【実施例】
【0056】
実験と結果
1. 除染剤成分と試験表面物質
【0057】
1.1 化学物質
【0058】
塩化セシウム(99.999% CsCl、CAS:7647-17-8)、硝酸コバルト六水和物(98% Co(NO
3)
2・6H
2O、CAS:10026-22-9)、ニトリロトリアセテート(98%+ C
6H
9NO
6、CAS:139-13-9)、クエン酸三ナトリウム(99%+ Na
3C
6H
5O
7・2H
2O、CAS:6132-04-3)、ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム(99.0% K
3Fe(CN)
6、CAS:13746-66-2)、硝酸アンモニウム(98% NH
3NO
4、CAS:6484-52-2)。さらなる精製は行わなかった。
【0059】
1.2 テストクーポン
【0060】
除染用表面を構成する材料は、製造6年目のコンクリート、モザイクマーブルタイル、陽極酸化されたアルミニウム、及び光沢性黒色塗料Tremclad(登録商標)を塗装された鋼である。実験には、3通りの異なるサイズのクーポンを用いた。
【0061】
ベンチスケールの非放射性試験には5×5cmのサイズのクーポンを用い、放射性材料には3×3cmのサイズのクーポンを用いた。前記陽極酸化されたアルミニウム及び塗装された鋼クーポンの厚さは0.3cmで、コンクリート及びマーベルの厚さは1cmであった。
【0062】
大規模デモンストレーション用試験には、15×15cmのサイズのクーポンを用いた。前記陽極酸化されたアルミニウムクーポンの厚さは0.3cmで、コンクリートの厚さは4cmであった。
【0063】
2. 除染液を用いた試験方法
2.1 非放射性セシウム及びコバルトを用いた除染試験
2.1.1 汚染クーポンの調製
1000mg/Lのセシウム及びコバルトを含む溶液を各々調製し、汚染/スパイキング溶液として用いた。5×5cmの各テストクーポンの上面に、各々の溶液1μLを20スポット塗布した。各テストクーポン上の前記汚染物質は、20μgであった。前記スパイク用クーポンは、除染に用いる前に、少なくとも24時間置いて乾燥させた。
【0064】
2.1.2 処方/除染剤の調製
A.1Lの体積測定用フラスコに、下記各成分を入れる;
・2.52g 硝酸アンモニウム
・2.52g ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム
・2.52g クエン酸三ナトリウム
・1.80g ニトリロ三酢酸
・蒸留/脱イオン水を500mlになるまで添加。
【0065】
B.脱イオン水を添加して1リットルとし、混合して溶解させる。この溶液は、室温で、一週間を超えない範囲で保存することが好ましい。要望があるならば、前記各固体成分は前もって混合することができる。
【0066】
2.1.3 除染方法
各クーポンは、45度の角度で除染ジグ内に設置した。前記汚染クーポンの表面に、10mlの除染液を塗布した。30分後、前記クーポンを100mlの脱イオン水ですすいだ。各クーポンからの排水を集め、除去された汚染物質の量を誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)を用いて測定した。その後、該値を前記表面に塗布した当該初期値と比較して、当該除去された割合を計算した。
【0067】
2.1.4 非放射性同位元素(非放射性アイソトープ)を用いた試験における解析方法
灰化と濾過処理後の前記非放射性セシウム、コバルト、及びストロンチウム水性試料を、標準モードのThermoXシリーズII ICP-MSを用いて、全定量分析法にて解析した。4%塩酸に溶解した100ppbロジウムを内部標準として、前記解析をモニターした。前記装置は試料の実行前に0.1及び1ppmのCs、Co、及びSr標準溶液で調整し、試料実行後に前記同じ溶液を用いてチェックした。各試料について3回測定を行い、平均値を算出した。
【0068】
2.2 放射性Cs-134及びCo-60を用いた除染試験
中性子活性化にはSLOWPAKE-2原子炉を用いた。γ線放出多核種放射性同位元素源を用いて、エネルギー及び効率のキャリブレーションを行った。ガンマ線スペクトル解析には、ORTEC GMX高純度ゲルマニウム検出器を用いた。
【0069】
2.2.1 汚染/スパイク溶液の調製
非放射性(塩化セシウム(99.999% CsCl)及び硝酸コバルト六水和物(98% Co(NO
3)
2・6H
2O)の塩に放射線照射を行った。SLOWPAKE-2原子炉内で前記塩に放射線照射を行って放射性セシウム溶液を調製し、その後該放射性セシウムをメタノールに溶解した。CsCl(9.45mg Cs)の固体12.08mg質量分に対し、5×10
11n・cm
-2・s
-1フラックスで24時間放射線照射した。クロライドのような短寿命アイソトープは崩壊し、当該活性は0.94MBqと測定された。9.5mlのメタノールを加えて前記塩を溶解した。得られた溶液を、
134Csを伴うすべての試験に用いた。コバルト含有メタノール溶液に直接放射線照射を行い、放射性コバルトを調製した。44.2mgのCo(NO
3)
2・6H
2O(製造元表示で純度98%のCo、8.77mg)をメタノール(総質量2.0g)に溶解した。SLOWPAKE-2原子炉内で7時間放射線照射後、遠心及びデカンテーションを行い、放射活性0.15MBqの透明な溶液を得た。
【0070】
2.2.2. クーポンの汚染/スパイキング
放射能解析には、3×3×(0.3-1)cmの大きさのクーポンを用いた。前記陽極酸化されたアルミニウム及び塗装された鋼クーポンの厚さは0.3cmで、コンクリート及びマーベルの厚さは1cmであった。前記クーポンの表面3×3cmに前記スパイク溶液1μLを均等に塗布してスパイクした。当該クーポンは、前記初期測定を行う前に、少なくとも24時間置いて乾燥させた。
【0071】
2.2.3 除染方法
下記工程を備えた除染方法を、各試験において行った。
除染された廃液を回収できるように、クーポンを格納用トレイを備えたジグ内に設置して測定を行った。
・各クーポンを、45度の角度で除染ジグ内に設置した。
・プラスチックシリンジを用いて10mlの除染液を各クーポンの表面に均等に塗布し、30分間静置した。
・その後、プラスチックシリンジを用いて前記クーポンを50mlの脱イオン水ですすいだ。
・前記除染後のクーポンを一晩静置し、乾燥させた後、活性を測定した。
【0072】
2.2.4 放射性アイソトープを用いた試験における解析方法
ORTEC GMX高純度ゲルマニウム検出器を用いて当該ガンマ線スペクトル解析を行った。測定に先立ち、ジオメトリ特異的認可γ線放出多核種放射性同位元素源を用いて、当該検出器のエネルギー及び効率のキャリブレーションを行った。当該キャリブレーション源は11の放射性核種を含んでおり、46.5-1810keVの範囲における前記検出器のキャリブレーションに用いた。キャリブレーション後、ジオメトリ特異的ブランク試料を測定し、当該機器のデッドタイムが1%未満であることを確認した。当該解析では、検出器の汚染を防止するために、クーポンを内径(直径)4.5cmのポリエチレン製ペトリ皿内に収納した。適当な大きさのO-リングをスペーサーに用いて、前記クーポンを前記ペトリ皿の中央に定置した。試料を前記検出器にセットしてγスペクトルを記録した。当該検出誤差が2%未満であろうことを確認するために、ライブタイム計測を行った。スペクトルを記録し、特定のアイソトープについて当該エネルギー特異的ピークの積分値をORTEC6.02ソフトウェアを用いて解析した。
【0073】
3. 除染泡を用いた試験方法
3.1 従来型の表面除染泡(SDFTM)
Allen Vanguard社から入手可能な表面除染泡(SDF
TM)は、従来技術として公知の化学的及び生物学的薬剤用除染剤で、ダメージを軽減し得る方法である。化学的/生物学的薬剤汚染用カナダ製水系システム(Canadian Aqueous System for Chemical/Biological Agent Decontamination、CASCAD
TM)の派生物の一つであるSDF
TMは、長期間に渡り幅広い野外環境で使用できるようにデザインされたものである。SDF
TMは化学溶液で、泡又は液体として吐出され、軍用化学及び生物学薬剤として公知の種々の薬剤を破壊し、放射性粒子を懸濁液中にトラップする。SDF
TMは種々の塗布装置とともに使用することができる。
【0074】
3.2 SDFTMの構成成分
a)下記を重量%で含む、第一の薬剤成分;
・粉末又は水系状態のジクロロイソシアヌル酸、ナトリウム塩を70-100%、
b)下記を重量%で含む、(固体/粉末状、又は水性溶液状での)バッファー成分系;
・四ホウ酸ナトリウムを10-30%、
・水酸化ナトリウムを1-5%、
・炭酸ナトリウムを40-65%、
c)下記を重量%で含む、(個々の成分又は水性溶液中に処方された)サーファクタント成分系;
・ソディウムミリステスサルフェイト(sodium myristeth sulfate)を10-30%、
・ソディウムC14-C16オレフィンスルホン酸塩を10-30%、
・変性エタノールを3-9%、
・C10-C16アルコールを5-10%、
・硫酸ナトリウムを3-7%、
・ソディウムキシレンサルフェイトを1-5%、及び
・ナトリウム塩及びアンモニウム塩と、水及び共溶媒を、専用に混合した混合物を>9%。
【0075】
3.3 万能表面除染剤(USDF)
万能表面除染剤(Universal Surface Decontamination Formulations、USDF)はSDFの組成をベースとしているが、それにさらに放射性核種封鎖剤が追加されている。これは放射性/核汚染の除去効率を向上させるためである。これにより、3種類の脅威、すなわち、化学的、生物学的、放射性薬剤すべてを処理し得る万能剤が作製され得る。
【0076】
3.4 表面除染剤(SDFTM)及び万能表面除染剤(USDF)の調製
3.4.1 SDFの調製
工程1:
目盛付50ml用シリンダーに、
1.8グラムのバッファー成分系(セクション3.2を参照)を入れ、
4.5mLのサーファクタント成分系(セクション3.2を参照)を入れ、
蒸留水を50mLになるまで入れ、溶解するまで攪拌する。
【0077】
工程2:
2つ目のビーカー又はシリンダーに40mLの水を入れ、
7.8グラムの第一の薬剤成分(セクション3.2を参照)を入れ、
水を50mLになるまで入れ、溶解するまで攪拌する。
【0078】
工程3:
水を50mL測り取る。
【0079】
試験直前に、工程1-3で得られたすべての溶液を混合して総容積150mLの溶液とし、Waring Blender(インペラ(AV#PN4118675)を備えた市販のWaring Blender(モデル31BL92))又は他の適切な混合器にセットする。
【0080】
前記ブレンダ―中で7-10秒間高速で混合し、泡を形成させる(基本的に標準サイズの混合ボウルは泡でいっぱいになる)。得られた泡の5ml分を直ちに各テストクーポンに塗布する。
【0081】
3.4.2 ストック及び万能表面除染剤(USDF)の調製
3.4.2.1 ストック剤の調製
A.1Lの体積測定用フラスコに、下記各成分を入れる;
・2.52g 硝酸アンモニウム(NH3NO4、CAS:6484-52-2)、
・2.52g ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム(K3Fe(CN)6、CAS:13746-66-2)、
・2.52g クエン酸三ナトリウム(Na3C6H5O7・2H2O、CAS:6132-04-3)、
・1.80g ニトリロ三酢酸(C6H9NO6、CAS:139-13-9)、
・蒸留/脱イオン水を500mlになるまで添加。
【0082】
B.脱イオン水を添加して1リットルとし、混合して溶解させる。この溶液は、室温で、一週間を超えない範囲で保存することが好ましい。要望があるならば、前記各固体成分は前もって混合することができる。
【0083】
3.4.2.2 万能表面除染泡(USDF)の調製
工程1:
目盛付50ml用シリンダーに、
1.8グラムのバッファー成分系(セクション3.2を参照)を入れ、
4.5mLのサーファクタント成分系(セクション3.2を参照)を入れ、
蒸留水を50mLになるまで入れ、溶解するまで攪拌する。
【0084】
工程2:
2つ目のビーカー又はシリンダーに40mLの水を入れ、
7.8グラムの第一の薬剤成分(セクション3.2を参照)を入れ、
水を50mLになるまで入れ、溶解するまで攪拌する。
【0085】
工程3:
水を50mL測り取る(セクション3.3.2.1を参照)。
試験準備が整ったら、工程1、2及び3で得られた溶液を混合して総容積150mLとし、Waring Blender又は他の適切な混合器にセットして、前記ブレンダ―中で7-10秒間高速で混合する;基本的に標準サイズの混合ボウルは泡でいっぱいになる、そして、
試験を行う場合には、得られた泡の5ml分を直ちに各テストクーポンに塗布する。
【0086】
3.4.3 非放射性セシウム、コバルト、及びストロンチウムで汚染されたクーポンの除染
3.4.3.1 テストクーポンの調製
1000mg/Lのセシウム、コバルト、及びストロンチウムを含む溶液を各々調製し、汚染/スパイキング溶液として用いた。5×5cmの各テストクーポンの上面に、各々の溶液1μLを20スポット塗布した。各テストクーポン上の前記汚染物質は、20μgであった。前記スパイク用クーポンは、除染に用いる前に、少なくとも24時間置いて乾燥させた。
【0087】
3.4.3.2 クーポンの除染方法
各クーポンは、45度の角度で除染ジグ内に設置した。前記5×5cmのクーポンの表面に、10mlの除染液又は泡を塗布した。30分後、前記クーポンを100mlの脱イオン水ですすいだ。各クーポンからの排水を集め、除去された汚染物質の量を測定した。その後、該値を前記表面に塗布した当該初期値と比較して、当該除去された割合を計算した。
【0088】
3.5 放射性金属で汚染されたクーポンの除染
3.5.1 放射性テストクーポンの調製
放射能解析には、3×3×(0.3-1)cmの大きさのクーポンを用いた。前記放射線照射されたセシウム又はコバルトのスパイク溶液1μLを、前記クーポンの表面3×3cmに均等に塗布してスパイクした。当該クーポンは、前記初期測定を行う前に1から2週間置いて乾燥させた。
【0089】
3.5.2 クーポンの除染方法
下記工程を備えた除染方法を、各試験において3回行った。
除染された廃液を回収できるように、格納用トレイ内に設置されたジグを用いて測定を行った。
1.前記クーポンを、45度の角度で除染ジグ上に置いた。
2.5mlの前記除染用組成物(当該処方によって泡又は液体)を各表面に均等に塗布した。
3.前記除染用組成物を30分間そのまま静置させた。
4.30分後に前記クーポンを50mlの脱イオン水ですすいだ。
【0090】
4.コンクリート及び陽極酸化アルミニウムの大規模除染
4.1 試薬の調製
4.1.1 試薬A:USDF処方用
1Lの体積測定用フラスコに、下記各成分を入れる;
・2.66g 硝酸アンモニウム(NH3NO4、CAS:6484-52-2)、
・2.66g ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム(K3Fe(CN)6、CAS:13746-66-2)、
・2.66g クエン酸三ナトリウム(Na3C6H5O7・2H2O、CAS:6132-04-3)、
・1.90g ニトリロ三酢酸(C6H9NO6、CAS:139-13-9)、
脱イオン水を約500mlになるまで添加。栓をし、振って溶解させる。脱イオン水を加えて1リットルにする。
当該溶液は、室温で1週間保存することができる。
【0091】
4.1.2 試薬B:USDF2回塗布後のすすぎ液用
1Lの体積測定用フラスコに、下記各成分を入れる;
・2.52g 硝酸アンモニウム(NH3NO4、CAS:6484-52-2)、
・2.52g ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム(K3Fe(CN)6、CAS:13746-66-2)、
・2.52g クエン酸三ナトリウム(Na3C6H5O7・2H2O、CAS:6132-04-3)、
・1.80g ニトリロ三酢酸(C6H9NO6、CAS:139-13-9)、
脱イオン水を約500mlになるまで添加。栓をし、振って溶解させる。脱イオン水を加えて1リットルにする。
当該溶液は、室温で1週間保存することができる。
【0092】
4.2 試験/塗布方法
4.2.1 USDF用技術
1.エアトロリーの攪拌槽内で下記成分を混合する:
a. 6.6Lの水、
b. 485gの第一の薬剤成分(セクション3.2(a)を参照)、
c. 110gのバッファー成分系(セクション3.2(b)を参照)。
2.すべての粒子が溶解するまで攪拌する。
3.2×950mlボトルのサーファクタント成分系(セクション3.2(c)を参照)を加える。
4.1Lの試薬Aを加える。
5.前記攪拌槽を加圧する。
6.約10ftの距離から、前記泡の1/3(塗布器内の約3Lの内容物)を、クーポンと表面の全域を確実にカバーするように当該側壁に均一に吹き付ける。当該塗布器の全内容物は、膨らんで約30Lの泡を形成するだろう。
7.前記泡が前記側壁上にある状態で約30分間放置する。
8.前記時間が経過したら、前記泡を吸引して回収する。
9.前記壁から前記泡がすべて除去されるように、農業用ミストスプレーを用いて前記側壁の上から下まで全域に至るまで均一に水を撒いて当該表面をすすぐ。
10.前記表面を吸引する。
2.工程6-10を計2回繰り返す。
3.前記表面を試薬Bですすいで30分間放置する。
4.表面を水ですすぐ。
5.前記表面を吸引する。
【0093】
4.2.2 USDFの評価
表面の種類に関わりなく、USDFを同じ手法を用いて前記クーポンに塗布した。3×3mのテスト壁上に置いた9つのクーポン(8つは汚染クーポンで、1つはクロスコンタミネーションのブランク)を、一度に除染した。USDFの塗布は、Allen-Vanguard社の使用説明書に従ってフォーマー(Concealed Backpack Foamer、Allen-Vanguard社製、オタワ、ON、カナダ)を用いて行った。当該塗布は、前記フォーマーに液状泡(組成は前記使用説明書より提供)を充填し、圧縮二酸化炭素を用いて前記フォーマーを2,500平方インチ(psi)まで加圧し、さらに、前記クーポンが完全に被覆されるように前記泡を前記クーポン表面上に塗布する工程を含む。前記泡が前記表面上にある状態で30分間放置し、その後前記泡(及びリンス水)を、吸引時に前記泡の体積を減少する脱泡剤を含み65ガロン バキューム採取容器(1065-YE PolyOver Pak(登録商標)65、Enpac社製、Eastlake、OH)の最上部に備え付けたバキューム(6.5馬力、ShopVac(登録商標)QSP(登録商標)Quiet Deluxe(登録商標)、Williamsport社製、PA)を用いて除去した。前記泡が前記バキュームのホース内で塊を作らないように、前記脱泡剤を、前記採取容器から前記バキュームワンド(vacuum wand)内に再灌流させた。最後の工程では、携帯式スプレー(モデル1125D Wood and Masonry Sprayer、Root-Lowell Flo Master(登録商標)、Lowell社製 MI)を用いて各クーポンの表面を脱イオン水ですすぎ、その後再び吸引する工程も行った。
【0094】
2回の泡塗布、すすぎ、及び除去の後、携帯式スプレーを用いて別の試薬(試薬Bともいう)を前記表面に塗布した。この試薬は明るい黄色で水のコンシステンシー(consistency)を有する。前記携帯式スプレーを用いて塗布後、前記試薬Bが前記表面上にある状態で30分間放置し、その後該表面を蒸留水ですすいで吸引した。
【0095】
5.化学的及び生物学的除染試験
前記SDF及びUSDF組成物の化学兵器剤及び生物学的薬剤に対する除染能力についても試験した。
【0096】
5.1 化学兵器剤に対する試験方法
当該除染方法には、化学兵器剤の除染効率を評価する方法として規格化された試験方法であるNATO/PFP ANNEX C STANAG 4360を用いた。
5.2 生物学的薬剤に対する試験方法
生物学的薬剤 試験方法
a)黄色ブドウ球菌 AOAC Use-Dilution Official Test Method 955.15
b)緑膿菌 AOAC Use-Dilution Official Test Method 964.02
c)サルモネラ菌 AOAC Use-Dilution Official Test Method 955.14
d)毛瘡白癬菌 AOAC Use-Dilution Official Test Modified for using fungi as per EPA’s new 810 guideline
e)ヒトインフルエンザA型ウィルス(H1N1) “Standard Test Method for Efficacy of Virucidal Agents Intended for Inanimate Environmental Surfaces” ASTM standard E1053-97 (2002年に再承認)
f)ネコカリシウィルス(ヒトノロウィルスの代用) “Standard Test Method for Efficacy of Virucidal Agents Intended for Inanimate Environmental Surfaces” ASTM standard E1053-97 (2002年に再承認)
【0097】
6.結果
(実施例1)
6.1 非放射性物質を用いた除染試験
6.1.1 水中の塩を用いた除染試験
表1及び2は、前記水中の除染用組成物が非放射性セシウム及びコバルトを種々の表面物質から除去する除染効率をまとめたものである。
【表1】
表1:水中の処方塩(硝酸アンモニウム、ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム、クエン酸三ナトリウム、及びニトリロ三酢酸)を用いた建材からのセシウム(非放射性)の除去
【表2】
表2:水中の処方塩(硝酸アンモニウム、ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム、クエン酸三ナトリウム、及びニトリロ三酢酸)を用いた建材からのコバルト(非放射性)の除去
【0098】
6.1.2 USDFを用いた除染試験
硝酸アンモニウム、ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム、クエン酸三ナトリウム、及びニトリロ三酢酸を種々の濃度で含む除染用組成物の試験結果を表3及び4に示す。
【表3】
表3:SDFオリジナル、種々の濃度の塩(SDF中の硝酸アンモニウム、ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム、クエン酸三ナトリウム、及びニトリロ三酢酸)を含むUSDFを用いた、コンクリートからのセシウム、コバルト、及びストロンチウムの除染
【表4】
表4:SDFオリジナル、種々の濃度の塩を含むUSDFを用いた、塗布鋼板からのセシウム、コバルト、及びストロンチウムの除染
【0099】
表3及び4に示された結果は、SDF処方中の硝酸アンモニウム、ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム、クエン酸三ナトリウム、及びニトリロ三酢酸は、種々の濃度において、除染用組成物として使用できること及びSDF単独よりも優れた結果となることを示唆している。
【0100】
また、SDF処方に1種類の塩を追加した場合の効果を調べる試験も行った。当該結果を表5及び6に示す。
【表5】
表5:各塩を個別に追加されたSDF(A:アンモニウム塩、B:ヘキサシアノ鉄塩、C:ニトリロ三酢酸、D:クエン酸三ナトリウム)を用いた、コンクリートからのセシウムの除染
【表6】
表6:各塩を個別に追加されたSDF(A:アンモニウム塩、B:ヘキサシアノ鉄塩、C:ニトリロ三酢酸、D:クエン酸三ナトリウム)を用いた、コンクリートからのコバルト及びストロンチウムの除染
【0101】
前記塩は、標的汚染物質に対する当該有効性に基づいて選んだ。硝酸アンモニウム及びヘキサシアノ鉄(III)酸カリウムはセシウムに対して有効で、ニトリロ三酢酸及びクエン酸三ナトリウムはコバルトとストロンチウムに対して有効である。
【0102】
前記結果は、アンモニウム塩、ヘキサシアノ鉄塩、ニトリロ三酢酸、又はクエン酸三ナトリウムをそれぞれ個別に当該分野で公知の表面除染泡に添加すると、除染能が改善された剤が得られること、さらに、これらの中の一成分を添加した場合よりも二成分以上を添加した場合の方が、通常、一段と優れた除染結果が得られることを示唆している。
【0103】
非放射性同位元素に対するSDF及びUSDFの除染効果を表7−9に示す。USDFはオリジナルSDFよりも除去に優れている。
【表7】
表7:SDF及びUSDFを用いたセシウム(非放射性)の表面からの除去
【表8】
表8:SDF及びUSDFを用いたコバルト(非放射性)の表面からの除去
【表9】
表9:SDF及びUSDFを用いたストロンチウム(非放射性)の表面からの除去
【0104】
(実施例2)
6.2 放射性物質を用いた除染試験
6.2.1 水中の処方成分を用いた除染試験
表10及び11は、前記水中の除染用組成物が放射性セシウム及びコバルトを種々の表面物質から除去する除染効率をまとめたものである。
【表10】
表10:水中の処方成分を用いた放射性セシウム−134の建材からの除去
【表11】
表11:水中の処方成分を用いた放射性コバルト−60の建材からの除去
【0105】
表12−14は、オリジナルSDF及びUSDFが放射性セシウム、コバルト、及びストロンチウムを種々の表面物質から除去する除染効率をまとめたものである。
【表12】
表12:オリジナルSDF及びUSDFを用いた放射性セシウム−134の表面からの除去
【表13】
表13:SDF及びUSDFを用いた放射性コバルト−60の表面からの除去
【表14】
表14:SDF及びUSDFを用いた放射性ストロンチウム−85の表面からの除去
【0106】
(実施例3)
6.3 放射性Cs-137に対する予備的/大規模除染試験
表15は、セシウム−137を用いて予備的/大規模試験を行った場合の、USDFのコンクリート及び陽極酸化されたアルミニウムにおける除染効率をまとめたものである。
【表15】
表15:放射性Cs-137に対する予備的/大規模除染試験
(実施例4)
7.化学的及び生物学的除染試験結果
【表16】
表16:SDF及びUSDFを用いた化学兵器剤(CWA)の除染
【0107】
表16の結果は、前記万能表面除染剤は種々の化学兵器剤の除染に有効な組成物であることを示唆している。また、当該結果より、前記オリジナルSDFに添加した成分はオリジナルSDFの処方とコンパチブルで、その化学的及び生物学的除染能を有意には阻害しないことが確認された。前記除染用組成物について、生物学的薬剤に対する除染効果を解析した結果を表17に示す。
【表17】
表17:SDF及びUSDFを用いた生物学的薬剤の除染(結果は、成長したチューブ数/チューブ総数で表す)
【0108】
表17の結果は、前記万能表面除染剤は種々の生物学的薬剤の除染に有効な組成物であることを示唆している。
【0109】
本明細書において引用されるものはすべて、本明細書の一部を構成するものとして援用される。
【0110】
本発明は、一又はそれ以上の実施態様について記載されている。しかしながら、本発明の特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能であることは、当業者において明らかである。