特許第6343257号(P6343257)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6343257
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】建設機械のエア抜き装置
(51)【国際特許分類】
   F15B 21/04 20060101AFI20180604BHJP
   E02F 9/00 20060101ALI20180604BHJP
   F15B 11/08 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
   F15B21/04 C
   E02F9/00 B
   F15B11/08 A
【請求項の数】2
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-115073(P2015-115073)
(22)【出願日】2015年6月5日
(65)【公開番号】特開2017-2947(P2017-2947A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2017年4月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒瀬 健介
(72)【発明者】
【氏名】新留 隆志
(72)【発明者】
【氏名】横山 和朗
【審査官】 加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−144752(JP,A)
【文献】 実開昭62−044106(JP,U)
【文献】 特開2009−257388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 20/00−21/12
F15B 11/00−11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、このエンジンにより駆動される油圧ポンプと、この油圧ポンプから吐出された圧油の流れを制御する制御弁と、この制御弁の作用部にパイロット圧油を供給し、前記制御弁の位置を切換えるパイロットポンプと、このパイロットポンプから吐出されたパイロット圧油を前記制御弁の作用部へ導くパイロット圧油供給管路と、前記油圧ポンプ及び前記パイロットポンプに接続され、作動油を貯蔵する作動油タンクとを備えた建設機械に設けられ、前記パイロット圧油供給管路に残留したエアを排出する建設機械のエア抜き装置において、
前記パイロット圧油供給管路から分岐して形成され、前記パイロット圧油供給管路内の圧力が所定の圧力未満であるときに開き、前記パイロット圧油供給管路内の圧力が前記所定の圧力以上であるときに閉じる開閉弁と、
この開閉弁を通過した作動油を前記作動油タンクへ導くドレン管路と、
前記パイロット圧油供給管路内の圧力を調整する調圧部とを備え、
この調圧部は、
前記パイロット圧油供給管路内の圧力の調整を指示する操作が行われ、その操作量に応じた指令電流を出力する操作部と、
前記パイロットポンプと前記開閉弁との間の管路に設けられ、前記操作部から出力された前記指令電流を入力して前記パイロットポンプから吐出されたパイロット圧油を絞ることにより、前記パイロット圧油供給管路内の圧力を前記指令電流に対応する圧力に減少させる減圧弁と、から構成され、
前記操作部によって前記パイロット圧油供給管路内のエアを排出させる所定の操作が行われたとき、前記減圧弁は、前記操作部の前記所定の操作の操作量に応じた前記指令電流を入力して前記パイロットポンプから吐出されたパイロット圧油を絞ることにより、前記パイロット圧油供給管路内の圧力を前記作動油タンク内の圧力よりも大きく、かつ前記所定の圧力未満の圧力に減少させて前記パイロット圧油供給管路内のエアを排出する
ことを特徴とする建設機械のエア抜き装置。
【請求項2】
エンジンと、このエンジンにより駆動される油圧ポンプと、この油圧ポンプから吐出された圧油の流れを制御する制御弁と、この制御弁の作用部にパイロット圧油を供給し、前記制御弁の位置を切換えるパイロットポンプと、このパイロットポンプから吐出されたパイロット圧油を前記制御弁の作用部へ導くパイロット圧油供給管路と、前記油圧ポンプ及び前記パイロットポンプに接続され、作動油を貯蔵する作動油タンクと、を備えた建設機械に設けられ、前記パイロット圧油供給管路に残留したエアを排出する建設機械のエア抜き装置において、
前記パイロット圧油供給管路から分岐して形成され、前記パイロット圧油供給管路内の圧力が所定の圧力未満であるときに開き、前記パイロット圧油供給管路内の圧力が前記所定の圧力以上であるときに閉じる開閉弁と、
この開閉弁を通過した作動油を前記作動油タンクへ導くドレン管路と、
前記パイロット圧油供給管路内の圧力を調整する調圧部と、を備え、
この調圧部は、
前記パイロット圧油供給管路内の圧力の調整を指示する操作が行われ、その操作量に応じた圧力の作動油を供給する操作部と、
前記パイロットポンプと前記開閉弁との間の管路に設けられ、前記操作部から供給された作動油の圧力を受けて作動し、前記パイロットポンプから吐出されたパイロット圧油を絞ることにより、前記パイロット圧油供給管路内の圧力を前記操作部から供給された作動油の圧力に対応する圧力に減少させる減圧弁と、から構成され、
前記操作部によって前記パイロット圧油供給管路内のエアを排出させる所定の操作が行われたとき、前記減圧弁は、前記操作部の前記所定の操作により供給された作動油の圧力を受けて前記パイロットポンプから吐出されたパイロット圧油を絞ることにより、前記パイロット圧油供給管路内の圧力を前記作動油タンク内の圧力よりも大きく、かつ前記所定の圧力未満の圧力に減少させて前記パイロット圧油供給管路内のエアを排出する
ことを特徴とする建設機械のエア抜き装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイロットポンプから吐出されたパイロット圧油の流路となるパイロット圧油供給管路に残留したエアを排出する建設機械のエア抜き装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ショベル等の建設機械は、エンジンと、このエンジンにより駆動される油圧ポンプと、この油圧ポンプから吐出された圧油の流れを制御する制御弁と、この制御弁の作用部にパイロット圧油を供給し、制御弁の位置を切換えるパイロットポンプと、このパイロットポンプから吐出されたパイロット圧油を制御弁へ導くパイロット圧油供給管路と、油圧ポンプ及びパイロットポンプに接続され、作動油を貯蔵する作動油タンクとを備えている。
【0003】
このように構成される建設機械では、パイロット圧油供給管路にエアが残留している場合には、制御弁を作動させるためにパイロットポンプによってパイロット圧油がパイロット圧油供給管路内へ吐出されると、パイロット圧油供給管路内のエアが圧縮することにより、パイロット圧油共管路内において昇圧遅れが生じる。そのため、パイロット圧油供給管路にエアが残留していないときに比べて制御弁の動作が遅延することにより、建設機械の操作性が悪化することが問題になっていた。そこで、従来より、パイロット圧油供給管路内のエアを排出するエア抜き装置が建設機械に適用されている。
【0004】
この種のエア抜き装置の従来技術の1つとして、パイロット圧油供給管路から分岐された位置に設けられたオリフィスと、このオリフィスに接続された外部配管によるドレン管路とを備え、パイロット圧油供給管路に加圧して供給されたパイロット圧油によってエアがオリフィスから押し出されることにより、パイロット圧油供給管路内のエアをパイロット圧油の一部と共にドレン管路へ排出するようにした装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
この従来技術のエア抜き装置では、パイロット圧油供給管路にパイロット圧油が供給されている間は、常にパイロット圧油の一部がドレン管路へ排出されることになるので、パイロット圧油により作動する制御弁等の機器のエネルギー効率が低下する。そこで、作動油の貯留が可能なタンクと、このタンクの上方に配設された油圧ポンプと、この油圧ポンプの吸込口とタンク内とを繋いで作動油の吸い込みを行うための吸込パイプと、油圧ポンプの吐出口に繋がる吐出パイプとから成る油圧回路のエア抜き装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
図6はこの油圧回路のエア抜き装置の構成を示す図、図7は油圧回路のエア抜き装置の要部の構成を示す図である。
【0007】
図6図7に示すように、特許文献2に開示された従来技術の油圧回路のエア抜き装置100は、吐出パイプDPのうち油圧ポンプPの吐出口の近傍において上方に突出して開口するエア抜き装置取付口DPaに取り付けられている。エア抜き装置100は、円筒状に形成された本体110と、この本体110の上端に形成されたエア抜孔110aと、本体110のボール保持空間110c内に配設されるボール(開閉弁)120と、本体110のボール保持孔110b内に挿入されたスプリングピン130とから構成されており、このスプリングピン130には、上下に伸びるスリット130aが形成されている。そして、エア抜き装置100の上端とタンクTとの間には、吸込パイプSP及び油圧ポンプP内に残留したエアをエア抜孔110aから作動油タンクTへ導くエア抜パイプRPが連結されている。
【0008】
このように構成されるエア抜き装置100では、油圧ポンプPの駆動が開始される前は、ボール120が自重によってスプリングピン130上に載置されるので、スプリングピン130のスリット130aを介して本体110の下端面の開口と上端面の開口とが連通し、開閉弁が開放状態となっている。そのため、吸込パイプSP及び油圧ポンプP内のエアが、吐出パイプDP内に溜まっている作動油の上方の空間S1を通り、エア抜き装置100からエア抜パイプRPを介して排出される。
【0009】
一方、油圧ポンプPの駆動が開始された後は、油圧ポンプP内のエアが吐出パイプDPに入り、上述したのと同様に開放状態の開閉弁からエア抜パイプRPを通してタンクTに排出される。そして、油圧ポンプPの駆動が継続されることにより、エア抜き装置100のボール保持孔110b内に作動油が充満し、この作動油によって上昇したボール120が本体110の上端のエア抜孔110aを塞ぐので、油圧ポンプPから吐出された作動油がエア抜き装置100から流出するのを回避することができる。従って、従来技術のエア抜き装置100を建設機械に適用すれば、パイロット圧油供給管路を流通するパイロット圧油がエアと共に排出されるのを抑制できると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−159334号公報
【特許文献2】特開平10−318203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献2に開示された従来技術の油圧回路のエア抜き装置100を建設機械に適用し、このエア抜き装置100を吐出パイプDPの代わりにパイロット圧油供給管路に取り付けた場合には、パイロットポンプの駆動が開始されていなければ、パイロット圧油供給管路と作動油タンクとの圧力が平衡状態になっている。そのため、開閉弁が開放状態となっていても、パイロット圧油供給管路内に残留したエアがエア抜き装置100から作動油タンクへ排出され難くなるので、パイロット圧油供給管路に対してエア抜き装置100による十分なエア抜き効果が得られないことが懸念されている。
【0012】
本発明は、このような従来技術の実情からなされたもので、その目的は、パイロット圧油供給管路に残留したエアを容易に排出することができる建設機械のエア抜き装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明の建設機械のエア抜き装置は、エンジンと、このエンジンにより駆動される油圧ポンプと、この油圧ポンプから吐出された圧油の流れを制御する制御弁と、この制御弁の作用部にパイロット圧油を供給し、前記制御弁の位置を切換えるパイロットポンプと、このパイロットポンプから吐出されたパイロット圧油を前記制御弁の作用部へ導くパイロット圧油供給管路と、前記油圧ポンプ及び前記パイロットポンプに接続され、作動油を貯蔵する作動油タンクとを備えた建設機械に設けられ、前記パイロット圧油供給管路に残留したエアを排出する建設機械のエア抜き装置において、前記パイロット圧油供給管路から分岐して形成され、前記パイロット圧油供給管路内の圧力が所定の圧力未満であるときに開き、前記パイロット圧油供給管路内の圧力が前記所定の圧力以上であるときに閉じる開閉弁と、この開閉弁を通過した作動油を前記作動油タンクへ導くドレン管路と、前記パイロット圧油供給管路内の圧力を調整する調圧部とを備え、この調圧部は、前記パイロット圧油供給管路内の圧力の調整を指示する操作が行われ、その操作量に応じた指令電流を出力する操作部と、前記パイロットポンプと前記開閉弁との間の管路に設けられ、前記操作部から出力された前記指令電流を入力して前記パイロットポンプから吐出されたパイロット圧油を絞ることにより、前記パイロット圧油供給管路内の圧力を前記指令電流に対応する圧力に減少させる減圧弁と、から構成され、前記操作部によって前記パイロット圧油供給管路内のエアを排出させる所定の操作が行われたとき、前記減圧弁は、前記操作部の前記所定の操作の操作量に応じた前記指令電流を入力して前記パイロットポンプから吐出されたパイロット圧油を絞ることにより、前記パイロット圧油供給管路内の圧力を前記作動油タンク内の圧力よりも大きく、かつ前記所定の圧力未満の圧力に減少させて前記パイロット圧油供給管路内のエアを排出することを特徴としている。
【0014】
このように構成した本発明は、パイロット圧油供給管路と作動油タンクとの間には、パイロット圧油供給管路に残留したエアを作動油タンクへ導く開閉弁及びドレン管路が連結されている。そのため、パイロットポンプの駆動が開始された後に、調圧部によってパイロット圧油供給管路内の圧力が所定の圧力未満に設定されると、パイロット圧油供給管路から分岐した位置にある開閉弁が開いた状態となり、パイロット圧油供給管路と作動油タンクの圧力が平衡状態になる。このとき、調圧部がパイロット圧油供給管路内の圧力を作動油タンク内の圧力よりも大きく、かつ所定の圧力未満に設定して調整することにより、パイロット圧油供給管路内のエアがパイロットポンプから吐出されたパイロット圧油によって開閉弁を通じてドレン管路へ押し出されるので、パイロット圧油供給管路に残留したエアを容易に排出することができる。そして、建設機械による作業が行われる前に、予め操作部を用いて所定の操作を行うことにより、パイロット圧油供給管路内の圧力を減圧弁によって作動油タンク内の圧力よりも大きく、かつ所定の圧力未満の圧力に迅速に設定できるので、パイロット圧油供給管路のエア抜き作業を早期に完了することができる。
【0015】
また、本発明に係る建設機械のエア抜き装置は、前記発明において、前記所定の圧力は、前記制御弁の常用制御圧力域の下限圧力よりも小さい値に設定されたことを特徴としている。このように構成すると、建設機械による作業が行われている間は、制御弁を作動させるためにパイロット圧油供給管路内の圧力が制御弁の常用制御圧力域の下限圧力よりも大きくなるので、開閉弁を閉じた状態に保つことができ、作業中に制御弁へ導かれるパイロット圧油が開閉弁を通じてドレン管路へ流出するのを抑制することができる。
【0016】
また、本発明に係る建設機械のエア抜き装置は、前記発明において、前記開閉弁は、前記調圧部によって前記パイロット圧油供給管路内の圧力が前記作動油タンク内の圧力よりも大きく、かつ前記所定の圧力未満に設定されたとき、自重により下方へ移動し、前記調圧部によって前記パイロット圧油供給管路内の圧力が前記所定の圧力以上に設定されたとき、前記パイロット圧油供給管路内の圧力により上方へ移動するボール部材と、このボール部材を収容し、前記ボール部材を鉛直方向に沿って案内する円筒状の収容室とから成り、この収容室は、前記ドレン管路へ接続される上端に設けられ、上方へ移動した前記ボール部材が着座するように形成されたドレン管路側開口部と、前記パイロット圧油供給管路側へ接続される下端に設けられ、下方へ移動した前記ボール部材が着座しないように円筒軸から径方向へ偏芯して形成されたパイロット圧油供給管路側開口部とを有することを特徴としている。
【0017】
このように構成した本発明は、調圧部によってパイロット圧油供給管路内の圧力が作動油タンク内の圧力よりも大きく、かつ所定の圧力未満に設定されると、ボール部材は、自重により収容室に案内されながら下方へ移動し、収容室の下端に当接する。このとき、収容室の下端のパイロット圧油供給管路側開口部は、ボール部材が着座しないように収容室の円筒軸から径方向へ偏芯して形成されているので、パイロット圧油供給管路側開口部が塞がれることがなく、開閉弁を開いた状態に保つことができる。
【0018】
一方、調圧部によってパイロット圧油供給管路内の圧力が所定の圧力以上に設定されると、ボール部材は、パイロット圧油供給管路内の圧力により収容室に案内されながら上方へ移動し、収容室の上端に当接する。このとき、ボール部材が収容室の上端のドレン管路側開口部に着座するので、ドレン管路側開口部がボール部材によって塞がれることにより、開閉弁を閉じた状態に保つことができる。
【0019】
このように、調圧部によって設定されたパイロット圧油供給管路内の圧力に応じて収容室内のボール部材が鉛直方向へ移動することにより、開閉弁の開閉状態を適切に制御できるので、パイロット圧油供給管路内のエアの排出とパイロット圧油供給管路からのパイロット圧油の流出の抑制をバランス良く行うことができる。
【0022】
また、本発明建設機械のエア抜き装置は、エンジンと、このエンジンにより駆動される油圧ポンプと、この油圧ポンプから吐出された圧油の流れを制御する制御弁と、この制御弁の作用部にパイロット圧油を供給し、前記制御弁の位置を切換えるパイロットポンプと、このパイロットポンプから吐出されたパイロット圧油を前記制御弁の作用部へ導くパイロット圧油供給管路と、前記油圧ポンプ及び前記パイロットポンプに接続され、作動油を貯蔵する作動油タンクと、を備えた建設機械に設けられ、前記パイロット圧油供給管路に残留したエアを排出する建設機械のエア抜き装置において、前記パイロット圧油供給管路から分岐して形成され、前記パイロット圧油供給管路内の圧力が所定の圧力未満であるときに開き、前記パイロット圧油供給管路内の圧力が前記所定の圧力以上であるときに閉じる開閉弁と、この開閉弁を通過した作動油を前記作動油タンクへ導くドレン管路と、前記パイロット圧油供給管路内の圧力を調整する調圧部と、を備え、この調圧部は、前記パイロット圧油供給管路内の圧力の調整を指示する操作が行われ、その操作量に応じた圧力の作動油を供給する操作部と、前記パイロットポンプと前記開閉弁との間の管路に設けられ、前記操作部から供給された作動油の圧力を受けて作動し、前記パイロットポンプから吐出されたパイロット圧油を絞ることにより、前記パイロット圧油供給管路内の圧力を前記操作部から供給された作動油の圧力に対応する圧力に減少させる減圧弁と、から構成され、前記操作部によって前記パイロット圧油供給管路内のエアを排出させる所定の操作が行われたとき、前記減圧弁は、前記操作部の前記所定の操作により供給された作動油の圧力を受けて前記パイロットポンプから吐出されたパイロット圧油を絞ることにより、前記パイロット圧油供給管路内の圧力を前記作動油タンク内の圧力よりも大きく、かつ前記所定の圧力未満の圧力に減少させて前記パイロット圧油供給管路内のエアを排出することを特徴としている。
【0023】
このように構成した本発明は、パイロット圧油供給管路と作動油タンクとの間には、パイロット圧油供給管路に残留したエアを作動油タンクへ導く開閉弁及びドレン管路が連結されている。そのため、パイロットポンプの駆動が開始された後に、調圧部によってパイロット圧油供給管路内の圧力が所定の圧力未満に設定されると、パイロット圧油供給管路から分岐した位置にある開閉弁が開いた状態となり、パイロット圧油供給管路と作動油タンクの圧力が平衡状態になる。このとき、調圧部がパイロット圧油供給管路内の圧力を作動油タンク内の圧力よりも大きく、かつ所定の圧力未満に設定して調整することにより、パイロット圧油供給管路内のエアがパイロットポンプから吐出されたパイロット圧油によって開閉弁を通じてドレン管路へ押し出されるので、パイロット圧油供給管路に残留したエアを容易に排出することができる。そして、建設機械による作業が行われる前に、予め操作部を用いて所定の操作を行うことにより、パイロット圧油供給管路内の圧力を減圧弁によって作動油タンク内の圧力よりも大きく、かつ所定の圧力未満の圧力に迅速に設定できるので、パイロット圧油供給管路のエア抜き作業を早期に完了することができる。特に、建設機械において操作部から供給された作動油の圧力を受けて作動する減圧弁、すなわちパイロット作動形減圧弁が搭載されている場合には、このパイロット作動形減圧弁を利用することにより、新たに減圧弁を追加しなくても本発明を適用することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の建設機械のエア抜き装置によれば、パイロット圧油供給管路と作動油タンクとの圧力が平衡状態になっても、調圧部がパイロット圧油供給管路内の圧力を作動油タンク内の圧力よりも大きく、かつ所定の圧力未満に設定することにより、パイロット圧油供給管路内のエアがパイロット圧油によって開閉弁からドレン管路へ押し出されるので、パイロット圧油供給管路に残留したエアを容易に排出することができる。これにより、パイロット圧油供給管路に対して十分なエア抜き効果を得ることができるので、建設機械の操作性を従来よりも向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明に係るエア抜き装置の第1実施形態が適用される建設機械の一例として挙げた油圧ショベルの構成を示す図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る油圧回路の構成を示す図である。
図3】本発明の第1実施形態に係るバルブ及び開閉弁の構成を示す図である。
図4】本発明の第1実施形態に係るパイロット圧油供給管路内の圧力Pとスプール制御量Qとの関係を説明する図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る油圧回路の構成を示す図である。
図6】従来技術のエア抜き装置の一例の構成を説明する図である。
図7図6の要部の構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る建設機械のエア抜き装置を実施するための形態を図に基づいて説明する。
【0027】
[第1実施形態]
本発明に係るエア抜き装置の第1実施形態は、建設機械、例えば図1に示す油圧ショベル1に適用される。この油圧ショベル1は、走行体2と、この走行体2の上方に配置され、旋回フレーム3aを有する旋回体3と、この旋回体3の前方に取り付けられ、上下方向に回動して掘削等の作業を行うフロント作業機4とを備えている。
【0028】
旋回体3は、前側に配置され、フロント作業機4を操作する操作者が乗車するキャブ5と、後側に配置され、車体が傾倒しないように車体のバランスを保つカウンタウェイト6と、これらのキャブ5とカウンタウェイト6との間に設けられたエンジンルーム7と、このエンジンルーム7の上部に設けられた車体カバー8とを備えている。
【0029】
フロント作業機4は、基端が旋回フレーム3aに回動可能に取り付けられて上下方向に回動するブーム4Aと、このブーム4Aの先端に回動可能に取り付けられたアーム4Bと、このアーム4Bの先端に回動可能に取り付けられたバケット4Cとを有している。また、フロント作業機4は、旋回体3とブーム4Aとを接続し、伸縮することによってブーム4Aを回動させるブームシリンダ4aと、ブーム4Aとアーム4Bとを接続し、伸縮することによってアーム4Bを回動させるアームシリンダ4bと、アーム4Bとバケット4Cとを接続し、伸縮することによってバケット4Cを回動させるバケットシリンダ4cとを有している。
【0030】
また、旋回体3は、図2に示すようにエンジンルーム7内に収納されたエンジン7aと、車体の動作を制御するコントローラ(図示せず)と、エンジン7aを動力源としてブームシリンダ4a、アームシリンダ4b、及びバケットシリンダ4c等の油圧アクチュエータを駆動するための油圧回路10とを備えている。
【0031】
この油圧回路10は、エンジン7aの駆動力で回転し、ブームシリンダ4a、アームシリンダ4b、及びバケットシリンダ4cへ作動油を圧油として吐出する油圧ポンプ11と、この油圧ポンプ11からブームシリンダ4a、アームシリンダ4b、バケットシリンダ4c、及び油圧ポンプ11の吐出流量を制御する傾転ピストンへ吐出される圧油の流れ、すなわち圧油の流量及び方向を制御するこれら制御弁(バルブ12)とを有している。
【0032】
本発明の第1実施形態では、傾転ピストン(図示せず)とアームシリンダ4bとバケットシリンダ4cへの圧油の流れの制御はブームシリンダ4aへの圧油の流れの制御と同様に行われるので、以下の油圧回路10の説明において、ブームシリンダ4aへの圧油の流れの制御に関する構成及び動作について詳細に示し、傾転ピストンとアームシリンダ4bとバケットシリンダ4cの制御に関する構成及び動作の説明を省略している。なお、図2では、ブームシリンダ4aへ吐出される圧油の流量及び方向を制御するブームシリンダ4a用のバルブ12が示されており、他の傾転ピストン、アームシリンダ4b及びバケットシリンダ4c用のバルブ12についての図示が省略されている。
【0033】
バルブ12は、例えばブームシリンダ4aへ圧油を供給し、ブームシリンダ4aを伸長させる第1駆動位置、ブームシリンダ4aへの圧油の流れを遮断し、ブームシリンダ4aの伸縮動作を停止させる中立位置、及びブームシリンダ4aから圧油を戻し、ブームシリンダ4aを短縮させる第2駆動位置のいずれかに切換えるスプール弁から成っている。
【0034】
具体的には、バルブ12は、外殻を形成するケーシング12Aと、このケーシング12A内に収容され、軸方向へ往復移動するスプール12Bと、このスプール12Bを初期位置へ付勢するばね12Cと、後述のパイロットポンプ15から吐出されたパイロット圧油をスプール12Bに作用させる作用部12Dとから構成されている。従って、バルブ12内のスプール12Bは、作用部12Dからパイロット圧油の圧力を受け、ばね12Cの弾性力に抗して軸方向へ移動することにより、バルブ12の位置が切換えられる。
【0035】
また、油圧回路10は、バルブ12の作用部12Dにパイロット圧油を供給し、バルブ12の位置を切換えるパイロットポンプ15と、このパイロットポンプ15から吐出されたパイロット圧油をバルブ12の作用部12Dへ導くパイロット圧油供給管路16と、油圧ポンプ11及びパイロットポンプ15に接続され、油圧ポンプ11及びパイロットポンプ15に吸入される作動油を貯蔵する作動油タンク17と、バルブ12に接続され、バルブ12へ戻された圧油を作動油タンク17へ導くドレン管路18と、パイロット圧油供給管路16内の圧力を調整する調圧部19とを有している。
【0036】
この調圧部19は、例えばパイロット圧油供給管路16内の圧力の調整を指示する操作が行われ、その操作量に応じた指令電流を出力する操作部21を含んでいる。この操作部21は、キャブ5内に前後左右に回動可能に設けられ、フロント作業機4を動かすためにオペレータが把持して操作する操作レバー21Aと、キャブ5内に上下方向へ回動可能に設けられ、オペレータの乗降を許容するロック位置にあるとき、操作レバー21Aによるフロント作業機4の操作を不能とし、オペレータの乗降を妨げるロック解除位置にあるとき、操作レバー21Aによるフロント作業機4の操作を可能とするゲートロックレバー21Bとから構成されており、このゲートロックレバー21Bによってフロント作業機4の動作が制限され、オペレータがキャブ5へ乗降するときの安全を図ることができる。
【0037】
また、調圧部19は、例えばパイロット圧油供給管路16のうちパイロットポンプ15とバルブ12との間に設けられ、ゲットロックレバー21Bから出力された指令電流を入力してパイロットポンプ15から吐出されたパイロット圧油を絞ることにより、パイロット圧油供給管路16内の圧力を指令電流に対応する圧力に減少させる減圧弁22としてのゲートロックレバー用比例電磁弁22Bと、パイロット圧油供給管路16のうちこのゲートロックレバー用比例電磁弁22Bとバルブ12との間に設けられ、操作レバー21Aから出力された指令電流を入力してゲートロックレバー用比例電磁弁22Bを通過したパイロット圧油を絞ることにより、パイロット圧油供給管路16内の圧力を指令電流に対応する圧力に減少させる減圧弁22としての操作レバー用比例電磁弁22Aとから構成されている。
【0038】
ゲートロックレバー21Bの操作量とゲートロックレバー21Bから出力される指令電流との関係は、ゲートロックレバー21Bがロック位置にあるときに、ゲートロックレバー21Bから出力される指令電流が0となり、ゲートロックレバー21Bがロック解除位置にあるときに、ゲートロックレバー21Bから出力される指令電流が最大値となるように設定されている。また、ゲートロックレバー用比例電磁弁22Bに入力される指令電流とパイロット圧油供給管路16内の圧力との関係は、ゲートロックレバー用比例電磁弁22Bに入力される指令電流が大きくなるに従ってパイロット圧油供給管路16内の圧力が増加する比例関係に設定されている。
【0039】
そのため、ゲートロックレバー21Bがロック位置にあれば、ゲットロックレバー21Bから指令電流が出力されないので、ゲートロックレバー用比例電磁弁22Bは、完全に閉じた状態となり、パイロットポンプ15から吐出されたパイロット圧油の流れを遮断する。一方、ゲートロックレバー21Bがロック解除位置にあれば、ゲートロックレバー用比例電磁弁22Bは、ゲットロックレバー21Bから出力された指令電流を入力すると、完全に開いた状態となり、パイロットポンプ15から吐出されたパイロット圧油を下流側の操作レバー用比例電磁弁22Aへそのまま流通させる。
【0040】
操作レバー21Aの操作量と操作レバー21Aから出力される指令電流との関係は、操作レバー21Aの操作量が大きくなるに従って操作レバー21Aから出力される指令電流が増加する関係に設定されている。また、操作レバー用比例電磁弁22Aに入力される指令電流とパイロット圧油供給管路16内の圧力との関係は、操作レバー用比例電磁弁22Aに入力される指令電流が大きくなるに従ってパイロット圧油供給管路16内の圧力が増加する比例関係に設定されている。
【0041】
そのため、操作レバー21Aが操作されずに中立位置にあるときには、操作レバー用比例電磁弁22Aは、操作レバー21Aから出力された指令電流を入力すると、ゲートロックレバー用比例電磁弁22Bを通過したパイロット圧油を絞ることにより、パイロット圧油供給管路16内の圧力を後述の所定の圧力P1(図4参照)未満に減少させる。一方、操作レバー21Aが前方向又は後方向へ操作されたときには、操作レバー用比例電磁弁22Aは、操作レバー21Aから出力された指令電流を入力すると、ゲートロックレバー用比例電磁弁22Bを通過したパイロット圧油を絞ることにより、パイロット圧油供給管路16内の圧力を指令電流に対応する圧力に減少させる。すなわち、操作レバー21Aの操作量が大きくなると、操作レバー用比例電磁弁22Aに入力される指令電流が増加するので、パイロット圧油供給管路16内の圧力も増加する。
【0042】
ここで、油圧ショベル1が出荷前に組み立てられ、あるいは車体を分解して整備するメンテナンス作業が行われた際には、パイロット圧油供給管路16がパイロット圧油で満たされておらず、パイロット圧油供給管路16内にエアが残留するので、このエアをパイロット圧油供給管路16から排出する必要がある。
【0043】
そこで、本発明の第1実施形態では、油圧回路10は、パイロット圧油供給管路16から分岐して形成され、パイロット圧油供給管路16内の圧力が上述の所定の圧力P1未満であるときに開き、パイロット圧油供給管路16内の圧力が所定の圧力P1以上であるときに閉じる開閉弁25を備え、調圧部19が、パイロット圧油供給管路16内の圧力を作動油タンク17内の圧力よりも大きく、かつ所定の圧力P1未満に設定してパイロット圧油供給管路16内のエアを排出するようにしている。
【0044】
具体的には、開閉弁25は、例えばバルブ12の内部に一体的に設けられ、パイロット圧油供給管路16の分岐点とドレン管路18とを鉛直方向に沿って連結するボールチェック弁構造から構成されている。そして、開閉弁25は、図3に示すように調圧部19によってパイロット圧油供給管路16内の圧力が作動油タンク17内の圧力、すなわち作動油タンク17の内圧の最大値よりも大きく、かつ所定の圧力P1未満に設定されたとき、自重により下方へ移動し、調圧部19によってパイロット圧油供給管路16内の圧力が所定の圧力P1以上に設定されたとき、パイロット圧油供給管路16内の圧力により上方へ移動するボール部材26と、このボール部材26を収容し、ボール部材26を鉛直方向に沿って案内する円筒状の収容室27と、この収容室27の上方に取り付けられ、ボール部材26が上方へ移動するのを規制するシートプラグ28と、収容室27の下方に形成され、パイロット圧油供給管路16の分岐点と連通する分岐孔29とから成っている。なお、バルブ12のケーシング12Aの上部には、六角レンチ等の工具をケーシング12A内に挿入する際に開閉する開閉蓋30が設けられている。
【0045】
収容室27は、バルブ12のケーシング12Aの内部を加工して形成されており、ボール部材26の重量、及びボール部材26と収容室27の内壁との間隙は、パイロット圧油供給管路16内の圧力が所定の圧力P1以上に設定されたときに、ボール部材26が分岐孔29から収容室27に流入したパイロット圧油を受けて上方へ移動するように予め設定されている。
【0046】
シートプラグ28は、管路として十分な開口面積を有する中空部28Aが軸方向に沿って形成され、収容室27からドレン管路18へ連通する管用テーパねじから成り、シートプラグ28の上部の開口は、開閉蓋30からケーシング12A内に挿入された工具が係合する形状に加工されている。また、シートプラグ28の外側の雄螺子(図示せず)がケーシング12A内において収容室27の上方部分に形成された雌螺子(図示せず)に螺合することにより、シートプラグ28がケーシング12A内の収容室27の上方に固定されている。
【0047】
また、収容室27は、ドレン管路18へ接続される上端に設けられ、上方へ移動したボール部材26が着座するように、例えばボール部材26の外径よりも小さな内径の円状に形成されたドレン管路側開口部27Aと、パイロット圧油供給管路16側へ接続される下端に設けられ、下方へ移動したボール部材26が着座しないように円筒軸から径方向へ偏芯して形成されたキリ穴状のパイロット圧油供給管路側開口部27Bとを含んでいる。このパイロット圧油供給管路側開口部27Bは分岐孔29の上端に接続されている。
【0048】
そして、パイロット圧油供給管路16内のエアを排出する際に、調圧部19によって設定される圧力の基準となる上述の所定の圧力P1は、例えば図4に示すようにバルブ12の常用制御圧力域の下限圧力Pminよりも小さい値に設定されている。なお、バルブ12の常用制御圧力域とは、スプール12Bがばね12Cの弾性力に打ち勝って動き始める最小圧力Pmin以上、かつスプール12Bがばね12Cの弾性力によって押し戻されて動かなくなる最大圧力Pmax以下の範囲を示す圧力領域である。すなわち、パイロット圧油供給管路16内の圧力がバルブ12の常用制御圧力域の下限圧力Pminのときには、スプール12Bの制御量Qは最小値Qminとなり、パイロット圧油供給管路16内の圧力がバルブ12の常用制御圧力域の上限圧力Pmaxのときには、スプール12Bの制御量Qは最大値Qmaxとなる。
【0049】
次に、パイロット圧油供給管路16内のエア抜き作業における開閉弁25の動作について詳細に説明する。
【0050】
油圧ショベル1が出荷前に組み立てられ、あるいは車体を分解して整備するメンテナンス作業が行われた際に、エア抜き作業を行う作業者がキャブ5内に乗車し、調圧部19のゲートロックレバー21Bをロック解除位置に操作すると、ゲートロックレバー用比例電磁弁22Bは、ゲットロックレバー21Bから出力された指令電流を入力することにより、完全に開いた状態となる。
【0051】
次に、作業者が操作レバー21Aを中立位置に保持すると、操作レバー用比例電磁弁22Aは、操作レバー21Aの中立位置の操作量に応じた最小値の指令電流を入力してパイロットポンプ15から吐出されたパイロット圧油を絞ることにより、パイロット圧油供給管路16内の圧力を作動油タンク17内の圧力よりも大きく、かつバルブ12の常用制御圧力域の下限圧力Pminよりも小さい値P1未満に減少させる。
【0052】
パイロット圧油供給管路16内の圧力が圧力P1未満に減少すると、開閉弁25においてボール部材26がパイロット圧油によって押し上げられず、自重により収容室27に案内されながら下方へ移動し、収容室27の下端に当接する。このとき、収容室27のパイロット圧油供給管路側開口部27Bが収容室27の円筒軸から径方向へ偏芯していることから、ボール部材26がパイロット圧油供給管路側開口部27Bに着座することができず、パイロット圧油供給管路側開口部27Bがボール部材26によって塞がれることがない。これにより、開閉弁25を開いた状態を保つことができる。
【0053】
そして、パイロット圧油供給管路16内の圧力は作動油タンク17内の圧力よりも大きいことから、パイロット圧油供給管路16内に残留したエアを、開閉弁25の分岐孔29、収容室27、シートプラグ28の中空部28A、及びドレン管路18を介してパイロット圧油と共に作動油タンク17へ排出することができる。
【0054】
次に、フロント作業機4を用いた掘削等の作業における開閉弁25の動作について詳細に説明する。
【0055】
パイロット圧油供給管路16内のエアが全て作動油タンク17へ排出された後、掘削等の作業を行うオペレータがキャブ5内に乗車し、調圧部19のゲートロックレバー21Bをロック解除位置に操作すると、ゲートロックレバー用比例電磁弁22Bは、ゲットロックレバー21Bから出力された指令電流を入力することにより、完全に開いた状態となる。
【0056】
次に、オペレータが操作レバー21Aを前位置又は後位置に操作すると、操作レバー用比例電磁弁22Aは、操作レバー21Aの前位置又は後位置の操作量に応じた指令電流を入力してパイロットポンプ15から吐出されたパイロット圧油を絞ることにより、パイロット圧油供給管路16内の圧力を指令電流に対応する圧力まで減少させる。これにより、パイロット圧油供給管路16内の圧力はバルブ12の常用制御圧力域の下限圧力Pminよりも大きくなるので、開閉弁25においてボール部材26は、パイロット圧油供給管路16内の圧力により収容室27に案内されながら上方へ移動し、収容室27の上端に当接する。
【0057】
このとき、ボール部材26が収容室27の上端のドレン管路側開口部27Aに着座するので、ドレン管路側開口部27Aがボール部材26によって塞がれることにより、開閉弁25を閉じた状態に保つことができる。従って、作業者が操作レバー21Aを操作して掘削等の作業を行っている間に、パイロット圧油供給管路16内のエアに起因する昇圧遅れが生じることがないので、バルブ12の円滑な動作を実現することができる。これにより、優れた操作性を得ることができる。
【0058】
このように構成した本発明の第1実施形態によれば、パイロット圧油供給管路16のエア抜き作業が行われ、開閉弁25が開いた状態になっても、パイロット圧油供給管路16と作動油タンク17の圧力が平衡状態とならず、パイロット圧油供給管路16内のエアをパイロット圧油によって開閉弁25からドレン管路18へ押し出すことができる。これにより、パイロット圧油供給管路16に残留したエアを容易に排出することができる。
【0059】
特に、本発明の第1実施形態は油圧ショベル1に適用されるものであり、油圧ポンプ11及びパイロットポンプ15を駆動するエンジン7aの回転速度は、最低回転速度で運転されるアイドル運転であっても定格回転速度の1/3〜1/2程度のパイロット圧油がパイロットポンプ15から吐出されることになる。本発明の第1実施形態では、このような油圧ショベル1に搭載されるエンジン7aの性能を考慮し、調圧部19によってパイロット圧油供給管路16内の圧力を的確に調整しているので、パイロットポンプ15からパイロット圧油が勢いよく吐出されても、パイロット圧油供給管路16内にエアが残留した状態で過度に加圧されて開閉弁25が閉じることがなく、パイロット圧油供給管路16内のエアを確実に排出することができる。このように、パイロット圧油供給管路16に対して十分なエア抜き効果を得ることができるので、油圧ショベル1の操作性を向上させることができる。
【0060】
また、本発明の第1実施形態は、開閉弁25を閉じる起点となるパイロット圧油供給管路16内の圧力として、バルブ12の常用制御圧力域の下限圧力Pminよりも小さい値P1に設定しているので、キャブ5内のオペレータが操作レバー21Aを操作して掘削等の作業を行っている間は、パイロット圧油供給管路16内の圧力がバルブ12の常用制御圧力域の範囲内に収まり、開閉弁25を閉じた状態に保つことができる。これにより、作業中にパイロット圧油が開閉弁25を通じてドレン管路18へ流出するのを抑制できるので、パイロット圧油により作動するバルブ12等の機器のエネルギー効率を向上させることができ、油圧ショベル1の作業性を高めることができる。
【0061】
また、本発明の第1実施形態は、開閉弁25は、パイロット圧油供給管路16内の圧力に応じて、収容室27内のボール部材26が鉛直方向へ移動して開閉するボールチェック弁構造から構成されているので、ゲートロックレバー21B及び操作レバー21Aによって開閉弁25の開閉状態を適切に制御することができる。これにより、パイロット圧油供給管路16内のエアの排出とパイロット圧油供給管路16からのパイロット圧油の流出の抑制をバランス良く行うことができる。
【0062】
さらに、開閉弁25は、バルブ12の内部に一体的に設けられているので、パイロット圧油供給管路16を流れるパイロット圧油の流路の終端側に位置している。そのため、パイロット圧油供給管路16の全域に残留するエアをパイロット圧油によって開閉弁25を通じてドレン管路18へ押し出すことができるので、パイロット圧油供給管路16内のエアを効果的に排出することができる。
【0063】
また、本発明の第1実施形態は、油圧ショベル1が出荷前に組み立てられ、あるいは車体を分解して整備するメンテナンス作業が行われた際に、エア抜き作業を行う作業者が、ゲートロックレバー21Bをロック解除位置に操作し、操作レバー21Aを中立位置に保持することにより、パイロット圧油供給管路16内の圧力をゲートロックレバー用比例電磁弁22B及び操作レバー用比例電磁弁22Aによって作動油タンク17内の圧力よりも大きく、かつバルブ12の常用制御圧力域の下限圧力よりも小さい値P1未満に迅速に設定することができる。これにより、パイロット圧油供給管路16のエア抜き作業を早期に完了できるので、オペレータがキャブ5内に乗車してから直ぐに掘削等の作業に取り掛かることができる。
【0064】
さらに、ゲートロックレバー用比例電磁弁22B及び操作レバー用比例電磁弁22Aは、ゲートロックレバー21B及び操作レバー21Aから出力された指令電流を入力して作動するので、ゲートロックレバー21B及び操作レバー21Aの操作に対してパイロット圧油供給管路16内の圧力を精度良く制御することができる。これにより、調圧部19によるパイロット圧油供給管路16の圧力制御に対する信頼性を高めることができる。
【0065】
また、本発明の第1実施形態では、シートプラグ28が管用テーパねじであるため、開閉蓋30からバルブ12のケーシング12A内に挿入した工具を用いてシートプラグ28をケーシング12A内の収容室27の上方に簡単に取り付けることができる。さらに、収容室27におけるボール部材26の鉛直方向への可動量は、ケーシング12A内のシートプラグ28の組付け位置によって決まるので、ケーシング12A内においてシートプラグ28が取り付けられる部分に対してシートプラグ28の基準径の位置寸法を管理するだけで、収容部27に対するシートプラグ28の位置決めを容易に行うことができる。
【0066】
すなわち、シートプラグ28は管用テーパねじであることから基準径の位置が定まっているので、シートプラグ28の位置決めは、シートプラグ28をケーシング12A内においてシートプラグ28が取り付けられる部分に規定量締め込むだけで良い。しかも、シートプラグ28は軸周りに1回転すると、軸方向へ1ピッチ進むので、シートプラグ28をケーシング12A内に強く締め付けすぎた場合でもシートプラグ28の位置を調整し易く、ボール部材26の鉛直方向における可動領域を十分に確保することができる。
【0067】
[第2実施形態]
図5は本発明の第2実施形態に係る油圧回路の構成を示す図である。
【0068】
図2に示すように、本発明の第1実施形態に係る調圧部19の操作部21が、操作量に応じた指令電流を出力するゲートロックレバー21B及び操作レバー21Aから構成されたのに対して、図5に示すように、本発明の第2実施形態に係る調圧部39の操作部41は、操作量に応じた圧力の作動油を供給するゲートロックレバー41B及び操作レバー41Aから構成されている。具体的には、これらのゲートロックレバー41B及び操作レバー41Aは、例えばパイロット圧油供給管路16のうちパイロット圧油の流れの上流側に接続され、パイロット圧油供給管路16を流通するパイロット圧油を操作量に応じて減圧し、減圧した作動油を供給するようにしている。
【0069】
また、本発明の第1実施形態に係る調圧部19の減圧弁22が、ゲートロックレバー用比例電磁弁22B及び操作レバー用比例電磁弁22Aから構成されたのに対して、本発明の第2実施形態に係る調圧部39の減圧弁42は、ゲートロックレバー41Bから供給された作動油の圧力を受けて作動し、パイロットポンプ15から吐出されたパイロット圧油を絞ることにより、パイロット圧油供給管路16内の圧力をゲートロックレバー41Bから供給された作動油の圧力に対応する圧力に減少させるゲートロックレバー用パイロット作動形減圧弁42Bと、操作レバー41Aから供給された作動油の圧力を受けて作動し、パイロットポンプ15から吐出されたパイロット圧油を絞ることにより、パイロット圧油供給管路16内の圧力を操作レバー41Aから供給された作動油の圧力に対応する圧力に減少させる操作レバー用パイロット作動形減圧弁42Aとから構成されている。その他の第2実施形態の構成は第1実施形態と同じであり、第1実施形態と重複又は対応する部分には同一の符号を付している。
【0070】
このように構成した本発明の第2実施形態によれば、上述した第1実施形態と同様の作用効果が得られる他、ゲートロックレバー41B及び操作レバー41Aから供給された作動油の圧力を受けて作動するゲートロックレバー用パイロット作動形減圧弁42B及び操作レバー用パイロット作動形減圧弁42Aにより、第1実施形態に係るゲートロックレバー用比例電磁弁22B及び操作レバー用比例電磁弁22Aと同様にパイロット圧油供給管路16内の圧力を的確に調整することができる。
【0071】
従って、本発明の第2実施形態は、ゲートロックレバー用パイロット作動形減圧弁42B及び操作レバー用パイロット作動形減圧弁42Aを用いてバルブ12の位置の切換制御を行う構成の油圧ショベルにも適用できるので、第1実施形態に係るゲートロックレバー用比例電磁弁22B及び操作レバー用比例電磁弁22Aを新たに追加しなくて済み、利便性に優れた装置を提供することができる。
【0072】
なお、上述した本発明の第1実施形態では、調圧部19の減圧弁22として、ゲートロックレバー用比例電磁弁22B及び操作レバー用比例電磁弁22Aを用い、本発明の第2実施形態では、調圧部39の減圧弁42として、ゲートロックレバー用パイロット作動形減圧弁42B及び操作レバー用パイロット作動形減圧弁42Aを用いた場合について説明したが、調圧部の減圧弁は、これらの比例電磁弁及びパイロット作動形減圧弁に限らず、その他の方式の減圧弁であっても良い。
【0073】
また、本発明の第1、第2実施形態では、パイロット圧油供給管路側開口部27Bは、パイロット圧油供給管路16側へ接続される収容室27の下端に設けられ、下方へ移動したボール部材26が着座しないように収容室27の円筒軸から径方向へ偏芯して形成された場合について説明したが、この場合に限らず、パイロット圧油供給管路側開口部27Bは、例えば長穴等の形状に形成されることにより、下方へ移動したボール部材26が着座しなければ、収容室27の円筒軸から径方向へ偏芯していなくても良い。
【符号の説明】
【0074】
1 油圧ショベル(建設機械)
4 フロント作業機
4A ブーム
4a ブームシリンダ
4B アーム
4b アームシリンダ
4C バケット
4c バケットシリンダ
7a エンジン
10 油圧回路
11 油圧ポンプ
12 バルブ(制御弁)
12A ケーシング
12B スプール
12C ばね
12D 作用部
15 パイロットポンプ
16 パイロット圧油供給管路
17 作動油タンク
18 ドレン管路
19,39 調圧部
21,41 操作部
21A,41A 操作レバー
21B,41B ゲートロックレバー
22,42 減圧弁
22A 操作レバー用比例電磁弁
22B ゲートロックレバー用比例電磁弁
25 開閉弁
26 ボール部材
27 収容室
27A ドレン管路側開口部
27B パイロット圧油供給管路側開口部
28 シートプラグ
28A 中空部
29 分岐孔
30 開閉蓋
42A 操作レバー用パイロット作動形減圧弁
42B ゲートロックレバー用パイロット作動形減圧弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7