【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、請求項1の特徴を有する方法により解決される。本発明が提供する方法は、調節装置を用いて少なくともピッチ軸とロール軸を中心としてその向きを変更できるレーザスキャナの調整方法において、
前記レーザスキャナの走査範囲内に、基準線と交差する方向に延在し且つ該基準線の方向に互いに離間した前記レーザスキャナにより検出できる複数の縞状の標識を有する基準標的が配置され、
前記基準標的の走査パターンを生成するために前記レーザスキャナを用いて前記基準標的が走査され、その際、生成された走査パターンの形態に基づいてレーザスキャナの向きが所望の向きと一致しているか否か又はレーザスキャナの向きが所望の向きからずれているか否かが判別されるように前記標識の形状及び/又は配置が選ばれており、
向きのずれが確認されたらそれに基づいてレーザスキャナの向きが変更される
ことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る方法の実施には、非常に簡単な構成の基準標的以外に追加の技術的な補助手段は必要ない。基準標的の重要な構成要素は標識であって、これは例えば直反射性及び/又は拡散反射性の材料(粘着テープ等)を適宜の担持体又は基板上に配置して成る。標識は、走査範囲内に立設された板や厚紙等の表面に付すことができる。また、走査範囲内にある壁の表面に直接標識を付してもよい。コントラストの付け方は本発明に係る方法にとって基本的に重要ではない。以下では周囲よりも光を強く反射する標識を前提とするが、例えば白壁上の黒い標識のように、逆のコントラストを作り出す標識を用いることもできる。本方法をきちんと実施するには、標識が基準線に対して交差する方向に延在していなければならない。標識と基準線の間の角が直角であれば、特に評価が容易になるため非常に有利であるが、それは必須ではない。直角からの多少のずれ(例えば10〜20度まで)は、評価の際にそれを適切に考慮すれば許容可能である。
【0012】
見出された向きと所望の向きの間にずれがあるか、一致しているかの判別は、例えば認識された走査パターンと基準パターンとの比較により行うことができ、その際、認識された走査パターンと基準パターンが一致していれば、レーザスキャナの向きは所望の向きと一致している。ここで、生成された走査パターンと基準パターンの一致は、2つのパターンが完全に同一である場合だけでなく、両者が互いに幾何学的に類似している場合、例えば走査パターンにおける複数の標識の間隔の比が基準パターンにおける比と一致する場合にも存在する。それゆえ、レーザスキャナと基準標的の間の距離が様々であっても本発明に係る方法を適用することができる。
【0013】
見出された向きと所望の向きの間にずれがあるか、一致しているかの判別は、走査パターン内部の情報に基づいて行うこと、例えば認識された異なる標識を特定の特徴(例えば幾何学的な特徴、明るさの差異等を含む)について比較することにより行うこともできる。ここで、「認識された標識」とは、走査パターン内でそれに属する標識が表す構造と解すべき概念である。
【0014】
レーザスキャナの所望の向きは主として基準標的の位置及び向きによって決まる。従って、基準標的を適当に取り付けることにより、レーザスキャナの走査平面がピッチ軸及び/又はロール軸を中心として水平面から傾くように該レーザスキャナの向きを調整することもできる。
【0015】
レーザスキャナの実際の調整は、例えば、走査パターンに基づくユーザ向けの指示を出し、ユーザが調節装置を用いてその指示に応じた向きの変更を行うことにより、手動で行うこともできる。最も簡単な場合、ユーザ向けの指示は、走査パターンが適宜の表示装置で再現され、ユーザが必要な調節を確認する、というものにすることができる。あるいは、自動調節用の調節装置を設け、それを評価ユニットと接続し、該ユニットが走査パターンの評価に基づき、場合によって必要な調節動作を算出して調節装置に伝達し、該装置がその動作を実行する、というようにすることもできる。
【0016】
本発明に係る方法は、原理的には、例えばいわゆる単層スキャナのように走査光線が平面内で運動するレーザスキャナに限定されるものではなく、他の形態、例えば走査光線が円錐面上で運動する構成や多層スキャナにも適用可能である。非平面の走査領域の場合、距離に応じて走査線に歪みが生じる可能性、つまり走査線の経路が一平面内に収まらなくなる可能性があるため、場合によっては調整の間だけ走査光線が一平面内で運動するように多層スキャナを駆動することが望ましい。
【0017】
本方法の有利な形態では、走査パターンの形態に基づいてレーザスキャナの向きがピッチ軸及び/又はロール軸について所望の向きからずれているか否かが判別されるように標識の形状及び/又は配置が選ばれており、ずれが認められた軸については、該ずれが縮小又は解消されるように、該軸を中心としてレーザスキャナの向きが変更される。従って、認識された走査パターンに基づいて、所望のピッチ角からのピッチ角のずれと、所望のロール角からのロール角のずれとを区別することができる。これにより、レーザスキャナの向きが所望の向きからずれている場合に、狙いをつけてそれを解消することができる。
【0018】
これとの関連で、走査パターンの形態に基づいて、ずれの方向、そして好ましくは該ずれの大きさも認識され、それらが特にレーザスキャナの向きの変更に際して考慮されるようにすると有利であることは明らかである。ずれの方向とは、ピッチ角乃至ロール角が所望のピッチ角乃至ロール角から正又は負のいずれの大きさで違っているかという意味である。起こり得るずれの方向及び/又は大きさは、走査パターンと基準パターンとの比較から得ることができるだけでなく、走査パターン自身に含まれる情報からも得るようにすると有利である。これについては後でより詳しく検討する。
【0019】
本方法の別の有利な形態では、基準標的の走査とレーザスキャナの向きの変更が反復的に実行され、その際、特に向きを変更するときの増分が反復の度に縮小される。特に、向きがずれている可能性があるがその大きさが正確に分からない場合に、基準標的の走査と向きの変更を交互に行うこの反復動作により所望の向きを素早く探索することができる。
【0020】
認識された標識の数に基づいて、及び/又は、認識された標識の少なくとも1つの少なくとも1つの所定の特徴に基づいて、レーザスキャナの向きが所望の向きからずれているかどうかを判別できるように、標識の形状及び/又は配置が選ばれており、所定の判断基準が、基準線の方向乃至走査方向における認識された標識の幅、及び/又は、認識された標識の信号レベルを含んでいると有利である。
【0021】
例えば、全て又は一部の標識がその長さに沿って変化する幅を有し、標識がどの部分で走査光線により掃引されたかによって認識された標識の幅が変わるようにして、特に向きのずれがある場合にその大きさを求める際の判断基準としてその幅を利用できるようにすることができる。
【0022】
レーザスキャナの分解能が低いために十分な信頼度で幅を特定できない場合は、走査パターン内で認識された標識の信号レベルも考慮に入れることができる。なぜならこの場合、原理的には、認識された標識の幅にわたって光の強度が積分されるため、信号レベルと認識された標識の幅との間に近似的に線形の関係があるからである。
【0023】
更に、基準パターンを参照することなく、2つ以上の認識された標識の幅乃至信号レベルの比較に基づいて向きのずれを算出することも可能である。これは、先に言及した、走査パターン自身に含まれる情報の評価に相当する。
【0024】
本方法の更に有利な形態では、前記標識の一部が基準標的の内側領域に、また該標識の別の一部が基準標的の2分割された外側領域に、それぞれ割り当てられ、該外側領域の2つの部分が基準線の方向に見たときに内側領域の両側に配置され、調整の第1段階では内側領域に割り当てられた標識のみが考慮され、続く調整の第2段階では外側領域に割り当てられた標識がそれのみで又は追加的に考慮される。
【0025】
外側領域の2つの部分にある標識は内側領域にある標識よりも基準標的の中心からの距離が大きい。というのも、本発明に係る方法で達成できる調整の際の精度は、とりわけ基準線の方向における標識の相互間の距離と関わりがある。標識間の距離が大きいほど高い精度で調整を行うことができる。しかし、本方法の始めに、特にロール角について大きなずれがあると、標識の長さに限りがある場合に該標識がもはや走査光線により掃引されない可能性がある。そうすると走査パターンの誤解釈につながる。
【0026】
これに対処するため、本方法は2つ以上の段階で実行される。最初は互いに近接した標識が考慮されるため、レーザスキャナの向きが大きく間違っていても走査光線による標識の掃引が確実に正しく行われる。この第1段階でレーザスキャナの粗調整を行った後、より外側にある標識に基づいて、後続の段階でより正確な調整を行うことができる。
【0027】
基準標的は一体として構成することができ、内側領域だけでなく2つの外側領域も含むことができる。あるいは、基準標的を複数の部分で構成し、内側領域及び各外側領域のそれぞれに対して1つの部分が設けられるようにしてもよい。
【0028】
本発明はレーザスキャナを調整するための平面的な基準標的、特に前述の方法を実施するために構成された基準標的にも関する。該基準標的は、基準線と交差する方向に延在し且つ該基準線の方向に互いに離間した前記レーザスキャナにより検出できる複数の縞状の標識を有し、該標識の一部が第1のグループに配属され、別の一部が第2のグループに配属され、前記第1のグループに配属された標識が、基準線に対して、及び該基準線に垂直に延在する対称線に対して、それぞれ一方の側に配置され、前記第2のグループに配属された標識が、基準線に対して、及び対称線に対して、それぞれ他方の側に配置されている。各グループには1つ以上の標識がある。
【0029】
即ち、基準標的の表面は基準線と対称線により2×2の区画を有するマトリックスに分割されており、2つの標識グループは対角線に沿って対向する2つの区画内に配置されている。同様に対角線に沿って対向する別の2つの区画内には標識を設ける必要はないが、そうすることを排除するものではない。レーザスキャナの向きが基準標的により規定される所望の向きと一致していれば、走査光線は基準線を掃引する。このような基準標的を用いれば、まずロール角又はピッチ角に関してずれが存在しているか否かを判別することができ、またそのずれの方向を見出すこともできるため、走査パターンに基づいて、特定の軸を中心とした特定の方向への向きの修正を指示することができる。
【0030】
基準標的の有利な構成では、標識の第1のグループ及び第2のグループが、各標識の形状及び/又は位置に関して、基準線と対称線の交点を中心として互いに点対称である。これにより、走査パターンを特に高い信頼性で評価することができる。
【0031】
標識の1つが、対称線に沿って基準線の両側へ延在する中央標識として形成されていると有利である。このようにすれば、基準標的を確実に見つけ出し、特に、該基準標的が全く走査されなかったのか、それとも、先に挙げた2つのグループに配属された標識が全く検出されないような一定のずれがロール角に関して存在するのか、ということまで判別できる。中央標識がなければいずれの場合の走査パターンにも標識は一切認識されないが、中央標識があれば、後者の場合には中央標識が通常は認識される。
【0032】
別の有利な実施形態では、少なくとも一部の標識が一定の幅を有する。また、その代わりに、又はそれに加えて、別の一部の標識がくさび状の形を有し、特にその幅が基準線からの距離の増大とともに広がっている。ここで幅とは基準線方向の標識の広がりのことである。基本的には、幅が一定の標識を用いるだけで十分高速且つ正確にレーザスキャナの調整ができる。くさび形の標識を用いることで、少なくとも部分的に、所望の向きからのずれを定量化することができる。
【0033】
別の有利な実施形態では、標識の各グループが、基準線の方を向いた端部が該基準線に接している少なくとも1つの第1の標識と、基準線の方を向いた端部が該基準線から離れている少なくとも1つの第2の標識とを有している。これによれば、レーザスキャナの向きが所望の向きと一致しているとき、即ち、レーザスキャナの走査光線が基準線を掃引するとき、標識は辛うじてまだ検出される一方、第2の標識はもはや検出されないように、第1の標識と第2の標識の長さが選ばれている。
【0034】
本発明は更に、特に前述の方法を実行するために構成されたレーザスキャナ装置に関する。該装置は、レーザスキャナと、該レーザスキャナの向きを少なくともピッチ軸及びロール軸を中心として変更するように構成された調節装置と、レーザスキャナ装置の稼働時の構成においてレーザスキャナの走査領域内に配置される基準標的、特に前述のいずれかの形態による基準標的であって、レーザスキャナにより検出できる複数の縞状の標識を有し、該標識がレーザスキャナ装置の稼働時の構成において基準線と交差する方向に延在し且つ該基準線の方向に互いに離間している基準標的と、制御ユニットとを備え、該制御ユニットは、基準標的を走査して該基準標的の走査パターンを生成すべくレーザスキャナを制御し、その際、生成された走査パターンの形態に基づいてレーザスキャナの向きが所望の向きと一致しているか否か又はレーザスキャナの向きが所望の向きからずれているか否かが判別されるように前記標識の形状及び/又は配置が選ばれており、確認されたレーザスキャナの向きのずれに関する情報を含む信号を生成するように構成されている。制御ユニットはレーザスキャナと接続又は該スキャナに統合することができる。見出されたずれに関する情報は、該ずれの方向と、好ましくは該ずれの大きさも含んでいると有利であり、特にピッチ軸乃至ロール軸に特化して見出されたずれに関する情報があるとよい。
【0035】
前記レーザスキャナ装置の有利な実施形態では、制御ユニットが、生成された前記信号に基づいて、ずれが確認された軸を中心としてレーザスキャナの向きを変更して該ずれを縮小又は解消するために調節装置を制御するように構成されている。その代わりに、又はそれに加えて、制御ユニットが、生成された前記信号に基づいて、ずれが確認された軸を中心としてレーザスキャナの向きを変更して該ずれを縮小又は解消することをユーザに促すユーザ向けの指示を出力するように構成されていてもよい。ユーザ向けの指示の出力は光学的及び/又は音響的に行うことができる。簡単な形態では、ユーザ向けの指示の出力を走査パターンの再現又は描画により行ってもよい。レーザ装置の他の有利な実施形態は、方法の有利な実施に関する記述及び/又は本発明に係る基準標的の有利な実施形態に関する記述から生み出される。
【0036】
本発明に係る方法、本発明に係る基準標的、本発明に係るレーザスキャナ装置、及びこれらのそれぞれの好ましい形態は、特にロール軸及び/又はピッチ軸を中心としたレーザスキャナの調整に役立つ。
【0037】
以下、図面を参照しながら本発明の模範例を説明する。