特許第6343280号(P6343280)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6343280アンビルローラ及びこれを備えた超音波溶着装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6343280
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】アンビルローラ及びこれを備えた超音波溶着装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/08 20060101AFI20180604BHJP
【FI】
   B29C65/08
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-522891(P2015-522891)
(86)(22)【出願日】2014年6月13日
(86)【国際出願番号】JP2014065807
(87)【国際公開番号】WO2014200103
(87)【国際公開日】20141218
【審査請求日】2017年4月12日
(31)【優先権主張番号】特願2013-125942(P2013-125942)
(32)【優先日】2013年6月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591040708
【氏名又は名称】株式会社瑞光
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100168321
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 敦
(72)【発明者】
【氏名】藤田 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】中村 秀幸
【審査官】 辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】 特表平10−513128(JP,A)
【文献】 実開昭48−75293(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C65/00−65/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被溶着物を保持する保持部材と、前記保持部材に保持された被溶着物に超音波振動を与える超音波ホーンと、前記被溶着物を前記超音波ホーンとの間で溶着するためのアンビルローラと、前記アンビルローラが前記保持部材に対して移動可能となり、かつ、前記保持部材に対する前記アンビルローラの移動に応じて前記アンビルローラが前記被溶着物に対して転がり接触可能となるように回転軸を介して前記アンビルローラを支持する支持機構とを有する超音波溶着装置に用いられる前記アンビルローラであって、
前記回転軸を介して前記支持機構に回転可能に支持される被支持部と、
前記被溶着物に対して転がり接触する間に前記超音波ホーンとの間で前記被溶着物を溶着可能な溶着面を有する外周部と、
前記被支持部と前記外周部との間において前記回転軸の軸方向の厚みが前記外周部の厚みよりも小さくなるように形成された薄肉部と、
前記薄肉部に設けられた防振材とを備えている、アンビルローラ。
【請求項2】
前記防振材は、前記薄肉部により画定される前記外周部における溶着面に対する裏側面に設けられている、請求項1に記載のアンビルローラ。
【請求項3】
前記薄肉部は、前記回転軸回りの全周に亘り設けられ、
前記防振材は、前記裏側面の前記回転軸回りの全周に亘り設けられている、請求項2に記載のアンビルローラ。
【請求項4】
前記防振材は、前記薄肉部の一部の範囲のみに設けられている、請求項2又は3に記載のアンビルローラ。
【請求項5】
前記被支持部の前記回転軸の軸方向の厚みは、前記薄肉部の厚みよりも大きい、請求項1〜4の何れか1項に記載のアンビルローラ。
【請求項6】
前記被支持部の厚みは、前記外周部の厚みよりも小さい、請求項5に記載のアンビルローラ。
【請求項7】
被溶着物を保持する保持部材と、
前記保持部材に保持された被溶着物に超音波振動を与える超音波ホーンと、
前記被溶着物を前記超音波ホーンとの間で溶着するための、請求項1〜6の何れか1項に記載のアンビルローラと、
前記アンビルローラが前記保持部材に対して移動可能となり、かつ、前記保持部材に対する前記アンビルローラの移動に応じて前記アンビルローラが前記被溶着物に対して転がり接触可能となるように回転軸を介して前記アンビルローラを支持する支持機構とを備えている、超音波溶着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被溶着物を超音波溶着するために用いられるアンビルローラ及びこれを備えた超音波溶着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、アンビルと、超音波ホーンとを備え、アンビルと超音波ホーンとの間に被溶着物が挟まれた状態で超音波ホーンに超音波振動を与えることにより前記被溶着物を溶着する超音波溶着装置が知られている。
【0003】
この種の超音波溶着装置としては、被溶着物を保持する保持部材と、保持部材に保持された被溶着物を超音波ホーンとの間で溶着する溶着位置と被溶着物から離間した離間位置との間で保持部材に対して移動可能なアンビルローラとを備えたものも知られている(例えば、特許文献1)。
【0004】
特許文献1に記載のアンビルローラは、その移動時に被溶着物に対して転がり接触可能となるように規定の回転軸回りに回転可能に支持されている。
【0005】
特許文献1に記載の超音波溶着装置のように、被溶着物に対してアンビルローラを移動可能に支持する場合、支持機構に与える負担及び動力の低減を図るためにアンビルローラの軽量化が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3988835号公報(特に、図8
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、軽量化されたアンビルローラ及びこれを備えた超音波溶着装置を提供することにある。
【0008】
本発明は、被溶着物を保持する保持部材と、前記保持部材に保持された被溶着物に超音波振動を与える超音波ホーンと、前記被溶着物を前記超音波ホーンとの間で溶着するためのアンビルローラと、前記アンビルローラが前記保持部材に対して移動可能となり、かつ、前記保持部材に対する前記アンビルローラの移動に応じて前記アンビルローラが前記被溶着物に対して転がり接触可能となるように回転軸を介して前記アンビルローラを支持する支持機構とを有する超音波溶着装置に用いられる前記アンビルローラであって、前記回転軸を介して前記支持機構に回転可能に支持される被支持部と、前記被溶着物に対して転がり接触する間に前記超音波ホーンとの間で前記被溶着物を溶着可能な溶着面を有する外周部と、前記被支持部と前記外周部との間において前記回転軸の軸方向の厚みが前記外周部の厚みよりも小さくなるように形成された薄肉部と、前記薄肉部に設けられた防振材とを備えている、アンビルローラを提供する。
【0009】
また、本発明は、被溶着物を保持する保持部材と、前記保持部材に保持された被溶着物に超音波振動を与える超音波ホーンと、前記被溶着物を前記超音波ホーンとの間で溶着するための前記アンビルローラと、前記アンビルローラが前記保持部材に対して移動可能となり、かつ、前記保持部材に対する前記アンビルローラの移動に応じて前記アンビルローラが前記被溶着物に対して転がり接触可能となるように回転軸を介して前記アンビルローラを支持する支持機構とを備えている、超音波溶着装置を提供する。
【0010】
本発明によれば、アンビルローラを軽量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明に係る超音波溶着装置が用いられる使い捨ておむつの製造方法を説明するための工程図である。
図2図2は、図1に示す溶着工程を行うための本発明の第1実施形態に係る超音波溶着装置の概略構成を示す正面図である。
図3図3は、図2のIII−III線断面図である。
図4図4は、図3のIV−IV線断面図である。
図5図5は、図4に示すアンビルローラの正面断面図である。
図6図6は、本発明の第2実施形態に係る超音波溶着装置のアンビルローラを示す図5相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0013】
図1を参照して、使い捨ておむつ20は、着用時に、着用者の腹部に配置される前腹部20aと、着用者の臀部に配置される後背部20bと、前腹部20aから着用者の両脚部の間を通って後背部20bまで延びる股下部20cとを備えている。
【0014】
前腹部20aの両側縁部及び後背部20bの両側縁部は、前腹部20aと後背部20bとが環状に連結されるように2箇所の溶着部Sによって互いに溶着されている。
【0015】
以下、使い捨ておむつ20の製造方法について説明する。
【0016】
<搬送工程P1>
搬送工程P1では、特定方向に延びるシートWをその長手方向に沿って搬送する。以下、シートWの流れ方向を横方向とし、図1において横方向と直交する方向を縦方向として説明する。
【0017】
シートWは、着用時に着用者の体表側に向く内側シートと、着用時に着用者の外側を向く外側シートと、これら内側シートと外側シートとの間に挟まれた弾性部材とを有している。
【0018】
内側シートは、液体透過性を有する不織布シート及び/又はメッシュシートにより構成されている。外側シートは、内側シートと同材質、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、又は撥水性及び通気性を有する不織布により構成されている。
【0019】
弾性部材は、ポリウレタン、天然ゴム、又は熱可塑性樹脂からなるシート又は糸を用いて構成される。
【0020】
<レッグホール形成工程P2>
レッグホール形成工程P2では、シートWの縦方向の中央位置にレッグホールLを形成する。
【0021】
シートWにおける2つのレッグホールLの間の領域は、股下部20cに相当する部分である。また、シートWにおける股下部20cに相当する部分の縦方向の両側位置は、それぞれ前腹部20a及び後背部20bに相当する部分である。
【0022】
<吸収体接合工程P3>
吸収体接合工程P3では、シートWにおける2つのレッグホールLの間の位置に吸収体Aを接合する。
【0023】
吸収体Aは、液体透過性を有する透過性シートと、撥水性及び通気性を有する撥水シートと、透過性シートと撥水シートとの間に挟まれた吸収性コアとを備えている。
【0024】
透過性シートは、液体透過性を有する不織布シート及び/又はメッシュシートにより構成されている。撥水シートは、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、又は撥水性及び通気性を有する不織布により構成されている。
【0025】
吸収性コアは、粉砕されたパルプ又はこれに高吸水性ポリマーを混合したものを積層して成型される。
【0026】
なお、シートW上に吸収体Aを接合する方法について説明しているが、シートWの内側シートと外側シートとの間に吸収性コアを挟んで接合することもできる。この場合、内側シートは、液体透過性を有する不織布シート及び/又はメッシュシートにより構成されている。外側シートは、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、又は撥水性及び通気性を有する不織布により構成されている。
【0027】
<二つ折り工程P4>
二つ折り工程P4では、吸収体Aが載置されたシートW(連続体)を縦方向に二つ折りにする。これにより、シートWにおける前腹部20aに相当する部分と後背部20bに相当する部分とが重ね合わされる。
【0028】
<溶着工程P5>
溶着工程P5では、二つ折りにされたシートWにおける前腹部20aの側縁部に相当する部分と後背部20bの側縁部に相当する部分とを超音波溶着する。
【0029】
具体的に、溶着工程P5では、後述する切断工程P6で切断する範囲として予め設定された切断範囲を挟む間隔D2を空けて、シートWの2箇所を同時に超音波溶着する。
【0030】
なお、2つの溶着部Sは、前腹部20aの側縁部に相当する部分及び後背部20bの側縁部に相当する部分の縦方向の溶着範囲D1にそれぞれ形成されている。
【0031】
<切断工程P6>
切断工程P6では、溶着工程P5で形成された2つの溶着部Sの間で縦方向に延びる切断線に沿ってシートWを切断する。これにより、シートW(連続体)が使い捨ておむつ20ごとに切り分けられる。
【0032】
以下、図2を参照して、溶着工程P5を行なう第1実施形態に係る超音波溶着装置1について説明する。
【0033】
超音波溶着装置1は、二つ折り工程P4で二つ折りにされたシートWを導入する導入ローラ2と、導入ローラ2により導入されたシートWを溶着する溶着ドラム3と、溶着ドラム3により溶着されたシートWを導出する導出ローラ4とを備えている。
【0034】
溶着ドラム3は、導入ローラ2により導入されたシート(被溶着物)Wを保持するシート保持ドラム(保持部材)5と、シート保持ドラム5に設けられた6つの超音波ホーン6と、各超音波ホーン6との間でそれぞれシートWを超音波溶着するための6つのアンビルユニット7と、各アンビルユニット7を保持する筒状のアンビル保持ドラム8(図3参照)と、アンビル保持ドラム8の内側に設けられたカムドラム9(図3参照)とを備えている。
【0035】
図2及び図3を参照して、シート保持ドラム5は、シートWをその外周面に保持した状態で回転中心C1回りに回転可能である。また、シート保持ドラム5には、回転中心C1回りで等間隔に6つ凹溝5aが形成されている。各凹溝5aは、シート保持ドラム5の外向きに開くとともに回転中心C1に沿って延びている。
【0036】
各超音波ホーン6は、シート保持ドラム5に保持されたシートWに超音波振動を与える。具体的に、各超音波ホーン6は、その溶着面6aがシート保持ドラム5に保持されたシートWに内側から接触するように、凹溝5a内にそれぞれ設けられている。
【0037】
各アンビルユニット7は、回転中心C1回りで各超音波ホーン6と同じ位置にそれぞれ設けられている。各アンビルユニット7は、それぞれ同様の構成を有するため、1つのアンビルユニット7の構成を説明し、他のアンビルユニット7の説明を省略する。
【0038】
アンビルユニット7は、超音波ホーン6との間でシートWを溶着するためのアンビルローラ10と、シート保持ドラム5に対するアンビルローラ10の移動に応じてアンビルローラ10がシートWに対して転がり接触可能となるように回転軸12aを介してアンビルローラ10を回転可能に保持する保持機構11とを備えている。
【0039】
図3及び図4に示すように、保持機構11は、アンビルローラ10を保持する本体部12と、本体部12から回転中心C1に向けて延びるカム突起14と、本体部12からカム突起14及び回転中心C1と直交する方向(図4の左右方向)で反対向きにそれぞれ突出するとともに回転中心C1に沿って延びる一対の係合突起15とを備えている。
【0040】
本体部12は、アンビル保持ドラム8の外周面に立設された一対のレール17間に設けられている。各レール17には、相手のレール17側に開くとともに回転中心C1に沿って延びる係合溝17aが形成されている。本体部12の各係合突起15は、アンビル保持ドラム8に対して回転中心C1に沿って移動可能となるように、それぞれ係合溝17aに係合している。
【0041】
ここで、筒状のアンビル保持ドラム8には、その周壁を貫通するとともに回転中心C1に沿って延びるスリット16aが設けられている。本体部12のカム突起14は、スリット16aを通じてアンビル保持ドラム8の内側に挿入されている。
【0042】
アンビル保持ドラム8内には、カムドラム9が設けられ、このカムドラム9の外周面には、カム溝9aが形成されている。カム突起14の先端部は、カム溝9a内に挿入されている。カム溝9aは、カムドラム9に対してアンビル保持ドラム8が回転することに応じてアンビルユニット7が回転中心C1に沿って移動するようにカム突起14を案内する。
【0043】
ここで、シート保持ドラム5とアンビル保持ドラム8とは互いに固定され、両者は、一体的に回転中心C1回りに回転する。一方、カムドラム9の回転位置は、シート保持ドラム5及びアンビル保持ドラム8の回転にかかわらず固定されている。したがって、本体部12は、シート保持ドラム5及びアンビル保持ドラム8の回転中心C1回りの回転に応じて回転中心C1に沿って移動する。
【0044】
つまり、保持機構11及びアンビル保持ドラム8は、アンビルローラ10がシート保持ドラム5に対して回転中心C1に沿って移動可能となり、かつ、シート保持ドラム5に対するアンビルローラ10の移動に応じてアンビルローラ10がシートWに対して転がり接触可能となるように回転軸12aを介してアンビルローラ10を回転可能に支持する支持機構に相当する。
【0045】
具体的に、図2及び図3の最も下に位置するアンビルユニット7においては、アンビルローラ10がシート保持ドラム5に保持されたシートWから離間した離間位置に配置される。この状態で、シート保持ドラム5が図2の反時計回りに回転することに応じて、アンビルユニット7は、回転中心C1に沿ってシートWに近づく方向に移動する。
【0046】
アンビルユニット7が図2及び図3の最も上の位置まで変位すると、アンビルローラ10は、シートWを横断する。この状態からさらにシート保持ドラム5が反時計回りに回転すると、アンビルユニット7は、離間位置へ向けた移動を開始する。
【0047】
つまり、超音波溶着装置1では、図2の範囲E1の間にアンビルローラ10がシートW上を図1の溶着範囲D1において往復移動し、この往復移動の間にシートWが溶着される。この範囲E1におけるシート保持ドラム5に対するアンビルローラ10の位置が溶着位置に相当する。
【0048】
以下、図3及び図5を参照して、アンビルローラ10について説明する。
【0049】
アンビルローラ10は、金属製(例えば、高クロム鋼や高炭素鋼)のローラである。
【0050】
また、アンビルローラ10は、回転軸12aを介して保持機構11に回転可能に支持される被支持部19と、シートWに対して転がり接触する間に超音波ホーン6との間でシートWを溶着可能な外周部18と、被支持部19と外周部18との間に設けられた薄肉部21と、薄肉部21に設けられた2つの防振材22とを備えている。
【0051】
被支持部19は、溶着位置と離間位置との間のアンビルローラ10の移動に伴うシートWに対するアンビルローラ10の転がり接触を許容するために保持機構11に対して回転軸12aを介して回転可能に支持されるボス部分である。被支持部19には、回転軸12aを挿入するための貫通穴19aが形成されている。
【0052】
外周部18は、シートWに対して転がり接触する間に超音波ホーン6との間でシートWを溶着可能な溶着面を有する。具体的に、外周部18は、その直径方向の外側に突出するとともに回転軸12a回りの全周に亘って延びる一対の溶着部18aを有する。これら溶着部18aの間隔は、図1の溶着部Sの間隔D2に対応する。つまり、各溶着部18aの外周面は、超音波ホーン6との間でシートWを溶着する溶着面に相当する。
【0053】
薄肉部21は、回転軸12aの軸方向の両側からアンビルローラ10を凹ませることにより形成された部分である。
【0054】
この薄肉部21の回転軸12aの軸方向の厚み寸法D4は、被支持部19の厚み寸法D5及び外周部18の厚み寸法D3よりも小さい。また、被支持部19の厚み寸法D5は、外周部18の厚み寸法D3よりも小さい。
【0055】
これにより、単に貫通穴19aのみが形成された円筒状のアンビルローラと比較して、アンビルローラ10の軽量化を図ることができる。
【0056】
また、薄肉部21は、回転軸12a回りの全周に亘り設けられている。
【0057】
防振材22は、弾性変形可能な材料(例えば、シリコンゴム、合成ゴム等のゴム材料又は合成樹脂材料等)により形成され、当該防振材22が弾性変形することによってアンビルローラ10の振動を低減させる。
【0058】
ここで、薄肉部21により画定される外周部18における溶着面に対する2つの裏側面18bに対して2つの防振材22がそれぞれ貼り付けられている。ここで、各裏側面18bは、回転軸12aの軸線に対して20°の角度で傾斜しており、各防振材22は、回転軸12a回りの全周に亘り各裏側面18bに沿って設けられている。
【0059】
また、各防振材22は、薄肉部21の一部の範囲のみに設けられている。つまり、各防振材22は、回転軸12a回りの全周に亘り一定の厚みに形成され、各防振材22と被支持部19との間には隙間が形成されている。
【0060】
以上説明したように、薄肉部21に設けられた防振材22によってアンビルローラ10に生じる振動を抑えることができるため、薄肉部21を形成することによるアンビルローラ10の軽量化とこの軽量化に伴う騒音発生の防止との両立を図ることができる。
【0061】
また、前記実施形態によれば、次の効果を奏する。
【0062】
前記実施形態によれば、超音波ホーン6から超音波振動を受ける溶着面(溶着部18aの外周面)に対する裏側面18bに防振材22が設けられているため、振動源の直近位置で効率的にアンビルローラ10の防振を図ることができる。
【0063】
前記実施形態によれば、回転軸12a回りの全周に亘り薄肉部21が設けられていることにより、回転軸12a回りのアンビルローラ10の重量の均等化を図ってアンビルローラ10の回転安定性を高めることができる。
【0064】
したがって、前記実施形態によれば、アンビルローラ10の回転安定性による騒音低減効果と、回転軸12a回りの全周に亘り設けられた防振材22による騒音低減効果とによって、より確実にアンビルローラ10の振動による騒音の発生を低減することができる。
【0065】
前記実施形態によれば、薄肉部21の一部の範囲のみに防振材22が設けられているため、余剰の防振材によってアンビルローラ10の重量が増加するのを抑制することができる。
【0066】
前記実施形態によれば、被支持部19の厚み寸法D5が薄肉部21の厚み寸法D4よりも大きいため、薄肉部21によってアンビルローラ10の軽量化を図りつつ、回転軸12aによって支持される被支持部19の強度を確保することができる。
【0067】
ここで、被支持部19の厚み寸法D5を外周部18の厚み寸法D3よりも小さくすることにより、被支持部19に必要な強度を保ちながらアンビルローラ10の軽量化を図ることができる。
【0068】
以下、図6を参照して、本発明の第2実施形態に係る超音波溶着装置のアンビルローラ10について説明する。なお、第1実施形態と同様の部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0069】
第2実施形態に係るアンビルローラ10は、外周部18と薄肉部21との間に形成された丸み部18cと、薄肉部21と被支持部19との間に形成された丸み部21aとを備えている。
【0070】
丸み部18c、21aは、回転軸12a(図3参照)回りの全周に亘り設けられている。
【0071】
このように、薄肉部21に対して外周部18及び被支持部19が丸み部18c、21aを介して接続されているため、当該薄肉部21と外周部18及び被支持部19との間でアンビルローラ10の断面積が急激に変化するのを抑制することができる。
【0072】
これにより、超音波ホーン6からアンビルローラ10に超音波振動が与えられた場合に、薄肉部21と外周部18及び被支持部19との境界部分に応力が集中するのを抑制することができる。したがって、アンビルローラ10の疲労強度を向上することができる。
【0073】
なお、丸み部18c、21aの一方のみを設けることもでき、この場合には、当該一方の丸み部による疲労強度の向上効果を得ることができる。
【0074】
また、第2実施形態に係るアンビルローラ10では、防振材22が丸み部18cの表面の全体に密着するように設けられている。防振材22の被支持部19側を向く内側面22aは、第1実施形態と同様に回転軸12aの軸線に対して20°の角度で傾斜している。
【0075】
なお、前記実施形態では、薄肉部21の一部の範囲のみに防振材22を設けているが、薄肉部21の全範囲に防振材22を設けてもよい。例えば、薄肉部21内に防振材22を充填することもできる。
【0076】
また、前記実施形態では、回転軸12a回りで360°の範囲に設けられた溶着面(溶着部18a)を有するアンビルローラ10について説明したが、溶着面の形成範囲は回転軸12a回りの360°未満の範囲とすることもできる。
【0077】
具体的に、シートWの溶着範囲D1(図1参照)を超える周長を有するように溶着面の形成範囲(角度)を設定することができる。例えば、半円形のアンビルローラを用いることもできる。
【0078】
一方、前記実施形態のように、シートWの溶着範囲D1を超える周長を有する円形のアンビルローラ10を用いる場合、次の利点がある。例えば、アンビルローラ10の溶着面の一部が破損した場合に、破損部分以外の部分を用いて溶着が行われるようにアンビルローラ10の取付位置を調整することにより、アンビルローラ10の交換の頻度を低減することができる。
【0079】
なお、上述した具体的実施形態には以下の構成を有する発明が主に含まれている。
【0080】
上記課題を解決するために、本願発明者等は、溶着面を有する外周部と回転軸によって支持される被支持部との間に外周部よりも厚みの小さい薄肉部が形成されたアンビルローラに係る発明に想到した。
【0081】
しかし、このように薄肉部を形成してアンビルローラを軽量化するとアンビルローラの固有振動数が高くなり、このアンビルローラに超音波ホーンから超音波振動が与えられるとアンビルローラの共振に伴う騒音が発生するという新たな課題が生じた。
【0082】
そこで、この新たな課題を解決するために、本発明は、被溶着物を保持する保持部材と、前記保持部材に保持された被溶着物に超音波振動を与える超音波ホーンと、前記被溶着物を前記超音波ホーンとの間で溶着するためのアンビルローラと、前記アンビルローラが前記保持部材に対して移動可能となり、かつ、前記保持部材に対する前記アンビルローラの移動に応じて前記アンビルローラが前記被溶着物に対して転がり接触可能となるように回転軸を介して前記アンビルローラを支持する支持機構とを有する超音波溶着装置に用いられる前記アンビルローラであって、前記回転軸を介して前記支持機構に回転可能に支持される被支持部と、前記被溶着物に対して転がり接触する間に前記超音波ホーンとの間で前記被溶着物を溶着可能な溶着面を有する外周部と、前記被支持部と前記外周部との間において前記回転軸の軸方向の厚みが前記外周部の厚みよりも小さくなるように形成された薄肉部と、前記薄肉部に設けられた防振材とを備えている、アンビルローラを提供する。
【0083】
本発明によれば、薄肉部に設けられた防振材によってアンビルローラに生じる振動を抑えることができるため、薄肉部を形成することによるアンビルローラの軽量化とこの軽量化に伴う騒音発生の防止との両立を図ることができる。
【0084】
前記アンビルローラにおいて、前記防振材は、前記薄肉部により画定される前記外周部における溶着面に対する裏側面に設けられていることが好ましい。
【0085】
この態様によれば、超音波ホーンから超音波振動を受ける溶着面に対する裏側面に防振材が設けられているため、振動源の直近位置で効率的にアンビルローラの防振を図ることができる。
【0086】
前記アンビルローラにおいて、前記薄肉部は、前記回転軸回りの全周に亘り設けられ、前記防振材は、前記裏側面の前記回転軸回りの全周に亘り設けられていることが好ましい。
【0087】
この態様によれば、回転軸回りの全周に亘り薄肉部が設けられていることにより、回転軸回りのアンビルローラの重量の均等化を図ってアンビルローラの回転安定性を高めることができる。
【0088】
したがって、前記態様によれば、アンビルローラの回転安定性による騒音低減効果と、回転軸回りの全周に亘り設けられた防振材による騒音低減効果とによって、より確実にアンビルローラの振動による騒音の発生を低減することができる。
【0089】
前記防振材を前記薄肉部により画定されるアンビルローラの溝部の全体に充填することもできるが、前記防振材は、前記薄肉部の一部の範囲のみに設けられていることが好ましい。
【0090】
この態様によれば、余剰の防振材によってアンビルローラの重量が増加するのを抑制することができる。
【0091】
前記アンビルローラにおいて、前記被支持部の前記回転軸の軸方向の厚みは、前記薄肉部の厚みよりも大きいことが好ましい。
【0092】
この態様によれば、薄肉部によってアンビルローラの軽量化を図りつつ、回転軸によって支持される被支持部の強度を確保することができる。
【0093】
ここで、前記被支持部の厚みを前記外周部の厚みよりも小さくすることにより、被支持部に必要な強度を保ちながらアンビルローラの軽量化を図ることができる。
【0094】
また、本発明は、被溶着物を保持する保持部材と、前記保持部材に保持された被溶着物に超音波振動を与える超音波ホーンと、前記被溶着物を前記超音波ホーンとの間で溶着するための前記アンビルローラと、前記アンビルローラが前記保持部材に対して移動可能となり、かつ、前記保持部材に対する前記アンビルローラの移動に応じて前記アンビルローラが前記被溶着物に対して転がり接触可能となるように回転軸を介して前記アンビルローラを支持する支持機構とを備えている、超音波溶着装置を提供する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6