特許第6343137号(P6343137)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6343137
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】排気装置
(51)【国際特許分類】
   B01L 1/00 20060101AFI20180604BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20180604BHJP
   B08B 15/02 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
   B01L1/00 A
   F24F7/06 C
   B08B15/02
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-215779(P2013-215779)
(22)【出願日】2013年10月16日
(65)【公開番号】特開2015-77554(P2015-77554A)
(43)【公開日】2015年4月23日
【審査請求日】2016年10月5日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成25年9月4日〜6日 JASIS2013(分析展/科学機器展)にて展示公開
(73)【特許権者】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社オカムラ
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100116757
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 英雄
(74)【代理人】
【識別番号】100123216
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 祐一
(74)【代理人】
【識別番号】100163212
【弁理士】
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(72)【発明者】
【氏名】塩寺 亮義
(72)【発明者】
【氏名】坂上 慎
(72)【発明者】
【氏名】榊原 義弥
【審査官】 河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−296101(JP,A)
【文献】 特開2005−270820(JP,A)
【文献】 実開平04−070138(JP,U)
【文献】 実開平07−025938(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0052784(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第1977837(EP,A1)
【文献】 独国特許発明第4004723(DE,C1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01L 1/00 − 99/00
F24F 7/04 − 7/06
B25H 1/20
B08B 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に引き上げることにより下方を開放可能な昇降扉を前面に設けた作業室を有し、該作業室内の空気を排気する排気装置であって、
前記昇降扉の下端部には、該昇降扉の下方に延びる延設片と、前記延設片の上部から前記昇降扉の前面に所定長さ略水平に突出する突出片と、が設けられており、
前記延設片の長さは、前記突出片の所定長さの1.5倍以上であり、且つ前記突出片の所定長さの2倍以下であることを特徴とする排気装置。
【請求項2】
前記延設片及び前記突出片は、前記昇降扉の下端辺を囲繞するように取付けた把持部材に形成されており、前記把持部材は、前記作業室内に面する上部後方に、下方に向けて前記昇降扉から漸次突出し、側面視凹形状の凹傾斜面を有していることを特徴とする請求項1に記載の排気装置。
【請求項3】
前記把持部材は、前記作業室内に面する下部後方に、前記凹傾斜面に向けて直線状に延びる直線傾斜面を有していることを特徴とする請求項に記載の排気装置。
【請求項4】
前記把持部材は、軟質の樹脂で一体形成されており、前記延設片の下端辺に空隙が形成されていることを特徴とする請求項またはに記載の排気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上方に引き上げることにより下方を開放可能な昇降扉を前面に設けた作業室を有し、該作業室内の空気を排気する排気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薬品を用いる実験等を行う際において、前記薬品から人体に有毒な気体が発生する場合がある。そこで、薬品を用いる実験の際には、前面に昇降扉を設けた箱状の作業室と、外気と隔離された所定の隔離室と、を備えた排気装置を使用することが一般的であり、これにより、昇降扉の開放部分からアクセスして作業室内で実験を行うとともに、その作業室内の気体を外気に漏れさせることなく隔離室に排気することが可能となっている。
【0003】
その排気装置の一例として、手掛け用の凹溝(突出片)と把手の下端側に延びる延設片とが設けられた把手を昇降扉の下面に沿って取付けたものがある。この把手は、処理室(作業室)内に位置する昇降扉の後面に沿って流下する空気流を後斜め下方に反らせる上部ガイド面と、昇降扉の下方から流れる処理室内に流れる空気流を底板に沿って指向させる下部ガイド面と、を有しており、当該2つの空気流を、乱流や渦流を生じさせることなく合流させ、処理室内を円滑に循環させている。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4456390号公報(第4,5頁、第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1にあっては、延設片の長さを長く設定した場合、昇降扉の昇降時または昇降扉の前面付近を人が通行時等により、外部から把手の前面に向けて流れる気流が発生した際に、その気流が延設片に衝突し、その一部が把手の溝部に沿って移動することで渦流となり、この渦流が延設片及び溝部の間で滞留するようになり、把手近傍の空気が巻き込まれ、昇降扉の開放部分を介して処理室内に流れ込む空気の流れが阻害されるとともに、処理室内の空気が外気に漏れ出してしまうという虞があった。また、延設片の長さが短い場合、昇降扉を閉塞した状態において凹溝と作業室の底板との間に十分な間隙が形成されず、昇降扉の操作が困難であるという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、昇降扉の操作を容易にしながらも、昇降扉の下端部の近傍に気流の乱れが生じても作業室内に流れ込む空気の流れを促して、前記作業室内の空気が外気に漏れ出すことを防止する排気装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の排気装置は、
上方に引き上げることにより下方を開放可能な昇降扉を前面に設けた作業室を有し、該作業室内の空気を排気する排気装置であって、
前記昇降扉の下端部には、該昇降扉の下方に延びる延設片と、前記延設片の上部から前記昇降扉の前面に所定長さ略水平に突出する突出片と、が設けられており、
前記延設片の長さは、前記突出片の所定長さの1.5倍以上であり、且つ前記突出片の所定長さの2倍以下であることを特徴としている。
この特徴によれば、延設片の前面に流れる気流が延設片及び突出片に沿って移動することにより形成される渦流の回動半径は、突出片の長さと略同一であり、延設片の長さは、その突出片の所定長さの2倍以下であることから、延設片の長さが渦流の回動直径と同等以下となるため、渦流が延設片及び突出片の間で滞留することが防がれ、昇降扉開放時に渦流が昇降扉の開放部分を介して作業室内に流れ込むように促されることとなり、作業室内の空気の外気への漏れ出しを防止できる。更に、延設片の長さは、少なくとも突出片の所定長さ以上であることから、昇降扉を閉塞した状態であっても、突出片と作業室の底板との間に十分な間隙が形成され、当該間隙に指を入れて突出片に引っ掛けることにより昇降扉を容易に操作できる。また、例えば延設片及び突出片が不透明な部材により形成されていても、延設片は、突出片の所定長さの2倍以下であるため、最小化することにより、昇降扉を介して作業室内を視認可能な領域を広く確保することができる。
【0009】
前記延設片及び前記突出片は、前記昇降扉の下端辺を囲繞するように取付けた把持部材に形成されており、前記把持部材は、前記作業室内に面する上部後方に、下方に向けて前記昇降扉から漸次突出し、側面視凹形状の凹傾斜面を有していることを特徴としている。
この特徴によれば、昇降扉の後面に沿って流下する気流が、凹傾斜面に沿って後方にガイドされ、当該気流と外部から流入する気流とが、昇降扉の開放部分の近傍で合流しないため、昇降扉の開放部分の近傍で乱流が発生することを抑制できる。
【0010】
前記把持部材は、前記作業室内に面する下部後方に、前記凹傾斜面に向けて直線状に延びる直線傾斜面を有していることを特徴としている。
この特徴によれば、昇降扉開放時に作業室内に流入する渦流の一部が、直線傾斜面に沿って斜め上方に移動するようになるため、特に昇降扉の下降時には、作業室内の上方か昇降扉の開放部分に向けて流下する気流を押し上げて、当該気流が外部に流出することを防ぐことができる。
【0011】
前記把持部材は、軟質の樹脂で一体形成されており、前記延設片の下端辺に空隙が形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、把持部材が軟質の樹脂で一体形成されているとともに、延設片の下端辺に空隙が形成されていることから、万が一昇降扉の昇降作業中に指を挟んでも延設片が空隙分弾性変形して緩衝するため、怪我を防止することができるばかりか、昇降扉閉塞時に延設片が作業室の底板を傷つけることがない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1における排気装置を示す斜視図である。
図2】同じく排気装置を示す側断面図である。
図3】把持部材の昇降扉への取付け時を示す斜視図である。
図4】昇降扉に把持部材が取付けられた状態を示す側断面図である。
図5】(a)〜(c)は、把持部材の前面側に向けて気流が発生した際における、把持部材近傍の空気の流れを段階的に示す側断面図である。
図6】(a)は、昇降扉を上昇させた状態を示す側断面図であり、(b)は、昇降扉を下降させた状態を示す側断面図である。
図7】昇降扉の下降時に指を挟んだ状態を示す側断面図である。
図8】(a)は、把持部材の変形例を示す側断面図であり、(b)は、(a)の状態から把持部材の前面側に向けて気流が発生した状態を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る排気装置を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0014】
実施例1に係る排気装置につき、図1から図7を参照して説明する。図1に示されるように、排気装置1は、主に教育機関や研究施設等に導入され、薬品を用いる化学実験で有害な気体が発生するときや、揮発性の有害物質を取り扱うときに使用される。図1及び図2に示されるように、この排気装置1は、前面に開き扉2a,2aを設けたベース2と、前面が開口した箱状の筐体3と、を備え、筐体3がベース2の上に載置されて組み立てられている。
【0015】
筐体3は、底板3a、天板3b、背板3c、側板3d,3dからなり、天板3bには、排気口4が設けられており、この排気口4は、図示しない外気と隔離された所定の隔離室と接続している。この隔離室は、排気口4から吸い込まれた空気を浄化処理することができるようになっている。
【0016】
また、筐体3の前面開口上部には、透光性を有する固定板5が固定されているとともに、固定板5の前面側には、上下にスライドする透光性を有した昇降扉としての昇降板6が設けられている。詳しくは、側板3d,3dには、互いに対向して向き合う凹溝7,7(一方のみ図示)が上下方向に沿って形成されており、この凹溝7,7に昇降板6の両端部が嵌合することにより、昇降板6が凹溝7,7に沿って上下にスライド可能となっている。これら底板3a、天板3b、背板3c、側板3d,3d、固定板5及び昇降板6により仕切られた筐体3の内部は、薬品を用いる化学実験等を行う作業室8と成っている。
【0017】
昇降板6を上方に引き上げることにより、筐体3の開口の下方部を開放可能となっており、筐体3の外部から筐体3の開放部30を介して作業室8内にアクセスし実験を行うことができるようになっている。上記したように、固定板5及び昇降板6は、透光性を有しているため、外部から作業室8内を視認しながら実験等を行えるようになっている。
【0018】
また、筐体3には、前面側下方部から斜め上方に延び、作業室8に連通する吸気通路9が設けられていることにより、昇降板6が閉塞状態であっても吸気通路9を介して外気を作業室8内に導くことができるようになっている。
【0019】
図3及び図4に示されるように、この排気装置1の昇降板6の下端部には、昇降板6の下端辺を囲繞する把持部材10が取付けられている。把持部材10は、昇降板6の下端部に嵌合する嵌合部材11と、嵌合部材11を骨組みとしてその外周面を包むように取付けられた囲繞部材12と、を備えている。
【0020】
嵌合部材11は、金属や硬質の樹脂等の材料により押し出し成形された第1板体13、第2板体14、及び第3板体15から成る。第1板体13は、昇降板6の前面6aに沿って延びる前方立設部13aと、前方立設部13aの上端から前方斜め下方向に突出する前方突出部13bと、前方立設部13aの下端から後方に延びる底面部13cと、を備えている。第2板体14は、底面部13cから昇降板6の後面6bに沿って延びる下面が後方に屈曲したL字形立設部を有し、この後方立設部の後面には、下面が後方に屈曲したL字形の第3板体15が固定されている。尚、嵌合部材11は、第1板体13、第2板体14、及び第3板体15が連結されて形成されているが、1部材で形成するようにしてもよい。
【0021】
図4に示されるように、囲繞部材12は、押し出し成形された軟質の樹脂であり、前方突出部13bの先端部から前方立設部13aに向けて略水平に延びる水平部12aと、水平部12aから前方立設部13aに沿って下方に延びる延設部12bと、内部が肉抜きされた空隙16を有する下端部12cと、この下端部12cから後上方に向かって突出した断面視直線状の傾斜部12dと、この傾斜部12dの第3板体15付近から昇降板6の後面6bの上方に向けて前方に漸次突出する断面視凹形状の凹傾斜部12eと、第2板体14の上方先端部と接着係合する接着係合部12fと、を有している。また、水平部12aの前端上部には、前方立設部13aに接着係合する接着係合部12gが設けられている。
【0022】
このように把持部材10は、前方突出部13bの前端部が折れ曲がって前方立設部13aに向けて延びた部分に水平部12aの当接部12gを接着係合させるとともに、第2板体14の上方先端部に接着係合部12fを接着係合させることにより、囲繞部材12が嵌合部材11に装着されて形成される。
【0023】
図3に示されるように、把持部材10は、前方立設部13aと第2板体14の後方立設部との隙間に昇降板6を挿入することにより、昇降板6の下端部に嵌合される。把持部材10が昇降板6の下端部に嵌合された後には、把持部材10と昇降板6との隙間に接着剤等が流し込まれることで強固に固着される。
【0024】
図4に示されるように、把持部材10における前方突出部13bは、昇降板6を昇降させる際に、使用者が指を掛けることができる突出片として機能しており、延設部12bは、昇降板6閉塞時において前記突出片と筐体3の底板3aとの間のスペーサとして機能している。
【0025】
この把持部材10は、延設部12bの長さBが前方突出部13bの長さAの2倍となっている。換言すれば、前方突出部13bの長さA:延設部12bの長さB=1:2となっている。このように延設部12bの長さBは、前方突出部13bの長さAの2倍であることから、昇降板6を閉塞した状態であっても、前方突出部13bと筐体3の底板3aとの間に十分な間隙が形成され、当該間隙に指を入れて前方突出部13bに引っ掛けることにより昇降板6を容易に操作できる。また、前方突出部13bの長さAと延設部12bの長さBとの割合を1:2のまま、最小化することにより、昇降板6を介して作業室8内を視認可能な領域を広く確保することができる。
【0026】
次に、排気装置1の前面付近を人が通行すること等に起因して把持部材10の前面側に向けて流れる気流Rが発生することを想定し(図5(a)参照)、昇降板6に取り付けられた把持部材10に向けて前面側から煙を当てるスモーク実験を行い、その結果(把持部材10の近傍の空気の流れ)について説明する。尚、以下、昇降板6が開放状態であり、開放部30が形成されている状態について説明する。
【0027】
前記気流Rは、図5(b)に示されるように、その一部が延設部12bに衝突し、水平部12aに沿って移動することで渦流である気流Sとなるとともに、その他の一部が気流Tとして把持部材10の下端部12cの下方を通って作業室8内に流れ込むようになる。また、気流Sの一部は、気流Sbとして前方突出部13bの前方端から上方側に向けて押し上げられる。気流Sは、前方突出部13bの前方端から垂下する仮想線と、延設部12bの上下方向の中央部から水平に延びる仮想線と、を結んだ仮想点Zを中心として安定して回動するようになる。
【0028】
上述したように延設部12bの長さBは、前方突出部13bの長さAの2倍であることから、延設部12bの長さBが気流Sの回動直径と同等となるため、気流Sの先頭側の一部が気流Saとして下端部12cの下方を通って作業室8内に流れ込むようになり、気流Sa以外の気流Sは、再び延設部12b及び水平部12aに沿って回動するようになる。
【0029】
したがって、図5(c)に示されるように、気流Sが延設部12b及び前方突出部13bの間で滞留することが防がれ、昇降板6の開放部30を介して作業室8内に流れ込むように促されることにより、作業室8内から外部へ向かう気流Yが押し戻されることとなり、作業室8内の空気の外気への漏れ出しを防止できる。
【0030】
また、図5(c)に示されるように、作業室8内に流入する気流Saは、筐体3の底板3aに沿って流れるとともに、その一部が把持部材10の下部後方に設けられた直線傾斜部12dに沿って斜め上方に移動するようになる。
【0031】
作業室8内において昇降板6の後面6bに沿って流下する気流Xは、凹傾斜部12eに沿って後方にガイドされ、且つ直線傾斜部12dに沿って斜め上方に移動する気流Saに押し上げられるため、当該気流Xと筐体3の底板3aに沿って流れる気流Saとが、昇降板6の開放部30の近傍で合流しない。そのため、気流Xと気流Saとがぶつかり合うことに伴う乱流が、昇降板6の開放部30の近傍で発生することを抑制して、昇降板6の開放部30に向かう気流Yの流れを弱めることができる。
【0032】
図6(a)に示されるように、昇降板6を上昇させた場合には、前方突出部13bの上方の空気が水平部12aの下方側に巻き込まれることにより、前述した気流Sが発生する。また、図6(b)に示されるように、昇降板6を下降させた場合には、延設部12bの下方側の空気が直線傾斜部12dに沿って斜め上方に押し上げられ、昇降板6の後面6bに沿って流下する気流Xを押し上げて、当該気流Xが外部に流出することを防ぐことができる。
【0033】
また、図示しないが、延設部の長さを前方突出部13bよりも短く設定してスモーク実験を行った場合、延設部の前面に前記気流Rが当たる範囲を十分に確保できず、不安定な乱流が形成されることがわかった。また、延設部の長さを前方突出部13bの2倍の長さより長く設定してスモーク実験を行った場合、延設部及び前方突出部13bの間で渦流が滞留することがわかった。したがって、延設部の長さは、前方突出部13bの所定の長さA以上であり、且つ前方突出部13bの所定長さAの2倍以下で設定される。
【0034】
また、図7に示されるように、把持部材10の囲繞部材12が軟質の樹脂で一体形成されているとともに、囲繞部材12の下端部12cは、内部が肉抜きされた空隙16が形成されていることから、万が一昇降板6の下降時に指を挟んでも下端部12cにおける指との接触部分が空隙16分弾性変形して緩衝するため、怪我を防止することができる。更に、昇降板6閉塞時に筐体3の底板3aとの当接に緩衝し、筐体3の底板3aを傷つけることがない。
【変形例】
【0035】
次に、把持部材の変形例につき、図8を参照して説明する。尚、前記実施例と同一構成で重複する構成を省略する。
【0036】
図8(a)に示されるように、本変形例の把持部材100は、延設部120bの長さCが前方突出部13bの長さAの1.5倍となっている。これによれば、前記実施例で説明した気流Rが把持部材100の前面側に向けて流れた場合、図8(b)に示すように、延設部120bと前方突出部13bとの間で気流S’が発生する。この気流S’は、前方突出部13bの前方端から垂下する仮想線と、延設部120bの上下方向の中央部から水平に延びる仮想線と、を結んだ仮想点Z’を中心として回動するようになっている。
【0037】
より詳しくは、延設部120bの長さCが前方突出部13bの長さAの1.5倍であることから、前方突出部13bの前方端から垂下する仮想線が、延設部12bの上下方向の中央部から水平に延びる仮想線よりも短く設定され、気流S’は、上下方向に短い略楕円形の軌道を描いて安定して回動するようになる。
【0038】
また、延設部の長さを前方突出部13bの長さAの1.5倍以下に設定してスモーク実験を行った場合は、延設部120bの長さCを前方突出部13bの長さAの1.5倍に設定してスモーク実験を行った場合に比べ、気流S’が若干不安定になることがわかった。
【0039】
したがって、延設部の長さは、前方突出部13bの長さAの1.5倍が、より安定的に回動する気流S’(渦流)を形成できることが判明した。このように、延設部120bの長さCを前方突出部13bの長さAの1.5倍とすることにより、延設部120bの前面に流れる前記気流Rが当たる範囲を十分に確保して安定した気流S’を形成でき、昇降板6の開放部30の近傍での乱流の発生を防止して気流Sa’をスムーズに作業室8内に流入させることができるとともに、把持部材100を最小化することができる。
【0040】
また、前記実施例で説明したように延設部及び前方突出部13bの間で気流S’を滞留させない延設部の長さの上限は、前方突出部13bの長さAの2倍となっているため、延設部は、前方突出部13bの長さAの1.5倍から2倍の長さに設定されることが最も好ましい。
【0041】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0042】
例えば、前記実施例では、延設片及び突出片は、昇降板6の下端辺を囲繞するように取付けた把持部材10に形成されていたが、これに限られず、例えば、昇降板6の前面及び下端辺に延設片及び突出片がそれぞれ別に固着されるようにしてもよい。
【0043】
また、囲繞部材12は、軟質の樹脂製であり、その下端部12cは、内部が肉抜きされた空隙16を有しているが、これに限られず、例えば、硬質の材料で形成された囲繞部材の下端部に別体の緩衝部材を設けてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 排気装置
3 筐体
3a 底板
6 昇降板(昇降扉)
6a 前面
6b 後面
8 作業室
10 把持部材
11 嵌合部材
12 囲繞部材
12a 水平部
12b 延設部(延設片)
12c 下端部
12d 直線傾斜部(直線傾斜面)
12e 凹傾斜部(凹傾斜面)
13 第1板体
13b 前方突出部(突出片)
14 第2板体
15 第3板体
16 空隙
30 開放部
100 把持部材
120b 延設部
R 気流
S 気流(渦流)
Sa,Sb 気流
T,X,Y 気流
Z 仮想点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8