特許第6343203号(P6343203)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6343203光学多重反射測定装置および光学多重反射測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6343203
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】光学多重反射測定装置および光学多重反射測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/41 20060101AFI20180604BHJP
【FI】
   G01N21/41 101
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-165612(P2014-165612)
(22)【出願日】2014年8月18日
(65)【公開番号】特開2016-42049(P2016-42049A)
(43)【公開日】2016年3月31日
【審査請求日】2017年5月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】592010357
【氏名又は名称】九州計測器株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100116296
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幹生
(72)【発明者】
【氏名】阿部 宏和
(72)【発明者】
【氏名】吉富 靖典
(72)【発明者】
【氏名】岩倉 宗弘
(72)【発明者】
【氏名】辺見 彰秀
(72)【発明者】
【氏名】田中 敬二
【審査官】 藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−354092(JP,A)
【文献】 特開2004−061211(JP,A)
【文献】 特開2013−127414(JP,A)
【文献】 特開2013−072868(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0310394(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/01
G01N 21/17−21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサーチップが配置され分析対象試料を搭載したプリズムに対して光を照射する光源と、前記プリズムによって反射された光を受光する受光素子と、前記プリズムへの入射光の焦点を中心として前記光源を連続的に回転させる機構部とを備え、前記光源の回転に伴って、前記光源を減速させずに一定速度で動かすことにより、前記プリズムへの入射光の入射角を変化させて、前記プリズムからの反射光の強度を測定することを特徴とする光学多重反射測定装置。
【請求項2】
前記受光素子は、設置位置を変えることなく反射光を受光することが可能な受光面積を有する大面積型フォトダイオードであることを特徴とする請求項1記載の光学多重反射測定装置。
【請求項3】
センサーチップが配置され分析対象試料を搭載したプリズムに対して光を照射する光源を、前記プリズムへの入射光の焦点を中心として連続的に回転して、前記光源を減速させずに一定速度で動かすことにより、前記プリズムへの入射光の入射角を変化させ、前記プリズムによって反射された光を受光素子で受光して前記プリズムからの反射光の強度を測定することを特徴とする光学多重反射測定方法。
【請求項4】
前記受光素子は、設置位置を変えることなく反射光を受光することが可能な受光面積を有する大面積型フォトダイオードであることを特徴とする請求項3記載の光学多重反射測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速測定可能な光学多重反射測定装置および光学多重反射測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon Resonance 以下、「SPR」という)を利用したSPRセンサーは、分子間の相互作用をリアルタイムでモニタリングできる点に大きなメリットがあり、医薬生化学領域や、食品・環境分析の分野において幅広く利用されている。
【0003】
表面プラズモンは、金属表面を伝播するプラズマ波であり、表面プラズモン共鳴は、この表面プラズモンと光波との共鳴によって生じる現象である。光によって表面プラズモンを生じさせるためには、伝播速度が遅い光であるエバネッセント波が用いられる。エバネッセント波は、光が全反射するときに、反射面の反対側に生じる表面波である。
【0004】
SPRセンサーで多く用いられる光学系は、金属薄膜がコーティングされたプリズムを用いており、このプリズム表面に光を照射した際に、金属薄膜を通りぬけてその反対側にしみ出したエバネッセント波が金属表面の表面プラズモンを励起する。表面プラズモン共鳴が起こると光のエネルギーは表面プラズモンに移り、反射光強度は減衰するため、光の入射角に対して反射光強度をプロットすると、反射光のある特定の角度で反射光強度が減衰する。この角度をSPR角度といい、SPR角度は、金属薄膜表面近傍の媒質の屈折率に依存して変動する。計測対象となる分子(アナライト)を認識するための分子(リガンド)をセンサーチップ上に固定化し、これにアナライトを含む試料を注入すると、リガンドとアナライトの結合に伴って、センサーチップ表面の質量が増大する。これにより、センサーチップ表面の屈折率が増大し、SPR角度が変化する。このSPR角度の変化を検出することにより、センサーチップ表面における分子間相互作用をリアルタイムに計測することができる。
【0005】
図2に、従来の表面プラズモン共鳴の測定系の一例を示す。図2において、光源1から照射された光は、分析対象試料3が搭載されたプリズム2によって反射され、受光素子4に受光されるが、入射光の入射角に応じて反射光の受光角度も機械的に合わせる必要があり、この操作を行うためには、ゴニオメータ等の複雑な機構が必要となる。そのため、装置が複雑で大型化するという問題点がある。また、入射角を繰り返し変化させるために、光源1と受光素子4をそれぞれ図2に示すように往復運動させると、光源1と受光素子4は加速、定速、減速を繰り返すことになるため、高速化が困難であり、連続で観測する場合、高速測定を行うことができなかった。そのため、高分子材料等の濡れ性変化等のように、ミリ秒単位やそれ以下で性状が変化するものを正確に評価することができなかった。
【0006】
特許文献1には、可変光照射装置に微小回動装置を連結し、微小回動装置の駆動に伴って可変光照射装置を所要の角度にて往復回動させて、センサーチップに対する光の入射角度を可変する表面プラズモン共鳴角検出装置が記載されている。
【0007】
【特許文献1】特開平11−271215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、高速で性状が変化するものを測定対象としても、正確に高速測定を行うことが可能な光学多重反射測定装置と光学多重反射測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するために、本発明の光学多重反射測定装置は、センサーチップが配置され分析対象試料を搭載したプリズムに対して光を照射する光源と、前記プリズムによって反射された光を受光する受光素子と、前記プリズムへの入射光の焦点を中心として前記光源を連続的に回転させる機構部とを備え、前記光源の回転に伴って前記プリズムへの入射光の入射角を変化させて、前記プリズムからの反射光の強度を測定することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の光学多重反射測定方法は、センサーチップが配置され分析対象試料を搭載したプリズムに対して光を照射する光源を、前記プリズムへの入射光の焦点を中心として連続的に回転して前記プリズムへの入射光の入射角を変化させ、前記プリズムによって反射された光を受光素子で受光して前記プリズムからの反射光の強度を測定することを特徴とする。
【0011】
プリズムへの入射光の焦点を中心として光源を回転させることにより、光源を往復運動させるときのように光源を減速させる必要がなく、一定速度で高速に動かすことができる。そのため、分析対象試料を搭載したプリズムに対して、高速で入射角を変化させて光を投入することができる。これにより、分析対象試料の表面の過渡変化をミリ秒オーダーで観測することが可能となる。
【0012】
本発明の光学多重反射測定装置においては、前記受光素子は、設置位置を変えることなく反射光を受光することが可能な受光面積を有する大面積型フォトダイオードである。
また、本発明の光学多重反射測定方法においては、前記受光素子は、設置位置を変えることなく反射光を受光することが可能な受光面積を有する大面積型フォトダイオードである。
【0013】
受光素子として大面積型フォトダイオードを用いることにより、一つの受光素子で設置位置や角度を変えることなく反射光を受光することができ、角度による光強度の補正をすることで、受光側を固定して表面プラズモンの共鳴角を観測することができる。
【0014】
また、入射光の焦点を中心として光源を回転させるため、プリズムへの入射光の入射角を大きな範囲で変化させることができる。そのため、表面プラズモン共鳴が起こる全反射角よりも小さい入射角での反射光強度も高速で計測することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、高速で性状が変化するものを測定対象としても、正確に高速測定を行うことが可能な光学多重反射測定装置と光学多重反射測定方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る光学多重反射測定装置を示す図である。
図2】従来の表面プラズモン共鳴の測定系の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の光学多重反射測定装置と光学多重反射測定方法を、その実施形態に基づいて説明する。
図1に、本発明の実施形態に係る光学多重反射測定装置を示す。
光学多重反射測定装置は、分析対象試料3を搭載したプリズム2に対して光を照射する光源1と、プリズム2によって反射された光を受光する受光素子4を備えている。光源1は機構部によって、プリズム2への入射光の焦点を中心として、連続的に回転する。光源1の回転により、プリズム2への入射光の入射角を変化させて、プリズム2からの反射光の強度を測定する。断面が半円状のプリズム2の平面側上部にはセンサーチップ6が配置されており、センサーチップ6上に分析対象試料3が搭載されている。分析対象試料3上には気体液体試料用管7が配置される。光源1からプリズム2に入射した光は、センサーチップ6が配置され分析対象試料3が搭載されている、プリズム2の平面側上部にて反射して、反射光が受光素子4に受光される。
【0018】
センサーチップ6は、数十nmの厚さの金属膜をガラス等の光透過体に形成させた板状のものであり、金属膜として通常はAu膜が使用される。センサーチップ6はプリズム2と別部材として形成してもよく、樹脂成型によりプリズム2と一体として形成することもできる。このセンサーチップ6の金属表面側に分析対象試料3の薄膜を設置してその密度を測定する。センサーチップ6はセンサーセルで固定される。
【0019】
光源1として、特定波長のレーザー光源等を用い、その波長特性を有する受光素子4を組み合わせて使用する。受光素子4は所定の角度で固定する。光源1側の光学系の回転は、機構部に備えられたモータにより行い、光源1側の光学系を所定の速度で一方向へ連続回転させ、回転速度を安定させる。
【0020】
受光素子4として、設置位置を変えることなく反射光を受光することが可能な受光面積を有する大面積型フォトダイオードを用いており、一つの受光素子4で設置位置や角度を変えることなく反射光を受光することができ、角度による光強度の補正をすることで、受光側を固定して表面プラズモンの共鳴角を観測することができる。
【0021】
分析対象試料3を囲むフローセル5を用いることにより、温度、圧力、雰囲気ガス等の環境を制御することが可能である。そのため、これらの環境変化による材料の変化も観測することができ、従来観測できなかった材料特性を調べることができる。ピペットによる手動操作またはポンプ等の送液装置により各種の液体や気体を接触させ、その前後のデータを連続して取得する。
【0022】
測定結果のデータ処理は、測定値とリファレンス値との差分を採るため、光源1側の光学系を通してセンサーチップ6の裏面へ照射した光の反射光と、リファレンス光の差分をとってレーザー光そのものの変動を相殺し、分析対象試料3の変性による応答の変化を捉える。
【0023】
プリズム2に対する入射光の投入角度に応じて反射光も変化するが、大面積フォトダイオードである受光素子4は所定の角度で固定されているため、受光素子4への入射角が大きくなるにつれて受光強度が低減する。このため、受光角度に応じて補正するプログラムを備えることにより、反射角による受光強度の補正を行う。
【0024】
上述した測定方法は、単層膜に対して適用されるばかりでなく、多層膜に対してもスネル法則を利用することにより各膜の密度を知ることができるため、多層膜に対しても適用することができ、単層膜、多層膜の区別なく適用対象を広く設定できる。
【0025】
本発明においては、光源1を機構部により回転させることにより、光源1を一定速度で高速に動かすことが可能である。そのため、分析対象試料3を搭載したプリズム2に対して、高速で入射角を変化させて光を投入することができ、分析対象試料3の表面の過渡変化をミリ秒オーダーで観測することが可能となる。このようにして、表面プラズモン共鳴の高速な変化を捉えることができるため、高分子材料等の濡れ性の変化など、ミリ秒単位以下で性状が変化するものの評価に用いることができる。具体的な測定対象として、印刷物(紙、インク、塗料等)、タイヤゴム、化粧品等を挙げることができる。
【0026】
また、プリズム2への入射光の焦点を中心として光源1を回転させるため、プリズム2への入射光の入射角を大きな範囲で変化させることができ、表面プラズモン共鳴が起こる全反射角よりも小さい入射角での反射光強度も高速で計測することができる。そのため、表面プラズモン共鳴に限らず、反射光強度の計測から得られる分析対象試料3の情報を広く採取することが可能な光学多重反射測定装置と光学多重反射測定方法として機能する。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、高速で性状が変化するものを測定対象としても、正確に高速測定を行うことが可能な光学多重反射測定装置と光学多重反射測定方法として広く利用することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 光源
2 プリズム
3 分析対象試料
4 受光素子
5 フローセル
6 センサーチップ
7 気体液体試料用管
図1
図2