【文献】
Dirk Veldman et al.,Photoinduced charge and energy transfer in dye-doped conjugated polymers,Thin Solid Films,2006年,511-512,p.581-586
【文献】
Dirk Veldman et al.,The Energy of Charge-Transfer States in Electron Donor-Acceptor Blends: Insight into the Energy Losses in Organic Solar Cells,Advanced Functional Materials,2009年,19,p.1939-1948
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記少なくとも一つのアクセプタ感光体は、一つ以上の波長において最大の吸光率を有し、前記最大の吸光率は、前記一つ以上の波長において、前記アクセプタ材料の吸光率の少なくとも二倍の大きさである請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機感光性光電子デバイス。
前記少なくとも一つのアクセプタ感光体は、フタロシアニン、サブフタロシアニン、ジピリンおよびそれらの金属錯体、ポルフィリン、アザジピリンおよびそれらの金属錯体、ホウ素ジピロメテン(BODIPY)色素ならびにそれらの誘導体から選択される請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機感光性光電子デバイス。
前記第2アクセプタ感光体は、一つ以上の波長において最大の吸光率を有し、前記第2アクセプタ感光体の前記最大の吸光率は、前記一つ以上の波長において、前記アクセプタ材料の吸光率および前記第1アクセプタ感光体の吸光率の少なくとも二倍の大きさである請求項20に記載の有機感光性光電子デバイス。
【背景技術】
【0005】
光電子デバイスは、電磁放射を電気的に生み出すもしくは検出するために、または周囲の電磁放射から電力を発生させるために、材料の光学的および電気的特性に依存する。
【0006】
感光性光電子デバイスは、電磁放射を電気に変換する。光起電力(PV)デバイスとも呼ばれる太陽電池は、電力を発生させるために特に使用される、感光性光電子デバイスの一種である。太陽光以外の光源から電気エネルギーを発生させることができるPVデバイスは、たとえば照明や暖房装置に供給するためや、計算機、ラジオ、コンピューターまたは遠隔監視もしくはコミュニケーション装置のような電子回路またはデバイスに電力を供給するためなど、電力を消費する負荷を駆動するために使用されうる。これらの電力発生のアプリケーションは、太陽または他の光源からの直接の照射が使用できない際に動作が継続できるように、また、特定のアプリケーションの要求を伴いながらPVデバイスの電力の出力のバランスを保つために、電池または他のエネルギー蓄電デバイスの充電もしばしば含む。本明細書で使用される「抵抗負荷」の用語は、任意の電力を消費または蓄電する回路、デバイス、装置またはシステムを意味する。
【0007】
感光性光電子デバイスの他の種類は、光導電セルである。この機能では、光の吸収による変化を検出するために、信号検出回路がデバイスの抵抗を監視する。
【0008】
感光性光電子デバイスの他の種類は、光検出器である。動作中、光検出器は、光検出器が電磁放射に暴露される際に発生する電流を測定し、印加バイアス電圧を有してもよい電流検出回路と併用される。本明細書で説明される検出回路は、光検出器にバイアス電圧を供給でき、電磁放射に対する光検出器の電気的応答を測定できる。
【0009】
これらの三種類の感光性光電子デバイスは、以下に定義するような整流接合が存在するかどうかによって、さらに、バイアスまたはバイアス電圧として知られる外部の印加電圧を用いて動作されるデバイスであるかどうかによって、特徴づけられうる。光導電セルは、整流接合を有さず、通常、バイアスを用いて動作される。PVデバイスは、少なくとも一つの整流接合を有し、バイアスなしで動作される。光検出器は、少なくとも一つの整流接合を有し、常にではないが通常、バイアスを用いて動作される。一般に、光起電力セルは、回路、デバイスまたは装置に電力を供給するが、検出回路または検出回路からの情報の出力を制御するために、信号または電流を供給しない。一方で、光検出器または光導電体は、検出回路または検出回路からの情報の出力を制御するために、信号または電流を供給するが、回路、デバイスまたは装置に電力を供給しない。
【0010】
従来、感光性光電子デバイスは、たとえば、結晶シリコン、多結晶シリコンおよびアモルファスシリコン、ヒ化ガリウム、テルル化カドミウムおよびその他の、多くの無機半導体から構成されてきた。本明細書における「半導体」の用語は、電荷キャリアが熱的または電磁的励起によって誘起される際に、導電できる材料を示す。「光導電性」の用語は、一般に、キャリアが材料中の電荷を伝導(すなわち輸送)できるように、電磁放射エネルギーが吸収され、その結果、電荷キャリアの励起エネルギーに変換されるというプロセスに関連する。「光導電体」および「光導電性材料」の用語は、本明細書では、電荷キャリアを発生させるために、電磁放射を吸収する特性について選択される半導体材料を意味するために使用される。
【0011】
PVデバイスは、入射する太陽パワーを有効な電力に変換できる効率によって特徴づけられてもよい。結晶シリコンまたはアモルファスシリコンを使用するデバイスは、商用アプリケーションの中心であり、23%以上の効率に達したものもある。しかしながら、大幅な効率低下の不具合なく大きな結晶を製造する場合に固有の問題により、特に大きな表面積を有する効率のよい結晶ベースのデバイスは、製造することが難しく高価である。一方で、効率のよいアモルファスシリコンデバイスは、未だに安定性に関する問題を抱えている。現在の商用のアモルファスシリコンセルは、安定した4〜8%の効率を有する。安価な製造コストで、許容できる光起電力の変換効率に達するために、より最近では有機光起電力セルの使用に対して取り組みが集中している。
【0012】
PVデバイスは、標準照明条件(すなわち、1000W/m
2、AM1.5スペクトルの照射である標準試験条件)の下で、最大の電力を発生させるように、つまり光電流と光起電力との積が最大となるように、最適化されてもよい。標準照射条件の下での、そのようなセルの電力変換効率は、次の三つのパラメーター、(1)ゼロバイアスの下での電流(すなわち短絡回路電流)I
SC[A]、(2)開回路条件の下での光起電力(すなわち開回路電圧)V
OC[V]、および(3)曲線因子FF、に依存する。
【0013】
PVデバイスは、それらが負荷を介して接続され、光によって照射される際に、光発生電流を生み出す。無限大の負荷の下で照射される場合、PVデバイスは、その最大可能電圧、V open−circuitまたはV
OCを発生させる。その電気的接続が短絡した状態で照射される場合、PVデバイスは、その最大可能電流、I short−circuitまたはI
SCを発生させる。電力を発生させるために実際に使用される場合、PVデバイスは有限な抵抗負荷に接続され、電力の出力は電流と電圧の積、I×Vによって与えられる。PVデバイスによって発生する最大の全電力は、I
SC×V
OCの積を本質的に超えることができない。負荷の値が最大の電力を引き出すために最適化される場合、電流および電圧は、それぞれI
maxおよびV
maxという値を有する。
【0014】
PVデバイスについての性能指数は、曲線因子FFであり、以下のように定義される。
【0015】
【数1】
【0016】
ここで、I
SCおよびV
OCは、実際の使用において、決して同時には取得されないため、FFは常に1未満である。それにもかかわらず、FFが1に近づくにつれて、デバイスは、より小さい直列または内部の抵抗を有するようになり、その結果、最適条件の下で、負荷に対して、I
SCとV
OCとの積のより大きい割合を送り出す。P
incがデバイスに対する電力の入力である場合、デバイスの電力効率η
Pは、以下によって計算されうる。
【0017】
【数2】
【0018】
半導体の十分な容積を占める、内部に発生する電界を生み出すための、通常の方法は、特に分子の量子エネルギー状態の分布に関して適切に選択された、導電性を有する二つの材料層(ドナーおよびアクセプタ)を並置することである。これらの二つの材料の接合面は、光起電力接合と呼ばれる。従来の半導体の理論では、PV接合を形成するための材料は、一般に、n型またはp型のいずれかであるとして示されてきた。ここで、n型は、多数キャリアの型が電子であることを示す。これは、比較的自由なエネルギー状態において、多くの電子を有する材料として見なされうる。p型は、多数キャリアの型が正孔であることを示す。このような材料は、比較的自由なエネルギー状態において、多くの正孔を有する。バックグラウンドの型(すなわち、光発生でないバックグラウンドの型)では、多数キャリアの濃度は、欠陥または不純物による意図しないドーピングに主に依存する。不純物の型および濃度は、HOMO−LUMOギャップとしても知られる、伝導帯の最低エネルギーと価電子帯の最高エネルギーとの間のギャップの範囲内のフェルミエネルギーまたは準位の値を決定する。フェルミエネルギーは、占有確率が1/2に等しいエネルギーの値によって示される、分子の量子エネルギー状態の統計的な占有を特徴づける。伝導帯の最低(LUMO)エネルギー近傍のフェルミエネルギーは、電子が支配的なキャリアであることを示す。価電子帯の最大(HOMO)エネルギー近傍のフェルミエネルギーは、正孔が支配的なキャリアであることを示す。したがって、フェルミエネルギーは、従来の半導体を最も特徴づける特性であり、プロトタイプのPV接合は、従来からpn接合面であった。
【0019】
「整流」の用語は、特に、接合面が非対称な導電性を有すること(すなわち、接合面が好ましくは一方向における電荷の輸送を担うこと)を示す。整流は、通常、適切に選択された材料の間の接合において発生するビルトイン電界と関連する。
【0020】
有機ヘテロ接合の電流−電圧特性は、無機ダイオードのために導かれた、一般化されたショックレー(Shockley)の式を用いてしばしばモデル化される。しかしながら、ショックレーの式は、有機半導体ドナー−アクセプタ(D−A)ヘテロ接合(HJ)に対して正確に適用されないため、求められたパラメーターは、明確な物理的意味が不足する。
【0021】
有機材料の文脈では、「ドナー」および「アクセプタ」の用語は、接合しているが異なる二つの有機材料の、HOMOおよびLUMOエネルギー準位の相対的な位置を意味する。これは、「ドナー」および「アクセプタ」が、無機のn型およびp型の層をそれぞれ形成するために使用されうるドーパントの種類を意味できる無機の文脈における、これらの用語の使用とは対照的である。有機の文脈では、他と接する一つの材料のLUMOエネルギー準位がより低い場合、その材料はアクセプタである。そうでない場合、それはドナーである。外部のバイアスがない場合において、ドナー−アクセプタ接合における電子がアクセプタの材料に移動すること、および正孔がドナーの材料に移動することは、エネルギー的に起こりやすい。
【0022】
有機半導体における重要な特性は、キャリア移動度である。移動度は、電荷キャリアが電界に反応して、導電材料を通って移動できる容易さを測定する。有機感光性デバイスの文脈では、高い電子移動度により、電子によって優先的に導電する材料を含む層は、電子輸送層またはETLと呼ばれうる。高い正孔移動度により、正孔によって優先的に導電する材料を含む層は、正孔輸送層またはHTLと呼ばれうる。場合によっては、アクセプタの材料はETLであってもよく、ドナーの材料はHTLであってもよい。
【0023】
従来の無機半導体PVセルは、内部の電界を設置するために、pn接合を採用しうる。しかしながら、今では、pn型接合の設置に加えて、ヘテロ接合のエネルギー準位のオフセットもまた、重要な役割を果たしうることが認識されている。
【0024】
有機ドナー−アクセプタ(D−A)ヘテロ接合におけるエネルギー準位のオフセットは、有機材料における光発生のプロセスの基本的な性質により、有機PVデバイスの動作に対して重要であると考えられる。有機材料の光学的励起において、局在するフレンケルまたは電荷移動励起子が発生する。電気的検出または電流の発生が生じるために、結合した励起子は、その構成要素である電子または正孔に解離されなければならない。そのようなプロセスは、ビルトイン電界によって誘起されうるが、有機デバイスにおいて一般に見られる電界(F〜10
6V/cm)における効率は低い。有機材料における最も効率のよい励起子解離は、D−A接合面において発生する。このような接合面において、低いイオン化電位を有するドナー材料は、高い電子親和力を有するアクセプタ材料と共に、ヘテロ接合を形成する。ドナーおよびアクセプタの材料のエネルギー準位の配列により、励起子の解離は、そのような接合面においてエネルギー的に起こりやすくなり、アクセプタ材料における自由電子ポーラロンおよびドナー材料における自由正孔ポーラロンをもたらす。
【0025】
キャリアの発生は、励起子の発生、拡散およびイオン化または収集を必要とする。これらのプロセスの各々に関連する効率ηがある。添え字は、次のように使用されうる。電力効率に対するP、外部量子効率に対するEXT、光子吸収に対するA、拡散に対するED、収集に対するCCおよび内部量子効率に対するINTである。この表記を用いると、以下になる。
【0026】
【数3】
【0027】
励起子の拡散長(L
D)は、一般に、光吸収長(〜500Å)よりかなり短く(L
D〜50Å)、多重または高度に折り返された接合面を有し、厚い代わりに抵抗の高いセルを使用するか、または光吸収効率が低い代わりに薄いセルを使用するかといった、トレードオフを要求する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
有機PVセルは、従来のシリコンベースのデバイスと比較すると、多くの潜在的な利点を有する。有機PVセルは、軽量であり、材料の使用において経済的であり、たとえばフレキシブルプラスチックフォイルなどの、低いコストの基板上に積層されうる。報告されている最も良い有機PVの効率が、9%に近いものもある。しかしながら、商用化のためには、デバイスの効率は、新しい材料およびデバイスの設計方法を用いてさらに改善する必要がある。
【0029】
このように、本発明は、アクセプタおよび/またはドナー層の吸光および光反応をそれぞれ増加させるために、アクセプタおよび/またはドナーの感光体を有する有機感光性光電子デバイスを記載する。
【課題を解決するための手段】
【0030】
第1の態様において、有機感光性光電子デバイスは、重ね合わせられた関係にある二つの電極と、前記二つの電極間に位置する混合有機アクセプタ層および有機ドナー層と、を有し、ここで、前記混合有機アクセプタ層は、アクセプタ材料および少なくとも一つのアクセプタ感光体の混合物を有し、前記アクセプタ材料および前記少なくとも一つのアクセプタ感光体は、以下の、
・前記少なくとも一つのアクセプタ感光体は、前記アクセプタ材料の最低三重項励起状態エネルギー(E
T−A)以上の最低三重項励起状態エネルギー(E
T−ASens)を有し、
・前記少なくとも一つのアクセプタ感光体は、前記アクセプタ材料の還元電位以下の還元電位を有し、さらに、
・前記少なくとも一つのアクセプタ感光体および前記アクセプタ材料が電荷移動(CT)状態エネルギーを有するCT状態を形成する際、前記CT状態エネルギーは、前記アクセプタ材料の前記最低三重項励起状態エネルギー(E
T−A)以上である、という条件を満足するように選択される。
【0031】
第1の態様のいくつかの実施形態において、前記アクセプタ材料および前記少なくとも一つのアクセプタ感光体は、前記少なくとも一つのアクセプタ感光体が、前記アクセプタ材料の最低一重項励起状態エネルギー(E
S−A)以上の最低一重項励起状態エネルギー(E
S−ASens)を有するように選択される。
【0032】
いくつかの実施形態において、前記アクセプタ材料および前記少なくとも一つのアクセプタ感光体は、前記CT状態エネルギーが、前記アクセプタ材料の最低一重項励起状態エネルギー(E
S−A)以上であるように選択される。
【0033】
いくつかの実施形態において、前記アクセプタ材料および前記少なくとも一つのアクセプタ感光体の前記混合物は、固溶体を形成する。
【0034】
いくつかの実施形態において、前記少なくとも一つのアクセプタ感光体は、350〜950nmに及ぶ一つ以上の波長において、少なくとも10
3cm
−1の吸光係数を有する。
【0035】
いくつかの実施形態において、前記少なくとも一つのアクセプタ感光体は、一つ以上の波長において最大の吸光率を有し、前記最大の吸光率は、前記一つ以上の波長において、前記アクセプタ材料の吸光率の少なくとも二倍の大きさである。
【0036】
いくつかの実施形態において、前記アクセプタ材料は、フラーレンおよびフラーレン誘導体から選択される。
【0037】
いくつかの実施形態において、前記少なくとも一つのアクセプタ感光体は、フタロシアニン、サブフタロシアニン、ジピリンおよびそれらの金属錯体、ポルフィリン、アザジピリンおよびそれらの金属錯体、ホウ素ジピロメテン(BODIPY)色素ならびにそれらの誘導体から選択される。ある実施形態において、前記アクセプタ材料は、フラーレンおよびフラーレン誘導体から選択され、前記少なくとも一つのアクセプタ感光体は、フタロシアニン、サブフタロシアニン、ジピリンおよびそれらの金属錯体、ポルフィリン、アザジピリンおよびそれらの金属錯体、ホウ素ジピロメテン(BODIPY)色素ならびにそれらの誘導体から選択される。
【0038】
いくつかの実施形態において、前記有機感光性光電子デバイスは、前記混合有機アクセプタ層および前記有機ドナー層の間に位置する中間アクセプタ層をさらに有し、ここで、前記中間アクセプタ層は、前記アクセプタ材料で構成され、前記有機ドナー層と共にドナー−アクセプタヘテロ接合を形成する。
【0039】
いくつかの実施形態において、前記少なくとも一つのアクセプタ感光体は、二つ以上のアクセプタ感光体を有する。
【0040】
いくつかの実施形態において、前記有機ドナー層は、ドナー材料および少なくとも一つのドナー感光体の混合物を有する混合有機ドナー層であって、ここで、前記ドナー材料および前記少なくとも一つのドナー感光体は、以下の、
・前記少なくとも一つのドナー感光体は、前記ドナー材料の最低三重項励起状態エネルギー(E
T−D)以上の最低三重項励起状態エネルギー(E
T−DSens)を有し、
・前記少なくとも一つのドナー感光体は、前記ドナー材料の酸化電位以上の酸化電位を有し、さらに、
・前記少なくとも一つのドナー感光体および前記ドナー材料が電荷移動(CT)状態エネルギーを有するCT状態を形成する際、前記CT状態エネルギーは、前記ドナー材料の前記最低三重項励起状態エネルギー(E
T−D)以上である、という条件を満足するように選択される。
【0041】
いくつかの実施形態において、前記ドナー材料および前記少なくとも一つのドナー感光体は、前記少なくとも一つのドナー感光体が、前記ドナー材料の最低一重項励起状態エネルギー(E
S−D)以上の最低一重項励起状態エネルギー(E
S−DSens)を有するように選択される。
【0042】
いくつかの実施形態において、前記ドナー材料および前記少なくとも一つのドナー感光体は、前記CT状態エネルギーが、前記ドナー材料の最低一重項励起状態エネルギー(E
S−D)以上であるように選択される。
【0043】
いくつかの実施形態において、前記有機感光性光電子デバイスは、前記混合有機ドナー層および前記混合有機アクセプタ層の間に位置する中間ドナー層を有し、ここで、前記中間ドナー層は、前記ドナー材料で構成され、前記混合有機アクセプタ層と共にドナー−アクセプタヘテロ接合を形成する。
【0044】
いくつかの実施形態において、前記有機感光性光電子デバイスは、中間アクセプタ層および中間ドナー層を有し、ここで、前記中間アクセプタ層は、前記アクセプタ材料で構成され、前記混合有機アクセプタ層に隣接し、前記中間ドナー層は、前記ドナー材料で構成され、前記混合有機ドナー層に隣接し、両方の中間層は、前記混合有機アクセプタ層および前記混合有機ドナー層の間に位置する。いくつかの実施形態において、前記中間アクセプタ層および前記中間ドナー層は、ドナー−アクセプタヘテロ接合を形成する。
【0045】
第2の態様において、有機感光性光電子デバイスは、重ね合わせられた関係にある二つの電極と、前記二つの電極間に位置する有機アクセプタ層および混合有機ドナー層と、を有し、ここで、前記混合有機ドナー層は、ドナー材料および少なくとも一つのドナー感光体の混合物を有し、前記ドナー材料および前記少なくとも一つのドナー感光体は、以下の、
・前記少なくとも一つのドナー感光体は、前記ドナー材料の最低三重項励起状態エネルギー(E
T−D)以上の最低三重項励起状態エネルギー(E
T−DSens)を有し、
・前記少なくとも一つのドナー感光体は、前記ドナー材料の酸化電位以上の酸化電位を有し、さらに、
・前記少なくとも一つのドナー感光体および前記ドナー材料が電荷移動(CT)状態エネルギーを有するCT状態を形成する際、前記CT状態エネルギーは、前記ドナー材料の前記最低三重項励起状態エネルギー(E
T−D)以上である、という条件を満足するように選択される。
【0046】
第2の態様のいくつかの実施形態において、前記ドナー材料および前記少なくとも一つのドナー感光体は、前記少なくとも一つのドナー感光体が、前記ドナー材料の最低一重項励起状態エネルギー(E
S−D)以上の最低一重項励起状態エネルギー(E
S−DSens)を有するように選択される。
【0047】
いくつかの実施形態において、前記ドナー材料および前記少なくとも一つのドナー感光体は、前記CT状態エネルギーが、前記ドナー材料の最低一重項励起状態エネルギー(E
S−D)以上であるように選択される。
【0048】
いくつかの実施形態において、前記ドナー材料および前記少なくとも一つのドナー感光体の前記混合物は、固溶体を形成する。
【0049】
いくつかの実施形態において、前記少なくとも一つのドナー感光体は、350〜950nmに及ぶ一つ以上の波長において、少なくとも10
3cm
−1の吸光係数を有する。
【0050】
いくつかの実施形態において、前記有機感光性光電子デバイスは、前記混合有機ドナー層および前記有機アクセプタ層の間に位置する中間ドナー層をさらに有し、ここで、前記中間ドナー層は、前記ドナー材料で構成され、前記有機アクセプタ層と共にドナー−アクセプタヘテロ接合を形成する。
【0051】
本発明はまた、有機感光性光電子デバイスを作製する方法であって、第1電極の上に光活性領域を積層する工程と、前記光活性領域の上に第2電極を積層する工程と、を含み、ここで、前記光活性領域は、混合有機アクセプタ層および有機ドナー層を有し、前記混合有機アクセプタ層は、アクセプタ材料および少なくとも一つのアクセプタ感光体の混合物を有し、前記アクセプタ材料および前記少なくとも一つのアクセプタ感光体は、以下の、
・前記少なくとも一つのアクセプタ感光体は、前記アクセプタ材料の最低三重項励起状態エネルギー(E
T−A)以上の最低三重項励起状態エネルギー(E
T−ASens)を有し、
・前記少なくとも一つのアクセプタ感光体は、前記アクセプタ材料の還元電位以下の還元電位を有し、さらに、
・前記少なくとも一つのアクセプタ感光体および前記アクセプタ材料が電荷移動(CT)状態エネルギーを有するCT状態を形成する際、前記CT状態エネルギーは、前記アクセプタ材料の前記最低三重項励起状態エネルギー(E
T−A)以上である、という条件を満足するように選択される。
【0052】
本発明の方法のいくつかの実施形態において、前記第1電極の上の前記光活性領域の前記積層は、前記第1電極の上に前記有機ドナー層を積層する工程と、前記第1電極の上に前記アクセプタ材料および前記少なくとも一つのアクセプタ感光体を共積層する工程と、を含み、ここで、前記第1電極の上の前記共積層は、前記第1電極の上の前記有機ドナー層の前記積層の前または後に発生する。
【0053】
いくつかの実施形態において、前記アクセプタ材料および前記少なくとも一つのアクセプタ感光体は、10:1から1:2の範囲におけるアクセプタ:感光体の比率で共積層される。
【0054】
いくつかの実施形態において、前記光活性領域は、前記混合有機アクセプタ層および前記有機ドナー層の間に位置する中間アクセプタ層をさらに有し、ここで、前記中間アクセプタ層は、前記アクセプタ材料で構成される。これらの実施形態において、前記第1電極の上の前記光活性領域の前記積層は、前記第1電極の上に前記有機ドナー層を積層する工程と、前記第1電極の上に前記中間アクセプタ層を積層する工程と、前記第1電極の上に前記アクセプタ材料および前記少なくとも一つのアクセプタ感光体を共積層する工程と、を含んでもよく、ここで、前記第1電極の上の前記共積層は、前記有機ドナー層の前記積層の前または後に発生し、前記中間アクセプタ層の前記積層は、前記混合有機アクセプタ層および前記有機ドナー層の間に位置する前記中間アクセプタ層をもたらす。
【0055】
本発明の方法のいくつかの実施形態において、前記有機ドナー層は、本明細書に記載されるような混合有機ドナー層である。これらの実施形態において、前記第1電極の上の前記光活性領域の前記積層は、前記第1電極の上に前記ドナー材料および前記少なくとも一つのドナー感光体を共積層する工程と、前記第1電極の上に前記アクセプタ材料および前記少なくとも一つのアクセプタ感光体を共積層する工程と、を含んでもよく、ここで、前記アクセプタ材料および前記少なくとも一つのアクセプタ感光体の前記共積層は、前記ドナー材料および前記少なくとも一つのドナー感光体の前記共積層の前または後に発生する。ある実施形態において、前記アクセプタ材料および前記少なくとも一つのアクセプタ感光体は、10:1から1:2の範囲におけるアクセプタ:感光体の比率で共積層され、前記ドナー材料および前記少なくとも一つのドナー感光体は、10:1から1:2の範囲におけるドナー:感光体の比率で共積層される。
【0056】
いくつかの実施形態において、前記光活性領域は、中間アクセプタ層および中間ドナー層をさらに有し、ここで、前記中間アクセプタ層は、前記アクセプタ材料で構成され、前記混合有機アクセプタ層に隣接し、前記中間ドナー層は、前記ドナー材料で構成され、前記混合有機ドナー層に隣接し、両方の中間層は、前記混合有機ドナー層および前記混合有機アクセプタ層の間に位置する。前記中間アクセプタ層および前記中間ドナー層は、ドナー−アクセプタヘテロ接合を形成してもよい。前記第1電極の上の前記光活性領域の前記積層は、前記第1電極の上に前記ドナー材料および前記少なくとも一つのドナー感光体を共積層する工程と、前記第1電極の上に前記中間ドナー層を積層する工程と、前記第1電極の上に前記中間アクセプタ層を積層する工程と、前記第1電極の上に前記アクセプタ材料および前記少なくとも一つのアクセプタ感光体を共積層する工程と、を含んでもよく、ここで、前記アクセプタ材料および前記少なくとも一つのアクセプタ感光体の前記共積層は、前記ドナー材料および前記少なくとも一つのドナー感光体の前記共積層の前または後に発生し、前記中間アクセプタ層の前記積層は、前記混合有機アクセプタ層に隣接して位置する前記中間アクセプタ層をもたらし、前記中間ドナー層の前記積層は、前記混合有機ドナー層に隣接して位置する前記中間ドナー層をもたらし、両方の中間層は、前記混合有機ドナー層および前記混合有機アクセプタ層の間に位置する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
添付する図面は、本明細書に包含され、本明細書の一部を構成する。
【
図1】本発明に係る混合有機アクセプタ層を有する有機感光性光電子デバイスの概略図である。
【
図2】C
60をアクセプタ材料の例として使用する感光体(増感剤)の励起に伴うエネルギー感光化(増感)経路を示す図である。ここで、
図2Aは、フェルスター(一重項−一重項)エネルギー移動を示す図であり、
図2Bは、デクスター(三重項−三重項)エネルギー移動を示す図であり、
図2Cは、電荷移動状態による電子移動を示す図である。略語:エネルギー移動(EnT)、項間交差(ISC)、電子移動(ElT)、電荷移動(CT)。
【
図3】本発明に係る混合有機アクセプタ層および中間アクセプタ層を有する有機感光性光電子デバイスの概略図である。
【
図4】本発明に係る混合有機ドナー層を有する有機感光性光電子デバイスの概略図である。
【
図5】本発明に係る混合有機ドナー層および中間ドナー層を有する有機感光性光電子デバイスの概略図である。
【
図6】本発明に係る混合有機アクセプタ層および混合有機ドナー層を有する有機感光性光電子デバイスの概略図である。
【
図7】本発明に係る混合有機アクセプタ層、混合有機ドナー層、中間アクセプタ層および中間ドナー層を有する有機感光性光電子デバイスの概略図である。
【
図8】第1電極の上に積層される光活性領域および光活性領域の上に積層される第2電極の概略図である。
【
図9】塩素化亜鉛ジピリン化合物(ZCl)の合成および構造を示す図である。
【
図10】ZClのORTEP図および単結晶におけるC
60およびZClの空間充填モデルを示す図である。
【
図11】
図11Aは、室温におけるメチルシクロヘキサン中のZClの吸光スペクトル(黒四角)および発光スペクトル(白丸)を示す図である。
図11Bは、77Kにおける2−メチルテトラヒドロフラン中のZClの発光スペクトルを示す図である(挿入図は、ZClの三重項状態からの発光である)。
図11Cは、C
60膜(四角)およびZCl膜(三角)の500nmにおける励起の下での吸光(黒シンボル)および発光(白シンボル)を示す図である。
図11Dは、ジクロロメタン中のZClのサイクリックボルタンメトリー(CV)図および差動パルスボルタンメトリー(DPV)図(vs.Fc
+/Fc)(スキャンレート100mV/s)である。
【
図12】イリジウムジピリン化合物(IrDP)の合成および構造を示す図である。
【
図13】
図13Aは、室温(四角)および77K(丸)における、N
2の下でのジクロロメタン溶液中のIrDPの吸光(黒シンボル)および発光(白シンボル)を示す図である。
図13Bは、IrDPのサイクリックボルタンメトリー図(スキャンレート100mV/s)である。
図13Cは、500nmにおける励起の下でのC
60膜(四角)およびIrDP膜(三角)の吸光(黒シンボル)と、IrDPの発光(白シンボル)とを示す図である。
【
図14】
図14Aは、50nmのC
60(丸)、9nmのZClと混合された50nmのC
60(15%v/v)(三角)および25nmのZClと混合された50nmのC
60(33%v/v)(四角)の、517nmにおけるレーザー励起の下での吸光(黒シンボル)および発光(白シンボル)を示す図である。
図14Bは、ZClからC
60へのフェルスターエネルギー移動を示す図である。
【
図15】基準デバイスと、様々な値におけるアクセプタ感光体を使用するデバイスとの概略図である。
【
図16】ZClを感光体として使用する有機PVデバイスの性能特性を示す図である。ここで、
図16Aは、基準デバイスD1および感光化された(増感された)デバイスD2(C
60:ZClが30nm:6nm、17%v/v)の、1sun、AM1.5G照射の下での電流−電圧特性を示す図であり、
図16Bは、上記デバイスの外部量子効率(EQE)の測定結果を示す図である。
【
図17】IrDPを感光体として使用する有機PVデバイスの性能特性を示す図である。ここで、
図17Aは、基準デバイスD1および感光化されたデバイスD2(C
60:IrDPが30nm:6nm、17%v/v)の、1sun、AM1.5G照射の下での電流−電圧特性を示す図であり、
図17Bは、上記デバイスの外部量子効率(EQE)の測定結果を示す図である。
【
図18】F
12SubPcを感光体として使用する有機PVデバイスの性能特性を示す図である。ここで、
図18Aは、基準デバイスD1と、感光化されたデバイスD2(C
60:F
12SubPcが30nm:3nm、9%v/v)、D3(C
60:F
12SubPcが30nm:6nm、17%v/v)およびD4(C
60:F
12SubPcが30nm:12nm、29%v/v)との、1sun、AM1.5G照射の下での電流−電圧特性を示す図であり、
図18Bは、上記デバイスの外部量子効率(EQE)の測定結果を示す図である。
【
図19】Cl
6SubPcを感光体として使用する有機PVデバイスの性能特性を示す図である。ここで、
図19Aは、基準デバイスD1および感光化されたデバイスD2(C
60:Cl
6SubPcが30nm:6nm、17%v/v)の、1sun、AM1.5G照射の下での電流−電圧特性を示す図であり、
図19Bは、上記デバイスの外部量子効率(EQE)の測定結果を示す図である。
【
図20】異なる感光体を使用する有機PVデバイスであるITO/NPD(11nm)/C
60(5nm)/S:C
60(tnm:30nm、x%v/v)/C
60(5nm)/BCP(10nm)/Alと、対応する基準デバイスであるITO/NPD(11nm)/C
60(40nm)/BCP(10nm)/Alとの、擬似1sun、AM1.5G照射の下での性能特性をまとめた図である。
【
図21】
図21Aは、基準デバイスの概略図、および純C
60層の上部に混合C
60:ZCl層を有し、層が様々な厚さを有するデバイスの概略図である。
図21Bは、基準デバイスD1と、様々な厚さを有する感光化されたデバイス(C
60:ZClが体積比1:1)であるD2(x=10nm)、D3(x=20nm)、D4(x=30nm)、D5(x=40nm)およびD6(x=45nm)との、1sun、AM1.5G照射の下での電流−電圧特性を示す図である。
図21Cは、上記デバイスのEQEの測定結果を示す図である。
【
図22】
図22Aは、D/A接合面において15nmの厚さの純C
60層を使用するデバイスにおける、混合C
60:ZCl層の厚さの最適化を示す図である(t=0nmは、40nmの純C
60を有する基準デバイス)。
図22Bは、D/A接合面において25nmの厚さの純C
60層を使用するデバイスにおける、混合C
60:ZCl層の厚さの最適化を示す図である(t=0nmは、40nmの純C
60を有する基準デバイス)。
【
図23】
図23Aは、ドナー層として使用されるスクアライン(SQ)の構造を示す図である。
図23Bは、基準デバイスの概略図、ならびに混合C
60:ZCl層およびスクアライン(SQ)ドナー層を有するデバイスの概略図である。
図23Cは、1sun、AM1.5G照射の下でのデバイスの電流−電圧特性およびEQEの測定結果を示す図である。D2は、ITO/SQ(11nm)/C
60(15nm)/ZCl:C
60(1:1、50nm)/BCP(10nm)/Alであり、基準デバイスD1は、ITO/SQ(11nm)/C
60(40nm)/BCP(10nm)/Alである。
図23Dは、上記デバイスの性能特性をまとめた図である。
【
図24】
図24Aは、AM1.5Gの太陽スペクトルと比較されるC
60、ZCl、Cl
6SubPc、C
60:ZCl:Cl
6SubPcおよびDPSQの薄膜の吸光係数を示す図である。
図24Bは、C
60の吸光と比較されるZClおよびCl
6SubPcの発光スペクトルを示す図である。
【
図25】エネルギー移動経路を示す矢印を伴ったZCl、Cl
6SubPcおよびC
60の一重項および三重項のエネルギーと、C
60、ZClおよびCl
6SubPcの還元電位(vs.Fc/Fc
+)とを示す図である。
【
図26】
図26Aは、基準デバイスと、複数の感光体を使用するデバイスとの概略図である。
図26Bは、1sun、AM1.5G照射の下でのデバイスのJ−Vカーブと、参考のために追加されたZClおよびCl
6SubPcの吸光スペクトルを伴ったEQEの測定結果とを示す図である。
図26Cは、上記デバイスの性能特性をまとめた図である。
【
図27】
図27Aは、基準デバイスと、ドナー感光体を使用するデバイスとの概略図である。
図27Bは、1sun、AM1.5G照射の下でのデバイスのJ−VカーブおよびEQEの測定結果を示す図である。
図27Cは、上記デバイスの性能特性をまとめた図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
本明細書で使用される「有機」の用語は、有機感光性デバイスを作製するために使用されうるポリマー材料および小分子有機材料を含む。「小分子」はポリマーでない任意の有機材料を意味し、「小分子」は実際にはかなり大きくてもよい。小分子は、状況次第で繰り返し単位を含んでもよい。たとえば、長鎖アルキル基を置換基として使用しても、分子は「小分子」の分類から除外されない。小分子は、たとえばポリマー骨格上のペンダント基として、または当該骨格の一部として、ポリマーに組み込まれてもよい。
【0059】
本明細書で使用される「最低三重項励起状態エネルギー」は、基底状態のエネルギーに最も近づいた三重項の励起状態のエネルギーを意味する。
【0060】
本明細書で使用される「最低一重項励起状態エネルギー」は、基底状態のエネルギーに最も近づいた一重項の励起状態のエネルギーを意味する。
【0061】
本明細書で使用される「共積層(co−depositingまたはco−deposition)」の用語は、固溶体を生成するために材料を積層するプロセスを意味する。材料は、様々な方法により「共積層」されうる。たとえば、「共積層」は、同時にまたは連続して、材料を基板上に独立して(独立したソースから)積層することを含んでもよく、材料の比率は、各材料の積層の比率によって制御されうる。蒸着法は、この方法の例である。あるいは、「共積層」は、材料を所望の比率で混合し、混合された材料を基板上に積層することを含んでもよい。流体溶解積層法は、この代わりの方法の例である。
【0062】
「電極」および「接点」の用語は、本明細書では、外部の回路に対して光発生電流を送り出すための、またはデバイスに対してバイアス電流または電圧を供給するための、媒体を供給する層を意味するために使用される。つまり、電極または接点は、有機感光性光電子デバイスの活性領域と、外部回路に、または外部回路から、電荷キャリアを輸送するための金属線、リード線、配線または他の手段との間に、接合点を供給する。アノードおよびカソードが例である。参照により本願に包含される米国特許第6,352,777は、電極を開示し、感光性光電子デバイスにおいて使用されうる電極または接点の例を提供する。感光性光電子デバイスでは、外部の装置からの周囲の電磁放射の最大量が、光導電的に活性である内部領域に受け入れられうることが望ましい。つまり、電磁放射は、光導電性の吸収によってそれが電気に変換されうる場所である、光導電層に到達しなければならない。これは、電気接点の少なくとも一つが、入力する電磁放射を最小限に吸収し、最小限に反射しているべきであることをしばしば決定づける。場合によっては、そのような接点は、透明または少なくとも半透明であるべきである。電極は、関連する波長において、周囲の電磁放射の少なくとも50%がそれを通して透過されうる場合、「透明」であると言われる。電極は、関連する波長において、周囲の電磁放射の幾分かであるが、50%未満を透過させる場合、「半透明」であると言われる。反射電極は、吸収されることなくセルを通過していた光が、セルを通して逆側に反射されるような、反射性の材料であってもよい。
【0063】
本明細書で使用され、説明される「層」は、主な次元がX−Yである(すなわち、自身の長さおよび幅に沿う)感光性デバイスの要素または構成要素を意味する。層の用語は、単層または材料のシートに必ずしも限定されないことは理解されたい。加えて、他の材料または層と、そのような層との接合面を含む、ある層の表面は、不完全であってもよいことは理解されたく、ここで、当該表面は、他の材料または層と浸透したり、混在されたり、入り組んだりするネットワークを示す。同様に、X−Y次元に沿う当該層の連続は、他の層または材料によって妨げられたり、そうでなければ干渉されたりしてもよいように、層が不連続であってもよいこともまた理解されたい。
【0064】
本明細書において、材料または構成要素が別の材料または構成要素「の上に」積層されると表現した場合、それらの材料または構成要素の間に、他の材料または層が存在してもよいことを意味する。たとえば、層および電極の間に、様々な材料または層が存在しても、層は、電極「の上に」積層されると説明されうる。
【0065】
本明細書で使用される「吸光率」の用語は、対象の波長において、吸収される入射光の割合を意味する。
【0066】
本発明において、互いに0.1eV以内の分子のエネルギーは、「等しい」と見なされる。
【0067】
本発明の有機感光性光電子デバイスは、アクセプタおよび/またはドナー層の吸光および光反応をそれぞれ増加させるために、少なくとも一つのアクセプタおよび/またはドナーの感光体を有する。感光体は、感光体によって吸収されるエネルギーが、ホストアクセプタおよびホストドナー材料に伝達されうるように設計され、アクセプタおよびドナー材料は、励起子移動、電荷分離および電荷キャリア誘導に関与する。
【0068】
一実施形態において、有機感光性光電子デバイスの有機アクセプタ材料は、混合有機アクセプタ層を形成するために、アクセプタ感光体と混合されてもよい。たとえば、
図1に示すように、デバイスは、二つの電極間に位置する混合有機アクセプタ層および有機ドナー層と重ね合わせられた関係にある、二つの電極を有する。
【0069】
有機ドナー層は、少なくとも一つのドナー材料を有する。混合有機アクセプタ層は、アクセプタ材料および少なくとも一つのアクセプタ感光体の混合物を有する。混合有機アクセプタ層および有機ドナー層は、電流を発生させるために、電子および正孔に解離しうる励起子を発生させるため、電磁放射を吸収するデバイスの光活性領域を有する。混合有機アクセプタ層および有機ドナー層の間の接合面は、ドナー−アクセプタヘテロ接合を形成してもよい。
【0070】
アクセプタ材料および少なくとも一つのアクセプタ感光体の吸光帯は、混合有機アクセプタ層の全体の吸光を拡大するために、互いに補完してもよい。つまり、いくつかの実施形態において、吸光を最適化するために、アクセプタ材料およびアクセプタ感光体は、それらが同じ波長について同様の吸光率を十分に示さないように選択されうる。いくつかの実施形態において、少なくとも一つのアクセプタ感光体は、一つ以上の波長において最大の吸光率を有し、ここで、最大の吸光率は、一つ以上の波長において、アクセプタ材料の吸光率の少なくとも二倍の大きさである。いくつかの実施形態において、少なくとも一つのアクセプタ感光体は、350〜950nmに及ぶ一つ以上の波長において、少なくとも10
3cm
−1の吸光係数を有する。いくつかの実施形態において、少なくとも一つのアクセプタ感光体は、450〜700nmに及ぶ一つ以上の波長において、少なくとも10
3cm
−1の吸光係数を有する。
【0071】
本発明の重要な特徴は、少なくとも一つのアクセプタ感光体からアクセプタ材料への、吸収されたエネルギーの効率のよい移動である。このように、少なくとも一つのアクセプタ感光体およびアクセプタ材料は、以下の条件を満足するように選択されるべきである。
・少なくとも一つのアクセプタ感光体は、アクセプタ材料の最低三重項励起状態エネルギー(E
T−A)以上の最低三重項励起状態エネルギー(E
T−ASens)を有する。
・少なくとも一つのアクセプタ感光体は、アクセプタ材料の還元電位以下の還元電位を有する。
および
・少なくとも一つのアクセプタ感光体およびアクセプタ材料が電荷移動(CT)状態エネルギーを有するCT状態を形成する際、CT状態エネルギーは、アクセプタ材料の最低三重項励起状態エネルギー(E
T−A)以上である。
【0072】
アクセプタ材料の最低三重項励起状態エネルギー(E
T−A)以上の最低三重項励起状態エネルギー(E
T−ASens)を有する少なくとも一つのアクセプタ感光体は、少なくとも一つのアクセプタ感光体およびアクセプタ材料の間のデクスター(三重項−三重項)エネルギー移動を可能にする。このメカニズムを、C
60アクセプタを例として使用して、
図2Bに示す。少なくとも一つのアクセプタ感光体およびアクセプタ材料がCT状態を形成する際、アクセプタ材料の最低三重項励起状態エネルギー(E
T−A)以上のCT状態エネルギーは、C
60を例として使用して
図2Cに示すように、アクセプタ材料への電子移動を可能にする。アクセプタ材料の還元電位以下の還元電位を有する少なくとも一つのアクセプタ感光体は、電荷分離および/またはキャリアトラッピングを妨げることによって、効率のよいエネルギー移動を可能にする。
【0073】
アクセプタ材料および少なくとも一つのアクセプタ感光体はまた、少なくとも一つのアクセプタ感光体が、アクセプタ材料の最低一重項励起状態エネルギー(E
S−A)以上の最低一重項励起状態エネルギー(E
S−ASens)を有するように選択されてもよい。この配列は、C
60を例として使用して
図2Aに示すように、少なくとも一つのアクセプタ感光体およびアクセプタ材料の間のフェルスター(一重項−一重項)エネルギー移動を可能にする。
【0074】
アクセプタ材料および少なくとも一つのアクセプタ感光体はまた、CT状態エネルギーが、形成される場合には、アクセプタ材料の最低一重項励起状態エネルギー(E
S−A)以上であるように選択されてもよい。
【0075】
少なくとも一つのアクセプタ感光体の大きさおよび形状は、アクセプタ材料の大きさおよび形状に十分に一致させてもよい。いくつかの実施形態において、アクセプタ材料および少なくとも一つのアクセプタ感光体の混合物は、固溶体を形成する。本明細書で使用される「固溶体」の用語は、対象の温度において固体であり、固溶体の範囲内において構成要素のいずれについても位置秩序を有さない、二つ以上の材料の懇意な、またはランダムな混合物を意味する。
【0076】
本発明において適切なアクセプタ材料の例は、ポリマーまたは非ポリマーペリレン、ポリマーまたは非ポリマーナフタレン、ならびにポリマーまたは非ポリマーフラーレンおよびフラーレン誘導体(たとえばPCBM、ICBA、ICMAなど)を含むが、これらに限定されない。C
60、C
70、C
76、C
82、C
84、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ビス−ベンズイミダゾール(PTCBI)、フェニル−C
61−酪酸−メチルエステル([60]PCBM)、フェニル−C
71−酪酸−メチルエステル([70]PCBM)、チエニル−C
61−酪酸−メチルエステル([60]ThCBM)およびヘキサデカフルオロフタロシアニン(F
16CuPc)から選択されてもよいが、これらに限定されない。
【0077】
本発明の少なくとも一つのアクセプタ感光体は、たとえば、フタロシアニン、サブフタロシアニン、ジピリンおよびそれらの金属錯体、ポルフィリン、アザジピリンおよびそれらの金属錯体、ホウ素ジピロメテン(BODIPY)色素ならびにそれらの誘導体から選択されてもよい。少なくとも一つのアクセプタ感光体に対する候補の材料の、吸光、一重項および三重項エネルギー、ならびに還元/酸化電位が、官能基を結合することによって調整されうることは、認識されるべきである。たとえば、官能基は、ジピリン、アザジピリン、ポルフィリン、フタロシアニンおよびサブフタロシアニンのπ共役を拡大するために、結合されてもよい。
【0078】
いくつかの実施形態において、少なくとも一つのアクセプタ感光体は、以下の構造を有する化合物である。
【0080】
ここで、Mは、B、Al、Ga、InおよびTlから選択され、Xは、ハロゲン、−SCN、アルキル基、アリール基、−ORおよび−SRから選択され、R
1−12は、アクセプタ材料および少なくとも一つのアクセプタ感光体のための条件が満足されるように、Hならびに無機および有機の官能基からそれぞれ選択される。ある実施形態において、R
1−12は、−NO
2、ハロゲン、−CN、−SCN、アルキル基、アリール基、−OR、−SR、−COOR、−CROおよびHからそれぞれ選択される。
【0081】
いくつかの実施形態において、少なくとも一つのアクセプタ感光体は、以下から選択される化合物である。
【0083】
ここで、X
1−2は、以下からそれぞれ選択される。
【0087】
Mは、金属およびホウ素から選択され、nは、1、2および3から選択され、Lは、単一または複数の配位サイトを伴う無機および有機リガンドから選択され、Yはヘテロ原子であり、R
1−nは、アクセプタ材料および少なくとも一つのアクセプタ感光体のための条件が満足されるように、Hならびに無機および有機の官能基からそれぞれ選択される。ある実施形態において、R
1−nは、−NO
2、ハロゲン、−CN、−SCN、アルキル基、アリール基、−OR、−SR、−COOR、−CROおよびHからそれぞれ選択される。
【0088】
いくつかの実施形態において、少なくとも一つのアクセプタ感光体は、以下から選択される化合物である。
【0090】
ここで、X
1−2は、以下からそれぞれ選択される。
【0092】
Yはヘテロ原子であり、R
1−nは、アクセプタ材料および少なくとも一つのアクセプタ感光体のための条件が満足されるように、Hならびに無機および有機の官能基からそれぞれ選択される。ある実施形態において、R
1−nは、−NO
2、ハロゲン、−CN、−SCN、アルキル基、アリール基、−OR、−SR、−COOR、−CROおよびHからそれぞれ選択される。
【0093】
いくつかの実施形態において、少なくとも一つのアクセプタ感光体は、以下から選択される化合物である。
【0095】
ここで、X
1−4は、以下からそれぞれ選択される。
【0097】
X
5−8は、以下からそれぞれ選択される。
【0099】
Mは、金属およびホウ素から選択され、Yはヘテロ原子であり、R
1−nは、アクセプタ材料および少なくとも一つのアクセプタ感光体のための条件が満足されるように、Hならびに無機および有機の官能基からそれぞれ選択される。ある実施形態において、R
1−nは、−NO
2、ハロゲン、−CN、−SCN、アルキル基、アリール基、−OR、−SR、−COOR、−CROおよびHからそれぞれ選択される。
【0100】
いくつかの実施形態において、少なくとも一つのアクセプタ感光体は、以下から選択される化合物である。
【0102】
ここで、X
1−2は、以下からそれぞれ選択される。
【0104】
Mは、金属およびホウ素から選択され、nは、1、2および3から選択され、Lは、単一または複数の配位サイトを伴う無機および有機リガンドから選択され、Yはヘテロ原子であり、R
1−nは、アクセプタ材料および少なくとも一つのアクセプタ感光体のための条件が満足されるように、Hならびに無機および有機の官能基からそれぞれ選択される。ある実施形態において、R
1−nは、−NO
2、ハロゲン、−CN、−SCN、アルキル基、アリール基、−OR、−SR、−COOR、−CROおよびHからそれぞれ選択される。
【0105】
本発明の少なくとも一つのアクセプタ感光体は、多重発色団の感光体であってもよい。いくつかの実施形態において、多重発色団の感光体は、以下から選択される構造を有する。
【0107】
ここで、リンカーは有機化合物であり、発色団1〜4は、ジピリン、フタロシアニン、サブフタロシアニン、ポルフィリンおよびアザジピリンから選択される。
【0108】
他の実施形態において、多重発色団の感光体は、以下から選択される構造を有する。
【0110】
各発色団は、一つ以上の発色団と直接的に接続され、発色団1〜4は、ジピリン、フタロシアニン、サブフタロシアニン、ポルフィリンおよびアザジピリンから選択される。
【0111】
混合有機アクセプタ層は、たとえば、5〜1000nm、5〜500nm、5〜150nm、10〜125nm、15〜100nm、20〜90nm、20〜70nmまたは30〜60nmなどの範囲における厚さを有してもよい。
【0112】
いくつかの実施形態において、混合有機アクセプタ層における、アクセプタ材料および少なくとも一つのアクセプタ感光体の混合物は、10:1から1:2の範囲におけるアクセプタ:感光体の比率を有する。
【0113】
図3に示すように、本発明の有機感光性光電子デバイスは、混合有機アクセプタ層および有機ドナー層の間に位置する中間アクセプタ層を含んでもよい。中間アクセプタ層は、有機ドナー層と共にドナー−アクセプタヘテロ接合を形成してもよい。ある実施形態において、中間アクセプタ層は、本開示を通して記載されるような、アクセプタ材料で構成されてもよい。いくつかの実施形態において、中間アクセプタ層は、アクセプタ材料および他の有機材料で構成される。いくつかの実施形態において、中間アクセプタ層を含む材料の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または少なくとも99.9%は、アクセプタ材料である。中間アクセプタ層の含有は、アクセプタ材料および有機ドナー層の接合面において、励起子の電荷が分離することを確実にできる。中間アクセプタ層は、たとえば、5〜1000nm、5〜500nm、5〜100nm、10〜50nmまたは15〜35nmなどの範囲における厚さを有してもよい。
【0114】
本発明の少なくとも一つのアクセプタ感光体は、二つ以上のアクセプタ感光体を有してもよい。いくつかの実施形態において、少なくとも一つのアクセプタ感光体は、第1アクセプタ感光体および第2アクセプタ感光体を有する。第1アクセプタ感光体、第2アクセプタ感光体およびアクセプタ材料の吸光帯は、混合有機アクセプタ層の全体の吸光を拡大するために、互いに補完してもよい。つまり、いくつかの実施形態において、吸光を最適化するために、第1アクセプタ感光体、第2アクセプタ感光体およびアクセプタ材料は、同じ波長について同様の吸光率を十分に示さない。いくつかの実施形態において、第1アクセプタ感光体は、一つ以上の波長において最大の吸光率を有し、ここで、第1アクセプタ感光体の最大の吸光率は、一つ以上の波長において、第2アクセプタ感光体およびアクセプタ材料の吸光率の、それぞれ少なくとも二倍の大きさである。いくつかの実施形態において、第2アクセプタ感光体は、一つ以上の波長において最大の吸光率を有し、ここで、第2アクセプタ感光体の最大の吸光率は、一つ以上の波長において、第1アクセプタ感光体およびアクセプタ材料の吸光率の、それぞれ少なくとも二倍の大きさである。
【0115】
本発明の他の実施形態において、有機感光性光電子デバイスの有機ドナー材料は、混合有機ドナー層を形成するために、ドナー感光体と混合されうる。たとえば、
図4に示すように、デバイスは、二つの電極間に位置する混合有機ドナー層および有機アクセプタ層と重ね合わせられた関係にある、二つの電極を有する。
【0116】
有機アクセプタ層は、少なくとも一つのアクセプタ材料を有する。混合有機ドナー層は、ドナー材料および少なくとも一つのドナー感光体の混合物を有する。混合有機ドナー層および有機アクセプタ層の間の接合面は、ドナー−アクセプタヘテロ接合を形成してもよい。ドナー材料および少なくとも一つのドナー感光体の吸光帯は、混合有機ドナー層の全体の吸光を拡大するために、互いに補完してもよい。つまり、いくつかの実施形態において、吸光を最適化するために、ドナー材料およびドナー感光体は、同じ波長について同様の吸光率を十分に示さない。いくつかの実施形態において、少なくとも一つのドナー感光体は、一つ以上の波長において最大の吸光率を有し、ここで、最大の吸光率は、一つ以上の波長において、ドナー材料の吸光率の少なくとも二倍の大きさである。いくつかの実施形態において、少なくとも一つのドナー感光体は、350〜950nmに及ぶ一つ以上の波長において、少なくとも10
3cm
−1の吸光係数を有する。いくつかの実施形態において、少なくとも一つのドナー感光体は、450〜700nmに及ぶ一つ以上の波長において、少なくとも10
3cm
−1の吸光係数を有する。
【0117】
少なくとも一つのアクセプタ感光体と同様に、本発明の重要な特徴は、少なくとも一つのドナー感光体からドナー材料への、吸収されたエネルギーの効率のよい移動である。このように、少なくとも一つのドナー感光体およびドナー材料は、以下の条件を満足するように選択されるべきである。
・少なくとも一つのドナー感光体は、ドナー材料の最低三重項励起状態エネルギー(E
T−D)以上の最低三重項励起状態エネルギー(E
T−DSens)を有する。
・少なくとも一つのドナー感光体は、ドナー材料の酸化電位以上の酸化電位を有する。
および
・少なくとも一つのドナー感光体およびドナー材料が電荷移動(CT)状態エネルギーを有するCT状態を形成する際、CT状態エネルギーは、ドナー材料の最低三重項励起状態エネルギー(E
T−D)以上である。
【0118】
ドナー材料の最低三重項励起状態エネルギー(E
T−D)以上の最低三重項励起状態エネルギー(E
T−DSens)を有する少なくとも一つのドナー感光体は、少なくとも一つのドナー感光体およびドナー材料の間のデクスター(三重項−三重項)エネルギー移動を可能にする。少なくとも一つのドナー感光体およびドナー材料がCT状態を形成する際、ドナー材料の最低三重項励起状態エネルギー(E
T−D)以上のCT状態エネルギーは、ドナー材料への電子移動を可能にする。ドナー材料の酸化電位以上の酸化電位を有する少なくとも一つのドナー感光体は、電荷分離および/またはキャリアトラッピングを妨げることによって、効率のよいエネルギー移動を可能にする。
【0119】
ドナー材料および少なくとも一つのドナー感光体はまた、少なくとも一つのドナー感光体が、ドナー材料の最低一重項励起状態エネルギー(E
S−D)以上の最低一重項励起状態エネルギー(E
S−DSens)を有するように選択されてもよい。この配列は、少なくとも一つのドナー感光体およびドナー材料の間のフェルスター(一重項−一重項)エネルギー移動を可能にする。
【0120】
ドナー材料および少なくとも一つのドナー感光体はまた、CT状態エネルギーが、形成される場合には、ドナー材料の最低一重項励起状態エネルギー(E
S−D)以上であるように選択されてもよい。
【0121】
少なくとも一つのドナー感光体の大きさおよび形状は、ドナー材料の大きさおよび形状に十分に一致させてもよい。いくつかの実施形態において、ドナー材料および少なくとも一つのドナー感光体の混合物は、固溶体を形成する。
【0122】
本発明において適切なドナー材料の例は、銅フタロシアニン(CuPc)、クロロアルミニウムフタロシアニン(ClAlPc)、スズフタロシアニン(SnPc)、亜鉛フタロシアニン(ZnPc)および他の修飾されたフタロシアニンなどのフタロシアニン、ホウ素サブフタロシアニン(SubPc)などのサブフタロシアニン、ナフタロシアニン、メロシアニン色素、ホウ素ジピロメテン(BODIPY)色素、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)などのチオフェン、ペンタセンおよびテトラセンなどのポリアセン、ジインデノペリレン(DIP)ならびにスクアライン(SQ)色素を含むが、これらに限定されない。
【0123】
スクアラインのドナー材料の例は、2,4−ビス[4−(N,N−ジプロピルアミノ)−2,6−ジヒドロキシフェニル]スクアライン、2,4−ビス[4−(N,N−ジイソブチルアミノ)−2,6−ジヒドロキシフェニル]スクアライン、2,4−ビス[4−(N,N−ジフェニルアミノ)−2,6−ジヒドロキシフェニル]スクアライン(DPSQ)およびそれらの塩を含むが、これらに限定されない。適切なスクアライン材料のさらなる例は、参照により本願に包含される米国特許公開第2012/0248419において開示されている。
【0124】
少なくとも一つのドナー感光体は、たとえば、サブフタロシアニン、ポルフィリン、フタロシアニン、ジピリンおよびそれらの金属錯体、ホウ素ジピロメテン(BODIPY)色素、スクアライン、オリゴチオフェン、アセンならびにそれらの誘導体から選択されてもよい。少なくとも一つのドナー感光体は、本明細書に記載されるような化合物1〜31のいずれかから選択されてもよい。少なくとも一つのドナー感光体に対する候補の材料の、吸光、一重項および三重項エネルギー、ならびに還元/酸化電位が、官能基を結合することによって調整されうることは、認識されるべきである。
【0125】
混合有機ドナー層は、たとえば、5〜1000nm、5〜500nm、5〜150nm、10〜125nm、15〜100nm、20〜90nm、20〜70nmまたは30〜60nmなどの範囲における厚さを有してもよい。
【0126】
いくつかの実施形態において、混合有機ドナー層における、ドナー材料および少なくとも一つのドナー感光体の混合物は、10:1から1:2の範囲におけるドナー:感光体の比率を有する。
【0127】
図5に示すように、本発明の有機感光性光電子デバイスは、混合有機ドナー層および有機アクセプタ層の間に位置する中間ドナー層を含んでもよい。中間ドナー層は、有機アクセプタ層と共にドナー−アクセプタヘテロ接合を形成してもよい。ある実施形態において、中間ドナー層は、本開示を通して記載されるような、ドナー材料で構成されてもよい。いくつかの実施形態において、中間ドナー層は、ドナー材料および他の有機材料で構成される。いくつかの実施形態において、中間ドナー層を含む材料の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または少なくとも99.9%は、ドナー材料である。中間ドナー層の含有は、ドナー材料および有機アクセプタ層の接合面において、励起子の電荷が分離することを確実にできる。中間ドナー層は、たとえば、5〜1000nm、5〜500nm、5〜100nm、10〜50nmまたは15〜35nmなどの範囲における厚さを有してもよい。
【0128】
図6に示すように、本発明の有機感光性光電子デバイスは、混合有機アクセプタ層および混合有機ドナー層の両方を有してもよい。混合有機アクセプタ層は、本明細書に記載されるようなアクセプタ材料および少なくとも一つのアクセプタ感光体の混合物を有する。混合有機ドナー層は、本明細書に記載されるようなドナー材料および少なくとも一つのドナー感光体の混合物を有する。本明細書に記載されるように、アクセプタ材料および少なくとも一つのアクセプタ感光体の吸光帯は、混合有機アクセプタ層の全体の吸光を拡大するために、互いに補完してもよい。同様に、ドナー材料および少なくとも一つのドナー感光体の吸光帯は、混合有機ドナー層の全体の吸光を拡大するために、互いに補完してもよい。
【0129】
感光化されたドナー層および感光化されたアクセプタ層の両方を有するデバイスについて、感光体は、太陽スペクトルの範囲内において、混合有機アクセプタ層および混合有機ドナー層の吸光の重複部分を最大化するように選択されてもよい。これは、異なる波長の範囲において吸光する感光体を選択することを含んでもよい。あるいは、吸光スペクトルの一部または全部が重複する感光体は、対象の波長の範囲において、混合有機ドナー層および混合有機アクセプタ層の薄膜の吸光率を最大化するように選択されてもよい。
【0130】
図7に示すように、混合有機アクセプタ層および混合有機ドナー層を有するデバイスは、本明細書に記載されるような中間アクセプタ層、および本明細書に記載されるような中間ドナー層を含んでもよい。中間アクセプタ層は、混合有機アクセプタ層に隣接し、中間ドナー層は、混合有機ドナー層に隣接し、両方の中間層は、混合有機アクセプタ層および混合有機ドナー層の間に位置する。中間アクセプタ層および中間ドナー層は、ドナー−アクセプタヘテロ接合を形成してもよい。中間層は、本明細書に記載されるような厚さを有してもよい。
【0131】
本発明の電極の一つは、アノードであってもよく、他の電極はカソードであってもよい。電極が、所望のキャリア(正孔または電子)を受け取り、輸送するために最適化されるべきであることは、理解されたい。「カソード」の用語は、周囲の照射下で、外部の印加電圧なく抵抗負荷に接続される非積層のPVデバイスまたは積層のPVデバイスの単一ユニット(たとえばPVデバイス)において、電子が光導電性の材料からカソードに移動するというように、本明細書では使用される。同様に、「アノード」の用語は、照射下でのPVデバイスにおいて、正孔が光導電性の材料からアノードに移動し、電子は反対の方法で移動するというように、本明細書では使用される。
【0132】
本発明の記載にしたがって、有機PVのような光電子デバイスは、従来の、または反転の構造を有してもよい。反転のデバイスの構造の例は、参照により本願に包含される米国特許公開第2010/0102304において開示されている。
【0133】
本発明の有機感光性光電子デバイスは、このようなデバイスにおける技術分野で周知であるような、追加の層をさらに有してもよい。たとえば、デバイスは、電荷キャリア輸送層、および/または励起子阻止層(EBL)のような一つ以上の阻止層などのバッファ層をさらに有してもよい。一つ以上の阻止層は、光活性領域と、電極のどちらか一方または両方との間に位置してもよい。励起子阻止層として使用されてもよい材料について、バソキュプロイン(BCP)、バソフェナントロリン(BPhen)、1,4,5,8−ナフタレン−テトラカルボン酸−二無水物(NTCDA)、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ビス−ベンズイミダゾール(PTCBI)、1,3,5−トリス(N−フェニルベンズイミダゾール−2−イル)ベンゼン(TPBi)、トリス(アセチルアセトナト)ルテニウム(III)(Ru(acac)
3)、アルミニウム(III)フェノラート(Alq
2 OPH)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−アルファ−ナフチルベンジジン(NPD)、アルミニウムトリス(8−ヒドロキシキノリン)(Alq
3)およびカルバゾールビフェニル(CBP)から選択されてもよいが、これらに限定されない。阻止層の例は、参照により本願に包含される米国特許公開第2012/0235125および2011/0012091、ならびに米国特許第7,230,269および6,451,415において開示されている。
【0134】
本発明の有機感光性光電子デバイスは、このようなデバイスにおける技術分野で周知であるような、追加のバッファ層を有してもよい。たとえば、デバイスは、少なくとも一つの平滑層をさらに有してもよい。平滑層は、たとえば、光活性領域と、電極のどちらか一方または両方との間に位置してもよい。3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン:ポリスチレンスルホン酸塩(PEDOT:PSS)を含む膜は、平滑層の例である。
【0135】
本発明の有機感光性光電子デバイスは、二つ以上のサブセルを有する直列のデバイスとして存在してもよい。本明細書で使用されるサブセルは、少なくとも一つのドナー−アクセプタヘテロ接合を有するデバイスの構成要素を意味する。サブセルが有機感光性光電子デバイスとして個別に使用される際、それは、一般に電極一式を含む。直列のデバイスは、直列のドナー−アクセプタヘテロ接合間に、電荷輸送材料、電極、または電荷再結合材料もしくはトンネル接合を含んでもよい。いくつかの直列の構造では、隣接したサブセルが、共有物(すなわち共有された電極、電荷輸送領域または電荷再結合領域)を使用することは可能である。他の場合では、隣接したサブセルは、共通電極または電荷輸送領域を共有しない。サブセルは、並列または直列に、電気的に接続されてもよい。
【0136】
いくつかの実施形態において、電荷輸送層または電荷再結合層は、Al、Ag、Au、MoO
3、Li、LiF、Sn、Ti、WO
3、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化スズ(TO)、ガリウムインジウムスズ酸化物(GITO)、酸化亜鉛(ZO)または亜鉛インジウムスズ酸化物(ZITO)から選択されてもよい。他の実施形態において、電荷輸送層または電荷再結合層は、金属ナノクラスター、ナノ粒子またはナノロッドから構成されてもよい。
【0137】
いくつかの実施形態において、本明細書で記載されるドナー−アクセプタヘテロ接合は、混合ヘテロ接合、バルクヘテロ接合、平面ヘテロ接合、ナノ結晶−バルクヘテロ接合およびハイブリッド平面混合ヘテロ接合から選択される。
【0138】
本発明のデバイスは、たとえば、光検出器、光導電体、または太陽電池などのPVデバイスであってもよい。
【0139】
本発明の有機感光性光電子デバイスを準備する方法もまた、本明細書に記載される。一実施形態において、有機感光性光電子デバイスを作製する方法は、第1電極の上に光活性領域を積層すること、および光活性領域の上に第2電極を積層することを含む(
図8参照)。光活性領域は、(たとえば
図1の)混合有機アクセプタ層および有機ドナー層を有してもよく、ここで、混合有機アクセプタ層は、本明細書に記載されるような、アクセプタ材料および少なくとも一つのアクセプタ感光体の混合物を有する。アクセプタ材料および少なくとも一つのアクセプタ感光体は、混合有機アクセプタ層について本明細書で記載される条件を満足するように選択される。
【0140】
いくつかの実施形態において、第1電極の上に光活性領域を積層することは、第1電極の上に有機ドナー層を積層すること、および第1電極の上にアクセプタ材料および少なくとも一つのアクセプタ感光体を共積層することを含む。第1電極の上のアクセプタ材料および少なくとも一つのアクセプタ感光体の共積層は、第1電極の上の有機ドナー層の積層の前または後に発生してもよい。当業者にとって明らかであるように、第1電極が正孔を受け取り輸送するために最適化される場合、有機ドナー層は、混合有機アクセプタ層の共積層の前に、第1電極の上に積層されるべきである。第1電極が電子を受け取り輸送するために最適化される場合、混合有機アクセプタ層は、有機ドナー層の積層の前に、第1電極の上に積層されるべきである。
【0141】
いくつかの実施形態において、光活性領域は、本明細書(たとえば
図3)で記載されるような、中間アクセプタ層をさらに有する。それらの実施形態において、第1電極の上に光活性領域を積層することは、第1電極の上に有機ドナー層を積層すること、第1電極の上に中間アクセプタ層を積層すること、および第1電極の上にアクセプタ材料および少なくとも一つのアクセプタ感光体を共積層することを含んでもよい。第1電極の上のアクセプタ材料および少なくとも一つのアクセプタ感光体の共積層は、有機ドナー層の積層の前または後に発生してもよく、ここで、中間アクセプタ層の積層は、混合有機アクセプタ層および有機ドナー層の間に位置する中間アクセプタ層をもたらす。
【0142】
いくつかの実施形態において、光活性領域の有機ドナー層は、本明細書(たとえば
図4)で記載されるような、ドナー材料および少なくとも一つのドナー感光体の混合物を有する混合有機ドナー層である。ドナー材料および少なくとも一つのドナー感光体は、混合有機ドナー層について本明細書で記載される条件を満足するように選択される。それらの実施形態において、第1電極の上に光活性領域を積層することは、第1電極の上にドナー材料および少なくとも一つのドナー感光体を共積層すること、および第1電極の上に有機アクセプタ層を積層することを含んでもよい。ドナー材料および少なくとも一つのドナー感光体の共積層は、有機アクセプタ層の積層の前または後に発生してもよい。有機アクセプタ層が混合有機アクセプタ層である実施形態(たとえば
図6)において、有機アクセプタ層の積層は、アクセプタ材料および少なくとも一つのアクセプタ感光体の共積層を含んでもよい。光活性領域が中間アクセプタ層をさらに含む実施形態において、光活性領域の積層は、中間アクセプタ層が混合有機アクセプタ層および混合有機ドナー層の間に位置するように、中間アクセプタ層を積層することをさらに含む。
【0143】
いくつかの実施形態において、光活性領域は、本明細書(たとえば
図5)で記載されるような、中間ドナー層をさらに有する。それらの実施形態において、第1電極の上に光活性領域を積層することは、第1電極の上にドナー材料および少なくとも一つのドナー感光体を共積層すること、第1電極の上に中間ドナー層を積層すること、および第1電極の上に有機アクセプタ層を積層することを含んでもよい。ドナー材料および少なくとも一つのドナー感光体の共積層は、有機アクセプタ層の積層の前または後に発生してもよく、ここで、中間ドナー層の積層は、混合有機ドナー層および有機アクセプタ層の間に位置する中間ドナー層をもたらす。有機アクセプタ層が混合有機アクセプタ層である実施形態において、有機アクセプタ層の積層は、アクセプタ材料および少なくとも一つのアクセプタ感光体の共積層を含んでもよい。光活性領域が中間アクセプタ層をさらに含む実施形態(たとえば
図7)において、光活性領域の積層は、中間アクセプタ層が混合有機アクセプタ層に隣接し、中間ドナー層が混合有機ドナー層に隣接し、両方の中間層が混合有機アクセプタ層および混合有機ドナー層の間に位置するように、中間アクセプタ層を積層することをさらに含む。
【0144】
本明細書で記載される実施形態のいずれにおいても、共積層における、少なくとも一つのアクセプタ感光体に対するアクセプタ材料の比率は、10:1から1:2の範囲であってもよい。
【0145】
本明細書で記載される実施形態のいずれにおいても、共積層における、少なくとも一つのドナー感光体に対するドナー材料の比率は、10:1から1:2の範囲であってもよい。
【0146】
本明細書で記載されるように、有機感光性光電子デバイスにおける技術分野で周知である、阻止層、平滑層および他のバッファ層などの追加の層は、デバイスの作製中に積層されてもよい。
【0147】
層および材料は、本技術分野で周知である技術を用いて積層されてもよい。たとえば、本明細書で記載される層および材料は、溶液、蒸気または両方の組み合わせから積層されうる。いくつかの実施形態において、有機材料または有機層は、たとえば、スピンコーティング、スピンキャスティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、ドクターブレーディング、インクジェット印刷または転写印刷から選択される1つ以上の技術による、溶液処理によって積層されうる。
【0148】
他の実施形態において、有機材料は、真空熱蒸着、有機気相堆積または有機蒸気ジェット印刷などの真空蒸着を用いて積層されてもよい。
【0149】
本明細書で記載される実施形態は、多種多様な他の構造に関連して使用されてもよいことは理解されたい。記載される具体的な材料および構造は、実際には例であり、他の材料および構造が使用されてもよい。機能的な有機感光性光電子デバイスは、異なる方法で説明される、様々な層を組み合わせることによって達成されてもよく、あるいは、設計、性能およびコストの要因に基づいて、層が完全に省略されてもよい。具体的に説明されていない追加の層もまた、含まれてもよい。具体的に説明された材料以外の材料が、使用されてもよい。本明細書において、様々な層に与えられた名称は、厳密に限定することを意図したものではない。
【0150】
実施例以外、あるいはその他の指定された場所において、成分の量、反応条件、分析の測定結果およびその他を示し、明細書および特許請求の範囲において使用される全ての数字は、全ての場合において、「約」の用語によって修飾されるものとして理解されたい。したがって、反対に指定されない限り、本明細書および添付された特許請求の範囲において説明される数値パラメーターは、本発明によって取得しようとする所望の特性次第で、変更してもよい概算値である。少なくとも、特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限するための試みとしてではなく、各数値パラメーターは、有効数字および通常の四捨五入の近似の数を考慮して理解されたい。
【0151】
本開示の広範囲を説明する数値的な範囲およびパラメーターは、概算値であるにも関わらず、他に指定されない限りでは、具体的な実施例で説明される数値は、可能な限り正確に記録されている。しかしながら、任意の数値は、それらのそれぞれの試験測定において見られる標準偏差から生じる一定の誤差を、本質的に必ず含む。
【0152】
本明細書で記載されるデバイスおよび方法は、単なる例であることが意図された、以下の制限のない実施例によってさらに説明される。
【0153】
(実施例)
(実施例1)
亜鉛ジピリン誘導体(ZCl)を、本発明に係る感光体としての使用のために合成した。ZClは、可視光を強く吸光する(540nmにおいてC
60より7倍高い)。ZClの合成および構造を、
図9に示す。
【0154】
ZClを合成するために、5−メシチルジピロメタンを次のように合成した。1000mLの一口丸底フラスコ中で、メシトアルデヒド(7g、47.2mmol)およびピロール(500mL、7.2mol)の混合物を、窒素流で10分間脱気した。MgBr
2(4.60g、25.0mmol)を追加し、混合物を室温で1.5時間撹拌した。黄褐色の混合物を、粉末のNaOH(15.0g、380mmol)で処理した。混合物を1時間撹拌し、濾過した。濾液を濃縮し、ピロールを回収した。ピロールの除去の際に取得された粗固体を、20%酢酸エチル/エチルヘキサン(7×100ml)で抽出した。抽出物を、シリカ(80g)のパッドを通して重力濾過した。溶出された溶液を、粘性の褐色の液体を取得するために濃縮した。粘性の褐色の液体を、150℃における真空(10
−3torr)下で昇華させ、黄色結晶を取得した。結晶化[エタノール/水(4:1)]は、5.00g、43%収率の白色結晶を提供した。
【0155】
そして、ZClを次のように合成した。5−メシチルジピロメタンの0.62g(2.34mmol)を、60mLの新たに蒸留されたTHF中で溶解させた。ドライアイス/アセトン溶液槽を使用して、溶液を冷却した。N
2を5分間、反応混合物に吹き込んだ。THFの70mL中のN−クロロスクシンイミド(NCS)の2.2g(16.4mmol)を、DPM溶液に徐々に追加した。暗闇におけるN
2の下、ドライアイス/アセトン溶液槽中で、反応混合物を2時間撹拌した。反応物を10時間かけて、徐々に室温まで温めた。THFを蒸発させ、粗生成物を300mLのジクロロメタン(DCM)中で溶解させた。粗生成物をNaHCO
3溶液で洗浄し、Na
2SO
4の上で乾燥させた。DCM中の暗赤色の生成物を、さらなる精製なく使用した。30mLのCH
3OH中の2.5gのZn(OAc)
2・2H
2Oを、DCM中の生成物に追加した。溶媒を蒸発させた時点で一晩、反応混合物を撹拌した。生成物をDCM中で溶解させ、無機固体を濾別した。溶液をNa
2CO
3で洗浄した。DCMを蒸発させた。粗生成物を、DCM/ヘキサン(1/4)を使用して、短い中性のAl
2O
3カラムに通した。暗赤色の生成物の0.4gを回収した。生成物をDCM中で溶解させ、上部にMeOHを積層することによって再結晶化させた。固体の0.2gを回収した(17%全収率)。生成物をさらに、270℃−200℃−140℃の勾配温度帯における真空(10
−5torr)下で、勾配昇華によって精製した。生成物ZClは、二つの化合物、C
36H
22Cl
12N
4ZnおよびC
36H
23Cl
11N
4Znの、モル比3:1での混合物(一般式:C
144H
89Cl
47N
16Zn
4)であった。
【0156】
ZClの単結晶を真空下で低速熱昇華によって成長させ、C
36H
22Cl
12N
4ZnおよびC
36H
23Cl
11N
4Znの混合物を、共結晶化させた。構造をX線回折測定によって測定し、
図10に示す。
【0157】
室温におけるメチルシクロヘキサン中のZClの吸光スペクトル(黒四角)および発光スペクトル(白丸)を、
図11Aに示す。77Kにおける2−メチルテトラヒドロフラン中のZClの発光スペクトルを、
図11Bに示す。挿入図は、ZClの三重項状態からの発光である。C
60膜(四角)およびZCl膜(三角)の吸光スペクトル(黒シンボル)および発光スペクトル(白シンボル)を、
図11Cに示す。
図11Dは、ジクロロメタン中のZClのサイクリックボルタンメトリー(CV)図および差動パルスボルタンメトリー(DPV)図(スキャンレート100mV/s)を示す。
【0158】
(実施例2)
イリジウムジピリン誘導体(IrDP)を、本発明に係る感光体としての使用のために合成した。IrDPの合成および構造を、
図12に示す。
【0159】
IrDPを合成するために、[IrCl(f
2ppy)]
2を次のように合成した。IrCl
3・2H
2O(1.4g、4.70mmol)およびf
2ppy(4.00g、21.0mmol)を、2−EtOEtOH: H
2O(120mL:40mL)中で溶解させ、140℃で20時間還流させた。冷却後、黄色の沈殿物を濾過し、アセトン:エタノール(120mL:120mL)で洗浄した。洗浄された生成物を、78%収率で黄色の微結晶(4.2g、3.46mmol)を生成するために、ヘキサン:トルエン(20mL:50mL)中で再結晶化させた。
【0160】
そして、IrDPを次のように合成した。2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(DDQ)(1mmol)を、乾燥テトラヒドロフラン(THF)の20mLのジピロメタン(1mmol)の溶液に追加し、室温で1時間撹拌した。そして、炭酸カリウム(2g)の大過剰を追加し、混合物を15分撹拌し、続いて[IrCl(f
2ppy)]
2(0.5mmol)を追加した。そして、溶液をN
2の下で一晩還流させた。室温まで冷却後、固体を真空濾過によって除去し、ジクロロメタン(3×100mL)で洗浄した。そして、回収された濾液を、減圧下での乾燥に対して蒸発させた。そして、粗生成物を、ジクロロメタン/ヘキサン(9:1)を溶離液として使用して、シリカゲルカラムに通し、最初の橙色の部分を回収した。最初の橙色の留分からの溶媒を、減圧下での乾燥に対して蒸発させた。純粋な生成物を、メタノール(CH
3OH)で沈殿させ、濾過によって回収し、CH
3OHで洗浄し、空気乾燥させた。赤色の固体の0.55g(70%収率)を回収した。生成物をさらに、290℃−230℃−160℃の勾配温度帯における真空(10
−5torr)下で、勾配昇華によって精製した。
【0161】
室温(四角)および77K(丸)における、N
2の下でのジクロロメタン溶液中のIrDPの吸光スペクトル(黒シンボル)および発光スペクトル(白シンボル)を、
図13Aに示す。
図13Bは、IrDPのサイクリックボルタンメトリー図(スキャンレート100mV/s)を示す。
図13Cは、500nmにおける励起の下でのC
60膜(四角)およびIrDP膜(三角)の吸光(黒シンボル)と、IrDPの発光(白シンボル)とを示す。
【0162】
(実施例3)
固体状態における、ZClからC
60へのエネルギー移動を観察するために、異なる体積比率のZClを用いた混合C
60:ZCl膜のフォトルミネッセンス(PL)を、517nmにおける励起の下で測定した。結果を、
図14Aに示す。ZCLの量が増加するにつれて、膜のPL強度もまた増加し、ZCl感光体からC
60への効率のよいエネルギー移動を確認した。フェルスターエネルギー移動のメカニズムを、
図14Bに示す。
【0163】
混合C
60:ZCl膜を、以下の構造を有する二つの他の亜鉛ジピリン誘導体であるZHおよびZMeとそれぞれ混合されたC
60の膜と比較した。
【0165】
ZHおよびZMeは、ZClと同様の一重項および三重項エネルギーを有するが、一方でより低い酸化電位を有する。C
60をZHおよびZMeと混合する際、電荷移動(CT)状態のZH
+C
60−およびZMe
+C
60−を形成する光励起において、ZHおよびZMeからC
60への電子移動がそれぞれ発生する。これらのCT状態からの発光は拡大特性を有し、より低い酸化電位は、CT状態からのレッドシフト、およびより広域の発光帯をもたらす。
【0166】
(実施例4)
共通のN,N’−ジ−[(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル]−1,1’−ビフェニル)4,4’−ジアミン(NPD)ドナー層を有し、可視光を吸光しない有機PVデバイスにおいて、異なる感光体をC
60アクセプタと混合した。純C
60膜を有する基準デバイスを、混合C
60:感光体の層を有するデバイスと比較するために使用した。感光体デバイスにおいて、混合アクセプタ層を、C
60の薄膜の間に挟んだ。このようなデバイスの構造では、ドナー−アクセプタ(DA)接合面におけるC
60およびNPDの間に、電荷分離が発生する。感光体およびドナー層の間の直接的な接触を妨げ、感光化効果の観察を可能にした。基準デバイスおよび感光体試験デバイスの概略図を、
図15に示す。
【0167】
ZCl、IrDP、F
12SubPcおよびヘキサクロロホウ素サブフタロシアニン(Cl
6SubPc)の感光体を使用するデバイスの、擬似1sun、AM1.5G照射の下での電流−電圧(J−V)特性、および外部量子効率(EQE)の測定結果を、
図16、17、18および19にそれぞれ示す。F
12SubPcの構造は、以下の通りである。
【0169】
デバイスの短絡回路電流(J
SC)、開回路電圧(V
OC)および曲線因子(FF)を含むデバイス特性は、基準デバイスに類似する。各感光体デバイスのEQEカーブが示すように、自身の吸光スペクトルに十分に一致する、ZClにおける550nm、IrDPにおける500nm、F
12SubPcおよびCl
6SubPcにおける約600nmという様々な波長において、全ての感光体について光反応が観察された。これは、感光体によって吸収されるエネルギーが、効率良くC
60に伝達されていることを明確に示しており、DA接合面における電荷分離をさらに発生させる。他方では、混合アクセプタ層デバイスにおいて、C
60からの光反応は減少した。感光体から増加された光反応は、C
60の光反応における減少によって相殺され、混合アクセプタデバイスにおいて、基準デバイスと比較して、光電流が変化しないという結果になった。結果を、
図20にまとめる。
【0170】
(実施例5)
C
60の光反応を増加するために、デバイスの構造を試験した。
図21Aに示すように、純C
60層の上部に(C
60:ZClが1:1の)混合アクセプタ層を用いて、デバイスを作製し、層は様々な厚さを有した。全てのデバイスにおいて、ZClからの光反応を観察した。結果を、
図21Bおよび
図21Cに示す。DA接合面においてC
60の比較的厚い層を有するデバイス(D2、D3およびD4)は、基準デバイスと比較して増加された光電流を示し、一方で、薄いC
60層を有する、またはC
60層を有さないデバイスは、C
60の光反応の減少により、より低い光電流を示した。C
60アクセプタにZClを混合することは、V
OCおよびFFなどの、デバイスの他の特性には影響を及ぼさなかった。このように、C
60の比較的厚い層は、C
60からの光反応を維持するために、DA接合面に設置されてもよい。
【0171】
(実施例6)
DA接合面において15nmおよび25nmのC
60膜をそれぞれ有する混合アクセプタデバイスを、混合アクセプタ層(C
60:ZCl)の厚さを変化させることによって、さらに最適化した。デバイスの構造および結果を、
図22Aおよび
図22Bに示す。C
60:ZCl層の厚さは、主にJ
SCに影響し、一方で、V
OCおよびFFは変化しないままであった。C
60:ZCl層の最適な厚さは、両方のデバイスに対して、50nmであった。最適なデバイスでは、光電流が、基準デバイスと比較して最大33%増加した。これらの結果を、
図22Cにまとめる。
【0172】
(実施例7)
C
60:ZClアクセプタ層デバイスを、スクアラインをドナー層として使用して作製した。スクアライン構造であるデバイスの構造および結果を、
図23A、
図23Bおよび
図23Cにそれぞれ示す。基準デバイス(D1)では、EQEにおけるディップを、550nmにおいて観察した。ZClをアクセプタ感光体として使用すると(デバイスD2)、ディップを埋め、光電流において1mA/cm
2の増加をもたらす。これらの結果を、
図23Dにまとめる。
【0173】
(実施例8)
C
60アクセプタと混合された複数の感光体を用いて、デバイスを作製した。亜鉛クロロジピリン(ZCl)およびヘキサクロロホウ素サブフタロシアニン(Cl
6SubPc)の二つのエネルギー感光体を、太陽スペクトルの可視部分において光子を取り入れ、C
60にエネルギーを伝達するために使用した。
【0174】
図24Aにおいて、AM1.5G太陽スペクトルを、活性材料の薄膜吸光スペクトルと比較する。薄膜の吸光係数を、角度可変分光エリプソメトリーによって測定された光学定数から計算した。薄膜における定常状態の発光の測定および解析を、Photon Technology International製QuantaMasterモデルC−60SEの蛍光分光計を使用して行った。C
60は、電荷移動遷移によるλ=400nm〜550nm間における許容遷移および他の特徴により、UV範囲において強い吸光を示す。C
60の吸光は、青スペクトルにおいて最も強く、一方で、その一重項エネルギーは赤において最も強い。ZClは、λ=450nm〜575nm間において非常に強い吸光を有し、Cl
6SubPcは、λ=500nm〜650nm間において吸光する。混合C
60:ZCl:Cl
6SubPc(体積比2:1:1)の薄膜は、3つの構成要素の全てからの寄与を示し、λ=500nm〜625nm間において、純C
60よりかなり大きい吸光度を有する。近赤外線(NIR)を吸光するドナーのDSPQは、λ=600nm〜800nm間において吸光する。共積層された薄膜の吸光と併用されたドナーの吸光は、UVからNIRにおける、感光化されたデバイスの吸光を拡大するはずである。
【0175】
C
60の吸光スペクトルと共に、ZClおよびCl
6SubPcの正規化された発光スペクトルを、
図24Bに示す。薄膜における定常状態の発光の測定および解析を、Photon Technology International社製のQuantaMasterモデルC−60SEの蛍光分光計を使用して行った。ZClはλ=545nm〜600nm間において発光し、Cl
6SubPcはλ=600nm〜700nm間において発光する。
図24から明らかなように、感光体の発光とC
60の吸光との間で、かなりのスペクトルの重複がある。
【0176】
ZCl、Cl
6SubPcおよびC
60の還元電位、ならびに一重項および三重項エネルギーを、
図25に示す。
図25における矢印は、ZClおよびCl
6SubPcからC
60へのエネルギー移動経路のための図を描く。ZClおよびCl
6SubPcの一重項および三重項エネルギーはC
60のそれ以上であるため、ZClおよびCl
6SubPcの両方が感光体として機能するはずであり、感光体において発生する任意の励起子はC
60に移動され、感光体において捕らえられないことを確実にする。さらに、感光体の還元電位はC
60のそれよりも低く、電子がC
60を介して導通することを確実にする。
【0177】
層状のOPVデバイスを、デバイスの性能に対する感光化の影響を説明するために作製した。2mmのストライプ状にパターニングされた150nmのインジウムスズ酸化物を有するガラス基板上に、デバイスを生成した。前述のように、積層の前に、基板を界面活性剤および一連の溶媒で洗浄し、高真空チャンバー(ベース圧力<10
−6torr)の内部に投入する直前に、10分間オゾン雰囲気に露出した。MoO
3を、0.02nm/sで熱的に蒸発させた。そして、クロロホルム中の1.5mg/ml溶液から、4−ビス[4−(N,N−ジフェニルアミノ)−2,6−ジヒドロキシフェニル]スクアライン(DPSQ)膜をスピンコートしたチャンバーから、サンプルのサブセットを除去した。N,N’−ジ−[(1−ナフチル)−N,N’ジフェニル]−1,1’ビフェニル)−4,4’−ジアミン(NPD)を、0.1nm/sで熱的に蒸発させたチャンバーに、残りのサンプルを残した。次に、C
60を、0.1nm/sで熱的に蒸発させた。
【0178】
感光化されたデバイスは、C
60(0.05nm/s):ZCl(0.025nm/s):Cl
6SubPc(0.025nm/s)で積層されたC
60:ZCl:Cl
6SubPcを、後に混合したものを含んだ。全てのデバイスを、0.1nm/sで積層された10nmのBCPで構成される、バッファ層で覆った。最後に、100nmの厚さのAlのカソードを、0.04cm
2のデバイス面積の輪郭を示す2mmのスリットを有するシャドーマスクを通して、0.2nm/sで積層した。電流密度対電圧(J−V)特性を、暗闇内、およびフィルター処理された300WのXeランプからの疑似AM1.5G太陽照射の下で測定した。J−V測定を、カソードによって定義された面積よりも大きい照射面積で実施した。国立再生可能エネルギー研究所において校正されたシリコンフォトダイオードを使用して、所定のスペクトル不整合補正を行った。全てのEQEおよびスペクトルの不整合補正測定を実施するために、Cornerstone 260 1/4 M double gratingモノクロメーター(Newport製74125)からの、三角波にされフィルター処理された単色光(250Hz、100nm半値全幅)を、EG&G製7220ロックインアンプと併用した。EQE測定を、カソードによって定義された面積よりも小さい照射面積で実施した。
【0179】
デバイスの構造を、
図26Aに示す。ドナー/アクセプタ(D/A)接合面に到達する全ての励起子を、C
60を通して輸送したことを確実にするために、そして、電荷分離および再結合の動力学または熱力学における任意の変化を除外するために、C
60の純層を、感光化された層およびD/A接合面の間に設置した。アクセプタ層において感光体からはっきりとした光反応を示すための制御として、幅広いエネルギーギャップのドナーであるNPDを使用した。DPSQをドナーとして使用した、デバイスも作製した。デバイスの電流−電圧(J−V)および外部量子効率(EQE)特性を
図26Bに示し、性能パラメーターを
図26Cにまとめる。NPDの感光化された、および感光化されていないデバイスの開回路電圧(V
oc)は、0.87Vで変化しないままであり、D/A接合面の維持が、その所望の効果を達成したことを示した。感光化されていない、および感光化されたデバイスの両方について、デバイスの曲線因子(FF)は、それぞれ0.47および0.49であった。光反応は、3.0mA/cm
2の短絡回路電流(J
sc)(NPD)から4.3mA/cm
2(NPD(s))に増加した。EQEは、感光化されたデバイスにおいて、反応の増加がZClおよびCl
6SubPcの吸光の両方に起因したことを明らかにした。ZClの寄与は、λ=500nm〜575nm間において明らかであり、一方で、Cl
6SubPcの信号は、λ=575nm〜650nm間において見られた。J
scの増加と組み合わせられた、変化しないV
OC、およびFFにおけるわずかな増加は、感光化における1.25%(NPD)から1.81%(NPD(s))への電力変換効率(η
p)の増加をもたらした。
【0180】
NIRを吸光するドナーの継続的な開発は、フラーレンを含むデバイスの吸光におけるギャップを引き起こしてきた。これは、C
60の光反応がλ=500nmで次第に弱まり、さらにDPSQの光反応がλ=700nm〜800nm間で最も強くなるC
60/DPSQのデバイスの特徴である、EQEの落ち込みの原因となる。感光化されたDPSQデバイス(DPSQ(s))のV
OCは、0.92Vから0.93Vにわずかに増加した(
図26Bおよび
図26C)。感光化されていない、および感光化されたデバイスのFFは、それぞれ0.63および0.59であった。感光化は、DPSQおよびDPSQ(s)について、J
SC=6.5mA/cm
2から8.6mA/cm
2への光電流の著しい増加をそれぞれもたらした。EQEは、反応における増加が、ZClおよびCl
6SubPcの両方の感光化に起因したことを明らかにした。ZClの増加は、λ=500nm〜575nm間において明らかであり、一方で、Cl
6SubPcの信号は、λ=575nm〜650nm間において見られた。感光体は、吸光における落ち込みを完全に埋め、3.8%から4.7%に著しく増加されたη
pをもたらした。最終的なデバイスは、λ=350nm〜800nmで20%を超えるEQEを伴い、広帯域のスペクトル範囲を有した。
【0181】
(実施例9)
層状のOPVデバイスを、デバイスの性能に対するドナー感光化の影響を説明するために作製した。デバイスにおいて、スクアラインのドナーがSubPcと共に感光化された。作製されたデバイスの構造を、
図27Aに示す。デバイスの電流−電圧(J−V)および外部量子効率(EQE)特性を
図27Bに示し、性能パラメーターを下の表にまとめる。デバイスの開回路電圧(V
OC)は、SubPc感光体を含めることで、0.68Vから0.93Vに増加した。曲線因子(FF)は、両方のデバイスについて、それぞれ0.49で変化しないままであった。光反応もまた、J
SCが6.2mA/cm
2で変化しないままであった。EQEは、感光化されたデバイスにおいて、反応がSubPcおよびSqの吸光の両方に起因したことを明らかにした。SubPcの寄与は、λ=500nm〜650nm間において明らかであった。V
OCの増加と組み合わせられた、変化しないJ
SCおよびFFは、感光化における2.1%(Sq)から2.8%(Sq:SubPc)への電力変換効率(η
p)の増加をもたらした。