(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
a)ステップは0.05〜10torrの圧力で行われ、c)ステップおよびc´)ステップは0.05〜30torrの圧力で行われる、請求項10に記載の絶縁膜の製造方法。
【背景技術】
【0002】
シリコン窒化(SiN)薄膜およびシリコン炭窒化(SiCN)薄膜を含むSi-Nが含まれた絶縁膜は、フッ化水素(HF)に対する高い耐性を有する。そのため、メモリおよび大規模集積回路(large scale integrated circuit:LSI)などの半導体装置の製造工程において、シリコン酸化(SiO
2)薄膜などをエッチングする時におけるエッチングストッパ層や、ゲート電極の抵抗値の偏差増大やドーパントの拡散を防止する膜として用いられることができる。特に、ゲート電極の形成後におけるシリコン窒化膜の成膜温度の低温化が求められている。例えば、ゲート電極を形成した後にシリコン窒化膜を成膜する時に、その成膜温度を、従来のLP‐CVD(Low Pressure‐Chemical Vapor Deposition)法を用いる場合の成膜温度である760℃や、ALD(Atomic Layer Deposition)法を用いる場合の成膜温度である550℃よりも低くすることが求められている。
【0003】
ALD法は、任意の成膜条件(温度、時間など)下で、成膜に用いる2種(またはそれ以上)の原料ガスを1種ずつ交互に基板上に供給して1原子層単位で吸着させ、表面反応を用いて成膜を行う手法である。例えば、被処理体の表面に沿って第1の原料ガスと第2の原料ガスを交互に流して、第1の原料ガス中の原料ガス分子を被処理体の表面に吸着させ、この吸着された第1の原料ガスの原料ガス分子と第2の原料ガスの原料ガス分子とを反応させることで、1分子層分の厚さを有する膜を形成する。そして、このステップを繰り返すことで、被処理体の表面に高品質の薄膜を形成する。
【0004】
日本特許公開2004‐281853号の公報には、ALD法により、ジクロロシラン(DCS:SiH
2Cl
2)とアンモニア(NH
3)を交互に供給してシリコン窒化膜を形成する際に、アンモニアをプラズマにより活性化したアンモニアラジカル(NH
3*)を供給することにより、300℃〜600℃の低温でシリコン窒化膜を成膜することができることが記載されている。しかしながら、ALD法により低温で成膜されたシリコン窒化膜は、シリコン窒化膜の自然酸化に影響を与えたり、シリコン窒化膜のフッ化水素に対する耐性を低下させたりする要因となる塩素(Cl)濃度が増加するため、ウェットエッチング率が大きい。そのため、酸化膜に対するエッチング選択性(選択比)が小さい。また、低温で成膜されたシリコン窒化膜は膜応力が低いため、所望の応力強度を実現することができない欠点がある。シリコン窒化膜中に炭素(C)を導入することでフッ化水素に対する耐性を向上させる方法も考えられるが、400℃以下の低温領域では、シリコン窒化膜中に炭素を導入することが構造欠陥の要因となり得るため、絶縁耐性を劣化させる恐れがあるという欠点がある。
【0005】
そこで、本発明者らは、原子層蒸着法を用いて、低温でも優れた凝集力、高い蒸着率、優れた物理的および電気的特性を有する、Si‐N結合を含む絶縁膜の製造方法を提供するために本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、優れた熱的安定性および高い反応性を有するアミノシリルアミン化合物、および原子層蒸着法を用いて、前記アミノシリルアミン化合物、および窒素源が含まれている反応ガスの割合を調節することで製造されるSi‐N結合を含む絶縁膜の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記化学式1で表されるアミノシリルアミン化合物を提供する。
【0009】
【化1】
[前記化学式1中、
R
1〜R
4は、互いに独立して、水素、(C1〜C3)アルキル、(C2〜C3)アルケニル、(C2〜C3)アルキニル、(C3〜C7)シクロアルキル、または(C6〜C12)アリールである。]
【0010】
本発明の一実施形態によると、前記R
1〜R
4は、互いに独立して、水素、メチル、またはビニル(vinyl)であることができる。
【0011】
本発明の一実施形態によると、前記化学式1で表されるアミノシリルアミン化合物は、下記化合物から選択されることができる。
【0012】
【化2】
【0013】
本発明は、下記化学式2で表されるアミノシリルアミン化合物を含むシリコン含有絶縁膜蒸着用組成物を提供する。
【0014】
【化3】
[前記化学式2中、
R
1〜R
7は、互いに独立して、水素、(C1〜C4)アルキル、(C2〜C4)アルケニル、(C2〜C4)アルキニル、(C3〜C10)シクロアルキル、または(C6〜C12)アリールである。]
【0015】
本発明の一実施形態によると、前記化学式2で表されるアミノシリルアミン化合物は、下記化合物から選択されることができる。
【0016】
【化2】
【化4】
【0017】
本発明は、前記シリコン含有絶縁膜蒸着用組成物を用いた、Si‐N結合を含む絶縁膜の製造方法を提供する。
【0018】
本発明の一実施形態によると、前記絶縁膜の製造方法は、a)基板に前記シリコン含有絶縁膜蒸着用組成物を接触させて、前記基板にシリコン含有絶縁膜蒸着用組成物を吸着させるステップと、b)残留するシリコン含有絶縁膜蒸着用組成物および副産物をパージするステップと、c)前記シリコン含有絶縁膜蒸着用組成物が吸着された基板に反応ガスを注入して、前記シリコン含有絶縁膜蒸着用組成物のリガンドを除去することにより、Si‐N結合を有する原子層を形成するステップと、d)残留する反応ガスおよび反応副産物をパージするステップと、を含むことができる。
【0019】
本発明の一実施形態によると、前記絶縁膜の製造方法は、a)基板に前記シリコン含有絶縁膜蒸着用組成物を接触させて、前記基板にシリコン含有絶縁膜蒸着用組成物を吸着させるステップと、b)残留するシリコン含有絶縁膜蒸着用組成物および副産物をパージするステップと、c´)前記シリコン含有絶縁膜蒸着用組成物が吸着された基板に反応ガスを注入しながらプラズマを発生させることで、吸着された前記シリコン含有絶縁膜蒸着用組成物のリガンドを除去することにより、Si‐N結合を有する原子層を形成するステップと、d)残留する反応ガスおよび反応副産物をパージするステップと、を含むことができる。
【0020】
本発明の一実施形態による絶縁膜の製造方法において、前記反応ガスは、50〜1000Wのプラズマを発生させて活性化させてから供給されることができる。
【0021】
本発明の一実施形態による絶縁膜の製造方法において、前記反応ガスは、100〜500Wのプラズマを発生させて活性化させてから供給されることができる。
【0022】
本発明の一実施形態による絶縁膜の製造方法において、前記基板の温度は100〜600℃であることができる。
【0023】
本発明の一実施形態による絶縁膜の製造方法において、前記反応ガスは、100〜10000sccmの流量で供給されることができる。
【0024】
本発明の一実施形態による絶縁膜の製造方法において、前記a)ステップは0.05〜10torrの圧力で行われ、c)ステップおよびc´)ステップは0.05〜30torrの圧力で行われることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の新規なアミノシリルアミン化合物は、優れた熱的安定性および高い反応性を有するため、これを前駆体として用いて製造されたシリコン含有薄膜は、高い純度および優れた物理的、電気的特性を有し、これにより、低温領域でシリコン含有絶縁膜を形成することができるシリコン含有絶縁膜蒸着用組成物として使用できる。
【0026】
また、前記アミノシリルアミン化合物を含有するシリコン含有絶縁膜蒸着用組成物を用いて製造された絶縁膜は、高い純度および優れた物理的、電気的特性を有し、原子層蒸着法を用することで、低温で高応力を有するSi‐Nが含まれた絶縁膜を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、低温でも優れた凝集力、高い蒸着率、優れた物理的特性および電気的特性を有する、Si‐N結合を含む絶縁膜を形成することができる新規なアミノシリルアミン化合物、およびそれを用いた絶縁膜の製造方法を提供する。
【0029】
本発明による前記アミノシリルアミン化合物は、下記化学式1で表されることができる。
【0030】
【化1】
[前記化学式1中、
R
1〜R
4は、互いに独立して、水素、(C1〜C3)アルキル、(C2〜C3)アルケニル、(C2〜C3)アルキニル、(C3〜C7)シクロアルキル、または(C6〜C12)アリールである。]
【0031】
本発明に記載の「アルキル」およびその他の「アルキル」部分を含む置換体は、直鎖または分枝鎖の両方の形態を含む。また、本発明に記載の「アリール」は、1つの水素除去によって芳香族炭化水素から誘導された有機ラジカルであり、各環に、適切には4個〜7個、好ましくは5個または6個の環原子を含有する単一または縮合環系を含み、多数個のアリールが単一結合で連結されている形態も含む。具体例として、フェニル、ナフチル、ビフェニル、アントリル、インデニル(indenyl)、またはフルオレニルなどを含むが、これに限定されない。また、本発明の「アルケニル」は、1つ以上の二重結合を有する直鎖または分枝鎖の炭化水素であって、具体例として、ビニル、プロプ‐1‐エン(prop‐1‐ene)、またはブタ‐1,3‐ジエンを含むことができるが、これに限定されるものではなく、本発明の「アルキニル」は、1つ以上の三重結合を有する直鎖または分枝鎖の炭化水素を含む。
【0032】
本発明の新規なアミノシリルアミン化合物は、常温および常圧で液体状態の化合物であって、優れた揮発性を有し、絶縁膜の製造時に蒸着速度が速く且つ容易であり、優れた凝集力および優れたステップカバレッジを有する。
【0033】
さらに、本発明によるアミノシリルアミン化合物は、中心窒素原子に3個のシリコン原子が結合されているSi
3Nの三角平面分子構造を有するため、高い熱的安定性、低い活性化エネルギー、および優れた反応性を有し、非揮発性の副生成物を生成しないため、高い純度のシリコン含有絶縁膜を容易に形成することができるという利点がある。
【0034】
本発明の一実施形態による前記化学式1で表されるアミノシリルアミン化合物は、高い熱的安定性および反応性、高い純度の絶縁膜を形成するという点で、好ましくは、前記化学式1中の前記R
1〜R
4が、互いに独立して、水素、メチル、またはビニル(vinyl)であることができる。
【0035】
また、優れた凝集力およびステップカバレッジを有する絶縁膜を形成するという点で、前記化学式1で表されるアミノシリルアミン化合物は下記化合物から選択されることができるが、これに限定されるものではない。
【0037】
また、本発明は、低温でも優れた凝集力、高い蒸着率、優れた物理的特性および電気的特性を有するシリコン薄膜を形成することができる、下記化学式2で表されるアミノシリルアミン化合物を含むシリコン含有絶縁膜蒸着用組成物を提供する。
【0038】
【化3】
[前記化学式2中、
R
1〜R
7は、互いに独立して、水素、(C1〜C4)アルキル、(C2〜C4)アルケニル、(C2〜C4)アルキニル、(C3〜C10)シクロアルキル、または(C6〜C12)アリールである。]
【0039】
本発明によるシリコン含有絶縁膜蒸着用組成物は、前記化学式2で表されるアミノシリルアミン化合物を絶縁膜蒸着用前駆体として含み、前記アミノシリルアミン化合物の組成物中の含量は、絶縁膜の成膜条件、絶縁膜の厚さおよび特性などを考慮して、当業者が認識できる範囲内で含まれることができる。
【0040】
ウェットエッチング率を低めるという点で、前記シリコン含有絶縁膜蒸着用組成物に絶縁膜蒸着用前駆体として含まれた前記アミノシリルアミン化合物は、好ましくは下記化合物から選択されることができるが、これに限定されるものではない。
【0042】
本発明は、前記シリコン含有絶縁膜蒸着用組成物を用いた、Si‐N結合を含む絶縁膜の製造方法を提供する。
【0043】
前記絶縁膜の製造方法は、a)基板に前記シリコン含有絶縁膜蒸着用組成物を接触させて、前記基板に前記シリコン含有絶縁膜蒸着用組成物を吸着させるステップと、b)残留するシリコン含有絶縁膜蒸着用組成物および副産物をパージするステップと、c)前記シリコン含有絶縁膜蒸着用組成物が吸着された基板に反応ガスを注入して、前記シリコン含有絶縁膜蒸着用組成物のリガンドを除去することにより、Si‐N結合を有する原子層を形成するステップと、d)残留する反応ガスおよび反応副産物をパージするステップと、を含むことができる。
【0044】
また、前記絶縁膜の製造方法は、a)基板に前記シリコン含有絶縁膜蒸着用組成物を接触させて、前記基板に前記シリコン含有絶縁膜蒸着用組成物を吸着させるステップと、b)残留するシリコン含有絶縁膜蒸着用組成物および副産物をパージするステップと、c´)反応ガスを注入しながらプラズマを発生させて、吸着された前記シリコン含有絶縁膜蒸着用組成物のリガンドを除去することにより、Si‐N結合を有する原子層を形成するステップと、d)残留する反応ガスおよび反応副産物をパージするステップと、を含むことができる。
【0045】
前記絶縁膜の製造方法は不活性雰囲気で行われることが好ましい。また、高い純度の絶縁膜を製造するために、前記製造方法は、前記a)ステップを行った後に、基板に吸着されていない余分のアミノシリルアミン化合物、および吸着過程で生成された副生成物を除去するステップをさらに含むことができる。
【0046】
前記反応ガスを注入しながらプラズマを発生させて、吸着された前記シリコン含有絶縁膜蒸着用組成物のリガンドを除去することにより、Si‐N結合を有する原子層を形成するステップ(ステップc´)は、チャンバ内に反応ガスを注入し、プラズマを用いて活性化させた反応ガスの少なくとも1つ以上の反応ガスラジカルを生成し、前記活性化された反応ガスラジカルにより吸着された前記アミノシリルアミン化合物を窒化(SiN)、炭窒化(SiCN)、または酸窒化(SiON)した後、Si‐N結合を含む絶縁膜を基板上に蒸着させる工程と、前記アミノシリルアミン化合物の窒化(SiN)、炭窒化(SiCN)、または酸窒化(SiON)過程で生成された前記シリコン含有絶縁膜蒸着用組成物のリガンドを除去する工程と、を含むことができる。
【0047】
また、目的とする前記Si‐N結合を有する原子層の厚さが得られるまで、サイクルが繰り返して行われることができる。
【0048】
前記基板の温度は100〜600℃であり、好ましくは100〜550℃であることができる。これは、揮発性に優れた前記アミノシリルアミン化合物を用いることにより、低温工程でも原子層が形成可能であることを意味する。
【0049】
前記原子層形成時の圧力は0.05〜30torrであることができる。好ましくは、a)ステップでは圧力が0.05〜10torrであり、c)ステップおよびc´)ステップでは圧力が0.05〜30torrであることができる。
【0050】
前記基板の温度は100℃〜600℃であることができ、前記反応ガスは、窒素(N
2)、アンモニア(NH
3)、N
2O、NO、およびNO
2から選択される1つ以上の窒素源反応ガスであることができるが、これに限定されるものではない。この際、前記反応ガスは、100〜10000sccm(standard cubic centimeter per minute)の流量で供給されることが好ましく、前記c´)ステップで、プラズマを50〜1000Wの範囲で発生させて活性化させてから供給されることが好ましい。
【0051】
本発明の製造方法により製造される絶縁膜は、より低い温度および低いプラズマを供給するだけで、優れた蒸着率および高応力を有することができる。さらに、炭素含有量を最小化することができるため、Si‐N結合を有する高品質の絶縁膜を形成することができることを特徴とする。前記絶縁膜は、好ましくは50〜800Wのプラズマを発生させることで製造されることができ、より好ましくは100〜500Wの低いプラズマを発生させることで製造されることができる。
【0052】
また、本発明は、前記アミノシリルアミン化合物を前駆体として用いて製造されたSi‐N結合を含む絶縁膜を提供する。前記絶縁膜は、本発明による前記アミノシリルアミン化合物を用いることで、低温で高応力を有することができ、前記アミノシリルアミン化合物の低い活性化エネルギーにより、蒸着速度が速く、非揮発性の副生成物が殆ど発生しないため、高い純度を有することができる。
【0053】
以下、本発明を下記の実施例に基づいてより詳細に説明する。但し、下記実施例は本発明を例示するためのものにすぎず、本発明を限定するものではない。
【0054】
以下の全ての化合物に係る実施例は、グローブボックスまたはシュレンクフラスコを用いて、無水および不活性雰囲気下で行った。また、その生成物は、プロトン核磁気共鳴分光法(
1H Nuclear Magnetic Resonance;NMR)、熱重量分析法(thermogravimetric analysis;TGA)、及びガスクロマトグラフィー(gas chromatography;GC)により分析し、蒸着は、常用化されたシャワーヘッド方式の枚葉式(single wafer type)ALD装置(200mm)および公知のプラズマ強化原子層蒸着法(PEALD)を用いて行い、蒸着した絶縁膜の厚さは、エリプソメータ(Ellipsometer)で測定し、赤外分光分析(infrared spectroscopy)およびオージェ電子分光分析(Auger Electron Spectroscopy;AES)を用いて蒸着された薄膜および組成を分析した。
【0055】
[実施例1]ジメチルアミノジメチルシリルビスジメチルシリルアミンの合成
無数および不活性雰囲気下で火炎乾燥された3000mLのシュレンクフラスコにクロロジメチルシラン((CH
3)
2HSiCl)400g(4.23mol)および有機溶媒n‐ペンタン1500mlを入れて撹拌しながら、アンモニア(NH
3)216g(12.68mol)を−25℃に維持しながらゆっくりと添加した。添加完了後、その反応溶液を徐々に常温に昇温し、6時間撹拌した。反応が終わった反応混合物を濾過して生成された白色固体を除去し、濾過液を得た。次いで、この濾過液から溶媒を減圧下で除去することで、テトラメチルジシラザン(((CH
3)
2HSi)
2NH)197g(1.48mol)を回収した。回収されたテトラメチルジシラザン(((CH
3)
2HSi)
2NH)197g(1.48mol)および有機溶媒n‐ヘキサン300mlを火炎乾燥された2000mLのシュレンクフラスコに入れて撹拌しながら、2.29M濃度のノルマルブチルリチウム(n‐C
4H
9Li)ヘキサン(C
6H
14)溶液456g(1.48mol)を−15℃に維持しながらゆっくりと添加した。添加完了後、その反応溶液を徐々に常温に昇温し、12時間撹拌してから、テトラヒドロフラン(O(C
2H
2)
2)500mlを添加した。この反応溶液に、ジクロロジメチルシラン(Cl
2Si(CH
3)
2)と2当量のジメチルアミンとを定量的に反応させて合成したクロロジメチルジメチルアミノシラン(ClSi(CH
3)
2(N(CH
3)
2))203g(1.48mol)を−20℃に維持しながらゆっくりと添加した。添加完了後、その反応溶液を徐々に昇温し、65℃に維持しながら12時間撹拌した。反応が終わった反応混合物を濾過して生成された白色固体を除去して、濾過液を得た。この濾過液から溶媒を減圧下で除去し、減圧蒸留により、ジメチルアミノジメチルシリルビスジメチルシリルアミン(((CH
3)
2SiH)
2N(Si(CH
3)
2(N(CH
3)
2))208g(0.89mol)を収率60%で得た。
【0056】
前記ジメチルアミノジメチルシリルビスジメチルシリルアミン(((CH
3)
2SiH)
2N(Si(CH
3)
2(N(CH
3)
2))の蒸気圧測定および熱重量分析を行って、
図1および
図2に示した。
【0057】
1H-NMR(inC
6D
6) δ 0.20(s, 6H, NSi(CH
3)
2N(CH
3)
2), 0.23(d, 12H, NSiH(CH
3)
2), 2.46(s, 6H, Si(N(CH
3)
2), 4.68(m, 2H, NSiH(CH
3)
2);
沸点:197℃;
GC分析結果>99%。
【0058】
[実施例2]プラズマ強化原子層蒸着法(PEALD)を用いた、Si‐N結合を含む絶縁膜の製造
プラズマ強化原子層蒸着法(PEALD)を用いる通常のプラズマ強化原子層蒸着(PEALD)装置で、実施例1の化合物を含有するシリコン含有絶縁膜蒸着用組成物を用いて、シリコン基板温度300℃、プラズマ400WとしてSi‐N結合を含む絶縁膜を成膜した。反応ガスとしては、窒素(N
2)とアンモニア(NH
3)とを200:30の割合で混合して使用し、不活性気体であるアルゴンをパージガスとして使用した。以下、
図3、
図4、および表1にSi‐N結合を含む絶縁膜の具体的な蒸着方法を示した。
【0059】
前記実施例2の方法により蒸着したSi‐N結合を含む絶縁膜の厚さをエリプソメータ(Ellipsometer)および透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope、TEM)により測定し、赤外分光分析(Infrared Spectroscopy、IR)、オージェ電子分光分析(Auger Electron Spectroscopy、AES)、および二次イオン質量分析装置(Secondary Ion Mass Spectrometer、SIMS)を用いて絶縁膜(シリコン窒化薄膜)の成分を分析して下記表2に示した。
【0060】
図5および
図6はそれぞれ、前記実施例2の方法により蒸着したSi‐N結合を含む絶縁膜およびその組成を赤外分光分析およびオージェ電子分光分析により分析した結果を示す。赤外分光スペクトルにおいて、Si‐Nの分子振動が850〜868cm
-1の範囲で観察され、オージェ電子分光分析の結果、SiとNの割合が0.68〜0.84範囲と確認された。また、炭素含有量が1%未満のSi‐N結合を含む高品質の絶縁膜が形成されたことが分かった。
【0061】
[実施例3]プラズマ強化原子層蒸着法(PEALD)を用いた、Si‐N結合を含む絶縁膜の製造
プラズマ強化原子層蒸着法(PEALD)を用いる通常のプラズマ強化原子層蒸着(PEALD)装置で、実施例1の化合物を含有するシリコン含有絶縁膜蒸着用組成物を用いて、シリコン基板温
図300℃、プラズマ100WとしてSi‐N結合を含む絶縁膜を成膜した。反応ガスとしては窒素(N
2)を使用し、不活性気体であるアルゴンをパージガスとして使用した。以下、
図4および表1にSi‐N結合を含む絶縁膜の具体的な蒸着方法を示した。
【0062】
前記実施例3の方法により蒸着したSi‐N結合を含む絶縁膜の成分を前記実施例2の方法と同様に分析し、下記表2に示した(
図7参照)。
【0063】
[実施例4]プラズマ強化原子層蒸着法(PEALD)を用いた、Si‐N結合を含む絶縁膜の製造
プラズマ強化原子層蒸着法(PEALD)を用いる通常のプラズマ強化原子層蒸着(PEALD)装置で、実施例1の化合物を含有するシリコン含有絶縁膜蒸着用組成物を用いて、シリコン基板温
図300℃、プラズマ200WとしてSi‐N結合を含む絶縁膜を成膜した。反応ガスとしては窒素(N
2)を使用し、不活性気体であるアルゴンをパージガスとして使用した。以下、
図4および表1にSi‐N結合を含む絶縁膜の具体的な蒸着方法を示した。
【0064】
前記実施例4の方法により蒸着したSi‐N結合を含む絶縁膜の成分を前記実施例2の方法と同様に分析し、下記表2に示した(
図8参照)。
【0065】
[実施例5]プラズマ強化原子層蒸着法(PEALD)を用いた、Si‐N結合を含む絶縁膜の製造
プラズマ強化原子層蒸着法(PEALD)を用いる通常のプラズマ強化原子層蒸着(PEALD)装置で、実施例1の化合物を含有するシリコン含有絶縁膜蒸着用組成物を用いて、シリコン基板温
図300℃、プラズマ400WとしてSi‐N結合を含む絶縁膜を成膜した。反応ガスとしては窒素(N
2)を使用し、不活性気体であるアルゴンをパージガスとして使用した。以下、
図4および表1にSi‐N結合を含む絶縁膜の具体的な蒸着方法を示した。
【0066】
前記実施例5の方法により蒸着したSi‐N結合を含む絶縁膜の成分を前記実施例2の方法と同様に分析し、下記表2に示した(
図9参照)。
【0067】
[比較例1]
低圧化学気相蒸着法(LPCVD)を用いて、基板温
図700℃、ジクロロシラン(DCS)40sccmおよびアンモニア(NH
3)240sccmの条件下で絶縁膜を製造した。以下、表1に絶縁膜の具体的な蒸着方法を示し、前記絶縁膜の成分を前記実施例2の方法と同様に分析して下記表2に示した。
【0068】
[比較例2]
プラズマ強化化学気相蒸着法(PECVD)を用いて、基板温
図400℃、プラズマ500W、シラン(SiH
4)とアンモニア(NH
3)の割合1:8の条件下で絶縁膜を製造した。以下、表1に絶縁膜の具体的な蒸着方法を示し、前記絶縁膜の成分を前記実施例2の方法と同様に分析して下記表2に示した。
【0070】
【表2】
※ウェットエッチング率(Wet etch rate):高温で低圧化学気相蒸着法(LPCVD)により形成した比較例1の絶縁膜のフッ化水素(300:1BOE溶液)に対する耐性結果(0.014Å/sec)と比較した値である。
【0071】
その結果、本発明による前記Si‐N結合を含む絶縁膜の蒸着率は、0.21〜0.48Å/cycleの範囲であった。
【0072】
また、
図10に示したように、実施例2〜5で製造したSi‐N結合を含む絶縁膜のフッ化水素(300:1BOE溶液)に対する耐性と、高温で低圧化学気相蒸着法(LPCVD)により形成した比較例1の絶縁膜のフッ化水素(300:1BOE溶液)に対する耐性とを比較した結果、実施例2〜5の絶縁膜が比較例1の絶縁膜に比べて2.89〜28.06倍高い耐性を有していて、フッ化水素に対する耐性が優れることを確認することができた。
【0073】
すなわち、本発明によって、プラズマ原子層蒸着工程によりアミノシリルアミン化合物を含むシリコン含有絶縁膜蒸着用組成物を用いる場合、低い温度および低いプラズマで蒸着可能な高純度のSi‐Nを含む絶縁膜を形成するにおいてその活用価値が高いことが確認され、シリコン含有絶縁膜の応用全分野にわたって有用に用いられることができると判断される。