【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「革新型蓄電池先端科学基礎研究事業/革新型蓄電池先端科学基礎研究開発」共同研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のフッ化物イオン電池用電解質およびフッ化物イオン電池について、詳細に説明する。
【0019】
A.フッ化物イオン電池用電解質
本発明のフッ化物イオン電池用電解質は、LiPF
6およびLiBF
4の少なくとも一方であるフッ化物錯塩と、有機溶媒とを含有するフッ化物イオン電池用電解質であって、上記有機溶媒の物質量をA(mol)とし、上記フッ化物錯塩の物質量をB(mol)とした場合に、B/Aが0.125以上であることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、溶媒に対するフッ化物錯塩の割合を大幅に高くすることで、活物質をフッ化する活性が高いフッ化物イオン電池用電解質とすることができる。その理由は、フッ化物錯塩の割合を高くすることで、フッ化物錯塩と溶媒和していないフリーな有機溶媒(厳密には溶媒分子)が少なくなり、フリーな有機溶媒と、フッ化物錯塩に由来するフッ化物アニオンとの反応を抑制できたためであると推測される。フリーな有機溶媒と、フッ化物錯塩に由来するフッ化物アニオンとが反応すると、電極付近においてF
−が有機溶媒から離れないため、活物質のフッ化が生じにくくなる。これに対して、本発明においては、フリーな有機溶媒を少なくすることで、フリーな有機溶媒と、フッ化物錯塩に由来するフッ化物アニオンとの反応を抑制でき、活物質をフッ化する活性が高いフッ化物イオン電池用電解質とすることができる。
【0021】
また、本発明においては、溶媒に対するフッ化物錯塩の割合を大幅に高くする。例えば、Liイオン電池の分野において、フッ化物錯塩(LiPF
6、LiBF
4)を溶媒に溶解させた電解液が知られている。この電解液は、Liイオン伝導を目的した電解液であり、溶媒に対するフッ化物錯塩のモル比は、最大でも0.10程度であった(溶媒:フッ化物錯塩=10:1)。仮に、このようなLiイオン電池電解液を、そのままフッ化物イオン電池用途に転用したとしても、活物質をフッ化する活性を高めることはできない。なお、Liイオン電池用電解液において、支持塩濃度が高すぎると、電解液の粘度が増加し、逆にLiイオン伝導性が低下することが知られている。
【0022】
また、本発明においては、溶媒に対するフッ化物錯塩の割合を高くすることで、活物質をフッ化する活性を高くすることができる。すなわち、フッ化物錯塩の割合を高くすることで、フッ化物錯塩に由来するフッ化物アニオンを生じさせ、このフッ化物アニオンを利用して、活物質のフッ化反応(および脱フッ化反応)を進行させることができる。このような知見は、従来知られていなかった新たな知見であり、予期せぬ効果である。
【0023】
例えば、特許文献1の[0020]には、アニオン電荷キャリアの例示として、BF
4−およびPF
6−が開示されているが、同段落には、「フッ化物イオン以外のアニオン電荷キャリアの使用には、放電及び充電中にアニオン電荷キャリアを収容することができ、所望の電池電圧及び比容量を提供することができる正極及び負極電極向けの適切なホスト材料を組み込むことが必要となる。」と記載されている。さらに、特許文献1の[0009]には、二重炭素電池において、PF
6−等の多原子アニオン電荷キャリアを活物質に挿入脱離させることが記載されている。これらの記載から明らかなように、特許文献1の[0020]では、アニオン電荷キャリア(BF
4−、PF
6−)自体を、活物質に挿入脱離させることを目的としており、本発明の技術的思想とは全く異なる。
【0024】
また、特許文献1の[0054]には、下記反応式が記載されている。
LiF+zLB → Li(LB)
z−+F
−
(LB=PF
6−、BF
4−)
しかしながら、この反応式は、F
−の溶解性を高めることを示しているに過ぎず、フッ化物錯塩に由来するフッ化物アニオンを利用することを示唆するものではない(後述する実施例では、LiF等を用いない場合であっても、活物質のフッ化反応および脱フッ化反応が生じている)。
【0025】
また、特許文献1の[0070]では、電解液として、PC−DME−LiBF
4を用いている。しかしながら、LiBF
4の濃度については、記載も示唆もされていない。さらに、特許文献1の[0073]には、下記反応式が記載されている。
CF
x+Li
++xe
− → C+xLiF
この反応式から明らかなように、電解液に含まれるLiBF
4は、あくまで、F
−のカウンターカチオンとしてLiを提供しているに過ぎず、本発明の技術的思想とは全く異なる。
以下、本発明のフッ化物イオン電池用電解質について、構成ごとに説明する。
【0026】
1.フッ化物錯塩およびフッ化物塩
本発明のフッ化物イオン電池用電解質は、通常、LiPF
6およびLiBF
4の少なくとも一方であるフッ化物錯塩を含有する。フッ化物錯塩とは、中心元素(P、B)にフッ化物イオンが配位したフッ化物錯アニオンをアニオン成分とする塩をいう。
【0027】
一方、本発明のフッ化物イオン電池用電解質は、フッ化物塩を含有していても良く、フッ化物塩を含有していなくても良い。特に、前者の場合、活物質をフッ化する活性がより高いフッ化物イオン電池用電解質が得られる。フッ化物塩とは、フッ化物イオンをアニオン成分とする塩をいう。フッ化物塩は、有機フッ化物塩であっても良く、無機フッ化物塩であっても良く、イオン液体であっても良い。
【0028】
フッ化物塩のカチオンの一例としては、アルカリ金属元素を挙げることができる。この場合、フッ化物塩はMF(Mはアルカリ金属元素である)で表すことができる。アルカリ金属元素としては、例えば、Li、Na、K、Rb、Csを挙げることができ、中でも、Li、Na、Csが好ましい。
【0029】
フッ化物塩のカチオンの他の例としては、錯カチオンを挙げることができる。錯カチオンとしては、アルキルアンモニウムカチオン、アルキルホスホニウムカチオン、アルキルスルホニウムカチオン等を挙げることができる。アルキルアンモニウムカチオンとしては、例えば、一般式NR
1R
2R
3R
4で表されるカチオンを挙げることができる。上記一般式において、R
1〜R
4は、それぞれ独立に、アルキル基またはフルオロアルキル基である。R
1〜R
4の炭素数は、例えば10以下であり、5以下であっても良く、3以下であっても良い。
【0030】
2.有機溶媒
本発明における有機溶媒は、通常、フッ化物錯塩およびフッ化物塩を溶解する溶媒である。
【0031】
有機溶媒の一例としては、非水溶媒を挙げることができる。例えば、エチレンカーボネート(EC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)等の環状カーボネート、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等の鎖状カーボネート、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシメタン、1,3−ジメトキシプロパン等の鎖状エーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等の環状エーテル、スルホラン等の環状スルホン、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の鎖状スルホン、γ−ブチロラクトン等の環状エステル、アセトニトリル等のニトリル、および、これらの任意の混合物等を挙げることができる。
【0032】
また、鎖状エーテルの他の例として、一般式R
1−O(CH
2CH
2O)
n−R
2(R
1およびR
2は、それぞれ独立に、炭素数4以下のアルキル基、または、炭素数4以下のフルオロアルキル基であり、nは2〜10の範囲内である)で表されるグライムを挙げることができる。
【0033】
上記一般式において、R
1およびR
2は、互いに同じであっても良く、異なっていても良い。また、R
1またはR
2の炭素数は、通常、4以下であり、4、3、2、1のいずれであっても良い。炭素数4以下のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基等を挙げることができる。また、フルオロアルキル基は、アルキル基の水素の一部または全部をフッ素に置換した基である。また、上記一般式において、nは、通常、2〜10の範囲内である。nは、3以上であっても良い。一方、nは、8以下であっても良く、5以下であっても良い。
【0034】
グライムの具体例としては、ジエチレングリコールジエチルエーテル(G2)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(G3)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(G4)、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル等を挙げることができる。
【0035】
有機溶媒の他の例としては、イオン液体を挙げることができる。イオン液体のカチオンとしては、例えば、ピペリジニウム骨格カチオン、ピロリジニウム骨格カチオン、イミダゾリウム骨格カチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン等を挙げることができる。
【0036】
イオン液体のアニオンとしては、例えば、ビスフルオロスルホニルアミド(FSA)アニオン、ビストリフルオロメタンスルホニルアミド(TFSA)アニオン等に代表されるアミドアニオン、ヘキサフルオロホスフェートアニオン、トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェートアニオン等に代表されるホスフェートアニオン、テトラフルオロボレート(TFB)アニオン、トリフレートアニオン等を挙げることができる。
【0037】
有機溶媒の融点は、例えば100℃以下であり、80℃以下であっても良く、60℃以下であっても良く、25℃以下であっても良い。
【0038】
3.フッ化物イオン電池用電解質
本発明のフッ化物イオン電池用電解質は、フッ化物錯塩および有機溶媒を少なくとも含有し、さらにフッ化物塩を含有していても良い。ここで、フッ化物イオン電池用電解質における有機溶媒の物質量をA(mol)とし、フッ化物錯塩の物質量をB(mol)とし、フッ化物塩の物質量をC(mol)とする。有機溶媒に対するフッ化物錯塩の割合B/Aは、通常、0.125以上であり、0.17以上であっても良く、0.20以上であっても良い。B/Aは、例えば、1以下であり、0.5以下であっても良い。
【0039】
また、有機溶媒に対するフッ化物塩の割合C/Aは、0であっても良く、0より大きくても良い。後者の場合、C/Aは、例えば0.01以上であり、0.05以上であっても良い。後者の場合、C/Aは、例えば、0.5以下であり、0.125以下であっても良い。また、フッ化物錯塩に対するフッ化物塩の割合C/Bは、0であっても良く、0より大きくても良い。後者の場合、C/Bは、例えば0.05以上であり、0.10以上であっても良い。後者の場合、C/Bは、例えば、1以下であり、0.46以下であっても良い。
【0040】
本発明のフッ化物イオン電池用電解質の融点は、例えば100℃以下であり、80℃以下であっても良く、60℃以下であっても良く、25℃以下であっても良い。
【0041】
なお、F(HF)
x−アニオンは、F
−がHFから解離しにくい。そのため、活物質を十分にフッ化することが難しい場合がある。なお、xは0より大きい実数であり、例えば0<x≦5を満たす。そのため、フッ化物イオン電池用電解質は、F(HF)
x−アニオンを実質的に含有しないことが好ましい。「F(HF)
x−アニオンを実質的に含有しない」とは、電解質に存在する全アニオンに対するF(HF)
x−アニオンの割合が、0.5mol%以下であることをいう。F(HF)
x−アニオンの割合は、0.3mol%以下であることが好ましい。
【0042】
B.フッ化物イオン電池
図1は、本発明のフッ化物イオン電池の一例を示す概略断面図である。
図1に示されるフッ化物イオン電池10は、正極活物質層1と、負極活物質層2と、正極活物質層1および負極活物質層2の間に形成された電解質層3と、正極活物質層1の集電を行う正極集電体4と、負極活物質層2の集電を行う負極集電体5と、これらの部材を収納する電池ケース6とを有する。また、電解質層3は、上記「A.フッ化物イオン電池用電解質」を含有する。
【0043】
本発明によれば、上述したフッ化物イオン電池用電解質を用いることで、容量が大きいフッ化物イオン電池とすることができる。
以下、本発明のフッ化物イオン電池について、構成ごとに説明する。
【0044】
1.電解質層
本発明における電解質層は、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に形成される層である。本発明においては、電解質層が、上述したフッ化物イオン電池用電解質を含有する。電解質層の厚さは、電池の構成によって大きく異なるものであり、特に限定されるものではない。
【0045】
2.正極活物質層
本発明における正極活物質層は、少なくとも正極活物質を含有する層である。また、正極活物質層は、正極活物質の他に、導電化材および結着材の少なくとも一方をさらに含有していても良い。
【0046】
本発明における正極活物質は、通常、放電時に脱フッ化する活物質である。正極活物質としては、例えば、金属単体、合金、金属酸化物、および、これらのフッ化物を挙げることができる。正極活物質に含まれる金属元素としては、例えば、Cu、Ag、Ni、Co、Pb、Ce、Mn、Au、Pt、Rh、V、Os、Ru、Fe、Cr、Bi、Nb、Sb、Ti、Sn、Zn等を挙げることができる。中でも、正極活物質は、Cu、CuF
x、Fe、FeF
x、Ag、AgF
xであることが好ましい。なお、上記xは、0よりも大きい実数である。また、正極活物質の他の例として、炭素材料、および、そのフッ化物を挙げることができる。炭素材料としては、例えば、黒鉛、コークス、カーボンナノチューブ等を挙げることができる。また、正極活物質のさらに他の例として、ポリマー材料を挙げることができる。ポリマー材料としては、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリチオフェン等を挙げることができる。
【0047】
導電化材としては、所望の電子伝導性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば炭素材料を挙げることができる。炭素材料としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック等のカーボンブラックを挙げることができる。一方、結着材としては、化学的、電気的に安定なものであれば特に限定されるものではないが、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系結着材を挙げることができる。また、正極活物質層における正極活物質の含有量は、容量の観点からはより多いことが好ましい。また、正極活物質層の厚さは、電池の構成によって大きく異なるものであり、特に限定されるものではない。
【0048】
3.負極活物質層
本発明における負極活物質層は、少なくとも負極活物質を含有する層である。また、負極活物質層は、負極活物質の他に、導電化材および結着材の少なくとも一方をさらに含有していても良い。
【0049】
本発明における負極活物質は、通常、放電時にフッ化する活物質である。また、負極活物質には、正極活物質よりも低い電位を有する任意の活物質が選択され得る。そのため、上述した正極活物質を負極活物質として用いても良い。負極活物質としては、例えば、金属単体、合金、金属酸化物、および、これらのフッ化物を挙げることができる。負極活物質に含まれる金属元素としては、例えば、La、Ca、Al、Eu、Li、Si、Ge、Sn、In、V、Cd、Cr、Fe、Zn、Ga、Ti、Nb、Mn、Yb、Zr、Sm、Ce、Mg、Pb等を挙げることができる。中でも、負極活物質は、Mg、MgF
x、Al、AlF
x、Ce、CeF
x、Ca、CaF
x、Pb、PbF
xであることが好ましい。なお、上記xは、0よりも大きい実数である。また、負極活物質として、上述した炭素材料およびポリマー材料を用いることもできる。
【0050】
導電化材および結着材についても、上述した正極活物質層に記載した材料と同様の材料を用いることができる。また、負極活物質層における負極活物質の含有量は、容量の観点からはより多いことが好ましい。また、負極活物質層の厚さは、電池の構成によって大きく異なるものであり、特に限定されるものではない。
【0051】
4.その他の構成
本発明のフッ化物イオン電池は、上述した負極活物質層、正極活物質層および電解質層を少なくとも有するものである。さらに通常は、正極活物質層の集電を行う正極集電体、および、負極活物質層の集電を行う負極集電体を有する。集電体の形状としては、例えば、箔状、メッシュ状、多孔質状等を挙げることができる。また、本発明のフッ化物イオン電池は、正極活物質層および負極活物質層の間に、セパレータを有していても良い。より安全性の高い電池を得ることができるからである。
【0052】
5.フッ化物イオン電池
本発明のフッ化物イオン電池は、上述した正極活物質層、負極活物質層および電解質層を有するものであれば特に限定されるものではない。また、本発明のフッ化物イオン電池は、一次電池であっても良く、二次電池であっても良いが、中でも、二次電池であることが好ましい。繰り返し充放電でき、例えば車載用電池として有用だからである。また、本発明のフッ化物イオン電池の形状としては、例えば、コイン型、ラミネート型、円筒型および角型等を挙げることができる。
【0053】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0054】
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明する。なお、測定試料は全てAr雰囲気下グローブボックスにて作製した。
【0055】
[実施例1]
トリグライム(G3、トリエチレングリコールジメチルエーテル、関東化学社製)およびリチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF
6、キシダ化学社製)をG3:LiPF
6=4:1のモル比となるように秤量し、フッ素樹脂製の密封容器内にて、30℃、24時間以上の条件で撹拌し、評価用電解質を得た。
【0056】
[実施例2]
G3およびLiPF
6のモル比を、G3:LiPF
6=6:1に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、評価用電解質を得た。
【0057】
[実施例3]
G3の代わりに、プロピレンカーボネート(PC、キシダ化学社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、評価用電解質を得た。
【0058】
[実施例4]
PCおよびLiPF
6のモル比を、PC:LiPF
6=8:1に変更したこと以外は、実施例3と同様にして、評価用電解質を得た。
【0059】
[実施例5]
G3の代わりに、テトラグライム(G4、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、キシダ化学社製)を用い、G4およびLiPF
6のモル比を、G4:LiPF
6=5:1に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、評価用電解質を得た。
【0060】
[実施例6]
エチレンカーボネート(EC、キシダ化学社製)とジメチルカーボネート(DMC、キシダ化学社製)とを同体積で混合した混合溶媒、および、リチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF
6、キシダ化学社製)を混合溶媒:LiPF
6=4:1のモル比となるように秤量し、フッ素樹脂製の密封容器内にて、60℃、24時間以上の条件で撹拌し、評価用電解質を得た。
【0061】
[実施例7]
混合溶媒の代わりに、スルホラン(SL、キシダ化学社製)を用い、SLおよびLiPF
6のモル比を、SL:LiPF
6=5:1に変更したこと以外は、実施例6と同様にして、評価用電解質を得た。
【0062】
[実施例8]
トリグライム(G3、トリエチレングリコールジメチルエーテル、関東化学社製)、リチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF
6、キシダ化学社製)およびフッ化リチウム(LiF、和光純薬社製)をG3:LiPF
6:LiF=20:5:1のモル比となるように秤量し、フッ素樹脂製の密封容器内にて、30℃、100時間以上の条件で撹拌し、評価用電解質を得た。
【0063】
[実施例9]
テトラグライム(G4、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、キシダ化学社製)、リチウムテトラフルオロボレート(LiBF
4、キシダ化学社製)およびフッ化セシウム(CsF、関東化学社製)をG4:LiBF
4:CsF=10:10:1のモル比となるように秤量し、フッ素樹脂製の密封容器内にて、30℃、72時間以上の条件で撹拌し、評価用電解質を得た。
【0064】
[実施例10]
プロピレンカーボネート(PC、キシダ化学社製)、リチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF
6、キシダ化学社製)およびフッ化リチウム(LiF、和光純薬社製)をPC:LiPF
6:LiF=8:2.2:1のモル比となるように秤量し、フッ素樹脂製の密封容器内にて、30℃、100時間以上の条件で撹拌し、評価用電解質を得た。
【0065】
[実施例11]
LiFの代わりに、フッ化ナトリウム(NaF、アルファエイサー社製)を用いたこと以外は、実施例10と同様にして、評価用電解質を得た。
【0066】
[比較例1]
G3およびLiPF
6のモル比を、G3:LiPF
6=10:1に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、評価用電解質を得た。
【0067】
[比較例2]
PCおよびLiPF
6のモル比を、PC:LiPF
6=11.8:1に変更したこと以外は、実施例3と同様にして、評価用電解質を得た。なお、LiPF
6の濃度は1Mに相当する。
【0068】
[比較例3]
トリグライム(G3、トリエチレングリコールジメチルエーテル、関東化学社製)およびリチウムビストリフルオロメタンスルホニルアミド(LiTFSA、キシダ化学社製)をG3:LiTFSA=4:1のモル比となるように秤量し、フッ素樹脂製の密封容器内にて、30℃、24時間以上の条件で撹拌し、評価用電解質を得た。実施例1〜11および比較例1〜3で得られた評価用電解質の組成を表1に示す。表1におけるAは有機溶媒の物質量であり、Bはフッ化物錯塩の物質量であり、Cはフッ化物塩の物質量である。
【0069】
【表1】
【0070】
[評価]
(サイクリックボルタンメトリ測定)
実施例1〜11および比較例1〜3で得られた評価用電解質に対して、CV測定を行った。具体的には、Ar雰囲気下グローブボックス内で、ディップ式3電極セルを用いて評価した。作用極にはAl板を、対極には、PTFE、アセチレンブラック(AB)、フッ化カーボンの合材電極を用いた。なお、合材電極は、PTFE:AB:フッ化カーボン=1:2:7の重量比で含有する電極である。また、基準極は、バイコールガラスを用いて評価用電解質と隔離した。なお、基準極には、硝酸銀およびテトラブチルアンモニウムパークロレートがそれぞれ濃度0.1Mで溶解したアセトニトリル溶液にAg線を浸漬させたものを用いた。また、測定は、室温、掃引速度1mV/sの条件で実施した。なお、実施例1〜6、8〜11および比較例1〜3で得られ評価用電解質は室温(25℃)で液体であり、実施例7で得られた評価用電解質は、室温で固体であった。このように、本発明のフッ化物イオン電池用電解質は室温で液体であっても良く、固体であっても良い。
【0071】
まず、
図2(a)は、実施例1、2および比較例1で得られた評価用電解質に対するCV測定の結果であり、
図2(b)〜(d)は、それぞれの結果を分離して示したものである。
図2に示すように、実施例1、2では、1.1V付近にAlのフッ化に伴う酸化電流ピークと、0.7V付近にフッ化Alの脱フッ化に伴う還元電流ピークが確認された。なお、Alのフッ化脱フッ化反応の理論電位は0.9Vである。一方、比較例1では、これらの電流ピークが確認されなかった。また、CV測定後のAl電極に対して、XPS測定(Al2p)を行った。その結果を
図3に示す。
図3に示すように、実施例1では、AlF
3に帰属されるアルミニウムのピークが確認できた。これらの結果から、実施例1、2では、電気化学的にAlのフッ化反応および脱フッ化反応が生じていることが確認できた。特に、Alは、理論電位:−2.14V、重量容量密度:957Ah/kgという有用な活物質である。
【0072】
次に、
図4(a)は、実施例3、4および比較例2で得られた評価用電解質に対するCV測定の結果であり、
図4(b)〜(d)は、それぞれの結果を分離して示したものである。
図4に示すように、実施例3、4では、1.1V付近にAlのフッ化に伴う酸化電流ピークと、0.7V付近にフッ化Alの脱フッ化に伴う還元電流ピークが確認された。一方、比較例2では、1.1V付近にAlのフッ化に伴う酸化電流ピークは確認されなかった。
図2〜
図4の結果から、フッ化物錯塩の割合を大きくすることで、フッ化物イオン電池用電解質として有用であることが示された。
【0073】
次に、
図5は、実施例1、3、5〜7で得られた評価用電解質に対するCV測定の結果であり、
図6は、それぞれの結果を分離して示したものである。
図5および
図6に示すように、実施例1、3、5〜7では、1.1V付近にAlのフッ化に伴う酸化電流ピークと、0.7V付近にフッ化Alの脱フッ化に伴う還元電流ピークが確認された。そのため、フッ化物錯塩の割合を大きくすることで、有機溶媒の種類によらず、フッ化反応および脱フッ化反応が生じることが確認できた。
【0074】
次に、
図7(a)は、実施例8〜11で得られた評価用電解質に対するCV測定の結果であり、
図7(b)〜(e)は、それぞれの結果を分離して示したものである。
図7に示すように、実施例8〜11では、1.1V付近にAlのフッ化に伴う酸化電流ピークと、0.7V付近にフッ化Alの脱フッ化に伴う還元電流ピークが確認された。そのため、フッ化物錯塩の割合を大きくすることで、フッ化物塩を添加しても、フッ化物イオン電池用電解質として機能することが確認できた。さらに、フッ化物塩の種類によらず、フッ化物イオン電池用電解質として機能することが確認できた。
【0075】
次に、
図8(a)は、実施例1および比較例3で得られた評価用電解質に対するCV測定の結果であり、
図8(b)、(c)は、それぞれの結果を分離して示したものである。
図8に示すように、比較例3では、1.1V付近にAlのフッ化に伴う酸化電流ピークと、0.7V付近にフッ化Alの脱フッ化に伴う還元電流ピークが確認されなかった。そのため、本発明の効果は任意の塩で得られる訳ではなく、特定のフッ化物錯塩である必要があることが確認できた。