特許第6343338号(P6343338)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6343338医薬用又は食品添加用酸化マグネシウム顆粒
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6343338
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】医薬用又は食品添加用酸化マグネシウム顆粒
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/08 20060101AFI20180604BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20180604BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20180604BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20180604BHJP
   A61P 1/10 20060101ALI20180604BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20180604BHJP
   A23L 33/16 20160101ALI20180604BHJP
【FI】
   A61K33/08
   A61K47/02
   A61K9/16
   A61K9/20
   A61P1/10
   A61P1/04
   A23L33/16
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-504889(P2016-504889)
(86)(22)【出願日】2014年2月25日
(86)【国際出願番号】JP2014054516
(87)【国際公開番号】WO2015128940
(87)【国際公開日】20150903
【審査請求日】2016年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】390036722
【氏名又は名称】神島化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】坂本 健尚
【審査官】 石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−033159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 33/00−33/44
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/69
A23L 33/16
A61P 1/04
A61P 1/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
BET比表面積が7〜50m/g、CAA80/CAA40が2〜7であり、低活性酸化マグネシウムと中活性酸化マグネシウムとの混合物である医薬用又は食品添加用の酸化マグネシウム顆粒。
【請求項2】
BET比表面積が10〜45m/g、且つ、CAA80/CAA40が2.2〜6である請求項1に記載の酸化マグネシウム顆粒。
【請求項3】
かさ密度が700〜1000g/Lである請求項1又は2に記載の酸化マグネシウム顆粒。
【請求項4】
酸化マグネシウム顆粒の純分(Assay)が96%以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の酸化マグネシウム顆粒。
【請求項5】
粒子径150μm未満の顆粒が、全体の10重量%以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の酸化マグネシウム顆粒。
【請求項6】
前記酸化マグネシウム顆粒の重量中、Pbの含有量が20ppm以下、Asの含有量が4ppm以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の酸化マグネシウム顆粒。
【請求項7】
低活性酸化マグネシウムのBET比表面積が0.05〜15m/gであり、中活性酸化マグネシウムのBET比表面積が20〜80m/gである請求項1〜のいずれか1項に記載の酸化マグネシウム顆粒。
【請求項8】
低活性酸化マグネシウムのCAA80が550〜850秒、CAA40が250〜550秒であり、中活性酸化マグネシウムのCAA80が100〜300秒、CAA40が50〜100秒である請求項1〜のいずれか1項に記載の酸化マグネシウム顆粒。
【請求項9】
低活性酸化マグネシウムと中活性酸化マグネシウムとの混合比率が、重量%で、中活性酸化マグネシウム:低活性酸化マグネシウム=10:90〜80:20である請求項1〜のいずれか1項に記載の酸化マグネシウム顆粒。
【請求項10】
低活性酸化マグネシウムと中活性酸化マグネシウムを混合し、圧力をかけた後に粉砕する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の酸化マグネシウム顆粒の製造方法
【請求項11】
重量比で、中活性酸化マグネシウム:低活性酸化マグネシウムを10:90〜80:20の割合で混合する工程、該混合物を加圧する工程、その後、混合物を粉砕する工程を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の酸化マグネシウム顆粒の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜のいずれか1項に記載の酸化マグネシウム顆粒を打錠することを特徴とする酸化マグネシウム錠剤の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜のいずれか1項に記載の酸化マグネシウム顆粒を含有する酸化マグネシウム錠剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬用又は食品添加用の酸化マグネシウム顆粒に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化マグネシウム錠剤は、医薬用緩下剤及びミネラル補給剤等として多岐に使用されている(例えば、特許文献1〜3)。
【0003】
一般的に、錠剤は原材料を圧縮成形して錠剤の形にすることで製造される。また、この圧縮成形する工程を打錠工程という。打錠工程においては、圧縮操作が連続的で、しかも高速で行われる。このような条件下では、錠剤内部に応力や密度に分布が生じ、内部構造は決して均一なものにならず、これが打錠障害や品質特性異常等を引き起す主な原因になっていると考えられる。
【0004】
前記打錠障害としては、キャッピング、ラミネーティング、スティッキング、ピッキング等がある。キャッピングは、錠剤を成型した後、臼から排出する過程又は排出後に錠剤が帽子状に剥離する現象であり、ラミネーティングはキャッピングがさらにひどくなり、錠剤上面ではなく側面に沿って層状に剥離する現象である。スティッキングは、圧縮行程で杵(圧縮棒)に粉末が付着し、錠剤表面が凹んだように損傷する現象であり、チッピングも同様の理由により、錠剤表面がわずかに損傷する現象である。これら打錠障害は、主に原材料の性質に起因して生じる。
【0005】
また、前記品質特性異常として、通常の使用状況においても、錠剤に割れ、欠け、又は粉落ち等が発生するような状態が挙げられる。そのような品質特性異常は、主に錠剤の強度(硬度)が不足しているために生じる。
【0006】
酸化マグネシウム錠剤の製造においても、特に純度の高い酸化マグネシウムを原材料とした場合、上記した打錠障害や品質特性異常が発生しやすくなるという課題があった。
【0007】
ところで、酸化マグネシウムの製造法には、炭酸マグネシウムを焼成する方法と、海水あるいは塩化マグネシウム水溶液(苦汁または灌水)に水酸化カルシウムを加えて水酸化マグネシウムを生成させ、これをろ過、乾燥した後、焼成する方法とがある(特許文献4)。
上記の水酸化マグネシウムを焼成して製造される酸化マグネシウムは、その焼成温度でその性質や用途が異なる。例えば、水酸化マグネシウムを1500℃以上の高温で焼成したものは、活性がほとんどなく、高温耐火性能を有し、耐火物材料として塩基性耐火れんがや不定形耐火物の原料などに利用されている。また、水酸化マグネシウムを450〜1300℃で焼成して得られる酸化マグネシウムは、活性が比較的大きく、マグネシアセメント材料、あるいはミネラルの供給源として肥料、食品等の添加剤、制酸剤や下剤等の医薬品の原料などに利用されている。この酸化マグネシウムは肥料、食品等の添加剤、医薬品原料として、人体に直接あるいは間接的に摂取され、あるいは化粧品原料として人体に接触するためのものであるため、重金属の混有量もしくは含有量がより少なく、純度の高いものが望まれている。
【0008】
このように、医薬用又は食品添加用として好適に使用できる、高純度であり、また、錠剤にするときの問題を低減できる酸化マグネシウムの開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−146889号公報
【特許文献2】WO2011/030659号パンフレット
【特許文献3】特開2009−13113号公報
【特許文献4】特開2001−275618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記状況に鑑み、本発明は、医薬用又は食品添加用として好適に使用できる酸化マグネシウムを提供することを主な課題とする。具体的には、錠剤にするときの打錠障害並びに錠剤の品質特性異常を低減することが可能な酸化マグネシウム顆粒を提供すること、さらには、打錠障害及び錠剤の品質特性異常を低減することが可能であり且つ重金属の混有量が低く酸化マグネシウムの純度の高い酸化マグネシウム顆粒を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明者等が鋭意研究を行い、BET比表面積が約7〜約50m/gかつ、活性度(後記する説明を参照。)が所定の範囲である酸化マグネシウム顆粒を用いることで、予想外にも、錠剤にしたときの錠剤強度を改善でき、並びに酸化マグネシウム錠剤の製造における打錠障害を低減できるという、本発明に特有の顕著にして優れた効果を奏するという新たな知見を得て、さらに検討を重ね、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明は以下に関する。
(1) BET比表面積が7〜50m/g、且つ、CAA80/CAA40が2〜7である医薬用又は食品添加用の酸化マグネシウム顆粒。
(2) BET比表面積が10〜45m/g、且つ、CAA80/CAA40が2.2〜6である前記(1)に記載の酸化マグネシウム顆粒。
(3) かさ密度が700〜1000g/Lである前記(1)又は(2)に記載の酸化マグネシウム顆粒。
(4) 酸化マグネシウムの純分(Assay)が96%以上である前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の酸化マグネシウム顆粒。
(5) 粒子径150μm未満の顆粒が、全体の10重量%以下である前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の酸化マグネシウム顆粒。
(6) 前記酸化マグネシウム顆粒の重量中、Pbの含有量が20ppm以下、Asの含有量が4ppm以下である前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の酸化マグネシウム顆粒。
(7) 重量比で、中活性酸化マグネシウム:低活性酸化マグネシウムを10:90〜80:20の割合で混合する工程、該混合物を加圧する工程、その後、混合物を粉砕する工程を含む、前記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の酸化マグネシウム顆粒の製造方法。
(8) 前記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の酸化マグネシウム顆粒を打錠することを特徴とする酸化マグネシウム錠剤の製造方法。
(9) 前記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の酸化マグネシウム顆粒を含有する酸化マグネシウム錠剤。
【発明の効果】
【0013】
本発明の酸化マグネシウム顆粒によれば、酸化マグネシウム錠剤の製造における打錠障害を低減でき、錠剤の強度不足に起因する酸化マグネシウム錠剤の品質特性異常を低減することができる。さらに、本発明の酸化マグネシウム顆粒は、重金属の含有量が少なく、酸化マグネシウムの純度が高いため、本発明によれば、医薬用又は食品添加用として好適に使用できる安全な酸化マグネシウム顆粒を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のひとつの態様は、医薬用又は食品添加用の酸化マグネシウム顆粒に関する。本発明の酸化マグネシウム顆粒を用いることで、好ましくは、錠剤を製造する際の打錠障害及び/又は錠剤にしたときの錠剤強度を改善することができる。
【0015】
まず、本発明の酸化マグネシウム顆粒の物性について説明する。
なお、本明細書では酸化マグネシウムを「MgO」と表記することもある。
【0016】
本発明の前記酸化マグネシウム顆粒は、通常、BET比表面積が約7〜約50m/g、錠剤製造における打錠障害の改善又は錠剤強度の改善の観点から、好ましくは約10〜約45m/g、より好ましくは約12〜約40m/gである。
【0017】
また、本発明の前記酸化マグネシウム顆粒は、通常、CAA80/CAA40が約2〜約7、錠剤製造における打錠障害の改善及び/又は錠剤強度の改善の観点から、好ましくは約2.2〜約6、より好ましくは約2.4〜約5である。
【0018】
本発明において、「CAA」は、酸化マグネシウムの活性度を示す指標であり、クエン酸と所定量の酸化マグネシウムとが反応するのに要する時間によって表す。また、CAA80とは、クエン酸に所定量の酸化マグネシウムを添加してから、添加総量の80mol%の酸化マグネシウムが反応するまでに要した時間を示し、CAA40は同様に、クエン酸に所定量の酸化マグネシウムを添加してから、添加総量の40mol%の酸化マグネシウムが反応するまでに要した時間を示す。具体的な測定方法については、後記する実施例の記載を参考にしてよい。
また、「CAA80/CAA40」は、CAA80のCAA40に対する比を示す。
なお、CAAに関し、特開平7−187662号には、同様の方法で酸化マグネシウムの活性を測定したことが記載されている。
【0019】
本発明のひとつの態様において、前記酸化マグネシウム顆粒は、BET比表面積約7〜約50m/g且つCAA80/CAA40が約2〜約7である。錠剤製造における打錠障害の改善及び/又は錠剤強度の改善の観点から、好ましくはBET比表面積約10〜約45m/g且つCAA80/CAA40が約2.2〜約6、より好ましくはBET比表面積約12〜約40m/g且つCAA80/CAA40が約2.4〜約5である。
【0020】
また、本発明の別のひとつの態様において、前記酸化マグネシウム顆粒の、かさ密度は、打錠障害又は錠剤強度が改善されれば、特に限定されないが、好ましくは約700〜約1000g/L、より好ましくは約750〜約990g/Lである。
なお、本発明において前記「かさ密度」は、日本薬局方に規定されるかさ密度である。
【0021】
本発明のひとつの好ましい態様において、前記酸化マグネシウム顆粒は、BET比表面積約7〜約50m/g、CAA80/CAA40が約2〜約7、且つ、かさ密度が約700〜約1000g/Lである。
【0022】
さらに、本発明のひとつの態様において、前記酸化マグネシウム顆粒の粒子径は、打錠障害又は錠剤強度が改善されれば特に限定されないが、粒子径約150μm未満の顆粒が、通常全体の約10重量%以下、好ましくは約9重量%以下、より好ましくは約8重量%以下である。
また、酸化マグネシウム顆粒の平均粒子径は、特に限定されないが、例えば、通常約150〜約425μm、打錠障害又は錠剤強度改善の観点から、好ましくは約180〜約400μm、より好ましくは約200〜約380μmである。なお、酸化マグネシウム顆粒の粒子径の測定方法は、通常この分野で用いられる方法であれば、いずれの方法を用いてもよい。いずれの測定方法により得られた値であっても、上記範囲に入れば、本発明の技術的範囲内である。
【0023】
本発明の別のひとつの態様において、前記酸化マグネシウム顆粒の純分(Assay)は、医薬用又は食品添加用に用いる観点から、好ましくは約96%以上、より好ましくは約96.5%以上、特に好ましくは97%以上である。
なお、本発明において酸化マグネシウム顆粒の純分(Assay)は、米国薬局方(USP)に従って決定した値である。具体的には、800℃で焼成し、恒量となった酸化マグネシウムを0.5g量りとり、1N硫酸30mlを加えて溶解させ、該溶液を1N苛性ソーダで滴定することにより求める。
【0024】
また、本発明のひとつの好ましい態様において、前記酸化マグネシウム顆粒は、酸化マグネシウム顆粒の総重量中、鉛(Pb)の含有量が約20ppm以下且つヒ素(As)の含有量が約4ppm以下であり、より好ましくはPbの含有量が約10ppm以下且つAsの含有量が約3ppm以下である。このような酸化マグネシウム顆粒であれば、医薬用又は食品添加用として安全に使用することができる。
【0025】
続いて、本発明の前記酸化マグネシウム顆粒の製造方法について説明する。
【0026】
本発明の前記酸化マグネシウム顆粒の製造に用いる酸化マグネシウムは、公知方法、自体公知の方法又はそれらに準じる方法に従って製造してよい。
【0027】
本発明のひとつの態様において、前記酸化マグネシウムは、水酸化マグネシウムを焼成することによって製造する。なお、本発明に用いる水酸化マグネシウムの製造方法は、従来十分に確立されていて、本発明においてもそれに従ってよい。また水酸化マグネシウムは市販のものを使用してもよい。
【0028】
本発明のひとつの態様において、前記水酸化マグネシウムを焼成して酸化マグネシウムを製造する場合、水酸化マグネシウムの焼成温度を変化させることにより、活性度の異なる酸化マグネシウムを製造することが好ましい。
ここで、本発明において、水酸化マグネシウムを焼成温度約1000℃〜約2000℃で焼成して得られる酸化マグネシウムを「低活性酸化マグネシウム」といい、焼成温度約450℃〜約900℃で焼成して得られる酸化マグネシウムを「中活性酸化マグネシウム」という。また、焼成時間は、特に限定されないが、例えば、通常約30分〜約5時間、好ましくは約1時間〜約3時間である。
【0029】
前記低活性酸化マグネシウムは、BET比表面積が、好ましくは約0.05〜約15m/g、より好ましくは約0.1〜約10m/gである。また、前記低活性酸化マグネシウムは、CAA80が、好ましくは約550〜約850秒、より好ましくは約600〜約800秒であり、CAA40が、好ましくは約250〜約550秒、より好ましくは約300秒〜約500秒である。
前記中活性酸化マグネシウムは、BET比表面積が、好ましくは約20〜約80m/g、より好ましくは約25〜約75m/gである。また、前記中活性酸化マグネシウムは、CAA80が、好ましくは約100〜約300秒、より好ましくは約100〜約250秒であり、CAA40が、好ましくは約50〜約100秒、より好ましくは約60秒〜約95秒である。
【0030】
本発明において、BET比表面積の測定方法は、通常この分野で用いられる方法であればよく、特に限定されない。いずれの測定方法により得られた値であっても、上記範囲に入れば本発明の技術的範囲内である。BET比表面積の測定方法は、具体的には、例えば、前処理として窒素ガス雰囲気下で加熱処理した測定試料(酸化マグネシウム顆粒)を、BET比表面積測定装置にて窒素ガス吸着法で測定してもよい。前処理は、例えば、窒素ガス雰囲気下、約130℃で約30分間としてもよい。前処理を行う際に用いる装置及びBET比表面積測定装置は、特に限定されず、通常この分野で用いられるいずれの装置を用いてもよい。
【0031】
本発明の好ましいひとつの態様において、好ましくは、前記酸化マグネシウム顆粒は、前記低活性酸化マグネシウムと前記中活性酸化マグネシウムを混合し、圧力をかけた後に粉砕することにより製造する。本態様において、低活性酸化マグネシウムと中活性酸化マグネシウムの混合比率は特に限定されないが、得られる酸化マグネシウム顆粒の物性を所望の値とする観点から、通常、重量%で、中活性酸化マグネシウム:低活性酸化マグネシウム=10:90〜80:20の範囲であることが好ましい。また、上記混合割合は、得られる酸化マグネシウム顆粒を所望の物性とするために適宜選択してよい。低活性酸化マグネシウムの割合を高くすると、かさ密度及び純分が高くなる一方、BET比表面積及び錠剤強度が低くなる。
【0032】
前記酸化マグネシウム顆粒の製造において、低活性酸化マグネシウムと中活性酸化マグネシウムの混合物を加圧するときの条件は、特に限定されないが、通常、約5〜約35MPa、所望の物性を有する酸化マグネシウム顆粒を得る観点から、好ましくは約8〜約30MPa、より好ましくは約10〜約25MPaである。また、加圧を行うときに用いる装置は特に限定されないが、例えば、ローラーコンパクター等を用いてもよい。
また、加圧後の粉砕工程における粉砕方法は、特に限定されず、例えば、グラニュレーターを用いて粉砕してもよい。前記グラニュレーターとしては、特に限定されないが、例えば、ロールグラニュレーターが挙げられる。粉砕方法は、具体的には、ロールを縦に3段セットしたロールグラニュレーターを用いて、回転させたロールの隙間に加圧した酸化マグネシウムを通過させて粉砕させる方法であってもよい。
【0033】
本発明は、また、前記酸化マグネシウム顆粒を含有する酸化マグネシウム錠剤もその権利範囲に包含する。錠剤の製造方法は、従来十分に確立されているから、本発明においても、錠剤の製造はそれに従ってよい。具体的には、例えば、本発明の酸化マグネシウム錠剤は、前記酸化マグネシウム顆粒、結合剤及び崩壊剤等を組合せることにより製造してもよい。本発明の前記酸化マグネシウム顆粒を用いることで、打錠の際のキャッピング、ラミネーティング、スティッキング、ピッキング等の打錠障害の発生が低減される。
【0034】
前記結合剤としては、特に限定されないが、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、またはデンプン(例えばトウモロコシデンプン)等が挙げられる。また、前記崩壊剤としては、特に限定されないが、例えば、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルメロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム又はカルボキシスターチナトリウム等が挙げられる。前記結合剤の配合量は、特に限定されないが、例えば、錠剤中約1〜約10重量%、好ましくは約1〜約8重量%であってよい。また、前記崩壊剤の配合量は、特に限定されないが、例えば、錠剤中約1〜約10重量%、好ましくは約1〜約5重量%であってよい。
【0035】
また、前記錠剤は、さらに、賦形剤、滑沢剤等を含有してもよい。前記賦形剤としては、特に限定されないが、例えば、乳糖、白糖、マンニトール、コーンスターチ、又は結晶セルロース等が挙げられる。また、前記滑沢剤としては、特に限定されないが、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、タルク、ステアリン酸又はステアリン酸塩(Na、Mg、又はCa塩)等が挙げられる。
さらに、前記錠剤は、所望により可塑剤、コーティング剤、凝集防止剤、可溶化剤、甘味料、酸味料、矯味料、pH調整剤、溶解補助剤、着色料、又は香料等の添加剤を1以上含有してもよい。前記可塑剤としては、例えばクエン酸トリエチル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール等があげられる。前記コーティング剤としては、例えばエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等があげられる。前記凝集防止剤としては、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム等があげられる。前記可溶化剤としては、例えばショ糖脂肪酸エステル、モノステアリン酸ソルビタン、ラウリル硫酸ナトリウム等があげられる。前記甘味料としては、例えばアスパルテーム、サッカリン、グリチルリチン酸二カリウム、ステビア等があげられる。前記酸味料(有機酸)としては、例えばクエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、フマル酸等があげられる。前記矯味剤としては、例えば、l−メントール、塩化ナトリウム、アセスルファムカリウム、スクラロース等があげられる。前記pH調整剤としては、例えばクエン酸塩、リン酸塩、炭酸塩、酢酸塩等があげられる。前記溶解補助剤としては、例えばシクロデキストリン、アルギニン、リジン、トリスアミノメタン等があげられる。前記着色料としては、例えば黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、銅クロロフィリンナトリウム等があげられる。前記香料としては、例えばオレンジ油、レモン油、ハッカ油、ユーカリ油等があげられる。
【0036】
本発明の前記錠剤の強度は、品質特性の向上の観点から、好ましくは約60N〜約200Nである。
【0037】
また、本発明の好ましいひとつの態様において、前記錠剤は、好ましくは口腔内崩壊錠である。本態様において、前記錠剤の口腔内での崩壊時間は、特に限定されないが、例えば、通常約1〜約60秒、好ましくは約5〜45秒、より好ましくは約5〜20秒である。
【実施例】
【0038】
次に、実験例、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【0039】
<CAAの測定方法>
(1)100mLの0.4Nクエン酸を30℃に調整した。
(2)前記(1)のクエン酸にフェノールフタレイン液を1滴添加した。
(3)前記(2)の溶液に酸化マグネシウム顆粒を添加後(※)、マグネティックスターラーを550rpmで回転させることにより溶液を撹拌した。
(4)撹拌を開始してから、測定溶液の色が無色から赤紫色へと変化するまでに要した時間を測定し、この時間(秒)をCAA値とした。
※CAA40を測定する場合、上記酸化マグネシウム顆粒0.05molを添加して測定した。酸化マグネシウム顆粒0.02mol(全体の40%)が反応すると、測定液の色が無色から赤紫色へと変化する。また、CAA80を測定する場合、上記酸化マグネシウム顆粒の添加量を0.025molとして測定した。
【0040】
<純分の測定方法>
酸化マグネシウム顆粒の純分は、米国薬局方(United States Pharmacopeia、USP)に従って測定した。
【0041】
<かさ密度の測定方法>
日本薬局方のかさ密度の測定方法の第1法に従って測定した。
【0042】
<Pb及びAs含有量の測定方法>
ICP−MS法によって測定した。具体的には、試料(酸化マグネシウム顆粒)を7N硝酸に溶解させ、この試料溶液を純水で希釈した後、SPQ−9000型同軸ネブライザー(セイコーインスツルメンツ社製)を用いて測定した。別途、Pb及びAsの標準試料を用いて検量線を作成し、検量線法により、酸化マグネシウム顆粒中のPb及びAsの含有量を算出した。
【0043】
<打錠方法及び錠剤強度の測定方法>
(1)結合剤を4〜10重量%添加した酸化マグネシウム顆粒300mgを打錠機(HATA:HT−AP18SS−II型750号)で5MPaの圧力をかけてφ8mm、厚み4mmのペレットを成型した。結合剤には、デンプンを用いた。
(2)錠剤破壊強度測定器(富山産業:TH303MP)を用いて成型したペレットの錠剤強度を測定した。
【0044】
<参考例1>中活性酸化マグネシウムの製造
水酸化マグネシウム(神島化学工業社製、グレード名:#200)を電気炉で、900℃で2時間焼成して中活性酸化マグネシウムを製造した。このようにして得られた中活性酸化マグネシウムは、BET比表面積51m/gであった。
<参考例2>低活性酸化マグネシウムの製造
水酸化マグネシウム(神島化学工業社製、グレード名:#200)を電気炉で、1100℃で2時間焼成して低活性酸化マグネシウムを製造した。このようにして得られた低活性酸化マグネシウムは、BET比表面積3m/gであった。
【0045】
<実施例1>
参考例1で製造したBET比表面積51m/gの中活性酸化マグネシウム(以降、中活性MgOという。)と、参考例2で製造したBET比表面積3m/gの低活性酸化マグネシウム(以降、低活性MgOという。)の割合が、中活性MgO:低活性MgO=80:20(重量%)となるように混合した混合物を、フロイント・ターボ製の横型ローラーコンパクターを用いてロール圧力10MPaをかけた。その後、グラニュレーター(日本グラニュレーター社製、型番:GRN1031)を用いて粉砕を行った。
粉砕後、振動篩(20メッシュ及び60メッシュ)で篩別を行い、20メッシュオーバーと60メッシュアンダーの顆粒を取り除いて酸化マグネシウム顆粒を作製した。
<実施例2>
中活性MgOと低活性MgOの混合比を60:40(重量%)とする以外は、実施例1と同様にして酸化マグネシウム顆粒を作製した。
<実施例3>
中活性MgOと低活性MgOの混合比を40:60(重量%)とする以外は、実施例1と同様にして酸化マグネシウム顆粒を作製した。
<実施例4>
中活性MgOと低活性MgOの混合比を20:80(重量%)とする以外は、実施例1と同様にして酸化マグネシウム顆粒を作製した。
<実施例5>
中活性MgOと低活性MgOの混合比を10:90(重量%)とする以外は、実施例1と同様にして酸化マグネシウム顆粒を作製した。
<比較例1>
中活性MgOのみを用いた以外は、実施例1と同様にして酸化マグネシウム顆粒を作製した。
<比較例2>
低活性MgOのみを用いた以外は、実施例1と同様にして酸化マグネシウム顆粒を作製した。
<比較例3>
BET比表面積22m/gの酸化マグネシウムを用いた以外は、実施例1と同様にして酸化マグネシウム顆粒を作製した。
【0046】
酸化マグネシウム顆粒の物性、錠剤強度、及び打錠障害の有無を表1に示した。
【0047】
【表1】



【0048】
本発明の実施品である実施例1〜4の酸化マグネシウム顆粒は、打錠時のスティッキングやキャッピング等の問題がなく、得られた錠剤の強度も十分なものであった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の酸化マグネシウム顆粒によれば、酸化マグネシウム錠剤の製造における打錠障害を低減でき、錠剤の強度不足に起因する酸化マグネシウム錠剤の品質特性異常を低減することができるため、酸化マグネシウム錠剤の製造効率を格段に向上させることができる。さらに、本発明の酸化マグネシウム顆粒は、重金属の含有量が少なく、酸化マグネシウムの純度が高いため、本発明によれば、医薬用又は食品添加用として好適に使用できる安全な酸化マグネシウム顆粒を提供することができる。