(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6342883
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】油入変圧器
(51)【国際特許分類】
H01F 27/02 20060101AFI20180604BHJP
H01F 27/12 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
H01F27/02 D
H01F27/12 Z
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-249622(P2015-249622)
(22)【出願日】2015年12月22日
(65)【公開番号】特開2017-117871(P2017-117871A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2017年12月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山崎 美稀
(72)【発明者】
【氏名】土肥 学
(72)【発明者】
【氏名】丸山 英介
(72)【発明者】
【氏名】天兒 洋一
(72)【発明者】
【氏名】御子柴 諒介
(72)【発明者】
【氏名】相馬 憲一
【審査官】
井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭56−061023(JP,U)
【文献】
特開昭59−034605(JP,A)
【文献】
実開昭53−028817(JP,U)
【文献】
特開昭58−197286(JP,A)
【文献】
実開昭56−154131(JP,U)
【文献】
特開昭53−92425(JP,A)
【文献】
実開昭53−86509(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/02
H01F 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄心とコイルとを組み立てた鉄心−コイル組立体をタンク内に収納し、絶縁油を入れてなる油入変圧器であって、
前記鉄心−コイル組立体は、鉄心の複数の脚部にそれぞれ取り付けた複数のコイルを備え、
前記複数のコイルが近接する部位に面するタンク面に、前記複数のコイルの軸方向に延び、前記複数のコイルが近接する部位に向かって凹む凹部を設け、前記複数のコイルが近接する部位と前記タンク面との距離を短縮し、
前記タンクの表面の少なくとも前記コイルに対向する部分に、縦横に複数の凸部または凹部を有することを特徴とする油入変圧器。
【請求項2】
請求項1記載の油入変圧器において、
前記タンク面を、前記複数のコイルの外周面に沿って延びる曲面で形成し、前記コイルの外周面の絶縁油が一定の層厚となるようにしたことを特徴とする油入変圧器。
【請求項3】
請求項1記載の油入変圧器において、
前記タンク面を、前記複数のコイルの外周面に沿う複数の平面の組み合わせで形成し、前記コイルの外周面とタンク面との距離が、直方体形状のタンクに比べて、短くなるようにしたことを特徴とする油入変圧器。
【請求項4】
請求項1記載の油入変圧器において、
前記複数の凸部または凹部は、前記タンクの胴体部に設けられていることを特徴とする油入変圧器。
【請求項5】
請求項1記載の油入変圧器において、
前記複数の凸部または凹部は、球面状の凸部または凹部であることを特徴とする油入変圧器。
【請求項6】
請求項1記載の油入変圧器において、
前記複数のコイルが近接する部位に向かって凹む凹部のうち、前記絶縁油とは反対側の面が空気に接していることを特徴とする油入変圧器。
【請求項7】
請求項1記載の油入変圧器において、
前記タンクの表面の複数の凸部または凹部は、並列配列もしくは千鳥配列で連続して配置されていることを特徴とする油入変圧器。
【請求項8】
請求項1記載の油入変圧器において、
前記鉄心−コイル組立体は、3相3脚構造であることを特徴とする油入変圧器。
【請求項9】
請求項1記載の油入変圧器において、
前記鉄心−コイル組立体は、単相構造であることを特徴とする油入変圧器。
【請求項10】
請求項1記載の油入変圧器において、
前記タンクの材料は、鋼板であることを特徴とする油入変圧器。
【請求項11】
請求項1記載の油入変圧器において、
前記タンクの材料は、高強度アルミニウム材料であることを特徴とする油入変圧器。
【請求項12】
請求項11記載の油入変圧器において、
前記タンクの材料は、Al−Mg−Si系合金であることを特徴とする油入変圧器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油入変圧器、特に油入変圧器の放熱構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に油入電気機器、例えば油入変圧器のタンクには、変圧器の絶縁媒体として絶縁油が入っている。その絶縁油は変圧器の通電熱で温度上昇することによって膨張し、タンクの内圧が上昇するので、タンクは変形しないように充分な強度を必要とする。また、熱伝導が低い絶縁油の温度上昇を抑制できる放熱性能が要求される。
【0003】
この種のタンクの従来技術としては、特開昭53−35122号公報(特許文献1)に示される公知技術がある。この公知技術は、
図5と
図6に示すように、放熱リブとしてのひれ状張出部2の上下端部を、内方に絞り込んで密着した面接合部3を形成する。そして、上記面接合部3に沿って上記張出部2の上下端部を溶接し、その溶接線を一軸のみとする一方、前記張出部2の板場に凸状または凹状の補強用ビード4を形成し、上記補強用ビード4により張出部2の機械的強度の増大を図るようにしている。
【0004】
また、従来技術の他の例としては、実開昭56−67732号公報(特許文献2)に示される公知技術がある。この公知技術は、
図7に示すように、波形放熱器の放熱リプ2の両側面適当筒所に、外側から油道部内に向って、タンク高さ方向に沿って凹状溝部4を形成する。放熱リブ2にタンク高さ方向に沿って凹状溝部4を設けたことにより、内圧に対する機械的強度を高め、かつ、油の自然対流効率を高め、放熱効率の高いものが得られるようにしている。このように、上記に示す従来例では、補強用ビード4によりタンクの強度を増大し得るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭53−35122号公報
【特許文献2】実開昭56−67732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図5、
図6、
図7に示す従来例では、放熱リブとしてのひれ状張出部2は、タンク内で絶縁油の温度上昇によって内圧が高くなった場合、補強用ビード4により張出部2の横方向および縦方向に対しての強度向上を図っている。
【0007】
しかし、放熱リブに補強用ビード4を設けて強度向上を図っている分、放熱リブの面接合部3への負荷が大きくなり、より高度な接合方法が必要とされ、コストアップにつながる課題がある。
【0008】
一般に油入変圧器において、絶縁油6は、内部のコイル7の導体の通電によって熱せられると、
図8に示す矢印の経路で対流すると考えられ、放熱面積を大きくするために放熱リブ2を大きく設けている。すなわち、絶縁油6は、鉄心9に設けたコイル7の導体によって熱せられると、その上方に上昇し、そこから放熱リブ2の内部側に流れ、該放熱リブ2の放熱作用によって冷却されることにより、放熱リブ2の外周側から下降してコイル7側に戻る循環が期待される。
図8に示すように循環を問題なく行わせるためには、コイル7と放熱リブ2との間の距離を大きく設ける必要があり、タンクが大型化する課題がある。一方、タンク内部の絶縁性能を確保するために絶縁油を浸す絶縁距離は小さい。これは、コイル7の外周はすでに絶縁紙で保護されているため、絶縁油を絶縁紙に浸透させて確実に絶縁を担保しているからである。そこで、
図9に示すように、コイル7と放熱リブ2との間の距離を絶縁性能が確保できる距離まで小さくすると大幅な小型化ができるが、絶縁油6の対流による放熱効果は小さくなってしまうという課題がある。
【0009】
本発明は、前記従来技術の問題点に鑑み、放熱リブを設けて絶縁油の対流による放熱ではなく、断熱壁である絶縁油層を薄くすることにより所望の放熱性能を達成すると同時に、タンクの小型化とタンクの強度が両立できる油入変圧器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための、本発明の油入変圧器の一例を挙げるならば、鉄心とコイルとを組み立てた鉄心−コイル組立体をタンク内に収納し、絶縁油を入れてなる油入変圧器であって、前記鉄心−コイル組立体は、鉄心の複数の脚部にそれぞれ取り付けた複数のコイルを備え、前記複数のコイルが近接する部位に面するタンク面に、前記複数のコイルの軸方向に延び、前記複数のコイルが近接する部位に向かって凹む凹部を設け、前記複数のコイルが近接する部位と前記タンク面との距離を短縮
し、前記タンクの表面の少なくとも前記コイルに対向する部分に、縦横に複数の凸部または凹部を有するものである。
【0011】
本発明において、前記タンクの表面に複数の凸部または凹部を形成し、タンクの表面積を広げるのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、タンクに放熱リブを設けることなく絶縁油の対流のための距離を低減することで大幅な小型化・軽量化を実現でき、絶縁油の層を薄くすることにより、熱源であるコイルからの放熱性を向上させることができる。また、放熱リブを設けないので、タンクの内圧上昇により放熱リブがたわむなどの恐れがない。さらに、圧力上昇時に応力が集中する放熱リブの面接合部がないので、強度における信頼性が確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】本発明の実施例1のタンク部斜視図である。
【
図1B】本発明の実施例1の油入変圧器の横断面図である。
【
図2A】本発明の実施例2のタンク部斜視図である。
【
図2B】本発明の実施例2の油入変圧器の横断面図である。
【
図3A】本発明の実施例3のタンク部斜視図である。
【
図3B】本発明の実施例3の油入変圧器の横断面図である。
【
図4】本発明の実施例4の油入変圧器の横断面図である。
【
図5】従来の油入変圧器の一例を示す斜視図である。
【
図6】タンクに取り付ける、従来の放熱リブを示す正面図である。
【
図7】従来の放熱リブの他の例を示す正面図である。
【
図8】油入変圧器内における油の対流を示す説明図である。
【
図9】小型の油入変圧器内における油の対流を示す説明図である。
【
図10】
図9のA−A’線における、横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例を図面を用いて説明する。なお、実施例を説明するための各図において、同一の構成要素には同一の名称、符号を付して、その繰り返しの説明を省略する。
【実施例1】
【0015】
図1Aおよび
図1Bに、本発明の実施例1の油入変圧器を示す。
図1Aは油入変圧器のタンクの斜視図であり、
図1Bはタンク内部に鉄心−コイル組立体を収納した油入変圧器の横断面を上から見た図である。図は、U相11、V相12、W相13からなる3相3脚構造の油入変圧器を示す。
【0016】
本実施例のタンク1は、
図1Aに示すように、蓋を取付けるためのフランジ1cと、底板1dと、該底板1d及びフランジ1c間に配設される胴体部1eとを備え、これらにより鉄心とコイルとを組み立てた鉄心−コイル組立体8及びこれを絶縁するための絶縁油6を収容するように構成されている。前記胴体部1eは、シート状の簿板、例えば鋼板をプレス加工によって成形されたものである。
【0017】
放熱面積を多くする従来のタンク構造は、
図9および
図10に示すように、直方体形状のタンク1の内部に1相以上のコイル7を収納し、その周囲に絶縁油6を満たしている。そして、タンク1の外側には全周に渡って放熱リブ2を一定間隔で設けている。コイル7を構成する一次コイル部7a、二次コイル部7bは通電による発熱源になるため、U相11、V相12、W相13の相間のコイルの接触部11a、12aが導体部の中で最大の温度となる。さらに、相間のコイルの接触部ではタンク周囲または放熱リブとの距離6aが大きいため、放熱性能が低くなり、高温になりやすくなる。また、
図9に示される、コイル7と放熱リブ2との間の距離を小さくして小型化した油入変圧器においては、絶縁油6の対流が起きにくくなり放熱効果が小さくなってしまう。
【0018】
本実施例では、
図1Bに示すように、鉄心9とコイル7とを組み立てた鉄心−コイル組立体8は、鉄心9の複数の脚部にそれぞれ複数の相(U相11,V相12,W相13)のコイル7が設けられている。そして、コイル7外周に設ける絶縁油6が一定の層厚になるように、複数の相のコイル7が近接する部位11a、12aに面しているタンクの面に凹部1aを設けている。凹部1aは、コイル7の軸方向に延び、複数の相のコイルが近接する部位に向かって凹んでいる。本実施例では、タンク1の面をコイル7の外周面に沿って延びる曲面で形成し、コイル7の外周面の絶縁油6がほぼ一定の層厚となるようにしている。これによって、絶縁性能上の必要距離6bを確保しながら、タンク周囲との距離6aを絶縁性能上の必要距離6bまで小さくできる。絶縁油の熱伝導は、たとえば、0.12W/m・Kと熱伝導が小さいが、金属製のタンクの熱伝導は例えば、80w/m・Kと比較的大きい。熱伝導性能が低い絶縁油の厚さを薄くし、熱伝導が比較的大きいタンクまでの距離を小さくすることで放熱性能が向上できる。なお、図において、符号10は補強板を示す。
【0019】
本実施例によれば、放熱リブを設けることなく絶縁油の対流のための距離を低減することで大幅な小型化・軽量化を実現でき、また、絶縁油の層を薄くすることにより、熱源であるコイルからの放熱性を向上させることができる。また、放熱リブを設けないので、タンクの内圧上昇により放熱リブがたわむなどの恐れがない。さらに、圧力上昇時に応力が集中する放熱リブの面接合部がないので、強度における信頼性が確保できる。
【実施例2】
【0020】
図2Aおよび
図2Bに、本発明の実施例2の油入変圧器を示す。
図2Aは油入変圧器のタンクの斜視図であり、
図2Bはタンクに鉄心−コイル組立体を収納した油入変圧器の横断面を上から見た図である。
【0021】
図に示すように、実施例2では、タンク周囲の放熱面積を多くするために、タンクの胴体部1eに複数の凸部(エンボス部)1bを形成している。各凸部(エンボス部)1bは、胴体部1eの周囲に適宜の間隔をもって、並列配列や千鳥配列などで配置される。そして、各凸部(エンボス部)1bは、例えば半球状に張り出して形成され、凸部の内部と胴体部1eの内部とが連続している。
【0022】
図2Aでは、タンクの底板1dの最外周より内側になるようにタンクの胴体部1eの表面に連続的な凸部(エンボス部)1bを設けて、高熱伝達の放熱面を形成している。図では、エンボス部1bを凸部としているが、凹部としても良い。
【0023】
従来の放熱リブによる放熱構造に関して、例えば、
図9のA−A’の断面図である
図10に示す放熱リブの熱伝達率は、例えば、10
4≦Gr
H・Pr≦10
7の場合、次の式(1)による理論計算で求められる。
【0024】
【数1】
【0025】
Gr
Hはグラスホフ数(Gr
H=gβ|Tw-Ta|H
3/v)、Prはプラントル数、Hはリブの高さ(m)、hは平均熱伝達率(W/m
2℃)、kは熱伝導率(W/m℃)を示す。
【0026】
本実施例である
図2Bのエンボス部に相当する半球(直径d)の熱伝達率は、例えば、0≦Gr
H・Pr≦10
7の場合、次の式(2)による理論式で求められる。
【0027】
【数2】
【0028】
式(1)と式(2)で示すように、熱伝達率は放熱リブの高さHやエンボスの直径dに依存するが、通常のリブの高さ(例えば、100mm)とエンボス(例えば、40mm)ではエンボスの方が熱伝達率は高い(例えば、20%高い)。
【0029】
また、
図8に示す放熱リブ構造におけるフィン効率は次の式(3)により理論的に求められることができる。
【0030】
【数3】
【0031】
放熱リブの方のフィン効率は、例えば(リブ高さH=100mm、板厚t=2mm)64%となっている。つまり、放熱リブによる放熱面積はその64%が放熱として効いていることを示す。つまり、リブの高さを大きくして放熱面積を大きくしても、全ての増加面積が放熱していることではない。本実施例の
図2Bのエンボスタイプの凸凹は、リブの高さを大きくせずに放熱面積を増やす方法の一つである。
【0032】
本実施例によれば、実施例1の作用効果に加えて、タンクの胴体部に凸部または凹部(エンボス部)を形成したので、放熱面積を広くでき、放熱性をより向上させることができる。また、凸部または凹部(エンボス部)を形成することにより、タンクの強度を向上することができる。
【実施例3】
【0033】
図3Aおよび
図3Bに、本発明の実施例3の油入変圧器を示す。
図3Aは油入変圧器のタンク部の斜視図であり、
図3Bはタンク部に鉄心−コイル組立体を収納した油入変圧器の横断面を上から見た図である。
【0034】
実施例1或いは実施例2では、タンクの形状を、コイルの外周部から一定の距離を保つように、曲面で形成したが、本実施例は、コイルの外周にほぼ沿うように、平面の組み合わせで形成したものである。すなわち、
図3Bに示すように、複数の相のコイル7が近接する部位11a、12aに面しているタンクの面に、断面が三角形状の凹部1aを設ける。これにより、絶縁性能上の必要距離6bを確保しながら、コイル7の外周面とタンクの面との距離6aを絶縁性能上の必要距離6bまで小さくすることができる。
【0035】
本実施例において、
図3Bに示すように、タンクの胴体部1eにエンボス部を設けることなく平面状にしても良いし、また、
図3Aに示すように、タンクの胴体部1eにエンボス部1bを設けても良い。
【0036】
本実施例によれば、実施例1の作用効果に加えて、タンクの胴体部を、平面の組み合わせで形成したので、製造が容易となる。
【実施例4】
【0037】
図4に、本発明の実施例4の油入変圧器を示す。
図4は、タンク部に鉄心−コイル組立体を収納した油入変圧器の横断面を上から見た図である。
【0038】
実施例1或いは実施例2は、本発明を3相3脚構造の油入変圧器に用いたものであるが、本実施例は、本発明を単相の変圧器に用いたものである。
【0039】
単相の変圧器では、額縁状の鉄心9の2つの脚部にそれぞれコイル7が設けられている。コイル7を構成する一次コイル部7a、二次コイル部7bは通電による発熱源になるため、中央の2つのコイルの接触部が導体部の中で最大の温度となる。本実施例では、図に示すように、コイル外周に設ける絶縁油が一定の層厚になるように、鉄心−コイル組立体8の2つのコイル7が近接している部位に面しているタンクの面に凹部1aを設けている。
【0040】
図4では、タンクの形状をコイルの外周に沿うように曲面で形成しているが、
図3Bに示すように、平面の組み合わせで形成しても良い。また、
図4では、タンクの胴体部にエンボス部1bを形成しているが、
図1と同様に、エンボス部を設けなくても良い。
【0041】
本実施例によれば、単相の変圧器において、放熱リブを設けることなく絶縁油の対流のための距離を低減することで大幅な小型化・軽量化を実現でき、また、絶縁油の層を薄くすることにより、熱源であるコイルからの放熱性を向上させることができる。
【実施例5】
【0042】
本実施例は、実施例1〜4の油入変圧器のタンクの材質を改良したものである。一般に油入変圧器のタンクは鋼板(例えば、SS400,SPCC)で形成される。本実施例では、鋼板に代えて、油入変圧器のタンクを高強度アルミニウム材(例えば、6000系(Al−Mg−Si系:アルミマグネシウムシリコン合金)であるAl6069、Al6061)で形成する。特に高強度のアルミニウム材は、より大きな耐力を有するアルミニウムである。高強度アルミニウム材は、熱処理状態や化学成分によらず、弾性率は約70GPaであることにより、広い弾性領域を有し、高圧サイクル試験時により大きなひずみを許容できることになる。したがって、耐圧性・疲労・腐食に優れ、熱伝導率はSS400の4倍、密度はSS400の約1/3であり、油入変圧器のタンクに適している。
【0043】
本実施例によれば、油入変圧器のタンクの材料として高強度アルミニウム合金を用いたので、強度に優れ、放熱性能が良く、軽量な油入変圧器を提供できる。
【符号の説明】
【0044】
1 タンク
1a タンクの凹部
1b タンクのエンボス部
1c タンクのフランジ
1d タンクの底板
1e タンクの胴体部
2 放熱リブ
3 面接合部
4 補強用ビード
6 絶縁油
6a 相間接触部の絶縁距離
6b 必要絶縁距離
7 コイル
7a 二次コイル
7b 一次コイル
8 鉄心−コイル組立体
9 鉄心(コア)
10 補強板
11 U相
12 V相
13 W相
11a、12a 相間接触部