特許第6342866号(P6342866)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6342866
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】圧力センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 19/00 20060101AFI20180604BHJP
【FI】
   G01L19/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-188666(P2015-188666)
(22)【出願日】2015年9月25日
(65)【公開番号】特開2017-62209(P2017-62209A)
(43)【公開日】2017年3月30日
【審査請求日】2017年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000150707
【氏名又は名称】長野計器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】山岸 信貴
(72)【発明者】
【氏名】山下 直樹
(72)【発明者】
【氏名】今井 敦
【審査官】 岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/083320(WO,A1)
【文献】 特表2012−500974(JP,A)
【文献】 特開2006−38538(JP,A)
【文献】 特開2002−168718(JP,A)
【文献】 特開2001−235383(JP,A)
【文献】 特開平3−273126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 7/00−23/32
G01L27/00−27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料を脆化させる性質を有する被測定流体の圧力を検出する圧力センサであって、前記被測定流体の圧力により変位する圧力センサ素子と、前記圧力センサ素子に前記被測定流体を導入する孔部が形成され被接続部材に設けられる継手と、前記継手と接合部を介して嵌合され前記被接続部材に接続する取付部材とを備え、
前記圧力センサ素子及び前記継手は、それぞれ前記被測定流体と接する部分が前記被測定流体に触れても脆化しない材料であって前記取付部材より硬質な材料から形成され、
前記接合部は、前記継手の外周部分と前記取付部材とに形成され周方向に位置する部分が局部的な塑性変形と弾性変形圧をもって食い込み、かつ、軸方向の弾性変形圧を封入して軸方向の結合を維持する、ことを特徴とする圧力センサ。
【請求項2】
請求項1に記載された圧力センサにおいて、
前記取付部材は、前記接合部より前記孔部から離れた外周側に前記被接続部材に当接する当接面と前記当接面より前記孔部に近い位置に形成され前記接合部に接する段部とを有し、前記段部は前記被接続部材と離隔している、ことを特徴とする圧力センサ。
【請求項3】
請求項2に記載された圧力センサにおいて、
前記継手は、前記接合部が外周面に形成される継手フランジ部を有し、前記継手フランジ部には前記被接続部材と対向して対向面が形成され、前記継手フランジ部の前記被接続部材と対向する対向面は前記被接続部材と離隔している、ことを特徴とする圧力センサ。
【請求項4】
請求項1に記載された圧力センサにおいて、
前記継手は、前記被接続部材に螺合される雄ねじ部を有し、
前記取付部材は、前記継手を前記被接続部材にねじ込むために工具と係止する係止面が外周に形成されている、ことを特徴とする圧力センサ。
【請求項5】
請求項4に記載された圧力センサにおいて、
前記接合部の軸方向と交差する方向の断面形状は非円弧部を有する、ことを特徴とする圧力センサ。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載された圧力センサにおいて、
前記取付部材は、アルミニウムを含む材料から形成されている、ことを特徴とする圧力センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
被測定流体の圧力を測定するものとして圧力センサが知られている。
圧力センサの従来例として、特許文献1から特許文献7に記載されたものがある。
特許文献1の従来例は、SUS430等のステンレス鋼からなるハウジングの圧力導入通路にFe、Niを主体とする金属ステムを挿入し、金属ステムの一端側のダイアフラムにセンサチップを設け、金属ステムの他端側の開口端部をハウジングの圧力導入通路にレーザー溶接、圧入、かしめるものである。
特許文献2の従来例は、圧力センサアッセンブリーの六角形形状部分の孔部に挿入体を挿入し、挿入体にステンレス鋼からなるねじ山を備えた部分を取り付け、挿入体の外周と六角形形状部分の内周部とにレーザー溶接等による溶接部が形成されているものである。
特許文献3の従来例は、鋼からなる圧力センサ素子と圧力管片とを六角フランジに設け、圧力センサ素子と圧力管片との接合部分が六角フランジに固くかつ液圧密に結合されているものである。
【0003】
特許文献4の従来例は、外部応力により歪が発生する起歪体をオーステナイト系析出硬化型Fe-Ni耐熱鋼で形成したものである。
特許文献5の従来例は、圧力導入継手に有筒円筒部材を有する圧力検出素子を設け、有筒円筒部材と圧力導入継手とをオーステナイト系析出硬化型Fe-Ni耐熱鋼で形成したものである。
特許文献6の従来例は、円筒部材を継手に設け、円筒部材と継手とをメタルフローと称される塑性変形結合により接合したものである。
特許文献7の従来例は、鉄とニッケルとからなるステムに六角部を有するハウジングを溶接したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4876895号公報
【特許文献2】特開2005−114734号公報
【特許文献3】特開2006−349682号公報
【特許文献4】特許第4185478号公報
【特許文献5】特許第4185477号公報
【特許文献6】特許第4127532号公報
【特許文献7】特許第5278143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
燃料電池装置において、圧力センサが用いられる。燃料電池装置では、被測定流体が水素であるため、圧力センサのうち被測定流体と接する部分の材料は、水素に触れても脆化しない耐水素脆化材料(高ニッケル材料)でなければならない。耐水素脆化材料は、ステンレス等の材料に比べて高価である。水素以外にも、材料を腐食させる性質を有する被測定流体があり、当該被測定流体を流通させても脆化しない材料は高価である。
【0006】
特許文献1の従来例では、被測定流体が自動車の燃料であって、圧力導入通路が形成されるハウジングをSUS430等からなるステンレス鋼から形成しているので、燃料電池装置にそのまま利用することができない。
特許文献2の従来例では、六角形形状部分と挿入体とがステンレスから形成されており、六角部分の孔部と挿入体とを溶接している。ステンレス部材同士の溶接は製造コストが高いものとなる。
【0007】
特許文献3の従来例では、圧力センサ素子と圧力管片とがそれぞれ鋼から形成されており、これらを溶接している。鋼同士の溶接は製造コストが高いものとなる。
特許文献4,5の従来例では、被測定対象が水素であり、被測定流体と接する部分が水素と接しても脆化しない材料であるが、圧力導入継手を被接続部材に取り付けるための取付部材の構成の開示がない。そのため、圧力センサを被接続部材に容易に取り付けることができない。
【0008】
特許文献6の従来例では、圧力センサを構成する部材を接合するにあたり、メタルフローを用いることを開示するに過ぎず、被測定流体が水素であることが開示されていない。そのため、継手を接続部材に容易に取り付けるとともに、製造コストを低くする燃料電池用圧力センサの具体的な構成までも想定できるものではない。
特許文献7の従来例では、被測定流体が車両の燃料である。そのため、特許文献7からは、被測定流体として水素を用いることを想定できない。仮に、ステムを耐水素脆化材料から形成したとしても、ステムとハウジングとは溶接している。溶接のための材料は限定されることになり、製造コストが高いものとなる。
【0009】
本発明の目的は、材料を脆化させる性質を有する被測定流体の圧力を測定できるとともに、製造コストを低いものにできる圧力センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の圧力センサは、材料を脆化させる性質を有する被測定流体の圧力を検出する圧力センサであって、前記被測定流体の圧力により変位する圧力センサ素子と、前記圧力センサ素子に前記被測定流体を導入する孔部が形成され被接続部材に設けられる継手と、前記継手と接合部を介して嵌合され前記被接続部材に接続する取付部材とを備え、前記圧力センサ素子及び前記継手は、それぞれ前記被測定流体と接する部分が前記被測定流体に触れても脆化しない材料であって前記取付部材より硬質な材料から形成され、前記接合部は、前記継手の外周部分と前記取付部材とに形成され周方向に位置する部分が局部的な塑性変形と弾性変形圧をもって食い込み、かつ、軸方向の弾性変形圧を封入して軸方向の結合を維持する、ことを特徴とする。
【0011】
本発明では、継手と取付部材とに形成された接合部は、メタルフローと称される塑性変形結合されているので、継手と取付部材とが一体となり、圧力センサ素子及び継手が取付部材を介して被接続部材に取り付けられることになる。
以上の構成では、圧力センサを、圧力センサ素子、継手及び取付部材を備えて構成し、これらのうち、水素、その他の被測定流体に接する部分の部材である圧力センサ素子及び継手に高価な耐脆化材料を用い、被測定流体に接することのない取付部材に安価な材料を用いることで、製造コストを下げることができる。
また、接合部を塑性変形結合によって構成しているので、仮に、接続部に外部から気体が触れても、気体が内部に侵入することがなく、圧力センサ素子に気体が触れることはない。
【0012】
本発明では、前記取付部材は、前記接合部より前記孔部から離れた外周側に前記被接続部材に当接する当接面と前記当接面より前記孔部に近い位置に形成され前記接合部に接する段部とを有し、前記段部は前記被接続部材と離隔している、構成が好ましい。
この構成では、取付部材の段部が被接続部材から離隔しているので、取付部材及び継手の被接続部材への取付時に接合部が被接続部材に当接することがないから、接合部に予期せぬ応力が生じることを防止できる。
【0013】
本発明では、前記継手は、前記接合部が外周面に形成される継手フランジ部を有し、前記継手フランジ部には前記被接続部材と対向して対向面が形成され、前記継手フランジ部の前記被接続部材と対向する対向面は前記被接続部材と離隔している構成が好ましい。
この構成では、段部だけでなく、継手フランジ部の対向面も被接続部材と離隔しているから、接合部に予期せぬ応力が生じることを確実に防止できる。
【0014】
本発明では、前記継手は、前記被接続部材に螺合される雄ねじ部を有し、前記取付部材は、前記継手を前記被接続部材にねじ込むために工具と係止する係止面が外周に形成されている構成が好ましい。
この構成では、取付部材を工具などで締め付けることで、容易に圧力センサを被接続部材に取り付けることができる。
【0015】
本発明では、前記接合部の軸方向と交差する方向の断面形状は非円弧部を有する構成が好ましい。
この構成では、接合部の断面形状は非円弧部を有するため、被接続部材へ取付部材により継手をねじ込む際に、取付部材が空回りすることがない。ここで、非円弧部とは、円の一部を切り欠いた形状(弦)や、四角や六角等の形状を例示できる。
【0016】
本発明では、前記取付部材は、アルミニウムを含む材料から形成されている構成が好ましい。
この構成では、アルミニウムは安価であるため、圧力センサの製造コストがより低いものとなる。しかも、アルミニウムが他の金属に比べて軽いため、圧力センサ自体の軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態にかかる圧力センサの正面図。
図2】第1実施形態にかかる圧力センサの断面図。
図3】本発明の第2実施形態にかかる圧力センサの正面図。
図4】第2実施形態にかかる圧力センサの断面図。
図5】(A)(B)は、それぞれ接合部の形状の異なる圧力センサの平断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
図1及び図2には、第1実施形態にかかる圧力センサ1が示されている。
図1及び図2において、圧力センサ1は、材料を脆化させる性質を有する被測定流体として水素の圧力を検出する圧力センサであり、被測定流体が流通する被接続部材Pに設けられている。ここで、被接続部材Pとは、燃料電池車等で用いられる配管等であり、内部に水素が流通されるものである。
圧力センサ1は、被測定流体の圧力により変位する圧力センサ素子3と、圧力センサ素子3に被測定流体を導入する孔部4Aが形成される継手4と、継手4に接合部5を介して嵌合される取付部材6とを備えている。
【0019】
圧力センサ素子3は、筒状部30と、筒状部30の一端側開口を閉塞するダイアフラム部31とが一体形成されたものである。筒状部30の内部空間30Aには孔部4Aを通じて被測定流体が導入される。
筒状部30の他端は、継手4の端部とは溶接で接合されている。
ダイアフラム部31は、内部空間30Aに導入された被測定流体の圧力の大きさに応じて変位するものであり、当該変位は、ダイアフラム部31の内部空間30Aとは反対側の平面に形成された歪みゲージ(図示せず)で検出される。
【0020】
継手4は、孔部4Aが軸芯に沿って形成された軸部40と、軸部40の軸方向の中間位置から径方向外側に延びて形成された継手フランジ部41とが一体に形成されている。
軸部40の一端側40Aには筒状部30の他端が係合される係合溝40Cが形成され、軸部40の他端側40BにはOリングOが設けられている。
継手フランジ部41の外周面にはV字状の溝41Aが外周に沿って形成されている。継手フランジ部41の被接続部材Pと対向する対向面41Bは、被接続部材Pの表面から所定寸法離れている。
【0021】
取付部材6は、フランジと称されるものであり、純度の高いアルミニウムの他、酸化アルミニウム等、アルミニウムを含む材料から形成されている。
取付部材6は、筒状の本体60と、本体60に一体形成され被接続部材Pに図示しない取付金具を介して係合される環状の係合部61とを備えている。係合部61は、本体60の外周に形成された突出部であり、図示しない金具で被接続部材Pに取り付けられる。なお、本実施形態では、必ずしも、係合部61を設けることを要せず、取付部材6を筒状としてもよい。この場合、取付部材6に係合孔(図示せず)を設け、この係合孔に金具を係合させて取付部材6を被接続部材Pに取り付ける構成としてもよい。
【0022】
本体60には、第一内周部601、第二内周部602及び第三内周部603が連続して形成されている。
第一内周部601は、本体60の一端側に配置されている。第二内周部602は、第一内周部601より小さな径であり、圧力センサ素子3の外周面及び軸部40の一端側40Aの外周面とそれぞれ対向する。第二内周部602の第一内周部601側の開口から圧力センサ素子3のダイアフラム部31が露出する。第一内周部601と第二内周部602との間には段差が形成され、この段差に回路基板(図示せず)を設けるものでもよく、さらに、回路基板の中央部を開口し、この開口からダイアフラム部31の歪みゲージと回路基板とをボンディング(図示せず)で接続するものでもよい。
第三内周部603は、第二内周部602より大きな径であり継手フランジ部41の外周面と対向する。第三内周部603と第二内周部602との間の段差に継手フランジ部41の外周面と交差する面が当接する。
【0023】
取付部材6の被接続部材Pと対向する部分には被接続部材Pと当接する当接面600が形成されている。当接面600は、接合部5に対して孔部4Aから離れた外周側の位置に環状に形成されており、当接面600より孔部4Aに近い位置に接合部5と接する段部604が環状に形成されている。
段部604は、第三内周部603と連続して形成され被接続部材Pと対向する対向面605と、対向面605と当接面600とにそれぞれ連続して形成される連接面606とから構成される。
段部604の対向面605は、被接続部材Pの表面に対して所定寸法離隔されている。連接面606は、第三内周部603より大きな径である。
【0024】
圧力センサ素子3及び継手4は、それぞれ高ニッケル含有材料から形成されている。高ニッケル含有材料は、被測定流体である水素に触れても脆化しない材料であって取付部材6より硬質な材料である。
接合部5は、メタルフローと称されるものであり、継手フランジ部41の外周部分と取付部材6の第三内周部603とに形成され周方向に位置する部分が局部的な塑性変形と弾性変形圧をもって溝41Aに食い込み、かつ、軸方向の弾性変形圧を封入して軸方向の結合が維持される。
【0025】
以上の構成の圧力センサ1を組み立てるには、先ず、圧力センサ素子3を継手4に係合し、係合部分を全周にわたってレーザー溶接等で溶接する。その後、取付部材6の内部に圧力センサ素子3が溶接された継手4を押し込む。取付部材6の第三内周部603と第二内周部602との間の段差に継手フランジ部41が当接した状態で、取付部材6の段部604近傍に対しプレス機械等により所定の押圧力を付与し、取付部材6と継手フランジ部41とを塑性変形結合(メタルフロー)により結合する。
このように組み立てられた圧力センサ1を被接続部材Pに取り付ける。この際、取付部材6及び継手4の被接続部材Pへの取付時に接合部5が被接続部材Pに当接しない。
【0026】
第1実施形態によれば、以下の効果がある。
(1)圧力センサ素子3と、被接続部材Pに設けられる継手4と、継手4に接合部5を介して嵌合され被接続部材Pに接続する取付部材6とを備えて圧力センサ1を構成し、圧力センサ素子3及び継手4を、それぞれ水素からなる被測定流体に触れても脆化しない材料であって取付部材6より硬質な材料で形成し、接合部5を塑性変形結合(メタルフロー)とした。そのため、圧力センサ素子3、継手4及び取付部材6のうち、被測定流体に接する圧力センサ素子3及び継手4に高価な耐水素脆化材料を用い、被測定流体に接することのない取付部材6に安価な材料を用いることで、圧力センサ1の製造コストを下げることができる。しかも、接合部5を塑性変形結合(メタルフロー)によって構成しているので、接合部5を通じて、圧力センサ素子3に気体が触れることはない。
【0027】
(2)取付部材6は、接合部5より継手4の孔部4Aから離れた外周側に被接続部材Pに当接する当接面600と、当接面600より孔部4Aに近い位置に形成され接合部5に接する段部604とを有し、段部604が被接続部材Pと離隔されている。そのため、取付部材6及び継手4の被接続部材Pへの取付時に接合部5が被接続部材Pに当接することがないから、接合部5に予期せぬ応力が生じることを防止できる。
【0028】
(3)継手4は、接合部5が外周面に形成される継手フランジ部41を有し、継手フランジ部41には被接続部材Pと対向する対向面41Bが形成され、この対向面41Bは被接続部材Pと離隔している。そのため、取付部材6の段部604だけでなく、継手フランジ部41の対向面41Bも被接続部材Pと離隔しているから、圧力センサ1の被接続部材Pへの取付時に接合部5に予期せぬ応力が生じることを確実に防止できる。
【0029】
(4)取付部材6は、安価なアルミニウムを含む材料から形成されているから、圧力センサの製造コストがより低いものとなる。しかも、アルミニウムが他の金属に比べて軽いため、圧力センサ自体の軽量化を図ることができる。
【0030】
(5)取付部材6は、環状の係合部61を有するので、取付部材6の被接続部材Pへの取付を容易に行うことができる。
【0031】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態を図3から図5に基づいて説明する。
図3及び図4には、第2実施形態にかかる圧力センサ2が示されている。第2実施形態の圧力センサ2は、第1実施形態の圧力センサ1とは、継手、接合部及び取付部材の構成が異なるもので、他の構成は同じである。第2実施形態の説明において、第1実施形態と同一の構成は同一符号を付して説明を省略する。
図3及び図4において、圧力センサ2は、圧力センサ素子3と、圧力センサ素子3に被測定流体を導入する孔部4Aが形成された継手7と、継手7に接合部8を介して嵌合される取付部材9とを備えている。
【0032】
継手7は、孔部4Aが軸芯に沿って形成された軸部40と、軸部40の軸方向の中間位置から径方向外側に延びて形成された継手フランジ部71とが一体に形成されている。
軸部40の他端側40Bには、被接続部材Pに螺合される雄ねじ部70が形成されており、雄ねじ部70と継手フランジ部71との間には、図示しないOリングが設けられている。
継手7は、第1実施形態の継手4と同様に、高ニッケル含有材料から形成されている。
継手フランジ部71の被接続部材Pと対向する対向面71Bは、被接続部材Pの表面に当接している。継手フランジ部71の外周面にはV字状の溝41Aが周方向に形成されている。
【0033】
取付部材9は、第1実施形態と同様、純度の高いアルミニウムの他、酸化アルミニウム等、アルミニウムを含む材料から形成されている。
取付部材9は、外周部が六角形ナットと同様の形状を有するものであり、その外周面は継手7を被接続部材Pにねじ込むために工具と係止する係止面9Aとされている。なお、第2実施形態では、取付部材9の外周部が六角ナットと同様形状に限定されるものではなく、四角状、三角状、八角状等の多角形状でもよく、あるいは、円弧と弦との組み合わせからなる形状であってもよい。多角形状の場合には、各面が係止面であり、円弧と弦との組み合わせ形状では、弦を構成する部分が係止面である。
【0034】
取付部材9には、第一内周部601、第二内周部602及び第三内周部903が連続して形成されている。
接合部8は、メタルフローと称されるものであり、継手フランジ部71の外周部分と取付部材9の第三内周部903とに形成され周方向に位置する部分が局部的な塑性変形と弾性変形圧をもって溝41Aに食い込み、かつ、軸方向の弾性変形圧を封入して軸方向の結合が維持される。
【0035】
接合部8の軸方向と交差する方向の断面形状は非円弧部を有するものであり、その例が図5(A)(B)に示されている。
図5(A)には、接合部8の断面形状が六角形である例が示されている。図5(A)において、取付部材9の第三内周部903の断面形状は六角形であり、継手フランジ部71の外周部分は第三内周部903と対応する六角形である。接合部8は、第三内周部903と継手フランジ部71との間に設けられるものであるため、その断面形状は六角形である。なお、六角形を構成する各面は被円弧部を構成する。第2実施形態では、接合部8の断面形状は六角形に限定されるものではなく、四角状、三角状、八角状等の多角形状でもよい。
【0036】
図5(B)には、接合部8の断面形状が円弧と弦との組み合わせからなる例が示されている。図5(B)において、取付部材9の第三内周部903の断面形状は円弧と弦との組み合わせであり、継手フランジ部71の外周部分は第三内周部903と対応する弦と円弧との組み合わせである。接合部8は、第三内周部903と継手フランジ部71との間に設けられるものであるため、その断面形状は円弧と弦との組み合わせからなる形状である。
なお、図5(B)では、弦の数は1つであるが、第2実施形態では、弦の数は複数あってもよい。
【0037】
以上の構成の圧力センサ2を組み立てるには、先ず、圧力センサ素子3を継手7に係合し、係合部分を全周にわたってレーザー溶接等で溶接する。その後、取付部材9の内部に圧力センサ素子3が溶接された継手7を押し込む。取付部材9の第三内周部903と第二内周部602との間の段差に継手フランジ部71が当接した状態で、取付部材9に対しプレス機械等により所定の押圧力を付与し、取付部材9と継手フランジ部71とを塑性変形結合(メタルフロー)により結合する。
このように組み立てられた圧力センサ2を被接続部材Pに工具を用いて締め込む。
【0038】
第2実施形態によれば、第1実施形態の(1)(4)と同様の効果を奏することができる他、次の効果を奏することができる。
(6)継手7を被接続部材Pに螺合される雄ねじ部70を有する構成とし、取付部材9を、継手7を被接続部材Pにねじ込むために工具と係止する係止面9Aが外周に形成されている構成とした。そのため、取付部材9を工具などで締め付けることで、容易に圧力センサ2を被接続部材Pに取り付けることができる。特に、取付部材9の外周形状を六角形状とすることで、汎用される工具を利用して取付部材9を被接続部材Pに容易に取り付けることができる。
【0039】
(7)接合部8の軸方向と交差する方向の断面形状を、非円弧部を有する構成とした。接合部8の断面形状を円形とする場合に比べて、被接続部材Pへ取付部材9をねじ込む際に、取付部材9が空回りすることがないから、より大きなトルクで締め付けることが可能となる。
【0040】
(8)取付部材9の外周部は六角形ナットと同様の形状を有するので、汎用される工具を用いて取付部材9を被接続部材Pに容易に取り付けることができる。
【0041】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、被測定流体を水素とし、圧力センサ素子3及び継手4,7の材料を、それぞれ高ニッケル含有材料から形成したが、本発明では、被測定流体は水素に限定されるものではなく、圧力センサ素子3及び継手4,7の材料も、被測定流体に触れても脆化しない材料であって取付部材6より硬質な材料であれば、特に限定されるものではない。さらに、高ニッケル含有材料等、被測定流体に触れても脆化しない材料を圧力センサ素子3及び継手4,7の全体として形成したが、本発明では、少なくとも、被測定流体に接する部分が当該材料であればよく、他の材料と組み合わされたものでもよい。
【0042】
また、取付部材6,9を、安価なアルミニウムを含む材料から形成したが、本発明では、圧力センサ素子3及び継手4,7が取付部材6,9より硬質であれば、取付部材6,9の具体的な材料は限定されるものではない。さらに、溝41Aの断面形状はV字に限定されるものではなく、U字や矩形状であってもよい。さらに、溝41Aの本数は1本に限定されるものではなく、複数本であってもよい。
【0043】
さらに、前記各実施形態では、接合部5,8を、継手フランジ部41,71の外周部分と取付部材6,9の第三内周部603,903とに形成され周方向に位置する部分が局部的な塑性変形と弾性変形圧をもって周方向に沿った溝41Aに食い込む構成としたが、本発明では、前記各実施形態の構成に加え、継手フランジ部41,71の外周部分と第三内周部603,903とに形成され軸方向に位置する部分が局部的な塑性変形と弾性変形圧をもって軸方向(縦方向)に沿った1本あるいは複数本の縦溝(図示せず)に食い込む構成としてもよい。この場合、継手フランジ部41,71の外周部分と第三内周部603,903とに形成される溝41Aと縦溝とは互いにクロスさせるものでもよく、あるいは、一部の領域(上半分)を溝41Aとし、残りの領域(下半分)を縦溝とするものでもよい。
【符号の説明】
【0044】
1,2…圧力センサ、3…圧力センサ素子、30…筒状部、30A…内部空間、31…ダイアフラム部、4,7…継手、40…軸部、41,71…継手フランジ部、41A…溝、41B…対向面、4A…孔部、5,8…接合部、6…取付部材、60…本体、600…当接面、601…第一内周部、602…第二内周部、603,903…第三内周部、604…段部、605…対向面、70…雄ねじ部、9…取付部材、9A…係止面、P…被接続部材
図1
図2
図3
図4
図5