(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
記録媒体にインクを吐出する複数のノズルを有する記録ヘッドと、前記記録媒体を搬送する搬送手段と、前記記録媒体を搬送するときに生じるジャムを検出するジャム検出手段と、前記記録ヘッドを搭載し、前記記録媒体の搬送方向に対して交差する主走査方向に移動するキャリッジと、前記ノズルが配置されているノズル面に沿って移動しながら前記記録ヘッドの前記ノズル面を払拭するワイプブレードと、該ワープブレードの移動経路に配置され、該ワイプブレードに付着させる洗浄液を蓄える洗浄槽と、前記ワイプブレードを駆動するモーターと、前記ノズル面に対して接離方向に移動し、該ノズル面に密着し前記ノズルを覆うキャップと、前記キャリッジの移動と前記ワイプブレードの移動と前記キャップの移動を制御する制御手段と、を有するインクジェットプリンターにおいて、
前記記録媒体の搬送路を挟む両側に前記キャップと前記ワイプブレードの何れか一方が少なくとも配置され、
前記制御手段は、前記ジャム検出手段によって前記記録媒体のジャムが検出された場合に、該検出がされたときの前記キャリッジの移動方向とは逆の方向に前記キャリッジを退避させ、該退避の方向に前記キャップがある場合は、前記キャリッジを前記キャップの上方に移動させ、該キャップを移動させて前記ノズルを覆い、前記退避の方向に前記キャップが無い場合は、前記キュリッジを前記ワイプブレードの上方に移動させ、該ワイプブレードによって定期的に前記ノズル面を払拭し、該ノズル面に前記洗浄液を付着させる共に清掃し、前記ノズル内の前記インクが乾燥することを防止することを特徴とするインクジェットプリンター。
前記ワイプブレードが複数備えられ、該複数の前記ワイプブレードの内の少なくとも一つは多孔質の樹脂製であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンター。
前記退避の方向に前記キャップと前記ワイプブレードの両方がある場合に、前記ワイプブレードによって前記記録ヘッドを払拭した後に、前記キャップによって前記ノズルを覆うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインクジェットプリンター。
前記退避の方向に前記ワイプブレードの他に前記記録ヘッドから吐出された前記インクを受けるインク受がある場合、前記ワイプブレードによる払拭の前に前記インク受に前記インクを吐出することを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載のインクジェットプリンター。
前記キャリッジを前記記録媒体に対して接離方向に昇降させる昇降機構を有し、前記ジャム検出手段によって前記ジャムを検出した場合に、前記昇降機構を動作させて前記キャリッジを前記記録媒体から離れる方向に上昇させてから前記キャリッジを退避させることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載のインクジェットプリンター。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を用いて本発明の実施形態を説明する。
図1は、インクジェットプリンターの概略図である。インクジェットプリンター1は、
図1に示すように、記録媒体19を水平に配置して
図1の紙面奥から手前方向に搬送し、インクジェット方式の記録ヘッド9からインクを吐出して、記録媒体19の表面に記録データに応じた画像や文字などを記録する。記録媒体19は、紙、樹脂フィルムなどである。この紙面奥から手前方向を副走査方向と呼ぶ。
【0011】
インクジェットプリンター1は、記録ヘッド9を複数搭載して記録媒体19の搬送方向と交差する方向、例では直交する方向、に往復走査するキャリッジ4と、記録ヘッド9をキャップするキャッピングユニット12を備える。また、記録ヘッド9のノズル面を払拭するするワイプユニット10がキャッピングユニット12側に、ワイプユニット18が記録媒体19を挟み、逆側に配置されている。キャリッジ4の往復走査の方向を主走査方向と呼ぶ。また、インクジェットプリンター1は、記録データの受信や記録動作の制御を含めた装置全体の制御を行う制御手段を備える。記録媒体19は、
図1の紙面奥行き方向に延ばされた略平板状のプラテン2によって、印字エリアが平坦になるように支持されている。また、記録媒体19を搬送する搬送部を備える。その搬送部は、モーター5によって回転する複数の搬送ローラー対3を備える。この搬送ローラー対3は、プラテン2に沿って配置されている回転軸に支持されたグリッドローラーと、そのグリッドローラーに付勢され連れ回るピンチローラーを備える。モーター5によってグリッドローラーを回転させると、記録媒体19は、グリッドローラーとピンチローラーに挟まれて搬送される。
【0012】
キャリッジ4は、搬送部、ワイプユニット10、ワイプユニット18、およびキャッピングユニット12の上方で、記録媒体19の搬送方向と直交する方向に延在されたキャリッジレール17に沿って移動可能に設けられている。また、キャリッジ4をキャリッジレール17上で位置制御および速度制御可能に往復移動させるモーター6を備える。モーター6はキャリッジレール17に沿って配置された無端ベルト7を駆動する。無端ベルト7にはキャリッジ4が固定されている。無端ベルト7はキャリッジ4の移動方向の両端側に配置されたプーリーに掛け回されている。また、リニアスケール8がキャリッジレール17に沿って設けられ、このリニアスケール8の目盛を検出するリニアセンサー16がキャリッジ4に備わる。このリニアセンサー16によってキャリッジ4の位置を検出可能とし、キャリッジ4に固定されている複数の記録ヘッド9の位置もそれに応じて検出ができる。
【0013】
さらに、記録ヘッド9に記録用のインクを供給する着脱可能なインクカートリッジ14を備え、インクカートリッジ14と記録ヘッド9は、インクを供給するインクチューブ15によって接続されている。
【0014】
本実施形態では、インクカートリッジ14には、カラー記録を行うための複数色のインクが備えられ、配管としての複数のインクチューブ15を介して、色ごとに、記録ヘッド9に供給できるようになっている。なお、インクカートリッジ14の内部にはインクタンクが備えられ、インクが格納されている。
【0015】
キャリッジ4は、下面側に、インクの色や記録範囲などに応じて、複数の記録ヘッド9が設けられ、インクチューブ15から供給されるインクは、同色の記録を行う記録ヘッド9に供給される。
【0016】
なお、記録ヘッド9の詳細は図示しないが、各ノズルにインクを供給するインク室や、記録媒体と対向するノズル面には複数のインク吐出孔が設けられている。ノズルは吐出機構の構成や記録画素ピッチなどに応じて適宜の個数及び配列ピッチで設けることができる。例えば、256個などの多数のノズルを配列することができる。例えば記録ヘッド9は、記録素子として圧電素子を用いてもよいし、記録素子としてヒータを用いた記録ヘッドであっても良い。
【0017】
モーター6の位置制御、速度制御は、制御手段の制御信号に応じて行われる。記録動作時には記録ヘッド9が記録媒体19上を所定速度で往復移動するように、モーター6が制御される。また、モーター6はクリーニング動作時にはワイプユニット10またはワイプユニット18の所定のワイピング位置に記録ヘッド9を移動できるようになっている。また、キャッピングユニット12は、記録ヘッド9のインクをノズルから外部に吸引することで記録ヘッド9のノズル孔の内部をクリーニングする。また未使用時にキャップすることでインクの乾燥を防止する。キャッピングユニット12の概略構成は、キャップ11、キャップ駆動部、吸引ポンプ、廃インクボトル13、大気開放弁を有する。大気開放弁はノズル面をキャップ11で密閉した状態で、外気を導入する弁である。
【0018】
これらのうち、少なくともキャップ11は記録ヘッド9ごとに設けられている。ただし、キャップ駆動部、吸引ポンプ、大気開放弁は、記録ヘッド9ごとの動作が共通化できる場合には、複数のキャップ11に対して1台設ける構成としてもよい。
【0019】
キャップ駆動部は、キャップ11の上下方向の位置を選択的に切り換えるための上下動を行うものであり、例えば、機械的、電磁的、流体的な適宜の昇降手段からなる。そのため、キャップ駆動部は、モーター6によってキャリッジレール17上を移動してキャッピングユニット12の上方に位置した状態の記録ヘッド9に対して、キャップ11を上下方向に進退させ、キャップ11が記録ヘッド9のノズル面を密閉する状態と、それを解除する状態とを切り換えることができるようになっている。
【0020】
吸引ポンプは、キャップの密閉空間内の空気、インクなどの内容物を吸引して、外部に排出するためのものであり、例えばロータリポンプなどを採用することができる。インクカートリッジ14から記録ヘッド9までインクを通液させるための通液手段として、吸引ポンプを用いることもできる。吸引ポンプは、吸引口がキャップ11に接続され、排出口が廃インクボトル13に接続されている。キャップ11によってノズル面を密閉させる必要があり、記録ヘッド9とキャップ11の当接面には、ごみやインクの固まりなどがないことが望まれる。
【0021】
ワイプユニット10は、記録ヘッド9をワイプユニット10の上方に移動させた状態で、記録ヘッド9のノズル面に対してワイプブレードを相対移動させることで、記録ヘッド9のノズル面を払拭して清掃する。ワイプユニット18は、ワイプユニット10と同様の構成である。
【0022】
また、ワイプユニット10の副走査方向側の隣に、記録ヘッド9から吐出したインクを受けるインク受を設けることができる。また、キャリッジ4を記録媒体19に対して接離方向に移動させる昇降機構を設けることができる。ジャムが発生した場合に、昇降機構によって、キャリッジ4を記録媒体19から離れる方向に上昇させる。そして、キャリッジ4と記録媒体19を離すことで、当接する可能性を低下させながらキャリッジ4を安全な位置に移動、すなわち退避させる。
【0023】
図2は、インクジェットプリンターのブロック図である。制御手段20は、演算、制御、判別、設定などの処理動作を実行するCPUを備える制御手段である。制御手段20はROM21に格納されている制御プログラムに従って動作する。RAM22は、記録データのバッファや制御手段20による処理のワークエリア等として用いられる。キャリッジ移動モーター駆動回路23は制御手段20の制御によって動作し、記録ヘッド9を搭載したキャリッジ4を移動させるモーター6を駆動する。キャリッジ位置検出センサー24は、キャリッジ4の移動を案内するキャリッジレール17に沿って配置されたリニアスケール8の目盛を検出するリニアセンサー16を備える。このセンサー出力に基づいて制御手段20によってキャリッジ4の位置を演算して取得する。ヘッド駆動回路25は制御手段20によって制御される。ヘッド駆動回路25を介して、記録ヘッド9を動作させる。記録ヘッド9が複数搭載されている場合、制御部20及びヘッド駆動回路25は、各々の記録ヘッド9を個別に駆動させることができる。ヘッド駆動回路25は、制御手段20の制御によって、そこからの情報に基づいて、各記録ヘッド9のインク吐出もしくは不吐出の信号を生成し、キャリッジ4の位置に応じたタイミングで記録ヘッド9を駆動させる。インク吐出させる場合は、オン波形を生成し、不吐出させる場合には、オフ波形を生成し、各記録ヘッド9へ転送する。吐出のタイミングは制御手段20がキャリッジ位置検出センサー24からの情報に基づいて演算して求めたキャリッジ4の位置に応じて決められる。
【0024】
記録媒体搬送手段26は、制御手段20の制御によって動作する。記録媒体搬送手段26は、記録媒体を搬送する搬送部を含む。モーター5によって搬送ローラー対3を駆動し、記録媒体を搬送する。ワイプブレード移動モーター駆動回路27は制御手段20の制御によって動作する。ワイプブレード移動モーター駆動回路27はワイプブレードが固定されたベルトを動かすモーターを駆動する。
【0025】
マーク検出手段28は、後述するマークを検出する検出手段であり、マークを検出すると信号を制御手段20に出力する。また、このマークは複数配置されたワイプブレードの最後尾の位置を取得するものである。ワイプブレードが一つの場合は、このワイプブレードの位置を取得することができる。これによって、特定のワイプブレードの位置を制御手段20が取得することができる。
【0026】
ジャム検出手段29は、制御手段20によって制御され、ジャムを検出する。例えば、ジャムが生じるとキャリッジ4が掛かって止まってしまう。本来移動すべきときに、キャリッジ4が止まっているか否か、あるいは移動速度を演算し、判断する。また、ジャムによってキャリッジ4の移動が抑制されると、モーター6の負荷が大きくなるので、モーター6の電流を検出することでもジャムを判断できる。予め決められた値より電流より大きくなった場合にジャムが生じたと判断することができる。また、ジャム検出手段29は記録媒体19が変形し、キャリッジ4に接触したことを検出し、制御手段20に通知するものであっても良い。
【0027】
ジャムの検出後、制御手段20はキャリッジ4を停止させ、次にキャリッジ4をキャリッジ移動モーター駆動回路23によって、接触したときの走査方向とは逆方向にキャリッジ4を移動する。移動する先にキャップユニット12がある場合は、キャッピングを行う。移動先がワイプユニット18側であった場合、一定時間毎に各ヘッドのノズル面のワイピングを行う。
【0028】
このように制御手段20の制御によってインクジェットプリンター1の各機能が制御される。また、ROM21に予めワイピング動作条件の情報を格納し、プログラムしておくことで、所定のワイピング動作を行うことができる。上記ワイピング条件として、ワイプブレードの移動速度、ノズル面の払拭回数、ワイプ位置などが挙げられる。
制御手段20は、キャリッジ4を昇降させる昇降機構がある場合には、昇降機構の動作を制御する。
【0029】
図3は、ワイピング機構の概略図である。記録ヘッド9をワイプするワイプユニット10を説明する。ワイプユニット18も同様の構成である。弾性のある樹脂製のワイプブレード30およびワイプブレード31、多孔質の樹脂製のワイプブレード32がベルト33に固定部48を用いて固定されている。例えば、ワイプブレード30とワイプブレード31はゴム製、ワイプブレード32はスポンジ製のブレードである。
【0030】
ベルト33は矢印47方向に回転する。回転に伴いベルト33に固定されているワイプブレード30、31、32が移動する。記録ヘッド9に対して、ワイプブレード30、31、32の先端が湾曲するように接触し、ノズル面およびノズルガードに接触する。このときワイプブレード30、31、32に付着した洗浄液46がノズル面に付着する。記録ヘッド9およびベルト33の下側には、洗浄液46を蓄えた洗浄槽34が配置されている。洗浄槽34の中にワイプブレード32、ワイプブレード31、ワイプブレード30の順番に通り、洗浄液46と接触する。また、洗浄槽34の中には、ワイプブレード30、31、32と接触し、これらに付着したインクやゴミを落とすクリーニング部材36、37が備わり、2回当接することで十分にこれらの異物を落とすことができる。クリーニング部材36、37はスポンジなどの多孔質部材であり、洗浄液46に浸り、ワイプブレード30、31、32が当接しながら移動することで、ワイプブレード30、31、32に付着した汚れを清掃する。ワイプブレード30、31、32の先端が湾曲してクリーニング部材36、37に当接しながら移動することで、付着した物を除去する。ワイプブレード30、31、32は洗浄槽34に蓄えられた洗浄液46によって、洗浄される。また、洗浄液46を付着させた状態でノズル面を払拭することで、ノズル面に強固に付着したインクなどを除去しやすくでき、また、ノズル面やノズルガード表面に洗浄液46を付着させ、湿らせることができる。
【0031】
ノズル面に洗浄液を十分に付着させるために、ワイプブレード32によって洗浄液をノズル面に付着させ、後続のノズルブレード30、31によって付着した洗浄液を完全に拭き取らないように高速(第一の速度)でノズル面上を移動させることもできる。ノズルブレード30、31を高速で移動させることで、洗浄液がノズル面との間の膜となり、ノズル面の上を滑るように移動することができる。このようにワイプスピードを制御することで、洗浄液をノズル面に残したままの状態にすることができる。また、高速より遅い低速(第二の速度)で移動させることで、ノズルブレード30、31がノズル面に接しながら移動させることができ、洗浄液を拭き取ることができる。このように、少なくとも2段階のベルトの回転スピードの制御をすることができる。
【0032】
ボトル35には洗浄槽34に供給する洗浄液46が蓄えられている。洗浄槽34は台38に固定されている。ベルト当接部45が、各ワイプブレードの固定部48に備わる。これが、ベルト33と当接することで、ワイプブレード30、31、32がベルト33に対して垂直に配置される。ベルト33の湾曲する部分ではベルト当接部45はベルト33から離れるが、直進部分ではベルト当接部45に配置されたフックによってベルト33に当接して固定される。
【0033】
ベルト33は第1ギア42、第2ギア43、第3ギア44に掛け回されている。第2ギア43は、ワイプブレード移動モーター駆動回路27によって駆動されるモーターに接続されている。第3ギア44は、洗浄槽34方向にバネ41で付勢され、ベルト33が常に張った状態にすると共に、ベルト33の最下点を作っている。これによって、ワイプブレード30、31、32の先端を洗浄槽34内の洗浄液46に浸らせることができる。また、ワイプブレード30、31、32の先端をクリーニング部材36、37に当接させることができる。第1ギア42と第2ギア43によって、ノズル面に対向するベルト33とノズル面を平行にしている。
【0034】
ワイプブレード30をベルト33に固定する固定部48には最後尾を示すマーク40が固定され、マーク検出手段28により、通過するときを検出し制御手段20に出力する。マーク検出手段28は検出センサー39を備える。検出センサー39は、機械的な接点でもよいし、光検出センサーでもよい。
【0035】
検出センサー39を含むマーク検出手段28は、マーク40を検出することで、ベルト33が何回転したか回転数を演算することができる。また、マーク40を検出することで、ワイプブレード30の位置が分かるので、例えば、ベルト33を停止させるときにマーク40を検出したら、停止するようにプログラムし、その停止位置では、ワイプブレード32が洗浄槽34のクリーニング部材36、37の間に停止するように配置する。このようにすることで、停止しているときに、多孔質部材のワイプブレード32を洗浄液に浸しておき、クリーニング部材36、37にも当接しないので、変形せずに停止させることができる。また、このとき、ワイプブレード30は記録ヘッド9に当接しない位置であり、ワイプブレード31はワイプブレード30とワイプブレード32の間であり、洗浄液に浸らない位置にすることができる。ワイプブレード30、31は、洗浄槽34およびクリーニング部材36、37に当接した後に、なににも当接しない空中にあるので、きれいになって乾いた状態で停止させておくことができる。
【0036】
多孔質部材のワイプブレードでより多くの洗浄液46が記録ヘッド9のノズル面に供給できる、また、弾性部材の2枚のワイプブレードで、1回では拭き取れない強固な汚れでも、2回連続で拭くことで拭き取ることができるので、好ましい。また、ワイプブレードは1枚でも記録ヘッド9を濡れた状態にしておくことや、清掃することもできるが、異なるワイプブレードを複数用いる方が好ましい。
【0037】
また、多孔質部材のワイプブレード32によって確実にノズル面に洗浄液を付着させることができ、また、弾性部材の2枚のワイプブレード30、31によって洗浄液を拭き取らないようにベルト33の回転速度の制御をすることで、確実にノズル面に洗浄液を付着させることができる。また、ワイプしていないときには、多孔質部材のワイプブレード32を洗浄液に浸しておくことで、洗浄液をワイプブレード32内に蓄積しておくことができるのでワイプ時に確実にノズル面に洗浄液を付着させることができる。乾燥していたら、確実に蓄積できない可能性が有る。
【0038】
図4は、ワイプブレードとノズル面との位置関係を説明する図である。記録ヘッド9のノズル面側には、ノズルガード50がノズル面51に密着して固定されている。ノズルガード50はノズル面51より突出し、記録媒体19がノズル面51に当たらないようにしている。ノズル列52は記録ヘッド9のノズル面51の長手方向に沿って複数のノズルが列状に配置されたものである。ノズルガード50の内周には、ノズル面51に対して垂直方向に側壁62を備える。
【0039】
ワイプブレード30とワイプブレード31は第1ワイプブレ―ド53、ワイプブレード32は第2ワイプブレード54として説明する。第1ワイプブレード53の基端には固定部48に固定する基端部58が備わり、先端には第1ブレード55、第2ブレード56、第3ブレード57に分かれたゴムのブレードが備わる。第1ブレード55、第2ブレード56、第3ブレード57の間にはスリットが備わる。スリットによって第1ブレード55、第2ブレード56、第3ブレード57は互いに独立に撓むことができる。
第2ワイプブレード54の基端には固定部48に固定する基底部58が備わり、先端には樹脂製の多孔質部材、例えばスポンジ、の第4ブレード59が備わる。
【0040】
第2ブレード56の幅は、ノズルガード50のノズル列52に沿った内周間の距離より小さい。内周間の距離は図中2本の一点鎖線60で示された間隔である。ノズル面51を第2ブレード56によって払拭できる。また、第1ブレード55と第3ブレード57の幅はノズルガード50のノズル列52に沿った部分の幅より広く、図中2本の2点鎖線61で示された間隔、すなわちノズルガード50の幅よりも広い。好ましくは、ノズルガード50の幅の1倍以上2倍以下の幅である。更に好ましくは、1.1倍以上1.5倍以下の幅である。この部分で、1回の払拭でノズルガード50の表面を全て払拭できる幅が必要であり、取り付け誤差などを考慮して多少の余裕を持たせるのが好ましい。あまり広くすると記録ヘッド9間の距離を広くしなければならない。小型化のためにあまり広くできない。
【0041】
第1ブレード55と第3ブレード57の何れか一方で、ノズルガード50のノズル列52に沿った部分の表面を払拭できる。第1ワイプブレード53と記録ヘッド9の幅方向の相対位置を変えて払拭する場所を変えることができる。
【0042】
第2ワイプブレード54の第4ブレード59の幅は、ノズルガード50の幅より広い。また、第1ワイプブレード53と記録ヘッド9の幅方向の相対位置が変った場合でも、全面を払拭できるように、第1ワイプブレード53と同等の幅を備える。
図中点線で示した第1ワイプブレード53と第2ワイプブレード54は、第1ワイプブレード53の第3ブレード57でノズルガード50を払拭する場合を示している。
【0043】
実線で示した第1ワイプブレード53と第2ワイプブレード54は、第1ワイプブレード53の第2ブレード56でノズル面51を払拭する場合を示している。ワイプする場合は少なくともこの2つの位置で記録ヘッド9を払拭する制御を行う。これにより、ノズル面51を払拭せずに、ノズルガード50のみを払拭させることができる。ノズル面51とノズルガード50の表面強度が異なる場合に、夫々の表面の払拭回数を変えることができる。ノズル面51の方がノズルガード50より、弱い場合に好適に作用する。
【0044】
図5は、ジャム後の処理を示したフローチャートである。ROM21に格納されたプログラムに従って、制御手段20によって制御する。
まずステップS1で退避位置を判断する。ジャムが発生した場合に、キャリッジ4の移動方向の逆方向にキャリッジ4を退避させる。退避位置がキャップユニット12側の場合は、ステップS6に移行し、そうでない場合はステップS2に移行する。このときキャリッジ4の昇降機構が備わっている場合には、キャリッジ4を、記録媒体19から離れる方向に上昇させてから、退避させる方向に移動させる。
【0045】
ここで、ステップS6では、キャップ11上にキャリッジ4を移動する。その後、キャップの昇降機構を制御し、記録ヘッド9をキャップ方向に移動させてキャップ11で密閉し、ノズル面51を保湿する(ステップS7)。
【0046】
次に、移動先が逆側の場合に、キャッピングユニット12がないので、キャップ11で密閉させることができない。そこで、ワイプユニット18を使う。キャリッジ4をワイプユニット18の位置に移動する(ステップS2)。その後、各記録ヘッド9のノズル面のワイピングを行う(ステップS3)。ワイピングは、記録ヘッド9のノズル面の保湿が主目的であるので、ベルト33を高速で移動させ、ワイプブレードで洗浄液が全て払拭されない様にワイプする。ここで、ワイプユニット18の脇にインク受がある場合に、ワイプブレードによってノズル面を払拭する前に、インクの予備吐出を行う。すなわち、記録ヘッド9がインク受に対向する位置にキャリッジ4を移動させ、記録ヘッド9からインクを所定滴数、例えば30滴吐出する。その後、記録ヘッド9がワイプユニット18の上方に位置するようにキャリッジ4を移動させ、ワイプを行う。ワイプ前にインクを吐出することで、増粘したインクを予め吐出することができるので、インク詰まりをさらに予防でき、好ましい。
【0047】
次に、ステップS4で変形した記録媒体19が取り除かれ、キャリッジ4がキャップユニット11の位置に移動することが可能か判断する。すなわち、復旧しているか否かを判断する。これは、ジャム検出手段29を用いる。また、ユーザーによる入力を待ってもよい。いずれにしろ、キャリッジ4がキャップユニット12の位置に移動できる状態であるか判断する。
【0048】
復旧していない場合、前回ワイピングから一定時間経過しているか判断する(ステップS5)。経過している場合、ステップS3に移行し、再度ワイピング処理を行う。経過していない場合、装置が復旧したか、再度判定する。装置が復旧した場合、ステップS6移行し、キャリッジ4をキャップユニット12の上に移動し、次にステップS7に移行し、記録ヘッド9をキャッピングし、終了する。
【0049】
ここで、キャリッジ4がキャップユニット12側に移動した場合に、直ぐにキャップするのではなく、ワイプユニット10によって、ワイピングをしてから、キャップするのがより好ましい。ジャム後に清掃し、きれいな状態でキャップすることが望ましい。
【0050】
このように、キャリッジ4の移動可能な方向にあるメンテナンス装置によって、記録ヘッド9に付着したインクが固化して、付着しない様に制御することで、記録ヘッド9の不具合を防止できる。