【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、総務省、「ICTを活用した次世代ITSの確立」のうち「歩車間通信技術の開発」の委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記歩行者判定部は、前記車両に搭載された歩行者検出装置により前記歩行者が検出された場合、前記所定範囲内に歩行者がいると判定することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の車載端末装置。
前記歩行者端末装置は、前記車載端末通信部と所定の歩車間通信圏内において通信可能となる歩行者端末通信部と、前記歩行者に携帯される前記発光体の動作を制御する発光制御部と、を有し、
前記発光制御部は、前記歩行者端末通信部が前記車載端末通信部と通信可能な状態にある場合、前記発光体を発光させることを特徴とする請求項8に記載の歩車間通信システム。
【発明を実施するための形態】
【0010】
前記課題を解決するためになされた第1の発明は、歩行者が携帯する歩行者端末装置との間で歩車間通信を行う車両に搭載された車載端末装置であって、
車両位置情報を取得する位置情報取得部と、前記歩行者端末装置から送信される歩行者位置情報を含む無線信号を受信する車載端末通信部と、前記車両位置情報と前記歩行者位置情報とに基づいて、前記車両に対して所定範囲内にいる歩行者の有無を判定する歩行者判定部と、前記歩行者判定部によって前記所定範囲内に歩行者がいると判定された場合に、所定の警告用画像を運転者の視認可能な位置に映し出す画像出力部と、
前記歩行者が携帯し発光状態にある発光体を撮影可能な撮影部と、を有し、前記画像出力部は、前記撮影部によって撮影された前記発光体の画像を前記警告用画像として運転者の視認可能な位置に映し出す構成とする。
【0011】
これによると、歩車間通信により、車両に対して所定の範囲内に歩行者がいると判定した場合に、その歩行者を表す画像を運転者の視認可能な位置に映し出すことから、運転者は視覚的に車両の走行方向に歩行者の存在を認識することができ、早期に危険を回避する運転をすることができる。ここで、所定の範囲とは、車両の走行方向に於ける車道を含む所定の範囲であってよい。
【0012】
また、第2の発明は、前記第1の発明に於いて、前記警告用画像は、
前記発光体の軌跡を示す画像である構成とする。
【0013】
これによると、歩行者の移動が軌跡として表示されるため、運転者は視覚的に容易に認識できる。
【0014】
また、第3の発明は、前記第1または第2の発明に於いて、前記警告用画像は、前記所定範囲内にいる
前記発光体の移動に応じて、拡大して表示される構成とする。
【0015】
これによると、歩行者の移動に応じて警告用画像が拡大されて表示されるため、歩行者の存在をより強く認識することができる。
【0016】
また、第4の発明は、前記第1乃至第3のいずれかの発明に於いて、前記警告用画像は、前記車両のフロントガラスに表示され、前記所定範囲内にいる
前記発光体の前記車両側への移動にともない、前記フロントガラスの端部側から中央側に移動する構成とする。
【0017】
これによると、歩行者の移動をより一層強く認識することができる。
【0018】
また、第5の発明は、前記第1乃至第4のいずれかの発明に於いて、前記歩行者判定部は、前記車両に搭載された歩行者検出装置により前記歩行者が検出された場合、前記所定範囲内に歩行者がいると判定する構成とする。
【0019】
これによると、車両に対して所定範囲内にいる歩行者を確実に検出することができる。
【0020】
また、第6の発明は、前記第1乃至第5のいずれかの発明に於いて、所定の出射方向にレーダ波を出射することにより歩行者を検出する歩行者検出用レーダをさらに有し、前記レーダ波の出射方向は、前記車両位置情報と前記歩行者位置情報とに基づき設定される構成とする。
【0021】
これによると、受信した歩行者位置情報に基づいてレーダ波を出射し、より正確な歩行者の位置を捕捉することができる。また、レーダ波の届く範囲内であれば遠くから歩行者を確実に検出することができ、運転者側での早期の対応が可能となる。
【0022】
また、第7の発明は、前記第1乃至第6のいずれかの発明に於いて、前記車両が走行する車道の情報を含む地図情報を取得する地図情報取得部をさらに有し、前記歩行者判定部は、前記地図情報に基づいて前記所定範囲内にいる歩行者の有無を判定し、前記画像出力部は、前記歩行者判定部によって前記所定範囲内に歩行者がいると判定された場合にのみ所定の警告用画像を運転者の視認可能な位置に映し出す構成とする。
【0023】
これによると、車道に近い歩行者のみを確実に検出することができる。
【0024】
また、第8の発明は、請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の前記車載端末装置と、この車載端末装置と歩車間通信を行う歩行者端末装置とを用いて構成された歩車間通信システムとする。
【0025】
また、第9の発明は、前記第8の発明に於いて、前記歩行者端末装置は、前記車載端末通信部と所定の歩車間通信圏内において通信可能となる歩行者端末通信部と、前記歩行者に携帯される発光体の動作を制御する発光制御部と、を有し、前記発光制御部は、前記歩行者端末通信部が前記車載端末通信部と通信可能な状態にある場合、前記発光体を発光させる構成とする。
【0026】
これによると、夜等の暗い場合に、歩行者の存在を運転者に認識させることができる。
【0029】
また、第
10の発明は、歩行者が携帯する歩行者端末装置との間で歩車間通信を行う車両の車載端末装置において歩行者の軌跡を表示する軌跡表示方法であって、
車両位置情報を取得し、前記歩行者端末装置から送信される無線信号から歩行者位置情報を取得し、前記車両位置情報と前記歩行者位置情報とに基づいて、前記車両の進行方向に対して横断する位置にいる歩行者の有無を判定し、横断する歩行者がいると判定された場合に、前記横断する歩行者
が携帯し発光状態にある発光体を撮影し、撮影される前記発光体の移動を軌跡として、前記車両の運転者の視認可能な位置に映し出すものとする。
【0030】
これによると、歩車間通信により、車両の進行方向で歩行者が道路を横断しようとしていることがわかり、その歩行者の軌跡を表す画像を運転者の視認可能な位置に映し出すことから、運転者は視覚的に車両の走行方向に歩行者の存在を認識することができ、早期に危険を回避する運転をすることができる。
また、第11の発明は、前記歩行者端末装置は、前記車載端末装置と歩車間通信圏内において通信可能な状態にある場合、前記歩行者に携帯される前記発光体を発光させるものとする。
これによると、夜等の暗い場合に、歩行者の存在を運転者に認識させることができる。
【0031】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0032】
図1は、本発明による歩車間通信システムの一例を示す模式図である。図に示されるように、歩行者1は携帯可能な歩行者端末装置2を所持し、車両3には車載端末装置4が搭載されている。歩行者端末装置2は、スマートフォンや携帯電話等の携帯情報端末5と一体的に接続されているが、携帯情報端末5に予め内蔵されていてもよい。車載端末装置4は、カーナビゲーション6と一体的に接続されているが、カーナビゲーション6に予め内蔵されていてもよい。歩行者端末装置2及び車載端末装置4は、GPS(全地球測位網)やQZSS(準天頂衛星システム)を構成する複数の衛星7からの信号を受信し、自身の位置情報を生成することができる公知の衛星測位構造をそれぞれ有する。
【0033】
また、歩行者端末装置2には、外部から視認可能な発光体としてのLED発光体11が設けられている。なお、LED発光体11は、歩行者端末装置2とは別体からなるものであってもよく、例えば、常時外部から視認可能なように、歩行者1の持ち物に取り付けられるキーホルダーやストラップ、あるいは歩行者1が身につける装身具と一体化されていてもよい。
【0034】
車載端末装置4は、LED発光体11の発光状態を撮影するための撮影手段としてのカメラ12を備える。カメラ12は、車載端末装置4の本体が車両3の下部等に搭載される場合には別体からなり、車両3の進行方向を撮影可能なように例えばフロントウィンドウ3aの車室側に設けられていてよい。また、車両3には、フロントウィンドウ3aに警告用画像を投影するための投影機13と、運転者に音で注意を促すためのスピーカ14とが設けられている。
【0035】
投影機13は、例えば車室の天井やダッシュボードの上面に設置されていてよい。また、投影機13の機能としては、フロントウィンドウ3aにフィルムを貼り、公知のヘッドアップディスプレイと同様に投影するとよいが、それに限られるものではなく、プロジェクタのように画像や映像を投影するものであればよい。また、スピーカ14は、車載されているオーディオ装置の付属品であってよい。
【0036】
図2(A)は歩行者端末装置2の概略ブロック図である。歩行者端末装置2は、衛星7からの信号を受信し、自身の位置情報を取得する位置情報取得部21と、自身の位置情報を含む所定の歩行者情報をブロードキャストとして無線信号により送信すると共に車載端末装置4から送信される無線信号を受信するための歩行者端末通信部としての通信部22と、携帯情報端末5との間での情報の処理を行う携帯端末処理部23と、LED発光体11の駆動制御を行う発光制御部24と、全体の制御を例えばCPUを用いたプログラム処理で行う制御部25とにより構成されている。通信部22には、送受信を行うためのアンテナ22aが接続されている。なお、制御部25には、車両3の存在を判定する車両判定部25aと、地図情報を取得する地図情報取得部25bとが、それぞれプログラムにより構成されている。
【0037】
図2(B)は車載端末装置4の概略ブロック図である。車載端末装置4は、衛星7からの信号を受信し、自身の位置情報を取得する位置情報取得部31と、自身の位置情報を含む所定の車両情報をブロードキャストとして無線信号により送信すると共に歩行者端末装置2から送信される無線信号を受信するための車載端末通信部としての通信部32と、カーナビゲーション6との間での情報の処理を行うカーナビゲーション処理部33と、カメラ12の撮影制御及び撮影された画像の処理を行う撮影部34と、投影機13から画像を出力させる制御を行う画像出力部35と、全体の制御を例えばCPUを用いたプログラム処理で行う制御部36と、スピーカ14から音声を出力する発音部37とにより構成されている。通信部32には、送受信を行うためのアンテナ32aが接続されている。なお、制御部36には、歩行者1の存在を判定する歩行者判定部36aと、地図情報を取得する地図情報取得部36bとが、それぞれプログラムにより構成されている。
【0038】
各アンテナ22a、32aから送信される無線信号に用いられる周波数には、安全運転支援無線システムであるITS(Intelligent Transport System)用周波数の1つとして割り当てられる700MHz帯を用いるものとする。この周波数帯を用いることにより、ITSとして使用される他の周波数である5.8GHz帯に比べて、電波の回折量が多く、電波が障害物(建物や大型車両等)の裏に回り込んで到達し得るため、歩行者端末装置2及び車載端末装置4が互いに見通せない位置関係にある場合でも確実な情報伝達が可能となる。
【0039】
このように構成された歩車間通信システムに於いて、本発明による第1実施例を
図3及び
図4のフロー図を参照して説明する。
図3は歩行者端末装置2に於ける制御フローであり、
図4は車載端末装置4に於ける制御フローである。これら制御フローは、例えば公知のCPUに於けるプログラム処理であってよい。
【0040】
歩行者端末装置2では、
図3に示されるように、先ずステップST1で歩車間通信圏内に車載端末装置4があるか否かを判定する。この場合の判定は、
図5(A)に示されるように、車載端末装置4から送信された電波の到達範囲である歩車間通信圏41内に歩行者端末装置2が位置するか否かであってよく、制御部25に於ける制御プログラムにより構成される車両判定部25aにより行われる。すなわち、通信部22により、ブロードキャストによる車両情報の無線信号を受信できれば、通信圏内であると判定できる。なお、後述する車載端末装置4側での歩車間通信圏内の判定も同様であり、歩行者端末装置2から送信された電波の到達範囲である歩車間通信圏42内に車載端末装置4が位置するか否かであってよく、制御部36に於ける制御プログラムにより構成される歩行者判定部36aにより行われる。これら歩車間通信圏41、42の各半径Rc、Rwは、それぞれの通信部22、32から発せられる出力の大きさによるが、見通しの良い場所で例えばそれぞれ100m程度であってよい。
【0041】
ステップST1で歩車間通信圏42内に車載端末装置4が位置すると判定された場合にはステップST2に進む。ステップST2では、発光制御部24の制御によりLED発光体11を例えば点滅させる(ON)。LED発光体11の色や点滅周期を予め標準化しておくことにより、他のLED光と区別することができ、歩行者端末装置2によるLED発光体11の発光のみを検出することができる。なお、点滅に限られるものではなく、連続発光状態にしてもよい。その場合には、後述する歩行者端末装置2からの位置情報に基づいて、車両3に対する方向等を考慮して特定することが可能である。
【0042】
ステップST1で歩車間通信圏42内に車載端末装置4が位置しないと判定された場合にはステップST3に進む。ステップST3では、LED発光体11が消灯状態であれば消灯のままとし、点滅状態であった場合には点滅を停止(OFF)する。ステップST3での処理後にはステップST1に戻る。
【0043】
ステップST2の次のステップST4では、歩行者情報を送信するか否かを判定する。歩行者情報を送信する場合とは、例えば
図5(A)の矢印Aにより示されるように車両3すなわち歩行者1が車道8に近付く場合とする。この判定は、制御部25に於ける制御プログラムにより構成される地図情報取得部25bに取得された地図情報(携帯情報端末5に保存されている車道8の位置や形状等を含む地図情報)と、位置情報取得部21による歩行者位置情報とに基づいて行われる。この場合、公知のスマートフォンに於ける地図上での現在位置表示等の処理を用いて判定することができる。
【0044】
ステップST4で歩行者情報を送信すると判定された場合にはステップST5に進み、送信しないと判定された場合にはステップST1に戻る。ステップST5では、歩行者情報として少なくとも歩行者の位置情報を含む無線信号をブロードキャストで送信する。そしてステップST1〜ST5を繰り返す。
【0045】
なお、上記ステップST1〜ST5の処理は、図示例では同一のフローで行うとして説明したが、ステップST1〜ST3とステップST4〜ST5とを並列に処理してよい。その場合には、ステップST1〜ST3とステップST4〜ST5とは互いに常時割り込み可として処理する。
【0046】
次に、車載端末装置4でのフローについて説明する。なお、
図4(A)のステップST11〜ST13のフローと、(B)のステップST14〜ST16のフローとは、それぞれ互いに並列に処理するものであってよい。その場合には、ステップST11〜ST13とステップST14〜ST16とは互いにサブルーチンの関係であり、常時割り込み可として処理するとよい。
【0047】
先ずステップST11では、カメラ12による撮影を行う。この撮影は、公知のドライブレコーダと同様に行うものであってよく、カメラ12により撮影された画像データは撮影部34に入力する。撮影部34では、画像データに対してLED発光体11によるLED光を検出し、LED光が検出された場合にはその検出結果を制御部36に出力する。
【0048】
次のステップST12では、制御部36に於いてLED光が車両3の進行方向(
図5(A)の矢印Bの向き)であって車道8側に移動するか否かを判定する。なお、車道8に出ている場合は、当然車道8側に移動する判定となる(以下、同様)。上述した歩行者1側での処理に於いて、歩車間通信圏42内に車両3が入っていないと判定された場合にはLED発光体11は点滅せず、その場合にはステップST12に於いてLED光の追跡自体が行われないためステップST11に戻り、新たに撮影された画像に対してステップST12の判定を再び行う。
【0049】
ステップST12で、LED光が検出され、かつLED光(歩行者1)が車両3の走行方向に於ける車道8側に移動していると判定された場合にはステップST13に進む。ここで、LED光(歩行者1)が車道8側に移動しているとする判定は、撮影部34及び制御部36の画像処理により行うことができる。例えば、撮影された画像に於いて、歩行者1の車道8側への移動によりLED光も車両3側に移動するため、LED光の軌跡が車両3側、すなわちフロントウィンドウ3aに於ける中央側に延びる場合(
図5(B)の矢印C)には、歩行者1が車道8側に移動していると判定することができる。
【0050】
また、上記ステップST4と同様に、制御部36に於ける制御プログラムにより構成される地図情報取得部36bに取得された地図情報(カーナビゲーション6に保存されている車道8の位置や形状等を含む地図情報)と、位置情報取得部31による車両位置情報とに基づいて行われる。この場合、公知のカーナビゲーションに於ける地図上での現在位置表示等の処理を用いて判定することができる。
【0051】
ステップST13では、撮影されたLED光の画像を警告用画像として表示する。歩行者1及び車両3が互いの歩車間通信圏41、42内に位置し、LED発光体11の点滅がカメラ12で撮影された場合には、投影機13により、
図5(B)のL1で示されるようにLED光を表す画像をフロントウィンドウ3aに映し出す。LED光を表す画像は、車両3の走行に応じて、歩行者1が車道8側に移動している場合には、所定の時間間隔で撮影されたLED光の画像L1〜L3を、
図5(B)の矢印Cで示される向きに順次追加して映し出す。このようにしてLED光を表す画像による警告用画像L1〜L3が図の矢印Cで示される向きに軌跡となるように表示されるため、運転者は、車両3の進行方向の車道8に対して歩行者1が近付いてくることを視覚的に認識することができ、事前に減速や制動による対応を行うことができ、安全性が確保される。
【0052】
また、
図4(B)のフローに於いて、先ずステップST14では、歩行者情報を受信しているか否かを判定する。ステップST14で歩行者情報が受信されないと判定された場合、すなわち歩車間通信圏42に車両3が未だ入っていない場合にはステップST14を繰り返す。歩車間通信圏42に車両3が位置し、車載端末装置4により歩行者情報が受信されたと判定された場合にはステップST15に進む。
【0053】
ステップST15では、例えば音声により運転者に歩行者1の存在を注意喚起するか否かを判定する。ここで注意喚起する場合とは、ステップST12に応じて歩行者1が車道8側に移動していると判定された場合であってよい。ステップST15で注意喚起すると判定された場合にはステップST16に進み、注意喚起しないと判定された場合にはステップST14に戻る。
【0054】
ステップST16では、発音部37に予め記憶されている音声信号をスピーカ14に出力し、スピーカ14から音声(例えば「歩行者がいます。」)を出力する。スピーカ14による発音は、音声によらず、何等かの警告音であってもよい。これにより、運転者は、例えば他の車両の接近に注意していることによりLED光の画像を確認し難いような場合でも、確実に歩行者1の車道8側への移動を認識することができる。なお、発音による注意喚起は、必ずしも必須ではなく、オプションとして設定しておくとよい。
【0055】
なお、歩行者端末装置2に於いて、例えば、LED発光体11を赤と青とを個別に発光可能な構造にするとよい。ステップST5で歩行者情報を送信する場合には、歩行者1が車道8側に移動する場合であることから、LED発光体11を赤色で発光させ、ステップST4からステップST1に戻った場合には、歩行者1は車道8側に移動しない場合であることから、LED発光体11を青色で発光させることができる。運転者は、フロントウィンドウ3aに赤色のLED光の画像が映し出された場合には、車道8側に移動する歩行者1がいると認識し、青色のLED光の画像が映し出された場合には、歩行者1がいるが、歩道を歩いている等、車道8側には移動しないと認識することができ、過度な減速による交通の流れを妨げてしまうという弊害を抑制することができる。
【0056】
また、投影機13によるフロントウィンドウ3aへの投影に限られることなく、例えば
図5(B)に示されるように、カーナビゲーション6の画面6aに歩行者1の位置を表す画像としてのマーク(例えば赤丸)M1〜M3を表示させてもよい。さらに、フロントウィンドウ3aへの投影と合わせてそれぞれに表示させるようにしてもよい。
【0057】
次に、
図6〜
図9を参照して、第2実施例について説明する。
図6は
図2に対応し、
図7は
図3に対応し、
図8は
図4に対応し、
図9は
図5に対応する。なお、上記実施例と同様の部分には同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0058】
この第2実施例は、歩行者1側にLED発光体11が設けられていない場合に対応し得るものである。したがって、歩行者端末装置2には、第1実施例に於ける発光制御部24及びLED発光体11が設けられていない。
【0059】
また、
図6に示されるように、車載端末装置4には、カメラ12及び撮影部34が設けられていないが、歩行者検出装置としての歩行者検出用レーダ15と、歩行者検出用レーダ15を制御するレーダ制御部38とが設けられている。なお、歩行者検出用レーダ15のアンテナは、車両3の前方に対する左右への向きを例えばモータ駆動により変えることができる構造を有するものとする。
【0060】
図7は、第2実施例に於ける歩行者端末装置2での制御フローを示す図である。図に於いて、ステップST21は
図3のステップST1に対応し、ステップST22はステップST4に対応し、ステップST23はステップST5に対応する。第2実施例では、ステップST21で歩車間通信圏42内に車載端末装置4が位置すると判定された場合にはステップST22に進み、ステップST22では、歩行者情報を送信するか否かを判定する。ステップST21で歩車間通信圏42内に車載端末装置4が位置しないと判定された場合にはステップST21を繰り返す。
【0061】
ステップST22では、歩行者情報を送信するか否かを判定する。この場合の処理は上述したステップST4に於ける処理と同じであってよい。次のステップST23では、歩行者情報として少なくとも歩行者の位置情報を含む無線信号をブロードキャストで送信する。そしてステップST21〜ST23を繰り返す。この第2実施例に於いてもステップST21とステップST22とは、並列処理され、かつ互いに割り込み処理可であってよい。
【0062】
図8は、第2実施例に於ける車載端末装置4での制御フローを示す図である。先ずステップST31では、上述したステップST14と同様の処理を行う。ステップST31に於いて歩行者情報が受信されないと判定された場合にはステップST31を繰り返し、歩行者情報が受信されたと判定された場合にはステップST32に進む。
【0063】
ステップST32では、
図9(A)の二点鎖線の矢印で示されるように、レーダ方向である歩行者検出用レーダ15のアンテナの向き、すなわちレーダ波の出射方向を歩行者1に向ける。歩行者検出用レーダ15のアンテナの向きは、歩行者1及び車両3の各位置情報に基づいて設定することができる。
【0064】
次のステップST33では、歩行者端末装置2からの歩行者情報と歩行者検出用レーダ15による歩行者1の検出結果とを照合し、歩行者1が車両3(車道8)側に移動しているか否かを判定する。この判定は、上述したステップST12に於ける軌跡に対する処理と同様の処理であってよい。ステップST33で、歩行者1が車道8側に移動していないと判定された場合にはステップST31に戻り、歩行者1が車道8側に移動していると判定された場合にはステップST34に進む。ステップST34では、上述したステップST13と同様に、歩行者1の車道8側へ移動する場合の軌跡となるように、歩行者1を表す画像として例えば上記LED光を表す画像を映し出す場合と同様に、投影機13によりフロントウィンドウ3aに映し出す。
【0065】
歩行者1を表す画像を、第1実施例と同じように映し出してもよいが、例えば、
図9(B)のL4〜L6に示されるように、車道8側への移動に応じて、フロントウィンドウ3aの端部(図示例では左側)から中央側に向けて、形(図示例では円形)が大きくなるように順次映し出すとよい。これにより、視覚的に歩行者1が車道8側へ移動することをより強く認識することができる。なお、上記第1実施例に於いても、LED光を表す画像(
図5(B)のL1〜L3)に対しても同様に大きくなるようにしてもよい。
【0066】
この第2実施例では歩行者検出用レーダ15により歩行者1を検出することから、方向性に制限があるが悪天候に左右されないミリ波レーダを用いることにより、天候や昼夜の制限を受けることなく、歩行者1を検出することができる。また、例えば歩行者端末装置2を衣服や鞄の中に入れておいても歩行者1の移動を検出することができ、LED発光体11を外部から視認可能にしておく等の手間を省くことができる。
【0067】
なお、この第2実施例に於いても、カーナビゲーション6の画面6aに歩行者1の位置を表す画像としてのマーク(例えば赤丸)M1〜M3を表示させてもよく、また、運転者に発音による注意喚起を行うようにしてもよいことは、第1実施例と同様である。
【0068】
次に、
図10〜
図12を参照して、第3実施例について説明する。
図10は
図6(B)に対応し、
図11は
図8に対応し、
図12は
図9(B)に対応する。なお、上記実施例と同様の部分には同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0069】
この第3実施例に於いても、上記第2実施例と同様に歩行者1側にLED発光体11が設けられていない場合に対応し得るものであり、歩行者端末装置2に於いて、ブロック図は
図6(A)と同じであってよく、フローは
図7と同じであってよい。また、車載端末装置4に於けるフローに於いても、
図11と並列に
図4(B)と同じフローを処理するものとする。
【0070】
図10に示されるように、車載端末装置4は、
図6(B)に対してレーダ制御部38及び歩行者検出用レーダ15のアンテナが設けられていない構成である。
【0071】
図11は、第3実施例に於ける車載端末装置4での制御フローを示す図である。図に於いて、ステップST41は
図8のステップST31に対応し、次のステップST42はステップST33に対応し、ステップST43はステップST34に対応する。第3実施例では、ステップST41に於いて歩行者情報が受信されないと判定された場合にはステップST41を繰り返し、歩行者情報が受信されたと判定された場合にはステップST42に進む。
【0072】
ステップST42では、ステップST41で受信された歩行者端末装置2からの歩行者1の位置情報に基づいて、例えばカーナビゲーション6の地図情報と照合し、歩行者1が車道8側に移動しているか否かを判定する。ステップST42で、歩行者1が車道8側に移動していないと判定された場合にはステップST41に戻り、歩行者1が車道8側に移動していると判定された場合にはステップST43に進む。
【0073】
ステップST43では、上述したステップST13と同様に、歩行者1が車道8側に移動する場合の軌跡となるように、歩行者1を表す画像として例えば人型の画像L7〜L9を投影機13によりフロントウィンドウ3aに順次映し出す。この場合に於いても、車道8への移動に応じて人型の画像L7〜L9が図に示されるように大きくなるように映し出すとよい。これにより、視覚的に歩行者1の車道8側への移動をより強く認識することができる。この第3実施例によれば、歩行者1側にLED発光体11を設ける必要が無く、また車載端末装置4にカメラ12や歩行者検出用レーダ15を設ける必要が無く、システムを簡素化し得るため、汎用性が高まる。
【0074】
なお、この第3実施例に於いても、カーナビゲーション6の画面6aに歩行者1の位置を表す画像としてのマーク(例えば赤丸)M1〜M3を表示させてもよく、また、運転者に発音による注意喚起を行うようにしてもよいことは、第1実施例と同様である。
【0075】
また、上記各実施例に於いて、歩行者1の車道8側への移動に於ける軌跡の表示として、所定時間(数秒)後の歩行者1の移動位置を推測し、その推測移動位置に応じて表示させるようにするとよい。例えば、歩行者1の歩行速度及び向きと、車両3の速度とから、歩行者1と車両3とが遭遇すると予測される位置で歩行者1が車道8側に移動してくると推測される場合には、歩行者1を示す画像(
図5(B)のL3、
図9(B)のL6)を、
図12のL9で示されるように、より大きく表示するとよい。また、点滅させるようにしてもよい。
【0076】
以上、本発明を、その好適実施形態の実施例について説明したが、当業者であれば容易に理解できるように、本発明はこのような実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記実施例では車両3の左側から歩行者1が車道8に近付く場合について示したが、右側から横断しようとしている場合にも対応可能であり、その場合には、フロントウィンドウ3aの右側部分に表示させるとよい。また、車両3の前進時について説明したが、後進時にも適用し得るものである。
【0077】
また、上記実施形態に示した構成要素は必ずしも全てが必須なものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。例えば、インターネットを介して歩車間通信を行うシステムにも適用し得るものである。