(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エンジンに取り付けられ、内蔵する圧電素子にそれぞれ接続する第1端子及び第2端子を有する非共振型ノックセンサの上記エンジンへの取付状態を検知する取付状態検知装置であって、
上記非共振型ノックセンサの上記第1端子に接続する抵抗及び上記第2端子を接地する接地配線を有し、上記非共振型ノックセンサのノック検知周波数範囲よりも高い周波数の入力信号を、上記抵抗を介して上記第1端子に印加する入力部と、
上記入力信号に応答して上記非共振型ノックセンサの上記第1端子に生じた応答出力信号の大きさを検知する出力検知部と、
上記ノック検知周波数範囲よりも高い所定の判定周波数における上記応答出力信号の大きさまたは所定の判定周波数域における上記応答出力信号の大きさの周波数特性から、上記非共振型ノックセンサの上記エンジンへの取付状態を判定する、1又は複数の判定部と、を備える
非共振型ノックセンサの取付状態検知装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、非共振型ノックセンサ(以下、単に、センサまたはノックセンサともいう)をエンジンに取り付けるには、例えば、筒状に構成した非共振型ノックセンサの中心に取付ボルトを挿通して、エンジン(シリンダブロックなど)に締結することが行われているが、取付ボルトが緩むなど、非共振型ノックセンサのエンジンに対する取付状態が変動する場合がある。また、センサのエンジンへの取付時に、取付ボルトの締め付け不良などの取付不良が生じる場合もある。このような取付状態の異常が発生している場合には、センサより適切にエンジンのノッキングを検知できなかったり、車両走行による振動をノック振動と誤検知するなどの不具合を生じる虞がある。
【0007】
これに対し、エンジンの振動など通常運転時に発生する予測可能な大きさの振動による非共振型ノックセンサの出力信号の大きさを検知し、この出力信号の大きさと予測された出力信号の大きさとの大小から、センサの取付状態を検知することが考えられる。
【0008】
しかしながら、この手法で非共振型ノックセンサの取付状態を検知するには、判別に利用できる大きさの出力信号がセンサから出力されるように、或る程度大きなエンジンの振動を生じさせる必要がある。このため、例えばアイドリング時などの低負荷運転時やエンジンが停止している状態(アイドリングストップ中、運転終了によるエンジン停止中)などでは、エンジンの振動が小さいあるいはほとんど無いため、センサから十分な大きさの出力信号が得られず、取付状態を検知できない。
一方、走行中にセンサの出力信号の大きさを検知する場合には、エンジンの振動のほか、車両の振動も加わるが、これらの振動は一様でなく予測性も低いため、不要な振動を検知する虞があり、取付状態の検知確度が低下する。
このように、エンジンの振動などを用いて、取付ボルトの緩みなど、ノックセンサの取付状態の異常を検知するのは困難である。
【0009】
ところで、エンジンに取り付けられた状態における非共振型ノックセンサの電気的な特性を調査すべく、エンジンに取り付けた状態のセンサをネットワークアナライザに接続して、センサのインピーダンスの周波数特性を調べたところ、ノック検知周波数範囲(例えば2〜20kHz)よりも高い周波数範囲においては、ノック検知周波数範囲と異なり、共振点あるいは反共振点に対応すると考えられる極大あるいは極小のピークが複数現れることが判ってきた。
【0010】
さらに、これら複数のピークの中には、センサのエンジンへの取付状態、例えば、取付ボルトの緩み状態の違いに応じて、ピークの位置(周波数)が大きく変動するピークや、ピークにおけるインピーダンスの大きさが変化するピークがあることが判ってきた。また、特定の周波数に着目すると、この特定の周波数におけるインピーダンスと取付ボルトの緩み状態との間に相関がある場合があり、取付ボルトが緩むほど、インピーダンスが低下する周波数や、逆にインピーダンスが上昇する周波数が存在する場合があることも判ってきた。
【0011】
本件は、かかる知見に鑑みてなされたものであって、エンジンの振動に依存しないで、非共振型ノックセンサの取付状態を適切に検知できる非共振型ノックセンサの取付状態検知システムを提供するものである。また、エンジンに取り付けられた非共振型ノックセンサに用いて、非共振型ノックセンサの取付状態を適切に検知できる非共振型ノックセンサの取付状態検知装置を提供するものである。加えて、エンジンに取り付けられた非共振型ノックセンサの取付状態を適切に検知できる非共振型ノックセンサの取付状態検知方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための一態様は、エンジンに取り付けられ、内蔵する圧電素子にそれぞれ接続する第1端子及び第2端子を有する非共振型ノックセンサと、上記非共振型ノックセンサの上記第1端子に接続する抵抗及び上記第2端子を接地する接地配線を有し、上記非共振型ノックセンサのノック検知周波数範囲よりも高い周波数の入力信号を、上記抵抗を介して上記第1端子に印加する入力部と、上記入力信号に応答して上記非共振型ノックセンサの上記第1端子に生じた応答出力信号の大きさを検知する出力検知部と、上記ノック検知周波数範囲よりも高い所定の判定周波数における上記応答出力信号の大きさまたは所定の判定周波数域における上記応答出力信号の大きさの周波数特性から、上記非共振型ノックセンサの上記エンジンへの取付状態を判定する、1又は複数の判定部と、を備える非共振型ノックセンサの取付状態検知システムである。
【0013】
この取付状態検知システムでは、非共振型ノックセンサの第1端子に入力信号を印加する入力部を備えるので、入力信号により、センサを適切なタイミングで能動的かつ電気的に駆動でき、入力信号に対するセンサからの応答出力信号を得て、判定部でセンサのエンジンへの取付状態を判定することができる。このため、エンジンなどの振動の有無に拘わらず、適切なタイミングで、センサの取付状態を検知できる。
また、判定部で、ノック検知周波数範囲よりも高い周波数の入力信号に対応した、ノック検知周波数範囲よりも高い所定の判定周波数における応答出力信号の大きさや、所定の判定周波数域における応答出力信号の大きさの周波数特性から、センサのエンジンへの取付状態を判定する。これにより、センサの取付状態を適切に検知できる。
【0014】
なお、「非共振型ノックセンサ」は、前述したように、ノック検知周波数範囲内に共振点をもたず、ノック検知周波数範囲で検出感度がほぼ平坦な周波数特性を有するノックセンサである。
「ノック検知周波数範囲」は、非共振型ノックセンサにおいて、エンジンのノック振動を検知できる周波数範囲を指し、例えば、2〜20kHzが例示される。
【0015】
前述した非共振型ノックセンサのノック検知周波数範囲よりも高い周波数域におけるインピーダンス特性の説明からも判るように、エンジンに取り付けられたセンサに、ノック検知周波数範囲よりも高い周波数域の入力信号を入力すると(例えば、入力信号の周波数を徐々に高くするなど一方向に変化させながら入力すると)、これに応じて、応答出力信号の周波数も変化し、特有の周波数特性(周波数分布)を示す。この場合において、非共振型ノックセンサのエンジンへの取り付けが適正である場合の応答出力信号の周波数特性と、取付が異常(取り付けボルトの緩み発生など)である場合の応答出力信号の周波数特性とを比較すると、差異がある周波数あるいは周波数域が存在する。この部分を判定周波数あるいは判定周波数域として利用する。
即ち、「所定の判定周波数」は、当該判定周波数の入力信号に対する応答出力信号の大きさが、非共振型ノックセンサのエンジンへの取付状態の違い(例えば、取付ボルトの締め付け状態の違い)によって変動するために、応答出力信号の大きさを検知することで、センサのエンジンへの取付状態を判定できる周波数である。例えば、当該判定周波数における応答出力信号の大きさと取付ボルトの締め付け状態との間に相関があり、取付ボルトが緩むほど応答出力信号の大きさが低下する周波数や、これとは逆に取付ボルトが緩むほど応答出力信号の大きさが増大する周波数が挙げられる。
また、「所定の判定周波数域」は、当該判定周波数域にわたって(例えば、周波数を徐々に高く走査した)入力信号に対する応答出力信号の大きさの周波数特性が、センサのエンジンへの取付状態の違いによって変化するために、応答出力信号の大きさの周波数特性の変動を検知することで、センサのエンジンへの取付状態を判定できる周波数域である。例えば、センサのエンジンへの取付状態に応じて、当該判定周波数域内に現れる共振点などの極大あるいは極小のピークの位置(周波数)が変動するため、当該ピークの周波数を検知することで、センサのエンジンへの取付状態を判定可能となる周波数域や、センサのエンジンへの取付状態に応じて、当該判定周波数域内に現れるピークにおける応答出力信号の大きさが変化するため、当該ピークにおける答出力信号の大きさを検知することで、センサのエンジンへの取付状態を判定可能となる周波数域が挙げられる。
【0016】
「入力部」は、センサの第1端子に所定の判定周波数の入力信号を印加する。この入力部における入力信号の入力パターンとしては、所定の判定周波数の入力信号を第1端子に印加するほか、所定の判定周波数域にわたり、周波数を徐々に高くして周波数を走査した各入力信号を第1端子に印加するパターンが挙げられる。また、1又は複数の判定周波数あるいは判定周波数域を含む周波数域にわたり周波数を走査した各入力信号をセンサに入力するパターンも挙げられる。
【0017】
非共振型ノックセンサのエンジンへの「取付状態」とは、センサでエンジンの振動を検知できるように定められた取付手法に従って、エンジン(例えばシリンダブロック)にセンサを取り付けた場合において、そのセンサのエンジンへの結合の状態を指す。例えば、中央に開けた挿通孔に取付ボルトを挿通してエンジンに取り付けるタイプのセンサにおいては、センサに挿通した取付ボルトの締め付け状態(取付ボルトの緩み状態)が挙げられる。なお、センサ内の部品の組付状態も、センサの取付状態に含める。従って、センサ内の部品の組み付け状態が変化したために(例えば、センサに内蔵する圧電素子に対する押圧力が適正値よりも減少したために)、取付ボルトは緩んでいなくとも、取付ボルトが緩んだ場合と同様に、応答出力信号の大きさの周波数特性が変動するようなセンサ内の部品の組付状態の変化も、センサの取付状態の変化に含む。
【0018】
判定部における「判定」の判定内容としては、例えば、センサのエンジンへの取付状態について良否を分けるしきい値を用いて、正常/異常を分ける判定のほか、例えば、取付状態のレベル判定(例えば、5段階評価によるレベル判定)や取付状態(相当する取付ボルトの締め付けトルクの大きさ)の値を示す判定も含まれる。
【0019】
上述の非共振型ノックセンサの取付状態検知システムであって、前記判定部を複数備え、複数の上記判定部の判定の結果を用いて、総合判定する総合判定部を備える非共振型ノックセンサの取付状態検知システムとすると良い。
【0020】
1つの判定周波数あるいは判定周波数域における判定結果から、取付状態の適否などを判定する場合、判定を誤ることもありうる。
これに対し、このシステムでは、複数の判定部の結果を用い、さらに総合判定部で総合判定を行うので、さらに適切にセンサのエンジンへの取付状態を判定できる。
【0021】
総合判定部での総合判定の手法としては、例えば、複数の判定部のいずれもが異常と判定した場合にのみ異常と判定する手法や、各判定部の判定結果の多数決で決定する手法、いずれか1つの判定部でも異常と判定した場合には異常と判定する手法などを採用しうる。また、各判定部で取付状態のレベル判定を行う場合には、各判定部の判定レベルの平均を得ることもできる。これらのいずれの手法を採用するかは、判定部における判定の手法や、各判定部における判定の確度(信頼性)、他の判定部の判定との関連性などを考慮して決定すると良い。
【0022】
上記のいずれかに記載の非共振型ノックセンサの取付状態検知システムであって、前記非共振型ノックセンサの前記第1端子に接続し、前記エンジンのノック周波数を含む通過周波数帯域を有するフィルタと、上記フィルタを介して、前記エンジンの振動による上記非共振型ノックセンサの振動出力信号を検知するマイクロプロセッサの第1アナログ入力部を有するノック検出部を備え、前記入力部は、前記抵抗に接続する上記マイクロプロセッサのデジタル出力部を有し、前記出力検知部は、前記非共振型ノックセンサの前記第1端子に導通する上記マイクロプロセッサの第2アナログ入力部を有する非共振型ノックセンサの取付状態検知システムとすると良い。
【0023】
このシステムでは、フィルタを通じて、センサの応答出力信号を第1アナログ入力部からマイクロプロセッサに取り込んで、エンジンのノックの有無を検知する。このほか、同じマイクロプロセッサのデジタル出力部を入力部に用い、かつ、同じマイクロプロセッサの第2アナログ入力部を出力検知部に用いる。即ちこのシステムは、エンジンのノッキング検知システムを兼ねている。
このためこのシステムでは、ノック振動の検知に用いるマイクロプロセッサで、ノック検出部のほか、入力部、出力検知部を構成でき、非共振型ノックセンサのノッキング検知システムに本システムを加入するにあたり、改変をごく僅かで済ますことができる。
【0024】
なお、「フィルタ」は、ノック周波数を含む通過周波数帯域の信号は通し(減衰させず)、他の周波数の信号は通さない(減衰させる)特性を有する機能部であり、例えば、バンドパスフィルタ(以下、BPFともいう)が挙げられるほか、ハイパスフィルタやローパスフィルタを用いることもできる。
【0025】
さらに、上述のいずれかに記載の非共振型ノックセンサの取付状態検知システムであって、前記エンジンの停止中に、前記入力部、出力検知部、及び判定部の作動を許可する許可部、を備える非共振型ノックセンサの取付状態検知システムとすると良い。
【0026】
このシステムでは、エンジン停止中にセンサの取付状態を検知するので、走行に伴う車両の振動やエンジンからの振動に伴ってノックセンサから生じる信号が無いため、より確実にセンサのエンジンへの取付状態を判定することができる。
【0027】
前記課題を解決するための他の態様は、エンジンに取り付けられ、内蔵する圧電素子にそれぞれ接続する第1端子及び第2端子を有する非共振型ノックセンサの上記エンジンへの取付状態を検知する取付状態検知装置であって、上記非共振型ノックセンサの上記第1端子に接続する抵抗及び上記第2端子を接地する接地配線を有し、上記非共振型ノックセンサのノック検知周波数範囲よりも高い周波数の入力信号を、上記抵抗を介して上記第1端子に印加する入力部と、上記入力信号に応答して上記非共振型ノックセンサの上記第1端子に生じた応答出力信号の大きさを検知する出力検知部と、上記ノック検知周波数範囲よりも高い所定の判定周波数における上記応答出力信号の大きさまたは所定の判定周波数域における上記応答出力信号の大きさの周波数特性から、上記非共振型ノックセンサの上記エンジンへの取付状態を判定する、1又は複数の判定部と、を備える非共振型ノックセンサの取付状態検知装置である。
【0028】
この取付状態検知装置では、非共振型ノックセンサの第1端子に入力信号を印加する入力部を備えるので、この入力信号により、適切なタイミングで能動的かつ電気的にセンサを駆動でき、入力信号に対するセンサからの応答出力信号を得て、判定部でセンサのエンジンへの取付状態を判定することができる。このため、エンジンなどの振動の有無に拘わらず、適切なタイミングで、センサの取付状態を検知できる。
また、ノック検知周波数範囲よりも高い周波数の入力信号をセンサに入力し、判定部で、ノック検知周波数範囲よりも高い所定の判定周波数における応答出力信号の大きさや、所定の判定周波数域における応答出力信号の大きさの周波数特性から、センサのエンジンへの取付状態を判定するので、センサの取付状態を適切に検知できる。
【0029】
上述の非共振型ノックセンサの取付状態検知装置であって、前記判定部を複数備え、複数の上記判定部の判定の結果を用いて、総合判定する総合判定部を備える非共振型ノックセンサの取付状態検知装置とすると良い。
【0030】
1つの判定周波数あるいは判定周波数域における判定結果から、取付状態の適否などを判定すると、判定を誤ることもありうる。しかし、この取付状態検知装置では、複数の判定部の結果を用いて総合判定部で総合判定を行うので、さらに適切に取付状態を判定できる。
【0031】
また上述のいずれかに記載の非共振型ノックセンサの取付状態検知装置であって、前記非共振型ノックセンサの前記第1端子に導通し、前記エンジンのノック周波数を含む通過周波数帯域を有するフィルタと、上記フィルタを介して、前記エンジンの振動による上記非共振型ノックセンサの振動出力信号を検知するマイクロプロセッサの第1アナログ入力部を有するノック検出部を備え、前記入力部は、前記抵抗に接続する上記マイクロプロセッサのデジタル出力部を有し、前記出力検知部は、前記非共振型ノックセンサの前記第1端子に導通する上記マイクロプロセッサの第2アナログ入力部を有する非共振型ノックセンサの取付状態検知装置とすると良い。
【0032】
この取付状態検知装置では、フィルタを通じて、センサの応答出力信号をマイクロプロセッサの第1アナログ入力部からノック検出部に取り込んで、エンジンのノックの有無を検知する。このほか、同じマイクロプロセッサのデジタル出力部を入力部に用い、かつ、同じマイクロプロセッサの第2アナログ入力部を出力検知部に用いる。即ちこの装置は、エンジンのノッキング検知装置を兼ねている。
このためこの装置では、ノック振動の検知に用いるマイクロプロセッサで、ノック検出部のほか、入力部、出力検知部を構成でき、非共振型ノックセンサのノッキング検知装置に本装置を加入するにあたり、改変をごく僅かで済ますことができる。
【0033】
さらに上述のいずれか1項に記載の非共振型ノックセンサの取付状態検知装置であって、前記エンジンの停止中に、前記入力部、出力検知部、及び判定部の作動を許可する許可部、を備える非共振型ノックセンサの取付状態検知装置とすると良い。
【0034】
この装置では、エンジン停止中にセンサの取付状態を検知するので、走行に伴う車両の振動やエンジンからの振動に伴ってノックセンサから生じる信号が無いため、より確実にセンサのエンジンへの取付状態を判定することができる。
【0035】
さらに他の態様は、エンジンに取り付けられ、内蔵する圧電素子にそれぞれ接続する第1端子及び第2端子を有する非共振型ノックセンサの取付状態検知方法であって、上記第1端子に抵抗が接続し、上記第2端子が接地配線を介して接地された上記非共振型ノックセンサの上記第1端子に、上記抵抗を介して、上記非共振型ノックセンサのノック検知周波数範囲よりも高い所定の判定周波数の入力信号をまたは所定の判定周波数域にわたる入力信号を印加し、上記入力信号に応答して上記第1端子に生じた上記所定の判定周波数の応答出力信号の大きさまたは上記所定の判定周波数域にわたる応答出力信号の大きさを検知し、上記所定の判定周波数における上記応答出力信号の大きさまたは上記所定の判定周波数域における上記応答出力信号の大きさの周波数特性から、上記非共振型ノックセンサの上記エンジンへの取付状態を判定する非共振型ノックセンサの取付状態検知方法である。
【0036】
この取付状態検知方法では、非共振型ノックセンサの第1端子に入力信号を印加するので、この入力信号により、適切なタイミングで能動的かつ電気的にセンサを駆動でき、入力信号に対するセンサからの応答出力信号を得て、判定部でセンサのエンジンへの取付状態を判定することができる。このため、エンジンなどの振動の有無に拘わらず、適切なタイミングで、センサの取付状態を検知できる。
また、ノック検知周波数範囲よりも高い所定の判定周波数の入力信号をまたは所定の判定周波数域にわたる周波数の入力信号をセンサに入力し、ノック検知周波数範囲よりも高い所定の判定周波数における応答出力信号の大きさや、所定の判定周波数域における応答出力信号の大きさの周波数特性から、センサのエンジンへの取付状態を判定するので、センサの取付状態を適切に検知できる。
【0037】
また上述の非共振型ノックセンサの取付状態検知方法であって、前記非共振型ノックセンサの前記第1端子に、前記入力信号として、互いに異なる複数の、前記所定の判定周波数の入力信号をまたは所定の判定周波数域にわたる入力信号を印加し、前記応答出力信号として、互いに異なる複数の、前記所定の判定周波数の応答出力信号の大きさまたは所定の判定周波数域にわたる応答出力信号の大きさを検知し、互いに異なる複数の、上記所定の判定周波数における上記応答出力信号の大きさからまたは上記所定の判定周波数域における上記応答出力信号の大きさの周波数特性から得た、複数の前記取付状態の判定を総合判定して、前記取付状態を判定する非共振型ノックセンサの取付状態検知方法とすると良い。
【0038】
この取付状態検知方法では、センサの第1端子に、互いに異なる複数の判定周波数の入力信号をまたは所定の判定周波数域にわたる入力信号を印加し、複数の判定周波数あるいは判定周波数域における判定の結果を用いて総合判定を行うので、さらに適切に取付状態を判定できる。
【0039】
また上述のいずれかに記載の非共振型ノックセンサの取付状態検知方法であって、前記エンジンの停止中に、前記入力信号の印加、前記応答出力信号の大きさの検知、及び前記取付状態の判定を行う非共振型ノックセンサの取付状態検知方法とすると良い。
【0040】
この取付状態検知方法では、エンジン停止中にセンサの取付状態を検知するので、走行に伴う車両の振動やエンジンからの振動に伴ってノックセンサから生じる信号がないため、このような信号の影響を受けることが無く、より確実にセンサのエンジンへの取付状態を判定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0042】
(実施形態)
本件技術の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
図1に、本実施形態に係るノックセンサ検知システム(以下単に、システムともいう)1の構成を示す。また、
図2に、取付ボルトBLを用いて非共振型ノックセンサ10をエンジンENGに取り付けた状態を示す。
【0043】
<非共振型ノックセンサ>
まず、非共振型ノックセンサ10について、
図2を参照して説明する。
図2に示す本実施形態のノックセンサ10は、中空の筒状部13a及びこの下端に位置し外側に膨らむフランジ部13bを有する金属製の主体金具13等から構成されている。主体金具13の筒状部13aの径方向外側で、フランジ部13bの図中上方には、下から順に、それぞれ環状に形成された、絶縁部材14a、第1電極部材15a、圧電素子11、第2電極部材15b、及び絶縁リング14bが配置されている。そして、この絶縁リング14bの上に環状錘(ウエイト)16が配置され、この環状錘16の上には、バネ性を有する座金である皿バネ17が配置され、この皿バネ17の上から、筒状部13aの外周に形成された雄ネジ部13cに螺合して、ナット18がねじ込まれている。このナット18の締め付けによって、圧電素子11は、取付軸線AXに沿う方向(図中上下方向)に加圧されると共に、主体金具13と一体となり、主体金具13のフランジ部13bに伝わった振動が、確実に圧電素子11に伝わり、振動に応じた圧電素子11の出力が得られる構成となっている。
【0044】
圧電素子11を挟む第1電極部材15a及び第2電極部材15bは、共にその外周縁から、
図2において、右方(外側)に延びる帯状の延出部15ae,15beを有している。さらにこの延出部15ae,15beの先端部位は、樹脂製のコネクタハウジング部19a内において斜め上向きに突出して、第1端子部15a1及び第2端子部15b1となっている。なお、
図2においては、延出部15ae,15beの一部及び第1端子部15a1と第2端子部15b1とは重なっているため、第1電極部材15aの延出部15ae及び第1端子部15a1のみが見えているが、延出部15ae,15be及び第1,第2端子部15a1,15b1とは、所定の間隔をおいて略平行に並んで配置されている。この第1端子部15a1及び第2端子部15b1が、センサ10の第1端子10a及び第2端子10bである。
【0045】
さらに、第1電極部材15a及び第2電極部材15bの延出部15ae,15be同士の間には、内蔵抵抗12(
図1参照)が接続されており、第1端子部15a1(第1端子10a)及び第2端子部15b1(第2端子10b)から見て、圧電素子11と内蔵抵抗12とが並列に接続されている。
【0046】
このセンサ10では、前述のように筒状部13aの径方向外側でフランジ部13bの上方に配置されて組み付けられた各部品14a,11,16等の外側に、これらを包囲するように樹脂製のカバー部材19が例えば射出成形により形成されている。このカバー部材19は、図中右方に延出して、前述したように第1,第2端子部15a1,15b1を囲むコネクタハウジング部19aを構成している。
【0047】
このノックセンサ10は、
図2に示したように、取付ボルトBLの頭部BLTを主体金具13の筒状部13aに係合させる。これと共に、筒状部13a内に開けられたボルト挿通孔13hに取付ボルトBLの軸部BLJを挿通し、エンジンENGのエンジンブロックEBに穿孔した取付孔EBHにねじ込むことで、センサ10の主体金具13のフランジ部13bがエンジンブロックEBの外表面EBSに圧接するように取り付けられる。かくして、エンジンENGのノック振動などの振動が、エンジンブロックEBを通じ、センサ10の主体金具13のフランジ部13bに伝わると、圧電素子11にエンジンENGの振動に応じた振動出力信号Svo(出力電圧Vvo)が発生する。
【0048】
<センサの出力電圧の周波数特性>
ところで本実施形態のセンサ10のエンジンブロックEBへ取付状態には、即ち、主体金具13のフランジ部13bがエンジンブロックEBの外表面EBSに圧接する程度には、適切な範囲があり、取付ボルトBLの締付トルクTで表すと、T=20〜30N・m(標準取付トルク)とするのが好ましい。締付トルクTをこの範囲とした場合には、エンジンの振動周波数がノック検知周波数範囲RK(RK=2〜20kHz)において、センサ10(圧電素子11)の出力電圧Vvoは、ほぼ平坦な周波数特性を示す。
【0049】
一方、前述したように、センサ10のエンジンブロックEBへ取付状態が変化すると、適切にノック振動を検出できない場合があることが判ってきた。具体的には、取付ボルトBLの締付トルクTを変化させると、センサ10の出力電圧Vvoの周波数特性が変化する。そこで以下では、エンジンブロックEBを模したブロックにセンサ10を取付ボルトBLを用いて取り付ける。取付ボルトBLの締付トルクTを、T=0,0.5,1,3,20N・mの5段階に変化させた場合において、ブロック及びこれに取り付けたセンサ10を、加振機(ブリュエル・ケアー社製、品番4809)にセットし、ノック検知周波数範囲RKを含む周波数f=2〜40kHzの周波数範囲で正弦波振動の周波数を変化(走査)させつつ、加速度29.4m/s
2一定の条件で加振したときの、センサ10の振動出力信号Svoの大きさ(出力電圧Vvo)の変化を、
図7に示す。
【0050】
図7において実線で示すように、ボルトBLの締付トルクTがT=20N・mの場合には、ノック検知周波数範囲RK=2〜20kHzの範囲で、振動出力信号Svoの出力電圧Vvoは、ほぼ一定の100mV/29.4m/s
2であることが判る。即ち、センサ10は、取付ボルトBLを締付トルクT=20N・mで締め付けた場合、周波数f=2〜20kHzの範囲(ノック検知周波数範囲RK)において、共振点を有さず、ほぼフラットな周波数特性を有することが判る。従って、前述したように、取付ボルトBLを締付トルクT=20N・mで締め付けた場合には、BPF23の通過帯域を、センサ10を取り付けるエンジンENGに固有のノック振動の周波数を含む範囲に設定することで、出力電圧Vvoから、BPF23及び第1アナログ入力部21cを通じて、マイクロプロセッサ21で、適切にノック振動を検知することができる。なお、ノック検知周波数範囲RKよりも高い周波数f=31〜35kHz付近に、極大及び極小点が現れるが、大きな共振点となっていないことも判る。
【0051】
一方、
図7において一点鎖線で示すように、取付ボルトBLを締付トルクT=3N・mで締め付けた場合には、周波数f=26.4kHz付近に大きな鋭い共振点が現れることが判る。取付ボルトBLの軸部BLJの有する弾性と取付ボルトBL及びセンサ10の質量とで生じる共振であると推測される。但し、ノック検知周波数範囲RK(2〜20kHzの範囲)では、出力電圧Vvoの周波数特性は、ほぼフラットであることも判る。従って、取付ボルトBLが緩んでも、締付トルクT=3N・mに相当する程度までならば、センサ10としては使用しうることが判る。とは言え、この状態では、締付トルクTを安定して維持することは難しく、車両の走行に伴う振動やエンジンの振動などにより、取付ボルトBLの締結が容易に緩み、締付トルクTの更なる低下が予測される。従って、この締付トルクT=3N・mの状態を、センサ10の取付状態の異常であると判断し、運転者に警告を発するなどを行うと、適切にノック振動を把握してエンジンENGの制御に適切に行えている間に、センサ10の保守(取付ボルトBLの増し締め)を行わせることができる。
【0052】
さらに、
図7において間隔の広い破線で示すように、取付ボルトBLを締付トルクT=1N・mで締め付けた場合には、周波数f=19.8kHz付近に大きな鋭い共振点が現れることが判る。この共振点は、締付トルクT=3N・mの場合には周波数f=26.4kHz付近に生じていた共振と同じモードであるが、締付トルクTが低下したことで、共振周波数が低下したと考えられる。但し、締付トルクT=3N・mの場合とは異なり、この締付トルクT=1N・mの場合には、もはやノック検知周波数範囲RK(2〜20kHzの範囲)で、出力電圧Vvoの周波数特性がフラットであるとは言えず、適用するエンジンENGによっては(特にノック振動の周波数が高いエンジンでは)、ノック振動以外の振動により、大きな出力電圧が発生するので、適切にノック振動を検知できない虞がある。
【0053】
さらに、
図7において間隔が中程度の破線で示すように、取付ボルトBLを締付トルクT=0.5N・mで締め付けた場合には、周波数f=9〜13kHzの範囲に、いくつかの極大及び極小のピークが現れることが判る。様々なモードの共振が混在していると考えられる。また、この締付トルクT=0.5N・mの場合には、ノック検知周波数範囲RK(2〜20kHzの範囲)のほぼ中央部分に、極大、極小にピークがいくつも現れており、適用するエンジンENGのノック振動の周波数が(例えば5kHz以下程度に)十分に低い場合を除いて、適切にノック振動を検知できないと考えられる。なお、この締付トルクT=0.5N・mの場合は、取付ボルトBLを手指で強く締めた状態に相当する。
【0054】
さらに、
図7において点をつなげた細かい破線で示すように、取付ボルトBLを締付トルクT=0N・mの場合、即ち、取付ボルトBLの頭部BLTがセンサ10の主体金具13に当接するが、圧接しない状態では、全範囲(2〜40kHz)において、出力電圧Vvoがごく低い値となっている。センサ10がエンジンブロックEBと一体になっておらず、エンジンブロックEBの振動がセンサ10に伝わらず、振動を検知できない状態であることが判る。
【0055】
<センサのインピーダンスの周波数特性>
さらに、前述したように、ノック検知周波数範囲RK(本実施形態では2〜20kHz)よりも高い周波数範囲において、ブロックに取り付けたセンサ10のインピーダンスZsの周波数特性を測定すると、いくつかの共振点あるいは反共振点に対応すると考えられる極大あるいは極小のピークが現れることが判ってきた。しかも、取付ボルトBLの締付トルクTの大きさに応じて、センサ10のインピーダンスZsの周波数特性が変化することが判ってきた。そこで、上述のセンサ10の出力電圧Vvoの周波数特性を取得した場合(
図7参照)と同じく、取付ボルトBLの締付トルクTを、T=0,0.5,1,3,20N・mの5段階に変化させた場合において、センサ10のインピーダンスZsを測定した。具体的には、ブロックに取り付けたセンサ10の第1,第2端子10a,10bを、ネットワークアナライザ(アンリツ社製、MS4630B)に接続して、ノック検知周波数範囲RK(本実施形態では2〜20kHz)よりも高い周波数f=30〜80kHzの周波数範囲にわたり、センサ10のインピーダンスZsを測定した(
図8参照)。さらに具体的には、ブロックに所定の締付トルクTでセンサ10を取り付けた後、インピーダンスZsの周波数特性を測定した(
図8参照)。これを、各締付トルクTについて繰り返して、センサ10のインピーダンスZsの周波数特性(
図8参照)を取得した。
【0056】
図8に示すインピーダンスZsの周波数特性の各グラフは、
図7に示した出力電圧Vvoの周波数特性のグラフとは異なり、いずれのトルクTにおいても、複雑にインピーダンスZsが変化する特性を示している。電気的に、センサ10を見た場合、圧電素子11をはじめ、各部品の持つ固有振動モードによる共振や反共振が生じるためと考えられる。また、各締付トルクTの大きさにより、インピーダンスZsの大きさが、大きく異なる周波数あるいは周波数領域があることが判る。
【0057】
まず、
図8において、実線で示すように、ボルトBLの締付トルクTがT=20N・mの場合について検討する。この場合、周波数f=42.1kHz付近に、他のトルクに比してインピーダンスZsが低く、鋭い共振点(インピーダンスZsが低くなる極小のピーク、極小点)が現れる。また、周波数f=63.3kHz付近にも、他のトルクに比してインピーダンスZsが低い共振点が現れることが判る。さらに、周波数f=68.5kHz付近にも、共振点が現れる。但しこの共振点は、前の2つとは異なり、他のトルクの方が、共振点におけるインピーダンスZsが低い。そのほか、後述するように、他の締付トルクTがT=3,1,0.5,0N・mの場合には、周波数f=43〜58kHzの領域に、共振点がそれぞれ現れる。しかるに、この締付トルクTがT=20N・mの場合には、共振点が現れないことが判る。
【0058】
次に、
図8において一点鎖線で示すように、取付ボルトBLを締付トルクT=3N・mで締め付けた場合について検討する。この場合、周波数f=38.5kHz付近に、共振点(インピーダンスZsが低くなる極小のピーク、極小点)が現れる。しかし、締付トルクTがT=20N・mの場合に共振点が存在した周波数f=42.1kHz付近には、共振点が存在しない。一方、周波数f=63.3kHz付近に共振点が現れている。但し、この共振点におけるインピーダンスZsは、締付トルクTがT=20N・mの場合よりも大きく(ピークの深さが浅く)なっている。また、周波数f=69.2kHz付近にも、共振点が現れる。この共振点におけるインピーダンスZsは、締付トルクT=20N・mの場合とほぼ同じであり、他のトルク(T=1,0.5,0N・m)の方が、共振点のインピーダンスZsが低い。さらに、周波数f=43〜58kHzの領域についてみると、周波数f=51.9kHz付近、及び周波数f=53.1kHz付近に、共振点が現れる。
【0059】
また、
図8において間隔の広い破線で示すように、取付ボルトBLを締付トルクT=1N・mで締め付けた場合について検討する。この場合、周波数f=38〜43kHzの範囲に極小ピークは観測されない。即ち、締付トルクT=1N・mの場合においても、締付トルクTがT=20N・mの場合に共振点が存在した周波数f=42.1kHz付近には、共振点が存在しない。一方、周波数f=63.0kHz付近に共振点(インピーダンスZsが低くなる極小のピーク、極小点)が現れている。但し、この共振点におけるインピーダンスZsは、締付トルクTがT=20N・m及び3N・mの場合よりも大きく(ピークの深さが浅く)なっている。また、周波数f=68.8kHz付近にも、共振点が現れる。但し、この共振点におけるインピーダンスZsは、締付トルクT=20N・m及び3N・mの場合よりも小さく低い(ピークの深さが深い)。さらに、周波数f=43〜58kHzの領域についてみると、周波数f=48.1kHz付近に、共振点が現れる。
【0060】
また、
図8において間隔が中程度の破線で示すように、取付ボルトBLを締付トルクT=0.5N・mで締め付けた場合について検討する。この場合も、周波数f=38〜43kHz付近に極小ピークは観測されない。即ち、締付トルクT=0.5N・mの場合においても、締付トルクTがT=20N・mの場合に共振点が存在した周波数f=42.1kHz付近には、共振点が存在しない。一方、周波数f=62.2kHz付近に共振点(インピーダンスZsが低くなる極小のピーク、極小点)が現れている。但し、この共振点におけるインピーダンスZsは、締付トルクTがT=20N・m,3N・m及び1N・mの場合よりも大きく(ピークの深さが浅く)なっている。また、周波数f=68.5kHz付近にも、共振点が現れる。但し、この共振点におけるインピーダンスZsは、締付トルクT=20N・m,3N・m及び1N・mの場合よりも小さく低く(ピークの深さが深く)鋭くなっている。さらに、周波数f=43〜58kHzの領域についてみると、周波数f=45.5kHz付近に、共振点が現れる。
【0061】
また、
図8において点をつなげた細かい破線で示すように、取付ボルトBLを締付トルクT=0N・mの場合、即ち、取付ボルトBLの頭部BLTがセンサ10の主体金具13に当接するが、圧接しない状態について検討する。この場合も、周波数f=41.5kHz付近に極小ピークが観測される。但し、締付トルクTがT=20N・mの場合に存在した周波数f=42.1kHz付近の共振点のインピーダンスZsに比して、締付トルクTがT=0N・mの場合の周波数f=41.5kHz付近における共振点は、インピーダンスZsが3dB程度大きい(ピークの深さが浅い)。一方、周波数f=62.2kHz付近には共振点(インピーダンスZsが低くなる極小のピーク、極小点)が観測されない。また、周波数f=68.3kHz付近にも、共振点が現れる。但し、この共振点におけるインピーダンスZsは、締付トルクT=20,3,1,0.5N・mの場合よりも小さく低く(ピークの深さが深く)鋭くなっている。さらに、周波数f=43〜58kHzの領域についてみると、周波数f=43.8kHz付近に、共振点が現れる。
【0062】
これらを考慮すると、下限周波数f1d=41.0kHzから上限周波数f1u=43.0kHzの第1判定周波数域RF1内に、センサ10のインピーダンスZsが低くなる極小のピークが現れるか否か、及びその極小値のインピーダンスZsの大きさを検知することで、センサ10のエンジンブロックEBへの取付状態が、締付トルクTの大きさで示して、T=20N・m程度の大きさであるか否かについて判定できる。即ち、第1判定周波数域RF1内に、極小のピークが観測され、その極小値のインピーダンスZsの大きさが−62dB程度であれば、センサ10のエンジンブロックEBへの取付状態は、締付トルクTがT=20N・m程度の大きさで、緊密に締結されていることが判る。
【0063】
また、下限周波数f2d=43.0kHzから上限周波数f2u=58.0kHzの第2判定周波数域RF2において、センサ10のインピーダンスZsが低くなる極小のピークが現れるか否かを検知することで、センサ10のエンジンブロックEBへの取付状態が、締付トルクTの大きさで示して、T=20N・m程度であるか、T=3N・m程度あるいはこれ以下であるかについて、判定できることが判る。即ち、第2判定周波数域RF2内に、極小のピークが観測されない場合には、センサ10のエンジンブロックEBへの取付状態は、締付トルクTがT=20N・m程度の大きさで、緊密に締結されていることが判る。一方、極小のピークが観測された場合には、取付状態は締付トルクTがT=20N・mよりも低いこと(具体的には、T=3N・m程度以下)であることが判る。加えて、極小のピークの周波数から、センサ10のエンジンブロックEBへの取付状態が、締付トルクTの大きさで示して、どの程度であるかについて推定することも可能である。例えば、極小のピークの周波数f=50kHzであった場合、センサ10のエンジンブロックEBへの取付状態は、締付トルクTの値で示して、T=1N・mと3N・mとの間、即ち、T=2N・m程度の大きさであると推定できる。
【0064】
さらに、判定周波数f3=63.3kHzにおける、センサ10のインピーダンスZsの大きさを検知することで、センサ10のエンジンブロックEBへの取付状態が、締付トルクTの値で示して、どの程度であるかを判定できることも判る。即ち、判定周波数f3=63.3kHzにおけるセンサ10のインピーダンスZsが、−59dB程度である場合には、T=20N・m程度の大きさであると推定できる。一方、−58.5dB程度である場合には、T=3N・m程度の大きさであると推定できる。また、−57.5dB程度である場合には、T=1N・m程度の大きさであると推定できる。さらに−57dBを下回る場合には、T≦0.5N・mの大きさであると推定できる。
【0065】
また、下限周波数f4d=67.5kHzから上限周波数f4u=69.8kHzの第4判定周波数域RF4に現れる、センサ10のインピーダンスZsの極小値の大きさを検知することで、センサ10のエンジンブロックEBへの取付状態が、締付トルクTの大きさで示して、どの程度であるかについて判定できることが判る。即ち、第4判定周波数域RF4内で観察されたインピーダンスZsの極小値の大きさが−59dBよりも大きい場合には、センサ10のエンジンブロックEBへの取付状態は、締付トルクTで示して、T=3N・m以上の大きさであることが判る。一方、極小値の大きさが−59dBよりも小さい場合には、センサ10のエンジンブロックEBへの取付状態は、締付トルクTで示して、T=1N・m以下の大きさであることが判る。なお、極小値の大きさが−59dBよりも小さい場合には、極小値の大きさから、締付トルクTがT=1N・m以下の範囲において、どの程度であるかについて推定することも可能である。例えば、極小値が−60dBであった場合、センサ10のエンジンブロックEBへの取付状態は、締付トルクTの値で示して、T=1N・mと0.5N・mの間、即ち、T=0.7N・m程度の大きさであると推定できる。
【0066】
<ノックセンサ検知システム、センサ駆動装置、取付状態検知方法>
図1に示す本実施形態のシステム1では、ノック振動の検知に加えて、上述の知見を利用して、センサ10のエンジンブロックEBへの取付状態を判定する。
前述したように、センサ10は、コンデンサに近似した電気的特性を示す圧電素子11のほか、これに並列に抵抗値Rsの内蔵抵抗12を有している。また、センサ10は、エンジンENGに取付ボルトBLにより取り付けられている。
【0067】
一方、センサ駆動装置20は、エンジンENGの振動によりセンサ10から出力される振動出力信号Svoを利用してノック振動の有無を検知する。これに加えて、本実施形態のセンサ駆動装置20は、センサ10に加えた入力信号Siに応答して出力された応答出力信号Sroの出力電圧Vroを用いて、センサ10のエンジンブロックEBへの取付状態を判定する。
【0068】
センサ駆動装置20は、図示しない車両に搭載される電子制御ユニット(ECU)であり、ノック振動を検知して、エンジンENGの制御を行う。センサ駆動装置20は装置端子20a,20bを有する。この装置端子20a,20bは、接続ケーブル31,32を通じて、センサ10の第1,第2端子10a,10bと接続している。なお、装置端子20bは、センサ駆動装置20内の接地配線26を通じて接地されている。従って、センサ10の第2端子10bも、接続ケーブル32,装置端子20b及び接地配線26を介して接地されている。また、センサ駆動装置20は、内蔵電源V
DD(+5V)を有し、この内蔵電源V
DDは、抵抗値Rvのプルアップ抵抗22を介して、装置端子20aに接続している。従って、装置端子20a及び第1端子10aは、直流的には、プルアップ抵抗22と内蔵抵抗12とで内蔵電源V
DD(+5V)を抵抗分割した電位に維持される。
【0069】
センサ駆動装置20は、さらに、マイクロプロセッサ21及びこれに接続するROM27及びRAM28を有し、マイクロプロセッサ21はROM27等に記憶されたプログラムに従って各種の処理を行う。マイクロプロセッサ21は、アナログ電圧を検知する第1,第2アナログ入力部21c,21bのほか、デジタルパルス信号を出力するデジタル出力部21aを有している。
【0070】
第1アナログ入力部21cは、バンドパスフィルタ23を介して、装置端子20aに接続している。このBPF23は、エンジンENGが有する固有のノック振動の周波数(例えば、12kHz)を中心とした通過帯域(例えば11〜13kHz)とするフィルタであり、振動出力信号Svoに含まれ得るノック振動以外の不要な振動やノイズの成分が、第1アナログ入力部21cに入力されるのを防止している。センサ駆動装置20では、センサ10の出力電圧Vvoを、BPF23を介して第1アナログ入力部21cに入力する。これにより、マイクロプロセッサ21では、出力電圧Vvoに含まれるノック振動に周波数が合致した成分のみを第1アナログ入力部21cから取得し、この成分の大きさから、エンジンENGにおけるノック振動の有無を検知し、その結果に基づいて、エンジンENGの制御を行う。
【0071】
一方、デジタル出力部21aは、抵抗値Riの入力抵抗24を介して、装置端子20aに接続している。また、第2アナログ入力部21bは、直接、装置端子20aに接続している。なお、
図1において、デジタル出力部21a、第2アナログ入力部21b及びこれに接続する太線で示す回路が、本実施形態において、センサ10のエンジンブロックEBへの取付状態を判定するために付加された部分である。
【0072】
マイクロプロセッサ21は、デジタル出力部21aを通じて、所定の周波数fiで入力電圧Viであるデジタルパルスの入力信号Siを入力抵抗24及びセンサ10に印加する。すると、これに応答した応答出力信号Sroとして、センサ10の第1端子10aには、交流的に、入力電圧Viを入力抵抗24(抵抗値Ri)と圧電素子11のインピーダンスZsとで抵抗分割した周波数fiの出力電圧Vroが発生する。そこで、マイクロプロセッサ21は、接続配線25を介して第2アナログ入力部21bに入力されたこの出力電圧Vroの大きさを読み取る。これにより、マイクロプロセッサ21は、周波数fiにおける圧電素子11のインピーダンスZsの大きさを知得することができる。かくして、本実施形態のセンサ駆動装置20では、デジタル出力部21aから所定の周波数fiの入力信号Siをセンサ10に向けて出力し、これに応じて発生し第2アナログ入力部21bに入力された応答出力信号Sroの出力電圧Vroを読み取ることで、周波数fiにおける圧電素子11のインピーダンスZsの大きさを知得できる。しかも、エンジンENGが振動することによって得られるノック振動などと異なり、応答出力信号Sroは、入力信号Siを入力することで得られるので、適宜のタイミングに入力信号Siを入力すれば、その都度、応答出力信号Sroが得られる。
【0073】
なお、交流的には、圧電素子11の持つコンデンサ成分のインピーダンスが、内蔵抵抗12の抵抗値Rsに比して遙かに小さくなるので、内蔵抵抗12は無視できる。即ち、センサ10のインピーダンスZsは、圧電素子11のインピーダンスにほぼ等しい。
【0074】
次いで、センサ10にセンサ駆動装置20を接続したシステム1を用いた、ノック振動の検知及びセンサ10のエンジンENGへの取付状態判定の、マイクロプロセッサ21における処理手順について、
図3〜
図6のフローチャートを参照して説明する。
【0075】
図3に示すように、図示しない車両のエンジンENGを始動させ、センサ駆動装置20のマイクロプロセッサ21が立ち上がると、ROM27等に記憶されていたプログラムがマイクロプロセッサ21に読み込まれて、まずステップS1において初期設定がなされる。それ以降、ステップS2において、マイクロプロセッサ21は、センサ10の第1端子10aに発生する振動出力信号Svoの出力電圧Vvoを、BPF23を経由して第1アナログ入力部21cで取得し、出力電圧Vvoに含まれるノック振動による振動成分を検知し、エンジンENGの制御を行う。ステップS3では、車両のスタートボタンがオフ(車両のキースイッチがオフとされたか否か)を検知し、Noの場合には、ステップS2を繰り返す。かくして、エンジンENGの起動中は、継続してノック振動を検知して、エンジンENGの制御に用いることができる。
【0076】
一方、ステップS3においてYes、即ち、運転者がスタートボタンを押して、車両の運転を終了した場合には、エンジンENGが停止される(エンジンENGが停止中となる)が、本実施形態のシステム1では、さらにステップS4に進み、センサ10のエンジンENGへの取付状態の正常/異常判定を行う。なお、本実施形態では、センサ10のエンジンENGへの取付状態を、取付ボルトBLの締付トルクTで示して、T=20N・m程度の大きさである場合に正常とし、これよりも締付トルクTが小さい場合を、異常(取付ボルトBLの緩み発生)と判断することとする。
【0077】
また本実施形態では、次述するように、このステップS4において、前述したセンサ10の取付状態を判定しうる、3つの判定周波数域RF1,RF2,RF4、及び、1つの判定周波数f3のうち、2つの判定周波数域RF1,RF2と判定周波数f3について、取付状態を判定する。
なお、本実施形態において、取付状態の判定に、第4判定周波数域RF4(f4d=67.5kHz〜f4u=69.8kHz。
図8参照)を用いなかったのは、この第4判定周波数域RF4を用いると、締付トルクTが低い場合については適切にトルクの大きさを判別できる。しかし、締付トルクTがT=3N・m以上の場合に、締付トルクTがT=20N・m程度かそれよりも低いかを判別できないため、取付状態の正常/異常判定には用いにくいからである。
【0078】
ステップS4のうち、ステップS41では、第1の判定周波数域RF1(f1d=41.0kHz〜f1u=43.0kHz)での取付状態の判定を行う(
図4参照)。まずステップS411(
図5参照)では、デジタル出力部21aから出力する入力信号Siの周波数fを下限周波数f1dに設定する(f=f1d=41.0kHz)。
【0079】
次いで、ステップS412に進み、デジタル出力部21aから入力信号Siを出力する。即ち、入力抵抗24を介してセンサ10の第1端子10aに入力信号Siを印加する。続くステップS413で、センサ10の第1端子10aに発生した出力電圧Vroを、接続配線25を介して第2アナログ入力部21bで取得する。
【0080】
その後、ステップS414において、入力信号Siの周波数fが、上限周波数f1u(f1u=43.0kHz)となったか否かを判断し、No、即ち、周波数fが上限周波数f1uよりも小さい場合には、ステップS415に進む。ステップS415では、入力信号Siの周波数fを、増分Δf(本実施形態では、Δf=0.1kHz)だけ増やした大きさに設定する。その後、ステップS412に戻り、ステップS412,S413を繰り返す。一方、ステップS414においてYes、即ち、入力信号Siの周波数fが上限周波数f1uである場合には、ステップS416に進む。
【0081】
ステップS416では、ステップS413により取得した出力電圧Vroから得た、センサ10の第1判定周波数域RF1におけるインピーダンスZsの周波数特性を用いて、センサ10のエンジンENGへの取付状態の正常/異常を判定する。具体的には、前述したように、第1判定周波数域RF1内に、センサ10のインピーダンスZsが低くなる極小のピークが現れるか否かを検知する。さらに、極小のピークが現れた場合には、その極小値(インピーダンスZsの大きさ)を検知する。その結果、第1判定周波数域RF1内に、極小のピークが観測され、その極小値のインピーダンスZsの大きさが−62dB程度であれば、センサ10のエンジンブロックEBへの取付状態は、締付トルクTで示して、T=20N・m程度の大きさで、緊密に締結されており、取付状態は正常であると判定できる。一方、第1判定周波数域RF1内に、極小のピークが観測されない場合や、極小値のインピーダンスZsの大きさが−61dBよりも大きい場合には、取付状態が締付トルクTで示して、T=20N・m程度に達しておらず、取付状態が異常であると判定できる。
【0082】
この判定後、ステップS42に進み、第2の判定周波数域RF2(f2d=43.0kHz〜f2u=58.0kHz)での取付状態の判定を行う(
図4参照)。まずステップS421(
図5参照)では、入力信号Siの周波数fを下限周波数f2dに設定する(f=f2d=43.0kHz)。次いで、ステップS422に進み、デジタル出力部21aから入力信号Siを出力する。続くステップS423で、応答出力信号Sroの出力電圧Vroを第2アナログ入力部21bで取得する。
【0083】
その後、ステップS424において、入力信号Siの周波数fが、上限周波数f2u(f2u=58.0kHz)となったか否かを判断し、No、即ち、周波数fが上限周波数f2uよりも小さい場合には、ステップS425に進み、入力信号Siの周波数fを増分Δfだけ増やして設定し、ステップS422に戻り、ステップS422,S423を繰り返す。一方、ステップS424においてYes、即ち、入力信号Siの周波数fが上限周波数f2uである場合には、ステップS426に進む。
【0084】
ステップS426では、ステップS423で取得した応答出力信号Sroの出力電圧Vroから得た、センサ10の第2判定周波数域RF2におけるインピーダンスZsの周波数特性を用いて、センサ10のエンジンENGへの取付状態の正常/異常を判定する。具体的には、前述したように、第2判定周波数域RF2において、センサ10のインピーダンスZsが低くなる極小のピークが現れるか否かを検知して、センサ10のエンジンブロックEBへの取付状態が、締付トルクTの大きさで示して、T=20N・m程度であるか、T=3N・m程度あるいはこれ以下であるかについて判定する。即ち、第2判定周波数域RF2内に、極小のピークが観測されない場合には、センサ10のエンジンブロックEBへの取付状態は、締付トルクTがT=20N・m程度の大きさであり、取付状態は正常であると判定できる。一方、極小のピークが観測された場合には、取付状態は締付トルクTで示して、T=20N・mよりも低く(具体的には、T=3N・m程度以下)、取付状態が異常であると判定できる。
【0085】
この判定後、ステップS43に進み、判定周波数f3での取付状態の判定を行う(
図4参照)。まずステップS431(
図6参照)では、入力信号Siの周波数fを判定周波数f3に設定する(f=f3=63.3kHz)。次いで、ステップS432に進み、デジタル出力部21aから入力信号Siを出力する。続くステップS433で、出力電圧Vroを第2アナログ入力部21bで取得する。
【0086】
ステップS434では、ステップS433で取得した判定周波数f3における応答出力信号Sroの出力電圧Vroにより、センサ10のエンジンENGへの取付状態の正常/異常を判定する。具体的には、前述したように、判定周波数f3=63.3kHzにおける、センサ10のインピーダンスZsの大きさを検知して、センサ10のエンジンブロックEBへの取付状態が、締付トルクTの値で示して、T=20N・m程度であるか、それよりも小さいかを検知する。即ち、判定周波数f3=63.3kHzにおけるセンサ10のインピーダンスZsが、−59dB程度である場合には、締付トルクTがT=20N・m程度の大きさであり、取付状態は正常であると判定する。一方、インピーダンスZsが、−58.5dB以上である場合には、締付トルクTがT=20N・mよりも低い(具体的には、T=3N・m程度以下)であり、取付状態が異常であると判定する。
【0087】
次いで、ステップS44(
図4参照)に進み、ステップS416,S426,S434でそれぞれ判定した合計3つの判定結果に基づき、総合判定を行う。本実施形態においては、具体的には、3つの判定結果の多数決により総合判定を行う。これにより、例えば、1つの判定結果に依存する場合に比して、さらに適切に取付状態の判定を行うことができる。なお本実施形態では、上述のように3つの判定結果の多数決により総合判定を行ったが、3つの判定結果のうち、いずれか1つでも異常と判定された場合には、総合判定を異常と判定することもできる。
【0088】
その後、ステップS5(
図3参照)において、ステップS44での総合判断の結果が異常であるか否かについて判断する。ここで、No、即ち、総合判断が「正常」である場合には、ステップS6をスキップして終了する。一方、ステップS5でYes、即ち、総合判断が「異常」である場合には、ステップS6に進み、運転者に向けて、センサ10の取付状態の異常を知らせる警告を行う。具体的には、警告ランプを点灯させたり、警告ブザーを鳴らしたりする。
【0089】
このノックセンサ検知システム1において、入力抵抗24、接地配線26、デジタル出力部21aを有するマイクロプロセッサ21が、センサ10のノック検知周波数範囲よりも高い周波数fの入力信号Siを入力抵抗24を介して第1端子10aに印加する入力部41に該当する。また、接続配線25及び第2アナログ入力部21bを有するマイクロプロセッサ21が、第1端子10aに生じた応答出力信号Sroの大きさ(出力電圧Vvo)を検知する出力検知部42に該当する。
【0090】
また、ステップS416,S426,S434を実行するマイクロプロセッサ21が、センサ10のエンジンENGへの取付状態を判定する判定部に該当する。また、ステップS44を実行するマイクロプロセッサ21が、総合判定を行う総合判定部に該当する。また、バンドパスフィルタ23が、エンジンENGのノック周波数を含む通過周波数帯域を有するフィルタに該当する。また、第1アナログ入力部21cを有するマイクロプロセッサ21が、ノック検出部43に該当する。さらに、ステップS3を実行するマイクロプロセッサ21が、許可部に該当する。
【0091】
本実施形態のシステム1及びセンサ駆動装置20では、センサ10の第1端子10aに入力信号Siを印加する入力部41を備えるので、入力信号Siにより、センサ10を適切なタイミングで能動的かつ電気的に駆動でき、入力信号Siに対するセンサ10からの応答出力信号Sro(出力電圧Vro)を得て、各判定部(ステップS416,S426,S434)でセンサ10のエンジンENGへの取付状態を判定することができる。このため、エンジンENGなどの振動の有無に拘わらず、適切なタイミングで、センサ10の取付状態を検知できる。
また、ステップS416,S426,S434の判定部で、ノック検知周波数範囲よりも高い周波数fの入力信号Siに対応した、判定周波数f3における応答出力信号Sroの出力電圧Vroや、第1,第2判定周波数域RF1,RF2における応答出力信号Sroの出力電圧Vroの周波数特性から、センサ10のエンジンENGへの取付状態を判定する。これにより、センサ10の取付状態を適切に検知できる。
【0092】
さらに本実施形態の取付状態検知方法では、センサ10の第1端子10aに入力信号Siを印加するので、この入力信号Siにより、適切なタイミングで能動的かつ電気的にセンサ10を駆動でき、入力信号Siに対するセンサ10からの応答出力信号Sro(出力電圧Vro)を得て、各判定部(ステップS416等)でセンサ10のエンジンENGへの取付状態を判定することができる。このため、エンジンENGなどの振動の有無に拘わらず、適切なタイミングで、センサ10の取付状態を検知できる。
また、ノック検知周波数範囲よりも高い周波数fの入力信号Siに対応した、判定周波数f3の入力信号Siをまたは第1,第2判定周波数域RF1,RF2にわたる周波数の入力信号Siをセンサ10に入力し、判定周波数f3における応答出力信号Sroの出力電圧Vroや、第1,第2判定周波数域RF1,RF2における応答出力信号Sroの出力電圧Vroの周波数特性から、センサ10のエンジンENGへの取付状態を判定するので、センサ10の取付状態を適切に検知できる。
【0093】
しかも本実施形態のシステム1及びセンサ駆動装置20では、複数(本実施形態では3つ)の判定部であるステップS416,S426,S434の結果を用い、さらに総合判定部S44で総合判定を行うので、さらに適切にセンサ10のエンジンENGへの取付状態を判定できる。
また本実施形態の取付状態検知方法では、センサ10の第1端子10aに、互いに異なる判定周波数f3の入力信号Siをまたは第1,第2判定周波数域RF1,RF2にわたる入力信号Siを印加し、3つの判定の結果を用いて総合判定を行うので、さらに適切に取付状態を判定できる。
【0094】
さらに本実施形態のシステム1及びセンサ駆動装置20では、BPF23を通じて、センサ10の応答出力信号Sro(出力電圧Vro)を第1アナログ入力部21cからマイクロプロセッサ21に取り込んで、エンジンENGのノックの有無を検知する。このほか、同じマイクロプロセッサ21のデジタル出力部21aを入力部41に用い、かつ、同じマイクロプロセッサ21の第2アナログ入力部21bを出力検知部42に用いる。即ちこのシステム1は、エンジンENGのノッキング検知システムを兼ねている。
このためこのシステム1では、ノック振動の検知に用いるマイクロプロセッサ21で、ノック検出部43のほか、入力部41、出力検知部42を構成でき、非共振型ノックセンサのノッキング検知システムに本システムを加入するにあたり、改変をごく僅かで済ますことができる。
【0095】
本実施形態のシステム及びセンサ駆動装置20、あるいは本実施形態の取付状態検知方法では、エンジンENGの停止中にセンサ10の取付状態を検知するので、走行に伴う車両の振動やエンジンENGからの振動に伴ってセンサ10から生じる信号が無く、より確実にセンサ10のエンジンENGへの取付状態を判定することができる。
【0096】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
実施形態においては、ステップS416,S426,S434における判定及びステップS44における総合判定において、取付状態の正常/異常を判定した。
しかし、取付状態の正常/異常を判定するのではなく、取付状態を締付トルクTで示して、締付トルクTがどの程度の値であるかを、例えば3段階や5段階のレベル判定を行うこともできる。
また、ステップS4では、ステップS416,S426,S434において、2つの判定周波数域RF1,RF2と判定周波数f3を用いて、取付状態の判定を3回行ったが、取付状態の判定は、1回でも複数回でも良い。また、実施形態では、第4判定周波数域RF4を用いなかったが、第4判定周波数域RF4を用いた判定を加えても良い。
【0097】
また実施形態においては、車両の運転が終了して、スタートボタンがオフとなった後に、センサ10の取付状態を判定した。しかし、車両の運転を開始する前、即ち、スタートボタンが押されてから、エンジンENGがクランキングや始動する前の期間や、アイドリングストップによるエンジン停止中に、ステップS4,S5を実行して、センサ10の取付状態を判定しても良い。また、エンジンENGの駆動中に、ノック振動の検知と並行して、ステップS4,S5を実行して、センサ10の取付状態を判定することもできる。本件では、入力信号Siの周波数fをノック検知周波数範囲よりも高くしているので、センサ10による、エンジンENGで生じるノック振動を含むノック検知周波数範囲の振動の検知に影響を与えることなく、センサ10の取付状態を検知することができる。