(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態による運搬車両としてダンプトラックを例に挙げ、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0014】
図において、ダンプトラック1は、大型の運搬車両をなし、車体2、ベッセル3、キャブ5、前輪6L,6R、後輪7L,7R等を備えている。
【0015】
図1および
図2に示すように、車体2は、フレーム構造体を構成する。車体2の上側には、ホイストシリンダ4によって後部側を支点として傾転(起伏)可能な荷台としてのベッセル3が搭載されている。
【0016】
キャブ5は、ベッセル3の前側に位置して車体2の前部上側に設けられている。このキャブ5は、ダンプトラック1の運転者(オペレータ)が乗降する運転室を形成している。キャブ5内には、運転席、エンジンスイッチ(いずれも図示せず)が設けられると共に、後述する操舵ハンドル32、アクセルペダル50、ブレーキペダル51が設けられている。
【0017】
前輪6L,6Rは、車体2の前部下側に回転可能に設けられている。前輪6Lは車体2の左側に配置され、前輪6Rは車体2の右側に配置されている。これら左,右の前輪6L,6Rは、後述のステアリングシリンダ27L,27Rによって操舵角θが変化する舵取り車輪を構成している。これらの前輪6L,6Rは、後述の後輪7L,7Rと同様に、例えば2〜4m程度のタイヤ径(外径寸法)をもって形成される。そして、左,右の前輪6L,6Rは、ダンプトラック1の運転者が後述の操舵ハンドル32を操作したときに、ステアリングシリンダ27L,27Rの伸長動作と縮小動作とによって舵取り操作される。
【0018】
後輪7L,7Rは、車体2の後部側に回転可能に設けられている。後輪7Lは車体2の左側に配置され、後輪7Rは車体2の右側に配置されている。これら左,右の後輪7L,7Rは、ダンプトラック1の駆動輪を構成し、後述の走行用モータ13L,13Rにより回転駆動される。左,右の後輪7L,7Rを回転駆動することにより、ダンプトラック1は走行駆動する。
【0019】
図6に示すように、前輪6L,6Rおよび後輪7L,7Rには、例えばディスクブレーキのような機械式の制動装置8が取り付けられている。制動装置8は、いわゆる駐車ブレーキとして機能し、走行駆動部52によって制動状態と制動解除状態とが制御される。制動装置8は、ダンプトラック1が停止したときに制動状態になり、ダンプトラック1の停車状態を保持する。一方、制動装置8は、ダンプトラック1が走行するときに制動解除状態になり、ダンプトラック1の前進または後進を許可する。
【0020】
エンジン9はキャブ5の下側に位置して車体2内に設けられている。エンジン9は、例えば大型のディーゼルエンジンによって構成されている。エンジン9は、主発電機10を駆動して3相交流電力を発生させると共に、直流用の副発電機11を駆動する。この副発電機11は、走行駆動部52、自律モードコントローラ61等の電源となるバッテリ12に接続され、バッテリ12を充電する。また、エンジン9は、後述の油圧ポンプ29等を回転駆動する。
【0021】
走行用モータ13L,13Rは、車体2にアク
スルハウジング(図示せず)を介して設けられている。走行用モータ13Lは、回転軸14を介して左側の後輪7Lに機械的に接続され、後輪7Lを駆動する。走行用モータ13Rは、回転軸14を介して右側の後輪7Rに機械的に接続され、後輪7Rを駆動する。これらの走行用モータ13L,13Rは、大型の電動モータにより構成され、主発電機10からモータ制御装置41を介して供給される電力によって回転駆動する。
【0022】
各走行用モータ13L,13Rは、モータ制御装置41によって制御され、それぞれ独立して回転駆動する。モータ制御装置41は、後述の走行駆動部52からの制御信号に基づいて、車両の直進時に左,右の後輪7L,7Rの回転速度を同じにし、旋回時に旋回方向に応じて左,右の後輪7L,7Rの回転速度を異ならせる等の制御を行う。
【0023】
次に、ダンプトラック1に搭載されたステアリングシステム21の構成について、
図3ないし
図5を参照して説明する。
【0024】
ステアリングシステム21は、運転者の操舵ハンドル32の操作に応じて、舵取り車輪である前輪6L,6Rの向きを、油圧力を利用して変える。ここで、ステアリングシステム21は、操舵機構22と、操舵機構22のステアリングシリンダ27L,27Rを駆動する油圧回路28とを備えている。
【0025】
操舵機構22は、スピンドル23L,23R、ステアリングシリンダ27L,27Rを含んで構成されている。
【0026】
スピンドル23L,23Rは、車体2に連結されたトレーリングアーム(図示せず)に取り付けられ、前輪6L,6Rを回転可能に支持する。左側のスピンドル23Lには、上,下方向に延びるキングピン24が一体的に設けられ、このスピンドル23Lは、キングピン24を中心として前,後方向に回動可能に支持されている。スピンドル23Lには、後方に向けて延びるナックルアーム25Lが一体的に設けられている。
【0027】
右側のスピンドル23Rは、左側のスピンドル23Lと左,右対称な形状に形成されている。このため、右側のスピンドル23Rも、左側のスピンドル23Lと同様に、上,下方向に延びるキングピン24が一体的に設けられ、このスピンドル23Rは、キングピン24を中心として前,後方向に回動可能に支持されると共に、ナックルアーム25Rが一体的に設けられている。
【0028】
ナックルアーム25L,25Rの先端部は、タイロッド26によって連結されている。タイロッド26およびナックルアーム25L,25Rはリンク機構を構成している。このリンク機構によって、スピンドル23L,23Rは、前輪6L,6Rが左,右方向のうち互いに同じ方向に傾くように、回転変位する。
【0029】
ステアリングシリンダ27L,27Rは、後述の油圧ポンプ29からの圧油が供給または排出されることによって伸長または縮小する油圧シリンダによって構成されている。左側のステアリングシリンダ27Lは、基端部がトレーリングアームのシリンダ用ブラケットに取り付けられ、先端部がナックルアーム25Lの長さ方向の途中位置に連結されている。同様に、右側のステアリングシリンダ27Rは、基端部がトレーリングアームのシリンダ用ブラケットに取り付けられ、先端部がナックルアーム25Rの長さ方向の途中位置に連結されている。
【0030】
ステアリングシリンダ27L,27Rは、一方が伸長するときに、他方が縮小する。これにより、ステアリングシリンダ27L,27Rは、左,右の前輪6L,6Rを舵取り方向に動作させ、車両の操舵を行う。
【0031】
図3に示すように、油圧回路28は、油圧ポンプ29、ステアリングバルブ31を含んで構成され、操舵ハンドル32の操作に応じて、ステアリングシリンダ27L,27Rに対する圧油の供給と排出を制御する。
【0032】
油圧ポンプ29は、エンジン9の近傍に設けられエンジン9によって回転駆動される。この油圧ポンプ29は、車体2の側面に取付けられた作動油タンク30に接続され、ステアリングシリンダ27L,27R等に圧油を供給する。
【0033】
ステアリングバルブ31は、操舵ハンドル32の操作に応じてステアリングシリンダ27L,27Rへの圧油の供給と排出を切り換え制御する。このステアリングバルブ31は、例えばスプール弁等を用いて構成されている。ステアリングバルブ31は、操舵アクチュエータ33を介して操舵ハンドル32に連結され、操舵ハンドル32の回動方向に応じて圧油の供給と排出を切り換えると共に、操舵ハンドル32の回転角に応じて圧油の流量を制御する。
【0034】
操舵ハンドル32(ステアリングホイール)は、キャブ5内に設けられ、運転者によって舵取り操作される。この操舵ハンドル32は、車両の進行方向を操作する操舵操作装置を構成し、運転者が把持してコラムシャフト32Aを左,右に回動させることにより、車両のステアリング操作を行う。なお、操舵操作装置は、オペレータによって回転操作される操舵ハンドル32に限らず、例えば操舵方向に傾転操作されるレバー等によって構成してもよい。
【0035】
操舵アクチュエータ33は、コラムシャフト32Aに取り付けられ、操舵ハンドル32に作用する操舵トルクTmをアシストするパワーステアリング装置を構成している。
図5に示すように、操舵アクチュエータ33は、操舵トルクTmを検出するトルクセンサ34と、減速機構35と、電動モータからなるアシストモータ36と、アシストモータ36を駆動するためのEPSコントローラ37とを備えている。
【0036】
EPSコントローラ37は、トルクセンサ34によって検出された操舵トルクTmに基づいてアシストトルクT0を演算し、アシストトルクT0を発生させるための駆動電流をアシストモータ36に供給する。アシストモータ36は、EPSコントローラ37から供給される駆動電流に基づいて駆動し、減速機構35を介して出力軸38に追加トルクとしてのアシストトルクT0を付加する。これにより、出力軸38は、操舵トルクTmとアシストトルクT0とを加算した加算トルクT1(T1=Tm+T0)によって回転し、ステアリングバルブ31による圧油の供給と排出との切り換え、および、圧油の流量の調整を行う。
【0037】
操舵角センサ39は、例えば左側の前輪6Lの操舵角θを検出する。操舵角センサ39は、例えばホール素子とマグネットとからなる電磁ピックアップ式回転角検出器、または発光体と受光体とからなる光学式の回転角検出器等により構成されている。
【0038】
ここで、例えば車両が直進する方向に前輪6Lが向いたとき、即ち前輪6Lが前,後方向に平行な直進状態となったときに、操舵角θは零(θ=0°)になる。車両が左折する方向に前輪6Lが傾いたときに、操舵角θは正の値(θ>0°)になり、車両が右折する方向に前輪6Lが傾いたときに、操舵角θは負の値(θ<0°)になる。このため、操舵角センサ39は、このような前輪6Lの操舵角θに応じた操舵角信号をEPSコントローラ37に出力する。なお、操舵角センサ39は、右側の前輪6Rの操舵角を検出してもよい。
【0039】
EPSコントローラ37には、操舵アクチュエータ33の外部入力端子33Aを通じて自律モードコントローラ61が接続され、自律モードコントローラ61から自律操舵するためのトルク指令Taが入力される。これに加えて、EPSコントローラ37には、走行駆動部52が接続され、マニュアルモードおよび自律モードのうち選択されたモードを示すモード信号Mが走行駆動部52から入力される。
【0040】
モード信号Mによってマニュアルモードが選択されているときには、EPSコントローラ37は、自律モードコントローラ61からのトルク指令Taを無効にする。そして、EPSコントローラ37は、トルクセンサ34によって検出された操舵トルクTmに基づいてアシストトルクT0を演算し、アシストトルクT0を発生させるための駆動電流をアシストモータ36に供給する。
【0041】
一方、モード信号Mによって自律モードが選択されているときには、EPSコントローラ37は、自律モードコントローラ61からのトルク指令Taを有効にする。そして、EPSコントローラ37は、自律モードコントローラ61からのトルク指令Taと操舵角センサ39による操舵角θとに基づいて、アシストトルクT0を演算し、アシストトルクT0を発生させるための駆動電流をアシストモータ36に供給する。
【0042】
次に、ダンプトラック1に搭載された走行駆動用の電動系システムについて、
図4、
図6および
図7を参照して説明する。
【0043】
モータ制御装置41は、後述の走行駆動部52と共に走行用モータ13L,13Rの力行動作と回生動作とを制御する。このモータ制御装置41は、キャブ5の側方に位置して車体2のデッキ部2A上に立設された配電制御盤等により構成されている。
図6に示すように、モータ制御装置41は、コンバータ42およびインバータ44を備えている。
【0044】
コンバータ42は、例えばダイオード、サイリスタ等の整流素子を用いて構成され交流電力を全波整流する整流器42Aと、整流器42Aの後段に接続され電力波形を平滑化する平滑コンデンサ42Bとによって構成されている。このコンバータ42は、主発電機10の出力側に接続され、主発電機10から出力されるU相、V相、W相の3相交流電力をP相、N相の直流電力に変換する。このため、コンバータ42は、主発電機10と一緒に直流電源を構成している。そして、コンバータ42は、一対の直流母線43A,43Bを用いてインバータ44に接続されている。
【0045】
インバータ44は、例えばトランジスタ、サイリスタ、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)を用いた複数のスイッチング素子(図示せず)を用いて構成されている。インバータ44は、走行用モータ13L,13Rにそれぞれ接続して設けられ、走行駆動部52からの制御信号に基づいて動作する。
【0046】
ダンプトラック1の走行時には、インバータ44は、直流電力を可変周波数の3相交流電力に変換し、走行用モータ13L,13Rを力行動作させる。このため、インバータ44は、スイッチング素子のオン/オフを制御することによって、コンバータ42から出力された直流電力をU相、V相、W相の3相交流電力に変換し、この3相交流電力を走行用モータ13L,13Rに供給する。
【0047】
一方、ダンプトラック1の減速時には、インバータ44は、3相交流電力を直流電力に変換し、走行用モータ13L,13Rを回生動作させる。このため、インバータ44は、スイッチング素子のオン/オフを制御することによって、走行用モータ13L,13Rで回生された3相交流電力からなる起電力を直流電力に変換し、この直流電力を抵抗器45に向けて出力する。
【0048】
抵抗器45は、コンバータ42およびインバータ44の間の直流母線43A,43Bに接続されている。この抵抗器45は、角筒状をなすグリッドボックス46内に配設され、インバータ44から供給される直流電力に応じて発熱し、走行用モータ13L,13Rで回生される起電力を消費する。
【0049】
図2に示すように、グリッドボックス46は、左,右方向に対してモータ制御装置41を挟んでキャブ5の反対側に位置して、車体2のデッキ部2A上に複数個積み重ねて設けられている。これら複数個のグリッドボックス46にはそれぞれ抵抗器45が収容され、これら複数個の抵抗器45は、直流母線43A,43Bに互いに並列接続されている。
【0050】
図6に示すように、抵抗器45と直流母線43A,43Bとの間には、チョッパ47が設けられている。このチョッパ47は、例えば半導体素子を用いた各種のスイッチング素子を用いて構成されている。ダンプトラック1の減速時には、チョッパ47は、直流母線43A,43Bに印加される直流電圧を、所定の電圧値以下まで低下させる。即ち、チョッパ47は、スイッチング素子のオン/オフを制御することによって、走行用モータ13L,13Rによる回生電力を所定の電圧値以下まで低下させて、抵抗器45に供給する。これにより、抵抗器45に電流が流れて、抵抗器45は、電気エネルギを熱エネルギに変換する。一方、ダンプトラック1の走行時には、チョッパ47は、遮断状態となり、直流母線43A,43Bと抵抗器45との間を電気的に遮断する。なお、抵抗器45と直流母線43A,43Bとの間には、チョッパ47に代えて、接続と遮断とを切り換えるスイッチを設けてもよい。
【0051】
送風機48は、グリッドボックス46に取付けられている。この送風機48は、例えば直流母線43A,43Bからの給電によって駆動する電動モータによって構成される。送風機48は、例えば抵抗器45の発熱動作に応じて駆動し、抵抗器45に向けて冷却風を供給する。
【0052】
車輪速センサ49は、例えば回転軸14の近傍に設けられ、走行用モータ13L,13Rの回転軸14の回転速度を検出し、この回転速度に基づいて後輪7L,7Rの回転速度である車輪速vを算出する。即ち、後輪7L,7Rには、走行用モータ13L,13Rの回転速度に対して、複数段の遊星歯車減速機構により予め決められた減速比(例えば、30〜40程度の減速比)の回転が伝えられる。このため、車輪速センサ49は、回転軸14の回転速度を検出することにより、減速機構の減速比等に基づいて後輪7L,7Rの車輪速v(車両の走行速度)を算出する。車輪速センサ49の出力側は、走行駆動部52に接続されている。
【0053】
アクセルペダル50は、車両の加速を操作する加速操作装置を構成している。このアクセルペダル50は、キャブ5内に設けられ、オペレータによって踏込み操作される。アクセルペダル50の操作量に応じて、走行用モータ13L,13Rは力行し、ダンプトラック1は加速する。アクセルペダル50には、操作量を検出するアクセル操作センサ50Aが設けられている。このアクセル操作センサ50Aは、例えば角度センサ、ポテンショメータ等によって構成され、アクセルペダル50の操作量(踏込み量)に応じた加速指令SAmを出力する。なお、加速操作装置は、オペレータによって踏込み操作されるアクセルペダル50に限らず、例えば手動操作されるレバー等によって構成してもよい。
【0054】
ブレーキペダル51は、車両の制動を操作する制動操作装置を構成している。このブレーキペダル51は、キャブ5内に設けられ、オペレータによって踏込み操作される。ブレーキペダル51の操作量に応じて、走行用モータ13L,13Rは回生し、ダンプトラック1は減速する。ブレーキペダル51には、操作量を検出するブレーキ操作センサ51Aが設けられている。このブレーキ操作センサ51Aは、例えば角度センサ、ポテンショメータ等によって構成され、ブレーキペダル51の操作量(踏込み量)に応じた制動指令SBmを出力する。なお、制動操作装置は、オペレータによって踏込み操作されるブレーキペダル51に限らず、例えば手動操作されるレバー等によって構成してもよい。
【0055】
アクセル操作センサ50Aおよびブレーキ操作センサ51Aの出力側は、いずれの後述の走行駆動部52に接続されている。走行駆動部52は、アクセル操作センサ50Aからの加速指令SAmとブレーキ操作センサ51Aからの制動指令SBmとに基づいて、ダンプトラック1が加速と減速のいずれの状態にあるのか判定する。
【0056】
走行駆動部52は、例えばマイクロコンピュータ等により構成され、アクセルペダル50による加速指令SAmとブレーキペダル51による制動指令SBmとに基づいて、車両を走行駆動させる制御装置である。この走行駆動部52は、モータ制御装置41等に接続され、ダンプトラック1の走行状態等に応じた制御信号を出力し、この制御信号によってインバータ44のスイッチング素子を切り換え制御する。具体的には、ダンプトラック1の加速時には、走行駆動部52は、主発電機10からの直流電力を3相交流電力に変換するように、インバータ44のスイッチング素子を制御する。一方、ダンプトラック1の減速時には、走行駆動部52は、走行用モータ13L,13Rで回生された3相交流電力からなる起電力を直流電力に変換するように、インバータ44のスイッチング素子を制御する。
【0057】
さらに、走行駆動部52は、チョッパ47、送風機48にそれぞれ接続され、抵抗器45と直流母線43A,43Bとの間の接続/遮断を切り換えると共に、送風機48の駆動/停止を切り換える。具体的には、ダンプトラック1の加速時には、走行駆動部52は、チョッパ47を停止状態にして、抵抗器45と直流母線43A,43Bとの間を電気的に遮断する。これにより、走行駆動部52は、抵抗器45による電力消費を停止させると共に、送風機48を停止させる。
【0058】
一方、ダンプトラック1の減速時には、走行駆動部52は、チョッパ47を駆動状態にして、抵抗器45と直流母線43A,43Bとの間を電気的に接続する。これにより、走行駆動部52は、抵抗器45による電力消費を許可すると共に、送風機48を駆動させて抵抗器45に向けて冷却風を供給する。
【0059】
走行駆動部52には、アクセル操作センサ50Aおよびブレーキ操作センサ51Aが接続され、アクセル操作センサ50Aから加速指令SAmが入力されると共に、ブレーキ操作センサ51Aから制動指令SBmが入力される。また、走行駆動部52には、外部入力端子52A,52Bを通じて自律モードコントローラ61が接続される。走行駆動部52には、自律モードコントローラ61からの加速指令SAaが外部入力端子52Aを通じて入力されると共に、自律モードコントローラ61からの制動指令SBaが外部入力端子52Bを通じて入力される。さらに、走行駆動部52には、マニュアルモードおよび自律モードのうちいずれか一方を選択するモード選択スイッチ59が接続されている。
【0060】
モード選択スイッチ59によってマニュアルモードが選択されているときには、走行駆動部52は、アクセル操作センサ50Aからの加速指令SAmに基づいて加速指令SAを算出し、ブレーキ操作センサ51Aからの制動指令SBmに基づいて制動指令SBを算出する。走行駆動部52は、これらの加速指令SAと制動指令SBとに基づいて、モータ制御装置41を制御する。
【0061】
一方、モード選択スイッチ59によって自律モードが選択されているときには、走行駆動部52は、自律モードコントローラ61からの加速指令SAaに基づいて加速指令SAを算出し、自律モードコントローラ61からの制動指令SBaに基づいて制動指令SBを算出する。走行駆動部52は、これらの加速指令SAと制動指令SBとに基づいて、モータ制御装置41を制御する。
【0062】
図7に示すように、走行駆動部52は、最大値選択部53,54、無効出力演算部55、アクセル出力演算部56、自律モード無効スイッチ57,58を備える。
【0063】
最大値選択部53には、アクセル操作センサ50Aからの加速指令SAmと自律モードコントローラ61からの加速指令SAaとが入力される。最大値選択部53は、加速指令選択部を構成し、加速指令SAmと加速指令SAaとのうち大きな値となる方を選択し、選択した加速指令SAを出力する。このとき、加速指令SAmと加速指令SAaとのうち大きな値となる方は、大きな加速度(走行駆動力)を発生させるための指令のことである。
【0064】
最大値選択部54には、ブレーキ操作センサ51Aからの制動指令SBmと自律モードコントローラ61からの制動指令SBaとが入力される。最大値選択部54は、
制動指令選択部を構成し、制動指令SBmと制動指令SBaとのうち大きな値となる方を選択し、選択した制動指令SBを出力する。このとき、制動指令SBmと制動指令SBaとのうち大きな値となる方は、大きな減速度(制動力)を発生させるための指令のことである。
【0065】
無効出力演算部55には、最大値選択部54によって選択された制動指令SBが入力される。無効出力演算部55は、加速指令SAよりも制動指令SBを優先させるために、加速指令SAが無効となるような無効加速指令SA0を出力する。具体的には、無効出力演算部55は、制動指令SBが予め設定された値よりも大きな値であるときには、加速を0にするための無効加速指令SA0を出力する。一方、無効出力演算部55は、制動指令SBが予め設定された値よりも小さな値であるときには、無効加速指令SA0の出力を停止する。
【0066】
アクセル出力演算部56は、最大値選択部53から出力された加速指令SAと無効加速指令SA0とに基づいて、最終的な加速指令SAを演算する。具体的には、アクセル出力演算部56は、無効加速指令SA0が出力されているときには、加速指令SAよりも無効加速指令SA0を優先させて、加速を0にするために加速指令SAの出力を停止する。一方、アクセル出力演算部56は、無効加速指令SA0が出力されていないときには、最大値選択部53から出力された加速指令SAをそのまま出力する。
【0067】
自律モード無効スイッチ57,58は、モード選択スイッチ59に選択されたモードに応じて、自律モードコントローラ61から入力される指令SAa,SBaの有効と無効とを切り換える。即ち、モード選択スイッチ59によって自律モードが選択されたときには、自律モード無効スイッチ57,58は、加速指令SAaおよび制動指令SBaを有効にし、これらの指令SAa,SBaを最大値選択部53,54に入力する。
【0068】
一方、モード選択スイッチ59によってマニュアルモードが選択されたときには、自律モード無効スイッチ57,58は、加速指令SAaおよび制動指令SBaを無効にする。このとき、加速指令SAaおよび制動指令SBaは、最大値選択部53,54には入力されない。このため、最大値選択部53は、マニュアル操作に基づく加速指令SAmを選択して、加速指令SAとして出力する。同様に、最大値選択部54は、マニュアル操作に基づく制動指令SBmを選択して、制動指令SBとして出力する。
【0069】
走行駆動部52は、加速指令SAおよび制動指令SBと、車輪速センサ49からの車輪速vとに基づいて、走行用モータ13L,13Rに発生させる走行トルクを演算する。そして、走行駆動部52は、走行用モータ13L,13Rが算出した走行トルクで駆動するように、モータ制御装置41を制御する。
【0070】
次に、ダンプトラック1を自律走行させるための自律モードコントローラ61について、
図4および
図8を参照しつつ説明する。
【0071】
図4に示すように、自律モードコントローラ61は、管制通信部62、自己位置算出部63、行動判断部64、走行制御部65を備える。
【0072】
管制通信部62は、外部の管理局71との間で相互に通信を行う。管制通信部62は、例えば他のダンプトラックの走行状態や車両位置のような他車情報を含めた各種の運行指令VI0を、管理局71から受信する。管制通信部62は、この運行指令VI0を行動判断部64に出力する。
【0073】
また、管制通信部62には、走行駆動部52からモード信号Mが入力されると共に、行動判断部64からダンプトラック1の走行状態や車両位置P0のような自車情報VI1が入力される。管制通信部62は、モード信号Mによってマニュアルモードおよび自律モードのうち選択されたモードを判別すると共に、選択されたモードと自車情報VI1とを管理局71に向けて送信する。これにより、管理局71は、ダンプトラック1がマニュアルモードおよび自律モードのいずれのモードで動作しているのかを把握することができる。これに加えて、管理局71は、ダンプトラック1が走行および停止のいずれの状態となっているのかを把握することができる。このため、管理局71は、これらに応じた運行指令VI0を出力することができる。
【0074】
自己位置算出部63は、自己の車両位置P0を算出する車両位置算出部を構成している。具体的には、自己位置算出部63は、例えばGPSアンテナ(図示せず)に接続され、GPS衛星から送信される信号に基づいて、車両位置P0を算出する。また、自己位置算出部63は、例えばダンプトラック1に設けられた車輪速センサ49とジャイロ(図示せず)に接続される構成としてもよい。この場合、自己位置算出部63は、積載領域LAと運搬路HRとを含む作業現場の地図情報等を参照しつつ、これら車輪速センサ49の出力信号とジャイロの出力信号とに基づいて、車両位置を算出する。なお、自己位置算出部63は、GPSに基づく位置情報と、車輪速センサ49等に基づく位置情報とを組み合わせて、車両位置P0を算出してもよい。
【0075】
行動判断部64は、自律モードにおけるダンプトラック1の走行動作を判断する。具体的には、行動判断部64は、自己位置算出部63によって算出した車両位置P0と、管制通信部62が受信した運行指令VI0とに基づいて、自律モード中のダンプトラック1の動作を決定し、決定した動作に応じた目標車速を含む動作指令Cを走行制御部65に出力する。また、行動判断部64は、動作指令Cに応じたダンプトラック1の走行状態と車両位置P0とに基づく自車情報VI1を、管制通信部62に出力する。
【0076】
行動判断部64が決定する動作としては、次のような動作がある。
図8に示すように、ダンプトラック1が運搬路HRに存在するときには、行動判断部64は、例えば運搬路HRから積載領域LAに進入する動作、または積載領域LAから運搬路HRに退出する動作を実行する。また、ダンプトラック1が積載領域LA内に存在するときには、行動判断部64は、積載領域LA内で、例えばキューイング動作、アプローチング動作、搬出動作とのうちいずれかを実行する。
【0077】
ここで、キューイング動作は、例えば運搬路HRから積載領域LAに進入したダンプトラック1が切返し地点TPまで移動する動作である。アプローチング動作は、ダンプトラック1が切返し地点TPから後進してアプローチング位置APまで移動する動作である。搬出動作は、ダンプトラック1がアプローチング位置APから運搬路HRに向けて移動する動作である。
【0078】
走行制御部65は、自己位置算出部63によって算出された車両位置P0と所定の走行軌跡とに基づいて加速指令SAa、制動指令SBaおよびトルク指令Taを算出する走行軌跡追従部(TRJ)を構成している。この走行制御部65は、行動判断部64からの動作指令Cと、自己位置算出部63によって算出した車両位置P0とに基づいて、ダンプトラック1の操舵アクチュエータ33、エンジン9、モータ制御装置41を制御し、行動判断部64が決定した動作を実行する。
図4に示すように、走行制御部65は、動作指令Cと車両位置P0とに基づいて、操舵用のトルク指令Ta、加速指令SAaおよび制動指令SBaを演算して出力する。
【0079】
具体的には、走行制御部65は、動作指令Cと車両位置P0とに基づいて、予め設定された走行軌跡に従ってダンプトラック1が走行するように、車両の操舵方向を算出する。走行制御部65は、算出した操舵方向に応じたトルク指令Taを操舵アクチュエータ33に出力する。これにより、操舵アクチュエータ33のアシストモータ36は、トルク指令Taに応じて回転駆動するから、出力軸38およびステアリングバルブ31が駆動し、前輪6L,6Rの操舵角θが制御される。
【0080】
また、走行制御部65は、動作指令Cと車両位置P0とに基づいて、予め設定された走行軌跡に従ってダンプトラック1が走行するように、車両の加速度や減速度を算出する。走行制御部65は、算出した加速度に応じて加速指令SAaと、算出した減速度に応じた制動指令SBaとを走行駆動部52に出力する。これにより、走行駆動部52は、加速指令SAaおよび制動指令SBaに基づいてモータ制御装置41を制御し、後輪7L,7Rの加速と減速とが制御される。
【0081】
実施の形態によるダンプトラック1は、上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
【0082】
図8に示すように、例えば採石現場等の鉱山は、積載領域LAと運搬路HRとを備えている。ここで、積載領域LAは、油圧ショベルEXによって砕石、土砂等の運搬物Rがダンプトラック1に積込まれる場所である。この積載領域LAでは、ダンプトラック1への運搬物Rの積込み作業に加えて、油圧ショベルEXによって砕石等を掘削する掘削作業が行われる。ここで、油圧ショベルEXは、積込み作業や掘削作業の進展に伴って積載領域LA内を移動する。このため、積載領域LAは、油圧ショベルEXの移動に伴って、ダンプトラック1の移動軌跡が変化する場所である。
【0083】
運搬路HRは、整備された通路であり、積載領域LAに接続して設けられる。ダンプトラック1は、空荷の状態で、運搬路HRを通じて外部から積載領域LAに進入する。ダンプトラック1は、運搬物Rを積載した状態で、運搬路HRを通じて積載領域LAから退出し、外部の放土領域(図示せず)に向けて運搬物Rを搬出する。運搬路HRに例えば障害物等が出現しない限り、ダンプトラック1は、予め決められた所定の移動軌跡に従って運搬路HRを走行する。このため、運搬路HRは、ダンプトラック1の移動軌跡がほぼ一定になる場所である。
【0084】
ダンプトラック1は、オペレータのマニュアル操作によって走行するマニュアルモードと、管理局71からの運行指令VI0によって走行する自律モードとを有する。そこで、まずマニュアルモードにおけるダンプトラック1の走行動作について説明する。
【0085】
図3ないし
図5に示すように、マニュアルモードでは、オペレータが操舵ハンドル32を回転操作すると、操舵アクチュエータ33は、オペレータによる操舵トルクTmに加えて、操舵トルクTmに応じたアシストトルクT0を発生させ、これらを加算した加算トルクT1によって出力軸38を回転させる。出力軸38の回転に応じて、ステアリングバルブ31は、圧油の供給と排出との切り換え、および、圧油の流量の調整を行う。これにより、ステアリングシリンダ27L,27Rが駆動し、前輪6R,6Lの操舵角θが調整される。
【0086】
また、
図4、
図6および
図7に示すように、オペレータがアクセルペダル50を踏込み操作すると、アクセル操作センサ50Aは、アクセルペダル50の操作量(踏込み量)に応じた加速指令SAmを走行駆動部52に出力する。同様に、オペレータがブレーキペダル51を踏込み操作すると、ブレーキ操作センサ51Aは、ブレーキペダル51の操作量(踏込み量)に応じた制動指令SBmを走行駆動部52に出力する。
【0087】
走行駆動部52は、加速指令SAmに基づいて加速指令SAを算出し、制動指令SBmに基づいて制動指令SBを算出する。走行駆動部52は、これらの加速指令SAと制動指令SBとに基づいて、モータ制御装置41を制御する。モータ制御装置41は、加速指令SAと制動指令SBとに基づいて、走行用モータ13L,13Rを力行動作または回生動作させ、後輪7L,7Rによる走行駆動を制御する。
【0088】
これにより、ダンプトラック1は、オペレータによる操舵ハンドル32の操作、アクセルペダル50の操作、ブレーキペダル51の操作に基づいて、運搬路HRや積載領域LAを走行する。
【0089】
次に、自律モードにおけるダンプトラック1の走行動作について説明する。
【0090】
ダンプトラック1のモード選択スイッチ59を切り換え操作すると、ダンプトラック1は、マニュアルモードから自律モードに切り換わる。
図4に示すように、この自律モードでは、自律モードコントローラ61は、操舵用のトルク指令Taを操舵アクチュエータ33に出力すると共に、車両を加速させるための加速指令SAaと、車両を減速させるための制動指令SBaとを走行駆動部52に出力する。
【0091】
図5に示すように、操舵アクチュエータ33は、自律モードコントローラ61からのトルク指令Taに基づいて、アシストモータ36を駆動し、トルク指令Taに応じたアシストトルクT0によって出力軸38を回転させる。出力軸38の回転に応じて、ステアリングバルブ31は、圧油の供給と排出との切り換え、および、圧油の流量の調整を行う。これにより、ステアリングシリンダ27L,27Rが駆動し、前輪6R,6Lの操舵角θが調整させる。
【0092】
また、
図6および
図7に示すように、走行駆動部52は、自律モードコントローラ61からの加速指令SAaに基づいて加速指令SAを算出し、自律モードコントローラ61からの制動指令SBaに基づいて制動指令SBを算出する。走行駆動部52は、これらの加速指令SAと制動指令SBとに基づいて、モータ制御装置41を制御する。モータ制御装置41は、加速指令SAと制動指令SBとに基づいて、走行用モータ13L,13Rを力行動作または回生動作させ、後輪7L,7Rによる走行駆動を制御する。
【0093】
これにより、ダンプトラック1は、自律モードコントローラ61からのトルク指令Ta、加速指令SAaおよび制動指令SBaに基づいて、運搬路HRや積載領域LAを自律走行する。
【0094】
ここで、例えばオペレータがダンプトラック1に搭乗した状態で積載領域LAに向けて移動するときに、自律モードでダンプトラック1を走行させることがある。この状態で、ダンプトラック1に搭乗したオペレータが、ダンプトラック1の停止を希望することがある。
【0095】
このとき、従来技術では、自律モードとマニュアルモードで共通したマシン制御モジュールを使用しており、自律モードでは、マニュアル操作は無効になっていた。このため、自律モードのダンプトラックを停止させるためには、自律モードからマニュアルモードに切り換えた後に、ブレーキ操作を行う必要があり、速やかな停止動作ができないという問題があった。
【0096】
これに対し、本実施の形態によるダンプトラック1では、自律モードで走行するときでも、走行駆動部52の最大値選択部53は、アクセルペダル50による加速指令SAmと、自律モードコントローラ61による加速指令SAaとを比較し、大きな値となる方を選択する。同様に、走行駆動部52の最大値選択部54は、ブレーキペダル51による制動指令SBmと、自律モードコントローラ61による制動指令SBaとを比較し、大きな値となる方を選択し、制動指令SBとして出力する。これに加え、走行駆動部52のアクセル出力演算部56は、最大値選択部53によって選択された加速指令SAよりも最大値選択部54によって選択された制動指令SBを優先させて、加速指令SAを無効にする。
【0097】
このため、自律モードで走行するときに、オペレータがブレーキペダル51を踏込み操作すると、ブレーキペダル51による制動指令SBmが、自律モードコントローラ61による制動指令SBaを上回るから、走行駆動部52は、ブレーキペダル51の踏込み量に応じた制動指令SBを出力する。これにより、自律モードからマニュアルモードに切り換えなくても、自律モード中のダンプトラック1を、ブレーキペダル51の踏込み操作によって停止させることができる。
【0098】
また、ダンプトラック1が自律モードで走行するときでも、オペレータが操舵ハンドル32を回転操作することによって、この回転操作に伴う操舵トルクTmを出力軸38に付与することができる。このため、自律モードからマニュアルモードに切り換えなくても、オペレータによる操舵ハンドル32を回転操作によって、ステアリングシステム21を操作することができ、自律モード中のダンプトラック1の走行方向を、操舵ハンドル32の回転操作によって調整することができる。さらに、アクセルペダル50の踏込み操作によって、自律モード中のダンプトラック1を加速させることもできる。
【0099】
かくして、実施の形態によれば、走行駆動部52の最大値選択部53(加速指令選択部)は、外部入力端子52Aから入力された加速指令SAaとアクセルペダル50(加速操作装置)による加速指令SAmとのうち大きい方を加速指令SAとして選択し、走行駆動部52の最大値選択部54(制動指令選択部)は、外部入力端子52Bから入力された制動指令SBaとブレーキペダル51(制動操作装置)による制動指令SBmとのうち大きい方を制動指令SBとして選択する。このため、走行駆動部52は、最大値選択部53によって選択した加速指令SAと、最大値選択部54によって選択した制動指令SBとに基づいて、車両を加速または減速させることができる。
【0100】
また、最大値選択部54は、外部入力端子52Bから入力された制動指令SBaとブレーキペダル51による制動指令SBmとのうち大きい方を、制動指令SBとして選択する。このため、例えば自律走行中であっても、車両に搭乗したオペレータがブレーキペダル51を操作することによって、ブレーキペダル51による制動指令SBmを、最大値選択部54に選択させることができる。この結果、自律走行中でもブレーキペダル51をマニュアル操作することによって、車両を停止させることができる。
【0101】
さらに、走行駆動部52は外部入力端子52A,52Bを備えるから、外部入力端子52A,52Bに自律走行用の加速指令SAaと制動指令SBaとを入力することによって、自律モードの機能を追加することできる。即ち、走行駆動部52の外部入力端子52A,52Bに自律モードコントローラ61を接続することによって、自律モードで走行可能なダンプトラック1を構成することができる。このため、マニュアルモード用の車両と自律モード用の車両とで、自律モードコントローラ61以外の構成を共通化することができるから、製造コストを低減することができる。
【0102】
また、ダンプトラック1は、車両の進行方向を操作する操舵ハンドル32(操舵操作装置)と、操舵ハンドル32の操舵トルクTmにアシストトルクT0(追加トルク)を付加する操舵アクチュエータ33と、操舵トルクTmとアシストトルクT0とを加算した加算トルクT1に基づいて、車両を操舵するステアリングシステム21とをさらに備える。これに加え、操舵アクチュエータ33は、外部からのトルク指令Taに基づいてアシストトルクT0(追加トルク)を発生させる。このとき、ステアリングシステム21は、操舵トルクTmとアシストトルクT0とを加算した加算トルクT1に基づいて車両を操舵する。このため、操舵アクチュエータ33に自律走行用のトルク指令Taを入力することによって、操舵アクチュエータ33にトルク指令Taに基づいたアシストトルクT0を発生させることができ、アシストトルクT0に基づいて車両を操舵することができる。また、自律走行中であっても、操舵ハンドル32からアシストトルクT0よりも大きな操舵トルクTmを入力することによって、マニュアル操作による操舵を行うことができる。
【0103】
これに加え、操舵アクチュエータ33はパワーステアリング装置であるから、マニュアル操作を行うときには、パワーステアリング装置によって、操舵トルクTmを補助するためのアシストトルクT0を発生させることができる。一方、自律走行を行うときには、操舵アクチュエータ33に外部からのトルク指令Taを入力することによって、操舵アクチュエータ33によってトルク指令Taに基づいたアシストトルクT0を発生させることができる。
【0104】
また、走行駆動部52の外部入力端子52A,52Bと操舵アクチュエータ33とには、車両を所定の走行軌跡に従って走行させる自律モードコントローラ61が接続されている。これに加えて、自律モードコントローラ61は、車両の位置を算出する自己位置算出部63(車両位置算出部)と、自己位置算出部63によって算出された車両位置P0と所定の走行軌跡とに基づいて加速指令SAa、制動指令SBaおよびトルク指令Taを算出する走行制御部65(走行軌跡追従部)とを備えている。このため、走行駆動部52の外部入力端子52A,52Bおよび操舵アクチュエータ33に自律モードコントローラ61を接続することによって、車両を所定の走行軌跡に従って自律走行させることができる。
【0105】
また、走行駆動部52にはモード選択スイッチ59を接続した。このため、モード選択スイッチ59が加速指令SAaおよび制動指令SBaの入力を許可することによって、走行駆動部52は、加速指令SAaと制動指令SBaとに基づいて、車両の走行駆動を制御することができる。これに対し、モード選択スイッチ59が加速指令SAaおよび制動指令SBaの入力を禁止することによって、走行駆動部52は、加速指令SAaと制動指令SBaとを排除して、マニュアル操作に基づいて、車両の走行駆動を制御することができる。
【0106】
さらに、操舵アクチュエータ33は、モード選択スイッチ59の選択状態に応じて、自律モードコントローラ61から入力されるトルク指令Taの有効と無効とを切り換える。このため、トルク指令Taを有効にしたときには、自律走行による操舵を行うことができ、トルク指令Taを無効にしたときには、マニュアル操作による操舵を行うことができる。
【0107】
なお、前記実施の形態では、操舵アクチュエータ33は操舵トルクTmを補助するパワーステアリング装置であるものとした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば操舵アクチュエータ33は、自律モードコントローラ61からのトルク指令Taに応じてアシストトルクT0を発生させるのに対し、操舵ハンドル32をマニュアル操作したときには、アシストトルクT0を発生させず、操舵トルクTmをそのまま出力軸38に伝達する構成としてもよい。
【0108】
前記実施の形態では、ステアリングシステム21は、ステアリングシリンダ27L,27Rによって前輪6L,6Rを操舵する操舵機構22を備えるものとした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば出力軸38の回転トルクをラックとピニオンからなるステアリングギア機構を介して前輪6L,6Rの操舵力に変換する操舵機構を用いてもよい。
【0109】
前記実施の形態では、ダンプトラック1は自律モードコントローラ61を備えるものとした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば自律モードコントローラ61を省いて、マニュアル操作だけが可能なダンプトラックを構成してもよい。この場合でも、自律モードコントローラ61を走行駆動部52に接続することによって、自律モードの機能を後から追加することができる。
【0110】
前記実施の形態では、車両として大型の運搬車両であるダンプトラックを例に挙げて説明したが、本発明はこれに限るものではなく、例えば小型の運搬車両にも適用することができる。