特許第6343039号(P6343039)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6343039
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】タービン施設の解体工法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/08 20060101AFI20180604BHJP
【FI】
   E04G23/08 Z
   E04G23/08 J
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-3067(P2017-3067)
(22)【出願日】2017年1月12日
【審査請求日】2017年12月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503258867
【氏名又は名称】株式会社ナベカヰ
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 龍一
【審査官】 五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−077556(JP,A)
【文献】 特開昭63−150401(JP,A)
【文献】 特開2011−157807(JP,A)
【文献】 特開2010−112003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/08
F01D 1/00−25/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電機の外ケースが、半円筒状の外ケース上部と外ケース下部に溶断され、前記外ケース上部が、所定の幅で複数の分割片に溶断されると共に、タービンぺデスタルの脚が溶断される先行火入れ工程(s1)と、
重機で作業エリアに面するタービン建屋の側面が撤去され、発電機とタービンの周囲が中抜きされるタービン建屋の第1次解体工程(s2)と、
ローターを重機で引き抜いて作業エリアに引き出し、複数に溶断してトレーラーに積み込むと共に、先行火入れ工程(s1)で分割した外ケース上部を重機で掴み撤去する工程(s3a)と、ステーターを上下2分割となるように溶断し、続いてステーター上部を幅方向に複数に溶断して重機で掴み撤去すると共に、ステーター下部を幅方向に複数に溶断し重機で掴み撤去する工程(s3b)と、外ケース下部を重機で掴み、作業エリアに引き出し複数に溶断して撤去する工程(s3c)と、からなる発電機の撤去工程(s3)と、
タービンの外カバー、内カバー、回転羽根部及び台座を重機で掴み撤去するタービンの撤去工程(s4)と、
重機による解体と撤去を行なうタービンぺデスタルの撤去工程(s5)と、
重機で作業エリアに引き出して解体する復水器の撤去工程(s6)と、
前記タービン建屋の第1解体工程で残した部分を重機で解体し撤去するタービン建屋の第2次解体工程(s7)と、
が備えられることを特徴とするタービン施設の解体工法。
【請求項2】
前記タービンの回転羽根部は、羽根の一部が切り落とされ、載置面が設けられることを特徴とする請求項1に記載のタービン施設の解体工法。
【請求項3】
前記ステーターは、半円筒状のステーター上部とステーター下部に溶断され、前記ステーター上部が幅で複数の分割片に溶断され、前記ステーター下部が所定の幅で複数の分割片に溶断されることを特徴とする請求項1に記載のタービン施設の解体工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火力発電所のタービン施設の解体工法に係り、より詳しくは、解体部品を吊って搬出する作業がなく、重機を使用した安全で工期の短いタービン施設の解体工法に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所のタービン施設は、タービン建屋と、建屋内部に設置されたタービン装置からなり、タービン装置は、高圧タービンと中低圧タービンと低圧タービンと発電機と復水器からなる。その総重量は2000〜3000トンにもなる。タービンは、単体でも180トンと重く、複数の部材に切り出しての搬出となる。搬出は、これまで自走式のクレーンなどで吊ることによって行なっていた。しかしながら、切り出したタービン部材を吊るには、ワイヤ掛け等が人手作業になり、また解体した部材に玉掛けのフックが整っていないので落下などの危険も多い。そのため、解体に要する工期が約4〜5カ月と長い。
【0003】
近年、高層アパートの解体等を迅速に行なうため、60m級の作業高さが可能な解体用の重機が製品化されている。この重機は、足廻りの安定した大型クローラと、油圧ショベル並みの高出力パワープラントと、ロングブームとを備える。ブームの先端には、例えば圧砕機(ニブラーと称す)を装着でき、コンクリートを圧砕したり、柱を引き倒したり、切出し片を掴んで運ぶことができる。60mの作業高さは、タービン建屋の高さをカバーするので、このような重機を使用した効率的なタービン施設の解体が望まれる。なお、本出願人は、ボイラー施設の解体工法を提案している。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−112003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、重機を使用した安全で工期の短いタービン施設の解体工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるタービン施設の解体工法は、発電機の外ケースが、半円筒状の外ケース上部と外ケース下部に溶断され、前記外ケース上部が、所定の幅で複数の分割片に溶断されると共に、タービンぺデスタルの脚が溶断される先行火入れ工程(s1)と、重機で作業エリアに面するタービン建屋の側面が撤去され、発電機とタービンの周囲が中抜きされるタービン建屋の第1次解体工程(s2)と、ローターを重機で引き抜いて作業エリアに引き出し、複数に溶断してトレーラーに積み込むと共に、先行火入れ工程(s1)で分割した外ケース上部を重機で掴み撤去する工程(s3a)と、ステーターを上下2分割となるように溶断し、続いてステーター上部を幅方向に複数に溶断して重機で掴み撤去すると共に、ステーター下部を幅方向に複数に溶断し重機で掴み撤去する工程(s3b)と、外ケース下部を重機で掴み、作業エリアに引き出し複数に溶断して撤去する工程(s3c)と、からなる発電機の撤去工程(s3)と、タービンの外カバー、内カバー、回転羽根部及び台座を重機で掴み撤去するタービンの撤去工程(s4)と、重機による解体と撤去を行なうタービンぺデスタルの撤去工程(s5)と、重機で作業エリアに引き出して解体する復水器の撤去工程(s6)と、前記タービン建屋の第1解体工程で残した部分を重機で解体し撤去するタービン建屋の第2次解体工程(s7)と、が備えられることを特徴とする。



【0007】
前記タービンの回転羽根部は、羽根の一部が切り落とされ、載置面が設けられることを特徴とする。
【0008】
前記発電機のステーターは、ガス溶断によって半円筒状のステーター上部とステーター下部とに2分割され、さらに前記ステーター上部が所定の幅で複数の分割片に分割され、重機で掴み、撤去されると共に、次に前記ステーター下部がさらに所定の幅で複数の分割片に分割され、重機で掴み、撤去されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によるタービン施設の解体工法によれば、
(1)先行火入れ工程を設け、タービン建屋の解体に先立って、発電機とタービンが設置されるタービンぺデスタルの脚をガス溶断したので、タービン建屋の中抜き解体でタービンぺデスタルの足元がガラで埋まっても、脚の溶断に苦労することがない。タービンぺデスタルの撤去工程を円滑に進めることができる。
(2)先行火入れ工程を設け、発電機の外ケースをガス溶断によって半円筒状の外ケース上部と外ケース下部に2分割し、さらに外ケース上部を所定の幅で複数に分割したので、タービン建屋の第1解体工程の後、重機のアームが発電機に届くようになると、直ちに外ケース上部の分割片を重機で掴み撤去できる。すなわち分割片をタービン建屋の外の作業エリアに容易に運び出せる。
(3)工期は、従来の吊りによる工法に比較して短く、約3カ月でタービン施設の解体ができる。
【0010】
タービンの回転羽根部は、羽根の一部が切り落とされて、載置面としたので、トレーラーに安定して載置できる。
【0011】
発電機のステーターも発電機の外ケースと同様に、ガス溶断によって半円筒状のステーター上部とステーター下部とに2分割したので、また、ステーター上部をさらに所定の幅の複数の分割片に分割したので、重機で掴んで容易に撤去できる。ステーター下部も複数の分割片に分割し、重機で掴んで容易に撤去できる。すなわち解体作業を円滑に進めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明によるタービン施設の全体斜視図である。
図2】重機の種類とタービン建屋の高さとの関係を示す図である。
図3】タービン装置の構成を示す図で、(A)は全体斜視図、(B)はタービンぺデスタルの斜視図である。
図4】発電機の外ケースをガス溶断する説明図である。
図5】タービンぺデスタルの脚を溶断する説明図である。
図6】タービン建屋の北面を撤去する説明図である。
図7】タービン建屋の西面を撤去する説明図である。
図8図7で、西面の上部を撤去する詳細な説明図である。
図9図7で、西面の支柱を撤去する詳細な説明図である。
図10】タービン建屋の第1次解体が終了し、タービン装置の解体が開始できる状態を示す斜視図である。
図11】発電機の内部構成を示す図である。
図12】発電機のローターを引く抜く説明図である。
図13】発電機の外ケースを撤去する説明図である。
図14】発電機のステーターを撤去する説明図である。
図15】タービンの外カバーの構成を示す説明図である。
図16】タービンの外カバーを撤去する説明図である。
図17】タービンの内カバーを撤去する説明図である。
図18】タービンの回転羽根部を撤去する説明図である。
図19】タービンの台座を撤去する説明図である。
図20】発電機の外ケース下部を撤去する説明図である。
図21】タービンぺデスタルを解体し撤去する説明図である。
図22】復水器を撤去する説明図である。
図23】タービン建屋の南面を撤去した図である。
図24】タービン建屋の北面を撤去した図である。
図25】タービン施設の解体工法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明によるタービン施設の解体工法を説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明によるタービン施設100の全体斜視図である。タービン施設100は、タービン建屋50とタービン装置60かなる。タービン装置60は、タービン建屋50の3階に設置されている。この実施例ではタービン建屋50の北側と西側が解体の作業エリアとして使用できる。そのため、タービン建屋50の東面には、足場18が組まれ防音シートが張られる。タービン建屋50の南面には別の建屋が建てられており南面は解体の対象ではない。タービン建屋50の北面、西面、東面の壁パネルは、取り外されているとする。支柱21はH鋼からなるもので、東面と西面に各9本が設けられているとする。
【0015】
重機は、4台を配置した。高さ42mに届くクローラ型重機1、高さ32mに届くクローラ型重機2、2台の高さ16mに届くクローラ型重機3である。この他に散水車4を用意した。散水車4はそれ程高さがないが、高所での散水が必要な場合は、クローラ型重機1やクローラ型重機2の先端からも散水できる。クローラ型重機1とクローラ型重機2は、解体の主たる重機で、クローラ型重機3は引き出しや小割を行なう合番重機である。これら重機の他に、図示しないが、作業エリアには積み込み用重機や小割重機も配置される。
【0016】
図2は、重機の種類とタービン建屋の高さとの関係を示す図である。タービン建屋50の高さは約31mである。クローラ型重機1とクローラ型重機2は、タービン建屋50の屋根より高く、これを解体できる。タービン装置60は、3階にあって高さは約10mである。クローラ型重機1とクローラ型重機2には、先端に圧砕機(ニブラー)6がそれぞれ装着され、クローラ型重機3には、鉄骨カッター7と、ブレーカー8が装着される。
【0017】
図3は、タービン装置60の構成を示す図で、(A)は全体斜視図、(B)はタービンぺデスタル14の斜視図である。タービン装置60は、タービンぺデスタル14の上に搭載されており、発電機9と、低圧タービン10と、中低圧タービン11と、高圧タービン12からなる。復水器13はタービンぺデスタル14の中央下部(1階部分)に設けられる。図3(B)に示すように、タービンぺデスタル14は、鉄筋入り強化コンクリートの柱からなる架体である。
【0018】
図4は、発電機9の外ケース9aをガス溶断する説明図である。この工程は建屋の解体に先立って行なう。先行火入れ工程と呼ぶ。発電機9の外ケース9aが、ガス溶断によって半円筒状の外ケース上部9aaと外ケース下部9abに2分割される。さらに外ケース上部9aaは、幅方向に所定の幅で複数の分割片25に溶断される。本実施例では、図4に示すように、丸で囲んだa、b、c、dの4つに分割している。白い点線が溶断ラインを示す。励磁器15、スリップリング16に取り外せるよう溶断する。溶断は人手作業で行うので、タービンぺデスタル14の上に足場18が組まれる。溶断は酸素ガスを使用する。詳細には、溶断棒と被溶断物の間に電圧をかけてアークを発生させながら加熱し、ノズルより酸素ガスを送り込んで溶断する。
【0019】
図5は、タービンぺデスタルの脚を溶断する説明図である。発電機とタービンが設置されるタービンぺデスタルの脚が溶断される。タービンぺデスタルの脚の溶断は、先行火入れ工程で行なう人手作業の1つである。脚14の表面のコンクリートを剥がし、鉄筋14bをガス溶断する。一部は残し切りする。
【0020】
図6は、タービン建屋50の北面を撤去する説明図である。作業エリアに面するタービン建屋の北面の全部と、西面が一部を残して撤去される。そして発電機9とタービンに至る周囲が、重機で中抜きされる。タービン建屋の第1次解体工程と呼ぶ。屋根のパネルは、クローラ型重機1で掴み、地上の作業エリアに運ぶ。北面の梁もクローラ型重機1で掴み、引きちぎって、地上の作業エリアに運ぶ。図6に示すように、屋根の周囲に設けられた手摺りであるパラペット17は、一部がクローラ型重機1で砕かれる。その時、ガラが北側方向に落下しないように足場18に、忍び返し20が設けられる。これによりガラは建屋内に落下する。図6に示すように、タービン装置60に至る2階と3階の床の部分も解体され撤去される。これは、中抜きと称する。
【0021】
図7は、タービン建屋50の西面を撤去する説明図である。西面の北側の支柱21を、西1番支柱21a、西2番支柱21b、西3番支柱21cとする。丸で囲んだA、B、Bの箇所を溶断(縁切り)するため、40mの高さに届く高所作業車5を使用する。
【0022】
図8は、図7で、西面の上部を撤去する詳細な説明図である。、丸で囲んだBの箇所(2カ所)が、斜めに残し切りされ、Aの箇所も切断されているので、Gで示す箇所をクローラ型重機2で掴み、揺らして西側方向に折るように引き剥がし、作業エリアに運ぶ。
【0023】
図9は、図7で、西面の支柱を撤去する詳細な説明図である。支柱21は、図8のBで示すように、支柱の下部が斜めに残し切り溶断されているとする。この状態で、クローラ型重機2で支柱21の上部を掴み、揺らすようにして支柱21を倒す。
【0024】
図10は、タービン建屋50の第1次解体が終了し、タービン装置60の解体が開始できる状態を示す斜視図である。西面の支柱21は、5本が撤去され、4本を残し安全性を確保した。また、東面北側の2本の支柱21も撤去した。タービン装置60の西側の2階と3階の床を含む部分も中抜きして、撤去される。
【0025】
図11は、発電機9の内部構成を示す図である。発電機9の内部には、円筒状のステーター23が設けられ、ローター22が貫通している。一端には、励磁器15が設けられる。外ケースの両端は、スリップリング16で蓋をされている。
【0026】
図12は、発電機9のローター22を引く抜く説明図である。ここからが発電機の撤去工程となる。一側の励磁器15とスリップリング16の上半分を撤去し、ローター22をクローラ型重機2で掴み引き出す。ローター22は、重量が、約40トンと重いので、作業エリアに引き出した後、2つにガス溶断して、トレーラー24に積み込んで運ぶ。
【0027】
図13は、発電機9の外ケース9aを撤去する説明図である。外ケース9aは、図4に示す先行火入れ工程で、ガス溶断にて上下に2分割され、さらに外ケース上部9aaは、ガス溶断で幅方向に4分割され、4つの分割片25とされている。クローラ型重機2で分割片25を掴み、作業エリアに運び撤去する。本実施例の分割片25の重量は、約12〜16トンである。分割片25をさらに半分に溶断してもよい。12〜16トンであれば、トレーラー24に積み込んで運ぶことができる。
【0028】
図14は、発電機のステーターを撤去する説明図である。発電機9の外ケース9aを分割し、外ケース上部9aaを撤去すると、ステーター23が露出する。そこで、ガス溶断を使用して、ステーター23を半円筒状となるように上下に2分割し、さらに所定の幅で4つにガス溶断する。まず、ステーター上部の4つの分割片26を撤去し、次にステーター下部を4つに分割して分割片30とし撤去する。ステーター23の分割片26、30の重量は、約23トンである。、これをトレーラー24に積み込んで運び出す。ステーター23を撤去すると、発電機9の外ケース下部9abが露出する。本実施例では、外ケース下部9abの撤去を行なわず、次にタービンの解体を行なった。これに限らず、ステーター23の撤去後に、続けて発電機9の外ケース下部9abを撤去してもよい。
【0029】
図15は、タービンの外カバーの構成を示す説明図である。タービンは、図3に示すように、低圧タービン10と、中低圧タービン11と、高圧タービン12からなる。外カバーは、低速タービン10の外カバー10a、中低圧タービン11の外カバー11a、高速タービン12の外カバー12aからなる。外カバー11aは、外カバー部品11aiと11aiiに分けることができる。内カバーは、低速タービン10の内カバー10b、中低圧タービン11の内カバー11b、高速タービン12の内カバー12bからなる。台座は、低速タービン10の台座10c、中低圧タービン11の台座11c、高速タービン12の台座12cからなる。台座10cは、台座部品10ciと10ciiに分けることができる。
【0030】
図16は、タービンの外カバーを撤去する説明図である。ここからが、タービンの撤去工程になる。外カバーを固定しているボルト等は、事前にガス溶断しておく。低速タービン10の外カバー10a、中低圧タービン11の外カバー11a、高速タービン12の外カバー12aをクローラ型重機2で掴み、作業エリアに撤去する。解体部品の処理場へは、トレーラー24に積み込んで運ぶ。
【0031】
図17は、タービンの内カバーを撤去する説明図である。低速タービン10の内カバー10b、中低圧タービン11の内カバー11b、高速タービン12の内カバー12bをクローラ型重機2で掴み、作業エリアに撤去する。高速タービン12の内カバー12bの撤去は図を省略した。
【0032】
図18は、タービンの回転羽根部を撤去する説明図である。低速タービン10の回転羽根部27と、中低速タービン11の回転羽根部28をクローラ型重機2で掴み、作業エリアに撤去する。回転羽根部27、28は、羽根の一部が切り落とされ、載置面31が設けられる。これにより、安定してトレーラー24に載置できる。回転羽根部27の重量は約21トン、回転羽根部28の重量は、約23トンである。羽根の切断は、ガス溶断で行なう。図18では、点線で切断箇所を示し、切断片27a、28aも図示している。高速タービン12の回転羽根部は図を省略した。
【0033】
図19は、タービンの台座を撤去する説明図である。低速タービン10の台座10c、中低圧タービン11の台座11c、高速タービン12の台座12cをクローラ型重機2で掴み、作業エリアに撤去する。台座10cは、台座部品10ciと10ciiに分けて撤収する。台座12cの重量は約28トンと重い。台座部品10ciの重量は約10トン、台座部品10ciiの重量は約4トン、台座11cの重量は約26トンである。
【0034】
図20は、発電機の外ケース下部を撤去する説明図である。低圧タービン10と、中低圧タービン11と、高圧タービン12を撤去すると、タービンペデスタル14には、発電機9の外ケース下部9abが残る。外ケース下部9abを溶断することなく、これをクローラ型重機2で掴み、作業エリアに引き出すことができる。作業エリアで3つに分割し、分割片29とすることができる。分割片29の重量は、約19トンである。
【0035】
図21は、タービンぺデスタルを解体し撤去する説明図である。圧砕機(ニブラー)6が装着されたクローラ型重機1とクローラ型重機2、鉄骨カッター7が装着されたクローラ型重機3、それにブレーカー8が装着された別のクローラ型重機3を投入して、強固なタービンぺデスタルを解体する。図5に示すように先行火入れ工程で、タービンぺデスタル14の脚をあらかじめ溶断しているので、解体と撤去が容易である。
【0036】
図22は、復水器を撤去する説明図である。復水器13は、2つのユニットからなるので、カバー等を剥がして、クローラ型重機2で作業エリアに撤去する。
【0037】
図23は、タービン建屋50の西面をすべて撤去した図である。図24は、タービン建屋50の北面をすべて撤去した図である。いずれもタービン建屋の第2次解体工程に相当し、南面と東面の残った支柱を撤去し、2階と3階の床の残りを撤去する。
【0038】
図25は、タービン施設の解体工法を示すフローチャートである。図1図24で説明した内容をまとめたものである。本実施例のタービン施設の解体工法は、先行火入れ工程s1、タービン建屋の第1次解体工程s2、発電機の撤去工程s3、タービンの撤去工程s4、タービンペデスタルの解体撤去工程s5、復水器の撤去工程s6、タービン建屋の第1次解体工程s7からなる。図25のフローチャートでは、発電機の外ケース下部の撤去を、実施例に従ってタービンの撤去後に行なったが、発電機のステーター撤去後に行なってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、重機を使用した安全で工期の短いタービン施設の解体工法として好適である。
【符号の説明】
【0040】
1 クローラ型重機
2 クローラ型重機
3 クローラ型重機
4 散水車
5 高所作業車
6 ニブラー
7 鉄骨カッター
8 ブレーカー
9 発電機
9a 外ケース
9aa 外ケース上部
9ab 外ケース下部
10 低圧タービン
10a 外カバー
10b 内カバー
10c 台座
10ci、10cii 台座部品
11 中低圧タービン
11a 外カバー
11ai、11aii 外カバー部品
11b 内カバー
11c 台座
12 高圧タービン
12a 外カバー
12b 内カバー
12c 台座
13 復水器
14 タービンペデスタル
14a 脚
14b 鉄筋
15 励磁器
16 スリップリング
17 パラペット
18 足場
19 防音シート
20 忍び返し
21 支柱
21a 西1番支柱
21b 西2番支柱
21c 西3番支柱
22 ローター
23 ステーター
24 トレーラー
25 外ケース上部の分割片
26 ステーター上部の分割片
27 回転羽根部(低速タービン)
27a 切断片
28 回転羽根部(中低圧タービン)
28a 切断片
29 外ケース下部の分割片
30 ステーター下部の分割片
31 載置面
50 タービン建屋
60 タービン装置
100 タービン施設
s1 先行火入れ工程
s2 タービン建屋の第1次解体工程
s3 発電機の撤去工程
s4 タービンの撤去工程
s5 タービンペデスタルの解体撤去工程
s6 復水器の撤去工程
s7 タービン建屋の第2次解体工程
【要約】
【課題】重機を使用した安全で工期の短いタービン施設の解体工法を提供する。
【解決手段】発電機の外ケースが、複数の分割片に溶断されると共に、発電機とタービンが設置されるタービンぺデスタルの脚が溶断される先行火入れ工程と、重機が配置され、タービン建屋の側面が撤去され、発電機とタービンの周囲が、中抜きされるタービン建屋の第1次解体工程と、発電機のローターと、外ケース上部の分割片と、ステーターの分割片と、外ケース下部とを重機で撤去する発電機の撤去工程と、タービンの外カバー、内カバー、回転羽根部及び台座を重機で掴み撤去するタービンの撤去工程と、重機で解体し撤去するタービンぺデスタルの撤去工程と、重機で解体し撤去する復水器の撤去工程と、残りの建屋を重機で解体し撤去するタービン建屋の第2次解体工程と、が備えられる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25