(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6343277
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】鉄筋コンクリート床を構築するための焼結した発泡ポリスチレンの組み立て式要素
(51)【国際特許分類】
E04B 5/32 20060101AFI20180604BHJP
E04B 1/16 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
E04B5/32 A
E04B1/16 E
【請求項の数】9
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-516722(P2015-516722)
(86)(22)【出願日】2013年6月11日
(65)【公表番号】特表2015-523480(P2015-523480A)
(43)【公表日】2015年8月13日
(86)【国際出願番号】IB2013054772
(87)【国際公開番号】WO2013186698
(87)【国際公開日】20131219
【審査請求日】2016年6月7日
(31)【優先権主張番号】MI2012A001022
(32)【優先日】2012年6月12日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】514316363
【氏名又は名称】ディーエスティー コンストラクションズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オルシーニ ピエルルイジ
(72)【発明者】
【氏名】ロベッリーニ マルコ
【審査官】
富士 春奈
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2008/0041004(US,A1)
【文献】
国際公開第2006/040624(WO,A1)
【文献】
米国特許第05893248(US,A)
【文献】
特表平09−509992(JP,A)
【文献】
特開2010−037892(JP,A)
【文献】
特開2006−214212(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/079355(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0313990(US,A1)
【文献】
国際公開第2013/019134(WO,A1)
【文献】
特表2012−522661(JP,A)
【文献】
特開平03−115333(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/00−1/36
E04B 5/00−5/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート床を構築するための、焼結した発泡ポリスチレンの組み立て式要素であって、前記要素に自立特性を与えるために、内部に金属部(A)が埋め込まれた発泡ポリスチレン体を備えるタイプであり、前記発泡ポリスチレン体は、任意の長さと、実質的に矩形の部分とを有し、該部分の底部から横方向に薄い翼(4)が突出しており、翼(4)は、前記発泡ポリスチレン体の主たる内側部分(1)よりも厚さが小さい、焼結した発泡ポリスチレンの組み立て式要素であって、
前記金属部(A)の全体的な高さ(h)は、前記翼(4)の高さと実質的に同じであり、前記発泡ポリスチレン体には、1つの前記金属部(A)に対して横方向に1つ以上の凹部(2)がさらに設けられていることを特徴とする、焼結した発泡ポリスチレンの組み立て式要素。
【請求項2】
前記金属部(A)は、端で接続される平面を有するΩ形状の部分を備える、請求項1に記載の焼結した発泡ポリスチレンの組み立て式要素。
【請求項3】
横方向の前記凹部(2)は、実質的に同じ大きさの縦方向の窪み(3)を備え、前記窪み(3)は、前記翼(4)の上部に、2つの隣り合う要素(E)の間の接合領域に一致するように形成される、請求項1または2に記載の焼結した発泡ポリスチレンの組み立て式要素。
【請求項4】
横方向の前記凹部(2)は、前記金属部(A)に垂直な方向を有する、請求項3に記載の焼結した発泡ポリスチレンの組み立て式要素。
【請求項5】
2つの隣り合う横方向の凹部(2)の間の距離は、前記要素(E)の内側部分(1)の幅と等しい、請求項4に記載の焼結した発泡ポリスチレンの組み立て式要素。
【請求項6】
前記金属部(A)は、端で接続される平面を有するΩ形状の部分を備え、前記要素(E)の底面に平行な2つの終端面を有し、該終端面の一方は、前記発泡ポリスチレン体の外側に隣接し、該終端面の他方は、前記発泡ポリスチレン体の内側に隣接している、請求項2に記載の焼結した発泡ポリスチレンの組み立て式要素。
【請求項7】
前記金属部(A)の全体的な高さ(h)が、前記翼(4)の高さよりも僅かに大きい、請求項6に記載の焼結した発泡ポリスチレンの組み立て式要素。
【請求項8】
互いに隣り合うように配列された請求項3〜5のいずれかに記載の複数の焼結した発泡ポリスチレンの組み立て式要素から構成される打設面と、縦方向の前記窪み(3)および横方向の前記凹部(2)の内部に設けられた補強ロッド(F)と、を備える鉄筋コンクリート床。
【請求項9】
互いに隣り合うように配列された請求項3〜5のいずれかに記載の複数の焼結した発泡ポリスチレンの組み立て式要素から構成される打設面と、縦方向の前記窪み(3)および横方向の前記凹部(2)の内部に設けられた補強ロッド(F)と、前記要素(E)の前記発泡ポリスチレン体の前記内側部分(1)の上部に設けられた補強メッシュ(R)と、を備える鉄筋コンクリート床。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床の構築に用いられる絶縁材料で作られた組み立て式要素に関し、特に、鉄筋コンクリート床を構築するための焼結した発泡ポリスチレンで作られた組み立て式要素に関する。さらに本発明は、上記組み立て式要素を床に互いに隣接して配置するように用いて構築された鉄筋コンクリート床に関する。
【背景技術】
【0002】
暫定的な打設面(casting plane)を準備するために、伝統的なレンガ要素の代わりに発泡プラスチック材料(好ましくは焼結した発泡ポリスチレン)からなる要素を用いて、鉄筋コンクリート製の床を構築する技術は、建築業界において長年知られている。
【0003】
床の構築技術は、両方の場合において実質的に同一であり、複数の自立要素を横に並べて(好ましくは、積み重ねて、又は相互に接続して)、それらの端部を周囲の壁または柱に保持することにより、上記の一時的な打設面を形成することを提供する。打設を完了する前に、隣接した発泡ポリスチレンからなる要素のペアの間で、同様に形成された縦方向の溝に一致するように、補強ロッドが完全に従来の方法で配列される。その結果、一旦、打設物が生じ、発泡ポリスチレン要素および補強ロッドの両方の内部に、床が埋め込まれる。補強ロッドが一致するように、縦方向の根太が形成される。一旦コンクリートが固まると、根太は床に機械的強度を与える。機械的強度が同じであるレンガ要素で形成された床に比べ、発泡ポリスチレン要素を有する床は、重量が著しく小さく、断熱係数が著しく大きい。
【0004】
特許文献1は、ポリスチレンからなる組み立て式要素を開示した、上述の技術の代表的な文献である。該文献では、上記要素を組み立てる際に、Z形状の縦方向の金属部が埋め込まれ、金属部が自立的な特徴を提供する。より底部側のL形状部は、組み立て式要素の底面に対向して保持される。その結果、L形状部は、溶接によって金属を補強メッシュに固定するために使用することができる。そのようなメッシュによって、壁土のような底部の被覆の固定が容易になり、発泡ポリスチレン材料が高温によって溶けるかもしれない火事の場合であっても、構造物の全体的な機械的強度が保証される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第98/16703号
【特許文献2】国際公開第2005/121467号
【特許文献3】国際公開第2006/040624号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の基本的な課題は、上記タイプの組み立て式のポリスチレン要素であって、上述の鉄筋コンクリートの縦方向の根太に加え、横方向の根太を構築できるようにするポリスチレン要素を提供することであり、これにより、著しく良好な特性を持った、いわゆる平面床を形成する2方向において、床の機械的強度が同一となる。
【0007】
実際、以下で明らかになるように、同じ課題が従来技術において既に存在している。しかしながら、解決するために必然的に生じる構造の複雑化と、敷設する際に依然として高度な熟練を必要とする組立工法の不十分な水準との両方によって、課題の解決はとても満足できるものではない。
【0008】
特許文献2には、特許文献1について上述したものに完全に類似した構造が開示されており、必須要素が全て開示されている。しかしながら、ポリスチレン要素を自立させる金属部はL字形状であり、金属部の上端が自身の上に折り重ねられているため、金属部がわずかに厚くなってしまう。第1の実施形態では、上記要素は、上述したものと概念的に同一であり、縦方向の鉄筋コンクリート根太のみを有する床を構築することを可能にする。第2の実施形態では、金属部は、ポリスチレン要素の製造工程の間は供給されないが、その後、該要素の(例えば加熱された糸による)機械的切断工程を経てポリスチレン中に形成された各々のシートの中に挿入される。そのため、この別々の工程の製造方法によって、ポリスチレン要素に一連の横溝を形成することができ、垂直な2方向に延びる鉄筋コンクリート根太を有する平面床を最終的に得るために、補強ロッドをポリスチレン要素中に配列することができる。
【0009】
しかしながら、特許文献2において提案されている解決策は、明らかな複雑化、および、2つの製造工程による高コスト化という、2つの著しい技術的欠点を有する。第1の欠点は、(上記材料を、流体状態において金属部の翼に存在する穴に貫通させる、同時実施の製造工程の代わりに生じるために)金属部が発泡材料に安全に固定できず、単に挿入されることに起因する。そのため、金属部と発泡材料との間が密接に接合できない。この接合は、輸送および敷設作業の間と、床構築工程の間との両方における相互負荷の均一で適切な分散を引き起こす特性のみを有する。さらに、第2の顕著な使用上の欠点は、補強ロッドを横方向の溝に設ける作業が、当然ながら、金属部を配置して上記溝の中に複数のバリアを形成した後でなければ完了できないことに起因する。そのため、標準的な建築敷地手順によれば、上記形成された溝にロッドを配列することができない。その代わりに、連続する上記溝に設けられた異なる金属部の翼に形成された穴に、ロッドを一つずつ挿入しなければならない。よって、常に作業が可能であるわけではない。それは、構築中の床に隣接する空きスペースが必要であり、該床は、少なくとも床自体の大きさと同じ大きさを有し、いかなる場合も、非常に長期間の、困難で労働集約型の作業であるからである。
【0010】
特許文献3は、同じ課題を有しているが、異なるタイプの解決策を提供している。その解決策では、ポリスチレン要素を2つの個別の層に分割し、それらを、現場での架設時のみマウントする。一方のベース層は、薄い連続した面を形成し、自立性を与える金属部を埋め込む。他方の層は、個別の平行六面体要素から構成される。該要素は、ベース層上に格子状のパターンで一つずつ設けられ、ベース層から突出する金属部の一部に強引に挿入され、その結果、補強ロッドが配列される縦方向の溝と横方向の溝との両方の間から離間する。この解決策は、特許文献2における上述の欠点、すなわち、横からの補強ロッドの挿入の欠点を解消するが、その代わりに、上部ポリスチレン層の金属部への固定が不十分であるという欠点、および、そのような層を設けることが非常に複雑であり、形成された横方向の溝が一定の幅を有し完全に一直線となるように、個別の平行六面体要素を、なるべく適当な型板を用いて、縦方向に正確に配置しなければならないという欠点を有する。
【0011】
したがって、本発明の目的は、自立タイプの組み立て式のポリスチレン要素であって、2つの直交する方向に鉄筋コンクリート根太を備えるが、従来技術の上述の欠点に影響されない平面床を構築する、という上述の課題を解決するポリスチレン要素を提供することである。
【0012】
特に、本発明の第1の目的は、補強金属部が組み立て工程の間に発泡材料に完全に埋め込まれている、上述のタイプの組み立て式のポリスチレン要素を提供することである。
【0013】
本発明の第2の目的は、所望の長さで縦方向に延びるモジュールにおいて、既に完全に達成され利用できる、上述のタイプの組み立て式のポリスチレン要素を提供することである。これにより、他の更なるマウント作業、仕上げ作業、または、追加的な物体の挿入を必要とすることなく、そのような要素を、他の同様の要素に横に並んで直接取り付けることができ、上記の横方向の溝を理想的に形成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そのような目的は、添付された主な請求項において規定された特徴を有する組み立て式の発泡ポリスチレン要素によって達成される。従属請求項では、本発明の他の好ましい特徴が記述される。
【0015】
本発明の更なる特徴および利点は、下記の本発明の好ましい実施形態の詳細な説明からさらに明らかになるであろう。実施形態は、限定的ではない例として純粋に提供され、添付の図面に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る組み立て式のポリスチレン要素の概略斜視図である。
【
図3】床を構築するための打設面を提供するために、横に並んで配置された複数の組み立て式要素の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1および
図2に明確に示されるように、本発明の組み立て式要素Eの各々は、単一の焼結した発泡ポリスチレン体からなる。上述の特許文献1の公知技術と完全に同様の方法で、2つの金属部Aが組み立て式要素Eの内部に埋め込まれ、これにより、該要素に自立特性が与えられる。特許文献1の全ての内容は、参照により本明細書に組み込まれる。上記ポリスチレン体は、任意の長さと、実質的に矩形の部分とを有している。該部分の下方から横方向に翼4が突出しており、翼4は、ポリスチレン体の主たる内側部分1よりも厚さが小さい。
【0018】
しかしながら、本発明の組み立て式要素は、従来技術と比較して、金属部AがΩ形状の部分を有し、好ましくは、端で接続される平面を有していることを特徴としている。また、本発明の組み立て式要素は、上記Ω形状の部分の全体的な高さhが、要素Eの翼4の厚さと同一、またはそれよりも僅かに大きいことを特徴としている。この特有の構造によって、各要素Eの内部に、横方向の凹部2を形成することができる。凹部2は、金属部Aの上部まで延びる程度の深さである。このように、凹部2は、幅および深さが互いに完全に等しい。2つの隣り合う要素Eの間の接合領域には、縦方向の窪み3が形成される。従来技術の教示によれば、凹部2および窪み3によって、組み立て式要素Eの内側部分1が規定される。内側部分1は、凹部2のピッチが部分1の幅に等しいか否かによって、正方形状または矩形状となる。
【0019】
多数の要素Eが互いに隣接して配置されると、直交する溝2又は3のネットワークが形成される。溝2又は3の内部に、補強ロッドFを上から容易かつ迅速に配置することができる。好ましくは、金属補強メッシュRが要素Eの内側部分の上に単純に配置される。この時点で、横に並んだ要素Eからなる打設面の上に、コンクリート打設体(concrete cast)Cが、縦方向および横方向に、鉄筋コンクリートを備える所望の平面床を構築し、これにより本発明の目的が達成される。
【0020】
上述のように、金属部AはΩ形状の部分を有し、正確に言えば、端で接続される5つの平面から構成される。金属部の2つの終端面および中央面は、要素Eの底面に平行である一方、2つの中間面は、該底面に対し垂直または適度に傾いている。さらに、一方の終端面は、既知の方法による金属補強メッシュの固定のために使用できるように、発泡ポリスチレン体の外側に隣接している。これに対し、他方の終端面は、発泡ポリスチレン体に埋め込まれている。
【0021】
上記の説明から明らかなように、本発明の組み立て式の発泡ポリスチレン要素Eは、設定された目的を完全に達成している。実際のところ、それは、全ての細部において、所望の長さに完全に組み立てられた要素であり、それゆえに、迅速かつ容易に自動化された方法で設置することができる。そのような要素Eにおいて、自立特性を与える金属部Aは、発泡ポリスチレン体に完全に埋め込まれており、それゆえに、同一のものが完全に不可欠である。多数の要素Eを隣接して配置することによって、(さらなる作業を必要とせず、従来の方法で単純に上方から補強ロッドFを積むだけで)二方向に補強された根太を有する平面床を構築するための直交した溝を備える、既に準備された打設面を得ることができる。
【0022】
本発明は、単なる例示的な実施形態を示す上述の特定の構成に限定されるように解釈されてはならず、添付の請求項によって規定される本発明の保護範囲を逸脱しない限り、当業者が想到し得る全ての範囲内で、多くの変更が可能である。