最小限に抑えられる。
【0047】
実質的に固体粒子の形態を維持するための温度制御は、ジアミンを徐々に加えていく間、および反応混合物を機械的に撹拌している間、反応混合物の温度、すなわち処理温度が上で示した温度範囲内、すなわち0℃と、ジアミンの沸点(TbDiamine)、前記ジカルボン酸、ジアミン/ジカルボン酸塩および反応混合物中の中間反応生成物の融点のうち最も低い温度の間に維持されるよう、熱が反応混合物から移動するときに、適切に達成される。この熱移動は、熱交換器を備えた反応器の使用により有利に達成される。熱交換器は、例えば、バッフル内部に冷媒を有するバッフルなどの内部熱交換器、および/または二重壁の内部に冷媒を有する二重壁反応器などの外部熱交換器であり得る。
【0048】
処理温度は水の沸点未満の温度を選ぶことが適切である。したがって、処理温度は水の沸点と同じか、またはそれより高い温度も同様に選択し得る。処理温度が、本方法の一般的な条件下で水の沸点と同じか、またはそれより高いならば、反応混合物中の水の量をできるだけ少なく、好ましくは反応混合物の全重量に対して1重量%未満に維持し、かつ/または、水蒸気が凝縮して粉末粒子が壁に粘着すおそれのある低温域を防ぐように、注意を払わなければならない。後者は、壁温が水の沸点より高い反応器を使用することにより達成できる。処理温度は、ジアミンの添加速度を十分に遅くすることによっても、その上限温度未満に維持することができる。水の沸点を超える処理温度を適用すれば、水分含有量の一層少ない固体粒子の形態のジアミン/ジカルボン酸塩が得られる。ジアミンが水蒸気に混入して共に除去されるのを防止するために、特別な注意が払われ得るであろう。
【0049】
ジアミンとジカルボン酸を0℃と水の沸点の間の温度で接触させることが適切である。本明細書では、沸点は、ジアミンの添加時に広く使用されている圧力で測定される沸点である。処理は、任意選択により、大気圧条件下で行われる。処理および添加は、大気圧を超える圧力および/または大気圧未満の圧力で良好に行われ得る。例えば、空気の取り込みを避けるために、やや過度の圧力をかけ、任意選択により窒素またはアルゴンの不活性雰囲気下で操作することが好ましい。
【0050】
本発明を実施する特に好ましい方法は、粉末形態のジカルボン酸を低い周囲温度、すなわち室温に曝露し、その後、任意選択により、約2パーセントまでの水を結合した、液体(溶融)形態のジアミンを加えることである。そのようなアミンを使用する場合、反応混合物への添加を容易にするために、これらのアミンを液体形態に維持するいくらかの加熱が必要であろう。さらに、液体ジアミンの添加速度は、熱移動条件に適合するよう容易に制御することができる。すなわち、ペーストの生成を防止するために、液体の添加速度を十分に遅い速度に調節することができる。
【0051】
約50重量%の水を含む水溶液中で実施する従来のジアミン/ジカルボン酸塩生成法とは異なり、本発明の方法における反応混合物の水含有率は、はるかに低いレベル、すなわち反応混合物の重量に対して、多くとも5重量%、好ましくは多くとも1重量%である。水含有率は0.5重量%未満ですらあり得る。低い水分含有率にもかかわらず、塩生成反応は、十分に短時間に、妥当乃至良好な均一性を有する塩を生成するのに十分な程度に起こる。水の含有率を前記限度内に維持すれば、ジアミン/ジカルボン酸塩は、その後の取り扱いを容易にする自由流動する粉末として、または実質的に自由流動する粉末として回収される。
【0052】
実質的に固体粒子の形態で貯蔵および輸送ができるジアミン/ジカルボン酸塩は、ポリアミドポリマーの製造に有用な出発物質である。この塩は、ポリアミドポリマーを製造する既知の商業プロセスで使用するために、約50重量%の水を含む従来の水溶液を調製するのに使用することができる。
【0053】
本発明はまた、本発明の方法により、または上記したようなその任意の実施形態により得ることができるジアミン/ジカルボン酸塩に関する。本発明の前記のものは、塩の全重量に対して0.5重量%未満の水を含む無水の塩であることが好ましい。
【0054】
本発明の方法で得た塩は、自由流動、または実質的に自由流動するもの、すなわち少なくとも容易に流動するものである。
【0055】
粉末物質の流動性は、様々な方法で測定することができる。適切な方法は、ASTM D6773に記載の剪断試験法である。この試験はSchulze型リング剪断試験機により実施することができる。この試験では、流動性は圧密応力σ1の一軸降伏強度σcに対する比(ffc)によって定義される。易流動性物質ではffcは4超、より詳しくは4〜10の範囲である。自由流動物質では、ffcは少なくとも10である。Schulzeによれば、ffcが4以下の物質は、適度な流動性を有するには、凝集性が高すぎる。
【0056】
本明細書でさらにこの後に使用する方法では、流動性は、ASTM D6773に記載の剪断試験法により、Schulze型リング剪断試験機を用いて、10分間の貯蔵時間後、3kPaの圧密応力で、20℃で測定した。本発明の無水ジアミン/ジカルボン酸塩は4超、好ましくは7超、より一層好ましくは10超の流動性(ffc)を有する。
【0057】
本発明の方法で得られたジアミン/ジカルボン酸塩は、特有のモルフォロジーを有していることが観察された。これは顕微鏡技術、より詳しくは走査型電気顕微鏡(SEM)により観察できる。前記ジアミン/ジカルボン酸塩は、多結晶の微粒からなる粒状物質であり、個々の微粒は複数の微結晶および/または微結晶質ドメインからなる。微結晶は微粒表面のあらゆるところで見ることができる。微結晶は比較的シャープな粒度分布を有する。微粒は、その切断時に撮像したSEM像からわかるように、粒子全体がそのような微結晶または微結晶質ドメインからなっている。微粒内部の微結晶の平均径は、表面上のものより小さいことがわかった。
【0058】
微結晶は、通常、微粒よりはるかに小さい微小粒径を有する。最小の微粒でさえ、複数の微結晶からなるように見える。
【0059】
微粒は、d90が最大でも2.5μmの直径基準粒度分布を有する微結晶からなることが適切である。これは、微結晶の総数の少なくとも90%が、最大でも2.5μmの平均直径を有することを意味する。
【0060】
また、微粒は、d90が最大でも5μmの体積基準粒度分布を有する微結晶からなることが適切である。これは、微結晶の全体積の少なくとも90%が、最大でも5μmの平均直径を有する微結晶で構成されていることを意味する。
【0061】
本明細書では、直径は、本明細書でさらにこの後に説明するように、微粒の表面領域を撮像したSEM像からソフトウェア支援画像解析により測定した個々の微結晶の平均直径である。使用したソフトウェアは、Olympus America Inc.社の「Analysis.auto」、バージョン5.0である。それに基づいて、直径基準粒度分布および体積基準粒度分布を分析する。
【0062】
微結晶質ドメイン径、個々の微結晶の平均直径の測定、ならびに直径基準粒度分布および体積基準粒度分布分析で代表的かつ信頼できる値を得るには、最低3個の異なる微粒の像を分析すべきであり、各微粒について代表的な表面領域を選択すべきであり、各微粒の分析には平均して少なくとも75個の個別の粒子が含まれるべきである。異なる粒子につての結果は、総合した単一の粒度分布の計算を可能にするために、1つのリストに纏めることができる。
【0063】
特別の場合には、多結晶微粒、または少なくともその大部分、特により大きい微粒は球状である。用語「球状」は、本明細書では、平面および結晶学的角度を有さず、角を落として丸みをつけた形状と理解される。そのような形状は、多かれ少なかれ球形、すなわちジャガイモもしくはクルミなどのような形状であり得る。また、いくつかの微粒、特により大きいものは、乾燥した泥にあるようなクラックを有する。より小さい粒子は、通常、球状の形をあまりとらず、より顕著なクラックを有する。
【0064】
別の場合には、球状の微粒の割合ははるかに低い。その場合、より大きい粒子の多くも、球状の形をあまりとらず、非常に顕著なクラックを有する。これらの場合にはまた、微粒の全てが、微粒よりはるかに小さい粒径を有する複数の微結晶からなる。
【0065】
より球状に近い形態は、より小さいジアミンでより多く観察され、より顕著なクラックを有する形態は、より大きいジアミンで観察される。同様に、このことは、ジカルボン酸粒子がジアミンを吸収し反応するときに、粒子にクラックを発生させる膨潤を伴う機構により説明することができる。この膨潤、したがってクラックは、ジアミンが大きくなるほどより顕著になるであろう。
【0066】
微結晶の粒径が小さい場合、微粒は、多数を占める比較的小さいものでさえも、通常、非常に大きい粒径を有する。
【0067】
塩の粒状物質は小さくとも20μmのd10を有する粒度分布を有することが適切である。また、粒状物質は、大きくとも1000μmのd90を有し、また任意選択によりメジアン粒径(d50)が50〜600μmの範囲にあることが適切である。本明細書では、前述したように、粒度分布はISO 13320に記載の方法により測定される。
【0068】
ジアミン/ジカルボン酸塩の好ましい実施形態では、d10は20〜200μmの範囲にあり、かつ/またはd50は50〜500μmの範囲にあり、かつ/またはd90は200〜1000μmの範囲にある。より詳しくは、ジアミン/ジカルボン酸塩微粒のd10は20〜200μmの範囲にあり、d50は50〜500μmの範囲に、かつd90は200〜1000μmの範囲にある。
【0069】
また、多結晶微粒は、比(d84−d16)/d50で定義されるスパンによる粒度分布が、大きくとも5、好ましくは大きくとも2.5であることが好ましい。その利点は、より均一な製品、より少ない微粉、より良好な流動性を有することである。
【0070】
本発明の方法により得られるジアミン/ジカルボン酸塩のさらなる特徴は、粒状物質が一般に低い圧縮率を有することである。圧縮率は、ゆるめ嵩密度(ABD)とかため嵩密度(TBD)を比較することにより求められる。比(TBD−ABD)/TBD
*100%で表される圧縮率が、最大でも35%であることが適切である。ここで、ABDはゆるめ嵩密度、TBDはかため嵩密度であり、いずれもASTM D6393の方法により測定される。
【0071】
本明細書で前にも述べたように、本発明の塩は、1種以上のジカルボン酸と1種以上のジアミン、およびこれらの任意の好ましい組み合わせの塩を含むことが適切である。
【0072】
いくつかの実施例では、次の組み合わせが含まれる。6T/66;適切なモル比80/20〜20/80の範囲、例えば62/38;PA6T/610;適切なモル比90/10〜30/70の範囲、例えば70/30;PA6T/4T;適切なモル比90/10〜10/90の範囲、例えば60/40;およびPA6T/10T;適切なモル比90/10〜30/70の範囲、例えば70/30。本明細書において、4Tは、1,4−ブタンジアミンとテレフタル酸をベースとする塩である。6Tは、1,6−ヘキサンジアミンとテレフタル酸をベースとする塩である。66は、1,6−ヘキサンジアミンとアジピン酸をベースとする塩である。610は、1,6−ヘキサンジアミンとアジピン酸をベースとする塩である。10Tは1,10−デカンジアミンとテレフタル酸をベースとする塩である。
【0073】
塩は、1,4−ブタンジアミンとテレフタル酸をベースとする塩、および/または1,6−ヘキサンジアミンとテレフタル酸をベースとする塩を含むことがより好ましい。より詳しくは、塩は、テレフタル酸が全二酸の少なくとも70モル%の量で含まれ、かつ1,4−ブタンジアミンが全ジアミンの少なくとも10モル%の量で含まれる、1,4−ブタンジアミンとテレフタル酸をベースとするものである。塩は無水の4Tまたは6T塩であることがより一層好ましい。
【0074】
本発明はまた、ポリアミドを製造する重合法でのそれらの塩の使用に関する。
【0075】
以下の実施例および比較実験により本発明をさらに詳しく説明する。
【0076】
[方法]
[融点]
融点(Tm)は、ISO11357−3.2,2009の方法に記載のDSCにより、N2雰囲気中、20℃/minの加熱および冷却速度で測定した。本明細書では、最初の加熱サイクルにおける溶融ピークのピーク値で測定された温度をTmとした。
【0077】
[ゆるめ嵩密度(ABD)およびかため嵩密度(TBD)]
ABDおよびTBDは、ASTM D6393−08(「Standard Test Method for Bulk Solids Characterization by Carr Indices」,ASTM International, West Conshocken,PA,DOI:10.1520/D6393−08)に記載の方法により、20℃でHosokawa Powder Testerを用いて測定した。
【0078】
[粒度分布]
粒状物質の粒度分布は、ISO 13320−1に記載のレーザー粒度測定法により、Sympatec Helos(H0024)&Rodos装置を用い、0.5barの圧力を加え(ベンチュリ管内の測定値は25mbar低圧であった)、20℃で測定した。
【0079】
[剪断試験]
ASTM Standard D6773−08(「Standard Shear Test Method for Bulk Solids Using the Schulze Ring Shear Tester」,ASTM International,West Conshocken,PA,DOI:10.1520/D6773−08)に記載の方法により流動性を測定した。剪断試験は、Schulze Ringshear Testerを用い、圧密応力3kPa、20℃で行った。測定は試験機に充填後、直ちに開始した。
【0080】
[空隙率測定]
空隙率は、Micromeritics Autopore IV 9505ポロシメータ(www.micromeritics.com)を用い、真空から22MPaまでの圧力範囲で行った水銀圧入空隙率測定(MIP)実験により測定した。測定の前に、試料を16時間、真空に保った。その後、それぞれ約0.15gの乾燥物質である試料を試料ホルダーに移し、秤量した。
【0081】
[微結晶質ドメイン径]
微結晶質ドメイン径は、Olympus America inc.社の画像解析ソフトウェアプログラム「Analysis.auto」バージョン5.0の支援により解析した。解析には、異なる微粒の表面領域を撮像したSEM像を使用した。画像に含まれる微粒表面領域および微結晶の大きさに応じて、画像の一部を選択して使用した。
【0082】
典型的な例では、原画像は15×20μmの表面領域に相当する大きさであった。画像は3872×3306のピクセルを有した。約5×6μmの表面領域に相当する代表的な部分を画像から選択した。その画像は1238×963のピクセルを有した。
【0083】
適当な部分を選択後、ソフトウェアプログラムに記載されている「操作」の手順を以下のように行った。まず、ソフトウェアで記載されている通りに、N×N平均フィルターを使用し、6回の繰り返しとサイズ選択6により濃淡補正を行った。次に、画像をネガ像に変換する。変換した像から代表的部分を選択した。
【0084】
典型的な例では、選択部は約3.4×4.0μm(3.39×3.94μm)であった。
【0085】
検出装置の低閾値に低値(0に等しいか、0に近い値)を、高閾値に高値(約210)を適用して、選択部を二進画像に変換した。二進画像では、等高線を適用し、画像の乱れを除去するために、ソフトウェアにある「画像編集」オプションで補正する。「粒子解析」手順には、この編集した画像を使用する。
【0086】
この解析では、最小10ピクセルの大きさの粒子が検出される。検出された粒子は、次に、表面積、最小径および最大径、ならびに平均径が解析される。得られたデータはエクセル(Excel)に移される。
【0087】
本明細書で使用しているさらなる解析には、個々の粒子の平均径のデータを使用した。個々の粒子の平均径の値に基づき、理想的な球と仮定して、各粒子の理論体積を計算した。それに基づき、そして3個の異なる粒子の結果を併せて、体積基準粒度分布を計算し、d10、d50およびd90値を算出した。
【0088】
[出発物質]
テレフタル酸 工業グレード(BPアモコ(BP Amoco));0.05重量%の水
アジピン酸 工業グレード(ローディア(Rhodia));0.09重量%の水
セバシン酸 工業グレード(シグマ・アルドリッチ(Sigma Aldrich));<0.1重量%の水
1,4−ブタンジアミン 工業グレード(DSM);<0.5重量%の水
1,6−ヘキサンジアミン 工業グレード(シグマ・アルドリッチ);<0.5重量%の水
1,10−デカンジアミン 工業グレード(シグマ・アルドリッチ);<0.5重量%の水
gからmolへの変換の際、化学薬品は100%純粋であると見なす。
【0089】
[塩製造実験]
[実施例I]
ロータリーエバポレータに取り付けられ、加熱ジアミン添加容器を備えた、1.0リットルのバッフル付フラスコに、75gのテレフタル酸と40.4gのアジピン酸の混合物(62/38モル%)を仕込み、不活性な窒素雰囲気に維持し、50rpmで回転させて混合した。回転するフラスコを、中和熱を除去するために60℃に維持した水浴中に部分的に浸漬した。常に回転させながら、60℃の液体1,6−ヘキサンジアミン(86.6、すなわち化学量論量より約2モル%過剰、すなわちD/DA=1.02)を4時間かけて酸に滴下した。添加後、反応混合物を、60℃の水バッチ温度で、さらに20分間、回転させることにより撹拌した。実験後、さらさらした粉末の形態の塩が得られた。
【0090】
上記と同様にして、表1に示す実施例II〜VIの組成物を製造した。
【0091】
[実施例II]
実施例Iで記載のようにして、79.3gのテレフタル酸と41.4gのセバシン酸(70/30モル%)の混合物から出発し、81.3gの液体1,6−ヘキサンジアミンを4時間かけて加えることにより実施例IIを実施し、D/DA=1.026のさらさらした粉末を得た。
【0092】
[実施例III]
実施例Iで記載したようにして、122.5gのテレフタル酸から出発し、52.8gの1,6−ヘキサンジアミンと28.7gの1,4−ブタンジアミンの液体混合物(2.7gの過剰の1,4−ブタンジアミンを除けば、60/40モル%)を2時間かけて加えることにより実施例IIIを実施し、D/DA=1.026のさらさらした粉末を得た。
【0093】
[実施例IV]
実施例Iで記載したようにして、111.1gのテレフタル酸から出発し、56.4gの1,6−ヘキサンジアミンと34.6gの1,10−デカンジアミンの液体混合物(2.0gの過剰の1,6−ヘキサンジアミンを除けば、62/38モル%)を4時間かけて加えることにより実施例IVを実施し、D/DA=1.026のさらさらした粉末を得た。
【0094】
[実施例V]
実施例Iで記載したようにして、111.1gのテレフタル酸から出発し、84.3gの液体1,6−ヘキサンジアミンを5時間かけて加えることにより実施例Vを実施し、D/DA=1.024のさらさらした粉末を得た。
【0095】
[実施例VI]
実施例Iで記載したようにして、2リットルのバッフル付フラスコを使用し、326.65gのテレフタル酸から出発し、178.35gの液体1,4−ブタンジアミンを3時間かけて加えることにより実施例VIを実施し、D/DA=1.029のさらさらした粉末を得た。
【0096】
[比較実験A:水溶液法による4T塩の水中での製造]
還流冷却器、温度センサーおよび磁気撹拌子を備えた2000mlの3ツ口フラスコに、300gの脱イオン水および104.01gのDABを仕込んだ。第3の口に取り付けられたロートから、1分以上かけて195.99gのテレフタル酸(TPA)を加える。TPA添加中に、4T塩が白色スラリーとして生成する。600gの水を加え、次いで、反応混合物を、4T塩が溶解する温度T=90℃に加熱した。その後、生成物を水/氷浴で冷却し、冷却したスラリーをブフナーロートで濾過した。母液を800mlのエタノールと混合し、沈殿した塩を、同じブフナーロートに回収した。濾過ケーキを200mlのエタノールで洗浄した。空気流を濾過ケーキに16時間を通過させて空気乾燥した後、2つの沈殿画分を均質化するために生成物を混合し、真空下(絶対圧50mbar)、40℃で3時間乾燥させた。生成物は、DSCによる測定で283℃の融点を有していた。
【0097】
【表1】
【0098】
実施例VIの4T塩と比較実験A(CE−A)の4T塩について測定した特性の概要を表2に示す。これらの物質の顕微鏡写真を添付図面に示す。
【0099】
【表2】
【0100】
結果は、粒度分布および流動挙動の差のみならず、結晶質の形態の差も示している。EX−VIは、比較的大きいd10と小さいスパンを有するシャープな粒度分布と、低い圧縮率を示すが、CE−Aは、より小さいd10とより大きいスパンを有するより広い粒度分布と、より高い圧縮率を示す。粒度分布および圧縮率の差はまた、空隙率の測定値にも反映されている。空隙率の殆どは「細孔」が占めており、それぞれ5〜500μm(EX−VI)および2〜600μm(CE−A)の範囲の細孔径を有し、いずれも同様に粒子間空隙率に対応している。EX−VIは、CE−Aと比べて、より高くよりシャープな(20〜100μmに存在)ピークを、より大きい細孔径(70μm)の位置に有す。CE−Aは、より低いが、はるかに広い細孔径分布を有し、そのピークははるかに小さい細孔径(10μm)の位置にあるが、それでもなお100μmを超える径を持った細孔を相当な量で有している。
【0101】
異なる結晶質形態について、
図1〜5に示すSEM像により、さらに詳しく説明する。
図1:比較実験Aで得られた4T塩のSEM像。
図2〜5:実施例VIで得られた4T塩のSEM像。
【0102】
図1は比較実験Aで得られた4T塩を撮像したSEM像を示す。この画像は、大きな不規則な形状の微粒であって、それぞれ、比較的大きい径を有する多数のより小さい結晶からなる微粒と、より大きい径と幾分平坦な表面領域を有する僅かな数の結晶からなる微粒を示している。このような、より大きい微粒に隣接して、多数の小さい微粒が見られ、それらのいくつかは単一の結晶またはほんの僅かの数の結晶から構成されている。これらの結晶の多くは、直径が、やはり約5〜10μmの範囲にある。
【0103】
図2は、実施例VIで得られた4T塩を撮像したSEM像を示す。この画像は、多数の球状の微粒を示している。小さい粒子ほど球状の程度が低くなっている。小さい粒子の数は比較的少ない。
【0104】
図3は、球状の微粒を強調して、
図2のSEM像の選択した領域からとったSEM像を示す。微粒には、乾燥した泥にあるような、亀裂の影響が見られる。
【0105】
図4は、球状の微粒の表面領域を強調して、
図3のSEM像の選択した領域からとったSEM像を示す。微粒の表面には多くの小さい結晶が見られる。
【0106】
図5は、球状の微粒の一部と、より不規則な形状のより小さい微粒を強調して、
図2のSEM像の他の選択した領域からとったSEM像を示す。後者の微粒には、
図3の球状の微粒と比べて、乾燥した泥にあるような亀裂のより厳しい影響が見られる。
【0107】
[実施例VIの微結晶質ドメイン径]
実施例VIの塩では、微結晶質ドメインの粒度分布を、粒子表面と粒子内部の両方で測定した。後者では、横に切った粒子を使用した。
図6〜14はそれぞれ、実施例VIの塩微粒内部のSEM像(
図6)および塩微粒内部のSEM像(
図10)から始めて、解析手順の異なる段階を示している。結果を表3に示す。
図6〜9:粒度解析の異なる段階後の4T微粒内部の微結晶質ドメイン像。
図10〜13:粒度解析の異なる段階後の4T微粒外面の微結晶質ドメイン像。
【0108】
図6は、実施例VIの4T塩の原SEM像を示し、微粒内部の微結晶質ドメインを示す。
【0109】
図7は、画像のコントラストを最適化し、濃淡補正を施した、
図6の選択部分を示す。
【0110】
図8は、画像を反転させ、コントラストを一段と最適化した、
図7の選択部分を示す。
【0111】
図9は、画像を二進化し、編集し、さらに粒度解析の準備ができた、
図8の選択部分を示す。
【0112】
図10は、実施例VIの4T塩のSEM像を示し、微粒外面の微結晶質ドメインを示す。SEM像のコントラストは既に最適化され、濃淡も補正されている。
【0113】
図11は、画像を反転させ、コントラストを一段と最適化した
図10の選択部分を示す。
【0114】
図12は、画像を二進化した、
図8と同じ選択部分を示す。
【0115】
図13は、画像を編集し、粒度解析の準備ができた、
図12の選択部分を示す。
【0116】
【表3】
【0117】
[実施例VIIおよびVIII]
実施例VIIおよびVIIIは、使用したテレフタル酸が異なる以外は、実施例VIの繰り返しであった。実施例VIIでは、シャープな粒度分布と小さいメジアン粒径を有する特別グレード品を使用した。実施例VIIIでは、やはりシャープな粒度分布を有するが、メジアン径はより大きい特別グレード品を使用した。どちらの場合も、自由流動粉末が得られた。特別グレードのテレフタル酸(比較実験BおよびCと称する)、ならびに実施例VIIおよび実施例VIIIの粒度分布と、実施例VIIおよび実施例VIIIの4T塩の流動性の結果を、表4に示す。
【0118】
【表4】
【0119】
結果は、寸法、または少なくともその大部分が体系的に増加しているという事実は別として、テレフタル酸出発物質の粒度分布が、粒度分布に直接反映されていることを示している。この粒径の増加は、粒度分布の保持と共に、ジカルボン酸粒子を破壊せずに膨張させる、ジアミンのジカルボン酸への吸収およびそれとの反応により説明し得るであろう。同時に、密度はEX VIIIで最も顕著に、大きく減少しているが、圧縮率は依然低い。密度がより低くなるのは、酸に比べて塩の固有密度がより低いことと、粒子内の亀裂および微結晶間の空間が小さいことによるものであり得る。剪断試験の結果は、両物質が自由流動することを示している。
【0120】
[実施例IX]
アジピン酸(1バッチ当たり25〜100kgの範囲)とテレフタル酸(1バッチ当たり350〜425kgの範囲)の混合物を、3000リットルのタンブル乾燥機に仕込んだ。窒素で置換した後、溶融した(100%、工業グレード)1,4−ブタンジアミン(25〜100kg)と1,6−ヘキサンジアミン(200〜275kg)の50℃の混合物を、穿孔平板分配器を通し、乾燥機全体を回転させながら、大気圧で約4時間かけて固体酸上に噴霧した。生成物温度を、乾燥機内でPT−100素子を使用して時間内に測定し、乾燥機の内容物を、乾燥器壁を介して冷却することにより80℃未満に維持した。添加終了後、さらに1時間混合して得られた塩は、自由流動する結晶質の白色粉末の外観を呈していた。
【0121】
[実施例X]
アジピン酸(1バッチ当たり2.5〜10kgの範囲)とテレフタル酸(1バッチ当たり35〜42.5kgの範囲)の混合物を180リットルの螺旋式撹拌機を有するコニカルドライヤーに仕込んだ。窒素で置換した後、最初に(100%、工業グレードの)1,4−ブタンジアミン(2.5〜10kg)を、次に(100%、工業グレードの)1,6−ヘキサンジアミン(20〜27.5kg)を、4本パイプ(Swazeloc 1/8”)の分配器を通し、螺旋式撹拌機で反応物質を撹拌しながら、大気圧で約1.5〜2時間かけて固体酸上に噴霧した。生成物の温度を、時間内に、乾燥機壁と同一平面のPT−100素子を使用して測定し、乾燥機の内容物を、乾燥器壁を介して冷却することにより65℃未満に維持した。添加終了後、窒素下で150℃まで加熱し、次いで冷却して得られた塩は、自由流動する結晶質の白色粉末の外観を呈していた。1,4−ブタンジアミン(2.5〜10kg)と(100%、工業グレードの)1,6−ヘキサンジアミン(20〜27.5kg)とを予備混合したアミン混合物を使用して、同じ手順を数回繰り返したところ、非常に類似した、自由流動する結晶質の白色粉末が得られた。
【0122】
[実施例XI]
テレフタル酸(45kg)を180リットルの螺旋式撹拌機を有するコニカルドライヤーに仕込んだ。窒素で置換した後、(100%、工業グレードの)1,4−ブタンジアミン(2.5〜10kg)と(100%、工業グレードの)1,6−ヘキサンジアミン(20〜27.5kg)の混合物を、4本パイプ(Swazeloc 1/8”)の分配器を通し、螺旋式撹拌機で反応物質を撹拌しながら、大気圧で約1.5〜2時間かけて固体酸上に噴霧した。生成物の温度を、時間内に、乾燥機壁と同一平面のPT−100素子を使用して測定し、乾燥機の内容物を、乾燥器壁を通して冷却することにより65℃未満に維持した。添加終了後、さらに1時間混合して得られた塩は、自由流動する結晶質の白色粉末の外観を呈していた。
【0123】
[実施例XII]
アジピン酸(1バッチ当たり0.6〜2.7kgの範囲)とテレフタル酸(1バッチ当たり9.3〜11.3kgの範囲)の混合物を50リットルのDRAISプロシェアミキサーに仕込んだ。窒素で置換した後、(100%、工業グレードの)1,4−ブタンジアミン(0.6〜2.7kg)と(100%、工業グレードの)1,6−ヘキサンジアミン(5.4〜7.4kg)の混合物を、単一パイプ(Swazeloc 1/8”)を通し、プロシェアミキサーで反応物質全体を撹拌しながら、大気圧で約1時間かけて固体酸上に噴霧した。生成物の温度を、時間内に、ドライヤーに挿入し、鋤状の翼の間に設置したPT−100素子を使用して測定し、乾燥機の内容物を、ミキサーを介して冷却することにより70℃未満に維持した。添加終了後、さらに1時間混合して得られた塩は、自由流動する結晶質の白色粉末の外観を呈していた。
【0124】
[実施例XIII]
アジピン酸(1バッチ当たり0.8〜3.3kgの範囲)、テレフタル酸(1バッチ当たり11.6〜14.2kgの範囲)および安息香酸(1バッチ当たり0.1〜0.6kgの範囲)の混合物を100リットルのタンブル乾燥機に仕込んだ。窒素で置換した後、溶融した(100%、工業グレードの)1,4−ブタンジアミン(0.8〜3.3kg)と1,6−ヘキサンジアミン(6.6〜9.2kg)の50℃の混合物を、4部からなる(Swazeloc 1/8”)パイプ分配器を通し、乾燥機全体を回転させながら、大気圧で約2時間かけて固体酸上に噴霧した。生成物の温度を、時間内に、ドライヤー内のPT−100素子を使用して測定し、乾燥機の内容物を、乾燥機壁を介して冷却することにより80℃未満に維持した。添加終了後、さらに1時間混合して得られた塩は、自由流動する結晶質の白色粉末の外観を呈していた。