(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6342876
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】層転写プロセス
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20180604BHJP
H01L 27/12 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
H01L27/12 B
H01L21/02 C
【請求項の数】13
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-235008(P2015-235008)
(22)【出願日】2015年12月1日
(65)【公開番号】特開2016-111365(P2016-111365A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2017年8月1日
(31)【優先権主張番号】1402800
(32)【優先日】2014年12月4日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507088071
【氏名又は名称】ソイテック
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビビアン ルノード
(72)【発明者】
【氏名】モニーク ルコンテ
【審査官】
山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特表2007−507872(JP,A)
【文献】
特開平11−154652(JP,A)
【文献】
特開2004−56143(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
H01L 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有用層(40)をレシーバー基板 (50)に転写するためのプロセスであって、前記プロセスは
a)キャリア基板(20)と有用層(40)の間に配置された中間層(30)を含むドナー基板(10)を提供するステップであって、前記中間層(30)は、第1の温度から軟らかくなるのに適している、ステップ;
b)レシーバー基板(50)を提供するステップ;
c)前記有用層(40)および前記中間層(30)が前記キャリア基板(20)と前記レシーバー基板(50)との間に挟まれるように前記レシーバー基板(50)と前記ドナー基板(10)を組み立てるステップ;および
d)ステップc)後に前記レシーバー基板(50)と前記ドナー基板(10)に熱処理を実施するステップであって、前記熱処理は、第1の温度より高い第2の温度で実施する、ステップ
を含み、
前記中間層(30)には脱ガスしやすい種が除外されていること、および追加の層(60)が形成され、前記追加の層(60)が、ステップd)で前記中間層(30)内に拡散し、その中に脆弱ゾーン(31)を形成するのに適した化学種を含むことを特徴とするプロセス。
【請求項2】
前記有用層(40)を前記レシーバー基板(50)に転写するために、前記脆弱ゾーン(31)に沿って破壊するステップe)を実施することを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記追加の層(60)は前記中間層(30)および前記キャリア基板(20)との間に挟まれることを特徴とする請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記追加の層(60)は、ステップa)の前記有用層(40)の自由表面上に配置されることを特徴とする請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項5】
前記追加の層(60)は、前記レシーバー基板(50)上に形成されることを特徴とする請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項6】
前記有用層(40)は、前記有用層(40)の厚さを完全に貫通して伸びたトレンチ(42)によって分離された複数の領域(41)を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記中間層(30)は、ガラスを含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記ガラスは、リンケイ酸ガラスおよびホウリンケイ酸ガラスから選択される少なくとも1つの材料を含むことを特徴とする請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記追加の層(60)に含有されている前記化学種は、水素、窒素、ヘリウムおよびアルゴンから選択される元素の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記追加の層(60)は、水素含有二酸化ケイ素であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記キャリア基板(20)は、ケイ素、ゲルマニウム、炭化ケイ素およびサファイアから選択される材料の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記有用層(40)は、GaNおよびInxGa1−xNから選択される材料の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記レシーバー基板(50)は、ケイ素、ゲルマニウム、炭化ケイ素およびサファイアからの材料の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有用層をレシーバー基板に転写するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術から知られており、仏国特許(例えば、特許文献1参照)に記載されている、有用層をレシーバー基板に転写するための1つのプロセスは、
a)キャリア基板2と有用層4の間に配置された中間層3を含むドナー基板1を提供するステップであって、中間層3は、第1の温度から軟らかくなるのに適している、ステップ;
b)レシーバー基板5を提供するステップ;
c)レシーバー基板5とドナー基板1を組み立てるステップ;および
d)ステップc)後にレシーバー基板5とドナー基板1に熱処理を実施するステップであって、熱処理は、第1の温度より高い第2の温度で実施する、ステップ
を含む。
【0003】
中間層3は、ガラス質材料を含む層であってもよい。
【0004】
中間層3は、一般に、リンケイ酸ガラス(PSG)およびホウリンケイ酸ガラス(BPSG)の群から選択される材料の少なくとも1つを含む。
【0005】
中間層3は、一般にガラス転移温度と呼ばれる、中間層3が軟らかくなり、可塑的変形が可能である、第1の温度によって特徴づけられる。
【0006】
ステップd)では、ガラス転移温度より高い第2の温度で実施され、マイクロバブルまたはマイクロキャビティが中間層3内に形成される。
【0007】
ステップd)で形成されたマイクロバブルおよびマイクロキャビティは、中間層3に存在する化学種から生じる。化学種は、ステップd)で気体に変換される。中間層3および有用層4は、キャリア基板2とレシーバー基板5の間に挟まれているので、気体に変換された化学種は、その後中間層3内にトラップされる。
【0008】
その結果、気体に変換された化学種は、オストワルド熟成機構によって合体し、それにより中間層3が海綿状になり、したがって脆弱ゾーンが形成される。
【0009】
それは、その後、中間層3に対して力を加えて、組立てステップc)で形成された構造からキャリア基板2を分離し、このように有用層4をレシーバー基板5に転写するのに十分である。
【0010】
しかしながら、このプロセスは、不十分である。
【0011】
詳細には、ドナー基板1は、組立てステップcの前に、中間層3に脆弱ゾーンを生成しやすい温度上昇を含む処理ステップを受けることができない。これは、その転写の前に有用層4を分解させる結果を有するであろう。
【0012】
このような熱アニーリングステップは、特に、中間層3を軟化させることによって、有用層4中の既存の応力を緩和させるために実施される。一例として、有用層4は、GaNの層であってもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】仏国特許発明第2860249号明細書
【特許文献2】仏国特許発明第2681472号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の一つの目的は、したがって、有用層4の完全性の維持を可能にするプロセスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、前述の問題を解決することを目的とし、
a)キャリア基板と有用層の間に配置された中間層を含むドナー基板を提供するステップであって、中間層は、第1の温度から軟らかくなるのに適している、ステップ;
b)レシーバー基板を提供するステップ;
c)有用層および中間層がキャリア基板とレシーバー基板の間に挟まれるようにレシーバー基板とドナー基板を組み立てるステップ;ならびに
d)ステップc)後にレシーバー基板とドナー基板に熱処理を実施するステップであって、熱処理は、第1の温度より高い第2の温度で実施する、ステップ
を含む、有用層をレシーバー基板に転写するためのプロセスにおいて、
中間層には、脱ガスしやすい種が除外されていること、および追加の層が形成され、前記追加の層が、ステップd)で中間層内に拡散し、その中に脆弱ゾーンを形成するのに適した化学種を含むことが注目すべきである、プロセスを提供する。
【0016】
したがって、中間層が脱ガスしやすい種を含まないので、有用層は、ステップa)で分解されない。
【0017】
その上、脆弱ゾーンの形成は、追加の層の形成によって依然として可能である。
【0018】
さらに、本発明は、先行技術で提案された方法に代わる脆弱な層を形成するための方法を提供する。
【0019】
一実施形態によれば、有用層がレシーバー基板に転写されるように、脆弱ゾーンに沿ってステップd)に続いて分離ステップe)が実施される。
【0020】
一実施形態によれば、追加の層は、中間層とキャリア基板の間に挟まれている。
【0021】
一実施形態によれば、追加の層は、ステップa)の有用層の自由表面上に配置される。
【0022】
一実施形態によれば、追加の層は、レシーバー基板上に形成される。
【0023】
一実施形態によれば、有用層は、有用層の厚さを完全に貫通して伸びたトレンチによって分離された複数の領域を含む。
【0024】
これは、有用層が中間層と追加の層の間に挟まれた場合、追加の層に含有されている化学種が中間層に向かって拡散するのを容易にする。
【0025】
一実施形態によれば、中間層は、ガラスを含む。
【0026】
一実施形態によれば、ガラスは、リンケイ酸ガラスおよびホウリンケイ酸ガラスから選択される少なくとも1つの材料を含む。
【0027】
一実施形態によれば、追加の層に含有されている化学種は、水素、窒素、ヘリウムおよびアルゴンから選択される元素の少なくとも1つを含む。
【0028】
一実施形態によれば、追加の層は、水素含有二酸化ケイ素である。
【0029】
一実施形態によれば、キャリア基板は、ケイ素、ゲルマニウム、炭化ケイ素およびサファイアから選択される材料の少なくとも1つを含む。
【0030】
一実施形態によれば、有用層は、GaNおよびIn
xGa
1−xNから選択される材料の少なくとも1つを含む。
【0031】
一実施形態によれば、レシーバー基板は、ケイ素、ゲルマニウム、炭化ケイ素およびサファイアからの材料の少なくとも1つを含む。
【0032】
本発明は、添付図を参照して示される、本発明の1つの特定の、かつ非限定的な実施形態の以下の説明に照らしてよりよく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の一実施形態に基づいたドナー基板の概略断面図である。
【
図2a】本発明の一実施形態に基づいたドナー基板の概略図である。
【
図2b】本発明の一実施形態に基づいたドナー基板の概略図である。
【
図2c】本発明の一実施形態に基づいたドナー基板の概略図である。
【
図3a】本発明の種々の実施形態に基づいた概略断面図である。
【
図3b】本発明の種々の実施形態に基づいた概略断面図である。
【
図3c】本発明の種々の実施形態に基づいた概略断面図である。
【
図3d】本発明の種々の実施形態に基づいた概略断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に基づいた組立てステップの概略図である。
【
図5】本発明の一実施形態に基づいた熱処理ステップd)の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
実装形態の種々の方法の場合、説明の簡略化のため、同一の、または同じ機能を提供する要素には同じ参照符号を使用する。
【0035】
ステップa)は、ドナー基板10を提供することにある。
【0036】
図1に示すドナー基板10は、その裏面からその表面まで、キャリア基板20、中間層30および有用層40を含んでもよい。
【0037】
キャリア基板20は、ケイ素、ゲルマニウム、炭化ケイ素およびサファイアから選択される材料の少なくとも1つを含んでもよい。
【0038】
中間層30は、第1の温度より高い温度まで加熱された場合に、可塑的に変形するのに適した層である。
【0039】
「塑性変形」という表現は、中間層30を軟らかくし、クリープしやすくする変形を表すことが理解されている。
【0040】
中間層30は、その後、そのガラス転移温度とも呼ばれている第1の温度でガラス転移を起こしうるガラスであってもよい。
【0041】
「ガラス」という用語は、ガラス転移温度より低い任意の温度で固体状態のままであり、その粘度がガラス転移温度より高い任意の温度で徐々に減少する材料を表すことが理解されている。
【0042】
中間層30は、リンケイ酸ガラス(PSG)およびホウリンケイ酸ガラス(BPSG)から選択される少なくとも1つの材料を含んでもよい。
【0043】
第1の温度は、300および1000℃の間に含まれてもよく、通常600℃である。
【0044】
ドナー基板10の製造中、中間層30は、プラズマ促進化学蒸着(PECVD)技術によって、キャリア基板20上に形成することができる。
【0045】
例えば、中間層30は、例えば、前駆体のオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)を伴う、PECVD法によって形成されたホウリンケイ酸ガラスを含んでもよい。蒸着温度は、400℃であってもよい。
【0046】
したがって、中間層30の厚さは、200nmおよび5μmの間に含まれてもよく、例えば1μmである。
【0047】
その上、第1の温度は、300および1000℃の間に含まれてもよい。
【0048】
好ましくは、中間層30は、形成後に脱ガスしやすい種が除外されている。
【0049】
しかしながら、その形成中に、中間層30は、脱ガスしやすい種を含有してもよい。
【0050】
したがって、ドナー基板10の製造中、中間層30は、中間層30を緻密化させるために、温度上昇を含む緻密化させる熱処理を受けてもよい。
【0051】
中間層30の熱処理は、後者が脱ガスしやすい種を含有する場合、特に有利である。
【0052】
これは、特にリンケイ酸またはホウリンケイ酸ガラスについての場合である。
【0053】
脱ガスしやすい種は、通常、中間層30の蒸着反応から生じる副生成物である。
【0054】
中間層30の蒸着反応の副生成物は、アルキル基および水を含んでもよい。
【0055】
したがって、緻密化させる熱処理が実施された後、中間層30は、脱ガスしやすい種が除外されている。中間層30は、それにもかかわらず、第1の温度より高い温度まで加熱したときに可塑的に変形する能力を維持している。
【0056】
緻密化させる熱処理は、600℃および900℃の間に含まれる温度で60分から300分間実施してもよい。
【0057】
ホウリンケイ酸ガラスを含む中間層30では、緻密化させる処理は、酸素および/または水蒸気雰囲気下において850℃の温度で60分間実施してもよい。
【0058】
有用層40は、転写プロセスによって中間層30上に形成することができる。
【0059】
例えば、有用層40は、SMART CUT(商標)プロセスによって形成することができる。この点について、当業者は、文献(例えば、特許文献2参照)を参照してもよい。
【0060】
有用層40を転写するプロセス中、温度上昇を含む処理、例えば前述の文献で提案されているようなボンディング界面を強化するステップにしばしば頼る。
【0061】
このようなステップ中の中間層30における脱ガスしやすい種の不在は、有用層40の分解または劣化の回避を可能にする。
【0062】
有用層40は、歪み層であってもよく、例えば、引っ張り歪みまたは圧縮歪み層であってもよい。これは、特に、有用層40がIn
xGa
1−xNを含む場合の事例である。
【0063】
具体的には、合金In
xGa
1−xNは、一般に、GaN基板上のエピタキシャル成長によって得られ、したがって歪んでいる。
【0064】
したがって、有用層40を形成するためにIn
xGa
1−xNを含む層を中間層30に転写する間、In
xGa
1−xN内の歪みは維持されている。
【0065】
有用層40が歪んでいる場合、歪みは、第1の温度より高い温度で熱処理を実施することによって緩和することができる。熱処理は、中間層30のクリープを可能にする。
【0066】
中間層30は、脱ガスしやすい種が除外されているので、仏国特許(例えば、特許文献1参照。)で観察されるようなマイクロバブルまたはマイクロキャビティは形成されない。その結果、第1の温度より高い温度での熱処理中の有用層40の分解または劣化の危険がない。
【0067】
有用層40は、有用層40の厚さを完全に貫通するトレンチ42によって分離された複数の領域41を含んでもよい。
【0068】
トレンチ42は、当業者に既知の技術を用いて有用層40をエッチングすることによって作ることができる。
【0069】
したがって、
図2aおよび2bは、それぞれ断面および上から有用層40の複数の領域41を示している。
【0070】
領域41は、任意の形状であってもよく、例えば辺長が100から2000μmの四角であってもよい。
【0071】
本発明に基づくプロセスのステップb)は、レシーバー基板50を提供することにある。
【0072】
レシーバー基板50は、ケイ素、ゲルマニウム、炭化ケイ素およびサファイアから選択される材料の少なくとも1つを含んでもよい。
【0073】
転写プロセスは、追加の層60を形成することも含む。
【0074】
追加の層60は、第1の温度より高い第2の温度で実施される熱処理中に中間層30内に拡散するのに適した化学種を含む。
【0075】
追加の層60は、キャリア基板20と中間層30の間(
図3a)、または中間層30と有用層40の間(
図3b)、または有用層40の自由表面上(
図3c)、またはさらにはレシーバー基板50上(
図3d)に配置してもよい。
【0076】
追加の層60に含有されている化学種は、水素、窒素、ヘリウム、アルゴンおよび酸素から選択される元素の少なくとも1つを含んでもよい。
【0077】
追加の層60は、OHもしくはHイオンまたは水の分子H
2Oの形態で水素を含有している二酸化ケイ素(SiO
2)を含んでもよいが、CH
3OHまたはCH
3CH
2OHなどの炭素を含有する副生成物も含んでもよい。
【0078】
追加の層60は、プラズマ促進化学蒸着(PECVD)技術によって形成することができる。追加の層60の形成に使用した前駆体は、亜酸化窒素(N
2O)または酸素(O
2)の流れ中に希釈されたシラン(SiH
4)を含んでいてもよい。追加の層60は、200℃および500℃の間に含まれている温度、例えば300℃で蒸着される。
【0079】
追加の層60は、層がキャリア基板20と中間層30の間、または中間層30と有用層40の間に挟まれている場合、ドナー基板10の製造中に生成することができる。
【0080】
追加の層60は、有用層40の自由表面上に形成することもできる。
【0081】
図2cに示されているように、トレンチ42が、有用層40の厚さを貫通させて形成された場合、追加の層60は、該トレンチも満たす。
【0082】
転写プロセスのステップc)は、
図4に示されているように、ドナー基板10とレシーバー基板50を組み立てることにある。
【0083】
組立ては、有用層40、中間層30および追加の層60がキャリア基板20とレシーバー基板50の間に挟まれるように実施する。
【0084】
ステップc)は、ダイレクトボンディングステップを含んでいてもよい。
【0085】
ステップd)は、第1の温度(またはガラス転移温度)より高い第2の温度で実施される熱処理を含む。
【0086】
ステップd)では、中間層30は軟化する。言い換えれば、中間層30は軟らかくなる。その上、追加の層60に含有されている化学種は、フィック拡散によって追加の層60から中間層30に向かって拡散する。中間層30は軟らかいので、その後マイクロバブルまたはマイクロキャビティが中間層30内で形成され得る。したがって、マイクロバブルおよび/またはマイクロキャビティは、中間層30を弱め、このように中間層30の全範囲にわたって脆弱ゾーン31を形成する(
図5)。
【0087】
追加の層60が有用層40の自由表面上に形成された場合、追加の層60に含有されている化学種は、まず有用層40を通って拡散し、その後中間層30内に拡散する。
【0088】
トレンチが有用層40の厚さを貫通させて形成された場合、追加の層60に含有されている化学種も、トレンチを通過して中間層30に到達する。
【0089】
熱処理は、700℃および1100℃の間に含まれている温度、例えば800℃で実施してもよい。
【0090】
レシーバー基板50の存在は、脆弱ゾーン31を形成するステップd)において構造を強化する。
【0091】
有用層40をレシーバー基板50に転写するために、脆弱ゾーン31に沿って中間層30の破壊を含む追加のステップe)を実施してもよい。
【0092】
破壊は、組立品(assembly)に力を加えることによって、例えば組立品の界面でブレードを挿入することによって、達成することができる。
【0093】
したがって、本発明によれば、追加の層60に最初に含有されている化学種を注入することによって、中間層30内に脆弱ゾーン31を形成することが可能である。本発明に基づいて中間層30内に脆弱ゾーン31を形成することは、レシーバー基板50に転写するための有用層40の分解を防止する。
【0094】
本発明は、第1の基板から第2の基板に極性を有する有用層40を転写する問題の場合に、特に有利である。
【符号の説明】
【0095】
10 ドナー基板
20 キャリア基板
30 中間層
31 脆弱ゾーン
40 有用層
41 領域
42 トレンチ
50 レシーバー基板
60 追加の層