【実施例】
【0059】
(1.実験動物)
以下の実施例において使用したすべての動物実験は、東京理科大学動物実験倫理委員会の承認を受けた上で、その規則にしたがって実験を実施した。動物実験に用いたSCIDマウスは日本クレア(東京、日本)より購入し、米国国立衛生研究所の定める動物実験のガイドラインにしたがって飼育した。実験による動物への負担軽減のため、施術は5mg/mlペントバルビタールの腹腔内注射による全身麻酔下で行った。
【0060】
(2.歯胚分割方法の確立)
結紮または切断による歯胚の分割が可能であるかどうかを検討する為に、1stエナメルノットが形成される胎齢14.5日のマウスの第一臼歯歯胚を正中線を含む面で結紮または切断することで、各歯胚部分に分割し、器官培養を行った。本実施例において、結紮による分割を行った歯胚を結紮歯胚といい、切断による分割を行った歯胚を切断歯胚という。また、器官培養後の歯胚が正常に分割されているかどうかを確認するために、器官培養後の結紮歯胚または切断歯胚についてHE染色による組織解析を行った。
【0061】
(2−1.歯胚分割方法)
胎齢14.5日のマウス胎仔の下顎から臼歯の歯胚を摘出し、第1臼歯歯胚領域のみを先の25G針で分離した。歯胚の中央部に8−0ナイロン縫合糸(カキヌマメディカル)を掛けて歯胚組織が切れてしまわない程度に結紮した。より具体的には、対象とする歯胚の正中線を含む面上に結紮糸を掛けて、緩く結ぶことにより結紮した歯胚(結紮歯胚)を作製した。結紮後の歯胚における間葉系組織および上皮系組織は、共に変形をしているが、結紮直後は両組織とも切れていない状態を確保した。なお、結紮後に歯胚を囲む結紮糸の直径が、約20〜50マイクロメートルとなるように結紮した。
また、別の分割方法として、対象とする歯胚を、正中線を含む面に平行な、歯胚を三等分する面上に結紮糸を掛けて、緩く結ぶことにより結紮した歯胚(結紮歯胚)を作製した。結紮の方法は、正中線を含む面上に結紮糸を掛ける方法と同様の方法を用いた。
さらに、別の分割方法として、対象とする歯胚の正中線を含む面を、鋭利な25G針を用いて、組織を潰さないように切断することにより切断した歯胚(切断歯胚)を作製した。
【0062】
(2−2.結紮歯胚の生体外器官培養法)
上記の歯胚分割方法により作製した結紮歯胚または切断歯胚を生体外での器官培養をするために、シリコングリースを塗布したペトリディッシュにCellmatrix type 1−A (Nitta gelatin、Osaka、Japan)を滴下し、結紮歯胚または切断歯胚を1つずつのせてから、37℃にて5分間静置した。5分間の静置によりコラーゲンゲルが固化してから、Cell Culture Insert(BD)を置いた12well Plate(BD)に置く。プレートには10%FBS(JBS)、0.1mg/ml L−Ascolbic Acid(Sigma)、2mM L−Glutamine(GIBCO)添加D−MEM(Sigma)を380μl加え、37℃、5%CO
2条件下で培養を行った。尚、培地交換は2日毎に行った。
【0063】
(2−3.HE染色による組織解析)
器官培養後の結紮歯胚または切断歯胚をマイルドホルム(Wako)にて24時間固定した。その後、パラフィン(McCormick scientific)包埋をし、組織学的解析のために、結紮歯胚または切断歯胚から4μm厚の切片を作製した。作製した切片はヘマトキシリン−エオジン染色(HE染色:hematoxylin−eosin stain)を行い、AxioCAM MRc5(Zeiss)を設置したAxio Imager A1(Zeiss)を用いて顕鏡を行った。
【0064】
(2−4.結果)
器官培養開始から6日目、歯胚を結紮により2つに分割した群では、結紮歯胚の上皮組織と間葉組織は分断され、2つ正常な歯胚の発生が確認された(
図1)。また、歯胚を結紮により3つに分割した分においても同様に、3つの正常な歯胚の発生が確認された(
図2)。このことから、結紮による歯胚分割は可能であることが示唆された。また、切断歯胚においても、上皮・間葉組織の陥入が認められたことから、切断による歯胚分割も同様に可能であることが示唆された(
図3)。
【0065】
(3.歯胚の異所的発生)
結紮歯胚または切断歯胚をマウス腎皮膜下に移植し、正常な歯胚が形成されるかについて観察を行った。より具体的には、結紮歯胚または切断歯胚をマウス腎皮膜下に移植後、28日目に摘出したものを、マイクロCTによる解析および組織学的解析を行い、結紮歯胚および切断歯胚における歯胚形成の評価を行った。
【0066】
(3−1.生体外器官培養後の結紮歯胚の腎皮膜下移植)
深麻酔下においてC57BL/6マウスの腎臓に位置する背中の毛を剃毛し、皮膚と腹膜を約1cm切開した。次に、切開した部分より、リングピンセット(Feather)を用いて腎臓を生体外へ引き出した。腎皮膜を、剃刀(Feather)を用いて約2〜3cm切開し、腎臓と腎皮膜間に、上記2−1と同様の方法により作製した結紮歯胚または切断歯胚を押し込んだ。その後、腎臓を生体中に戻し、筋層と皮膚をそれぞれ縫合した。なお、結紮歯胚を移植する際、結紮歯胚の周りに付着するコラーゲンゲルを取り除いた後に、スぺーサー内に入れて、スペーサーとともに結紮歯胚を移植した。28日後に結紮歯胚または切断歯胚が正常に歯へ発生するかを評価した。
【0067】
(3−2.マイクロCT撮影)
結紮歯胚または切断歯胚を移植したC57BL/6マウスは、移植直後、移植日から14日目、28日目、42日目、50日目において、継時的にマイクロCT撮影(In vivo Micro X−ray CT System; R_mCT、 リガク)を行った。マイクロCT撮影により取得した画像データは、統合画像処理ソフト(i−VIEW−3DX、 モリタ)を用いて、移植後の結紮歯胚または切断歯胚とレシピエントの歯槽骨とにおける結合、および、歯の発生を経時的に評価した。
【0068】
(3−3.HE染色による組織解析)
移植後28目において、結紮歯胚または切断歯胚由来の歯をレシピエントマウスより摘出した。摘出した結紮歯胚または切断歯胚由来の歯をマイルドホルム(Wako)にて24時間固定した。また、結紮歯胚または切断歯胚由来の歯は、マイルドホルムによる固定後、10%クエン酸ナトリウム−22.5%ギ酸脱灰液にて2日間脱灰操作を行った。その後、パラフィン(McCormick scientific)包埋をし、組織学的解析のために、結紮歯胚または切断歯胚由来の歯より6μm厚の切片を作製した。作製した切片はヘマトキシリン−エオジン染色を行い、AxioCAM MRc5(Zeiss)を設置したAxio Imager A1(Zeiss)を用いて顕鏡を行った。
【0069】
(3−4.結果)
マイクロCT画像から、結紮歯胚または切断歯胚より得られた2本の歯の周囲および中隔に骨様硬組織が認められ、歯根膜腔も確認できた(
図4、
図5)。さらに、HE染色後の組織像からも、結紮歯胚または切断歯胚より得られた2つの歯は、それぞれ歯槽骨および歯根膜を有することが確認できた(
図4、
図5)。これにより、結紮歯胚または切断歯胚より得られた歯に天然歯と同等の組織構造を有することが認められ、分割された歯胚より歯が発生していることが示された。
【0070】
(4.歯胚分割のための時期および歯胚分割方法の検討)
最適な歯胚の分割時期および分割方法をさらに検討するため、胎齢13日から17日までの各発生段階の歯胚を、結紮または切断し、得られた結紮歯胚および切断歯胚について6日間器官培養を行った。また、器官培養後の結紮歯胚および切断歯胚についてHE染色による組織解析を行った。なお、歯胚分割方法、生体外器官培養法、およびHE染色による組織解析については、上記2−1、2−2、2−3に記載の方法と同様にして行った。
【0071】
(4−1.結果)
その結果、
図6に示すとおり、器官培養6日目において、胎齢13日由来の歯胚を分割した歯胚は結紮歯胚および切断歯胚ともに、発生が進む歯胚と、発生が進まない歯胚が混在していた。胎齢14日、胎齢15日、胎齢16日由来の歯胚を分割した歯胚は、結紮歯胚および切断歯胚ともに上皮組織・間葉組織が完全に分割され、正常に発生が進んだ。しかし、胎齢17日由来の歯胚を分割した歯胚では、結紮歯胚は上皮組織・間葉組織は完全に分断されていたものの、切断歯胚では上皮の落ち込みが認められず、間葉組織が露出された状態のものが見られる場合があった。
【0072】
マウスにおいて、胎齢14日〜胎齢15日における歯胚は帽状期にあり、また、胎齢16日〜胎齢17日における歯胚は鐘状期にあることが知られている。よって、帽状期および鐘状期前期にある歯胚であれば、結紮により分割された歯胚であっても切断により分割された歯胚であっても、正常に発生することが確認できた。また、鐘状期の後期になると、切断により分割された歯胚は、正常に発生することができなくなる場合があるため、鐘状期後期における歯胚の分割方法は、結紮による方法が好ましいことが確認できた。
【0073】
(5.口腔内移植モデルにおける歯胚の萌出の解析)
結紮歯胚または切断歯胚を口腔内に移植することにより、正常な構造を有した歯の発生および歯の萌出が可能であるかをCTマイクロ撮影した画像にて解析を行った。
【0074】
(5−1.分割された歯胚の口腔内移植)
深麻酔下において、4週齢のC57BL/6マウスの下顎第一臼歯歯槽窩の筋肉線維を、25G注射針(Natume)を用いて切断した。その後、下顎第一臼歯歯冠部を外科用ピンセット(Natume)で把持して抜歯した。下顎第一臼歯抜歯後2〜3週間で下顎第一臼歯喪失部位を自然治癒させた。次に、外科用メス(Natume)を用いて下顎第一臼歯喪失部位の口腔粘膜を約1mm程度切開した。口腔粘膜切開後、歯科用マイクロモーター(Viva−Mate Plus)および歯科用リーマー(MANI)を用いて歯槽骨を切削し、直径0.8mm、深さ1.2mmの移植窩を形成させた。
移植する歯胚として、上記2−1と同様の方法により結紮歯胚を作製し、上記2−2と同様の方法により6日間器官培養を行った後の歯胚を用いた。器官培養後の歯胚は、当該歯胚に付着するコラーゲンゲルを取り除いてから移植に用いた。移植する際は、顕微鏡下で歯胚の向きを確認して歯の萌出方向を正常歯と一致させた状態で移植した。移植後は、8−0ナイロン縫合糸(ベアーメディック)で移植部位の歯肉を縫合した。また、移植後、50日間目まで歯胚が正常に発生するかを評価した。
なお、CTマイクロ撮影は、上記3−2と同様の方法により行った。
【0075】
(5−2.結果)
その結果、
図7に示すとおり、口腔内へ移植した結紮歯胚の周囲に骨様組織が認められ、歯根膜腔も認められた。すなわち、1つの歯胚から分割した歯胚の移植によって、複数の歯が発生・萌出できることが示された。
【0076】
(6.歯胚分割における発生メカニズム解析− in situ hybridization)
上記の結果より、結紮歯胚または切断歯胚をマウス腎皮膜下あるいはマウス口腔内に移植することにより、正常な構造を有した歯への発生が確認された。この結果から、表現型の解析の他に、結紮または切断により分割した歯胚の発生段階における遺伝子発現を天然歯と比較するために、in situ hybridizationによる遺伝子解析を行った。
より具体的には、歯胚の発生段階におけるエナメルノットの形成を確認する為に、マウス胎齢14.5日目の歯胚を結紮することにより得られた結紮歯胚(E14.5結紮歯胚)におけるShh、FGF4の発現解析を行った。なお、ShhおよびFGF4は、ともに歯の発生を制御するシグナルセンターであるエナメルノットに発現する代表的な遺伝子である。Shhは歯胚発生における上皮系細胞および間葉系細胞の相互作用の境界面で上皮細胞側に発現する。またFGF4は1stエナメルノット、2ndエナメルノットに発現する。FGF4の2ndエナメルノット発現部位は、将来の歯の咬頭になる部分である。マウスの胎齢14.5日目における歯胚では、1stエナメルノットが形成されることが知られており、胎齢16日目における歯胚では、2ndエナメルノットが形成されることが知られている。
また、各遺伝子の発現解析は、器官培養1日目〜6日目における歯胚を用いて行った。
【0077】
(6−1.in situ hybridization)
上記2−1に記載の方法と同様の方法にて、マウス胎齢14.5日目の歯胚より結紮歯胚を作製し、上記2−2に記載の方法により器官培養を行った。器官培養後の結紮歯胚を作製し、上記2−2に記載の方法により器官培養を行った。器官培養の期間は、上述の通り、1日〜6日とし、器官培養1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、および6日目の結紮歯胚における遺伝子の発現解析を行った。
器官培養1日目〜6日目の各結紮歯胚は、4%パラホルムアルデヒド溶液にて24時間固定した後、10%ギ酸クエン酸ナトリウム−22.5%ギ酸脱灰液を用いて72時間の脱灰操作を行った。その後、12.5%(w/v)、25%(w/v)のSucrose溶液を用いて12時間ずつ浸漬し、OCT compound(Miles Inc、Naperville、IL)を用いて凍結包埋した。包埋後は10μm厚の切片(クライオスタット、CM3050S;Leica microsystems)を作製し、Dig標識されたShhプローブまたはFGF4プローブで遺伝子発現の解析を行った。
【0078】
(6−2.結果)
その結果、
図8に示すとおり、器官培養1日目〜4日目までに結紮歯胚でFGF4の発現が認められた。また、器官培養6日目までを通して全ての期間、Shhの発現を確認することができた。発現解析結果より、器官培養1日目において、1stエナメルノットの形成を確認することができた。また、器官培養3日目において、2ndエナメルノットの形成を確認することができた。また、器官培養3日目以降において、Shhの領域から結紮歯胚の歯冠幅が確認できた。このように、結紮歯胚を器官培養したものであっても、正常なエナメルノットの形成を確認することができた。
【0079】
(7.分割された歯胚から発生した歯の生理機能の解析)
口腔内に発生・萌出した、上記の方法によって分割された歯胚由来の歯が組織学的に正常であるだけでなく、天然歯と同等の、歯根膜の機能や中枢との連携機能などの生理機能が備わっているかを解析した。発生した歯に対して実験的な矯正力を付与し、歯根膜を介した生理的な骨リモデリングによる歯の移動がなされるかについて実験を行い、マイクロCT撮影した画像および遺伝子発現解析により評価した。具体的には、分割された歯胚由来の歯に対する矯正後、マイクロCT撮影した画像により、矯正した歯の移動を確認した。また、矯正力を付与した歯の周囲骨で骨リモデリングが生じていることを確認するために、破骨細胞のマーカーであるCsf−1および骨芽細胞のマーカーであるOCNの遺伝子発現解析を行った。
【0080】
さらに、分割された歯胚由来の歯に形成された歯根膜内および歯髄内に神経が侵入しているかを免疫組織学的解析により確認した。また、末梢から中枢への刺激伝達が可能であるかを、矯正実験または露髄実験を行った際の、延髄におけるc−fosタンパク質の発現検出により解析した。
【0081】
(7−1.矯正による歯の移動および骨リモデリング)
実験には、上記5−1に記載の方法と同様の方法で歯胚を移植され、当該歯胚由来の2本の歯の萌出が確認されたマウスを用いた。本実施例において、当該2本の歯のうち、近心側のものを「近心歯」、遠心側のものを「遠心歯」と呼ぶ。実験は深麻酔下のマウスにおいて行った。上顎切歯のエナメル表層を一層、歯科用マイクロモーター(Viva−Mate Plus)を用いて切削し、歯科用エッチング材を用いて歯面表層を脱灰させた。0.1mmから5.0mmの範囲では50gの牽引力を発揮するNi−Tiクローズドコイル(TOMY INTERNATIONAL)を、分割された歯胚由来の歯と上顎切歯の間に設置し、コイルの一端を萌出した近心歯の歯頚部に8−0ナイロン縫合糸(ベアーメディック)を用いて結紮し、さらにもう一端を上顎切歯歯頚部と結紮した。上顎切歯歯頚部に結紮したナイロン糸は、装置脱離防止のため、歯科用コンポジットレジン(ジーシー)を硬化させ上顎切歯歯頚部に固定した。6日後にコイルを取り除き、上記の2本の歯の間を隔離させた状態でコンポジットレジンにて固定し、7日後に上記3−2に記載の方法と同様の方法でマイクロCT撮影した画像にて解析を行った。また、上記6−1に記載の方法と同様の方法により、10μm厚の切片を作製し、Dig標識されたCsf−1プローブおよびOCNプローブを用いて遺伝子発現の解析を行った。
【0082】
(7−2.結果)
その結果、
図9に示すとおり、近心(切歯側)に牽引した近心歯(△2)は近心へ移動しており、遠心歯(△1)は遠心へ移動していることが認められた。また、牽引された近心歯の圧迫側(近心側)の骨に破骨細胞のマーカーであるCsf−1の発現が認められ、牽引側(遠心側)の骨に骨芽細胞のマーカーであるOCNの発現が認められた。この発現解析結果より、分割された歯胚由来の歯においても、矯正力の付与により、歯根膜を介した骨リモデリングが生じることが明らかとなった。
【0083】
(7−3.歯への神経侵入)
上記5−1に記載の方法と同様の方法にて、マウスの口腔内に分割された歯胚を移植し、50日後にマイクロCT撮影にて分割された歯胚由来の歯の萌出を確認した後、上顎骨を摘出した。摘出した上顎骨をマイルドホルムにて24時間固定の後、10%EDTA脱灰液にて14日間脱灰操作を行った。その後、凍結包埋し、50μm厚の切片を作製した。当該切片に対して、神経線維の侵入解析のためには、神経線維を染色する抗NF抗体(CHEMICON、rat anti−Neurofilament H、TA51)を、自律神経の侵入解析のためには、交感神経を染色する抗NPY抗体(abcam、rabbit anti−Neuropeptide Y、poly)を、知覚神経の侵入解析のためには、抗CGRP抗体(AbD serotec、Goat anti−rat Calcitonin gene related peptide、poly)を用いて免疫組織学的解析を行った。
【0084】
(7−4.結果)
その結果、
図10に示すとおり、分割された歯胚由来の歯に形成された歯根膜内および歯髄内に神経侵入がなされていることが確認できた。これにより、分割された歯胚由来の歯は天然歯と同等の組織構造を有することが明らかとなった。
【0085】
(7−5.三叉神経脊髄路核における痛みの感知)
上記7−3で確認された、分割された歯胚由来の歯の神経において、末梢から中枢への刺激伝達が可能であるかを解析するため、矯正実験および露髄実験の2時間後、灌流固定し、摘出した延髄をマイルドホルムにて2時間固定した。固定後、12.5%(w/v)、25%(w/v)のSucrose溶液を用いて12時間ずつ浸漬し、OCT compound(Miles Inc)を用いて凍結包埋した。包埋後は50μm厚の切片を作製し、c−fos(Santa Cruz Biotechnology,Inc.、c−Fos Antibody(4)、poly)抗体を用いて免疫組織学的解析を行った。
【0086】
矯正実験は上記7−1に記載の方法と同様の方法にて行い、露髄実験のため、歯科用マイクロモーターを用いて分割された歯胚由来の歯の歯冠を切削し、歯髄を露出させて行った。
【0087】
灌流固定は、まず、深麻酔下において、胸骨の下部まで開腹し内蔵が観察できるようにし、胸部は皮膚のみを筋膜が露呈するようにした。次に、胸骨の先端の剣状突起をピンセットでもちながら左右肋骨を肩の方向に切開し、そのまま胸骨を頭部方向に反転した。横隔膜を切開し、肋骨を切除して心臓を露呈させ、注射針を心尖部から左心室に向かってゆっくりと刺した後、注射針を固定した。膨れた右心房(右心耳)を素早く大きく切開し、脱血が完了するまでPBS(−)を流し、脱血が完了したら、PBS(−)からパラホルムアルデヒド溶液に切り替えて20分程度灌流固定を行った。
【0088】
(7−6.結果)
その結果、
図11に示すとおり、矯正刺激または露髄刺激を加えなかったコントロールと比較して、分割された歯胚由来の歯は、天然歯と同様に、矯正実験および露髄実験による刺激により、延髄においてドット状にc−fosタンパク質の発現が検出された。このことから、分割された歯胚由来の歯でも、天然歯と同様に末梢から中枢への刺激伝達が可能であることが示された。