【実施例1】
【0014】
図1は、本発明によるタービン施設100の全体斜視図である。タービン施設100は、タービン建屋50とタービン装置60かなる。タービン装置60は、タービン建屋50の3階に設置されている。この実施例ではタービン建屋50の北側と西側が解体の作業エリアとして使用できる。そのため、タービン建屋50の東面には、足場18が組まれ防音シートが張られる。タービン建屋50の南面には別の建屋が建てられており南面は解体の対象ではない。タービン建屋50の北面、西面、東面の壁パネルは、取り外されているとする。支柱21はH鋼からなるもので、東面と西面に各9本が設けられているとする。
【0015】
重機は、4台を配置した。高さ42mに届くクローラ型重機1、高さ32mに届くクローラ型重機2、2台の高さ16mに届くクローラ型重機3である。この他に散水車4を用意した。散水車4はそれ程高さがないが、高所での散水が必要な場合は、クローラ型重機1やクローラ型重機2の先端からも散水できる。クローラ型重機1とクローラ型重機2は、解体の主たる重機で、クローラ型重機3は引き出しや小割を行なう合番重機である。これら重機の他に、図示しないが、作業エリアには積み込み用重機や小割重機も配置される。
【0016】
図2は、重機の種類とタービン建屋の高さとの関係を示す図である。タービン建屋50の高さは約31mである。クローラ型重機1とクローラ型重機2は、タービン建屋50の屋根より高く、これを解体できる。タービン装置60は、3階にあって高さは約10mである。クローラ型重機1とクローラ型重機2には、先端に圧砕機(ニブラー)6がそれぞれ装着され、クローラ型重機3には、鉄骨カッター7と、ブレーカー8が装着される。
【0017】
図3は、タービン装置60の構成を示す図で、(A)は全体斜視図、(B)はタービンぺデスタル14の斜視図である。タービン装置60は、タービンぺデスタル14の上に搭載されており、発電機9と、低圧タービン10と、中低圧タービン11と、高圧タービン12からなる。復水器13はタービンぺデスタル14の中央下部(1階部分)に設けられる。
図3(B)に示すように、タービンぺデスタル14は、鉄筋入り強化コンクリートの柱からなる架体である。
【0018】
図4は、発電機9の外ケース9aをガス溶断する説明図である。この工程は建屋の解体に先立って行なう。先行火入れ工程と呼ぶ。発電機9の外ケース9aが、ガス溶断によって半円筒状の外ケース上部9aaと外ケース下部9abに2分割される。さらに外ケース上部9aaは、幅方向に所定の幅で複数の分割片25に溶断される。本実施例では、
図4に示すように、丸で囲んだa、b、c、dの4つに分割している。白い点線が溶断ラインを示す。励磁器15、スリップリング16に取り外せるよう溶断する。溶断は人手作業で行うので、タービンぺデスタル14の上に足場18が組まれる。溶断は酸素ガスを使用する。詳細には、溶断棒と被溶断物の間に電圧をかけてアークを発生させながら加熱し、ノズルより酸素ガスを送り込んで溶断する。
【0019】
図5は、タービンぺデスタルの脚を溶断する説明図である。発電機とタービンが設置されるタービンぺデスタルの脚が溶断される。タービンぺデスタルの脚の溶断は、先行火入れ工程で行なう人手作業の1つである。脚14の表面のコンクリートを剥がし、鉄筋14bをガス溶断する。一部は残し切りする。
【0020】
図6は、タービン建屋50の北面を撤去する説明図である。作業エリアに面するタービン建屋の北面の全部と、西面が一部を残して撤去される。そして発電機9とタービンに至る周囲が、重機で中抜きされる。タービン建屋の第1次解体工程と呼ぶ。屋根のパネルは、クローラ型重機1で掴み、地上の作業エリアに運ぶ。北面の梁もクローラ型重機1で掴み、引きちぎって、地上の作業エリアに運ぶ。
図6に示すように、屋根の周囲に設けられた手摺りであるパラペット17は、一部がクローラ型重機1で砕かれる。その時、ガラが北側方向に落下しないように足場18に、忍び返し20が設けられる。これによりガラは建屋内に落下する。
図6に示すように、タービン装置60に至る2階と3階の床の部分も解体され撤去される。これは、中抜きと称する。
【0021】
図7は、タービン建屋50の西面を撤去する説明図である。西面の北側の支柱21を、西1番支柱21a、西2番支柱21b、西3番支柱21cとする。丸で囲んだA、B、Bの箇所を溶断(縁切り)するため、40mの高さに届く高所作業車5を使用する。
【0022】
図8は、
図7で、西面の上部を撤去する詳細な説明図である。、丸で囲んだBの箇所(2カ所)が、斜めに残し切りされ、Aの箇所も切断されているので、Gで示す箇所をクローラ型重機2で掴み、揺らして西側方向に折るように引き剥がし、作業エリアに運ぶ。
【0023】
図9は、
図7で、西面の支柱を撤去する詳細な説明図である。支柱21は、
図8のBで示すように、支柱の下部が斜めに残し切り溶断されているとする。この状態で、クローラ型重機2で支柱21の上部を掴み、揺らすようにして支柱21を倒す。
【0024】
図10は、タービン建屋50の第1次解体が終了し、タービン装置60の解体が開始できる状態を示す斜視図である。西面の支柱21は、5本が撤去され、4本を残し安全性を確保した。また、東面北側の2本の支柱21も撤去した。タービン装置60の西側の2階と3階の床を含む部分も中抜きして、撤去される。
【0025】
図11は、発電機9の内部構成を示す図である。発電機9の内部には、円筒状のステーター23が設けられ、ローター22が貫通している。一端には、励磁器15が設けられる。外ケースの両端は、スリップリング16で蓋をされている。
【0026】
図12は、発電機9のローター22を引く抜く説明図である。ここからが発電機の撤去工程となる。一側の励磁器15とスリップリング16の上半分を撤去し、ローター22をクローラ型重機2で掴み引き出す。ローター22は、重量が、約40トンと重いので、作業エリアに引き出した後、2つにガス溶断して、トレーラー24に積み込んで運ぶ。
【0027】
図13は、発電機9の外ケース9aを撤去する説明図である。外ケース9aは、
図4に示す先行火入れ工程で、ガス溶断にて上下に2分割され、さらに外ケース上部9aaは、ガス溶断で幅方向に4分割され、4つの分割片25とされている。クローラ型重機2で分割片25を掴み、作業エリアに運び撤去する。本実施例の分割片25の重量は、約12〜16トンである。分割片25をさらに半分に溶断してもよい。12〜16トンであれば、トレーラー24に積み込んで運ぶことができる。
【0028】
図14は、発電機のステーターを撤去する説明図である。発電機9の外ケース9aを分割し、外ケース上部9aaを撤去すると、ステーター23が露出する。そこで、ガス溶断を使用して、ステーター23を半円筒状となるように上下に2分割し、さらに所定の幅で4つにガス溶断する。まず、ステーター上部の4つの分割片26を撤去し、次にステーター下部を4つに分割して分割片30とし撤去する。ステーター23の分割片26、30の重量は、約23トンである。、これをトレーラー24に積み込んで運び出す。ステーター23を撤去すると、発電機9の外ケース下部9abが露出する。本実施例では、外ケース下部9abの撤去を行なわず、次にタービンの解体を行なった。これに限らず、ステーター23の撤去後に、続けて発電機9の外ケース下部9abを撤去してもよい。
【0029】
図15は、タービンの外カバーの構成を示す説明図である。タービンは、
図3に示すように、低圧タービン10と、中低圧タービン11と、高圧タービン12からなる。外カバーは、低速タービン10の外カバー10a、中低圧タービン11の外カバー11a、高速タービン12の外カバー12aからなる。外カバー11aは、外カバー部品11aiと11aiiに分けることができる。内カバーは、低速タービン10の内カバー10b、中低圧タービン11の内カバー11b、高速タービン12の内カバー12bからなる。台座は、低速タービン10の台座10c、中低圧タービン11の台座11c、高速タービン12の台座12cからなる。台座10cは、台座部品10ciと10ciiに分けることができる。
【0030】
図16は、タービンの外カバーを撤去する説明図である。ここからが、タービンの撤去工程になる。外カバーを固定しているボルト等は、事前にガス溶断しておく。低速タービン10の外カバー10a、中低圧タービン11の外カバー11a、高速タービン12の外カバー12aをクローラ型重機2で掴み、作業エリアに撤去する。解体部品の処理場へは、トレーラー24に積み込んで運ぶ。
【0031】
図17は、タービンの内カバーを撤去する説明図である。低速タービン10の内カバー10b、中低圧タービン11の内カバー11b、高速タービン12の内カバー12bをクローラ型重機2で掴み、作業エリアに撤去する。高速タービン12の内カバー12bの撤去は図を省略した。
【0032】
図18は、タービンの回転羽根部を撤去する説明図である。低速タービン10の回転羽根部27と、中低速タービン11の回転羽根部28をクローラ型重機2で掴み、作業エリアに撤去する。回転羽根部27、28は、羽根の一部が切り落とされ、載置面31が設けられる。これにより、安定してトレーラー24に載置できる。回転羽根部27の重量は約21トン、回転羽根部28の重量は、約23トンである。羽根の切断は、ガス溶断で行なう。
図18では、点線で切断箇所を示し、切断片27a、28aも図示している。高速タービン12の回転羽根部は図を省略した。
【0033】
図19は、タービンの台座を撤去する説明図である。低速タービン10の台座10c、中低圧タービン11の台座11c、高速タービン12の台座12cをクローラ型重機2で掴み、作業エリアに撤去する。台座10cは、台座部品10ciと10ciiに分けて撤収する。台座12cの重量は約28トンと重い。台座部品10ciの重量は約10トン、台座部品10ciiの重量は約4トン、台座11cの重量は約26トンである。
【0034】
図20は、発電機の外ケース下部を撤去する説明図である。低圧タービン10と、中低圧タービン11と、高圧タービン12を撤去すると、タービンペデスタル14には、発電機9の外ケース下部9abが残る。外ケース下部9abを溶断することなく、これをクローラ型重機2で掴み、作業エリアに引き出すことができる。作業エリアで3つに分割し、分割片29とすることができる。分割片29の重量は、約19トンである。
【0035】
図21は、タービンぺデスタルを解体し撤去する説明図である。圧砕機(ニブラー)6が装着されたクローラ型重機1とクローラ型重機2、鉄骨カッター7が装着されたクローラ型重機3、それにブレーカー8が装着された別のクローラ型重機3を投入して、強固なタービンぺデスタルを解体する。
図5に示すように先行火入れ工程で、タービンぺデスタル14の脚をあらかじめ溶断しているので、解体と撤去が容易である。
【0036】
図22は、復水器を撤去する説明図である。復水器13は、2つのユニットからなるので、カバー等を剥がして、クローラ型重機2で作業エリアに撤去する。
【0037】
図23は、タービン建屋50の西面をすべて撤去した図である。
図24は、タービン建屋50の北面をすべて撤去した図である。いずれもタービン建屋の第2次解体工程に相当し、南面と東面の残った支柱を撤去し、2階と3階の床の残りを撤去する。
【0038】
図25は、タービン施設の解体工法を示すフローチャートである。
図1〜
図24で説明した内容をまとめたものである。本実施例のタービン施設の解体工法は、先行火入れ工程s1、タービン建屋の第1次解体工程s2、発電機の撤去工程s3、タービンの撤去工程s4、タービンペデスタルの解体撤去工程s5、復水器の撤去工程s6、タービン建屋の第1次解体工程s7からなる。
図25のフローチャートでは、発電機の外ケース下部の撤去を、実施例に従ってタービンの撤去後に行なったが、発電機のステーター撤去後に行なってもよい。