特許第6343239号(P6343239)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6343239
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】システム天井構造および支持金具
(51)【国際特許分類】
   E04B 9/06 20060101AFI20180604BHJP
   E04B 9/18 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
   E04B9/06 Z
   E04B9/18 N
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-17479(P2015-17479)
(22)【出願日】2015年1月30日
(65)【公開番号】特開2016-142008(P2016-142008A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2017年12月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】393016837
【氏名又は名称】株式会社桐井製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒井 智一
(72)【発明者】
【氏名】野曽原 瑞樹
【審査官】 新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭51−044654(JP,Y2)
【文献】 特開平11−181948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/06 − 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メインバーとクロスバーを格子状に組み付けてなる天井枠と、互いに対向する壁間に架け渡された横架材と、前記横架材に接続される支持金具とを備えており、
前記横架材の端部は、前記壁の表面あるいは前記壁の下地材の側面に接続されており、
前記横架材は、所定の間隔をあけて互いに平行配置された一対の長尺材からなり、
前記支持金具は、一対の前記長尺材の上面に架け渡される水平板部を備えるとともに、前記天井枠を支持しており、
前記天井枠を支持する吊ハンガーは、前記水平板部の中間位置に固定されて、一対の前記長尺材間を通過して下方に延在している
ことを特徴とするシステム天井構造。
【請求項2】
前記水平板部は、一対の前記長尺材の幅方向両端まで延在しており、
前記水平板部の両端には、前記長尺材の側面に沿って垂下する垂下板部がそれぞれ設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム天井構造。
【請求項3】
前記メインバーと前記クロスバーとの連結交差部において前記メインバーを挟んで配置された一対の前記クロスバーの端部同士を繋ぐ接続金具が設けられており、
前記垂下板部の下端部は、前記接続金具に接続されている
ことを特徴とする請求項2に記載のシステム天井構造。
【請求項4】
前記支持金具は、吊ハンガーを介して前記天井枠を支持している
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のシステム天井構造。
【請求項5】
所定の間隔をあけて平行配置された一対の長尺材からなり互いに対向する壁間に架け渡された横架材に支持され、メインバーとクロスバーを格子状に組み付けてなる天井枠を支持する吊ハンガーを支持する支持金具であって、
一対の前記長尺材の上面に架け渡される水平板部と、前記水平板部の両端から前記長尺材の外側面に沿って垂下する垂下板部とを備え、
前記水平板部の中間部には、前記吊ハンガーが支持される
ことを特徴とする支持金具。
【請求項6】
前記各垂下板部の下端部には、前記メインバーと前記クロスバーとの連結交差部において前記メインバーを挟んで配置された一対の前記クロスバーの端部同士を繋ぐ接続金具に連結される連結部が設けられている
ことを特徴とする請求項5に記載の支持金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、システム天井構造および支持金具に関する。
【背景技術】
【0002】
システム天井は、メインバーとクロスバーとからなる天井下地材を格子状に組み付けてなる天井構造枠を備えている。天井構造枠は、上階床スラブや屋上スラブなどの上部構造躯体から垂設された吊ボルトの下端部に、吊ハンガー(吊金具)を介して支持されている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。耐震性能の向上のために、吊ボルトや天井下地材間に天井ブレースが設けられている。天井下地材で格子状に区画された格子枠内には、天井材が個々に固定されている。このようなシステム天井においては、格子枠内に天井材の他に照明装置や空調装置などの設備機器も設置可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−282005号公報
【特許文献2】特開2003−13540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、天井に設置する設備機器が多い場合には、配管ダクトや配線などが吊ボルトや天井ブレースと干渉して、設備機器の設置が困難になる場合があった。これでは、設備機器を任意の場所に取り付けることができるといったシステム天井の長所を活かしきれないこととなる。
【0005】
そこで、本発明は、前記の問題を解決するためになされたものであり、天井の構成部材と配管ダクトや配線が干渉せず、設置機器を任意の場所に取り付けることができるシステム天井構造およびこれに用いる支持金具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための請求項1に係る発明は、メインバーとクロスバーを格子状に組み付けてなる天井枠と、互いに対向する壁間に架け渡された横架材と、前記横架材に接続される支持金具とを備えており、前記横架材の端部は、前記壁の表面あるいは前記壁の下地材の側面に接続されており、前記横架材は、所定の間隔をあけて互いに平行配置された一対の長尺材からなり、前記支持金具は、一対の前記長尺材の上面に架け渡される水平板部を備えるとともに、前記天井枠を支持しており、前記天井枠を支持する吊ハンガーは、前記水平板部の中間位置に固定されて、一対の前記長尺材間を通過して下方に延在していることを特徴とするシステム天井構造である。
【0007】
メインバーは、クロスバーとの連結交差部において分断されずに直線状に通して設けられる部材であって、クロスバーは、連結交差部で分断されて、メインバーの両側面にそれぞれ接続される部材である。前記のような構成によれば、吊りボルトを設けることなく、壁間に架け渡された横架材に接続された支持金具で天井枠を支持しているので、横架材の上方に横方向に広がる空間が確保される。したがって、設備機器の配管ダクトや配線を天井の構成部材と干渉させずに、任意の場所に取り付けることができる。さらに、吊ハンガーが横架材の幅方向中心部で接続されるので、横架材に捩れの力が加わることなく、吊ハンガーがバランス良く支持される。
【0009】
請求項に係る発明は、前記水平板部が、一対の前記長尺材の幅方向両端まで延在しており、前記水平板部の両端には、前記長尺材の側面に沿って垂下する垂下板部がそれぞれ設けられていることを特徴とする。このような構成によれば、支持金具が立体的な形状になるので、剛性が高くなる。
【0010】
請求項に係る発明は、前記メインバーと前記クロスバーとの連結交差部において前記メインバーを挟んで配置された一対の前記クロスバーの端部同士を繋ぐ接続金具が設けられており、前記垂下板部の下端部は、前記接続金具に接続されていることを特徴とする。このような構成によれば、支持金具と接続金具とクロスバーが一体化されるので、各部の剛性が高くなる。
【0011】
請求項に係る発明は、前記支持金具が、吊ハンガーを介して前記天井枠を支持していることを特徴とする。このような構成によれば、既製の吊ハンガーを用いて天井枠を支持できるので、容易に施工できる。
【0012】
請求項に係る発明は、所定の間隔をあけて平行配置された一対の長尺材からなり互いに対向する壁間に架け渡された横架材に支持され、メインバーとクロスバーを格子状に組み付けてなる天井枠を支持する吊ハンガーを支持する支持金具であって、一対の前記長尺材の上面に架け渡される水平板部と、前記水平板部の両端から前記長尺材の外側面に沿って垂下する垂下板部とを備え、前記水平板部の中間部には、前記吊ハンガーが支持されることを特徴とする支持金具である。
【0013】
このような構成の支持金具によれば、天井の構成部材と配管ダクトや配線が干渉しないように、互いに対向する壁間に架け渡された横架材から、メインバーとクロスバーを格子状に組み付けてなる天井枠を支持したシステム天井において、安定した状態で天井枠を支持することができる。また、既製の吊ハンガーを用いて支持できるので、容易に施工できる。
【0014】
請求項に係る発明は、前記各垂下板部の下端部には、前記メインバーと前記クロスバーとの連結交差部において前記メインバーを挟んで配置された一対の前記クロスバーの端部同士を繋ぐ接続金具に連結される連結部が設けられていることを特徴とする。このような構成の支持金具によれば、支持金具と接続金具とクロスバーが一体化されるので、各部の剛性を高めることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、天井の構成部材と配管ダクトや配線が干渉せず、設置機器を任意の場所に取り付けることができる、といった優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係るシステム天井構造を示した平面図である。
図2】本発明の実施形態に係るシステム天井構造を示した図であって、(a)は側面図、(b)は要部拡大側面図である。
図3】本発明の実施形態に係るシステム天井構造を示した要部斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係るシステム天井構造を示した要部分解斜視図である。
図5】本発明の実施形態に係る支持金具を示した図であって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
図6】本発明の実施形態に係るシステム天井構造の要部を示した図であって、(a)は正面図、(b)は側面図である。
図7】本発明の実施形態に係るシステム天井構造の要部を示した断面図である。
図8】本発明の実施形態に係る支持金具の第一の変形例を示した図であって、(a)は正面図、(b)は側面図である。
図9】本発明の実施形態に係る支持金具の第二の変形例を示した図であって、(a)は正面図、(b)は側面図である。
図10】本発明の実施形態に係る支持金具の第三の変形例を示した図であって、(a)は正面図、(b)は側面図である。
図11】本発明の実施形態に係る支持金具の第四の変形例を示した図であって、(a)は側面図、(b)は正面図である。
図12】第五の変形例を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態に係るシステム天井構造およびこれに用いられる支持金具について図面を参照して詳細に説明する。本実施形態では、グリッド型のシステム天井を廊下に採用した場合を一例として説明する。
【0018】
図1に示すように、グリッド型のシステム天井は、メインバー2aとクロスバー2bとを格子状に組み付けてなる天井枠3を備えている。天井枠3で区画された各区画部には、天井板パネル4(図2参照)、照明器具や空調機器(図示せず)等が設置される。なお、メインバー2aは、連結交差部5において分断されずに直線状に通して設けられる部材であって、クロスバー2bは、連結交差部5で分断されて、メインバー2aの両側面にそれぞれ接続される部材である。つまり、連結交差部5における位置関係でバーの関係性が変わる。
【0019】
本実施形態では、廊下の幅方向に延在するメインTバーと、隣り合うメインTバー間に架け渡されて廊下の長手方向に延在するメインクロスTバーと、隣り合うメインクロスTバー間に架け渡されて廊下の幅方向に延在するクロスTバーとを備えている。メインTバーとメインクロスTバーとの連結交差部5aでは、メインTバーがメインバー2aを構成し、メインクロスTバーがクロスバー2bを構成する。また、メインクロスTバーとクロスTバーとの連結交差部5bでは、メインクロスTバーがメインバーを構成し、クロスTバーがクロスバーを構成する。本実施形態に係る支持金具は、メインTバー(メインバー2a)とメインクロスTバー(クロスバー2b)との連結交差部5aのうち、図1中、丸印にて囲った部分に設けられている。
【0020】
本実施形態に係るシステム天井構造1は、メインバー2aとクロスバー2bを格子状に組み付けてなる天井枠3と、互いに対向する壁間に架け渡された横架材10と、横架材10に接続される支持金具20とを備えており、支持金具20は、吊ハンガー40を介して天井枠3を支持していることを特徴とする。つまり、従来では、天井枠は吊ボルトで支持されていたところを、本発明は、支持金具20および吊ハンガー40を介して横架材10で天井枠3を支持したものである。また、本実施形態では、メインバー2aとクロスバー2bとの連結交差部5aにおいて、接続金具50が設けられている。
【0021】
(吊ハンガー)
図3および図4に示すように、吊ハンガー40は、天井枠3を支持する既製の金具である。吊ハンガー40は、通常は吊ボルトの下端部に固定されるものであるが、本実施形態では、支持金具20に接続されて用いられる。吊ハンガー40は、下端部のメインバー2aの上辺縁部を挟み込むように保持する挟持部41と、上端部で支持金具20に接続するための取付部42とを備えている。取付部42は、吊ハンガー40の上端部で水平方向に延在する取付板部43にボルト貫通孔44を形成して構成されている。
【0022】
(接続金具)
接続金具50は、メインバー2aを挟んで配置された一対のクロスバー2b,2bの端部同士を繋ぐ。接続金具50は、一方のクロスバー2bの上方に位置する第一平面部51と、他方のクロスバー2bの上方に位置する第二平面部52と、第一平面部51と第二平面部52とを連結する連結部53とを備えている。
【0023】
第一平面部51と第二平面部52は、クロスバー2bの長手方向に沿って配置されている。第一平面部51と第二平面部52の下端部には、クロスバー2bの上縁端部に接続される接続部54がそれぞれ形成されている。接続部54は、クロスバー2bの上縁端部の形状に沿って折り曲げられており、ビスV1(図6の(b)参照)によってクロスバー2bに固定されている。
【0024】
連結部53は、平面視で断面コ字状を呈しており、吊ハンガー40を囲うように配置される。連結部53の上端部には、水平方向に延在する取付板部55が形成されている。取付板部55には、ボルト貫通孔56が形成されている。ボルト貫通孔56には、支持金具20、接続金具50および吊ハンガー40を固定するためのボルトBが挿通される。
【0025】
(横架材)
図1および図2に示すように、横架材10は、廊下の幅方向両側の壁6,6間に架け渡されている。横架材10は、壁6に対して直交しており、水平方向に延在している。横架材10の端部は、壁6の表面に接続されている。具体的には、壁6の表面には、断面コ字状(図2の(a)参照)のランナー7が水平方向に延在して設けられており、このランナー7で横架材10の端部を上下から挟むことで、横架材10が支持されている。ランナー7は壁6の表面にビス止めされている。ランナー7は、廊下両側の壁6に設けられており、横架材10の両端部をそれぞれ支持している。なお、横架材10は、壁6の表面に接続されることに限定されるものではなく、壁の下地材に固定されてもよい。また、壁6は、床から天井まで伸びる一般の壁のみならず、垂れ壁や腰壁も含む。
【0026】
図2の(a)に示すように、横架材10は、上階の床スラブの下面などの上部構造体8と所定の間隔をあけて配置されている。横架材10と上部構造体8との隙間は、各種設備の配管ダクトや配線が通過可能な寸法となっている。
【0027】
図1および図3に示すように、横架材10は、所定の間隔をあけて互いに平行配置された一対の長尺材11,11からなる。長尺材11は、たとえば軽量鉄骨製の角パイプからなる。なお、長尺材11の形状および材質は本実施形態に限定されるものではなく、断面コ字状あるいはL字状など他の形状であってもよいし、アルミニウム系やステンレス系など他の材質であってもよい。長尺材11,11間の距離は、吊ハンガー40が通過可能な寸法となっており、本実施形態では、接続金具50の連結部53の外形幅寸法と同等となっている。
【0028】
(支持金具)
図3乃至図5に示すように、支持金具20は、吊ハンガー40を介して天井枠3を支持する。支持金具20は、水平板部21と、その両端部に形成された垂下板部22とを備えた門型形状を呈している。支持金具20は、剛性と耐食性に優れた所望の板厚を有する金属製の板材等に折曲げ加工を施すことによって一体形成されている。
【0029】
水平板部21は、一対の長尺材11,11の上面に架け渡される部分である。水平板部21は、長尺材11の幅方向に長い長方形形状を呈しており、並列された長尺材11,11の外側間寸法と略同じ長さ寸法を備えている。水平板部21の長手方向中間部には、ボルト貫通孔23が形成されている。ボルト貫通孔23には、吊ハンガー40と接続金具50を固定するためのボルトBが挿通される。
【0030】
垂下板部22は、水平板部21の端部を直角に折り曲げて形成されており、長尺材11の外側の側面に沿って垂下する。垂下板部22の下端部は、横架材10の下端よりも下方に延在している。垂下板部22の下端部には、垂下板部22に対して直角に折り曲げられた折曲板部24が形成されている。折曲板部24は、外側に折り曲げられている。折曲板部24は、クロスバー2bに平行となるように配置されて接続金具50に接続される。一方の折曲板部24は、第一平面部51と当接して、ビスV2によって第一平面部51と固定される。他方の折曲板部24は、第二平面部52と当接して、ビスV2によって第二平面部52と固定される。
【0031】
次に、吊ハンガー40、接続金具50、支持金具20および横架材10の取合いを説明する。図3図6および図7に示すように、メインバー2aとクロスバー2bとの連結交差部5aの仮想交点で、吊ハンガー40の挟持部41が、メインバー2aの上端縁部を挟持している。吊ハンガー40の取付部42は、挟持部41の真上の上方に位置している。この吊ハンガー40の三側方を、連結部53が囲うように接続金具50が配置されている。接続金具50の接続部54,54が、クロスバー2b,2bの端部にそれぞれ接続されている。連結部53の上端の取付板部55は、吊ハンガー40の取付板部43の上面を覆っている。ここで、吊ハンガー40の上端部と、接続金具50の連結部53の上端部は、一対の長尺材11,11の間に位置している。
【0032】
連結部53の取付板部55と吊ハンガー40の取付板部43の上方には、支持金具20の水平板部21が位置している。吊ハンガー40のボルト貫通孔44と、接続金具50のボルト貫通孔56と、支持金具20のボルト貫通孔23は、同軸状に配置されている。各ボルト貫通孔44,56,23には、下側からボルトBの軸部が挿通され、上端部にナットN,Nが螺合されている。ボルトBは、メインバー2aとクロスバー2bとの交点上に位置しているので、メインバー2aとクロスバー2bの荷重を左右前後にバランス良く支持することができる。
【0033】
支持金具20の垂下板部22の折曲板部24は、接続金具50の第一平面部51(または第二平面部52)と当接してビス止めされている。なお、接続金具50の第一平面部51と第二平面部52は、配管ダクトなどに干渉しない位置であれば天井ブレースを取り付ける位置として利用してもよい。
【0034】
以上のような構成のシステム天井構造1および支持金具20によれば、吊ボルトを設けることなく、壁6,6間に架け渡された横架材10に接続された支持金具20で天井枠3を支持しているので、横架材10の上方で上部構造体8との間に横方向に広がる空間が確保される。この空間を、設備機器の配管ダクトや配線の配置スペースとして利用することで、配管ダクトや配線を天井の構成部材が干渉することはない。これによって、設備機器を任意の場所に取り付けることができるので、「任意の格子枠内に、照明装置や空調装置などの設備機器を設置できる」というシステム天井の長所を最大限に活かすことができる。
【0035】
また、かかるシステム天井構造1の支持金具20は、従来の吊ボルト(設備機器と干渉した場合)のように位置をずらす(偏心する)必要がないので、横架材10による天井枠3の支持位置は制限されない。したがって、支持位置を、確実にメインバー2aとクロスバー2bの連結交差部5とすることができるとともに、所定ピッチで規則正しく設定することができる。これによって、天井枠3を安定した状態で確実に支持することができるので、耐震性を向上させることができる。
【0036】
なお、本発明は、天井を新設する場合に限らず、リフォームなどで、照明位置や空調機器の位置を変更する場合においても、容易な施工で、設備機器を任意の位置に変更することができる。
【0037】
さらに、本実施形態では、支持金具20が、既製の吊ハンガー40を介して天井枠3を支持しているので、メインバー2aやクロスバー2bの形状を変更する必要がなく、通常の連結交差部5と同じ構成とすることができる。したがって、確立されているシステム天井の工法を略そのままの状態で採用することができるので、施工上のメリットが大きい。
【0038】
また、本実施形態では、横架材10が、所定の間隔をあけて互いに平行配置された一対の長尺材11,11からなるので、吊ハンガー40を横架材10の幅方向中心部で接続することができる。これによって、横架材10に捩れの力が加わることなく、吊ハンガー40をバランス良く支持することができる。
【0039】
さらに、支持金具20は、水平板部21と、水平板部の両端に設けられた一対の垂下板部22,22とを備えているので、支持金具20が立体的な形状になり、剛性が高くなる。また、垂下板部22の下端部は、接続金具50に接続されているので、支持金具20と接続金具50とクロスバー2bが一体化されるので、各部全体としての剛性が高くなる。
【0040】
一方、通常のシステム天井においては、メインバーは部屋の長手方向に延在するように配置するのが一般的であるが、本実施形態では、廊下の幅方向にメインバー2aを延在するように配置している。これは、廊下で長手方向にメインバー2aを延在させると長過ぎる場合があるためである。このように、メインバー2aを廊下の幅方向に延在させたことによって、メインバー2aの長さが短くなるため構造的に有利となる。
【0041】
以上、本発明を実施するための形態についてそれぞれ説明したが、本発明は前記の実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、材質、形状や大きさなど適宜設計変更が可能である。例えば、前記実施形態では、支持金具20の垂下板部22の下端部は、接続金具50に連結されているが、これに限定されるものではない。図示しないが、垂下板部の下端部に、クロスバーの上端縁部に接続される接続部を形成してもよい。接続部は、接続金具50の接続部54と同等の形状とすればよい。このような構成とすれば、接続金具50を省略することも可能である。
【0042】
以下に、図8乃至図11を参照しながら支持金具の変形例の構成を説明する。図8乃至図11の形態では、横架材10は、一本の長尺材11にて構成されている。図8に示す第一の変形例の支持金具20aは、吊ハンガーを介さずに直接天井枠3を支持する。支持金具20aは、横架材10を囲うように配置され、その下端部に挟持部60が設けられている。挟持部60は、天井枠3を構成する天井下地材2(メインバーまたはクロスバー)の上辺縁部を挟み込んで保持する。支持金具20aは、横架材10に沿って延在する天井下地材2を支持する。
【0043】
支持金具20aは、第一部材61と第二部材62を備えている。第一部材61と第二部材62は、ともに断面コ字状を呈しており、組み合わせることで横架材10を囲うようになっている。第一部材61の上面板部61aと第二部材62の上面板部62aは、横架材10の上で重なって配置されており、ビスV3によって、横架材10の上面板部に固定されている。なお、ビスV3の設置位置は前記位置に限定されるものではない。
【0044】
第一部材61と第二部材62の下端部には、互いに対向する鉤状部60a,60bがそれぞれ形成されている。鉤状部60a,60bが組み合わさることで、天井下地材2の上辺縁部の拡幅部を囲う挟持部60を構成している。鉤状部60a,60bは、拡幅部とともに、水平方向に延在するビスV4で固定されている。
【0045】
図9に示す第二の変形例の支持金具20bも、吊ハンガーを介さずに直接天井枠3を支持する。支持金具20bは、横架材10の両側面と上面を三方から囲うように配置され、その下端部に挟持部65が設けられている。支持金具20aは、平面視で横架材10に直交して延在する天井下地材2を支持する。
【0046】
支持金具20bは、上面の水平板部66と、その両端部に形成された垂下板部67,67とを備えた門型形状を呈している。水平板部66は、横架材10の上面に沿って配置される。各垂下板部67は、横架材10の側面に沿ってそれぞれ配置される。水平板部66は、横架材10の上面板部上に載置され、ビスV3によって、横架材10の上面板部に固定されている。なお、ビスV3の設置位置は前記位置に限定されるものではない。
【0047】
一方の垂下板部67には、垂下板部67に対して直角に折り曲げられた折曲げ板部68が繋がっている。折曲げ板部68は、横架材10の下端よりも下方に延在している。折曲げ板部68の下端部には、挟持部65が設けられている。挟持部65は、吊ハンガー40の挟持部41(図4参照)と同等の構成になっている。具体的には、折曲げ板部68の下端部に形成された鉤状部68aに、鉤状の挟持片68bを固定することで、挟持部65が構成されている。
【0048】
図10に示す第三の変形例の支持金具20cも、吊ハンガーを介さずに直接天井枠3を支持する。支持金具20cは、横架材10の一側面と上面を二方から囲うように配置され、その下端部に挟持部70が設けられている。支持金具20cは、横架材10に沿って延在する天井下地材2を支持する。
【0049】
支持金具20cは、上面の水平板部71と、その一端部に形成された垂下板部72とを備えた断面L型形状を呈している。水平板部71は、横架材10の上面に沿って配置される。垂下板部72は、横架材10の側面に沿って配置される。水平板部71は、横架材10の上面板部上に載置され、垂下板部72は、横架材10の側面に当接している。垂下板部72は、ビスV3によって横架材10の側面板部に固定されている。なお、ビスV3の設置位置は前記位置に限定されるものではない。
【0050】
垂下板部72下端部には、支持部70が設けられている。支持部70は、天井下地材2の上辺縁部を支持する。支持部70は、垂下板部72の下部の両端部(横架材10の長手方向両端部)の二箇所に形成されている。支持部70は、鉤状に形成されて、天井下地材2の上辺縁部に当接している。ビスV5を支持部70と天井下地材2の上辺縁部に挿通させることによって、支持金具20に天井下地材2を固定する。なお、支持部70の形状は、前記構成に限定されるものではなく、鉤状の挟持片を取り付けて、吊ハンガー40の挟持部41(図4参照)と同等の構成としてもよい。
【0051】
図11に示す第四の変形例の支持金具20dは、吊ハンガーを介して天井枠3を支持する。支持金具20dは、横架材10の上面板部に載置される平板部材75にて構成されている。平板部材75は、ビスV3によって、横架材10の上面板部に固定されている。平板部材75は、横架材10に対して直交する方向に延在している。平板部材75の両端部は、それぞれ横架材10の幅方向両端部より外側に張り出している。張り出した平板部材75の両端部には、それぞれ吊ハンガー40がそれぞれ固定されている。吊ハンガー40は、既製の金具であって、図4に示した吊ハンガー40と同じ構成である。吊ハンガー40およびこれを固定するボルトBとナットN,Nは、図4と同等であるので、同じ部位には同じ符号を付して、説明を省略する。
【0052】
その他にも、図12に示すような構成としてもよい。この変形例では、横架材10にチャンネルハンガー80が直接固定されている。チャンネルハンガー80は、既製の支持金具であって、上端の平面部81が横架材10の上面板部に載置されてビスV3によって固定されている。チャンネルハンガー80には、チャンネル材82が係止されている。チャンネル材82は、横架材10と平行に配置されている。チャンネル材82は、グリップ材83を介して天井枠を構成するTバー90を支持している。Tバー90は、平面視で横架材10およびチャンネル材82に直交する方向に延在している。グリップ材83は、既製の支持金具であって、一対の逆U字型プレート84,84を上端の連結板部85で連結してなる。逆U字型プレート84の内側にチャンネル材82が挿通している。逆U字型プレート84の下端部は、チャンネル材82の下端よりも下方に延在しており、一対の逆U字型プレート84の下端部でTバー90の頂部91を挟持している。連結板部85には、高さ調整用のボルト86が設けられている。なお、本変形例では、チャンネルハンガー80を横架材10に直接取り付けているが、別途の支持金具を介して取り付ける構成としてもよい。
【0053】
図8乃至図11に示した支持金具20a,20b20c20dおよび図12に示した構成においても、前記実施形態と同様に、設備機器を任意の場所に取り付けることができるので、「任意の格子枠内に、照明装置や空調装置などの設備機器を設置できる」というシステム天井の長所を最大限に活かすことができる。
【符号の説明】
【0054】
1 システム天井構造
2a メインバー
2b クロスバー
3 天井枠
5 連結交差部
5a 連結交差部
5b 連結交差部
6 壁
10 横架材
11 長尺材
20 支持金具
21 水平板部
22 垂下板部
40 吊ハンガー
50 接続金具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12