(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アルコキシ官能性アリールポリシロキサン及び/又は前記アルコキシ官能性アリールアルキルポリシロキサンが下記式(I)で表されることを特徴とする、請求項1に記載のコーティング組成物。
RaSi(OR’)bO(4−a−b)/2 (I)
(式中、0<a<2、0<b<2、a+b<4であり、 Rは、炭素原子数が6〜20の芳香族部位及び炭素原子数が6〜20の芳香族部位と炭素原子数が1〜8のアルキル基の混合物から選択され、 R’は、炭素原子数が1〜8のアルキル基である。)
前記アルコキシ官能性アリールポリシロキサン及び/又は前記アルコキシ官能性アリールアルキルポリシロキサンが、無溶媒系の100%樹脂又は樹脂溶液として含まれることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
前記コーティング組成物中の前記成分A)の割合が10〜70重量%であり、前記コーティング組成物中の前記成分B)の割合が0.001〜15重量%であり、前記コーティング組成物中の前記成分C)の割合が10〜80重量%である(前記成分A)、B)及びC)の割合の合計は100重量%である)ことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のコーティング組成物は、アルコキシ官能性アリールポリシロキサン及び/又はアルコキシ官能性アリールアルキルポリシロキサンを含む。
【0016】
より具体的には、本発明のコーティング組成物に含まれるアルコキシ官能性アリールポリシロキサン及び/又はアルコキシ官能性アリールアルキルポリシロキサンは、下記式(I)で表される化合物である。
【0017】
R
aSi(OR’)
bO
(4−a−b)/2 (I)
【0018】
(式中、0<a<2、0<b<2、a+b<4であり、
Rは、炭素原子数が6〜20の芳香族部位及び炭素原子数が6〜20の芳香族部位と炭素原子数が1〜8のアルキル基の混合物から選択され、
R’は、炭素原子数が1〜8のアルキル基である。)
【0019】
適当なアルキル基Rの例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基及びtert−ブチル基が挙げられる。芳香族部位Rは、例えば、フェニル部位であってもよい。好ましくは、Rは、メチル基、フェニル基及びメチル基とフェニル基の混合物(すなわち、メチル基とフェニル基の両方がポリシロキサン内に存在する)から選択される。
【0020】
適当なアルキル基R’の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基及びtert−ブチル基が挙げられる。R’は、好ましくはメチル基及びエチル基から選択される。後者は、特に、トルエン、キシレン又はベンゼン等の溶媒を含まず、室温であっても生じる加水分解・縮合架橋処理においてメタノールを放出せず、エタノールのみを放出する、HAPS(Hazardous Air Pollutant Substance(有害大気汚染物質))を含まないフェニルポリシロキサン又はフェニルアルキルポリシロキサンに適している。
【0021】
式(I)で表される化合物は、通常はシリコーン樹脂と呼ばれる。式(I)は、シリコーンポリマーの平均化学構造式の最小単位を表す。繰返し数は、GPCによって測定した数平均分子量M
nから決定することができる。
【0022】
これらのシリコーン樹脂の調製方法は、古くから文献に記載されており(W.Noll−Chemie und Technologie der Silicone,Wiley−VCH Verlag GmbH & Co.KGaA,Weinheim,1960を参照)、ドイツ特許第34 12 648号にも記載されている。また、欧州特許出願第1142929号及び欧州特許出願第0157318号にもシリコーン樹脂の調製方法が記載されている。
【0023】
本発明の第1の好適な実施形態では、成分A)は、アルコキシ官能性アリール(アルコキシシロキサン)、より具体的には、式(I)においてR=Phである、アルコキシ官能性フェニルポリシロキサン(フェニルシリコーン樹脂)を含む。
【0024】
アルコキシ基の割合は、ポリシロキサンに対して、少なくとも5重量%、好ましくは10〜70重量%、特に好ましくは15〜25重量%である。
【0025】
アリール(アルコキシシロキサン)の分子量M
wは、50〜10,000g/mol、好ましくは200〜3,000g/mol、特に好ましくは800〜1,700g/molである。
【0026】
アリール(アルコキシシロキサン)の分子量M
nは、700〜900g/molである。
【0027】
本発明の別の好適な実施形態では、本発明のコーティング組成物の成分A)はアルコキシ官能性アリールアルキルポリシロキサンを含む。
【0028】
アリールアルキルポリシロキサンの分子量M
wは、50〜20,000g/mol、好ましくは1,000〜50,000g/mol、特に好ましくは1,500〜3,500g/molである。
【0029】
アリールアルキルポリシロキサンの分子量M
nは、800〜1,200g/molである。
【0030】
本発明の別の好適な実施形態では、本発明のコーティング組成物の成分A)は、式(I)においてR=Ph、Meである、アルコキシ官能性フェニルメチルポリシロキサン(フェニルメチルシリコーン樹脂)を含む。特に好ましくは、アルコキシ基はメトキシ基及びエトキシ基から選択される。
【0031】
無溶媒系フェニルメチルシリコーン樹脂の場合には、アルコキシ基(より具体的にはメトキシ基及び/又はエトキシ基)の割合は、ポリシロキサンに対して、少なくとも10重量%、好ましくは10〜40重量%、より好ましくは10〜30重量%、特に好ましくは13〜25重量%である。
【0032】
フェニル:メチル比は、通常は1:0.1〜0.1:1、好ましくは0.4:1〜1:1である。
【0033】
本発明において、例えば、対応するフェニルトリアルコキシシランとメチルフェニルジアルコキシシランからなるモノマー混合物もフェニルメチルポリシロキサンと同義である。本発明において使用できるモノマー混合物の適当な例としては、約67重量%のフェニルトリメトキシシランと約28重量%のメチルフェニルジメトキシシランの混合物が挙げられる。
【0034】
ポリシロキサンは、特に、メトキシ官能性フェニルメチルポリシロキサン樹脂や、エトキシ官能性フェニルメチルポリシロキサン樹脂等の、R=Ph、Meであるアルコキシ官能性フェニルメチルポリシロキサン樹脂の場合には、無溶媒系の100%樹脂又は対応する樹脂溶液として存在していてもよい。溶媒としては、キシレン、トルエン、酢酸ブチル又はメトキシプロピルアセテート(MPA)が好ましい。
【0035】
そのような溶媒を添加することにより、ポリシロキサンの粘度を低下させ、コーティング系の製造における取り扱いを容易にすることができる。
【0036】
特に、メトキシ官能性フェニルメチルポリシロキサン樹脂の場合には、樹脂溶液中のシリコーン樹脂含有量は、溶液に対して、30〜99.99重量%、好ましくは60〜99.99重量%、より好ましくは80重量%以上である。樹脂溶液を使用する場合、メトキシ官能性フェニルメチルポリシロキサン樹脂の分子量M
wは、50〜200,000g/mol、好ましくは3,000〜120,000g/mol、より好ましくは4,000〜70,000g/molである。
【0037】
メトキシ官能性フェニルメチルポリシロキサン樹脂の分子量M
nは、1,500〜3,900g/molである。
【0038】
特に、エトキシ官能性フェニルメチルポリシロキサン樹脂の樹脂溶液を使用する場合には、固形分含有量は、樹脂溶液に対して、50〜99.99重量%、好ましくは80〜99.99重量%、より好ましくは90重量%以上である。この場合、アルコキシ基の割合は、10〜70重量%、好ましくは10〜30重量%、より好ましくは10〜15重量%である。分子量M
wは、50〜10,000g/mol、好ましくは200〜8,000g/mol、より好ましくは500〜2,000g/molである。
【0039】
エトキシ官能性フェニルメチルポリシロキサン樹脂の分子量M
nは、800〜1,200g/molである。
【0040】
本発明のコーティング組成物中の成分A)の割合は、コーティング組成物に対して、10〜80重量%、好ましくは20〜50重量%である。上述した樹脂は、2種以上の樹脂の混合物として使用することもできる。
【0041】
十分に高いアルコキシ官能性を有しておらず、アルコキシ基の割合が成分A)及びC)の合計に対して少なくとも10重量%である樹脂は、成分C)としてのアルコキシシラン又は対応するアルコキシ官能性を有するメチルシリコーン樹脂と混合して使用することができる。本発明の一実施形態では、成分A)の樹脂におけるアルコキシ基の割合は10重量%を超え、成分C)としてのアルコキシシランと必ずしも混合する必要はない。アルコキシシランにおけるアルコキシ基の割合が10重量%未満である場合には、アルコキシ基の割合が成分A)及びC)の合計に対して少なくとも10重量%となるように、少なくとも1種のアルコキシシランを成分C)として添加する。
【0042】
このようにして、室温及び5〜100%の相対湿度において生じる加水分解・縮合反応による触媒化学架橋が十分に高い速度で生じ、物理的にのみ乾燥するシリコーン樹脂コーティングでは達成されない高い硬度を有するコーティングを得ることができる。
【0043】
適当なアルコキシシランC)は、下記式(II)で表される化合物である。
【0045】
(式中、0≦a≦2、0≦b≦4、a+b=4であり、
Rは、炭素原子数が1〜8のアルキル基、炭素原子数が3〜8のシクロアルキル基又は炭素原子数が6〜20の芳香族部位であり、R’は、炭素原子数が1〜8のアルキル基である。)
【0046】
アルキル基は、より具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基及びtert−ブチル基から選択される。
【0047】
適当なアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメトキシフェニルメチルシラン及びジエトキシフェニルメチルシランが挙げられる。
【0048】
アルコキシシランは、成分A)及びC)の混合物に対して、10〜80重量%、好ましくは20〜60重量%、より好ましくは30〜50重量%の量で使用することができる。
【0049】
本発明のコーティング組成物のもう一つの必須成分は、少なくとも1種の架橋触媒B)である。
【0050】
アルコキシシリル基の硬化を促進する触媒は当業者に周知である。そのような触媒の例としては、二酢酸スズ、2‐エチルヘキサン酸第一スズ、ジブチルスズジアセチルアセトネート、ジブチルスズジラウレート、四酢酸スズ、二酢酸ジブチルスズ、ジブチルスズジオクトエート、二オレイン酸ジブチルスズ、ジメトキシジブチルスズ、ジメチルスズ、マレイン酸べンジルジブチルスズ、ビス(トリエトキシシロキシ)ジブチルスズ、二酢酸ジフェニルスズ等のスズ化合物、テトラエトキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトライソブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキソキシ)チタン、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジプロポキシビス(アセチルアセトナート)チタン、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナート)チタン、ジブトキシビス(アセチルアセトナート)チタン、酢酸トリイソプロポキシアリルチタン、イソプロポキシオクチレングリコール−酸化チタン、ビス(アセチルアセトナート)酸化チタン等のチタン化合物、二酢酸鉛、ジ−2−エチルヘキサン酸鉛、ジネオデカン酸鉛、四酢酸鉛、四プロピオン酸鉛、亜鉛アセチルアセトナート、2−エチルカプロン酸亜鉛、二酢酸亜鉛、ビス(2−エチルヘキサノイル)亜鉛、ジネオデカン酸亜鉛、ジウンデセン酸亜鉛、亜鉛ジメタクリレート、テトラキス(2−エチルヘキサノイル)二塩化ジルコニウム、テトラキス(メタクリロイル)二塩化ジルコニウム、二酢酸コバルト等の金属脂肪族(metalloaliphatic)化合物が挙げられる。また、Borchi触媒等のビスマス触媒、鉄(III)アセチルアセトナート及び二酢酸鉄等の鉄(II)及び鉄(III)化合物、アルミニウムアセチルアセトナート等のアルミニウム化合物、エチレンジアミン四酢酸カルシウム等のカルシウム化合物、エチレンジアミン四酢酸マグネシウム等のマグネシウムを触媒として使用することもできる。
【0051】
また、トリエチルアミン、トリブチルアミン、アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エチルジイソプロピルアミン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ビス(N,N−ジメチル2−アミノエチル)メチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルフェニルアミン及びN−エチルモルホリン等のアミン構造化合物、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン等のグアニジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン及び1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン等のアミジンも好適である。N,N,N−トリメチル−N−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム、N,N,N−トリメチル−N−2−ヒドロキシプロピルアンモニウムヒドロキシド、2−エチルヘキサノエート及びコリン2−エチルヘキサノエート等のテトラアルキルアンモニウム化合物も同様に触媒活性を有する。メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、1−ナフタレンスルホン酸、カンファースルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸及び塩化ベンゾイル等の有機又は無機ブレンステッド酸、塩酸、リン酸、そのモノエステル及び/又はジエステル(リン酸ブチル、リン酸(イソ)プロピル、リン酸ジブチル等)も触媒として適している。さらに、水酸化ナトリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化カリウム及びテトラブチルアンモニウムヒドロキシド等の有機又は無機ブレンステッド塩基も触媒として適している。2種以上の触媒を組み合わせて使用することもできる。
【0052】
また、国際公開第2005/100482号に記載されているように、光潜在性塩基も架橋触媒として知られている。光潜在性塩基は、好ましくは、当初はブロックされた状態で存在し、紫外線、可視光又は赤外線の照射による分子の分裂によって塩基を放出する、1以上の塩基性窒素原子を有する有機塩基である。
【0053】
また、Dorf Ketal社(以前はDuPont社)からTyzor(登録商標)として市販されている触媒も触媒活性を示す。Kenreact(登録商標)(Kenrich社製)、Borchi Kat(登録商標)(Borchers社製)及びK−Cure(登録商標)/Nacure(登録商標)(King Industries社製)等の触媒を使用することもできる。
【0054】
触媒が十分に迅速な硬化を達成することができるように、触媒は、硬化させるバインダーマトリックスに可溶であるか、硬化させるバインダーマトリックスと容易に混和でき、バインダーマトリックス全体に分散することが非常に重要である。触媒のモル質量と化学構造の両方が溶解性/混和性に影響を与える。
【0055】
特に好ましくは、架橋触媒B)はケイ素原子を含まない(すなわち、アルコキシシリル基、シリルオキシ基又はシリル基を含まない)。架橋触媒B)は、好ましくは、チタネート及び含窒素化合物からなる群(好ましくは、グアニジン及びアミジンからなる群)から選択される。テトラ−n−ブトキシチタネート(TnBT)、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン(TMG)及び1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)が特に好ましい触媒である。1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)又は1,1,3,3−テトラメチルグアニジン又は1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)とテトラ−n−ブトキシチタネートの混合物を使用することが特に好ましい。
【0056】
本発明のコーティング組成物中の成分B)の割合は、成分A)及びC)の割合の合計に対して、0.1〜15.0重量%、好ましくは0.1〜3.0重量%である。
【0057】
従来は、通常は、例えば、テトラ−n−ブトキシチタネート等のチタネートからなる群から選択される架橋触媒と共にメトキシ官能性メチルシリコーン樹脂を使用する。メトキシ官能性フェニルメチルポリシロキサン及びその溶液を使用する場合には、これらの系は全く機能しないか、メトキシ官能性メチルシリコーン樹脂の硬化速度の10分の1以下の硬化速度を示す。メトキシ官能性フェニルメチルシリコーン樹脂を使用する場合には、特に適した触媒は、含窒素化合物からなる群、好ましくはグアニジン及びアミジンからなる群、より具体的には1,1,3,3−テトラメチルグアニジン及び1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)から選択される。テトラメチルグアニジン(TMG)と比較して、DBUはより強力な触媒に分類することができる。また、TMGとTnBTの組み合わせ又はDBUとTnBTの組み合わせも特に適している。HAPSを含まないフェニルメチルポリシロキサン(より具体的には、エトキシ官能性フェニルメチルポリシロキサン)及び樹脂溶液を使用する場合には、TMG及びDBUが同様に適しており、DBUは反応の低いエトキシ基の場合には架橋速度の点で明らかに有利である。
【0058】
本発明のコーティング組成物は、成分D)として助剤及び添加剤を含むことができる。助剤及び添加剤は、希釈剤、触媒、可塑剤、充填剤、溶媒、乳化剤、接着促進剤、レオロジー添加剤、化学乾燥用添加剤及び/又は熱及び/又は化学暴露及び/又は紫外線及び可視光による暴露に対する安定化剤、チクソ剤、難燃剤、発泡剤、消泡剤、脱気剤、膜形成ポリマー、抗菌性化合物、保存剤、酸化防止剤、色素、着色材、色素、不凍剤、殺真菌剤、反応性希釈剤、錯化剤、湿潤剤、共同架橋剤、噴霧助剤、活性薬理成分、香料、ラジカルスカベンジャー及び/又はその他の助剤からなる群から選択される。
【0059】
適当な溶媒は、アルカン、アルケン、アルキン、ベンゼン、脂肪族及び芳香族置換基を有する芳香族化合物、カルボン酸エステル、直鎖及び環状エーテル、完全な対称構造を有する分子、例えば、テトラメチルシラン、二硫化炭素、高圧炭酸ガス、ハロゲン化脂肪族又は芳香族炭化水素、ケトン、アルデヒド、ラクトン(γ−ブチロラクトン)、ラクタム(N−メチル−2−ピロリドン及びN−エチル−2−ピロリドン等)、アセトニトリル等のニトリル、ニトロ化合物、第三カルボアミド(N,N−ジメチルホルムアミド)、テトラメチル尿素及びジメチルプロピレン尿素(DMPU)等の尿素誘導体、ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシド、スルホラン等のスルホン、炭酸ジメチル及び炭酸エチレン等の炭酸エステルから選択することができる。水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、その他のアルコール、第二級及び第三級アミン、カルボン酸及びホルムアミド等の第二級及び第三級アミド等のプロトン性溶媒も使用することができる。
【0060】
本発明のコーティング組成物に含まれていてもよいその他の助剤としては充填剤が挙げられる。
【0061】
高温で使用されるコーティング系の場合には、金属酸化物及びスピネル色素等の無機顔料が着色用に特に適している。使用できる充填剤の例としては、特に雲母が挙げられ、雲母は、非常に高い高温安定性を有すると共に、熱による基材の体積変化を補償することができる。
【0062】
また、アルミニウム青銅及び亜鉛末等の金属顔料を使用することもできる。防食性を高めるために、リン酸亜鉛等の通常の耐食性色素を使用することもできる。
【0063】
本発明のコーティング組成物中の成分A)の割合は10〜70重量%(好ましくは20〜50重量%)であり、成分B)の割合は0.001〜15重量%(好ましくは1〜3重量%)であり、成分C)の割合は10〜80重量%(好ましくは20〜50重量%)である(成分A)、B)及びC)の割合の合計は100重量%である)ことが特に好ましい。
【0064】
本発明のコーティング組成物によって達成される硬化速度は、先行技術によって達成される硬化速度よりもはるかに高い。
【0065】
また、本発明は、本発明のコーティング組成物を含むコーティング系を提供する。本発明のコーティング系は、当業者に公知のあらゆるコーティング系、より具体的には塗料、インク及びワニスを含むことができる。
【0066】
この場合、通常は、本発明の成分を必要に応じて任意の助剤及び添加剤と混合し、液体表面コーティング材料の通常の製造方法に従って処理する。ポリシロキサンA)は、十分なアルコキシ官能性を有する場合には成分A)単独で任意の添加剤D)と混合し、それ以外の場合にはアルコキシシランC)と組み合わせて任意の添加剤D)と混合する。添加剤D)は、通常は、色素、充填剤、チクソ剤及び溶媒であり、撹拌下で連続的に添加してコーティング系(ワニス又は塗料)を製造する。この場合、溶解機を使用して分散させた後、撹拌機構を備えたビーズミルによって微細に分散させる。ビーズミル上で粉砕することによって顔料凝集体を分断させ、色素の微細な分割及び着色力を最大化させる。一成分系の場合には、架橋触媒B)は、第2の成分として、塗料を輸送用容器に入れる直前の塗料調製工程の最後に添加するか、コーティング系の塗布直前に添加する。コーティング組成物を一成分系又は二成分系のいずれとして好ましく使用できるかは、通常は処方における各原料の組み合わせに依存し、貯蔵安定性試験によって各処方について調べることができる。
【0067】
本発明のコーティング系は、通常は噴霧塗布するが、ブラシ塗布、ロール塗布、フローコート、ディッピング、刷毛塗り又は注入等のその他の手法によって塗布することもできる。適当な基材としては、例えば、鋼、鋳造鋼、ステンレス鋼、溶融亜鉛メッキ鋼、アルミニウム、鋳造アルミニウム又は銅等の金属基材が挙げられる。密着性を向上させるために、基材はサンドブラスト又は研摩によって粗面化することができる。ガラス又はセラミック等の非金属基材を使用することもできる。
【0068】
基材に塗布された本発明のコーティング系は、大気中の水分の侵入による触媒加水分解・縮合架橋プロセスによって硬化する。高温での強制乾燥及びオーブンに導入した十分な水分を使用した加水分解・縮合による化学架橋を組み合わせて使用することができる。触媒と混合されたそのようなコーティング系のさらなる利点は、硬化は大気中の水分からの水の存在下においてのみ生じるため、密閉容器内においてポットライフの問題が生じないことである。本発明によれば、完全な機械的及び化学的安定性を示すように250℃の温度の少なくとも30分間にわたって加熱する必要がある、純粋に物理的に乾燥させる従来のシリコーン樹脂系コーティング系と比較して、オーブン乾燥エネルギーを節約することができる。本発明のコーティング組成物を使用して製造されるコーティング系は、室温であっても化学架橋によって完全に硬化する。
【0069】
当業者は、さらなる説明を必要とすることなく、上述した説明を最も広範に利用できると思われる。好適な実施形態及び実施例は、単に記述的な開示として解釈されるべきであり、本発明を限定するものではない。本発明に関連して「%」という単位を使用する場合、特記しない限りにおいて「重量%」を意味する。組成物の場合には、特記しない限りにおいて「%」は組成物全体に対する割合を意味する。平均値を記載する場合には、特記しない限りにおいて数値平均を意味する。測定値を記載する場合には、特記しない限りにおいて、101,325Paの圧力、23℃の温度及び約40%の相対湿度における測定値を意味する。
【実施例】
【0070】
以下、実施例を参照して本発明についてさらに具体的に説明する。なお、本発明の他の実施形態も同様に構成することができる。
【0071】
方法及び材料
【0072】
乾燥時間の測定
バインダー中の触媒の触媒活性を評価するための適当な手段は、Drying Recorderを使用して乾燥時間を測定することである。このような試験方法は、ASTM D5895に記載されている。ASTM D5895に記載された試験方法と同様にして、BK3 Drying Recorder(Mickle Laboratory Engineering社(Goose Green,Gomshall,Guildford,Surrey GU5 9LJ,UK)製)を使用して乾燥時間を測定した。4方向バーアプリケーター(Erichsen Model 360)を使用して標準ガラスストリップ(30×2.5cm×2mm)にバインダーを塗布して薄膜を形成した。標準ガラスストリップに付着した埃及びグリースをアセトン及びエタノール/DI水混合物を順次使用して予め除去した。リバースにしたレバーを使用し、スライドを左に移動させて開始位置とした。そして、スコアリングスクライバー(scoring scribe)をサンプルガラス板に対して折り曲げた。試験時間は6、12又は24時間に設定し、測定を開始した。試験時間の最後に、スコアリングスクライバーを上に折り曲げ、評価のためにガラス板を取り出した。初期乾燥時間及び体積乾燥(volume drying)時間を時間スケールを使用して読み取った。
【0073】
GPC測定
重量平均分子量M
w、数平均分子量M
n及び多分散性M
w/M
nを測定するためのGPC測定は、以下の条件(カラムの組み合わせ:SDV1000/10,000Å(長さ:65cm)、温度:30℃、移動相:THF、流量:1ml/分、サンプル濃度:10g/L、RI検出器、ポリスチレン標準(162〜2,570,000 g/mol)に対してアルコキシ官能性ポリシロキサンを評価)で行った。
【0074】
a)樹脂1〜9の合成
【0075】
樹脂1
欧州特許出願公開第0157318号に記載された方法を使用し、メタノール/水混合物(373.1g(11.64mol) MeOH/67.2g(3.71mol) H
2O)による559.7g(3.74mol)のトリクロロメチルシランの加水分解及び縮合によってメトキシ官能性メチルシリコーン樹脂を調製した。メタノール/水混合物の添加後、反応混合物を16ミリバールの圧力下で蒸留した。
1H NMR分析で測定したメトキシ官能性は35重量%であり、モル質量は、M
w=746g/mol、M
n=531g/mol、Mw/Mn=1.4だった。
【0076】
樹脂2
欧州特許出願公開第1142929号に記載された方法を使用し、メトキシ官能性メチルフェニルシリコーン樹脂を調製した。具体的には、562.5g(2.66mol)のフェニルトリクロロシラン(PTS)を167.4g(5.21mol)のメタノールとゆっくり混合した。次に、122.5g(0.27mol)のデカメチルシクロペンタシロキサン(D5)を添加し、50℃で48.0g(2.60mol)の水を滴下した。その後、60℃で真空蒸留(圧力:100ミリバール未満)を行った。窒素による不活性化を行い、100.0g(3.12mol)のメタノールを添加した後、撹拌を30分間継続し、真空蒸留を行った。
1H NMR分析で測定したメトキシ官能性は15重量%であり、モル質量は、M
w=1,656g/mol、M
n=966g/mol、Mw/Mn=1.7だった。
【0077】
樹脂3
欧州特許出願公開第1142929号に記載された方法を使用し、メトキシ官能性メチルフェニルシリコーン樹脂を調製した。具体的には、419.4g(2.81mol)のメチルトリクロロシランを12.4g(4.03mol)のメタノールとゆっくり混合した。次に、反応混合物を35℃に加熱しながら、228.2g(1.08mol)のフェニルトリクロロシラン(PTS)を滴下した。PTSの添加後、249.9gのメタノール/水混合物(186.4g(5.82mol) MeOH/63.5g(3.52mol) H
2O)を添加し、2時間撹拌した後、真空蒸留(圧力:16ミリバール)を行った。
1H NMR分析で測定したメトキシ官能性は25重量%であり、モル質量は、M
w=3,050g/mol、M
n=1,050g/mol、Mw/Mn=2.7だった。
【0078】
樹脂4
欧州特許出願公開第1142929号に記載された方法を使用し、メトキシ官能性メチルフェニルシリコーン樹脂を調製した。具体的には、576.5g(2.73mol)のフェニルトリクロロシラン(PTS)を172.4g(5.38mol)のメタノールとゆっくり混合した。次に、101.1g(0.27mol)のデカメチルシクロペンタシロキサン(D5)を添加し、50℃で49.2g(2.73mol)の水を滴下した。その後、60℃で真空蒸留(圧力:100ミリバール未満)を行った。窒素による不活性化を行い、100.8g(3.1mol)のメタノールを添加した後、撹拌を30分間継続し、真空蒸留を行った。
1H NMR分析で測定したメトキシ官能性は17重量%であり、モル質量は、M
w=1,220g/mol、M
n=780g/mol、Mw/Mn=1.6だった。
【0079】
樹脂5
欧州特許出願公開第1142929号に記載された方法を使用し、メトキシ官能性メチルフェニルシリコーン樹脂を調製した。具体的には、606.3g(2.86mol)のフェニルトリクロロシランに対して、メタノール/水混合物(59.4g(1.80mol) メタノール/18.07g(1.00mol) 水)を滴下した。70.59g(0.19mol)のデカメチルシクロペンタシロキサン(D5)及び24.3g(0.15mol)のヘキサメチルジシロキサンを反応混合物に添加した後、50℃未満の温度で、メタノール/水混合物(69.9g(2.12mol) メタノール/50.8g(2.82mol) 水)を滴下した。50℃で真空蒸留(圧力:100ミリバール未満)を行った後、反応混合物を減圧下で1時間保持した。16.9g(0.51mol)のメタノールを添加した後、120℃で蒸留(圧力:100ミリバール未満)を行った。
1H NMR分析で測定したメトキシ官能性は6重量%であり、モル質量は、M
w=4,440g/mol、M
n=1,769g/mol、Mw/Mn=2.5だった。83.6gのキシレンを使用して樹脂含有量を85重量%に調節した。
【0080】
樹脂6
欧州特許第0157318 B1号に記載された方法を使用し、メトキシ官能性メチルフェニルシリコーン樹脂を調製した。858.5gの樹脂5に、9.4g(0.15mol)のエチレングリコール、14.3gのキシレン及び41.0g(0.31mol)のトリメチロールプロパンを添加した後、0.1gのブチルチタネートを添加し、混合物を加熱還流した。粘度が上昇する前に、純粋な樹脂が得られるまで蒸留を行った。120℃まで冷却した後、40.76gのイソブタノールを添加し、105℃まで冷却した後に40.76gのイソブタノールを添加した。最後に、60℃で1時間撹拌を行った。キシレンを使用してバインダー含有量を80重量%に調節した。
1H NMR分析で測定したメトキシ官能性は2重量%であり、モル質量は、M
w=40,000〜90,000g/mol、M
n=3,260〜3,763g/mol、Mw/Mn=12〜24だった。
【0081】
樹脂7
欧州特許出願公開第1142929号に記載された方法を使用し、エトキシ官能性メチルフェニルシリコーン樹脂を調製した。具体的には、571.0g(2.70mol)のフェニルトリクロロシランを247.7g(5.38mol)のメタノールとゆっくり混合した。次に、79.9g(0.22mol)のデカメチルシクロペンタシロキサン(D5)を添加し、50℃で60.5g(3.36mol)の水を滴下した。その後、60℃で真空蒸留(圧力:100ミリバール未満)を行った。窒素による不活性化を行い、40.8g(0.88mol)のエタノールを添加した後、撹拌を30分間継続し、真空蒸留を行った。
1H NMR分析で測定したエトキシ官能性は14重量%であり、モル質量は、M
w=1,790g/mol、M
n=1,160g/mol、Mw/Mn=1.5だった。38.6mlの酢酸メトキシプロピルを使用してシリコーン樹脂含有量を91重量%に調節した。
【0082】
樹脂8
欧州特許出願公開第1142929号に記載された方法を使用し、エタノール/水混合物(296.3g(6.43mol) EtOH/57.5g(3.19mol) H
2O)による646.1g(3.05mol)のフェニルトリクロロシランの加水分解及び縮合によってエトキシ官能性フェニルシリコーン樹脂を調製した。エタノール/水混合物の添加後、反応混合物を16ミリバールの圧力下で蒸留した。
1H NMR分析で測定したエトキシ官能性は25重量%であり、モル質量は、M
w=940g/mol、M
n=740g/mol、Mw/Mn=1.3だった。
【0083】
樹脂9
欧州特許出願公開第1142929号に記載された方法を使用し、メタノール/水混合物(184.3g(5.76mol) MeOH/70.1g(3.89mol) H
2O)による745.6g(3.53mol)のフェニルトリクロロシランの加水分解及び縮合によってメトキシ官能性フェニルシリコーン樹脂を調製した。メタノール/水混合物の添加後、反応混合物を16ミリバールの圧力下で蒸留した。
1H NMR分析で測定したメトキシ官能性は17重量%であり、モル質量は、M
w=1,400g/mol、M
n=860g/mol、Mw/Mn=1.6だった。
【0084】
b)コーティング組成物の調製
a)で調製した樹脂、架橋触媒及び任意成分であるアルコキシシランを混合してコーティング組成物を調製した。組成を表1に示す。
【0085】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0086】
c)性能の検証
Drying Recorder(Type BK3)を使用した乾燥実験により、表1に示すコーティング組成物を検証した。結果を表2に示す。
【0087】
【表2-1】
【表2-2】