(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
造影剤が投与された後の被験者の臓器を撮像した、複数フレームの時系列のCT(Computed Tomography)画像の画像データを記憶する記憶手段を備えた画像処理装置のためのコンピュータプログラムであって、
前記画像処理装置に、
臓器の領域内の画素の位置である臓器内画素位置を特定するステップと、
前記複数フレームの時系列のCT画像の画像データに基づいて、前記特定された臓器内画素位置の画素のCT値の経時変化を特定するステップと、
前記特定された経時変化においてCT値が急激に上昇した後の所定のフレームを上限フレームと定めるステップと、
前記上限フレーム以前の前記経時変化を2つ以上の関数で近似するステップと、
前記近似された2つ以上の関数によって、前記臓器内画素位置にある臓器に前記造影剤が到達したアライバルタイム、及び前記臓器内画素位置の画素のベースとなるCT値であるベース値を特定するステップと、を実行させるコンピュータプログラム。
造影剤が投与された後の被験者の臓器を撮像した、複数フレームの時系列のCT(Computed Tomography)画像の画像データを記憶する記憶手段を備えた画像処理装置のためのコンピュータプログラムであって、
前記画像処理装置に、
臓器の領域内の画素の位置である臓器内画素位置を特定するステップと、
前記複数フレームの時系列のCT画像の画像データに基づいて、前記特定された臓器内画素位置の画素のCT値の経時変化を特定するステップと、
前記特定された経時変化においてCT値が急激に上昇した後の所定のフレームを上限フレームと定めるステップと、
前記上限フレーム以前の前記経時変化を正規累積分布関数または累積分布関数で近似するステップと、
前記近似された正規累積分布関数または累積分布関数によって、前記臓器内画素位置にある臓器に前記造影剤が到達したアライバルタイム、及び前記臓器内画素位置の画素のベースとなるCT値であるベース値を特定するステップと、を実行させるコンピュータプログラム。
前記臓器内画素位置を特定するステップでは、前記複数フレームの時系列のCT画像のすべてにおいて、CT値が所定の範囲内である画素を選択する、請求項1〜4のいずれかに記載のコンピュータプログラム。
造影剤が投与された後の被験者の臓器を撮像した、複数フレームの時系列のCT(Computed Tomography)画像の画像データを記憶する記憶手段を備えた画像処理装置が行う画像処理方法であって、
前記画像処理装置が、
臓器の領域内の画素の位置である臓器内画素位置を特定するステップと、
前記複数フレームの時系列のCT画像の画像データに基づいて、前記特定された臓器内画素位置の画素のCT値の経時変化を特定するステップと、
前記特定された経時変化においてCT値が急激に上昇した後の所定のフレームを上限フレームと定めるステップと、
前記上限フレーム以前の前記経時変化を2つ以上の関数で近似するステップと、
前記近似された2つ以上の関数によって、前記臓器内画素位置にある臓器に前記造影剤が到達したアライバルタイム、及び前記臓器内画素位置の画素のベースとなるCT値であるベース値を特定するステップと、を行う方法。
造影剤が投与された後の被験者の臓器を撮像した、複数フレームの時系列のCT(Computed Tomography)画像の画像データを記憶する記憶手段を備えた画像処理装置が行う画像処理方法であって、
前記画像処理装置が、
臓器の領域内の画素の位置である臓器内画素位置を特定するステップと、
前記複数フレームの時系列のCT画像の画像データに基づいて、前記特定された臓器内画素位置の画素のCT値の経時変化を特定するステップと、
前記特定された経時変化においてCT値が急激に上昇した後の所定のフレームを上限フレームと定めるステップと、
前記上限フレーム以前の前記経時変化を正規累積分布関数または累積分布関数で近似するステップと、
前記近似された正規累積分布関数または累積分布関数によって、前記特定された経時変化に基づいて、前記臓器内画素位置にある臓器に前記造影剤が到達したアライバルタイム、及び前記臓器内画素位置の画素のベースとなるCT値であるベース値を特定するステップと、を行う方法。
【背景技術】
【0002】
被験者に造影剤を投与した後、その被験者の心臓を撮像した画像を使って、心臓の血流を解析する手法が知られている。
【0003】
心筋血流検査として、昔から広く臨床で使用されてきた検査としてSPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)がある。その長所としては、SPECT検査は禁忌事項が少なく、検査法が確立されており、whole heart imagingである点が挙げられる。また、別の長所は、SPECT検査によって検出された心筋虚血の重症度に応じて心事故発生率を推測できること、及びその重症度に応じた治療方針を選択することで最善のアウトカムが得られることに関して、すでに十分なevidenceが示されていることである。一方、SPECT検査の短所としては、空間分解能が不足している点、及び冠動脈狭窄評価を同時に行うことができない点が挙げられる。
【0004】
また近年、MRI検査による心筋虚血評価についても有用性が多く報告されている。MRI検査の長所としては、放射線被ばくがない、造影剤の副作用が少ない、及び空間分解能の高さなどが挙げられる。一方、MRI検査の短所としては、検査時間の長さ、断面毎のデータ収集時相の違いによる心位相のズレ、及びMRI非対応のペースメーカー症例などの禁忌症例が挙げられる。
【0005】
負荷心筋perfusionCT(Computed Tomography)検査は近年有用性が報告されている非侵襲的な負荷心筋血流検査法である。他のモダリティーと比較したときのこの検査の大きな利点は、coronary CT angiographyを同時に施行することにより、精度の高い冠動脈形態評価とあわせて心筋虚血の有無を評価できる点である。現在までのperfusionCTの多くは、負荷中に1時相だけ撮影を行うsingle shot方式によるstatic imageでの定性評価が主体であったが、実際には心筋血流評価に最適な撮影タイミングは症例毎に異なるので、撮影タイミングを検出しながら撮影することは困難であった。しかし近年、撮像機器の発展に伴いDinamic scanから得られたTDC(Time density curve)を解析することで、心筋血流を定量評価することが可能となった。
【0006】
TDCの解析手法として例えば、非特許文献1には、心臓を撮像した時系列のダイナミックMRI画像を解析して、所定の心筋領域での造影剤が到達した時刻であるアライバルタイム(Arrival Time)を算出する方法が記載されている。
【0007】
また、臨床的な観点で見ると、CT機器の発展に伴い心臓の冠動脈CT検査における空間分解能及び時間分解能が目覚ましく向上した。その結果、冠動脈造影検査(coronary angiography;CAG)と同等の診断精度を有する非侵襲的検査として、冠動脈CT検査が広く循環器診療の場に用いられるようになった。さらに、面検出器CT、高分解能CT及び2管球CTなどのCT機器の登場により、subtraction imagingやdual energy imagingなどの新しい画像技術が臨床応用されてきた。これにより、これまで困難とされてきた高心拍症例、不整脈症例及び冠動脈石灰化症例などにおける冠動脈狭窄評価に対しても冠動脈CT検査が有効に活用できる可能性がある。
【0008】
一方で、形態的な冠動脈狭窄所見が認められたときであっても機能的な心筋虚血所見が認められるとは限らないことが広く知られている。冠動脈狭窄病変に対応した心筋虚血が存在するか否かは、血行再建術による治療(例えば、カテーテル治療または手術治療など)を行うか否かを決定するための重要な要因である。しかし、実際の臨床においては冠動脈CT検査で認められた冠動脈狭窄病変に対して治療介入をするか否かの判断が、不確かな症状を根拠になされている場合もあり得る。その理由は、治療介入が遅れることが許されない虚血性心疾患という病態の特殊性、及び複数の異なる検査(冠動脈狭窄評価と心筋虚血評価)を、治療前に行う時間的余裕及び医療者側の人的余裕がないことが要因として挙げられる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態に係る画像処理装置について、図面を参照して説明する。
【0025】
図1は、本実施形態に係る画像処理装置1の全体構成図である。画像処理装置1は、被験者に造影剤を投与したあとに撮像された被験者の臓器のCT画像を用いて、その臓器の血流量の定量解析を行う。本実施形態では、画像処理装置1は、造影剤として、例えばイオプロミド(N,N’-bis(2,3-dihydroxypropyl)-2,4,6-triiodo-5-(2-methoxyacetamido)-N-
methylisophthalamide)を用いて、被験者の心臓を心電図に同期して撮像した、同位相の複数枚のCTのフレーム画像を対象としてもよい。そして、画像処理装置1は、好ましくは、上記の心臓のCT画像を画素単位で解析することにより、心筋の血流の定量値を算出するために用いるアライバルタイム及びベースラインとなる値(以下、ベース値という)を算出する。
【0026】
本実施形態では、静脈に投与された造影剤によるCT画像の画素値の変化に基づいて心筋の血流量を推定するようにしてもよい。例えば、対象となる部位に造影剤が到達することによってCT画像の画素値が急激に変化した場合、画素値が変化し始める前の画素値をベース値とし、画素値が変化し始める時刻をアライバルタイムとしてもよい。この場合、例えば、アライバルタイム以降の画素値のベース値からの増加分が造影剤の影響によるものと考えられるので、このベース値からの増加分に基づいて血流量を算出しても良い。
【0027】
画像処理装置1は、例えば汎用的な情報処理装置(コンピュータシステム)により構成され、以下に説明する画像処理装置1内の個々の構成要素または機能は、例えば、コンピュータプログラムを実行することにより実現される。このコンピュータプログラムはコンピュータが読み取り可能な記録媒体に保存可能である。
【0028】
画像処理装置1は、画像データ記憶部11と、入力関数データ記憶部13と、出力関数データ記憶部15と、入力関数導出部20と、出力関数導出部30と、血流解析処理部50とを備える。画像処理装置1には入力装置3と表示装置5が接続されていてもよい。
【0029】
画像データ記憶部11は、CT画像の画像データを記憶する。CT画像の画像データは、3次元ボクセルデータであってもよい。CT画像は、複数のスライス画像(短軸断層画像)で構成される3次元画像でよい。CT画像は、造影剤が投与された後の被験者の臓器を撮像した、複数フレームの時系列のCT画像であってもよい。
【0030】
図2は、CT画像の説明図である。本実施形態では、CT画像として、心臓を心電図に同期して撮像した、心拍が同位相の所定枚数(例えば30枚)のフレーム画像110を対象としてもよい。1フレームは、複数枚のスライス画像によって構成されてもよい。すなわち、1フレームのデータは3次元の画像データで構成されてもよい。同図では、1つのスライスのフレーム画像を例示している。CT画像は、被験者に造影剤を投与した直後から撮像が開始されたものでもよい。CT画像には、撮影順に第1フレームから第30フレームまでが含まれてもよい。
【0031】
改めて
図1を参照すると、入力関数導出部20は、画像データ記憶部11に保存されている画像データに基づいて、被験者の臓器(心臓)に流入する造影剤がCT画像の画素値(以下、画素値またはCT値という)に及ぼす変化に関係する入力関数を導出してもよい。
【0032】
入力関数導出部20は、さらに、ROI設定部21と、経時変化特定部23と、関数化処理部25とを有してもよい。
【0033】
ROI設定部21は、入力関数を特定するための領域を選択する。ROI設定部21は、医師等の解析者の操作に従って、CT画像にROIを設定してもよい。例えば、ROI設定部21は、画像データ記憶部11から画像データを読み出して、対象とする領域が写っているスライスのフレーム画像を表示装置5に表示させる。ここで、ROIは心臓へ血液を流入させる血管、つまり大動脈の領域、あるいは心臓の内腔領域に設定されても良い。従って、大動脈の領域、あるいは心臓の内腔領域が写っているスライスが選択されて、表示装置5に表示される。そして、解析者が入力装置3を用いて行った入力に従って、表示装置5に表示されている画像上にROIが設定されるようにしてもよい。このROIの位置は、同一スライスの全フレームに対して共通であってもよい。
【0034】
ROI設定を行う対象となるフレーム画像は、大動脈の領域の判別が容易である画像で良い。設定されたROIには複数の画素が含まれる。
【0035】
経時変化特定部23は、複数フレームの時系列のCT画像の画像データに基づいて、ROI内のCT値の経時変化を特定してもよい。例えば、経時変化特定部23は、CT画像の大動脈領域のCT値の経時変化として、ROI内のCT値から定まるROI値のTDC(Time Density Curve)を生成してもよい。
【0036】
図3Aは、TDCの一例を示す図である。経時変化特定部23は、例えば、ROI設定部21で設定されたROIを、同一スライスの他のフレーム画像110にも適用してよい。そして、経時変化特定部23は、フレーム画像110毎に、ROI内の画素のCT値に基づいてROIを代表するROI値を決定してもよい。同一スライスの全フレームについて定められたROI値をプロットすることで、同図に示すようなTDCが生成される。なお、ROI値は、例えば、ROI内の画素値を統計的アルゴリズムで処理した値(統計値)であり、平均値、最頻値、中央値、最大値、最小値などのいずれかでも良い。
【0037】
経時変化特定部23は、TDCがなめらかな曲線になるように平滑化処理を行ってもよい。
【0038】
関数化処理部25は、CT値の経時変化に基づいて、ROIが設定された領域に造影剤が到達したアイライバルタイムを特定してもよい。
【0039】
図3Bは、TDCを描画するためにプロットされたROI値を示す。同図を参照して、アライバルタイムを特定する処理について説明する。
【0040】
関数化処理部25は、経時変化特定部23が特定したCT値の経時変化において、CT値が急激に上昇した後の所定のフレームを上限フレームFaと定めてもよい。上限フレームFaは、例えば、CT値がピークとなるフレームよりも前の一つのフレームでもよい。そして、経時変化特定部23は、この上限フレームFa以前のTDCを関数に近似するようにしてもよい。
【0041】
上限フレームFaは、例えば、以下のようにして定めてもよい。すなわち、経時変化特定部23は、TDCにおけるCT値の最大値Max、またはカーブが大きく立ち上がった(CT値が急激に上昇した)後の最初のピーク値を検出してもよい。ここで、TDCにおけるCT値の最小値Minから、この最大値Maxまたはピーク値までの一定割合(例えば、70%、80%、90%など)の値をとる、最大値Maxまたはピーク値が検出されたフレームよりも以前のフレームを上限フレームFaとしてもよい。
【0042】
上限フレームはこれ以外の方法で定めても良い。例えば、TDCの変化率を求めて、変化率が最大となるフレームと変化率が0となるフレームとの間のいずれかのフレームを上限フレームとしても良い。
【0043】
関数化処理部25は、例えば、以下のようにしてTDCの関数化を行っても良い。すなわち、関数化処理部25は、第n(nは2から上限フレーム−1まで)フレームFn以前のROI値に対して最小二乗法等を適用して直線近似を行い、直線Lの式を導出してもよい。同様に、関数化処理部25は、第nフレームFnから上限フレームまでのROI値に対して最小二乗法等を適用して2次関数に近似し、2次関数Fの式を導出するようにしてもよい。
【0044】
そして、関数化処理部25は、直線Lと第nフレームFn以前のROI値との誤差の二乗和を算出してもよい。同様に関数化処理部25は、2次関数Fと第nフレームFn以降のROI値との誤差の二乗和(残差平方和)を算出してもよい。
【0045】
関数化処理部25は、すべてのnについて上記の処理を行い、これら誤差の二乗和の合計が最も小さくなるnを特定してもよい。関数化処理部25は、この誤差が最小となるnの場合の直線L及び2次関数Fをそれぞれ近似された関数として特定してもよい。
【0046】
このとき、直線L及び2次関数Fの交点(境界)となるフレームをアライバルタイム(AT)とし、直線L及び2次関数Fの交点(境界)となるフレームのROI値をベース値(BL)としてもよい。ROI値そのものをベース値とする以外に、例えば、直線Lの高さ(Y切片)をベース値としても良い。このように関数化処理部25は、ROI値のTDCから、大動脈の領域のアライバルタイムとベース値を定めてもよい。
【0047】
なお、本実施形態では、上記のように直線と2次曲線との2つの関数でTDCを関数化しているが、本発明ではこれに限定されない。例えば、第nフレームFn以前を直線Lで近似し、第nフレームFn以降のROI値の分布を直線または3次以上の多次関数で近似してもよい。あるいは、上限フレームまでのすべてのROIの分布を多次元多項式で表される関数に近似しても良い。これらの場合、アライバルタイム及びベース値は上記と同様にして定めてもよい。
【0048】
あるいは、関数化処理部25はTDCを3つ以上の関数で近似してもよい。例えば、関数化処理部25は、第2フレームから上限フレーム−1までを3つ以上の区間に分けて、それぞれの区間を所定の関数で近似してもよい。TDCにおいては、カーブが大きく立ち上がる(CT値が急激に上昇する)直前に、一旦CT値が低下する場合がある。このような現象が現れた場合には、関数化処理部25は、CT値がほぼ一定で直線近似できる区間(第1区間)と、CT値が減少する区間(第2区間)と、その後のCT値が急激に上昇する区間(第3区間)とに分けてもよい。そして、関数化処理部25は、例えば、第1区間を直線、第2区間を2次以上の関数、第3区間を別の2次以上の関数で近似するようにしてもよい。これらの場合、第1区間と第2区間の境界となるフレーム、または第2区間と第3区間の境界となるフレームの何れかをアライバルタイムとし、このアライバルタイムとなるフレームのROI値をベース値としてもよい。
【0049】
さらに、関数化処理部25はTDCを一つの関数で近似するようにしてもよい。例えば、関数化処理部25は、正規累積分布関数または累積分布関数をTDCにフィッティングさせて、TDCを単一の関数で近似してもよい。TDCを正規累積分布関数で関数化する場合、関数化処理部25は、TDCの立ち上がりのカーブに最もよくフィットするように正規分布の標準偏差(SD)及び平均値を選択するようにしてもよい。このとき、例えば、TDCに近似された正規累積分布関数の−3SDに最も近いフレームをアライバルタイムとし、このアライバルタイムとなるフレームのROI値をベース値としてもよい。
【0050】
入力関数データ記憶部13は、入力関数導出部20で導出された入力関数に係るデータを記憶する。入力関数データ記憶部13には、入力関数テーブル130が記憶されるようにしてもよい。
【0051】
図4Aは、入力関数テーブル130のデータ構造の一例を示す。同図に示すように、入力関数テーブル130は、アライバルタイム133と、ベース値135と、関数L及びF137と、ROI値139をデータ項目として含んでもよい。関数L及びF137は、関数化処理部25で求められたn=1から上限フレームまでを近似した直線L及び2次関数Fであってもよい。ROI値139は、TDCの元となるフレーム毎のROI値であってもよい。血流解析処理部50がこの入力関数を血流解析に使用する場合、アライバルタイム133及びベース値135が原点となるようにROI値139もしくは関数L及びF137を補正したものが使用されるようにしてもよい。
【0052】
図1に戻ると、出力関数導出部30は、被験者の臓器(心臓)の血管に造影剤が流入したことによりCT画像の画素値(CT値)に及ぼす変化を出力関数として導出するようにしてもよい。本実施形態では、出力関数導出部30は、ROI単位ではなく、画素単位に出力関数を導出してもよい。
【0053】
出力関数導出部30は、対象画素抽出部31と、経時変化特定部33と、平滑化処理部35と、関数化処理部37と、を有する。
【0054】
対象画素抽出部31は、出力関数の導出対象となる画素を抽出し、フレーム画像上でその位置を特定してもよい。ここで抽出する画素は、各スライスにおける心臓領域内の画素であってもよい。
【0055】
例えば、対象画素抽出部31は、第1の抽出処理として、スライス単位に以下の処理を行ってもよい。すなわち、対象画素抽出部31は、複数フレームの時系列のCT画像のすべてにおいて、CT値が所定の範囲内である画素を選択してもよい。例えば、対象画素抽出部31は、一つのスライスで、すべてのフレーム画像でのCT値が30−200の範囲に入っている画素を対象画素として抽出するようにしてもよい。
【0056】
心筋の抽出において目的とする対象画素の領域内で小さな対象外となる領域が含まれることがある。この場合には、その対象外の領域の大きさに応じて(例えば、画素数が所定数以下)、対象画素抽出部31はこの領域を処理上の欠損とみなし、対象画素に転換する処理を行っても良い。また、これとは逆に、対象画素の領域外で孤立した対象となる画素がある場合は、孤立した対象領域の大きさに応じて(例えば、画素数が所定数以下)、対象画素抽出部31はこの領域を対象外とする処理を行っても良い。
【0057】
また、対象画素抽出部31は、第2の抽出処理として、画素単位に以下の処理を行ってもよい。すなわち、対象画素抽出部31が、複数フレームの時系列のCT画像において、各画素のCT値の変化量、例えば最大値と最小値との差分の値に基づいて画素を選択してもよい。例えば、対象画素抽出部31は、一つのスライスにおいて、全フレーム画像の中でCT値の最大値と最小値との差を求め、その差が所定の値(例えば50〜150)である画素を抽出してもよい。
【0058】
対象画素抽出部31は、第1の抽出処理及び第2の抽出処理の両方を行っても良いし、いずれか一方のみを行っても良い。
【0059】
また、対象画素抽出部31は、以下の第3の抽出処理を行っても良い。例えば、第1及び/または第2の抽出処理を行って対象画素となった画素に基づいて後述する処理でアライバルタイムが特定された後、第3の抽出処理として、対象画素抽出部31がこの特定されたアライバルタイムが入力関数データのアライバルタイム133よりも早い画素を特定する。そして、対象画素抽出部31がこの特定された画素を対象画素から除外するようにしてもよい。
【0060】
対象画素抽出部31は、ここでスライス毎に抽出された画素の位置を、出力関数を算出する対象である対象画素位置(臓器内画素位置)として特定してもよい。
【0061】
経時変化特定部33は、複数フレームの時系列のCT画像の画像データに基づいて、対象画素位置(臓器内画素位置)の画素のCT値の経時変化を特定してもよい。例えば、経時変化特定部33は、スライス毎に、対象画素位置のCT値の経時変化としてTDCを生成するようにしてもよい。
【0062】
図5Aは、対象画素位置のCT値のTDCの一例を示す図である。同図における丸(〇)のプロットがCT値である。上述した経時変化特定部23は、ROI値に基づいてTDCを生成したのに対して、経時変化特定部33は、CT値そのものを用いてTDCを生成してもよい。
【0063】
平滑化処理部35は、経時変化特定部33で特定された経時変化を平滑化してもよい。平滑化処理部35は、TDCをm次関数(mは3以上)で近似してもよい。本実施形態では、平滑化処理部35は、経時変化特定部33で生成された画素ごとのTDCを、例えば最小二乗法を用いて5次関数に近似してもよい。これは、
図5Aに示すように、CT値(丸のプロット)はバラツキが大きいので、経時変化特定部33で生成されたTDCは経時変化特定部23で生成されたTDCと比べると、なめらかなカーブにならない。そのため、平滑化処理部35がこのTDCを多次関数に近似して、平滑化するようにしてもよい。
【0064】
平滑化処理部35は、最小二乗法等を用いて、CT値のTDCをm次関数に近似してもよい。
図5Aの四角(□)のプロットで示すカーブが平滑化処理部35で近似された5次関数であり、各四角がその5次関数からサンプリングされた値である。
【0065】
上記のようにm次関数にフィッテイングする以外の方法でCT値のTDCが平滑化されても良い。例えば、TDCを生成するときに、周辺の画素との平均値を求めてこれを利用しても良いし、TDCを移動平均によって平滑化しても良い。
【0066】
関数化処理部37は、CT値の経時変化に基づいて、画素毎に造影剤が到達したアイライバルタイムを特定してもよい。関数化処理部37は、平滑化処理部35により画素毎にフレーム(時間)方向に平滑化されたTDCを関数で近似するようにしてもよい。
【0067】
図5Bは、平滑化されたTDCをサンプリングした値をプロットした図である。ここで、関数化処理部37が行う処理のアルゴリズムは関数化処理部25が行う処理と同様である。関数化処理部37が行う処理で関数化処理部25が行う処理と相違する点は、関数化処理部25がROI値のTDCを対象として所定の関数に近似しているのに対して、関数化処理部37は平滑化処理部35で平滑化されたTDC(近似されたm次関数)からサンプリングされた値を対象として関数化している点である。関数化処理部37は、関数化処理部25と同様に上限フレームを定め、上限フレーム以前のm次関数を2本の直線及び/または曲線、あるいは複数の関数で近似して、画素毎にアライバルタイムとベース値を特定するようにしてもよい。
【0068】
関数化処理部37は、画素毎の平滑化されたTDCから、画素毎にアライバルタイムとベース値を定めてもよい。すなわち、関数化処理部37は、画素毎に出力関数を定めてもよい。
【0069】
なお、関数化処理部37は、平滑化していないTDCに対して関数近似しても良い。すなわち、平滑化処理部35の処理を行わなくても良い。
【0070】
出力関数データ記憶部15は、出力関数導出部30で導出された出力関数に係るデータを記憶する。出力関数データ記憶部15には、出力関数テーブル150が記憶される。
【0071】
図4Bは、出力関数テーブル150のデータ構造の一例を示す。同図に示すように、出力関数テーブル150は、例えば、スライスNo151と、画素位置153と、アライバルタイム155と、ベース値156と、関数L及びF157と、サンプリング値159とをデータ項目として含んでもよい。サンプリング値159は、入力関数テーブル130のROI値139に相当する。すなわち、サンプリング値159は、関数化処理部37が関数化処理の対象とした、平滑化されたTDCをサンプリングした値であってもよい。血流解析処理部50がこの出力関数を血流解析に使用する場合、入力関数の場合と同様に、アライバルタイム155及びベース値156が原点となるようにサンプリング値159もしくは関数L及びF157を補正したものが使用されるようにしてもよい。
【0072】
図1を参照すると、血流解析処理部50は、入力関数及び出力関数に基づいて、心臓の血流量の定量解析を行ってもよい。例えば、血流解析処理部50は、入力関数テーブル130及び出力関数テーブル150を参照して、所定の解析処理を行う。血流量の定量解析の手法としては、例えば、Patlak Plot法、Deconvolution法などを用いてもよい。
【0073】
血流解析処理部50による定量解析の結果は表示装置5に表示されるようにしてもよい。例えば、心臓領域を任意の複数のセグメントに分けて表示する画像を表示装置5に表示させるとき、各セグメントはそれぞれの血流量に応じた表示態様で表示されるようにしてもよい。あるいは、画像データ記憶部11に保存されている画像データに基づいた心臓の3D画像を表示させるときは、その3D画像における各画素の表示態様が血流量に応じたものになるようにしてもよい。
【0074】
上述の血流解析処理部50による定量解析の結果の表示は、例えば、CT画像と並べてまたは重ねて表示してもよい。二つの画像を比較することにより、心筋梗塞または狭心症などの際の冠動脈狭窄の評価と心筋虚血評価を同時に行うことができる。さらには、CT画像を表示する際、心筋領域の各画素のアライバルタイムと入力関数のアライバルタイムとの時間差に応じた表示態様でCT画像を表示しても良い。CT画像は、個々の画素の座標情報を基に3D画像表示を行ってもよい。
【0075】
入力関数のアライバルタイムと心筋のアライバルタイムとの間には時差がある。これは、入力関数は、心筋よりも上流の大動脈領域の画素値の変化に基づくものだからである。この時差は、例えば、心筋の各領域までの血液流路の距離及び状態により異なる。例えば、心先部付近のように、大動脈からの血液流路の距離が長い箇所ではアライバルタイムの時差が大きくなる。例えば、血管の詰まり等により抵抗が大きい血液流路があれば、その血液流路の先の心筋領域のアライバルタイムの時差は大きくなる。
【0076】
上記のような機能を有する画像処理装置1が行う処理の手順について、以下、フローチャートを参照しながら説明する。
【0077】
図6は、入力関数導出処理の全体の処理手順を示すフローチャートである。
【0078】
まず、入力関数導出部20が、大動脈の領域が写っているスライス画像を選択し、画像データ記憶部11からそのスライスのフレーム画像の画像データを読み出す(S11)。このスライスの選択は、入力関数導出部20が自動的に行っても良いし、自動的に選択されたスライスを解析者による確認後、必要に応じて修正した後確定させても良い。
【0079】
選択されたスライス画像の中で、大動脈の領域が鮮明に写っているフレーム画像が表示装置5に表示されているとき、解析者の操作に従って、ROI設定部21がROIを設定する(S13)。
【0080】
ROIが設定されると、経時変化特定部23は全フレーム画像についてそれぞれROI値を算出し、ROI値に基づくTDCを描画する(S15)。
【0081】
関数化処理部25は、TDCに基づいて、入力関数の導出対象とするフレームの範囲を規定する上限フレームFaを特定する(S17)。そして、関数化処理部25は、上限フレームFa以前のフレームを対象として、関数化処理を行ってアライバルタイム及びベース値を特定する(S19)。
【0082】
ここで、アライバルタイム及びベース値を特定する処理の詳細について、フローチャートを参照して説明する。
【0083】
図7は、関数化処理部25が行うアライバルタイム及びベース値を特定する処理の詳細な手順を示すフローチャートである。
【0084】
関数化処理部25は、まずフレームNoを示す変数nを1に設定する(S31)。
【0085】
関数化処理部25は、nに1を加算する(S33)。
【0086】
関数化処理部25は、第nフレームより以前のフレームのROI値を一つの直線Lに近似する(S35)。
【0087】
関数化処理部25は、第nフレーム以降上限フレーム以前のフレームのROI値を2次関数Fに近似する(S37)。
【0088】
関数化処理部25は、上記の処理で求まった直線Lと第nフレームより以前のフレームのROI値の最小二乗誤差を算出する。同様に、関数化処理部25は、2次関数Fと第nフレーム以降上限フレーム以前のフレームのROI値との最小二乗誤差を算出する。そして、関数化処理部25は、これらの誤差の総和を求める(S39)。
【0089】
関数化処理部25は、ステップS53〜S59までの処理を、nが上限フレーム−1よりも小さい間は繰り返す(S41)。
【0090】
n=2から上限フレーム−1までの最小二乗誤差の総和がすべて求まると、関数化処理部25は、その中から最小二乗誤差の総和が最も小さいnを特定する(S43)。
【0091】
関数化処理部25は、ステップS63で特定されたnのときの直線L及び2次関数Fの交点となるフレームをアライバルタイムとし、そのときのROI値をベース値とする。ベース値は直線Lの高さ(Y切片)でも良い(S45)。
【0092】
これにより、入力関数としてのアライバルタイム及びベース値が定まる。
【0093】
図8は、出力関数導出処理の全体の処理手順を示すフローチャートである。
【0094】
まず、出力関数導出部30が、一つのスライス画像を選択し、画像データ記憶部11からそのスライスのフレーム画像の画像データを読み出す(S51)。
【0095】
対象画素抽出部31は、選択されたスライスの全画素の中から、全フレーム画像におけるCT値が前述の条件を満たす画素が心臓領域の画素とみなして、これらの画素を対象画素として抽出する(S53)。
【0096】
経時変化特定部33は、S53で抽出された対象画素から一つの画素を選択し(S55)、選択された画素についてTDCを描画する(S57)。
【0097】
平滑化処理部35は、S57で描画されたTDCを5次関数に近似して平滑化する(S59)。平滑化処理部35は、さらに、平滑化されたTDCに基づいて、出力関数の導出対象とするフレームの範囲を規定する上限フレームFaを特定する(S61)。そして、関数化処理部37は、上限フレームFa以前のフレームを対象として関数化処理を行い、アライバルタイム及びベース値を特定する(S63)。
【0098】
出力関数導出部30は、ステップS55〜S63までの処理を、すべての対象画素について行う(S65)。
【0099】
出力関数導出部30は、さらに、ステップS53〜S65までの処理を、すべてのスライスについて行う(S67)。
【0100】
ステップS63のアライバルタイム及びベース値を特定するための関数化処理の詳細は、
図7に示すフローチャートと同様である。
【0101】
これにより、出力関数としてのアライバルタイム及びベース値が定まる。
【0102】
上述した本発明の実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。