(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記波長制限手段として、光源から前記紫外線硬化性樹脂への光照射経路の途中に、照射波長を380nm以上に制限するバンドパスフィルターを用いることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の微細パターンの形成方法。
前記波長制限手段として、380nm未満の照射波長を吸収する透明基材を使用し、前記透明基材側から紫外線を照射することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の微細パターンの形成方法。
離型層が設けられた微細パターンを有するスタンパ表面に、基材に設けられた紫外線硬化性樹脂の表面を押し当てた状態で紫外線を照射して前記紫外線硬化性樹脂を硬化し、前記表面に前記微細パターンを転写するための転写装置であって、
前記スタンパは、ロール状であり、Niで構成され、
前記基材を挟んで前記スタンパと対向する位置に配置される光源と、
前記紫外線硬化性樹脂への紫外線の照射波長が380nm以上に制限される波長制限手段と、を有することを特徴とする転写装置。
前記波長制限手段として、380nm以上の照射波長に制限した前記光源、あるいは、前記光源から前記紫外線硬化性樹脂への光照射経路の途中に、照射波長を380nm以上に制限するバンドパスフィルターの少なくともいずれか一方が用いられることを特徴とする請求項9に記載の転写装置。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、以下詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0024】
本発明は、紫外線硬化性樹脂層の表面にスタンパを押し当てた状態で樹脂表面に微細パターンを転写する工程において、紫外線硬化性樹脂を硬化させるために照射される紫外線の波長を所定波長に制限することに特徴的な部分がある。
【0025】
本発明では、上記の特徴的部分を備えた微細パターンの形成方法によって以下に説明する成型体やワイヤグリッド偏光子を製造することができる。まずは、本発明の微細パターンの形成方法により形成された成型体及びそれを用いたワイヤグリッド偏光子の構造について説明する。
【0026】
図1Aは、本実施の形態に係る成型体の断面模式図であり、
図1Bは、成型体の平面模式図である。
【0027】
本実施の形態に係る成型体20は、基材21と、基材21の表面21aに設けられた紫外線硬化樹脂層22と、を有して構成されている。
【0028】
図1A、
図1Bに示すように、紫外線硬化樹脂層22の表面22aには複数の格子状凸部23が設けられてなる微細パターン25が形成されている。
【0029】
基材21は、紫外線硬化樹脂層22の裏面側に配置されて、成型体20の可撓性を維持しながら成型体20の強度を向上させている。
【0030】
格子状凸部23のピッチPは、80〜140nm程度、高さH1は、80〜140nm程度、グリッド幅Dは、0.25×ピッチP〜0.4×ピッチPnm程度である。また紫外線硬化樹脂層22の膜厚H2は、0.5μm〜5μm程度である。
【0031】
紫外線硬化樹脂層22を構成する紫外線硬化性樹脂は、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、プロポキシ化グリセルトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、トリスアクリロイルオキシエチルフォスフェート、3官能以上のポリエステルアクリレートオリゴマー、3官能以上のウレタンアクリレートオリゴマー、3官能以上のエポキシアクリレートオリゴマー、トリメチロールプロパントリメタアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリメタアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリメタアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタアクリレート、プロポキシ化グリセルトリメタアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラメタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリメタアクリレート、トリスメタアクリロイルオキシエチルフォスフェート、3官能以上のポリエステルメタアクリレートオリゴマー、3官能以上のウレタンメタアクリレートオリゴマー、3官能以上のエポキシメタアクリレートオリゴマー等の1種以上が挙げられる。
【0032】
本実施の形態に係る紫外線硬化樹脂層22は、光吸収波長が380nm以上の光重合開始剤を含む紫外線硬化性樹脂を380nm以上の波長の紫外線により硬化したものである。
【0033】
光重合開始剤の光吸収波長の上限を特に限定するものでないが、市販されている光重合開始剤の吸収ピーク波長を加味すると430nm程度であることが好適である。
【0034】
光吸収波長が380nm以上430nm以下の光重合開始剤としては、例えば、ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム等が挙げられる。これら光重合開始剤は単独で適用することも可能であるが、2種以上を組み合わせて使用することもできる。例えば、ダロキュア(登録商標)TPO(BASF社製、吸収ピーク波長;295nm、368nm、380nm、393nm)、イルガキュア(登録商標)784(BASF社製、吸収ピーク波長;398nm、470nm)、ダロキュア(登録商標)4265(BASF社製、吸収ピーク波長;240nm、272nm、380nm)等が挙げられる。光重合開始剤の配合比は紫外線硬化性樹脂に対し重量%で0.5〜5%程度、含有される。
【0035】
また紫外線硬化樹脂層22(紫外線硬化性樹脂)には、本来の目的を損なわない範囲で、必要に応じて他の従来の添加物、例えば、流動調整剤、レべリング剤、増量剤、可塑剤、離型剤、酸化防止剤等を含むことができる。
【0036】
図2Aは、本実施の形態に係るワイヤグリッド偏光子の断面模式図であり、
図2Bは、ワイヤグリッド偏光子の平面模式図である。なお
図2において
図1と同じ符号が付けられている部材は
図1と同じものを示している。
【0037】
図1に示す本実施の形態に係る成型体20に、金属層(金属ワイヤ)27を蒸着することによってワイヤグリッド偏光子(ワイヤグリッド偏光フィルム)30を得ることができる。
【0038】
図2Aに示すように、ワイヤグリッド偏光子30の各格子状凸部23における片側の側面に誘電体層26を介して金属層27が形成されている。よって
図2Bに示すように一方向に延出する複数本の金属層27が間隔を空けて配置された構成とされている。誘電体層26は形成されていなくてもよい。かかる場合、金属層27が直接、格子状凸部23の表面に形成される。
【0039】
誘電体層26を構成する誘電体は、可視領域で実質的に透明であればよい。紫外線硬化樹脂層22を構成する材料及び金属層27を構成する金属との間の密着性が高い誘電体材料を好適に用いることができる。例えば、珪素(Si)の酸化物、窒化物、ハロゲン化物、炭化物の単体又はその複合体(誘電体単体に他の元素、単体又は化合物が混ざった誘電体)や、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、バリウム(Ba)、インジウム(In)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、セリウム(Ce)、銅(Cu)等の金属の酸化物、窒化物、ハロゲン化物、炭化物の単体又はそれらの複合物を用いることができる。
【0040】
金属層27を構成する金属は、可視光領域で光の反射率が高く、誘電体層26を構成する材料との密着性の高いものであることが好ましい。例えば、アルミニウム(Al)、銀(Ag)又はそれらの合金で構成されていることが好ましい。コストの観点から、アルミニウム又はその合金で構成されることがさらに好ましい。
【0041】
図1に示す成型体20及び
図2に示すワイヤグリッド偏光子30を構成する紫外線硬化樹脂層22の表面に設けられた断面形状が凹凸の微細パターン25は、以下に説明する転写装置にて形成されたものである。
【0042】
図3は、本実施の形態に係るロールツーロール方式の転写装置の概略図である。転写装置100では、まずロール状に巻き付けられたフィルム状の基材21が、繰出しロール31から連続して繰り出される。基材21は塗布部40まで搬送され、塗布部40にて紫外線硬化性樹脂41が塗布される。紫外線硬化性樹脂41には、上記した光吸収波長が380nm以上の光重合開始剤が含有されている。即ち、光吸収波長が380nm以上430nm以下の光重合開始剤としての、ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム等が含まれている。具体的には、例えば、ダロキュア(登録商標)TPO(BASF社製、吸収ピーク波長;295nm、368nm、380nm、393nm)、イルガキュア(登録商標)784(BASF社製、吸収ピーク波長;398nm、470nm)、ダロキュア(登録商標)4265(BASF社製、吸収ピーク波長;240nm、272nm、380nm)等を用いることができる。本実施の形態では、光重合開始剤の配合比を紫外線硬化性樹脂に対し重量%で0.5〜5%程度、含有することが好適である。
【0043】
また紫外線硬化性樹脂41に、本来の目的を損なわない範囲で、必要に応じて他の従来の添加物、例えば、流動調整剤、レべリング剤、増量剤、可塑剤、離型剤、酸化防止剤等を含むことができる。
【0044】
また、紫外線硬化性樹脂41の粘度としては、例えば数mPa・s〜100mPa・s、高速生産性を考慮すると数mPa・s〜50mPa・sであることが好ましい。なお、紫外線硬化性樹脂の粘度は、例えば低粘度単官能性モノマーやエタノール等の溶剤を適量添加することで容易に調整することができる。
【0045】
続いて、基材21の表面に紫外線硬化性樹脂41が塗布されたフィルム状のシートが、ロール状スタンパ(転写ロール)50を有する転写硬化部60に搬送される。
図3に示すようにシートは、ロール状スタンパ50とニップロール56との間に挟まれるとともにテンションが掛けられて、シートがロール状スタンパ50の外周面に押圧されている。
【0046】
図3に示すように転写硬化部60にはロール状スタンパ50と所定間隔を空けて対向する光源51が設けられている。
【0047】
図4は転写装置の転写硬化部の部分拡大模式図である。
図4に示すように、ロール状スタンパ50の表面には凹凸形状の微細パターン52が形成されている。この微細パターン52を構成する格子状凸部54は、基材21の表面に紫外線硬化性樹脂41が塗布されたシート53の搬送方向Aに対して、直交する方向に延出している。よって微細パターン52は、搬送方向Aに凸部と凹部とが連続した構造となっている。なお
図4では図示しやすいように微細パターン52の幅に対する高さの比率等を
図1及び
図2と変えている。
【0048】
図4に示すように、微細パターン52の表面には離型層55が形成されている。離型層55は、フッ素系やシリコン系等の離型剤により形成されている。市販されている離型剤の例としてはダイキン工業社のオプツール(登録商標)HD2100、ハーベス社製のデュラサーフ(登録商標)、住友スリーエム社製のノベック(登録商標)等が挙げられる。
【0049】
図4に示すように、シート53のうち紫外線性硬化樹脂41がロール状スタンパ50の微細パターン52に離型層55を介して圧接している。したがって紫外線硬化性樹脂41の表面に微細パターン(ロール状スタンパ50の微細パターン52に対して逆パターンとなる)が転写されながらシート53がロール状スタンパ50で搬送され、光源51と対向する位置で光源51から照射された紫外線光により、紫外線硬化性樹脂41が硬化させられる。上述したように、紫外線硬化樹脂層22は、光吸収波長が380nm以上の光重合開始剤を含む紫外線硬化性樹脂41を380nm以上の波長の紫外線により硬化したものである。
【0050】
続いて、
図3に示す供給ロール70から、保護フィルムF1が供給され、表面に微細パターンが形成されたシート53の表面に保護フィルムF1が重ねられる。そして、保護フィルムF1付きシート53が巻取りロール80に巻き取られる。
【0051】
ワイヤグリッド偏光子(ワイヤグリッド偏光フィルム)を製造するには、
図3の転写装置100により得られたフィルム状のシート53の表面に形成された微細パターン25側に金属をスパッタや真空蒸着により形成する。好ましくは、微細パターン25の片側の側面に金属層27を形成する。このとき、
図2Aに示す格子状凸部23の片側の側面に向けて金属を被着させることで、前記格子状凸部23の片側の側面に適切に金属層27を形成することができる。
【0052】
本実施の形態では微細パターンの形成方法において、転写性を向上させるべく、
図4に示す光源51から照射される紫外線光の波長を制限する波長制限手段を設けている。具体的には380nm未満の短波長の紫外線光をカットして離型層55に短波長の強いエネルギーが作用しないように制御している。
【0053】
以下、波長制限手段について詳述する。
図5は、転写装置の転写硬化部を示す部分模式図であり、第1の波長制限手段を説明するための図である。
図5において
図3、
図4と同じ符号が付けられている部材は、
図3、
図4と同じ部分を示している。なお
図5においても
図4と同様に、ロール状スタンパ50の表面には凹凸形状からなる微細パターン52及び離型層55が設けられているが図面上省略した。
【0054】
図5では第1の波長制限手段として、380nm以上の照射波長に制限した光源63が用いられる。即ち第1の波長制限手段では、光源63から照射される紫外線光UV1の波長そのものを380nm以上に制限した構成としている。光源63は、照射される紫外線光UV1が380nm以上の波長に制限された単波長のLEDであることが好適である。例えばファインセンシング社のLEDZeroシリーズを用いることができる。単波長のLEDの発光波長としては、例えば、400nm(380nm〜410nm)や395±5nmである。
【0055】
本実施の形態では、紫外線硬化性樹脂41に光吸収波長が380nm以上の光重合開始剤を含有している。したがって光源63から照射された380nm以上の波長を有する紫外線光UV1により紫外線硬化性樹脂41を適切に硬化させることができる。
【0056】
図5に示す構成では、光源63から380nm未満の短波長の紫外線光が照射されないため、従来のように短波長の強いエネルギーにより離型層55が分解されることがなく、従来に比べて、表面に形成された微細パターンを欠陥なく形成できるとともに転写回数を増やすことが可能になる。
【0057】
波長制限手段を行っていない従来では、Ni等からなるスタンパ表面に被覆された離型層の耐久性は、ロールツーロール型の微細パターン転写装置において、200回転写程度(1m/min、ロール状スタンパ50の周長直径82mm、約1時間)であった。即ち転写が200回を超えると紫外線光のうち短波長の強いエネルギーにより離型層が分離を起こし、スタンパから紫外線硬化樹脂を容易に離型できなくなった。このとき、スタンパ表面には紫外線硬化樹脂が残留し、成型体に転写形状欠陥ができた。転写欠陥は後述の実験で示すように、ワイヤグリッド偏光子としたとき、mm単位の大きな黒点欠陥が数百個レベルで現れた。
【0058】
これに対して本実施の形態では、ロールツーロール型の微細パターン転写装置にて数千回以上の転写回数が可能となり、数千回以上の転写を行ってもワイヤグリッド偏光子の光学性能に影響を与えない微細黒点(μmレベルの大きさ)が数個できただけであった。
【0059】
図6は、転写装置の転写硬化部を示す部分模式図であり、第2の波長制限手段を説明するための図である。
図6において
図3、
図4と同じ符号が付けられている部材は、
図3、
図4と同じ部分を示している。なお
図6においても
図4と同様に、ロール状スタンパ50の表面には凹凸形状からなる微細パターン52及び離型層55が設けられているが図面上省略した。
【0060】
図6では、光源64とロール状スタンパ50との間に第2の波長制限手段としてのバンドパスフィルター65が設けられている。即ちバンドパスフィルター65は、光源64から紫外線硬化性樹脂41への光照射経路の途中に位置している。「途中」とは光照射経路にあればどこでもよく、ロール状スタンパ50の直上が好ましい。
【0061】
図6に示すバンドパスフィルター65は、紫外線硬化性樹脂41への照射波長を380nm以上に制限するものであり、即ち380nm未満の短波長をカットする構成である。バンドパスフィルター65は、例えば、ガラス等の基材上に、高屈折率を持つ誘電体薄膜と低屈折率を持つ誘電体薄膜を交互に積層した構造の誘電体多層膜を形成したものが用いられる。
【0062】
図6に示す光源64には、例えば、高圧UVランプや、メタルハライドランプ等を用いることができる。
【0063】
図8Aは、本実施の形態に係る光源として高圧UVランプを使用した場合の分光分布を示す図であり、
図8Bは、本実施の形態に係る光源としてメタルハライドランプを使用した場合の分光分布を示す図である。
【0064】
図8Aに示すように、高圧UVランプの分光分布は250nm程度から570nm程度であり、高圧UVランプは広帯域の波長を照射する。同じように、
図8Bに示すメタルハライドランプにおいても分光分布は、250nm程度から570nm程度である。
【0065】
このように380nm未満の短波長を含む紫外線光UV2が光源64から照射されると、波長制限手段としてのバンドパスフィルター65で380nm未満の波長がカットされ、バンドパスフィルター65を通過する紫外線光UV3は380nm以上の波長を有するものだけに制限される。
【0066】
この結果、ロール状スタンパ50の表面に離型層55を介して密接するシート53には、380nm以上の波長に制限された紫外線光UV3が照射される。
【0067】
本実施の形態では、紫外線硬化性樹脂41に光吸収波長が380nm以上の光重合開始剤を含有している。したがってバンドパスフィルター65で380nm以上の照射波長に制限された紫外線光UV3により紫外線硬化性樹脂41を適切に硬化させることができる。
【0068】
このように
図6の構成では、バンドパスフィルター65で短波長の紫外線光がカットされるため、従来のように短波長の強いエネルギーにより離型層55が分解されることがなく、従来に比べて転写回数を増やしても、転写欠陥の発生を抑制することができる。
【0069】
図6の構成によれば、特に光源64を限定する必要がなく、従来から使用されている光源64等を使用することができる。
【0070】
図7は、転写装置の転写硬化部を示す部分模式図であり、第3の波長制限手段を説明するための図である。
図7において
図3、
図4と同じ符号が付けられている部材は、
図3、
図4と同じ部分を示している。なお
図7においても
図4と同様に、ロール状スタンパ50の表面には凹凸形状からなる微細パターン52及び離型層55が設けられているが図面上省略した。
【0071】
図7には一部を拡大して示す部分拡大模式図が図示されている。
図7の部分拡大模式図に示す基材21に、380nm未満の照射波長を吸収する第3の波長制限手段としての透明基材を使用している。
【0072】
図7に示すように光源66から照射された紫外線光UV4は、まず基材21に進入する。したがって基材21にて380nm未満の照射波長をカット(光吸収)することで、基材21から紫外線硬化性樹脂41に入る紫外線光UV5は、380nm未満の照射波長がカットされた紫外線光であり、このように380nm未満の波長の紫外線光が紫外線硬化性樹脂41に進入しないように制御している。
【0073】
380nm未満の照射波長を吸収する基材21は特に限定されないが、トリアセチルセルロース(TAC)からなる、例えばフィルムを用いることが好適である。TACフィルムを用いることで、380nm未満の照射波長を適切に基材21にて吸収できる。
【0074】
図9は、材料の異なる基材における波長と光透過率との関係を示すグラフである。
図9の横軸が波長を示し、縦軸が光透過率を示している。
【0075】
図9に示すように、TACフィルムでは、波長が380nm未満の紫外線光に対する光透過率を約3%以下に抑えることができる。換言すれば、TACフィルムでは、波長が380nm未満の紫外線光を97%以上吸収することができる。
【0076】
これに対して、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、及びポリエチレンテレフタレート(PET)ではいずれも、波長が380nm未満の紫外線に対する光透過率が約85%〜90%程度と極めて高い。
【0077】
本実施の形態では、紫外線硬化性樹脂41に光吸収波長が380nm以上の光重合開始剤を含有している。したがって基材21で380nm以上の波長に制限された紫外線により紫外線硬化性樹脂41を適切に硬化させることができる。
【0078】
このように
図7の構成では、基材21で短波長の紫外線光がカットされるため、従来のように短波長の強いエネルギーにより離型層55が分解されることがなく、従来に比べて転写回数を増やしても、転写欠陥の発生を抑制することができる。
【0079】
図7に示す実施の形態では、光源66として、
図6と同様に高圧UVランプや、メタルハライドランプ等を用いることができ、特に限定されるものでない。
【0080】
図7では
図6と異なって380nm未満の波長の紫外線光をカットするバンドパスフィルター65を設けなくてもよいが、設けることも可能である。
【0081】
また
図5のように、照射波長を380nm以上に制限した光源63を用いた第1の波長制限手段、及び
図6のように、光源64とロール状スタンパ50との間に380nm未満の波長をカットするバンドパスフィルター65を設けた第2の波長制限手段を用いる場合、シート53に用いられる基材21の材料は制限を受けることがない。したがって基材21には、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリエチレン、アクリル、ポリイミド系の高透過性のフィルム等を用いることができる。なお
図5、
図6の構成においても、基材21にTACフィルムを用いることが可能である。
【0083】
図3に示す転写装置100には波長制限手段として、
図5に示すように、380nm以上の照射波長に制限された単波長のLED等の光源63が使用され、あるいは、
図6に示すように、光源64とロール状スタンパ50との間に380nm未満の波長をカットするバンドパスフィルター65が設けられている。
【0084】
本実施の形態では、紫外線硬化性樹脂41の厚みを0.5μm以上5μm以下の範囲内とすることが好ましい。ここでいう紫外線硬化性樹脂41の厚みは、基材21上に紫外線硬化性樹脂41を塗布したときの厚みであり、ロール状スタンパ50を押し当てて表面に微細パターン25を形成する前での厚みである。したがって
図1のように表面にロール状スタンパ50の微細パターン52を押し当て硬化収縮した状態の紫外線硬化樹脂層22の厚みは、0.4μm〜4.5μm程度となる。
【0085】
紫外線硬化性樹脂41の厚みが厚くなりすぎると、膜厚方向に均一な光硬化をできず、また硬化収縮が大きくなりシート53の反りが大きくなる問題が生じ、また紫外線硬化性樹脂41の厚みが薄くなりすぎると、塵等の異物が基材21上に付着している場合に、適切に異物を紫外線硬化性樹脂41内に埋めることができず表面に適切に微細パターンを形成できない問題が生じる。
【0086】
上記問題を解消すべく、紫外線硬化性樹脂41の厚みを0.5μm以上5μm以下の範囲内に設定した。紫外線硬化性樹脂41の厚みは1μm以上であることが好ましく、より好ましくは2μm以上である。これにより上記した異物の影響を抑制することができる。
【0087】
以上のように、本発明者らは、基材21上に積層される紫外線硬化性樹脂41の表面に、離型層55が設けられた微細パターン52を有するロール状スタンパ50を押し当てながら、紫外線硬化性樹脂41に紫外線を照射して、紫外線硬化性樹脂41を硬化させる微細パターン25の形成方法において、紫外線硬化性樹脂41に光吸収波長が380nm以上の光重合開始材を含有するとともに、照射波長を380nm以上に制限する波長制限手段を設けることで、ロール状スタンパ50が短波長の光に暴露されないことからロール状スタンパ50の表面に設けられた離型層55の耐久性を向上させ、転写性を向上させることができることを見出した。
【0088】
即ち上記の構成により、ロール状スタンパ50表面に設けられた離型層55の耐久性が向上することから、繰り返し転写して、ロール状スタンパ50から紫外線硬化樹脂層22を剥離しても、ロール状スタンパ50表面への紫外線硬化樹脂の残留が生じくくなり、転写回数の増大とともに、成型体20に転写される微細パターン25に転写形状欠陥が生じるのを抑制することができる。
【0089】
本実施の形態においては、波長制限手段として、照射波長が380nm以上に制限された光源63を用いた第1の波長制限手段、380nm未満の波長をカットするバンドパスフィルター65を用いた第2の波長制限手段、及び380nm未満の波長を吸収する基材を用いた第3の波長制限手段を提示した。これらの波長制限手段を単独で用いてもよいし、複数の波長制限手段を組み合わせることも可能である。また、照射波長が380nm以上に制限できる波長制限手段を上記に挙げた3種類に限定するものでなく、他の波長制限手段を用いてもよい。
【0090】
以上、本実施の形態では、ロールツーロール型の転写装置で連続的に微細パターンを形成する場合について説明したが、これに限られず、
図10に示すバッチ型の転写装置においても、同様の効果を奏する。
【0091】
図10は、バッチ式転写法を説明するための断面模式図である。
図10Aに示すように、スタンパ90の表面(
図10Aの下面側)には断面が凹凸形状からなる微細パターンが形成され、微細パターンの表面に沿って離型層91が設けられている。
図10Aに示すように、基材21の表面には紫外線硬化性樹脂41が塗布されており、微細パターンが形成されたスタンパ90の表面を紫外線硬化性樹脂41の表面に押し当てる。
【0092】
図10Aの状態で、基材21側に配置された光源92にて紫外線が照射され、紫外線硬化性樹脂41が硬化させられる。
【0093】
紫外線硬化性樹脂41には、光吸収波長が380nm以上の光重合開始剤が含まれている。よって、380nm以上の波長の紫外線光により紫外線硬化性樹脂41を硬化させることができる。
【0094】
図10Bでは、スタンパ90を紫外線硬化樹脂層22から引き離す。
図10Bに示すように紫外線硬化樹脂層22の表面には微細パターン25が転写されている。
【0095】
バッチ型の転写装置においても
図10Aの光源92が波長380nm以上に制限された単波長のLED等の光源であったり、光源92とスタンパ90との間に380nm未満の波長をカットするバンドパスフィルターが設けられている。あるいは、基材21にTACフィルムのように380nm未満の照射波長を吸収する透明基材が用いられる。
【0096】
以上により、離型層91が380nm未満の短波長の紫外線に曝されることなく、離型層91が分解等されるのを抑制することができる。したがって従来に比べて転写回数を増やすことができるとともに、転写欠陥の発生を抑制でき、転写性を効果的に向上させることができる。
【実施例】
【0097】
以下、本発明における微細パターンの形成方法について比較例及び実施例を用いて説明するが、これらは説明のために記述されるものであって、本発明の範囲が下記実施例に限定されるものではない。
【0098】
(比較例1)
紫外線光源としてMLR3000B−27メタルハライド(セン特殊光源社製)を使用し、Ni電鋳でピッチ(P)100nm、グリッド幅(D)30nm、高さ(H1)100nmの微細パターンを有するロール状スタンパを使用した。ロール状スタンパの周長は260mmである。ロール状スタンパの微細パターンが形成された表面に予めオプツール(登録商標)HD2100(ダイキン工業社製)をメーカ指定の処理方法で被覆した。オプツール(登録商標)HD2100Z中に浸漬し、引き上げ後、24度50%RHに2時間放置し乾燥した。次いでリンス液デュラサーフ(登録商標)HD−ZV(ハーベス社製)に浸漬及びリンス後、24度50%RHで2時間乾燥し離型層を形成した。透明基材には、PETフィルム(東洋紡製)を用いた。
【0099】
また、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)を32重量%、1,9ノナンジオールジアクリレートを32.5重量%、N−ビニル−2−ピロリドン(NVP)を33重量%、シリコンジアクリレートを0.5重量%、及び光重合開始剤としてイルガキュア(登録商標)184(BASF社製、吸収ピーク波長;246nm、280nm、333nm)を2重量%配合し、紫外線硬化性樹脂を作製した。
【0100】
そして、PETフィルム上に上記の紫外線硬化性樹脂を塗工し、転写硬化を連続的に実施した。
【0101】
スタンパを目視で観察するとともに転写硬化後の成型体を観察すると、約200回転(約1時間)の転写硬化でスタンパ表面への樹脂付着及び成型体の転写形状欠陥が現れた。
【0102】
続いて成型体にアルミニウムを斜め蒸着することにより、ワイヤグリッド偏光フィルムを形成した。
【0103】
図11Aは、比較例におけるワイヤグリッド偏光子に観測された転写欠陥の平面模式図である。
【0104】
図11Aに示すように、目視で直径100μm以上(数mmのものも存在)の黒点欠陥95が観測された。この黒点欠陥95は、成型体20にて格子状凸部が抜けてしまった箇所に金属であるアルミニウムが蒸着された箇所であり、黒点として現れる。比較例1では、
図11Aに示す黒点欠陥95が100個以上、存在することがわかった。
【0105】
(比較例2)
基材フィルムをTAC(富士フィルム社製)とし、比較例1と同様に成型体を得た。TACフィルムの波長380nmでの透過率は約3%である(
図9参照)。このようにTACフィルムは、波長380nm未満の光を透過しないため、吸収ピーク波長が246nm、280nm及び333nmである光重合開始剤としてのイルガキュア(登録商標)184を含む紫外線硬化性樹脂を硬化させることができず、表面に微細パターンを備えた成型体を得ることはできなかった。
【0106】
(実施例1)
基材フィルムをTACフィルムとし、TACフィルムの光吸収波長より長い380nm以上で光重合開始するダロキュア(登録商標)TPO(BASF社製、吸収ピーク波長;295nm、368nm、380nm、393nm)を光重合開始剤に用い、比較例1と同様に成型体を得た。
【0107】
実施例1では、約4500回(約20時間)の転写硬化において微細パターンが形成されているスタンパ表面への樹脂付着及び成型体の転写形状欠陥は見られなかった。
【0108】
比較例1と同様に成型体にアルミニウムを斜め蒸着してワイヤグリッド偏光フィルムを形成した。
図11Bは、本実施例におけるワイヤグリッド偏光子に観測された転写欠陥の平面模式図である。実施例1では、
図11Bに示す直径が数十μm程度の微小な黒点96が観測されたが、黒点96は5個以下であり、大きさ及び個数ともに光学性能等に対して問題とならないレベルであった。
【0109】
(比較例3)
基材フィルムをPETフィルムとし、実施例1と同様に成型体を得た。
図9に示すように、PETフィルムの波長380nmでの透過率は約87%である。
【0110】
そして、実施例1と同様に成型体にアルミニウムを斜め蒸着してワイヤグリッド偏光フィルムを形成した。
【0111】
比較例3では、約200回(約1時間)の転写硬化において微細パターンが形成されたスタンパ表面への樹脂付着及び成型体の転写形状欠陥が観測された。比較例1と同様に転写形状欠陥(黒点欠陥)を評価したところ、
図11Aに示す黒点欠陥95(目視で直径100μm以上(数mmのものも存在))が100個以上、存在することがわかった。
【0112】
比較例3では、実施例1と同様に、紫外線硬化性樹脂が、380nm以上で光重合を開始するダロキュア(登録商標)TPOを含有しているため、紫外線硬化性樹脂を硬化させることは可能であるが、基材フィルムをPETとしたため、380nm未満の短波長の影響を離型層が受けて転写性が低下したことがわかった。
【0113】
(比較例4)
基材フィルムをCOP(アートン(登録商標)、JSR製)に変更し、実施例1と同様に成型体を得た。
図9に示すように、COPフィルムの波長380nmでの透過率は約90%である。そして、成型体にアルミニウムを斜め蒸着してワイヤグリッド偏光フィルムを形成した。
【0114】
比較例4では、約200回(約1時間)の転写硬化においてスタンパ表面への樹脂付着及び成型体の転写形状欠陥が観測された。比較例1と同様に転写形状欠陥(黒点欠陥)を評価したところ、
図11Aに示す黒点欠陥95(目視で直径100μm以上(数mmのものも存在))が100個以上、存在することがわかった。
【0115】
比較例4では、実施例1と同様に、紫外線硬化性樹脂が、380nm以上で光重合を開始するダロキュア(登録商標)TPOを含有しているため、紫外線硬化性樹脂を硬化させることは可能であるが、基材フィルムをCOPとしたため、380nm未満の短波長の影響を離型層が受けて転写性が低下したことがわかった。
【0116】
(実施例2)
メタルハライドランプ光源とロール状スタンパとの間に波長380nmから430nmの光を透過し、それ以外の波長の光を遮断するバンドパスフィルターを設けた。そして比較例3と同様に成型体を得た。さらに成型体にアルミニウムを斜め蒸着してワイヤグリッド偏光フィルムを形成した。
【0117】
実施例2では、約4600回(約20時間)の転写硬化においてスタンパ表面への樹脂付着及び成型体の転写形状欠陥は観測されなかった。実施例2では、ワイアヤグリッド偏光フィルムにおいて
図11Bに示す直径が数十μm程度の微小な黒点96が観測されたが、黒点96は5個以下であり、大きさ及び個数ともに光学性能等に対して問題とならないレベルであった。
【0118】
(実施例3)
メタルハライドランプ光源とロール状スタンパとの間に波長380nmから430nmの光を透過し、それ以外の波長の光を遮断するバンドパスフィルターを設けた。そして比較例4と同様に成型体を得た。さらに成型体にアルミニウムを斜め蒸着してワイヤグリッド偏光フィルムを形成した。
【0119】
実施例3では、約4600回(約20時間)の転写硬化においてスタンパ表面への樹脂付着及び成型体の転写形状欠陥は観測されなかった。実施例3では、ワイアヤグリッド偏光フィルムにおいて
図11Bに示す直径が数十μm程度の微小な黒点96が観測されたが、黒点96は5個以下であり、大きさ及び個数ともに光学性能等に対して問題とならないレベルであった。
【0120】
(実施例4)
波長390nmにピーク波長を有するLED光源(LEDZero PinCure(登録商標)、ファインセンシング社製)を用いた。照度は0.35W/cm
2であった。そして比較例4と同様に成型体を得た。さらに成型体にアルミニウムを斜め蒸着してワイヤグリッド偏光フィルムを形成した。
【0121】
実施例4では、約4600回(約20時間)の転写硬化においてスタンパ表面への樹脂付着及び成型体の転写形状欠陥は観測されなかった。実施例4では、ワイアヤグリッド偏光フィルムにおいて
図11Bに示す直径が数十μm程度の微小な黒点96が観測されたが、黒点96は5個以下であり、大きさ及び個数ともに光学性能等に対して問題とならないレベルであった。