特許第6342822号(P6342822)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティドの特許一覧

特許6342822自動運転システム、自動運転の方法及びコンピューティング装置
<>
  • 特許6342822-自動運転システム、自動運転の方法及びコンピューティング装置 図000002
  • 特許6342822-自動運転システム、自動運転の方法及びコンピューティング装置 図000003
  • 特許6342822-自動運転システム、自動運転の方法及びコンピューティング装置 図000004
  • 特許6342822-自動運転システム、自動運転の方法及びコンピューティング装置 図000005
  • 特許6342822-自動運転システム、自動運転の方法及びコンピューティング装置 図000006
  • 特許6342822-自動運転システム、自動運転の方法及びコンピューティング装置 図000007
  • 特許6342822-自動運転システム、自動運転の方法及びコンピューティング装置 図000008
  • 特許6342822-自動運転システム、自動運転の方法及びコンピューティング装置 図000009
  • 特許6342822-自動運転システム、自動運転の方法及びコンピューティング装置 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6342822
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】自動運転システム、自動運転の方法及びコンピューティング装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20180604BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20180604BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20180604BHJP
   B60R 21/00 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
   G08G1/16 C
   G01C21/26 A
   G08G1/00 X
   B60R21/00 624G
   B60R21/00 624F
   B60R21/00 621
   B60R21/00 622A
   B60R21/00 624
【請求項の数】20
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-5964(P2015-5964)
(22)【出願日】2015年1月15日
(65)【公開番号】特開2015-135679(P2015-135679A)
(43)【公開日】2015年7月27日
【審査請求日】2016年7月6日
(31)【優先権主張番号】14/156,893
(32)【優先日】2014年1月16日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507342261
【氏名又は名称】トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100130133
【弁理士】
【氏名又は名称】曽根 太樹
(72)【発明者】
【氏名】長坂 直樹
(72)【発明者】
【氏名】原田 将弘
(72)【発明者】
【氏名】奥村 文洋
(72)【発明者】
【氏名】坂井 克弘
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 展秀
【審査官】 白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−114954(JP,A)
【文献】 特開2010−158987(JP,A)
【文献】 特開2010−228740(JP,A)
【文献】 特開2008−290648(JP,A)
【文献】 特開2013−232241(JP,A)
【文献】 特開2013−091443(JP,A)
【文献】 特開2010−163164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
B60R 21/00
G01C 21/26
G08G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗り物に配置された1つ以上のセンサと、
該1つ以上のセンサと通信するコンピューティング装置と、を具備する自動運転システムであって、前記コンピューティング装置は、
当該コンピューティング装置の操作を制御するための1つ以上のプロセッサと、
該1つ以上のプロセッサによって使用されるデータ及びプログラム指令を記憶するためのメモリと、を有し、前記1つ以上のプロセッサは、
前記乗り物の周辺環境特有の情報に基づいて、乗り物が未だ至っていないナビゲーションルートの部分に沿った車線内における複数の可能乗り物経路を決定し、
前記乗り物が、前記ナビゲーションルートの部分に至ったときに、前記乗り物に配置された前記1つ以上のセンサからの入力に基づいて前記複数の可能乗り物経路の近くにある1つ以上の物体を注意対象として分類する指示を受信し、
前記1つ以上の注意対象の特性に基づいて前記複数の可能乗り物経路から、1つ以上の注意対象に対して閾値距離を維持する好適乗り物経路を選択し、且つ、
現在経路から移行し前記ナビゲーションルートに沿った前記好適乗り物経路に従うように前記乗り物を制御するための命令を1つ以上の乗り物システムに対して送信するために、
前記メモリに記憶された指令を実行するように構成された、自動運転システム。
【請求項2】
前記乗り物の周辺環境特有の情報が車線情報を含み、該車線情報が、車線数、車線幅及び車線エッジの特徴、の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の自動運転システム。
【請求項3】
複数の可能乗り物経路を決定することが、更に前記乗り物のナビゲーションルートに基づく、請求項1に記載の自動運転システム。
【請求項4】
前記複数の可能乗り物経路の近くにある前記1つ以上の物体を注意対象として分類することが、前記複数の可能乗り物経路の近くにある前記1つ以上の物体の1つ以上の特性を検出すること及び解析することを含み、
前記1つ以上の注意対象の前記1つ以上の特性が、前記乗り物からの相対距離及び前記複数の可能乗り物経路からの相対距離の少なくとも一方と、前記乗り物に対する相対速度及び相対運動方向との、少なくとも一方を含む、請求項1に記載の自動運転システム。
【請求項5】
注意対象に分類されるものがない場合に、前記1つ以上のプロセッサが、前記複数の可能乗り物経路及び前記車線情報に基づいて好適乗り物経路を選択するように更に構成された、請求項2に記載の自動運転システム。
【請求項6】
コンピュータにより実施される自動運転の方法であって、
乗り物の周辺環境特有の情報に基づいて、乗り物が未だ至っていないナビゲーションルートの部分に沿った車線内における複数の可能乗り物経路を決定することと、
前記乗り物が、前記ナビゲーションルートの部分に至ったときに、前記乗り物に配置された1つ以上のセンサから受信される入力に基づいて、前記複数の可能乗り物経路の近くにある1つ以上の物体を注意対象として分類する指示を受信することと、
前記1つ以上の注意対象の特性に基づいて前記複数の可能乗り物経路から、1つ以上の注意対象に対して閾値距離を維持する好適乗り物経路を選択することと、
現在経路から移行し前記ナビゲーションルートに沿った前記好適乗り物経路に従うように前記乗り物を制御するための命令を1つ以上の乗り物システムに対して送信することと、を含む、方法。
【請求項7】
前記乗り物の周辺環境特有の情報が、車線情報を含み、該車線情報が、車線数、車線幅及び車線エッジの特徴、の少なくとも1つを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
複数の可能乗り物経路を決定することが、更に前記乗り物のナビゲーションルートに基づく、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の可能乗り物経路の近くにある前記1つ以上の物体を注意対象として分類することが、前記複数の可能乗り物経路の近くにある前記1つ以上の物体の1つ以上の特性を検出すること及び解析することを含み、
前記1つ以上の注意対象の前記1つ以上の特性が、前記乗り物からの相対距離及び前記複数の可能乗り物経路からの相対距離の少なくとも一方と、前記乗り物に対する相対速度及び相対運動方向との、少なくとも一方を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
注意対象に分類されるものがない場合に、前記複数の可能乗り物経路及び前記車線情報に基づいて好適乗り物経路を選択することを更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
コンピューティング装置であって、
当該コンピューティング装置の操作を制御するための1つ以上のプロセッサと、
該1つ以上のプロセッサによって使用されるデータ及びプログラム指令を記憶するためのメモリと、を具備し、前記1つ以上のプロセッサが、
乗り物の周辺環境特有の情報に基づいて、乗り物が未だ至っていないナビゲーションルートの部分に沿った車線内における複数の可能乗り物経路を決定し、
前記乗り物が、前記ナビゲーションルートの部分に至ったときに、前記乗り物に配置された1つ以上のセンサから受信された入力に基づいて前記複数の可能乗り物経路の近くにある1つ以上の物体を注意対象として分類する指示を受信し、
前記1つ以上の注意対象の特性に基づいて前記複数の可能乗り物経路から、1つ以上の注意対象に対して閾値距離を維持する好適乗り物経路を選択し、且つ、
現在経路から移行し前記ナビゲーションルートに沿った前記好適乗り物経路に従うように前記乗り物を制御するための命令を1つ以上の乗り物システムに対して送信するために、
前記メモリに記憶された指令を実行するように構成された、コンピューティング装置。
【請求項12】
前記乗り物の周辺環境特有の情報が車線情報を含み、前記車線情報が、車線数、車線幅及び車線エッジの特徴、の少なくとも1つを含む、請求項11に記載のコンピューティング装置。
【請求項13】
複数の可能乗り物経路を決定することが、更に前記乗り物のナビゲーションルートに基づく、請求項11に記載のコンピューティング装置。
【請求項14】
前記複数の可能乗り物経路の近くにある前記1つ以上の物体を注意対象として分類することが、前記複数の可能乗り物経路の近くにある前記1つ以上の物体の1つ以上の特性を検出すること及び解析することを含み、
前記1つ以上の注意対象の前記1つ以上の特性が、前記乗り物からの相対距離及び前記複数の可能乗り物経路からの相対距離の少なくとも一方と、前記乗り物に対する相対速度及び相対運動方向との、少なくとも一方を含む、請求項11に記載のコンピューティング装置。
【請求項15】
注意対象に分類されるものがない場合に、前記1つ以上のプロセッサが、前記複数の可能乗り物経路及び前記車線情報に基づいて好適乗り物経路を選択するように構成された、請求項12に記載のコンピューティング装置。
【請求項16】
前記乗り物の周辺環境特有の情報が車線情報を含み、該車線情報が、前記車線に対する車線エッジの特徴を含み、前記複数の可能乗り物経路の各々は、前記車線エッジの特徴に対して閾値距離を維持する、請求項1に記載の自動運転システム。
【請求項17】
前記複数の可能乗り物経路の一つは、車線エッジの特徴に基づいて車線の中央線として決定され、前記複数の可能乗り物経路の残りの少なくとも幾つかは、車線エッジの特徴に基づいて該車線エッジの特徴からのオフセット線として決定される、請求項16に記載の自動運転システム。
【請求項18】
前記好適乗り物経路は、車線の中央線近くにある、請求項16に記載の自動運転システム。
【請求項19】
前記乗り物の周辺環境特有の情報が車線情報を含み、該車線情報が、前記車線に対する車線エッジの特徴を含み、前記複数の可能乗り物経路の各々は、前記車線エッジの特徴に対して閾値距離を維持し、
前記複数の可能乗り物経路の一つは、車線エッジの特徴に基づいて車線の中央線として決定され、前記複数の可能乗り物経路の残りの少なくとも幾つかは、車線エッジの特徴に基づいて該車線エッジの特徴からのオフセット線として決定され、
前記好適乗り物経路は、車線の中央線近くにある、
請求項6に記載の方法。
【請求項20】
前記乗り物の周辺環境特有の情報が車線情報を含み、該車線情報が、前記車線に対する車線エッジの特徴を含み、前記複数の可能乗り物経路の各々は、前記車線エッジの特徴に対して閾値距離を維持し、
前記複数の可能乗り物経路の一つは、車線エッジの特徴に基づいて車線の中央線として決定され、前記複数の可能乗り物経路の残りの少なくとも幾つかは、車線エッジの特徴に基づいて該車線エッジの特徴からのオフセット線として決定され、
前記好適乗り物経路は、車線の中央線近くにある、
請求項11に記載のコンピューティング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗り物の自動運転システム、自動運転の方法及びコンピューティング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
運転者が路上で安全且つ効率的に乗り物を操作することを支援するため、部分的に自動化又は監視される運転システムが設計されており、例えば、運転者が不注意となったときに警告を送るように運転者の視標を追跡する、乗り物が車線から外れたときに運転者に警告を送るように乗り物の車線を追跡する、運転者が適応走行制御を起動させているときに運転者の前方乗り物との距離に基づいて乗り物の速度を制御する、といった手法が使われている。
【0003】
例えば自動運転車など、運転者との相互作用その他の外的制御なしに路上で乗り物を操作するための完全自動運転システムも設計されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動運転システムとは、運転者との相互作用なしに路上の乗り物を操作できるシステムと表現することができる。本明細書で説明する自動運転システムは、乗り物周辺の運転環境の物理的特性に基づいて乗り物を自動操作することができる。運転環境の物理的特性には、地図情報に基づき乗り物が従う又はたどるべきナビゲーションルートに加えて、他の乗り物等の関連する注意対象(object of interest)も含まれ、注意対象とは、ナビゲーションルートに沿った所定の可能乗り物経路(potential vehicle path)のうち、乗り物が従うべき好適乗り物経路(preferred vehicle path)として、どの可能乗り物経路を選択するかに影響を及ぼす物体である。好適乗り物経路を選択する際は、乗り物のナビゲーションルートに最も関連性の高い注意対象のみを考慮すればよい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施態様では、自動運転システムが開示される。この自動運転システムは、乗り物に配置された1つ以上のセンサと、1つ以上のセンサと通信するコンピューティング装置と、を備える。このコンピューティング装置は、コンピューティング装置の操作を制御するための1つ以上のプロセッサと、1つ以上のプロセッサによって使用されるデータ及びプログラム指令を記憶するためのメモリと、を備える。1つ以上のプロセッサは、メモリに記憶された指令を実行して、乗り物の周辺環境特有の情報(information specific to the environment surrounding the vehicle)に基づいて1つ以上の可能乗り物経路を決定し、乗り物に配置された1つ以上のセンサからの入力に基づいて1つ以上の可能乗り物経路の近くにある1つ以上の物体を注意対象として分類する(classifying)指示を受信し、1つ以上の注意対象の特性に基づいて1つ以上の可能乗り物経路から好適乗り物経路を選択し、且つ、好適乗り物経路に従うように乗り物を制御するための命令を1つ以上の乗り物システムに対して送信するように構成される。
【0006】
別の実施態様では、コンピュータにより実施される自動運転の方法が開示される。この自動運転の方法は、乗り物の周辺環境特有の情報に基づいて1つ以上の可能乗り物経路を決定することと、乗り物に配置された1つ以上のセンサからの入力に基づいて、1つ以上の可能乗り物経路の近くにある1つ以上の物体を注意対象として分類する指示を受信することと、1つ以上の注意対象の特性に基づいて1つ以上の可能乗り物経路から好適乗り物経路を選択することと、好適乗り物経路に従うように乗り物を制御するための命令を1つ以上の乗り物システムに対して送信することと、を含む。
【0007】
別の実施態様では、コンピューティング装置が開示される。このコンピューティング装置は、コンピューティング装置の操作を制御するための1つ以上のプロセッサと、この1つ以上のプロセッサによって使用されるデータ及びプログラム指令を記憶するためのメモリと、を備える。この1つ以上のプロセッサは、メモリに記憶された指令を実行して、乗り物の周辺環境特有の情報に基づいて1つ以上の可能乗り物経路を決定し、乗り物に配置された1つ以上のセンサから受信された入力に基づいて1つ以上の可能乗り物経路の近くにある1つ以上の物体を注意対象として分類する指示を受信し、1つ以上の注意対象の特性に基づいて1つ以上の可能乗り物経路から好適乗り物経路を選択し、且つ、好適乗り物経路に従うように乗り物を制御するための命令を1つ以上の乗り物システムに対して送信するように構成される。
【0008】
本明細書の説明において添付の図面を参照するが、幾つかの図面を通じて同様の参照番号は同様の部分を指す。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】自動運転システムを実施するためのコンピューティング装置のブロック図である。
図2図1のコンピューティング装置を備えた乗り物の概略図である。
図3図2の乗り物が走行するナビゲーションルートの一部分の例と、当該ナビゲーションルート部分に沿った可能乗り物経路の例示的組を示す図である。
図4図2の乗り物が走行するナビゲーションルートの別の一部分の例と、当該ナビゲーションルートの部分に沿った可能乗り物経路の別の例示的組を示す図である。
図5図3の可能乗り物経路の組及び図2の乗り物に近接する複数の物体を示す図である。
図6図4の可能乗り物経路の組及び図2の乗り物に近接する複数の物体を示す図である。
図7図5の複数の近接物体によって図3の可能乗り物経路の組から選ばれた、好適乗り物経路の例を示す図である。
図8図6の複数の近接物体によって図4の可能乗り物経路の組から選ばれた、好適乗り物経路の例を示す図である。
図9】自動運転システムが実行する処理の論理フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
乗り物用の自動運転システムを以下に開示する。乗り物を自律的に操作する上で、乗り物の周辺環境特有の情報(例えば地図情報及び車線情報)に基づいて、乗り物がナビゲーションルート沿いにたどるべき1つ以上の可能乗り物経路を決定するように自動運転システムを構成することができる。また、乗り物に設けられたセンサからの入力に基づいて、乗り物に近接する1つ以上の物体を注意対象として分類する指示を受け取るように、自動運転システムを構成することもできる。自動運転システムは、乗り物に対する注意対象の相対位置や速度といった特性に基づいて、1つ以上の可能乗り物経路から好適乗り物経路を選択でき、乗り物がこの好適乗り物経路をたどるように制御する命令を送ることができる。
【0011】
図1は、この自動運転システムを実施するためのコンピューティング装置100のブロック図である。コンピューティング装置100は、乗り物搭載型、ハンドヘルド型、デスクトップ型、その他の形態の単一コンピューティング装置であってよく、或いは複数のコンピューティング装置で構成されていてもよい。コンピューティング装置内の処理装置は、従来の中央処理装置(CPU)102であってよく、或いは、情報を操作又は処理できる他の種類の単一又は複数の装置であってもよい。コンピューティング装置内のメモリ104は、ランダムアクセスメモリデバイス(RAM)又は他の適した形式の記憶装置であってよい。メモリ104は、バス108を用いてCPUからアクセスされるデータ106を包含することができる。
【0012】
メモリ104は、オペレーティングシステム110及びインストールされたアプリケーション112も包含でき、インストールされたアプリケーション112には、CPU102が後述する自動運転の方法を実行できるようにするプログラムが含まれる。また、コンピューティング装置100は、例えばメモリカード、フラッシュドライブ、その他の形態のコンピュータ可読媒体等の、二次的、追加的、又は外部記憶装置114を備えることもできる。インストールされたアプリケーション112の全部又は一部を外部記憶装置114に保存して、処理で必要とされる場合にメモリ104に読み込むこともできる。
【0013】
コンピューティング装置100は、1つ以上のセンサ116と連結することもできる。センサ116は、慣性計測装置(IMU)、推測航法システム、全地球的航法衛星システム(GNSS)、LIDAR(光検知測距)システム、レーダーシステム、ソーナーシステム、画像ベースのセンサシステム、その他、乗り物周辺環境特有の情報を捕捉(capture)することのできる任意の種類のシステムにより、処理用のデータ及び/又は信号を捕捉することができ、乗り物周辺環境特有の情報の例として、乗り物のナビゲーションルートに近接する他の乗り物、歩行者、乗り物が走行するルートの特徴、又は他の局所的位置データ及び/若しくは信号、並びにCPU102への対応する出力データ及び/若しくは信号等の物体に固有の情報が挙げられる。
【0014】
また、センサ116は、乗り物のX軸、Y軸、及びZ軸位置、速度、加速、回転角、並びに回転角速度のそれぞれの変化を表すデータ、並びに乗り物のナビゲーションルートに近接する物体に関する類似データを捕捉することもできる。センサ116が推測航法システム用のデータを捕捉する場合は、ホイール回転速度、走行距離、ステアリング角、及びステアリング角変化率を捕捉できる。センサ116がGNSS用の信号を捕捉する場合は、受信機が乗り物の位置と速度の推定値をグローバル座標で算出することができる。複数の衛星を使用して、三次元三角測量(three-dimensional triangulation)及び時間評価により乗り物の位置と速度を推定することができる。
【0015】
センサ116がLIDARシステム用のデータを捕捉する場合、乗り物の周辺環境から返される強度及び反射率に関する測距データを捕捉できる。下記の例において、センサ116は、少なくとも、乗り物の速度、加速度、減速度、位置及び方向を推定する推測航法システム又は他のシステムのためのデータと、乗り物の位置及び速度を決定するGNSS又は他のシステムのための信号と、車線(例えばルート表面のマーク、ルート境界)、障害物、又は、交通信号灯及び道路標識を含む他の環境特徴、からの乗り物の距離を計測するLIDARシステム又は他のシステムのためのデータと、を捕捉することができる。
【0016】
コンピューティング装置100は、1つ以上の乗り物システム118と連結することもできる。乗り物システム118は、様々な乗り物コントローラ及びアクチュエータを含むことができる。1つ以上の乗り物アクチュエータに命令を送信するように、各乗り物コントローラを構成することができる。例えば、ある乗り物コントローラを、乗り物アクチュエータ(例えばエンジンスロットル)に命令を送信するように構成された推進コントローラにして、アクセルペダルの位置に基づいてスロットルプレートの位置を移動することができる。別の例では、乗り物アクチュエータを、トラクションコントロールシステム又はハイブリッドコントロールシステムの部分とすることができる。別の例として、ある乗り物コントローラを、ハンドルの現在の角度の最適値より大きいか小さいヨー運動(乗り物の鉛直軸線周りの回転)が検出された場合に、フロントブレーキとリアブレーキのいずれか一方を作動させる命令を送信するように構成された電子安定コントローラとすることができる。乗り物システム118とセンサ116間を通信可能にして、乗り物システム118の性能を表すデータを捕捉するようにセンサ116を構成することもできる。
【0017】
図1に示す例示的コンピューティング装置100において、メモリ104内のアプリケーション112は、少なくともデータアナライザ120と経路プランナ122とを含む。これらのアプリケーション112の各々については、下記でさらに詳しく説明する。概して、センサ116によって捕捉されたデータは、乗り物の周辺環境を理解し、乗り物のためのナビゲーションルートに沿った乗り物の自動操作のために1つ以上の可能乗り物経路を計画し、乗り物の位置精度を改善し、且つ、乗り物の現在の操作特性を変更すべく乗り物システム118に対して命令を送信するために、1つ以上のこれらのアプリケーション112によって使用され得る。
【0018】
図2は、図1に示すコンピューティング装置100を備えた乗り物200の概略図である。コンピューティング装置100は、図2に示すように乗り物200の内部に配置されてよく、或いは、乗り物200から離れた別の場所(図示せず)に配置されてもよい。コンピューティング装置100が乗り物から離れた場所に配置される場合、コンピューティング装置100と通信する機能を乗り物200に搭載してもよい。
【0019】
乗り物200は、図1を参照して説明されているセンサ116等の複数のセンサを備えてよい。図示されているセンサ116の1つ以上を、速度、加速、ホイール回転速度、周辺環境内の物体までの距離のそれぞれの変化を捕捉してコンピューティング装置100が使用できるように構成してよく、これにより、複数の衛星からの信号の他、乗り物の現在の状態や乗り物の周囲環境に対する乗り物200の位置を特定するのに使用可能なデータ及び/又は信号に基づいて、乗り物の位置と向き、推測航法システム用のステアリング角、画像センサ処理用の画像、グローバル座標の乗り物位置を推定することができる。
【0020】
例えば、LIDARシステムが使用するデータを捕捉するようにセンサ116を構成した場合、センサ116は、信号がセンサ116に戻るまでの時間を計測することにより算出されたレーザー測定距離と共に、乗り物200の周辺領域内の物理的物体からのレーザーの戻り(laser returns)に関連するデータを捕捉できる。レーザーの戻りには、センサ116から、又は乗り物200に接触若しくは近接する他の源から発せられる光源(例えばレーザー光)が衝突した物体から反射する後方散乱光が含まれ得る。光が物体から反射した後、センサ116は、物体の各ポイントの強度値及び反射率を捕捉して、これらのデータを用いて物体を解析し分類でき、例えばコンピューティング装置100内に保存されているか又はコンピューティング装置100にアクセス可能なアプリケーション112の1つであるデータアナライザ120により、物体を解析し分類することができる。
【0021】
図1に概略的に示されたデータアナライザ120は、1つ以上のセンサ116が捕捉したデータ及び/又は信号を、例えばフィルタでノイズ除去し、特徴を抽出してクラスタ化し、且つ/又は、物体を分類し追跡することにより、解析することができる。データアナライザ120は、経路プランナ122のような、自動運転システムを実施するために用いられるアプリケーション112によって使用されるためにデータが構成されるように、1つ以上のセンサ116からのデータを処理することができる。経路プランナ122は、周辺環境及び例えば乗り物200の運転者によって選択された任意の目的地に対する現在の乗り物200の位置に基づいて、乗り物200が従うナビゲーションルートを決定するように構成され得る。したがって、経路プランナ122は、データアナライザ120から受信したデータに基づいて乗り物のナビゲーションルートを決定することができる。
【0022】
図3は、図2の乗り物200が通過するナビゲーションルートの一部分の例と、当該ナビゲーションルート部分に沿う可能乗り物経路の例示的組を示す図である。図3に示す例示的ナビゲーションルートには、3つの車線300、302、304が含まれている。それぞれの車線300、302、304は、車線304の下エッジにおける縁石306、車線300の上エッジにおける実線の車線マーキング308、及び、車線302の上エッジ及び下エッジを形成すると共に車線300の下エッジ及び車線304の上エッジを形成する破線の車線マーキング310、312といった、複数の車線エッジの特徴(lane edge features)の間で形成される。これらの車線の特徴は、乗り物200の位置に対応する地図情報を用いることにより、経路プランナ122により認識でき、乗り物200に配置されたセンサ116が捕獲したデータにより確認されて、地図情報と比較される。地図情報は、コンピューティング装置100のメモリ104内に記憶されてもよく、或いは、経路プランナ122が遠隔位置から利用できるようにしてもよい。図3の例示的ナビゲーションルートにおいて、データアナライザ120及び経路プランナ122は、乗り物が同じ方向で移動するために3つの例示的車線300、302、304が設定されるように(designed)決定することができ、且つ、乗り物200及び他の乗り物のような他の物体が、ナビゲーションルートの部分に沿って車線300、302、304の間を移動し得るように決定することができる。
【0023】
データアナライザ120及び経路プランナ122は、乗り物200が、ナビゲーションルートの所定の部分に至る前に可能乗り物経路の組をあらかじめ決定するため、地図情報の一部として利用可能な車線情報、或いは、車線エッジの特徴、車線の数及び車線全体の幅のようにセンサ116によって捕捉されたような車線情報を使用することもできる。地図情報の構築方法としては、例えば、LIDARセンサを用いてデータを収集し、SLAM(simultaneous localization and mapping)手法を用いてデータを操作して地図を構築できる。また、ルートネットワーク定義ファイル(RNDF)等のソースから地図情報を収集することもできる。可能乗り物経路の決定方法としては、数値最適化手法を用いることができる。図3に示す車線300、302、304の各々は、地図情報内に存在する特徴に基づいて選択された、4つ又は5つの予め決定された可能乗り物経路を含む。
【0024】
例えば、車線302は5つの可能乗り物経路を含む。可能乗り物経路314は、車線マーキング310、312の間の車線302の中心に沿って伸びており、図面では、乗り物200は現在、この可能乗り物経路314を走行中である。可能乗り物経路316、318は、車線マーキング310、312からオフセットするように予め決定されている。オフセットの量は、予め決定される経路の配置間隔の基準となる車線の特徴の形式に基づいて決定できる。例示的な可能乗り物経路316、318におけるオフセット値は、車線マーキング310、312が車線302の両エッジを成す破線であることを示す車線情報に基づいている。車線302には、車線マーキング310、312の内側の縁又はマーキングに沿って位置する可能乗り物経路320、322も含まれ、車線302に関連付けられた所定の可能乗り物経路は計5つ(314、316、318、320、322)存在する。
【0025】
別の例では、車線304は4つの可能乗り物経路を含む。可能乗り物経路324は、車線マーキング312と縁石306の間に設定された車線304の中心線近くにある。可能乗り物経路326、328は、最初に車線マーキング312、縁石306からのそれぞれのオフセット線として予め決定される。可能乗り物経路324は車線304の厳密な中心線に沿っているわけではなく、その理由は、ナビゲーションルート沿いに存在する乗り物の特徴の種類が原因となって、縁石306から可能乗り物経路328までのオフセット量の方が車線マーキング312から可能乗り物経路326までのオフセット量より大きく、よって可能乗り物経路324は、可能乗り物経路326と328の中心に位置するように構成されるからである。車線304も、車線マーキング312の内側の縁又はマーキングに沿って位置する可能乗り物経路322を含み、この可能乗り物経路322は、車線302と共有の経路である。車線304は縁石306に沿った可能乗り物経路を持たないが、その理由は、この種の車線の特徴は乗り物200が安全に通過することができないため、縁石306に近接する可能乗り物経路を選択しないことで、縁石306からの充分な間隔を維持しているからである。
【0026】
図4は、図2の乗り物200が通過するナビゲーションルートの別の例示的部分と、当該ナビゲーションルート部分に沿った可能乗り物経路の別の例示的組を示す。図4に示す例示的ナビゲーションルートは、2本の道路の交差点を形成する4本の車線400、402、404、406を含む。車線400、402、404、406の各々は、車線402の下エッジにある縁石408や、車線402の上部を形成する破線の車線マーキング等の、車線エッジの特徴に挟まれて形成されている。同様に、縁石412は車線406の右エッジを形成し、破線の車線マーキング414は車線406の左エッジを形成する。図4のナビゲーションルート例において、データアナライザ120と経路プランナ122は、車線400、402が車線404、406と同様に乗り物の対向する二方向走行用に設計されていると判断することができる。さらに、図4のナビゲーションルート例を通過中の乗り物200は、4本の走行車線400、402、404、406の交差点内で約90度左折することにより、車線402から車線406に移動してもよい。車線400、402、404、406間の他の移動も可能であるが、ここでは説明しない。
【0027】
データアナライザ120と経路プランナ122は、車線情報を含む地図情報を用いて、可能乗り物経路の組を予め決定することもできる。この例に従い、乗り物200がナビゲーションルートに従って走行し車線402から車線406に左折する必要があるとすると、地図情報内に存在する乗り物の特徴から、所定の4つの可能乗り物経路を決定することができる。可能乗り物経路416は、車線マーキング410と縁石408の間、及び車線マーキング414と縁石412の間に存在することから、車線402、406の中心線近くにある。図示されている乗り物200は、この可能乗り物経路416を通過中であり、車線402から車線406に移動しようとしている。可能乗り物経路418、420は、最初に車線マーキング410、414、及び縁石408、412からのそれぞれのオフセット線として予め決定される。車線402、406には、車線マーキング410、414の内側の縁又はマーキングに沿って位置する可能乗り物経路422も含まれ、よって、乗り物200が図4のナビゲーションルートを通過する際の、車線402、406に関連付けられた所定の可能乗り物経路は計4つ(416、418、420、422)存在する。
【0028】
図5は、図3の可能乗り物経路の組314、316、318、320、322及び図2の乗り物に近接する複数の物体を示す図である。上記の通り、乗り物200がナビゲーションルートを通過する間、データアナライザ120は、乗り物200及び/又は可能乗り物経路314、316、318、320、322に近接する物体を識別し分類することができる。ナビゲーションルートをたどる乗り物200にとって、可能乗り物経路314、316、318、320、322のどれが好適かを決定する上で、乗り物200に近接する物体の中で相対的に重要度の高い物体が存在する。重要な物体、すなわち注意対象を使用することにより、特定された乗り物特徴と注意対象の両方との間で閾値距離を維持する経路を所定の可能乗り物経路314、316、318、320、322の中から決定でき、その結果、可能乗り物経路314、316、318、320、322から好適乗り物経路を選択することができる。閾値距離は、車線の特徴の種類(例えば、縁石か車線マーキングか)、又は解析対象の注意対象の種類(例えば、歩行者、移動中の乗り物、静止乗り物)によって変化し得る。
【0029】
例えば、物体が次の少なくとも一方の基準:乗り物200に対して物体の相対速度が正である、物体に対して乗り物200の相対速度が正である(例えば、物体が乗り物200から次第に遠ざかるか、乗り物200が物体から次第に遠ざかる)、物体までの距離を物体の相対速度で割り算した結果が5を超える(例えば、乗り物200と物体が隣接するまでの時間は5秒より長い)、を満たす場合、可能乗り物経路314、316、318、320、322の評価に影響を及ぼす可能性は低い。逆に、この反対も真である。乗り物200に対して物体の相対速度が負であるか、又は相対速度に対する距離の比が5未満である場合、データアナライザ120又は経路プランナ122は、この物体を、可能乗り物経路314、316、318、320、322から好適乗り物経路を選択する際に使用する注意対象として分類できる。関連物体、注意対象、及び関連する車線の特徴からの安全距離を保ち、且つ乗り物200又は可能乗り物経路314、316、318、320、322に近接すると特定された物体のうち無関係の物体に関連する情報を排除することに基づいて、経路選択アルゴリズムを作成することができる。
【0030】
図5の例では、乗り物200及び可能乗り物経路314、316、318、320、322に近接する物体は、乗り物500、乗り物502、乗り物504の3つである。乗り物500を解析した結果、乗り物500は可能乗り物経路314、316、318、320、322から充分に離れ、且つ充分に低い相対速度で走行しており、好適乗り物経路の決定から排除すべきと判断され得る。同様に、乗り物502を解析した結果、乗り物200に対して充分に大きい正の相対速度で走行しており、好適乗り物経路の決定から除外すべきと判断され得る。これに対して、乗り物504は、可能乗り物経路314、318、322と距離的に近いと判断され、センサ116が収集した情報を基に乗り物200、504の速度と運動方向が比較されて、乗り物200が乗り物504との距離を縮めていると判断でき、その結果、可能乗り物経路314、316、318、320、322から好適乗り物経路を選択する上で、乗り物504が注意対象として分類される。
【0031】
図6は、図4の可能乗り物経路の組416、418、420、422及び図2の乗り物200に近接する複数の物体を示す図である。この例では、乗り物200及び可能乗り物経路416、418、420、422に近接する物体は、車線404内の乗り物600と、車線402内の乗り物602の2つである。乗り物602に関して、データアナライザ120又は経路プランナ122は、乗り物200及び可能乗り物経路416、418、420、422から充分に離れ、且つ充分な相対速度で走行しており、好適乗り物経路の決定から排除すべきと判断できる。これに対して、乗り物600は、車線404から車線400に入り、車線マーキング414のすぐ近くに位置していることから、乗り物200及び乗り物経路418、422に対する位置及び相対速度が可能乗り物経路418、422と充分に関連性があると判断でき、その結果、乗り物600は注意対象として分類され、乗り物200が車線402から車線406に移動するとき、注意対象である乗り物600を用いて、可能乗り物経路416、418、420、422から好適乗り物経路が決定される。
【0032】
図7は、図5の複数の近接物体を通じて図3の可能乗り物経路314、316、318、320、322の組から選ばれた、好適乗り物経路700の例を示す図である。経路プランナ122は、好適乗り物経路700を選択する際の注意対象の位置及び運動特性を評価するように構成でき、この例では、注意対象は乗り物504である。好適乗り物経路700(点線で表示)は、最初は、乗り物が現在通過中の可能乗り物経路314と一致する経路をたどり、その後、注意対象である乗り物504から少なくとも閾値距離だけ離れるように、可能乗り物経路316へとスムーズに移行する。経路プランナ122は、乗り物504からの閾値距離を維持することと、乗り物200を現在の走行車線302の中心にできるだけ近づけておくことの両方に基づいて、可能乗り物経路316を選択する。予め決定された可能乗り物経路314、316、318、320、322を使用する利点の1つは、他の注意対象(例えば乗り物504)を考慮して乗り物200のスムーズな移行を計算しながら、種々の車線の特徴との閾値距離も維持することである。
【0033】
可能乗り物経路314、316、318、320、322のどれを用いても、乗り物200が関連の注意対象までの閾値距離を維持できない場合には、乗り物200を減速させて注意対象を回避するように経路プランナ122を構成することもできる。加えて、データアナライザ120及び経路プランナ122が注意対象に分類する物体が1つもない場合には、車線の幅、車線のエッジの特徴といった車線情報だけに基づいて好適乗り物経路を選択することができ、その理由は、このような車線情報を用いて可能乗り物経路314、316、318、320、322が設定されているからである。例えば、図5及び7のナビゲーションルート例に乗り物504が存在していなければ、乗り物200がナビゲーションルートを進むとき、可能乗り物経路314に沿う車線302の中心位置を保つように乗り物200を構成することができる。
【0034】
図8は、図6の複数の近接物体によって図4の可能乗り物経路416、418、420、422の組から選ばれた、好適乗り物経路800の例を示す図である。この例では、乗り物200が左折して車線402から車線406に移動するとき、経路プランナ122が好適乗り物経路800を選択する際に使用する唯一の注意対象は、乗り物600である。好適乗り物経路800(点線で表示)は、最初は、乗り物が現在通過中の可能乗り物経路416と一致する経路をたどり、その後、注意対象である乗り物600から少なくとも閾値距離だけ離れるように、可能乗り物経路420へとスムーズに移行する。経路プランナ122は、乗り物600からの閾値距離を維持することと、乗り物200を現在の新しい走行車線406の中心にできるだけ近づけておくことの両方に基づいて、可能乗り物経路420を選択する。この例では、乗り物200がカーブを完全に曲がるまで乗り物600からの安全距離を維持するように、好適乗り物経路420が選択される。
【0035】
図9は、自動運転システムが実行する処理900の論理フローチャートである。処理900のステップ902において、自動運転システムは、乗り物200の周辺環境特有の情報に基づき、1つ以上の可能乗り物経路(例えば、図3に示す可能乗り物経路314、316、318、320、322、又は図4に示す可能乗り物経路416、418、420、422)を決定できる。上記の通り、周辺環境特有の情報には、車線数、各車線の幅、各車線に関連するエッジの特徴等の車線情報が含まれ得る。エッジの特徴の例として、車線マーキング、縁石、舗装道路から別の面への移行部、その他、車線のエッジを意味すると理解され得る任意の指示物(indicator)が挙げられる。加えて、乗り物200のナビゲーションルート、すなわち乗り物200が所定の目的地に到達するためにたどるべきであると自動運転システムが理解する経路に基づいて、可能乗り物経路を決定することもできる。
【0036】
処理900のステップ904において、自動運転システムは、乗り物200に設けられた1つ以上のセンサ116から受信する入力に基づき、1つ以上の可能乗り物経路に近接する1つ以上の物体を注意対象として分類する指示を受け取ることができる。例えば、センサ166からデータを受信又は処理して、乗り物200又は可能乗り物経路に近接する物体の1つ以上の特性を検出及び/又は解析するように、データアナライザ120アプリケーション又は経路プランナ122アプリケーションを構成することができる。上記の通り、検出される解析対象物体の特性の例として、乗り物200に対する相対的速度、乗り物200に対する相対的運動方向、乗り物200からの相対距離、及び1つ以上の可能乗り物経路からの相対距離が挙げられる。
【0037】
処理900のステップ906において、自動運転システムは、1つ以上の注意対象の特性に基づいて、1つ以上の可能乗り物経路から好適乗り物経路を選択することができる。近接物体の特性の評価結果によっては、好適乗り物経路を選択するためのアルゴリズムから一部の物体が排除され、その他の物体が、好適乗り物経路の選択に影響する注意対象として分類される。或いは、自動運転システムは、注意対象として検出又は分類される物体が1つもない場合に、車線情報及び特定された1つ以上の可能乗り物経路にのみ基づいて好適乗り物経路を選択するように構成でき、この場合、乗り物200を所定車線の中心位置に維持する可能乗り物経路(例えば、図3及び図4の車線302、402に関連付けられた可能乗り物経路314、416)を好適乗り物経路として選択することを優先させる。
【0038】
処理900のステップ908において、自動運転システムは、乗り物200が好適乗り物経路をたどるよう制御することを指示する命令を1つ以上の乗り物システム118に送信できる。この命令は、乗り物200が1つ以上の注意対象に近接したときに乗り物200の経路を修正するのに充分な命令であり、乗り物200が当該注意対象を回避した後は、別の可能乗り物経路に戻ることが可能である。例えば、図7に示す通り、乗り物200は、注意対象である乗り物504と乗り物200の間の相対速度を考慮して、注意対象である乗り物504の相対位置に対して閾値距離を保つことに基づき、好適乗り物経路700に沿って可能乗り物経路314から可能乗り物経路316へとスムーズに移行する。この移行を実現する乗り物システム118は、例えばステアリングシステムとサスペンションシステムを備えてよい。別の例では、図8に示す通り、車線402から車線406に左折する乗り物200は、注意対象である乗り物600の相対位置と相対速度に基づき、好適乗り物経路800に沿って可能乗り物経路416から可能乗り物経路420に移行する。この移行を実現する乗り物システム118は、例えばブレーキシステム、ステアリングシステム、及びサスペンションシステムを備えてよい。ステップ908の後、処理900は終了する。
【0039】
上記の説明は、現時点で最も実用的と考えられる実施形態に関連するものである。しかしながら、本開示は、上記実施形態に限定されるのでなく、添付の請求項の精神及び範囲に含まれる種々の修正及び同等構成に及ぶことが意図されていると解釈するべきである。例えば、上記の実施形態では、乗り物200は自動車として概説されている。しかしながら、この自動運転システムは、運転者又は操作者により全般的に制御される他の乗り物(例えば飛行機、船等)でも実現可能であるため、乗り物200は自動車に限定されない。添付の請求項の範囲は、法の下で許可されるすべての修正及び同等構造を包含するように、最も広い解釈が与えられる。
【符号の説明】
【0040】
100 コンピューティング装置
102 CPU
104 メモリ
106 データ
108 バス
110 オペレーティングシステム
112 インストールされたアプリケーション
114 外部記憶装置
116 センサ
118 乗り物システム
120 データアナライザ
122 経路プランナ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9