特許第6343281号(P6343281)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社瑞光の特許一覧

特許6343281超音波溶着装置及びこれを用いた使い捨ておむつの製造方法
<>
  • 特許6343281-超音波溶着装置及びこれを用いた使い捨ておむつの製造方法 図000002
  • 特許6343281-超音波溶着装置及びこれを用いた使い捨ておむつの製造方法 図000003
  • 特許6343281-超音波溶着装置及びこれを用いた使い捨ておむつの製造方法 図000004
  • 特許6343281-超音波溶着装置及びこれを用いた使い捨ておむつの製造方法 図000005
  • 特許6343281-超音波溶着装置及びこれを用いた使い捨ておむつの製造方法 図000006
  • 特許6343281-超音波溶着装置及びこれを用いた使い捨ておむつの製造方法 図000007
  • 特許6343281-超音波溶着装置及びこれを用いた使い捨ておむつの製造方法 図000008
  • 特許6343281-超音波溶着装置及びこれを用いた使い捨ておむつの製造方法 図000009
  • 特許6343281-超音波溶着装置及びこれを用いた使い捨ておむつの製造方法 図000010
  • 特許6343281-超音波溶着装置及びこれを用いた使い捨ておむつの製造方法 図000011
  • 特許6343281-超音波溶着装置及びこれを用いた使い捨ておむつの製造方法 図000012
  • 特許6343281-超音波溶着装置及びこれを用いた使い捨ておむつの製造方法 図000013
  • 特許6343281-超音波溶着装置及びこれを用いた使い捨ておむつの製造方法 図000014
  • 特許6343281-超音波溶着装置及びこれを用いた使い捨ておむつの製造方法 図000015
  • 特許6343281-超音波溶着装置及びこれを用いた使い捨ておむつの製造方法 図000016
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6343281
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】超音波溶着装置及びこれを用いた使い捨ておむつの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/08 20060101AFI20180604BHJP
   A61F 13/15 20060101ALI20180604BHJP
   A61F 13/49 20060101ALI20180604BHJP
   A61F 13/496 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
   B29C65/08
   A61F13/15
   A61F13/49
   A61F13/496
【請求項の数】9
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2015-522892(P2015-522892)
(86)(22)【出願日】2014年6月13日
(86)【国際出願番号】JP2014065808
(87)【国際公開番号】WO2014200104
(87)【国際公開日】20141218
【審査請求日】2017年4月12日
(31)【優先権主張番号】特願2013-125943(P2013-125943)
(32)【優先日】2013年6月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591040708
【氏名又は名称】株式会社瑞光
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100168321
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 敦
(72)【発明者】
【氏名】藤田 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】中村 秀幸
【審査官】 辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3988835(JP,B2)
【文献】 米国特許第4758293(US,A)
【文献】 特開2012−76343(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C65/00−65/82
A61F13/15−13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被溶着物を超音波溶着するための超音波溶着装置であって、
被溶着物を保持する保持部材と、
前記被溶着物に超音波振動を与える出力面を有する超音波ホーンと、前記超音波ホーンの出力面との間で前記被溶着物を溶着する溶着面を有するアンビルとを有する一対の溶着具であって、前記一対の溶着具のうちの一方である移動側溶着具は、当該移動側溶着具の出力面又は溶着面が前記保持部材に保持された被溶着物に平面視で重なるとともに前記一対の溶着具のうちの他方である相手側溶着具との間で前記被溶着物を溶着する溶着範囲と平面視で前記溶着範囲から外れた非溶着範囲とに亘って前記保持部材に対して移動可能である、一対の溶着具と、
前記溶着範囲において前記出力面と前記溶着面とが互いに近づくとともに前記非溶着範囲において前記出力面と前記溶着面とが互いに遠ざかるように、前記移動側溶着具を前記相手側溶着具に対して変位させる変位機構とを備え、
前記相手側溶着具の前記出力面又は前記溶着面を含む端部は、前記移動側溶着具の移動方向に延びるスリットにより前記移動方向と直交する方向に分岐しているとともに前記スリットの両側に位置して前記出力面又は前記溶着面として機能する一対の端面を有し、
前記変位機構は、前記出力面と前記溶着面とがこれらの法線方向に近づくように前記移動側溶着具を前記相手側溶着具に向けて付勢する付勢機構と、前記付勢機構の付勢力によって前記非溶着範囲内に位置する前記移動側溶着具の外側面が押し付けられる被押付面を有し、かつ、前記被押付面が前記スリットの幅方向の範囲内に配置された状態で前記保持部材に固定された被押付部材とを備え、
前記被押付部材の被押付面及び前記移動側溶着具の外側面の少なくとも一方は、前記移動側溶着具が前記溶着範囲から前記非溶着範囲に移動することに応じて前記出力面と前記溶着面とが互いに遠ざかる方向に前記移動側溶着具を案内する案内面として機能する、超音波溶着装置。
【請求項2】
前記案内面は、前記付勢機構の付勢力に抗して前記出力面と前記溶着面とがこれらの法線方向に互いに遠ざかる方向に前記移動側溶着具を案内可能な形状を有する、請求項1に記載の超音波溶着装置。
【請求項3】
前記保持部材は、前記移動側溶着具の移動方向において異なる位置に設定された複数の取付位置に対する前記被押付部材の取り付けを許容する被押付部材取付部を有する、請求項2に記載の超音波溶着装置。
【請求項4】
前記非溶着範囲は、前記相手側溶着具の出力面又は溶着面から前記移動側溶着具の移動方向に外れた位置に設定され、
前記案内面は、前記出力面と前記溶着面とが前記移動側溶着具の移動方向に互いに遠ざかる方向に前記移動側溶着具を案内可能な形状を有する、請求項1〜3の何れか1項に記載の超音波溶着装置。
【請求項5】
前記非溶着範囲内に位置する移動側溶着具と前記被押付部材とは、前記移動側溶着具の前記溶着範囲へ向けた移動を許容するとともに前記移動方向及び前記付勢機構による付勢方向と直交する方向における移動側溶着具の移動が規制されるように、互いに係合している、請求項1〜4の何れか1項に記載の超音波溶着装置。
【請求項6】
前記移動側溶着具は、前記被押付部材に対して転がり接触可能な外側面を有するローラ本体と、前記ローラ本体から外側に突出するとともに前記相手側溶着具の一対の端面との間で前記被溶着物を溶着する一対の突出部とを備え、
前記被押付部材は、前記非溶着範囲内に位置する移動側溶着具における前記一対の突出部の間に挿入される被挿入部を有する、請求項5に記載の超音波溶着装置。
【請求項7】
前記超音波溶着装置は、前記移動側溶着具の移動方向における前記溶着範囲の両側位置でそれぞれ前記出力面と前記溶着面とが互いに遠ざかる方向に前記移動側溶着具を案内するために、前記案内面を2つ有する、請求項1〜6の何れか1項に記載の超音波溶着装置。
【請求項8】
前記超音波ホーンは、超音波振動が入力される入力面を有する入力側端部と、前記スリットにより分岐しているとともに前記スリットの両側位置で超音波振動を出力する一対の出力面を有する出力側端部とを有する前記相手側溶着具であり、
前記超音波ホーンの入力面と前記超音波ホーンの各出力面との間の距離は、前記入力面に入力される超音波振動の半波長に相当する距離に設定され、
前記スリットは、前記超音波振動の節部に相当する位置又はこれよりも前記各出力面側の位置から前記出力側端部の端面までの範囲に形成されている、請求項1〜7の何れか1項に記載の超音波溶着装置。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか1項に記載の超音波溶着装置を用いて、着用者の腹部に配置される前腹部と、着用者の臀部に配置される後背部と、前記前腹部から着用者の両脚部の間を通って前記後背部まで延びる股下部とを有する使い捨ておむつを製造するための方法であって、
前記前腹部と前記後背部とが前記股下部を介して縦方向に連結された構成要素が横方向に連続する連続体を準備する準備工程と、
前記連続体を縦方向に二つ折りにする二つ折り工程と、
前記移動側溶着具を前記溶着範囲と前記非溶着範囲とに亘って移動させるとともに前記超音波ホーンに超音波振動を入力することにより、前記相手側溶着具の一対の端面と前記移動側溶着具の出力面又は溶着面との間で前記連続体における前記前腹部の側縁部に相当する部分と前記後背部の側縁部に相当する部分との重なり部分の2箇所を同時に溶着する溶着工程と、
前記溶着工程において形成された2箇所の溶着部の間で前記連続体を切断する切断工程とを含む、使い捨ておむつの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被溶着物を超音波溶着するための超音波溶着装置及びこれを用いた使い捨ておむつの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、アンビルと、超音波ホーンとを備え、アンビルと超音波ホーンとの間に被溶着物が挟まれた状態で超音波ホーンに超音波振動を与えることにより前記被溶着物を溶着する超音波溶着装置が知られている。
【0003】
この種の超音波溶着装置としては、被溶着物を保持する保持部材と、保持部材に保持された被溶着物に平面視で重なる位置であって超音波ホーンとの間で被溶着物を溶着する溶着範囲と前記被溶着物を横切る非溶着範囲との間で保持部材に対して移動可能なアンビルローラを備えたものも知られている(例えば、特許文献1)。
【0004】
ここで、アンビルローラの移動範囲のうちアンビルローラと超音波ホーンとの間に被溶着物が存在する領域については当該被溶着物を溶着するためにアンビルローラを超音波ホーンに近づける必要がある。一方、アンビルローラの移動範囲のうちアンビルローラと超音波ホーンとの間に被溶着物が存在しない領域についてはアンビルローラ及び超音波ホーンの磨耗及び劣化を抑制するためにアンビルを超音波ホーンから遠ざける必要がある。
【0005】
そこで、特許文献1に記載の超音波溶着装置は、溶着範囲においてアンビルローラが超音波ホーンに近づくとともに非溶着範囲でアンビルローラが超音波ホーンから遠ざかるように超音波ホーンに対してアンビルローラを駆動する駆動機構を有する。
【0006】
図14は、特許文献1に記載の超音波溶着装置の駆動機構の概略構成を示す側面図である。
【0007】
特許文献1に記載の駆動機構は、超音波ホーン100を保持するホーン保持部材103と、ホーン保持部材103に対して回動軸104a回りに回動可能に取り付けられているとともに回転軸101a回りに回転可能となるようにアンビルローラ101を保持するアンビル保持部材104と、アンビル保持部材104をホーン保持部材103に対して回動させるシリンダ105とを備えている。
【0008】
シリンダ105は、図14に示すようにアンビルローラ101が被溶着物106を横切る非溶着範囲まで移動した状態において超音波ホーン100からアンビルローラ101が遠ざかるように縮小する。
【0009】
一方、シリンダ105は、図15に示すように被溶着物106を溶着する溶着範囲において超音波ホーン100に対してアンビルローラ101が近づくように伸長する。
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載の駆動機構は、シリンダ105の伸縮によって超音波ホーン100に対してアンビルローラ101を近づける又は遠ざける。そのため、シリンダ105及びこれに動力を与えるための構成が必要となり超音波溶着装置の大型化を招く。さらに、溶着範囲と非溶着範囲との移動に併せてアンビルローラ101を超音波ホーン100に近づける又は遠ざけるためにシリンダ105の複雑な駆動制御が必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2012−76343号公報
【発明の概要】
【0012】
本発明の目的は、超音波ホーンとアンビルとを近づける又は遠ざけるための構成及び制御を簡素化することができる超音波溶着装置及びこれを用いた使い捨ておむつの製造方法を提供することにある。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明は、被溶着物を超音波溶着するための超音波溶着装置であって、被溶着物を保持する保持部材と、前記被溶着物に超音波振動を与える出力面を有する超音波ホーンと、前記超音波ホーンの出力面との間で前記被溶着物を溶着する溶着面を有するアンビルとを有する一対の溶着具であって、前記一対の溶着具のうちの一方である移動側溶着具は、当該移動側溶着具の出力面又は溶着面が前記保持部材に保持された被溶着物に平面視で重なるとともに前記一対の溶着具のうちの他方である相手側溶着具との間で前記被溶着物を溶着する溶着範囲と平面視で前記溶着範囲から外れた非溶着範囲とに亘って前記保持部材に対して移動可能である、一対の溶着具と、前記溶着範囲において前記出力面と前記溶着面とが互いに近づくとともに前記非溶着範囲において前記出力面と前記溶着面とが互いに遠ざかるように、前記移動側溶着具を前記相手側溶着具に対して変位させる変位機構とを備え、前記相手側溶着具の前記出力面又は前記溶着面を含む端部は、前記移動側溶着具の移動方向に延びるスリットにより前記移動方向と直交する方向に分岐しているとともに前記スリットの両側に位置して前記出力面又は前記溶着面として機能する一対の端面を有し、前記変位機構は、前記出力面と前記溶着面とがこれらの法線方向に近づくように前記移動側溶着具を前記相手側溶着具に向けて付勢する付勢機構と、前記付勢機構の付勢力によって前記非溶着範囲内に位置する前記移動側溶着具の外側面が押し付けられる被押付面を有し、かつ、前記被押付面が前記スリットの幅方向の範囲内に配置された状態で前記保持部材に固定された被押付部材とを備え、前記被押付部材の被押付面及び前記移動側溶着具の外側面の少なくとも一方は、前記移動側溶着具が前記溶着範囲から前記非溶着範囲に移動することに応じて前記出力面と前記溶着面とが互いに遠ざかる方向に前記移動側溶着具を案内する案内面として機能する、超音波溶着装置を提供する。
【0014】
また、本発明は、前記超音波溶着装置を用いて、着用者の腹部に配置される前腹部と、着用者の臀部に配置される後背部と、前記前腹部から着用者の両脚部の間を通って前記後背部まで延びる股下部とを有する使い捨ておむつを製造するための方法であって、前記前腹部と前記後背部とが前記股下部を介して縦方向に連結された構成要素が横方向に連続する連続体を準備する準備工程と、前記連続体を縦方向に二つ折りにする二つ折り工程と、前記移動側溶着具を前記溶着範囲と前記非溶着範囲とに亘って移動させるとともに前記超音波ホーンに超音波振動を入力することにより、前記相手側溶着具の一対の端面と前記移動側溶着具の出力面又は溶着面との間で前記連続体における前記前腹部の側縁部に相当する部分と前記後背部の側縁部に相当する部分との重なり部分の2箇所を同時に溶着する溶着工程と、前記溶着工程において形成された2箇所の溶着部の間で前記連続体を切断する切断工程とを含む、使い捨ておむつの製造方法を提供する。
【0015】
本発明によれば、超音波ホーンとアンビルとを近づける又は遠ざけるための構成及び制御を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明に係る使い捨ておむつの製造方法を説明するための工程図である。
図2図2は、図1に示す溶着工程を行なうための本発明の第1実施形態に係る超音波溶着装置の概略構成を示す正面図である。
図3図3は、図2のIII−III線断面図である。
図4図4は、図3のIV−IV線断面図である。
図5図5は、図3のシート保持ドラムをその外側から見た図である。
図6図6は、図2の一部を拡大して示す側面図である。
図7図7は、図6のVII−VII線断面図である。
図8図8は、本発明の第2実施形態に係る超音波溶着装置の図6相当図である。
図9図9は、本発明の第3実施形態に係る超音波溶着装置の側面断面図である。
図10図10は、本発明の第4実施形態に係る超音波溶着装置の図7相当図である。
図11図11は、図10のXI−XI線断面図である。
図12図12は、図11の被押付部材を別の被押付部材に交換した状態を示す断面図である。
図13図13は、図10に示す超音波溶着装置に設けられた移動規制機構を示す断面図である。
図14図14は、従来の超音波溶着装置の一部を拡大して示す概略図であり、アンビルローラが非溶着範囲にある状態を示す。
図15図15は、図14に示す超音波溶着装置の概略図であって、アンビルローラが溶着範囲内に位置する状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0018】
図1を参照して、使い捨ておむつ20は、着用時に、着用者の腹部に配置される前腹部20aと、着用者の臀部に配置される後背部20bと、前腹部20aから着用者の両脚部の間を通って後背部20bまで延びる股下部20cとを備えている。
【0019】
前腹部20aの両側縁部及び後背部20bの両側縁部は、前腹部20aと後背部20bとが環状に連結されるように2箇所の溶着部Sによって互いに溶着されている。
【0020】
以下、使い捨ておむつ20の製造方法について説明する。
【0021】
<搬送工程P1>
搬送工程P1では、特定方向に延びるシートWをその長手方向に沿って搬送する。以下、シートWの流れ方向を横方向とし、図1において横方向と直交する方向を縦方向として説明する。
【0022】
シートWは、着用時に着用者の体表側に向く内側シートと、着用時に着用者の外側を向く外側シートと、これら内側シートと外側シートとの間に挟まれた弾性部材とを有している。
【0023】
内側シートは、液体透過性を有する不織布シート及び/又はメッシュシートにより構成されている。外側シートは、内側シートと同材質、又は、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、又は撥水性及び通気性を有する不織布により構成されている。
【0024】
弾性部材は、ポリウレタン、天然ゴム、又は熱可塑性樹脂からなるシート又は糸を用いて構成される。
【0025】
<レッグホール形成工程P2>
レッグホール形成工程P2では、シートWの縦方向の中央位置にレッグホールLを形成する。
【0026】
シートWにおける2つのレッグホールLの間の領域は、股下部20cに相当する部分である。また、シートWにおける股下部20cに相当する部分の縦方向の両側位置は、それぞれ前腹部20a及び後背部20bに相当する部分である。
【0027】
つまり、搬送工程P1及びレッグホール形成工程P2は、前腹部20aと後背部20bとが股下部20cを介して縦方向に連結された構成要素が横方向に連続する連続体を準備する準備工程に相当する。
【0028】
<吸収体接合工程P3>
吸収体接合工程P3では、シートWにおける2つのレッグホールLの間の位置に吸収体Aを接合する。
【0029】
吸収体Aは、液体透過性を有する透過性シートと、撥水性及び通気性を有する撥水シートと、透過性シートと撥水シートとの間に挟まれた吸収性コアとを備えている。
【0030】
透過性シートは、液体透過性を有する不織布シート及び/又はメッシュシートにより構成されている。撥水シートは、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、又は撥水性及び通気性を有する不織布により構成されている。
【0031】
吸収性コアは、粉砕されたパルプ又はこれに高吸水性ポリマーを混合したものを積層して成型される。
【0032】
なお、シートW上に吸収体Aを接合する方法について説明しているが、シートWの内側シートと外側シートとの間に吸収性コアを挟んで接合することもできる。この場合、内側シートは、液体透過性を有する不織布シート及び/又はメッシュシートにより構成されている。外側シートは、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、又は撥水性及び通気性を有する不織布により構成されている。
【0033】
<二つ折り工程P4>
二つ折り工程P4では、吸収体Aが載置されたシートW(連続体)を縦方向に二つ折りにする。これにより、シートWにおける前腹部20aに相当する部分と後背部20bに相当する部分とが重ね合わされる。
【0034】
<溶着工程P5>
溶着工程P5では、二つ折りにされたシートWにおける前腹部20aの側縁部に相当する部分と後背部20bの側縁部に相当する部分とを超音波溶着する。
【0035】
具体的に、溶着工程P5では、後述する切断工程P6で切断する範囲として予め設定された切断範囲を挟む間隔D2を空けて、シートWの2箇所を同時に超音波溶着する。
【0036】
なお、2つの溶着部Sは、前腹部20aの側縁部に相当する部分及び後背部20bの側縁部に相当する部分の縦方向の溶着範囲D1にそれぞれ形成されている。
【0037】
<切断工程P6>
切断工程P6では、溶着工程P5で形成された2つの溶着部Sの間で縦方向に延びる切断線に沿ってシートWを切断する。これにより、シートW(連続体)が使い捨ておむつ20ごとに切り分けられる。
【0038】
<第1実施形態>
以下、図2を参照して、溶着工程P5を行なう第1実施形態に係る超音波溶着装置1について説明する。
【0039】
超音波溶着装置1は、二つ折り工程P4で二つ折りにされたシートWを導入する導入ローラ2と、導入ローラ2により導入されたシートWを溶着する溶着ドラム3と、溶着ドラム3により溶着されたシートWを導出する導出ローラ4とを備えている。
【0040】
溶着ドラム3は、導入ローラ2により導入されたシートWを保持するシート保持ドラム(保持部材)5と、シート保持ドラム5に設けられた6つの超音波ホーン(相手側溶着具)6と、各超音波ホーン6との間でそれぞれシートWを超音波溶着する6つのアンビルユニット7と、各アンビルユニット7を保持する筒状のアンビル保持ドラム8(図3参照)と、アンビル保持ドラム8の内側に設けられたカムドラム9(図3参照)と、各超音波ホーン6に隣接してシート保持ドラム5に固定された6枚の被押付部材18(図3参照)とを備えている。
【0041】
図2及び図3を参照して、シート保持ドラム5は、シートWをその外周面に保持した状態で回転中心C1回りに回転可能である。また、シート保持ドラム5には、回転中心C1回りで等間隔に6つの凹溝5aが形成されている。各凹溝5aは、シート保持ドラム5の外向きに開くとともに回転中心C1に沿って延びている。
【0042】
各超音波ホーン6は、シート保持ドラム5に保持されたシートWに超音波振動を与える。各超音波ホーン6は、それぞれ同様に構成されているため、1つの超音波ホーン6のみを説明し、他の超音波ホーン6の説明を省略する。
【0043】
図7を参照して、超音波ホーン6は、超音波振動が入力される入力面6cを有する入力側端部6aと、シート保持ドラム5の回転中心C1(図2参照)に沿って延びるスリット6dにより回転中心C1と直交する方向に分岐しているとともにスリット6dの両側で超音波振動を出力する一対の出力面6eを有する出力側端部6bとを備えている。
【0044】
スリット6dの幅寸法D4は、溶着工程P5で同時に溶着される2箇所の溶着部Sの間隔D2(図1参照)に対応する寸法である。
【0045】
入力面6cと各出力面6eとの間の距離は、入力面6cに入力される超音波振動の半波長(1/2λ)に相当する距離に設定されている。スリット6dは、入力面6cに入力される超音波振動の節部に相当する位置から出力側端部6bの端面(出力面6e)までの範囲に形成されている。
【0046】
なお、超音波ホーン6に入力される超音波振動は、出力面6eと直交する方向の縦波であるが、図7のグラフでは説明の便宜上横波として記されている。
【0047】
また、超音波ホーン6は、図2及び図5に示すように、各出力面6eがシート保持ドラム5に保持されたシートWに内側から接触するように、凹溝5a内に設けられている。
【0048】
ここで、各出力面6eの長さ寸法D3は、図5に示すように、シートWに設定された溶着範囲D1よりも長く、各出力面6eの長手方向の両端部は、溶着範囲D1(シートW)の両側に突出するように配置されている。
【0049】
各アンビルユニット7は、回転中心C1回りで各超音波ホーン6と同じ位置にそれぞれ設けられている。各アンビルユニット7は、それぞれ同様の構成を有するため、1つのアンビルユニット7の構成を説明し、他のアンビルユニット7の説明を省略する。
【0050】
アンビルユニット7は、超音波ホーン6との間でシートWを溶着するためのアンビルローラ(移動側溶着具)10と、回転中心C1に沿ってシート保持ドラム5に対して移動可能となるようにアンビルローラ10を保持する保持部材11とを備えている。
【0051】
図3及び図4に示すように、保持部材11は、アンビル保持ドラム8に対して回転中心C1に沿って移動可能に取り付けられた保持部材本体12と、保持部材本体12に対して回動軸19b回りに回動可能に取り付けられているとともに回転軸19a回りに回転可能となるようにアンビルローラ10を保持する保持レバー19と、アンビルローラ10が超音波ホーン6に対して近づく方向に前記保持レバー19を付勢する付勢部材25とを備えている。
【0052】
ここで、回転軸19a及び回動軸19bは、それぞれ回転中心C1及びアンビルユニット7を含む平面と直交する方向(図3の紙面と直交する方向)に延びる軸である。また、回転軸19aは、保持レバー19の先端部に設けられているとともに、回動軸19bは、保持レバー19の中間部に設けられている。
【0053】
そのため、アンビルローラ10は、保持部材11の回転中心C1に沿った移動に応じてシートWに対して転がり接触可能であり、かつ、保持レバー19の回動に応じてシートW(超音波ホーン6)に対してシート保持ドラム5の径方向に近づくこと又は遠ざかることが可能である。
【0054】
付勢部材25は、保持レバー19の基端部を保持部材本体12に対して回転中心C1から離れる方向に付勢することによってアンビルローラ10が超音波ホーン6に近づく方向にアンビルローラ10を付勢している。
【0055】
付勢部材25、保持レバー19、及び回動軸19bは、超音波ホーン6の出力面6eと後述するアンビルローラ10の溶着面10dとがこれらの法線方向に近づくようにアンビルローラ10を超音波ホーン6に向けて付勢する付勢機構に相当する。
【0056】
保持部材本体12には、回転中心C1に向けて延びるカム突起14と、カム突起14及び回転中心C1と直交する方向(図4の左右方向)で反対向きにそれぞれ突出するとともに回転中心C1に沿って延びる一対の係合突起15とが設けられている。
【0057】
また、保持部材本体12は、アンビル保持ドラム8の外周面に立設された一対のレール17間に設けられている。各レール17には、相手のレール17側に開くとともに回転中心C1に沿って延びる係合溝17aが形成されている。保持部材本体12の各係合突起15は、アンビル保持ドラム8に対して回転中心C1に沿って移動可能となるように、それぞれ係合溝17aに係合している。
【0058】
ここで、筒状のアンビル保持ドラム8には、その周壁を貫通するとともに回転中心C1に沿って延びるスリット16aが設けられている。保持部材本体12のカム突起14は、スリット16aを通じてアンビル保持ドラム8の内側に挿入されている。
【0059】
アンビル保持ドラム8内には、カムドラム9が設けられ、このカムドラム9の外周面には、カム溝9aが形成されている。カム突起14の先端部は、カム溝9a内に挿入されている。カム溝9aは、カムドラム9に対してアンビル保持ドラム8が回転することに応じてアンビルユニット7が回転中心C1に沿って移動するようにカム突起14を案内する。
【0060】
ここで、シート保持ドラム5とアンビル保持ドラム8とは互いに固定され、両者は、一体的に回転中心C1回りに回転する。一方、カムドラム9の回転位置は、シート保持ドラム5及びアンビル保持ドラム8の回転にかかわらず固定されている。したがって、保持部材本体12は、シート保持ドラム5及びアンビル保持ドラム8の回転中心C1回りの回転に応じて回転中心C1に沿って移動する。
【0061】
具体的に、図2及び図3の最も下に位置するアンビルユニット7は、平面視でシート保持ドラム5に保持されたシートWから外れた位置に配置される。この状態で、シート保持ドラム5が図2の反時計回りに回転することに応じて、アンビルユニット7は、回転中心C1に沿ってシートWに近づく方向に移動する。
【0062】
アンビルユニット7が図2及び図3の最も上の位置まで変位する過程において、アンビルローラ10は、シートWを横断し、図2及び図3の最も上に位置するアンビルユニット7では、平面視においてアンビルローラ10がシート保持ドラム5に保持されたシートWから外れた位置に配置される。この状態からさらにシート保持ドラム5が反時計回りに回転すると、アンビルローラ10は、再びシートWを横断し、図2及び図3の最も下の位置のアンビルローラ10の位置に復帰する。
【0063】
つまり、超音波溶着装置1では、図2の範囲E1においてアンビルローラ10がシートW上を図1の溶着範囲D1において往復移動し、この往復移動の間にシートWが溶着される。より詳細には、図2の範囲E1以外の範囲内に位置するアンビルローラ10は、平面視でシートWから外れた図5の範囲E4内に位置し、範囲E1内にアンビルローラ10が入ると、アンビルローラ10は、平面視でシートWに重なる範囲E3、平面視で前記範囲E4と反対側にシートWから外れた範囲E2、及び前記範囲E3内を順次移動する。
【0064】
範囲E4及び範囲E2内がそれぞれ非溶着範囲に相当し、範囲E3内が溶着範囲に相当する。以下、第1〜第3実施形態において、非溶着範囲E2、E4及び溶着範囲E3と称する。
【0065】
以下、図5図7を参照して、非溶着範囲E2、E4内に位置するアンビルローラ10をシートWから遠ざけるための被押付部材18について説明する。
【0066】
被押付部材18は、超音波ホーン6のスリット6dの幅寸法D4よりも小さな幅寸法D6を有し、スリット6dの幅方向の範囲内に設けられた板状の部材である。また、被押付部材18の幅寸法D6は、アンビルローラ10の一対の突出部10bの間隔D5よりも小さい。ここで、各突出部10bは、円盤状のローラ本体10aの外周面から全周に亘り突出するとともに、超音波ホーン6の出力面6eとの間でシートWを溶着する溶着面10dをそれぞれ有する。ローラ本体10aの外周面のうち各突出部10bの間の部分は、後述する被押付部材18に転がり接触可能な被支持面10cを構成する。
【0067】
また、被押付部材18は、超音波ホーン6の長さ寸法D3よりも大きな長さ寸法D7を有し、回転中心C1に沿って配置されている。具体的に、被押付部材18の長手方向の両端部は、それぞれ超音波ホーン6の外側に配置され、一対のボルトB1によってシート保持ドラム5に固定されている。
【0068】
そして、被押付部材18は、非溶着範囲E4内に配置された基端側案内部21と、溶着範囲E3内に配置された中央部22と、非溶着範囲E2内に配置された先端側案内部23とを備えている。
【0069】
中央部22は、超音波ホーン6の出力面6eと同一平面上又は出力面6eよりも回転中心C1側の位置に配置された非案内面22aを有する。
【0070】
基端側案内部21は、中央部22から離れる方向に向けて非案内面22aからシート保持ドラム5の径方向の外側に傾斜する傾斜面と、中央部22から遠ざかる方向に向けて傾斜面から非案内面22a(出力面6e)と平行な方向に延びる平坦面とを含む基端側案内面21aを有する。
【0071】
同様に、先端側案内部23は、中央部22から離れる方向に向けて非案内面22aからシート保持ドラム5の径方向の外側に傾斜する傾斜面と、中央部22から離れる方向に向けて傾斜面から非案内面22aと平行する方向に延びる平坦面とを含む先端側案内面23aを有する。
【0072】
ここで、両案内面21a、23aは、付勢機構(付勢部材25、保持レバー19、及び回動軸19b)の付勢力によって非溶着範囲E2、E4内に位置するアンビルローラ10の被支持面10cが押し付けられる被押付面に相当する。また、被押付部材18は、両案内面21a、23aがスリット16aの幅方向の範囲内に配置された状態でシート保持ドラム5に固定されている。
【0073】
また、両案内面21a、23aは、アンビルローラ10が溶着範囲E3から非溶着範囲E2、E4に移動することに応じて当該アンビルローラ10の被支持面10cに転がり接触することにより、非溶着範囲E2、E4内に位置するアンビルローラ10をシートW(超音波ホーン6)から遠ざける。ここで、被支持面10cは、アンビルローラ10の各突出部10bの間に位置するローラ本体10aの外周面(外側面)である。
【0074】
つまり、基端側案内面21aを含む基端側案内部21の端部、及び先端側案内面23aを含む先端側案内部23の端部は、それぞれアンビルローラ10の各突出部10b間に挿入された被挿入部に相当する。被挿入部が突出部10b間に挿入されていることにより、非溶着範囲E2、E4内に位置するアンビルローラ10と被押付部材18とは、アンビルローラ10の移動方向及び付勢部材25による付勢方向と直交する方向(図7の左右方向)におけるアンビルローラ10の移動が規制されるように互いに係合している。
【0075】
以下、被押付部材18によるアンビルローラ10の動作について説明する。
【0076】
まず、アンビルローラ10が溶着範囲E3を移動する過程においては、付勢部材25による付勢力により、アンビルローラ10の溶着面10dは、シートWを挟んだ状態で超音波ホーン6の出力面6eに押し付けられている。
【0077】
この状態で、超音波ホーン6に超音波振動が与えられることによりシートWが超音波溶着される。
【0078】
アンビルローラ10が溶着範囲E3から非溶着範囲E2、E4に向けて移動を開始すると、アンビルローラ10の被支持面10cは、案内面21a、23aのうちの傾斜面に当接する。さらに、アンビルローラ10の移動が進行すると、アンビルローラ10は、案内面21a、23a(傾斜面)に対して転がり接触し、付勢部材25による付勢力に抗して前記傾斜面に沿って徐々に超音波ホーン6から遠ざかる。そして、アンビルローラ10の移動がさらに進行すると、アンビルローラ10は、案内面21a、23aのうちの平坦面によって支持された状態となる。つまり、両案内面21a、23aは、付勢部材25の付勢力に抗して出力面6eと溶着面10dとがこれらの法線方向に互いに遠ざかる方向にアンビルローラ10を案内可能な形状を有する。
【0079】
この状態において、アンビルローラ10の溶着面10dは、超音波ホーン6の出力面6eから予め設定された寸法(超音波振動の振幅よりも大きな寸法)だけ遠ざかっている。そのため、超音波ホーン6に与えられた超音波振動がアンビルローラ10に伝わることによる、超音波ホーン6及びアンビルローラ10の磨耗及び劣化を防止することができる。
【0080】
一方、アンビルローラ10が非溶着範囲E2、E4から溶着範囲E3に向けて移動を開始すると、アンビルローラ10は、案内面21a、23aに転がり接触し、付勢部材25による付勢力によって傾斜面に沿って徐々に超音波ホーン6に近づく。さらに、アンビルローラ10の移動が進行すると、アンビルローラ10は、溶着範囲E3に到達する。
【0081】
つまり、付勢機構(付勢部材25、保持レバー19、及び回動軸19b)及び被押付部材18は、溶着範囲E3において出力面6eと溶着面10dとが互いに近づくとともに非溶着範囲E2、E4において出力面6eと溶着面10dとが互いに遠ざかるように、アンビルローラ10を超音波ホーン6に対して変位させる変位機構に相当する。
【0082】
以上説明したように、超音波ホーン6に向けてアンビルローラ10が付勢され、この付勢力によって非溶着範囲E2、E4内に位置するアンビルローラ10の外側面が被押付部材18の案内面21a、23aに対して押し付けられる。
【0083】
そして、両案内面21a、23aにより、アンビルローラ10が溶着範囲E3から非溶着範囲E2、E4に移動することに応じて出力面6eと溶着面10dとが互いに遠ざかる方向にアンビルローラ10を案内することができる。
【0084】
そのため、アンビルローラ10が溶着範囲E3に移動した状態においては付勢部材25の付勢力によって出力面6eと溶着面10dとをこれらの面の法線方向に近づけて両者の間でシートWを超音波溶着することができる。一方、アンビルローラ10が溶着範囲E3から非溶着範囲E2、E4に移動することに応じてアンビルローラ10が案内面21a、23aに沿って案内されることにより出力面6eと溶着面10dとを互いに遠ざけることができる。
【0085】
したがって、従来と異なり、アンビルを超音波ホーンに近づける又は遠ざける方向に駆動するための構成(シリンダ及びこれに駆動力を与える構成)、及びアンビルの駆動制御を省略することができる。
【0086】
さらに、超音波ホーン6の一対の出力面6eの間(スリット6dの幅方向の範囲内)に案内面21a、23aが設けられているため、各出力面6eの直近位置で当該各出力面6eから確実にアンビルローラ10の溶着面10dを遠ざけることができる。
【0087】
したがって、超音波ホーン6及びアンビルローラ10の磨耗及び劣化を確実に防止することができる。
【0088】
また、前記超音波ホーン6では、スリット6dにより超音波ホーン6の出力側端部6bが軽量化されているため、各出力面6eからの出力振幅を大きくすることができる。
【0089】
したがって、シートWを確実に超音波溶着することができる。
【0090】
なお、アンビルローラ10は、溶着範囲E3の外側に位置する非溶着範囲E2、E4で折り返して溶着範囲E3に移動する。ここで、アンビルローラ10の移動の折り返し点においてもシートWを溶着する場合には、アンビルローラ10の減速時及び加速時においてもシートWに対して超音波エネルギーが与えられるため、移動方向において均一に溶着を行うことが難しい。これに対し、上述のようにアンビルローラ10の折り返し点を溶着範囲E3の外側に設定することにより、溶着範囲E3における溶着を均一に行うことができる。
【0091】
また、第1実施形態に係る超音波溶着装置1は、次の効果を奏する。
【0092】
第1実施形態によれば、案内面21a、23aによって出力面6eと溶着面10dとをこれらの法線方向に互いに遠ざけることができる。そのため、アンビルローラ10の移動方向における出力面6eの範囲内で溶着範囲E3及び非溶着範囲E2、E4を適宜設定することができる。
【0093】
第1実施形態によれば、非溶着範囲E2、E4にあるアンビルローラ10と被押付部材18とを、アンビルローラ10の移動方向及び付勢方向と直交する方向に位置決めすることができる。
【0094】
したがって、アンビルローラ10が溶着範囲E3に移動するのに先立って、アンビルローラ10と超音波ホーン6とを位置決めすることができ、これにより、溶着範囲E3に移動したアンビルローラ10と超音波ホーン6との間で確実に溶着を行うことができる。
【0095】
第1実施形態によれば、アンビルローラ10においてシートWの溶着に寄与しない被支持面10c(各突出部10bの間の領域)を利用して、非溶着範囲E2、E4にあるアンビルローラ10と被押付部材18とを係合することができる。
【0096】
第1実施形態によれば、溶着範囲E3を挟んだ2箇所に非溶着範囲E2、E4を設定することができる。そのため、これら2箇所の非溶着範囲E2、E4の間でアンビルローラ10を往復動作させることによって、アンビルローラ10及び超音波ホーン6の磨耗及び劣化を防止しつつシートWを確実に溶着することができる。
【0097】
第1実施形態によれば、スリット6dにより超音波ホーン6における超音波振動の節部よりも出力面6e側の部分のみを軽量化することができるので、出力振幅を大きくすることができる。
【0098】
特に、第1実施形態では、スリット6dが超音波振動の節部に相当する位置から出力側端部6bの端面(出力面6e)までの範囲に形成されているため、スリット6dによる超音波ホーン6の軽量化を最大限行なうことができる。
【0099】
なお、スリット6dが超音波振動の節部に相当する位置よりも各出力面6e側の位置から出力側端部6bの端面までの範囲に形成されていれば、有効に出力振幅を大きくすることができる。
【0100】
また、第1実施形態に係る超音波溶着装置を用いた製造方法によれば、スリット6dを有する超音波ホーン6を用いることにより出力振幅を大きくした状態でシートWを溶着することができるとともに、スリット6dの幅範囲内に設けられた被押付部材18によって非溶着範囲E2、E4内に位置するアンビルローラ10を超音波ホーン6から遠ざけることができる。
【0101】
したがって、大きな出力振幅でシートWを確実に溶着しながら、非溶着範囲E2、E4内に位置するアンビルローラ10を超音波ホーン6から遠ざけることにより超音波ホーン6及びアンビルローラ10の磨耗及び劣化を防止することができる。
【0102】
また、一対の出力面6eによりシートWの折り返し部分における2箇所(隣り合う2つの使い捨ておむつの溶着箇所)を同時に溶着し、スリット6dにより画定されるシートWの非溶着範囲(2箇所の溶着部Sの間の範囲)でシートWを切断することにより、使い捨ておむつ20を製造することができる。
【0103】
<第2実施形態>
第1実施形態では、被押付部材18に案内面21a、23aが設けられているが、案内面は、被押付部材18及びアンビルローラ10の少なくとも一方に設けられていればよい。
【0104】
第2実施形態に係る超音波溶着装置では、図8に示すように、アンビルローラ10Aに案内面(大径部10eの外周面)が設けられている。また、第2実施形態に係る被押付部材18Aは、アンビルローラ10Aの大径部10eの外周面が転がり接触するための面として、超音波ホーン6の出力面6eと同一平面上に設けられた平坦面18bを有している。
【0105】
アンビルローラ10Aは、一対の突出部10bの間における被支持面10cから突出する大径部10eを備えている。
【0106】
大径部10eは、被支持面10cを画定する円柱部分と同心に配置されているとともに、180°の角度範囲に設けられている。また、大径部10eの外周面と被支持面10cとは、2つの傾斜面10fによって互いに連結されている。
【0107】
第2実施形態では、大径部10eの外周面の半分(90°の範囲)及び1つの傾斜面10fが非溶着範囲E2に対する案内面を構成する。一方、大径部10eの残りの半分の外周面、及び残り1つの傾斜面10fが非溶着範囲E4に対する案内面を構成する。
【0108】
アンビルローラ10Aが溶着範囲E3を移動する過程において、アンビルローラ10Aの溶着面10dは、付勢部材25による付勢力によりシートWを挟んだ状態で超音波ホーン6の出力面6eに押し付けられているとともに、シートWに対して転がり接触する。
【0109】
この状態で超音波ホーン6に超音波振動が与えられることによりシートWが超音波溶着される。
【0110】
アンビルローラ10Aが溶着範囲E3から非溶着範囲E2、E4に向けて移動を開始すると、アンビルローラ10Aの傾斜面10fは、被押付部材18の平坦面18bに当接する。さらに、アンビルローラ10Aの移動が進行すると、アンビルローラ10Aの傾斜面10fは、被押付部材18の平坦面18bに対して転がり接触し、アンビルローラ10Aの溶着面10dは、付勢部材25による付勢力に抗して傾斜面10fに沿って徐々に超音波ホーン6の各出力面6eから遠ざかる。そして、アンビルローラ10Aの移動がさらに進行すると、アンビルローラ10Aの大径部10eが被押付部材18の平坦面18bによって支持された状態となる。
【0111】
第2実施形態においても、アンビルローラ10Aの溶着範囲E3から非溶着範囲E2、E4への移動に応じて、付勢部材25の付勢力に抗してアンビルローラ10Aの溶着面10dを超音波ホーン6の出力面6eから遠ざけることができる。
【0112】
なお、前記大径部10eの外周面及び被押付部材18の平坦面18bに、アンビルローラ10Aの溶着範囲E3へ向けた移動を許容するとともにこの移動方向及び付勢部材25による付勢方向と直交する方向にアンビルローラ10Aが移動するのを規制するように、互いに係合可能な係合部を設けることもできる。
【0113】
<第3実施形態>
前記各実施形態に係る超音波溶着装置では、超音波ホーン6とアンビルローラ10とが相対変位可能であるが、超音波ホーン6及びアンビルローラ10の双方をシート保持ドラム5に対して相対変位させることもできる。つまり、相手側溶着具である超音波ホーン6がシート保持ドラム5に対して相対変位してもよい。
【0114】
図9に示すように、第3実施形態に係る超音波ホーン6は、アンビルユニット7の保持部材本体12に保持されている。したがって、アンビルユニット7の移動に応じて超音波ホーン6もシート保持ドラム5に対して移動する。
【0115】
第3実施形態では、超音波ホーン6と被押付部材18Bとが相対変位する。図9は、アンビルローラ10が非溶着範囲E4に変位した状態を示しているが、この状態で、被押付部材18Bの端部は、超音波ホーン6のスリット6d内に挿入されている。
【0116】
ここで、被押付部材18Bにおけるスリット6d内に常に挿入されている端部(図9の右側の端部)は、自由端とされている一方、被押付部材18Bの反対側の端部18aは、2本のボルトB1で固定されている。これにより、被押付部材18Bをシート保持ドラム5に対して確実に固定することができる。
【0117】
なお、被押付部材18Bに案内面21a、23aが設けられている点については、第1実施形態と同様である。
【0118】
第3実施形態においても、アンビルローラ10の溶着範囲E3から非溶着範囲E2、E4への移動に応じて、付勢部材25の付勢力に抗してアンビルローラ10の溶着面10dを超音波ホーン6の出力面6eからこれらの面の法線方向に遠ざけることができる。
【0119】
<第4実施形態>
前記実施形態では、出力面6eと溶着面10dとをこれらの面の法線方向に遠ざけるための被押付部材18について説明したが、被押付部材は、出力面6eと溶着面10dとをアンビルローラ10Bの移動方向に遠ざけるためのものであってもよい。
【0120】
以下、図10及び図11を参照して、第4実施形態に係る超音波溶着装置について説明する。なお、第1及び第2実施形態と同様の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0121】
第4実施形態に係る超音波溶着装置では、超音波ホーン6の出力面6eの長さ寸法D3と同一の溶着範囲E6と、平面視において溶着範囲E6から外れた非溶着範囲E5、E7とが設定されている。なお、図11は、溶着範囲E6及び非溶着範囲E5を覆うようにシートWが供給される例を示しているが、シートWは、少なくとも溶着範囲E6を覆うように供給されていればよい。
【0122】
超音波溶着装置は、シート保持ドラム5(図3参照)に固定された取付板24と、取付板24に取り付けられた一対の被押付部材26Aとを備えている。
【0123】
取付板24は、超音波ホーン6のスリット6dにより分岐された部分をそれぞれ通すための一対の挿通穴24aと、両挿通穴24a同士の間に位置して超音波ホーン6の分岐部分同士の間を通過する通過部24bとを有する。
【0124】
一対の被押付部材26Aは、それぞれ同様の構成を有するため、図11の左側の被押付部材26Aのみを説明し、右側の被押付部材26Aの説明を省略する。
【0125】
被押付部材26Aは、付勢部材25(図3参照)の付勢力により非溶着範囲E5内に位置するアンビルローラ10Bが押し付けられる案内面26c(被押付面)を有する。
【0126】
具体的に、被押付部材26Aは、案内面26cを有する本体部26aと、本体部26aを取付板24に取り付けるための一対の取付部26bとを備え、スリット6dの幅寸法D4よりも小さな厚み寸法D8を有する。
【0127】
本体部26aは、案内面26cがスリット6dの幅方向の範囲内に配置された状態で取付板24(シート保持ドラム5)に固定された略長方形の板状の部分である。また、本体部26aは、アンビルローラ10Bの移動方向において案内面26cが超音波ホーン6の出力面と連続し、かつ、案内面26cが超音波ホーン6の出力面6eと同一平面上に配置されるように取付板24に取り付けられている。具体的に、本体部26aは、図11に示す側面視において、超音波ホーン6の端面から、当該超音波ホーン6から離れる方向に延びるように配置されている。
【0128】
なお、案内面26cの一部が超音波ホーン6のスリット6d内に入り込んだ状態で被押付部材26Aが取付板24に取り付けられていてもよい。逆に、案内面26cと出力面6eとに亘ってアンビルローラ10Bが滑らかに移動することができる程度の隙間が案内面26cと出力面6eとの間に設けられていてもよい。
【0129】
一対の取付部26bは、本体部26aからアンビルローラ10Bの移動方向に突出するとともに本体部26aの両側に設けられている。一方の取付部26bは、超音波ホーン6のスリット6d内に配置され、他方の取付部26bは、スリット6dの外側に配置されている。取付部26bには、ボルトB2を通すための挿通孔(符号省略)が形成され、この挿通孔に通されたボルトB2の先端部を取付板24のねじ穴24dに螺合することにより被押付部材26Aを取付板24に取り付けることができる。
【0130】
ここで、第4実施形態に係るアンビルローラ10Bは、図10に示すように、各突出部10bと同一の半径を有する被支持部10gを有する。具体的に、被支持部10gは、一対の突出部10bの間でローラ本体10aから半径方向の外側に突出する。被支持部10gの外周面(外側面)は、被押付部材26Aの案内面26cに押し付けられる被支持面10cとして機能する。
【0131】
溶着範囲E6内に位置するアンビルローラ10Bの溶着面10dは、付勢部材25の付勢力によって、超音波ホーン6の出力面6eに押し付けられ、溶着面10dと出力面6eとの間でシートWが溶着される。非溶着範囲E5、E7内に位置するアンビルローラ10Bの被支持面(外側面)10cは、付勢部材25の付勢力によって案内面26c又はシートWに押し付けられる。アンビルローラ10Bが溶着範囲E6から非溶着範囲E5、E7に向けて移動すると、溶着面10dは、出力面6eからアンビルローラ10Bの移動方向に遠ざかる。
【0132】
このように第4実施形態によれば、アンビルローラ10Bが超音波ホーン6から外れた位置まで移動する場合に、アンビルローラ10Bをその移動方向に案内することができる。これにより、出力面6eと溶着面10dとをアンビルローラ10Bの移動方向に互いに遠ざけることができる。
【0133】
また、第4実施形態に係る超音波溶着装置は、図11に示す溶着範囲E6及び非溶着範囲E5、E7と図12に示す溶着範囲E9及び非溶着範囲E8、E10との間で溶着範囲を切換可能である。ここで、溶着範囲E9は、超音波ホーン6の長さ寸法D3の範囲内に設定されている。
【0134】
図12を参照して、超音波溶着装置は、上述した被押付部材26Aと異なる形状を持つ案内面26dを有する一対の被押付部材26Bを有する。なお、両被押付部材26Bは、同様の構成を有するため、非溶着範囲E8を定義するための被押付部材26Bのみについて説明する。また、被押付部材26Bは、上述した被押付部材26Aと案内面26d以外は同様の構成を有するため、案内面26dについてのみ説明する。
【0135】
案内面26dは、溶着範囲E9から非溶着範囲E8に向かうに従いシート保持ドラム5の径方向の外側に傾斜する傾斜面と、溶着範囲E9から遠ざかる方向に向けて傾斜面から出力面6eと平行な方向に延びる平坦面とを有する。アンビルローラ10Bが溶着範囲E9から非溶着範囲E8又は非溶着範囲E10に移動することに応じて、溶着面10dは、案内面26dによって付勢部材25の付勢力に抗して出力面6eからその法線方向に遠ざかる方向に案内される。
【0136】
取付板24は、アンビルローラ10Bの移動方向において異なる位置に設定された2つの取付位置に対する被押付部材26A、26Bの取り付けを許容する。
【0137】
具体的に、取付板24は、上述した被押付部材26Aを取り付けるための一対の外側ねじ穴24cと、被押付部材26Bを取り付けるための一対の内側ねじ穴24dとを有する。
【0138】
図12に示すように、被押付部材26Bの取付部26bの挿通穴に通されたボルトB2を内側ねじ穴24dに螺合することにより、溶着範囲E9及び非溶着範囲E8、E10が定義されるように、被押付部材26Bを取付板24に取り付けることができる。
【0139】
一方、被押付部材26Bを取り外した状態で、図11に示すように、被押付部材26Aの取付部26bの挿通穴に通されたボルトB2を外側ねじ穴24cに螺合することにより、溶着範囲E6及び非溶着範囲E5、E7が定義されるように、被押付部材26Aを取付板24に取り付けることができる。
【0140】
これにより、溶着範囲の異なる複数の使い捨ておむつ20を製造可能な超音波溶着装置を提供することができる。
【0141】
ここで、外側ねじ穴24c同士のピッチ及び内側ねじ穴24d同士のピッチは、互いに同一に設定されているとともに、両被押付部材26A、26Bについて取付部26bから案内面26c、26dの端部までの距離は同一に設定されている。そのため、被押付部材26Bを外側ねじ穴24cを利用して取付板24に取り付けることもできる。この場合、溶着範囲E6から非溶着範囲E5、E7へのアンビルローラ10Bの移動に応じて、溶着面10dが被押付部材26Bの案内面26dによって出力面6eからその法線方向にも遠ざかる。また、この場合には一種類の被押付部材26Bによって、溶着範囲E6と溶着範囲E9とを切り換えることができる。被押付部材26A、26Bの取付位置がアンビルローラ10Bの移動方向に連続的に調整可能となるようにシート保持ドラム5(取付板24)に対する被押付部材26A、26Bの取り付けを許容する取付部が被押付部材26A、26B及びシート保持ドラム5(取付板24)の少なくとも一方に設けられていてもよい。
【0142】
なお、図13に示すように、上述した非溶着範囲E7の外側にアンビルローラ10Bが被押付部材26Aに押し付けられないフリー範囲E11を設定することもできる。この場合、フリー範囲E11まで移動したアンビルローラ10Bの高さ位置を当該アンビルローラ10Bが案内面26c、26d上に戻ることができる位置に保持するための保持機構27が設けられていることが好ましい。
【0143】
保持機構27は、保持部材本体12(図3参照)に設けられたブラケット27aと、ブラケット27aを上下方向に貫通するストッパーボルト27bとを備えている。
【0144】
ストッパーボルト27bは、回動軸19bを中心とする回転に応じて予め設定された高さ位置まで移動した保持レバー19の基端部に当接可能な位置に設けられている。また、ストッパーボルト27bは、ブラケット27aに形成されたねじ穴(符号省略)に対する締め付け具合を調整することにより、保持レバー19に当接する高さ位置を調整することができる。
【0145】
なお、ストッパーボルト27bにより保持されるアンビルローラ10Bの高さ位置は、溶着範囲E6内に位置するアンビルローラ10Bの高さ位置と同等又はこれよりも少し下に設定される。
【0146】
このようにすれば、フリー範囲E11内においてアンビルローラ10Bが被押付部材26A、26Bに対して押し付けられていない状態で、アンビルローラ10Bを保持することができる。そのため、アンビルローラ10Bの交換等を容易に行うことができる。
【0147】
なお、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下の態様を採ることもできる。
【0148】
前記各実施形態では、移動側溶着具としてアンビルローラ10を例示し、相手側溶着具として超音波ホーン6を例示しているが、移動側溶着具としての超音波ホーンと、相手側溶着具としてのアンビルとを有する超音波溶着装置とすることもできる。
【0149】
つまり、超音波ホーンがシート保持ドラム5に対して溶着範囲と非溶着範囲との間で移動可能となるように、超音波ホーンをシート保持ドラム5に取り付けることができる。
【0150】
この場合、相手側溶着具(アンビル)の溶着面を含む端部は、当該端部を分岐するためのスリットが設けられている。また、超音波ホーンと被押付部材とが直接接触することは好ましくないため、シート保持ドラム5に対して超音波ホーンを支持するための部分を被押付部材に対して押し付けることが好ましい。
【0151】
また、相手側溶着具(アンビル)は、第1実施形態のようにシート保持ドラム5に対して固定されていてもよいが、第3実施形態のようにシート保持ドラム5に対して移動可能に取り付けられていてもよい。
【0152】
上述した全ての実施形態において、シート保持ドラム5(シートW)に対して移動可能な溶着具は、その移動に伴いシートW及び被押付部材に対して転がり接触可能となるローラにより形成することが好ましい。
【0153】
また、前記第1〜第3実施形態では、非溶着範囲E2、溶着範囲E3、及び非溶着範囲E4に亘って延びる1つの被押付部材18、18A、18Bについて説明したが、第4実施形態に示すように被押付部材は、少なくとも非溶着範囲に相当する範囲に設けられていればよい。
【0154】
例えば、非溶着範囲E2に相当する範囲に1つの被押付部材が設けられているとともに、非溶着範囲E4に相当する範囲に別の被押付部材が設けられていてもよい。また、非溶着範囲を1箇所のみに設定する場合には、そこに1つの案内部材が設けられていればよい。
【0155】
さらに、第1〜第4実施形態の構成を組み合わせることもできる。
【0156】
具体的に、第4実施形態の超音波溶着装置において、アンビルローラ10Bの移動方向及び付勢部材25による付勢方向と直交する方向におけるアンビルローラ10Bの移動が規制されるように、アンビルローラ10Bと被押付部材26A、26Bとが互いに係合していてもよい。
【0157】
なお、上述した具体的実施形態には以下の構成を有する発明が主に含まれている。
【0158】
上記課題を解決するために、本発明は、被溶着物を超音波溶着するための超音波溶着装置であって、被溶着物を保持する保持部材と、前記被溶着物に超音波振動を与える出力面を有する超音波ホーンと、前記超音波ホーンの出力面との間で前記被溶着物を溶着する溶着面を有するアンビルとを有する一対の溶着具であって、前記一対の溶着具のうちの一方である移動側溶着具は、当該移動側溶着具の出力面又は溶着面が前記保持部材に保持された被溶着物に平面視で重なるとともに前記一対の溶着具のうちの他方である相手側溶着具との間で前記被溶着物を溶着する溶着範囲と平面視で前記溶着範囲から外れた非溶着範囲とに亘って前記保持部材に対して移動可能である、一対の溶着具と、前記溶着範囲において前記出力面と前記溶着面とが互いに近づくとともに前記非溶着範囲において前記出力面と前記溶着面とが互いに遠ざかるように、前記移動側溶着具を前記相手側溶着具に対して変位させる変位機構とを備え、前記相手側溶着具の前記出力面又は前記溶着面を含む端部は、前記移動側溶着具の移動方向に延びるスリットにより前記移動方向と直交する方向に分岐しているとともに前記スリットの両側に位置して前記出力面又は前記溶着面として機能する一対の端面を有し、前記変位機構は、前記出力面と前記溶着面とがこれらの法線方向に近づくように前記移動側溶着具を前記相手側溶着具に向けて付勢する付勢機構と、前記付勢機構の付勢力によって前記非溶着範囲内に位置する前記移動側溶着具の外側面が押し付けられる被押付面を有し、かつ、前記被押付面が前記スリットの幅方向の範囲内に配置された状態で前記保持部材に固定された被押付部材とを備え、前記被押付部材の被押付面及び前記移動側溶着具の外側面の少なくとも一方は、前記移動側溶着具が前記溶着範囲から前記非溶着範囲に移動することに応じて前記出力面と前記溶着面とが互いに遠ざかる方向に前記移動側溶着具を案内する案内面として機能する、超音波溶着装を提供する。
【0159】
本発明では、相手側溶着具に向けて移動側溶着具が付勢され、この付勢力によって非溶着範囲に位置する移動側溶着具の外側面が被押付部材の被押付面に対して押し付けられる。
【0160】
そして、これらの面の少なくとも一方が案内面として機能することにより、移動側溶着具が溶着範囲から非溶着範囲に移動することに応じて出力面と溶着面とが互いに遠ざかる方向に移動側溶着具を案内することができる。
【0161】
そのため、移動側溶着具が溶着範囲に移動した状態においては付勢機構の付勢力によって出力面と溶着面とをこれらの面の法線方向に近づけて両者の間で被溶着物を超音波溶着することができる。一方、移動側溶着具が溶着範囲から非溶着範囲に移動することに応じて移動側溶着具が案内面に沿って案内されることにより出力面と溶着面とを互いに遠ざけることができる。
【0162】
したがって、本発明によれば、従来と異なり、アンビルを超音波ホーンに近づける又は遠ざける方向に駆動するための構成(シリンダ及びこれに駆動力を与える構成)、及びアンビルの駆動制御を省略することができる。
【0163】
さらに、本発明では、相手側溶着具の一対の端面の間(スリットの幅方向の範囲内)に被押付面が設けられているため、相手側溶着具の各端面の直近位置で当該各端面から移動側溶着具を確実に遠ざけることができる。
【0164】
したがって、超音波ホーン及びアンビルの磨耗及び劣化を確実に防止することができる。
【0165】
なお、本発明において、移動側溶着具は、溶着範囲と非溶着範囲とに亘って移動可能である。ここで、非溶着範囲は、平面視で溶着範囲から外れた位置にある。つまり、移動側溶着具は、溶着範囲の外側に位置する非溶着範囲で折り返して溶着範囲に移動する。
【0166】
ここで、移動側溶着具の移動の折り返し点においても被溶着物を溶着する場合には、移動側溶着具の減速時及び加速時においても被溶着物に対して超音波エネルギーが与えられるため、移動方向において均一に溶着を行うことが難しい。これに対し、本発明のように、移動側溶着具の折り返し点を溶着範囲の外側に設定することにより、溶着範囲における溶着を均一に行うことができる。
【0167】
なお、本発明において『被押付面がスリットの幅方向の範囲内に配置』されているとは、スリットの奥行き方向(移動側溶着具の移動方向)又はスリットの深さ方向において、被押付面がスリットの外側に配置されていることを許容する趣旨である。
【0168】
また、本発明において『付勢機構の付勢力によって非溶着範囲内に位置する移動側溶着具の外側面が押し付けられる(被押付面)』とは、被押付面と移動側溶着具の外側面との間に被溶着物が存在した状態で被押付面に対し移動側溶着具の外側面が押し付けられる場合も含む。
【0169】
前記超音波溶着装置において、前記案内面は、前記付勢機構の付勢力に抗して前記出力面と前記溶着面とがこれらの法線方向に互いに遠ざかる方向に前記移動側溶着具を案内可能な形状を有することが好ましい。
【0170】
この態様によれば、案内面によって出力面と溶着面とをこれらの法線方向に互いに遠ざけることができる。そのため、移動側溶着具の移動方向における相手側溶着具の出力面又は溶着面の範囲内で溶着範囲及び非溶着範囲を適宜設定することができる。
【0171】
前記超音波溶着装置において、前記保持部材は、前記移動側溶着具の移動方向において異なる位置に設定された複数の取付位置に対する前記被押付部材の取り付けを許容する被押付部材取付部を有することが好ましい。
【0172】
この態様によれば、溶着範囲及び非溶着範囲を移動側溶着具の移動方向の複数個所で変更することができる。そのため、溶着範囲の異なる複数の製品を製造可能な超音波溶着装置を提供することができる。
【0173】
一方、前記非溶着範囲は、前記相手側溶着具の出力面又は溶着面から前記移動側溶着具の移動方向に外れた位置に設定されている場合、前記案内面は、前記出力面と前記溶着面とが前記移動側溶着具の移動方向に互いに遠ざかる方向に前記移動側溶着具を案内可能な形状を有していてもよい。
【0174】
この態様によれば、移動側溶着具が相手側溶着具から外れた位置まで移動する場合に、当該移動側溶着具を前記移動方向に案内することにより、出力面と溶着面とを前記移動方向に互いに遠ざけることができる。
【0175】
前記超音波溶着装置において、前記非溶着範囲内に位置する移動側溶着具と前記被押付部材とは、前記移動側溶着具の前記溶着範囲へ向けた移動を許容するとともに前記移動方向及び前記付勢機構による付勢方向と直交する方向における移動側溶着具の移動が規制されるように、互いに係合していることが好ましい。
【0176】
この態様によれば、非溶着範囲内に位置する移動側溶着具と被押付部材とを、移動側溶着具の移動方向及び付勢方向と直交する方向に位置決めすることができる。
【0177】
したがって、移動側溶着具が溶着範囲に移動するのに先立って、移動側溶着具と相手側溶着具とを位置決めすることができ、これにより、溶着範囲に移動した移動側溶着具と相手側溶着具との間で確実に溶着を行うことができる。
【0178】
前記超音波溶着装置において、前記移動側溶着具は、前記被押付部材に対して転がり接触可能な外側面を有するローラ本体と、前記ローラ本体から外側に突出するとともに前記相手側溶着具の一対の端面との間で前記被溶着物を溶着する一対の突出部とを備え、前記被押付部材は、前記非溶着範囲内に位置する移動側溶着具における前記一対の突出部の間に挿入される被挿入部を有することが好ましい。
【0179】
この態様によれば、移動側溶着具において被溶着物の溶着に寄与しない領域(各突出部の間の領域)を利用して、非溶着範囲内に位置する移動側溶着具と被押付部材とを係合することができる。
【0180】
前記超音波溶着装置において、前記超音波溶着装置は、前記移動側溶着具の移動方向における前記溶着範囲の両側位置でそれぞれ前記出力面と前記溶着面とが互いに遠ざかる方向に前記移動側溶着具を案内するために、前記案内面を2つ有することが好ましい。
【0181】
この態様によれば、溶着範囲の両側位置の2箇所に非溶着範囲を設定することができる。そのため、これら2箇所の非溶着範囲の間で移動側溶着具を往復動作させることによって、移動側溶着具及び相手側溶着具の磨耗及び劣化を防止しつつ被溶着物を確実に溶着することができる。
【0182】
前記超音波溶着装置において、前記超音波ホーンは、超音波振動が入力される入力面を有する入力側端部と、前記スリットにより分岐しているとともに前記スリットの両側位置で超音波振動を出力する一対の出力面を有する出力側端部とを有する前記相手側溶着具であり、前記超音波ホーンの入力面と前記超音波ホーンの各出力面との間の距離は、前記入力面に入力される超音波振動の半波長に相当する距離に設定され、前記スリットは、前記超音波振動の節部に相当する位置又はこれよりも前記各出力面側の位置から前記出力側端部の端面までの範囲に形成されていることが好ましい。
【0183】
一般に、超音波ホーンにおいては、入力される超音波振動の節部を基準として入力面側の部分の質量に対する出力面側の部分の質量の比が小さいほど、出力振幅が大きくなることが知られている。
【0184】
ここで、前記態様によれば、スリットにより超音波ホーンにおける超音波振動の節部よりも出力面側の部分のみを軽量化することができるので、各出力面から出力される超音波振動の振幅(以下、出力振幅という)を大きくすることができる。
【0185】
特に、スリットが超音波振動の節部に相当する位置から出力側端部の端面までの範囲に形成されている場合には、スリットによる超音波ホーンの軽量化を最大限行なうことができる。
【0186】
なお、前記『節部』とは、超音波振動の波形において振幅が最小(0)となる位置である。
【0187】
また、本発明は、前記超音波溶着装置を用いて、着用者の腹部に配置される前腹部と、着用者の臀部に配置される後背部と、前記前腹部から着用者の両脚部の間を通って前記後背部まで延びる股下部とを有する使い捨ておむつを製造するための方法であって、前記前腹部と前記後背部とが前記股下部を介して縦方向に連結された構成要素が横方向に連続する連続体を準備する準備工程と、前記連続体を縦方向に二つ折りにする二つ折り工程と、前記移動側溶着具を前記溶着範囲と前記非溶着範囲とに亘って移動させるとともに前記超音波ホーンに超音波振動を入力することにより、前記相手側溶着具の一対の端面と前記移動側溶着具の出力面又は溶着面との間で前記連続体における前記前腹部の側縁部に相当する部分と前記後背部の側縁部に相当する部分との重なり部分の2箇所を同時に溶着する溶着工程と、前記溶着工程において形成された2箇所の溶着部の間で前記連続体を切断する切断工程とを含む、使い捨ておむつの製造方法を提供する。
【0188】
本発明に係る製造方法によれば、スリットの幅範囲内に設けられた被押付部材によって非溶着範囲内に位置する移動側溶着具を相手側溶着具から遠ざけることができる。
【0189】
したがって、本発明によれば、非溶着範囲内に位置する移動側溶着具を相手側溶着具から遠ざけることにより移動側溶着具及び相手側溶着具の磨耗及び劣化を防止することができる。
【0190】
また、本発明によれば、相手側溶着具の一対の端面と移動側溶着具の出力面又は溶着面との間で連続体の折り返し部分における2箇所(隣り合う2つの使い捨ておむつの溶着箇所)を同時に溶着し、スリットにより画定される連続体の非溶着範囲(2箇所の溶着部の間の範囲)で連続体を切断することにより、使い捨ておむつを製造することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15