特許第6342933号(P6342933)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6342933
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】操作レバー
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/56 20060101AFI20180604BHJP
   G05G 1/00 20080401ALI20180604BHJP
   G05G 1/04 20060101ALI20180604BHJP
   G05G 5/05 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
   B66C13/56
   G05G1/00 E
   G05G1/04 Z
   G05G5/05
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-50118(P2016-50118)
(22)【出願日】2016年3月14日
(65)【公開番号】特開2017-165512(P2017-165512A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2017年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(72)【発明者】
【氏名】渥美 雅士
【審査官】 今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】 実開平1−065291(JP,U)
【文献】 実開昭50−115341(JP,U)
【文献】 実開昭62−164290(JP,U)
【文献】 特開昭63−239327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/56
G05G 1/00 − 13/02
G05G 25/00 − 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の回動軸線を中心として回動可能な基台と、
当該基台に設けられ、当該基台を上記回動軸線を中心として回動させるハンドルと、
操作対象が接続されると共に、所定の中立位置を基準として上記回動軸線に直交するスライド方向に沿って往復移動可能な状態で上記基台に支持されたスライド板と、
当該スライド板の往復移動を案内する案内板と、
上記基台と上記案内板との間に配置されると共に上記スライド板に係合され、上記スライド板が上記中立位置からスライドしたときに当該中立位置に復帰させるように当該スライド板を付勢する弾性部材とを備えた操作レバー。
【請求項2】
上記スライド方向に沿って対向する一対のシート面が上記基台及び案内板に形成されており、上記スライド板が上記中立位置にある状態で上記弾性部材が上記一対のシート面に保持されており、
上記スライド板は、上記スライド方向に沿って対向する一対の係合部を有し、
一方の係合部は、上記スライド板が上記スライド方向一方側にスライドしたときに上記案内板のシート面に代わって上記弾性部材と係合し当該弾性部材を上記基台のシート面との間で挟持するように形成され、
他方の係合部は、上記スライド板が上記スライド方向他方側にスライドしたときに上記基台のシート面に代わって上記弾性部材と係合し当該弾性部材を上記案内板のシート面との間で挟持するように形成されている請求項1に記載の操作レバー。
【請求項3】
上記基台のシート面は、上記スライド方向と直交する壁部からなると共に当該壁部は、上記スライド板がスライド可能に嵌合され且つ上記弾性部材の挿通を規制する貫通孔を有しており、
上記案内板は、一対の辺部を有し、上記基台と上記ハンドルとの間に架設された山型部材からなると共に当該案内板のシート面は、上記壁部と対向配置された一方の辺部からなり、当該一方の辺部は、上記スライド板がスライド可能に嵌合され且つ上記弾性部材の挿通を規制する貫通孔を有している請求項2に記載の操作レバー。
【請求項4】
上記スライド板の中央に上記回動軸線に沿う方向に貫通する開口が設けられ、当該開口の内周面のうち上記スライド方向に沿って対向する部位に上記一対の係合部が形成されており、
上記弾性部材は、上記開口に配置されている請求項2又は3に記載の操作レバー。
【請求項5】
上記弾性部材は、所定の内径を有するコイルバネであり、
上記スライド材はフラットバーからなり、上記開口は矩形を呈すると共に上記一対の係合部は上記コイルバネに挿入される突片である請求項4に記載の操作レバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両搭載用クレーンその他の作業装置の操作レバーに関し、特にオーバーストローク機能を備える操作レバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両搭載用クレーンは油圧駆動される。ブームの伸縮・起伏などの操作は、油圧制御弁の切替により行われる。そのため、車両搭載用クレーンは、オペレータが油圧制御弁を操作するための操作レバーを備えている。このような操作レバーの中には、オーバーストローク機能を備えるものがある(たとえば特許文献1)。オーバーストローク機能を備える操作レバーは、ノーマルストローク及びオーバーストロークの2つのモードを有している。
【0003】
ノーマルストロークモードは、油圧切替弁のスプールが中立位置にある状態からストロークエンドに到達するまでの操作レバーの操作に対応する。オーバーストロークモードは、上記スプールがストロークエンドに到達した状態から、さらに操作レバーが移動されたときの当該操作レバーの操作に対応する。ノーマルストロークモードにおいては、ブームの伸縮・起伏などの動作方向の切替及び動作速度の変更が操作レバーの操作により行われる。一方、オーバーストロークモードにおいては、動作速度の変更のみが操作レバーの操作で行われる。
【0004】
図13は、従来のオーバーストローク機能を備える操作レバー101を示す図である。
【0005】
この操作レバー101は、レバー基台103(「フォーク」とも称される。)、ハンドル112並びにモード切替機構115を備えており、このモード切替機構115を介して前述のオーバーストローク機能が発揮される。レバー基台103は、回動軸113に支持されており、ハンドル112が矢印116、117の向きに操作されることによって回動軸113を中心にして回動する。すなわち、ハンドル112が矢印116、117の向きへ操作されることによって、油圧制御弁のスプール102がそれぞれ矢印118、119の向きにスライドされる。このスプール102のスライド方向が、ブームの伸縮・起伏などを行う油圧アクチュエータの動作方向を決定する。ハンドル112の操作によって上記スプール102のスライド量が調整され、当該スライド量によって上記油圧アクチュエータの動作速度が決定される。
【0006】
ノーマルストロークモードにおいてハンドル112が操作されると、前述のようにスプール102がスライドする。スプール102がストークエンドに達したときに、さらにハンドル112が同方向に操作されると、操作レバー101がオーバーストロークされ(このとき、オーバーストロークモードに切り替わる)、スプール102がストロークエンドの状態に維持されたままレバー基台103のみが回動される。当該モードにおけるレバー基台103の回動量は、所定のリンク機構を介してエンジンスロットルの開度に対応されている。つまり、油圧ポンプの吐出量が調整され、上記油圧アクチュエータの動作速度が調整される。
【0007】
このように、オーバーストローク機能を備えた操作レバーは、操作レバーの単一の操作でブームの動作方向の制御ならず、動作速度を広範囲にわたって制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実公平3−025210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図13が示すように、上記モード切替機構115は、スプール102に連結された軸104、ハンドル112が取り付けられた筒状ケース110、スプリング106及びスプリングシート107,108、カラー109、筒状ケース110をスプリングシート108及びハンドル112と共に軸104に締結するボルト111、並びに筒状ケース110の端部を閉塞する蓋105を備えている。軸104は、一端が油圧制御弁のスプール102に連結され、他端がスプリングシート107に当接している。スプリング106の弾性力は、スプリングシート107,108を介して軸104に付加され、軸104は、常時筒状ケース110から外方に(同図において左側に)突出するように付勢されている。
【0010】
図14及び図15は、操作レバー101の拡大図であって、オーバーストロークモードにおける動作を示している。
【0011】
ハンドル112が矢印117の向きに操作され、スプール102がストロークエンドに達した状態で(図14(A)参照)、さらに同向きにハンドル112が操作されると(オーバーストロークされると)、同図(B)が示すように、軸104に押されてスプリング106が撓み、軸104がハンドル112側へスライドする。これにより、スプール102が移動されることなく、図14(A)に示される位置から図14(B)に示される位置までレバー基台103が回動される。ハンドル112が矢印116の向きに操作される場合も同様であり、スプール102がストロークエンドに達したまま移動されることなく、図15(A)に示される位置から図15(B)に示される位置までレバー基台103が回動される。
【0012】
ところで、この操作レバー101を構成する部品のうち、スプリングシート107,108及び筒状ケース110は絞り加工によって製造され、軸104及びカラー109は旋盤加工によって製造される。したがって、これらの部品の加工コストが高くなると共に、部品点数が多くなるために組立工数が増える。つまり、操作レバー101の製造コストが増大するばかりか、メンテナンスも容易でない。
【0013】
本発明は、かかる背景のもとになされたものであって、その目的は、簡単且つメンテナンスが容易な構造でオーバーストローク機能を備えた安価な操作レバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1) 本発明に係る操作レバーは、所定の回動軸線を中心として回動可能な基台と、当該基台に設けられ、当該基台を上記回動軸線を中心として回動させるハンドルと、操作対象が接続されると共に、所定の中立位置を基準として上記回動軸線に直交するスライド方向に沿って往復移動可能な状態で上記基台に支持されたスライド板と、当該スライド板の往復移動を案内する案内板と、上記基台と上記案内板との間に配置されると共に上記スライド板に係合され、上記スライド板が上記中立位置からスライドしたときに当該中立位置に復帰させるように当該スライド板を付勢する弾性部材とを備える。
【0015】
この構成によれば、基台に対してスライド板が支持されており、このスライド板は、案内板にサポートされつつ上記スライド方向へスライド可能である。そして、弾性部材が上記基台と上記案内板との間に配置されていることから、上記中立位置における弾性部材の弾性力に抗して上記スライド板が上記中立位置から変位した場合に、当該弾性部材は、当該スライド板を上記中立位置に復帰させるように弾性付勢する。
【0016】
さて、ハンドルが操作されると、基台が上記回動軸線を中心とするトルクを受ける。上記スライド板に操作対象(典型的には油圧制御弁のスプール)が連結されているから、当該操作対象から上記スライド板に上記トルクに対応した外力が作用する。この外力の大きさが、上記中立位置において弾性部材が発揮する弾性力よりも小さい場合、上記スライド板は上記中立位置から変位することなく上記スプールのみがスライドされる。すなわち、この場合、操作レバーの操作モードは、ノーマルストロークモードに相当する。また、上記外力の大きさが、上記中立位置において弾性部材が発揮する弾性力よりも大きい場合(典型的には、操作対象としてのスプールがストロークエンドに達した状態で、さらに上記ハンドルが大きな力で操作された場合)、上記スライド板が変位し、相対的に上記基台がさらに回動する。上記ハンドルへの操作力が小さくなると、上記スプールはストロークエンドの状態のままで、上記弾性部材の弾性力によって上記スライド板が中立位置へ復帰する。すなわち、この場合、操作レバーの操作モードは、オーバーストロークモードに相当する。
【0017】
このように、上記基台の一部と、スライド板と、案内板と、弾性部材のみで当該操作レバーがオーバーストローク機能を発揮する構造が実現されている。しかも、弾性部材は特別な構造が要求されるものではないし、スライド板及び案内板も同様である。したがって、これら部品の製造に、従来のような絞り加工や旋盤加工その他機械加工を必要としないし、操作レバーの部品点数も従来に比べて削減される。
【0018】
(2) 上記スライド方向に沿って対向する一対のシート面が上記基台及び案内板に形成されており、上記スライド板が上記中立位置にある状態で上記弾性部材が上記一対のシート面に保持されていてもよい。上記スライド板は、上記スライド方向に沿って対向する一対の係合部を有し、一方の係合部は、上記スライド板が上記スライド方向一方側にスライドしたときに上記案内板のシート面に代わって上記弾性部材と係合し当該弾性部材を上記基台のシート面との間で挟持するように形成され、他方の係合部は、上記スライド板が上記スライド方向他方側にスライドしたときに上記基台のシート面に代わって上記弾性部材と係合し当該弾性部材を上記案内板のシート面との間で挟持するように形成されているのが好ましい。
【0019】
この構成によれば、上記スライド板が中立位置にあるとき、上記弾性部材は、上記基台のシート面と案内板のシート面との間で保持される。これらシート面は、上記基台及び案内板の一部により構成されるので、弾性部材を保持するために特別の部品を要しない。前述のオーバーストロークモードにおいて上記スライド板がスライドされるが、このとき、上記弾性部材は、上記基台のシート面と上記スライド板の他方の係合部との間あるいは上記スライド板の一方の係合部と案内板のシート面との間で挟み込まれ、上記弾性力を発揮し、上記スライド板を上記中立位置へ復帰させようとする。
【0020】
(3) 上記基台のシート面は、上記スライド方向と直交する壁部からなると共に当該壁部は、上記スライド板がスライド可能に嵌合され且つ上記弾性部材の挿通を規制する貫通孔を有しているのが好ましい。上記案内板は、一対の辺部を有し、上記基台と上記ハンドルとの間に架設された山型部材からなると共に当該案内板のシート面は、上記壁部と対向配置された一方の辺部からなり、当該一方の辺部は、上記スライド板がスライド可能に嵌合され且つ上記弾性部材の挿通を規制する貫通孔を有しているのが好ましい。
【0021】
この構成では、上記基台のシート面は当該基台の壁部から構成され、上記案内板が汎用品として使用される山型部材から構成されると共に当該案内板のシート面は、この山型部材の一方の辺部から構成される。つまり、案内板も簡単な部材から構成される。しかも、上記一対のシート面に貫通孔が形成されることにより、上記スライド板が上記スライド方向にスライド自在に保持される。つまり、簡単な構造でスライド板が支持される。
【0022】
(4) 上記スライド板の中央に上記回動軸線に沿う方向に貫通する開口が設けられ、当該開口の内周面のうち上記スライド方向に沿って対向する部位に上記一対の係合部が形成されているのが好ましい。上記弾性部材は、上記開口に配置されているのが好ましい。
【0023】
この構成では、上記基台と案内板との間に介在された弾性部材が、上記スライド板の中に配置されることになり、上記基台、スライド板、案内板及び弾性部材がコンパクトにレイアウトされる。しかも、このレイアウトは、上記スライド板に設けられた開口内に上記弾性部材が配置されることにより、きわめて簡単に実現される。
【0024】
(5) 上記弾性部材は、所定の内径を有するコイルバネであるのが好ましい。上記スライド材はフラットバーからなり、上記開口は矩形を呈すると共に上記一対の係合部は上記コイルバネに挿入される突片であるのが好ましい。
【0025】
この構成では、上記弾性部材もスライド板も、材料として汎用品が採用され得る。しかも、上記弾性部材としてのコイルバネは、上記スライド板に設けられた一対の突片により支持されるので、簡単且つ確実にコイルバネが上記中立位置に保持されるし、上記スライド板がスライドした場合であっても、上記コイルバネは安定して弾性変形をすることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、操作レバーの部品点数が削減されると共に、各部品が絞り加工又は旋盤加工を用いずに製造できる。したがって、簡単且つメンテナンスが容易な構造でオーバーストローク機能を備えた安価な操作レバーが提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本実施形態に係る操作レバー装置30を備えた車両搭載型クレーン10の側面図である。
図2図2は、操作レバー装置30を備えた車両搭載型クレーン10の背面図である。
図3図3は、操作レバー装置30を示す正面図である。
図4図4は、操作レバー装置30における積層状態の操作レバーを示す斜視図である。
図5図5は、水平に回動操作される操作レバー31の動作を説明するための平面図である。
図6図6は、操作レバー31を示す斜視図である。
図7図7は、フォーク32を示す図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。
図8図8は、カバー62を示す図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。
図9図9は、スライド板63を示す平面図である。
図10図10は、モード切替機構61の拡大図であり、(A)はスライド板63が右方に移動した状態、(B)はスライド板63が中立位置にある状態、(C)はスライド板63が左方に移動した状態を示す。
図11図11は、オーバーストロークモードを説明する図であり、(A)は回動についてニュートラルな状態、(B)はスプール押動作においてスプール36がスプールエンドにある状態、(C)はスプール押動作におけるオーバーストロークの状態を示す。
図12図12は、オーバーストロークモードを説明する図であり、(A)は回動についてニュートラルな状態、(B)はスプール引動作においてスプール36がスプールエンドにある状態、(C)はスプール引動作におけるオーバーストロークの状態を示す。
図13図13は、従来技術におけるモード切替機構115を備える操作レバー101を示す平面図である。
図14図14は、従来技術におけるオーバーストロークモードを説明する図であり、(A)はスプール押動作においてスプール102がスプールエンドにある状態、(B)はスプール押動作におけるオーバーストロークの状態を示す。
図15図15は、従来技術におけるオーバーストロークモードを説明する図であり、(A)はスプール引動作においてスプール102がスプールエンドにある状態、(B)はスプール引動作におけるオーバーストロークの状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の好ましい実施形態が、適宜図面が参照されつつ説明される。なお、本実施形態は、本発明の一態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様が変更されてもよいことは言うまでもない。
【0029】
[車両搭載型クレーン10]
【0030】
図1及び図2は、車両搭載型クレーン10の左側面図及び背面図である。
【0031】
この車両搭載型クレーン10は、作業車両に架装され、当該作業車両のエンジンを駆動源とする油圧機構により駆動される。図1において、参照符合8で示される方向が車両搭載型クレーン10が搭載された作業車両の走行方向であり、当該方向が前後方向8と定義される。また、参照符合7で示される方向が上下方向7(一般に鉛直方向)と定義され、当該上下方向7及び前後方向8と直交する方向が左右方向9と定義される。
【0032】
本実施形態に係る車両搭載型クレーン10は、メインビーム11と、ジャッキ12と、旋回台13と、旋回ポスト14と、ブーム15と、起伏シリンダ16と、ウインチ17と、ワイヤロープ18と、フック19とを主に備える。
【0033】
車両搭載型クレーン10は、メインビーム11が上記作業車両のフレーム上に固定されている。断面が矩形の箱状に形成されたメインビーム11内には、左右方向9に延びるスライドビームが配置され、スライドビームに支持されたジャッキ12が伸長し接地することにより、車両の安定が確保される。旋回台13は、メインビーム11に設けられ、上下方向7に沿う回動中心軸の周りに回転可能となっている。旋回ポスト14は、旋回台13に立設されており、旋回台13と一体になって回転する。ブーム15は、旋回ポスト14の上端に設けられている。ブーム15の基端部15Aが旋回ポスト14に起伏中心ピンを介して連結されており、起伏動作が可能となっている。
【0034】
ブーム15は、ベースブーム21、中間ブーム22及びトップブーム23を備えている。中間ブーム22及びトップブーム23は、ベースブーム21内に入れ子式に格納される。これにより、ブーム15は伸縮可能に構成されている。起伏シリンダ16は、ブーム15を起伏させるためのものである。ブーム15は伸縮シリンダを内蔵しており、伸縮シリンダが伸縮することによりブーム15が伸縮する。ウインチ17は、旋回ポスト14の内部に設けられている。ウインチ17は、ワイヤロープ18を繰り出し又は繰り込みするものである。ワイヤロープ18は、ブーム15の先端部15Bに巻き掛けられて垂下しており、その先端にフック19が設けられている。ウインチ17が所定方向に回転されることにより、ワイヤロープ18がウインチ17に巻き込まれ、フック19が上昇する。ウインチ17が反所定方向に回転されることにより、ワイヤロープ18がウインチ17から繰り出され、フック19が下降する。
【0035】
[操作レバー装置30]
【0036】
図3は、操作レバー装置30を示す正面図であり、図4は、操作レバー装置30における積層状態の操作レバー31を示す斜視図であり、図5は、水平に回動操作される操作レバー31の動作を説明するための平面図である。
【0037】
車両搭載型クレーン10は、油圧回路により油圧駆動され、この油圧回路を操作するための操作レバー装置30を備えている。操作レバー装置30は、ブーム15の伸縮、ブーム15の起伏、ウインチ17の回転、旋回台13の旋回、ジャッキ12の伸縮を操作するためのものである。操作レバー装置30は、ブーム伸縮操作レバー31Aと、ブーム起伏操作レバー31Bと、ウインチ操作レバー31Cと、旋回操作レバー31Dと、ジャッキ操作レバー31E,31Fとを備え、総称して操作レバー31と称することがある。
【0038】
図3に示されるように、上記各操作に対応する操作レバー31は、それぞれ車両搭載型クレーン10の左右両側に一本ずつ備えられている。操作レバー31の基端部56(図5参照)に、後述するフォーク32(特許請求の範囲に記載された「基台」に相当)が備えられている(図4参照)。フォーク32は、上下方向7に延びる回動軸33(特許請求の範囲に記載された「所定の回動軸線」に相当)に回動可能に備えられている。左右に配置された一対のフォーク32は、ロッド34により連結され(図5参照)、一方の操作レバー31が回動操作されると、対応する他方の操作レバー31が連動して回動する。これにより、オペレータは、車両の左右どちら側からでも操作可能になっている。
【0039】
[油圧制御弁35]
【0040】
図3に示されるように、操作レバー装置30は、各操作レバー31A,31B,31C,31D,31E,31Fに対応する油圧回路の油圧制御弁35を備えている。図5に示されるように、油圧制御弁35は、左右方向9に延び、同方向にスライドするスプール36を内蔵している。各スプール36の端部は、各操作レバー31のフォーク32に支持されたスライド板63(後述の図6参照)に連結ピン37を介して連結されている。そのため、操作レバー31がオペレータにより回動操作されると、フォーク32が回動軸33を中心に回動され、スプール36が左方又は右方に直線移動される。その結果、油圧制御弁35が切り換えられる。
【0041】
[操作レバー31]
【0042】
図6は、操作レバー31を示す斜視図であり、図7は、フォーク32の形状を示す図であり、図8は、カバー62の形状を示す図であり、図9は、スライド板63の形状を示す図である。
【0043】
図6に示されるように、操作レバー31は、フォーク32と、ハンドル41と、カバー62(特許請求の範囲に記載された「案内板」に相当)と、スライド板63と、コイルバネ64(特許請求の範囲に記載された「弾性部材」に相当)とを備える。以下の操作レバー31の説明には、車両の左側に備えられる操作レバー31がニュートラルな位置にある状態(回動操作されていない状態)を前提とする。
【0044】
[ハンドル41]
【0045】
図6に示されるように、ハンドル41は、本実施形態では丸棒からなり、基端部56から左方に延びて途中で屈曲して所定方向、例えば左斜め上方に延びている。ハンドル41の把持部55(基端部56の反対の端部)に、図5に示されるように把手57が取り付けられていてもよい。把手57の形状は、オペレータがハンドル41の把持部55を把持しやすいように形成されている。
【0046】
[フォーク32]
【0047】
図7に示されるように、フォーク32は、上板44と、下板45と、側板46とを備え、断面形状は略C字状である。上板44、下板45及び側板46は、一体的に形成されている。上板44は、右端の中央部が左方に台形状に切り欠かれた形状を呈する。下板45は、上板44と間隔を空けて上板44の下方に位置する。側板46は、同図(B)が示すように略矩形状を呈し、上板44の端縁47と下板45の端縁(不図示)との間に架け渡されている。
【0048】
フォーク32は、回動軸挿通孔51と、ハンドル挿通孔53と、スライド孔54(特許請求の範囲に記載された「貫通孔」に相当)とを備える。回動軸挿通孔51は、円形の孔であり、上下方向7に沿って上板44及び下板45を貫通している。回動軸挿通孔51に上記回動軸33(図3図5参照)が挿通される。これにより、フォーク32は、回動軸33を中心にして当該回動軸33と直交する平面に沿って回動可能である。ハンドル挿通孔53は、円形の孔であり、側板46を左右方向9に貫通している。図6に示されるように、ハンドル41の基端部56が左方からハンドル挿通孔53(図7参照)に嵌入されて溶接される。これにより、ハンドル41がフォーク32に固定される。図7に示されるように、スライド孔54は、前後方向8に延びる細長矩形状を呈する。スライド孔54は、側板46を左右方向9に貫通している。スライド孔54については、後に詳述される。
【0049】
[モード切替機構61]
【0050】
図6に示されるように、操作レバー31は、モード切替機構61を備える。このモード切替機構61により、操作レバー31の操作モードがノーマルストロークモード及びオーバーストロークモードのいずれかに切り替わる。モード切替機構61は、カバー62と、スライド板63と、コイルバネ64とにより構成される。
【0051】
カバー62は、フォーク32の側板46とハンドル41との間に掛け渡されている。図6及び図8に示されるように、カバー62は、細長の板状部材が直角に折り曲げられて形成された山型部材である。カバー62は、左右方向9に延びる第1板部65と、前後方向8に延びる第2板部66とからなる。図6に示されるように、第1板部65の右端縁67は、フォーク32の側板46の左面68(特許請求の範囲に記載された「壁部」及び「シート面」に相当)に接続されている。図8に示されるように、第2板部66の後端部は、左右方向9に貫通する貫通孔71を有している。図6に示されるように、ハンドル41の基端部56は、カバー62の貫通孔71内に挿通されている。ハンドル41の基端部56と貫通孔71とは、例えば溶接により固着されている。図8に示されるように、第2板部66は、左右方向9に貫通するスライド孔72(特許請求の範囲に記載された「貫通孔」に相当)を有している。スライド孔72は、フォーク32のスライド孔54(図7参照)と同一の形状を呈する。スライド孔72は、スライド孔54と左右方向に離間して対向しており、上下方向7及び前後方向8において同一位置に配置され(図10参照)ている。
【0052】
図9に示されるように、スライド板63は、略矩形板状のフラットバーである。スライド板63は、上下方向7(紙面に垂直な方向)に貫通する矩形の貫通孔73(特許請求の範囲に記載された「開口」に相当)を有している。貫通孔73の内周面74における右端面74Aに突片75(特許請求の範囲に記載された「係合部」に相当)が形成されている。この突片75は、矩形状を呈し左方に突出している。貫通孔73の内周面74における左端面74Bに突片78(特許請求の範囲に記載された「係合部」に相当)が形成されている。この突片78は、上記突片75と同一の形状であり、上記左端面74Bから右方に突出して上記突片78と対向している。突片75及び突片78の前後方向8の寸法は同一であり、後述するコイルバネ64の内径と略同一である。スライド板63の右端面80に係合部81が設けられている。係合部81は、上記右端面80から右方に突出している。係合部81は、上下方向7に貫通する貫通孔82を有している。図10に示されるように、スライド板63は、フォーク32のスライド孔54(図7参照)及びカバー62のスライド孔72(図8参照)に、左右方向9(特許請求の範囲に記載された「スライド方向」に相当)にスライド可能に挿通される(図6参照)。
【0053】
図10に示されるように、コイルバネ64は、フォーク32の側板46の左面68と、カバー62の第2板部66の右面66A(特許請求の範囲に記載された「辺部」及び「シート面」に相当)との間であって、かつ、スライド板63の貫通孔73(図9参照)における左端面74Bと右端面74Aとの間に、所定の初期圧縮量だけ圧縮された状態で配置される。コイルバネ64の右端部は、フォーク32の側板46の左面68及びスライド板63の貫通孔73における右端面74Aの少なくとも一方に当接する。また、コイルバネ64の左端部は、カバー62の第2板部66の右面66A及びスライド板63の貫通孔73の左端面74Bの少なくとも一方に当接する。コイルバネ64がセットされた状態で、スライド板63の貫通孔73の内周面74に形成された突片75,78(図9参照)は、コイルバネ64の内側に挿入される。これにより、コイルバネ64の前後方向8への移動が規制される。
【0054】
[モード切替機構61の動作]
【0055】
図10は、モード切替機構61の動作を示す平面図であり、(A)はスライド板63が中立位置より右方に移動した状態、(B)はスライド板63が中立位置に位置する定常状態、(C)はスライド板63が中立位置より左方に移動した状態を示す。
【0056】
図10(B)に示される状態から、フォーク32に対してスライド板63が右方に移動すると、図10(A)に示される状態に至る。図10(A)に示される状態では、図10(B)に示される状態と比較して、フォーク32の側板46の左面68と、スライド板63の貫通孔73(図9参照)における左端面74Bとの間隔が縮まる。コイルバネ64の右端は、上記側板46の左面68に当接しており、コイルバネ64が右方に移動することが規制されているため、コイルバネ64が初期圧縮量から更に圧縮される。このとき、スライド板63における係合部81の貫通孔82とフォーク32の側板46との距離は、図10(B)に示される定常状態と比較して長くなる。図10(A)に示される状態では、図10(B)に示される中立位置にスライド板63が復帰するように、スライド板63にコイルバネ64の付勢力が働く。
【0057】
図10(B)に示される状態から、フォーク32に対してスライド板63が左方に移動すると、図10(C)に示される状態に至る。図10(C)に示される状態では、図10(B)に示される状態と比較して、カバー62の第2板部66の右面66Aと、スライド板63の貫通孔73(図9参照)における右端面74Aとの間隔が縮まる。コイルバネ64の左端は、カバー62の第2板部66に当接しており、コイルバネ64が左方に移動することが規制されているため、コイルバネ64が初期圧縮量から更に圧縮される。このとき、スライド板63における係合部81の貫通孔82とフォーク32の側板46との距離は、図10(B)に示される定常状態と比較して短くなる。図10(C)に示される状態では、図10(B)に示される中立位置にスライド板63が復帰するように、スライド板63にコイルバネ64の付勢力が働く。
【0058】
[オーバーストロークモード]
【0059】
図11及び図12は、オーバーストロークモードにおけるモード切替機構61の動作を説明する図である。
【0060】
図11は、オペレータによりハンドル41が中立位置から矢印87の向きへ回動操作されたときのモード切替機構61の状態を示している。
【0061】
図11(A)は、ハンドル41及びスライド板63が中立位置(図10(B)参照)にある状態のモード切替機構61である。この状態において、スライド板63の係合部81は、スプール36を移動させるための力をスプール36に加えていないので、スプール36からの抗力も係合部81に加わっていない。よって、モード切替機構61はニュートラルな状態、すなわち、スライド板63が中立位置から左右方向9に移動していない状態にある。この状態において、コイルバネ64は、所定の初期圧縮量だけ圧縮された状態にある。この状態においては、作業装置(車両搭載用クレーン10)は動作しない。
【0062】
図11(A)が示す状態からハンドル41が矢印87の向きへ回動操作されると、回動軸33を中心にフォーク32が矢印87向きに回動し、スプール36がスプールエンドに達するまで矢印88の向きに移動して、モード切替機構61は、図11(B)が示す状態に至る。
【0063】
具体的には、図11(A)が示す状態から図11(B)が示す状態までの過程において、スライド板63の係合部81は、スプール36に対して矢印88の向きへ力を加える。そのため、スプール36からの抗力として係合部81に対して矢印88と反対の向きへの力が加わる。しかし、モード切替機構61のコイルバネ64には、スプール36を矢印88の向きへ移動させるのに必要な力が加わっても圧縮されないものが使用されている。すなわち、コイルばね64を初期圧縮量から更に圧縮するのに必要な力は、油圧制御弁35においてスプール36を中立位置に付勢するスプリング(不図示)を圧縮するのに必要な力より大きい。そのため、コイルバネ64は初期圧縮量からは圧縮されず、スライド板63は、フォーク32に対して相対的に移動しない。よって、係合部81が矢印88の向きに移動し、スプール36が矢印88の向きに直線移動する。
【0064】
図11(A)が示す状態から図11(B)が示す状態までの操作レバー31の操作モードは、ノーマルストロークモードである。ノーマルストロークモードにおいては、作業装置の動作方向(例えば、旋回台13の旋回方向)及び動作速度(例えば、旋回台13の旋回速度)を決定する油圧制御弁35(図5参照)の状態が、スプール36の矢印向き88における位置によって決定される。そのため、図11(A)が示す状態から図11(B)が示す状態への操作レバー31の回動操作により、作業装置は所定の向きに動作する。また、スプール36の移動量に相当する速度で作業装置が動作する。
【0065】
図11(B)が示す状態からハンドル41が矢印87の向きへ更に回動操作されると、スプール36がスプールエンド(図11(B)参照)に位置したまま、回動軸33を中心にフォーク32が矢印87の向きに更に回動して、モード切替機構61は、図11(C)が示す状態に至る。
【0066】
具体的には、図11(B)が示す状態において、スプール36は、既にスプールエンドに達しているので矢印88の向きに移動できない。そのため、図11(B)が示す状態から図11(C)が示す状態への過程において、コイルバネ64が初期圧縮量から更に圧縮され、スライド板63がスライド向き90にスライド移動する。そのため、係合部81とカバー62の第2板部66との間隔が短くなる。これにより、スプール36がスプールエンドで停止したまま、フォーク32が図11(B)に示される位置から更に回動する。
【0067】
図11(B)が示す状態から図11(C)が示す状態までの操作レバー31の操作モードは、オーバーストロークモードである。オーバーストロークモードにおいては、作業装置の動作速度を決定するエンジンスロットルの開度は、フォーク32の回動位置によって決定される。そのため、図11(B)が示す状態から図11(C)が示す状態への操作レバー31の回動操作により、エンジンスロットルが開かれ、エンジンスロットルの開度に応じて作業装置の動作速度が更に上がる。
【0068】
図12は、オペレータによりハンドル41が中立位置から矢印86の向きへ回動操作されたときのモード切替機構61の状態を示している。図12(A)に示されるモード切替機構61の状態は、図11(A)に示されるモード切替機構61の状態と同じである。
【0069】
図12(A)が示す状態からハンドル41が矢印86の向きへ回動操作されると、回動軸33を中心にフォーク32が矢印86の向きに回動し、スプール36がスプールエンドに達するまで矢印89の向きに移動して、モード切替機構61は、図12(B)が示す状態に至る。
【0070】
具体的には、図12(A)が示す状態から図12(B)が示す状態までの過程において、スライド板63の係合部81は、スプール36に対して矢印89の向きへ力を加える。そのため、スプール36からの抗力として係合部81に対して矢印89と反対の向きへの力が加わる。しかし、モード切替機構61のコイルバネ64には、スプール36を矢印89の向きへ移動させるのに必要な力が加わっても圧縮されないものが使用されている。すなわち、コイルばね64を初期圧縮量から更に圧縮するのに必要な力は、油圧制御弁35においてスプール36を中立位置に付勢するスプリング(不図示)を圧縮するのに必要な力より大きい。そのため、コイルバネ64は初期圧縮量からは圧縮されず、スライド板63は、フォーク32に対して相対的に移動しない。よって、係合部が矢印89の向きに移動し、スプール36が矢印89の向きに直線移動する。
【0071】
図12(A)が示す状態から図12(B)が示す状態までの操作レバー31の操作モードは、ノーマルストロークモードである。
【0072】
図12(B)が示す状態からハンドル41が矢印86の向きへ更に回動操作されると、スプール36がスプールエンド(図12(B)参照)に位置したまま、回動軸33を中心にフォーク32が矢印86の向きに更に回動して、モード切替機構61は、図11(C)が示す状態に至る。
【0073】
具体的には、図12(B)が示す状態において、スプール36は、既にスプールエンドに達しているので矢印89の向きに移動できない。そのため、図12(B)が示す状態から図12(C)が示す状態への過程において、コイルバネ64が初期圧縮量から更に圧縮され、スライド板63がスライド向き91にスライド移動する。そのため、係合部81とカバー62の第2板部66との間隔が長くなる。これにより、スプール36がスプールエンドで停止したまま、フォーク32が図12(B)に示される位置から更に回動する。
【0074】
図12(B)が示す操作レバー31の状態から図12(C)が示す操作レバー31の操作モードは、オーバーストロークモードである。
【0075】
[本実施形態の作用効果]
【0076】
以上のように、図6に示されるように、フォーク32の一部と、スライド板63と、カバー62と、コイルバネ64のみで操作レバー31がオーバーストローク機能を発揮する構造が実現されている。しかも、コイルバネ64は特別な構造が要求されるものではないし、スライド板63及びカバー62も同様である。したがって、これら部品の製造に、従来のような絞り加工や旋盤加工その他機械加工を必要としないし、操作レバー31の部品点数も従来に比べて削減される。
【0077】
図10に示されるように、スライド板63が図10(B)に示される中立位置にあるとき、コイルバネ64は、フォーク32の側板46の左面68とカバー62の第2板部66の右面66Aとの間で保持される。フォーク32の側板46の左面68はフォーク32の一部により構成され、カバー62の第2板部66の右面66Aはカバー62の一部により構成されるので、コイルバネ64を保持するために特別の部品を要しない。オーバーストロークモードにおいてスライド板63がスライドされるとき、コイルバネ64は、フォーク32の側板46の左面68とスライド板63の貫通孔73における左端面74Bとの間、或いは、スライド板63の貫通孔73における右端面74Aとカバー62の第2板部66の右面66Aとの間で挟み込まれ、弾性力を発揮し、スライド板63を中立位置へ復帰させようとする。
【0078】
フォーク32の側板46の左面68及びカバー62の第2板部66の右面66Aは、簡単な部材から構成される。しかも、フォーク32の側板46の左面68及びカバー62の第2板部66の右面66Aにスライド孔54,72が形成されることにより、スライド板63が左右方向9(図10参照)にスライド自在に保持される。つまり、簡単な構造でスライド板63が支持される。
【0079】
フォーク32とカバー62との間に介在されたコイルバネ64が、スライド板63の貫通孔73(図9参照)内に配置される。そのため、フォーク32、スライド板63、カバー62及びコイルバネ64がコンパクトにレイアウトされる。しかも、このレイアウトは、きわめて簡単に実現される。
【0080】
コイルバネ64もスライド板63も、材料として汎用品が採用され得る。しかも、コイルバネ64は、スライド板63に設けられた一対の突片75,78により支持されるので、簡単且つ確実にコイルバネ64が上記中立位置に保持されるし、スライド板63がスライドした場合であっても、コイルバネ64は安定して弾性変形をすることができる。
【0081】
[変形例]
【0082】
前述の実施形態では、カバー62は、一端部がフォーク32に固定され、他端部がハンドル41に固定されている。しかしながら、カバー62は、ハンドル41のみに固定されていてもよいし、フォーク32のみに固定されていてもよい。例えば、カバー62をU字型に形成し、両端をフォーク32又はハンドル41に固定することにより、カバー62がフォーク32又はハンドル41の一方のみに固定される。
【0083】
前述の実施形態では、弾性体としてコイルバネ64が使用されたが、コイルバネ64に代えてゴムやねじりばね等の種々の弾性体が使用されてもよい。
【0084】
また、スライド板63の突片75,78に加えて、フォーク32の側板46の左面68、及びカバー62の第2板部66の右面66Aにも、コイルバネ64に挿入される突片が形成されていてもよい。これにより、スライド板63がスライドされたことにより、コイルバネ64の一方の端部がスライド板63の突片75,78のいずれか一方に支持されていない状態においても、突片75,78に支持されていないコイルバネ64の端部がフォーク32又はカバー62の突片に支持されるので、コイルバネ64が安定して弾性変形をすることができる。
【0085】
本願発明に係る操作レバー31は、車両搭載型クレーン10以外の作業装置に使用されてもよい。
【符号の説明】
【0086】
33・・・回動軸(回動軸線)
32・・・フォーク(基台)
41・・・ハンドル
36・・・スプール(操作対象)
9・・・左右方向(スライド方向)
63・・・スライド板
62・・・カバ−(案内板、山型部材)
64・・・コイルバネ(弾性部材)
31・・・操作レバー
68・・・左面(壁部、シート面)
66A・・・右面(辺部、シート面)
75,78・・・突片(係合部)
72・・・スライド孔(貫通孔)
54・・・スライド孔(貫通孔)
73・・・貫通孔(開口)
74・・・内周面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15