特許第6343255号(P6343255)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6343255
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】箔押し装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/48 20060101AFI20180604BHJP
   B41M 5/26 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
   B41J2/48
   B41M5/26
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-106072(P2015-106072)
(22)【出願日】2015年5月26日
(65)【公開番号】特開2016-215599(P2016-215599A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2018年3月19日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087000
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 淳一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 文博
【審査官】 佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−202839(JP,A)
【文献】 特開2012−228797(JP,A)
【文献】 特開2008−105196(JP,A)
【文献】 特開2005−305760(JP,A)
【文献】 特開平11−300990(JP,A)
【文献】 特開昭63−242563(JP,A)
【文献】 特開平10−146996(JP,A)
【文献】 特開平07−205466(JP,A)
【文献】 特開平07−186445(JP,A)
【文献】 特表平09−505243(JP,A)
【文献】 特開平06−234235(JP,A)
【文献】 特開2012−192731(JP,A)
【文献】 特開2011−116116(JP,A)
【文献】 特開平06−218976(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/114600(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/475−2/48
B41J 2/35−2/38
B41J 2/32
B41M 5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
色材がコーティングされた箔フィルムから該色材をメディアへ転写する箔押し装置において、
色材がコーティングされた箔フィルムへ熱量を供給する光を出射するペンと、
前記ペンを箔フィルムを重ねたメディア上に押圧した状態で、前記ペンと前記箔フィルムを重ねた前記メディアとの位置関係を相対的に変化させて前記ペンを走査する走査手段と、
前記走査手段による前記ペンの走査速度に応じて前記ペンから出射される光の光強度を制御する制御手段と
を有することを特徴とする箔押し装置。
【請求項2】
請求項1に記載の箔押し装置において、
前記制御手段は、
前記ペンの走査速度が速くなるほど前記ペンから出射される光の光強度を高くし、
前記ペンの走査速度が遅くなるほど前記ペンから出射される光の光強度を低くする
ことを特徴とする箔押し装置。
【請求項3】
請求項1に記載の箔押し装置において、
前記制御手段は、
前記ペンを走査する際の加減速時には前記ペンから光を出射せず、
前記ペンを走査する際の等速時に前記ペンから光を出射する
ことを特徴とする箔押し装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の箔押し装置において、
前記ペンはレーザー光を出射する
ことを特徴とする箔押し装置。
【請求項5】
請求項1、請求項2または請求項3のいずれか1項に記載の箔押し装置において、
前記箔フィルム上に光吸収シートを重ねた
ことを特徴とする箔押し装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、箔押し装置に関し、さらに詳細には、専用のフィルムにコーティングされた色材をメディアに転写する箔押し装置に関する。
【0002】
なお、本明細書において「メディア」とは、普通紙などの紙類よりなる各種の記録媒体は勿論のこと、PVC、ポリエステルなどの樹脂材料やアルミ、鉄、木材、布、皮革のような各種の材料が含まれるものとする。
【背景技術】
【0003】
従来より、色材がコーティングされた専用のフィルム(本明細書においては、「色材がコーティングされた専用のフィルム」を「箔フィルム」と適宜に称する。)を利用して、当該色材をメディアに転写することにより、メディアに所望の図柄などを転写するようにした箔押し装置として、例えば、特許文献1に開示された技術が知られている。
【0004】
この特許文献1に記載された箔押し装置100は、パーソナルコンピューター102からの入力に応じて駆動し、パーソナルコンピューター102に記憶された箔押し駆動プログラムによってメディア104に対して箔押し処理を行うものである。
【0005】
そして、この箔押し装置100は、平板状のベース部材106の上面において、前方側および後方側に摺動自在にテーブル108が設けられており、このテーブル108上にはメディア104を保持する保持部材110が設けられている。
【0006】
また、ベース部材106の後方側においては、門型で立設された支持部材112が設けられ、この支持部材112には左方側および右方側に摺動自在に設けられたスライダ114が設けられている。
【0007】
さらに、このスライダ114には、上方側および下方側に摺動自在に設けられたスライダ116が設けられ、スライダ116には、先端部が所定の温度で加熱されたペン(本明細書においては、「先端部が所定の温度範囲で加熱されたペン」を「熱ペン」と適宜に称する。)118が把持されている。
【0008】
こうした構成により箔押し装置100においては、保持部材110に保持されたメディア104に対する熱ペン118の相対的な位置関係が三次元方向に移動可能となっている。
【0009】
以上の構成において、メディア104に対して箔押し処理を行う場合には、パーソナルコンピューター102および箔押し装置100が起動した状態で保持部材110にメディア104を保持する。
【0010】
次に、メディア104上に箔フィルムを固定的に載置し、パーソナルコンピューター102に記憶された箔押し駆動プログラムによって、箔押し装置100により箔押し処理を実行する。
【0011】
すると、箔押し装置100においては、箔フィルムを介してメディア104上に熱ペン118の先端部を押しつけながら、パーソナルコンピューター102に記憶された図形データに基づいて熱ペン118を走査する。
【0012】
このとき、熱ペン118の先端部が加熱されているため、メディア104上において熱ペン118の先端部が押しつけられた領域に、熱ペン118による熱と圧力によって箔フィルムの色材が転写されて、メディア104上に箔押し処理が施されることとなる。
【0013】
こうした箔押し装置100による箔押し処理では、メディア104に形成された図形たる成果物は、一般的な印刷などの処理では表現し難い金属感や光沢による高級感を備えたものとなる。
【0014】
しかしながら、こうした箔押し装置100においては、熱ペン118を走査させる際に、加減速時は走査速度が一定ではない。
【0015】
一方、走査時の加減速にあわせて加熱されている熱ペン118の温度を瞬時に変更することは困難であるため、走査中においては熱ペン118の温度は一定に保たれるように制御されている。
【0016】
このため、熱ペン118から箔フィルムへ供給される熱量(入熱量)が一定にならず、熱ペン118が走査される箇所毎に色材の転写ムラが発生する恐れがあるという問題点があった。
【0017】
こうした色材の転写ムラの発生を抑制するためには、熱ペン118を走査する際の加速を大きくするか、あるいは、熱ペン118を走査する際の走査速度を遅くするなどして、熱ペン118を走査する際の加減速に要する時間を短くすればよい。
【0018】
しかしながら、熱ペン118を走査する際の加速度を大きくするには、箔押し装置100の機構上の限界があるという新たな問題点があった。
【0019】
また、熱ペン118を走査する際の走査速度を遅くすると、箔押し処理の処理時間が長くなってしまうという新たな問題点を招来するものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2005−313465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は、従来の技術の有する上記したような種々の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、箔押し処理の処理時間を長くすることなく、色材の転写ムラの発生の恐れのない箔押し装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するために、本発明による箔押し装置は、箔フィルムへ熱量を供給する熱源として、レーザーや発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)などのような光強度を変更する際の応答速度が高い光源を用いるようにしたものである。
【0023】
従って、本発明による箔押し装置によれば、上記した光源の走査速度が一定でなくても、光源の走査速度に応じて光強度を制御することで箔フィルムへの入熱量を一定に保つことができ、これにより色材の転写ムラの発生を抑止することができる。
【0024】
また、本発明による箔押し装置によれば、光源の走査中においても、箔フィルムへの光の照射(オン:ON)と非照射(オフ:OFF)との切り換えが可能であるので、箔フィルムへ選択的に熱量を供給することができる。
【0025】
これにより、光源を走査する際の加減速時には箔フィルムへ光を照射しないようにして、光源を走査する際の等速時にのみ箔フィルムへ光を照射するようにすることで、色材の転写ムラの発生を一層確実に抑止することができる。
【0026】
即ち、本発明による箔押し装置は、色材がコーティングされた箔フィルムから該色材をメディアへ転写する箔押し装置において、色材がコーティングされた箔フィルムへ熱量を供給する光を出射するペンと、上記ペンを箔フィルムを重ねたメディア上に押圧した状態で、上記ペンと上記箔フィルムを重ねた上記メディアとの位置関係を相対的に変化させて上記ペンを走査する走査手段と、上記走査手段による上記ペンの走査速度に応じて上記ペンから出射される光の光強度を制御する制御手段とを有するようにしたものである。
【0027】
また、本発明による箔押し装置は、上記した本発明による箔押し装置において、上記制御手段は、上記ペンの走査速度が速くなるほど上記ペンから出射される光の光強度を高くし、上記ペンの走査速度が遅くなるほど上記ペンから出射される光の光強度を低くするようにしたものである。
【0028】
また、本発明による箔押し装置は、上記した本発明による箔押し装置において、上記制御手段は、上記ペンを走査する際の加減速時には上記ペンから光を出射せず、上記ペンを走査する際の等速時に上記ペンから光を出射するようにしたものである。
【0029】
また、本発明による箔押し装置は、上記した本発明による箔押し装置において、上記ペンはレーザー光を出射するようにしたものである。
【0030】
また、本発明による箔押し装置は、上記した本発明による箔押し装置において、上記箔フィルム上に光吸収シートを重ねるようにしたものである。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、以上説明したように構成されているので、箔押し処理の処理時間を長くすることなく、色材の転写ムラの発生の恐れのない箔押し装置を提供することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、従来の技術による箔押し装置の概略構成説明図である。
図2図2は、本発明による箔押し装置の概略構成説明図である。
図3図3(a−1)は、本発明による箔押し装置における光ペンのA矢視説明図であり、また、図3(a−2)は、図3(a−1)の内部構造を示した要部断面説明図であり、また、図3(a−3)は図3(a−2)の要部拡大説明図であり、図3(b−1)は、本発明による箔押し装置における光ペンの変形例を示す図3(a−1)に相当する説明図であり、また、図3(b−2)は、図3(b−1)の内部構造を示した要部断面説明図であり、また、図3(b−3)は図3(b−2)の要部拡大説明図である。
図4図4(a)(b)は、本発明による箔押し装置の作用を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明による箔押し装置の実施の形態の一例を詳細に説明することとする。
【0034】
ここで、図2には、本発明による箔押し装置の概略構成説明図が示されている。この図2に示す箔押し装置10は、基台部材12に支持され主走査方向に延長して配設された固定系のベース部材14と、ベース部材の左右両端でベース部材14に直交して配設された側方部材16L、16Rと、主走査方向に延長して左右2つの側方部材16L、16Rを連結するカバー部18と、カバー部18内に平行して主走査方向に延設されたガイド部材20と、主走査方向に移動自在に配設されたワイヤー(図示せず。)に固定的に配設されるとともに、ガイド部材20に摺動自在に設けられたヘッド部22と、メディア40(図4(a)を参照する。)を吸着保持する静電吸着シート24とを有して構成されている。
【0035】
なお、こうした箔押し装置10は、その全体の動作は、箔押し装置10に内蔵されたマイクロコンピューター50により制御される。
【0036】
より詳細には、ベース部材14には、グリッドローラー26が設けられており、グリッドローラー26の上方側にはピンチローラー28が設けられている。
【0037】
そして、このグリッドローラー26とピンチローラー28との間に静電吸着シート24を挟持して、サーボモーター(図示せず。)の回転によりグリッドローラー26が回転すると、静電吸着シート24が主走査方向と直交する方向たる副走査方向に搬送されることとなる。
【0038】
また、ヘッド部22は、ワイヤー(図示せず。)に固定的に配設されるとともにガイド部材20に摺動自在に設けられたキャリッジ30と、キャリッジ30に固定的に配設され、後述する箔フィルムへ熱量を供給する熱源として機能する光源となるペン(本明細書においては、「箔フィルムへ熱量を供給する熱源として機能する光源となるペン」を「光ペン」と適宜に称する。)34を昇降可能に把持する把持部材32と、把持部材32に把持されるとともに先端部から所定の強度の光を出射可能な光ペン34とを有して構成されている。
【0039】
また、静電吸着シート24は、上面24aにおいて静電吸着によりメディア40を吸着する領域たる静電吸着領域24a−1と、静電吸着部24a−1の周りに設けられた静電吸着が行われない非吸着領域24a−2とを備えている。
【0040】
そして、この静電吸着シート24は、グリッドローラー26とピンチローラー28とに挟持されて搬送されるものであるが、グリッドローラー26とピンチローラー28とが、主走査方向の左方側端部および右方側端部に位置する非接触領域24a−2を挟持するように寸法設定されている。
【0041】
なお、こうした静電吸着シート24については、例えば、実開昭62−123992号公報や実開昭64−18042号公報に開示されるような、従来より公知の技術を適用することが可能であるため、その詳細な説明については、省略することとする。
【0042】
静電吸着シート24は、所定の曲率以上で湾曲しないような構成となっている。なお、所定の曲率とは、メディア40に重ねた箔フィルム(図示せず。)がずれてしまう可能性がある最小の曲率のことである。
【0043】
そして、この静電吸着シート24における静電吸着領域24a−1は、箔押し処理が可能なメディア40の最大サイズと略一致する、または、当該メディア40の最大サイズより大きい寸法となっている。
【0044】
また、側方部材16Rには、操作子36が設けられており、作業者による操作子36の操作などに基づいて、箔押し装置10に内蔵されたマイクロコンピューター50が箔押し装置10の全体の制御を行う。
【0045】
次に、図3(a−1)(a−2)(a−3)を参照しながら、光ペン34の構成について詳細に説明する。
【0046】
熱源として機能する光源となる光ペン34は、ベース部材14などの所定の箇所に配置されたレーザー発振装置34aと、レーザー発振装置34aから出射されたレーザー光を導光する光ファイバー34bと、光ファイバー34bが内部を貫通するようにして光ファイバー34bを内部に保持する筐体部34cとを有して構成されている。
【0047】
筐体部34cは、下方側に位置するメディア40と対向する底面34c−1にメディア40を押圧するためのペン先部34c−2が設けられている(図4(a)を参照する。)。
【0048】
そして、底面34c−1には貫通穴34c−3が穿設され、また、ペン先部34c−2には貫通穴34c−4が穿設されており、貫通穴34c−3と貫通穴34c−4とが連通するように配置され、これら貫通穴34c−3と貫通穴34c−4とに光ファイバー34bが挿入され、光ファイバーにより導光されたレーザー光がペン先部34c−2から外部へ照射される。
【0049】
なお、符号34c−5は、光ファイバー34bを筐体34cの内部空間に導入するために筐体部34cの上方側に穿設された貫通穴である。
【0050】
なお、レーザー発振装置34aは、レーザー光の光強度を変更する際の応答速度が高い光源であり、マイクロコンピューター50によってレーザー光の照射のタイミングや光強度が制御される。
【0051】
また、レーザー発振装置34aとしては、例えば、波長450nm、最大出力1Wの半導体レーザーを用いることができる。
【0052】
以上の構成において、箔押し装置10において、メディア40に対して箔押し処理により所定の図形を形成する場合には、まず、図4(a)に示すように、静電吸着シート24における静電吸着領域24a−1の所定の位置に、メディア40を静電吸着して固定する。なお、このときのメディア40上には箔フィルム42が重ねられており、さらに、箔フィルム42上には光吸収シート44が重ねられていて、箔フィルム42ならびに光吸収シート44も静電吸着によりメディア104上に固定されることとなる。
【0053】
なお、光吸収シート44は、光ファイバー34bから照射されるレーザー光の吸収効率を向上させるために設けるものであり、例えば、厚さが25μm程度の黄色のポリイミドシートなどを用いることができる。
【0054】
上記したように、光吸収シート44は光ファイバー34bから照射されるレーザー光の吸収効率を向上させるために設けるものであるため、光ファイバー34bから照射されるレーザー光の光強度が高い場合などには設けなくてもよいものであって、適宜の状況に応じて光吸収シート44を設けるか設けないかを決定すればよい。
【0055】
次に、静電吸着シート24をグリッドローラー26とピンチローラー28とにより挟持させる。このとき、ピンチローラー28は、静電吸着シート24の上面24aにおける非吸着領域24a−2上に位置している。
【0056】
そして、マイクロコンピューター50の制御により、予め入力された所定の図形を示す図形データに基づいて、副走査方向で搬送される静電吸着シート24に固定されたメディア40上に、主走査方向に移動するヘッド部22に設けられた光ペン34のペン先部34c−2を光吸収シート44ならびに箔フィルム42を介して押圧しながら、光ペン34を走査する。
【0057】
この際に、光ペン34のペン先部34c−2からはレーザー光が照射されており、光ペン34の走査速度が一定でなくても、マイクロコンピューター50の制御により光ペン34の走査速度に応じて光ペン34から出射されるレーザー光の光強度を制御することで箔フィルム42への入熱量を一定に保つことができ、これによりメディア40への色材の転写ムラの発生を抑止することができる。
【0058】
具体的には、例えば、光ペン34の走査速度が速くなるほどレーザー光の光強度を高くし、光ペン34の走査速度が遅くなるほどレーザー光の光強度を低くすることにより、光ペン34から出射されるレーザー光の照射領域における単位面積当たりのレーザー光照射による入熱量を一定に保つことが可能となる。
【0059】
また、光ペン34の走査中においても、マイクロコンピューター50の制御により光ペン34からのレーザー光の照射(オン:ON)と非照射(オフ:OFF)との切り換えが可能であるので、箔フィルム42へ選択的に熱量を供給することができる。
【0060】
これにより、マイクロコンピューター50の制御によって、光ペン34を走査する際の加減速時には箔フィルム42へレーザー光を照射しないようにして、光ペン34を走査する際の等速時にのみ箔フィルム42へレーザー光を照射するようにする。
【0061】
即ち、光ペン34を走査する際の等速時のみにおいて、予め入力された所定の図形を示す図形データに基づいて、箔フィルム42からメディア40への色材の転写が行われるようにする。
【0062】
光ペン34を走査する際の等速時にのみ箔フィルム42へレーザー光の照射が行われるため、光ペン34から出射されるレーザー光の照射領域における単位面積当たりのレーザー光照射による入熱量は常に一定になるので、メディア40への色材の転写ムラの発生を一層確実に抑止することができるようになる。
【0063】
上記において説明したように、光ペン34をメディア40に対して押圧しながら、光ペン34からレーザー光を照射することにより、図4(b)に示すように、メディア40上に箔フィルム42の色材が所定の図形形状で転写されて、メディア40に所定の図形が形成されることとなる。
【0064】
以上において説明したように、本発明による箔押し装置10は、箔フィルム42へ熱量を供給する熱源として光強度を変更する際の応答速度が高い光ペン34を用いるようにしたものである。
【0065】
従って、本発明による箔押し装置10によれば、光ペン34の走査速度が一定でなくても、光ペン34の走査速度に応じて光強度を制御することで箔フィルム42への入熱量を一定に保つことができ、これにより色材の転写ムラの発生を抑止することができる。
【0066】
また、本発明による箔押し装置10によれば、光ペン34の走査中においても、箔フィルム42への光の照射(オン:ON)と非照射(オフ:OFF)との切り換えが可能であるので、箔フィルム42へ選択的に熱量を供給することができる。
【0067】
これにより、光ペン34を走査する際の加減速時には箔フィルム42へ光を照射しないようにして、光ペン34を走査する際の等速時にのみ箔フィルム42へ光を照射するようにすることで、色材の転写ムラの発生を一層確実に抑止することができる。
【0068】
なお、上記した実施の形態は、以下の(1)乃至(5)に示すように変形するようにしてもよい。
【0069】
(1)上記した実施の形態においては、光ペン34からレーザー光を出射するようにした場合について説明したが、これに限られるものではないことは勿論である。例えば、光ペン34から、発光ダイオードやハロゲンランプなどから照射される光などを出射させるようにしてもよく、箔フィルム42へ熱量を供給する熱源として機能するのであればどのような光源のどのような光を用いてもよい。
【0070】
(2)上記した実施の形態においては、光ペン34がレーザー発振装置34aから出射されたレーザー光を光ファイバー34bで導光してペン先部34c−2から出射するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論である。例えば、光ペンを図3(b−1)(b−2)(b−3)に示すように構成してもよい。
【0071】
この図3(b−1)(b−2)(b−3)に示す光ペン340は、レーザー光を出射するレーザーポインター340aと、レーザーポインター340aから出射されたレーザー光を集光する集光レンズ340bと、レーザーポインター340aを上方側端部340c−1に取り付けるとともに内部に集光レンズ340bを保持する筐体部340cとを有して構成されている。
【0072】
筐体部340cは、下方側に位置するメディア40と対向する底面340c−2にメディア40を押圧するためのペン先部340c−3が設けられている。
【0073】
そして、底面340c−2には貫通穴340c−4が穿設され、また、ペン先部340c−3はレーザー光の一部または全部を透過する材料、例えば、石英ガラスなどで形成されており、集光レンズ340bにより集光されたレーザー光は貫通穴340c−4とペン先部340c−3とを通過して、外部へ照射される。
【0074】
なお、レーザーポインター340aは、レーザー光の光強度を変更する際の応答速度が高い光源であり、マイクロコンピューター50によってレーザー光の照射のタイミングや光強度が制御される。
【0075】
こうした光ペン340によっても、上記した光ペン34を用いた場合と同様な作用効果を得ることができる。
【0076】
(3)上記した実施の形態においては、光ペン34のペン先部34c−2に貫通穴34c−4を設け、この貫通穴34c−4に光ファイバー34bを挿入し、光ファイバー34bにより導光されたレーザー光がペン先部34c−2から外部へ照射されるようにしたが、これに限られるものではないことは勿論である。即ち、レーザー光を透過する材料、例えば、石英ガラスなどでペン先部34c−2を形成した場合には、貫通穴34c−4を設けなくともレーザー光が外部に出射されるので、こうした場合には貫通穴34c−4を設けなくともよい。
【0077】
(4)上記した実施の形態においては、光ペン34が主走査方向に移動し、かつ、箔フィルム42を重ねたメディア40が副走査方向に移動する場合について説明したが、これに限られるものではないことは勿論である。即ち、光ペン34と箔フィルム42を重ねたメディア40とは、相対的に位置関係を変化することができればよいものであり、例えば、光ペン34のみが移動するようにしてもよいし、あるいは、箔フィルム42を重ねたメディア40のみが移動するようにしてもよい。要するに、箔フィルム42を重ねたメディア40上に光ペン34を押圧した状態で、光ペン34と箔フィルム42を重ねたメディア40との位置関係を相対的に変化させて光ペン34を走査可能な構成であれば、どのような構成を採用してもよい。
【0078】
(5)上記した実施の形態ならびに上記した(1)乃至(4)に示す変形例は、適宜に組み合わせるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、金属感や光沢による高級感を備えた印刷を行う箔押し装置として用いて好適である。
【符号の説明】
【0080】
10,100 箔押し装置、22 ヘッド部、24 静電吸着シート、26 グリッドローラー、28 ピンチローラー、34,340 光ペン、40 メディア、42 箔フィルム、44 光吸収シート,118 熱ペン
図1
図2
図3
図4