(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6343380
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】固体バイオマス燃料とその製造方法
(51)【国際特許分類】
C10L 5/44 20060101AFI20180604BHJP
【FI】
C10L5/44
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-192500(P2017-192500)
(22)【出願日】2017年10月2日
【審査請求日】2017年10月2日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517345993
【氏名又は名称】株式会社ハシモトテクニカルサービス
(74)【代理人】
【識別番号】100114535
【弁理士】
【氏名又は名称】森 寿夫
(74)【代理人】
【識別番号】100075960
【弁理士】
【氏名又は名称】森 廣三郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155103
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 厚
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100194755
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀明
(72)【発明者】
【氏名】橋本 現吉
(72)【発明者】
【氏名】橋本 洋人
(72)【発明者】
【氏名】橋本 将太
(72)【発明者】
【氏名】橋本 潤也
(72)【発明者】
【氏名】西川 勝秀
(72)【発明者】
【氏名】ジョハネス プラマナ ゲントゥル スタパ
(72)【発明者】
【氏名】イルファン ドゥウィディヤ プリジャンバダ
(72)【発明者】
【氏名】ドニー ウィディアント
(72)【発明者】
【氏名】ハルゴ ウトモ
【審査官】
森 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−029740(JP,A)
【文献】
特開2016−125030(JP,A)
【文献】
特開2009−191229(JP,A)
【文献】
特開2012−122026(JP,A)
【文献】
特開2004−209462(JP,A)
【文献】
特開2017−105920(JP,A)
【文献】
実開昭61−016353(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L 5/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーム油を絞り出した後に残るアブラヤシ種子殻(PKS)、空果房(EFB)、果肉繊維(PPF)やアブラヤシの古木(TRUNK)を植物原料として製造される固体バイオマス燃料であって、
植物原料は、粉砕された状態で、融解させたパーム油で揚げたことを特徴とする固体バイオマス燃料。
【請求項2】
植物原料は、熱水にカリウムや塩素を溶出させた状態で、融解させたパーム油で揚げた請求項1記載の固体バイオマス燃料。
【請求項3】
植物原料は、ペレットに成形された状態で、融解させたパーム油で揚げた請求項1又は2いずれか記載の固体バイオマス燃料。
【請求項4】
植物原料は、水素添加されたパーム油を融解させて揚げた請求項1〜3いずれか記載の固体バイオマス燃料。
【請求項5】
パーム油を絞り出した後に残るアブラヤシ種子殻(PKS)、空果房(EFB)、果肉繊維(PPF)やアブラヤシの古木(TRUNK)を植物原料として固体バイオマス燃料を製造する製造方法であって、
植物原料を粉砕する粉砕工程と、
粉砕工程を経た植物原料からカリウムや塩素を除去する除去工程と、
除去工程を経た植物原料をペレットにする成形工程と、
成形工程を経たペレットを、融解させたパーム油で揚げる改質工程とからなることを特徴とする固体バイオマス燃料の製造方法。
【請求項6】
除去工程は、粉砕工程を経た植物原料を熱水中で撹拌した後に濯ぐことによりカリウムや塩素を熱水に溶出させて除去する請求項5記載の固体バイオマス燃料の製造方法。
【請求項7】
改質工程は、成形工程を経たペレットを、水素添加されたパーム油を融解させて揚げる請求項5又は6いずれか記載の固体バイオマス燃料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
パーム油を絞り出した後に残るアブラヤシ種子殻(PKS)、空果房(EFB)、果肉繊維(PPF)やアブラヤシの古木(TRUNK)を植物原料
として製造される固体バイオマス燃料とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な植物原料から製造される固体バイオマス燃料が提案されている。固体バイオマス燃料は、燃焼させて発生する熱を利用する(例えば火力発電所の燃料として利用する)ことから、発熱量が高い程好ましい。特許文献1は、発熱量を上げるため、植物原料を油で揚げて固体バイオマス燃料を得る方法を提案している(特許文献1・[請求項1])。特許文献1が開示する固体バイオマス燃料は、植物原料を油で揚げることにより脱水されているほか、油が染み込むことで発熱量を高くできるとしている(特許文献1・[0005])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-242047公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1が開示する植物原料を油で揚げて固体バイオマス燃料とする方法は、確かに発熱量を高める手段として好ましい。しかし、特許文献1が開示する固体バイオマス燃料は、次のような問題がある。固体バイオマス燃料は、他の燃料同様、製造場所と利用場所とが離れていたり、利用まで長期間保管したりしなければならない。ところが、特許文献1が開示する固体バイオマス燃料は、植物原料を使用済みの揚げ油で揚げて得られるため、植物原料に染みこんだ油が常温で液化しており、運搬や長期の保管に際して流れ出す恐れがある。
【0005】
特に、特許文献1が開示する固体バイオマス燃料を野外に野積みして保管する場合、降雨によって油が流出、拡散する恐れがあり、周囲の環境汚染が懸念される。これでは、固体バイオマス燃料として発熱量が高められたとしても、実際上、利用しづらい。そこで、植物原料を油で揚げて製造される固体バイオマス燃料において、運搬や長期の保管に際して油が流れ出さないようにすることを目的に、植物原料を揚げる油について検討した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
検討の結果開発したものが、
パーム油を絞り出した後に残るアブラヤシ種子殻(PKS)、空果房(EFB)、果肉繊維(PPF)やアブラヤシの古木(TRUNK)を植物原料
として製造される固体バイオマス燃料であって、植物原料は、粉砕された状態で、
融解させたパーム油で揚げたことを特徴とする固体バイオマス燃料である
。
【0007】
植物原料
(アブラヤシ種子殻、空果房、果肉繊維やアブラヤシの古木)は、粉砕された状態で、
融解させたパーム油で揚げると、脱水されて硬質化し、前記
パーム油を含有して発熱量が高められた固体バイオマス燃料となる。植物原料は、最大幅が10mm以下、できれば6mm以下となるように粉砕されるとよい。粉砕された植物原料は、比表面積が拡大し、表面から内部全体に熱が伝わりやすく、短時間かつ均一に脱水される。脱水は、溶出したカリウムや塩素と共に水分を植物原料から排出し、前記水分を含んでいた空隙に
パーム油を浸入させる。固体バイオマス燃料が含有する
パーム油は、常温で固化す
るので、固体バイオマス燃料が常温に戻ると固化する。常温とは、20℃±15℃(JIS Z 8703)である
。
【0008】
植物原料は
、熱水にカリウムや塩素を溶出させた状態で、
融解させたパーム油で揚げると、前記カリウムや塩素を低減した固体バイオマス燃料となる。また、植物原料は、ペレットに成形された状態で、
融解させたパーム油で揚げるとよい。植物原料は、予め粉砕されているので、ペレット化が容易である。ペレットは、粉砕された植物原料を押し固めて一定の外形状に成形された粒体である。例えば円筒状のペレットは、
融解させたパーム油で揚げると表面から内部全体へ均等に熱が伝わり、短時間かつ均一に脱水される。
【0009】
パーム油は、水素添加することにより融点を高くできる。これから、植物原料は、水素添加された
パーム油を融解させ
て揚げると、前記水素添加された
パーム油を常温で固化させた状態で含有する固体バイオマス燃料となる
。
【0010】
本発明の固体バイオマス燃料は、
パーム油を絞り出した後に残るアブラヤシ種子殻(PKS)、空果房(EFB)、果肉繊維(PPF)やアブラヤシの古木(TRUNK)を植物原料
として固体バイオマス燃料を製造する製造方法であって、植物原料を粉砕する粉砕工程と、粉砕工程を経た植物原料からカリウムや塩素を除去する除去工程と、除去工程を経た植物原料をペレットにする成形工程と、成形工程を経たペレットを、
融解させたパーム油で揚げる改質工程とからなることを特徴とする固体バイオマス燃料の製造方法により製造される。
【0011】
粉砕工程は、除去工程でカリウムや塩素を熱水に溶出しやすくし、成形工程でペレットを成形しやすくする。除去工程は、例えば粉砕された植物原料
(アブラヤシ種子殻、空果房、果肉繊維やアブラヤシの古木)を熱水に接触させ、カリウムや塩素を前
記熱水に溶出させることにより、植物原料からカリウムや塩素を除去する。成形工程は、粉砕された植物原料をペレット化し、減容と取り扱い性の改善を図る。改質工程は、溶出させたカリウムや塩素と共に水分を排出する脱水によりペレットを硬質化し、前記水分を含んでいた空隙に
パーム油を染み込ませて発熱量を高めた固体バイオマス燃料を得る。
【0012】
除去工程は、粉砕工程を経た植物原料を熱水中で撹拌した後に濯ぐことによりカリウムや塩素を熱水に溶出させるとよい。粉砕工程を経た植物原料は、熱水中で攪拌することにより、前記熱水中にカリウムや塩素を溶出させる。そして、植物原料を濯ぐことにより、カリウムや塩素を含む水分が植物原料に付着したままになることを防ぎ、残存するカリウムや塩素が非常に少ない状態で植物原料を成形工程に送ることができる。
【0013】
熱水は、80℃〜100℃が好ましい。熱水の撹拌手段は、熱水自体の循環によるものでも、機械的な撹拌手段でもよい。植物原料の濯ぎは、カリウムや塩素を溶出させた熱水を排出しながら別の水又は熱水を注入する態様であったり、カリウムや塩素を溶出させた熱水から植物原料を取り出して別の水又は熱水に移し替えたり、カリウムや塩素を溶出させた熱水から植物原料を取り出して流れる水又は熱水に晒したりする。
【0014】
改質工程は、成形工程を経たペレットを、水素添加された
パーム油を融解させ
て揚げるとよい
。常温で固化す
るパーム
油であっても、水素添加することにより、融点を高くできる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、
パーム油を絞り出した後に残るアブラヤシ種子殻(PKS)、空果房(EFB)、果肉繊維(PPF)やアブラヤシの古木(TRUNK)である植物原料を
パーム油で揚げて製造される固体バイオマス燃料
から、常温での運搬や保管に際して
パーム油が流れ出さないようにできる。これは、植物原料を揚げる
パーム油が、常温で固化する
パーム油であることの効果である。
パーム油は
、降雨時には外気温が低下するため
、流れ出る恐れがほとんどない。このため、本発明の固体バイオマス燃料は、野外に露出した状態で運搬や保管ができ、運搬や保管に掛かるコストを低減できる。
【0016】
熱水にカリウムや塩素を溶出させた状態で、
パーム油で揚げた植物原料
(アブラヤシ種子殻、空果房、果肉繊維やアブラヤシの古木)から製造される固体バイオマス燃料は、発熱量を高めながら、ボイラーの高温腐食を抑制又は防止できる。また、植物原料は、ペレットに成形された状態で、
パーム油で揚げると、粉砕された状態に比べて減容した固体バイオマス燃料にすることができる。
パーム油で揚げたペレットは、水没しても外形を保持する高い保形性を有し、例えば降雨に晒される屋外保管を可能にする利点がある。
【0017】
水素添加された
パーム油を融解させ
て植物原料を揚げるようにすれば、
パーム油が融解して流れ出す機会をほぼなくすことができる。これは、水素添加した
パーム油の融点が高められることの効果である。
パーム油の融点が高められると、例えば外気温が40℃を超えるような場合でも、固体バイオマス燃料から
パーム油が流れ出さなくなり、上述した野外の運搬や保管がしやすくなる。
【0018】
本発明の固体バイオマス燃料の製造方法は、植物原料からカリウムや塩素を除去し、発熱量を高めた固体バイオマス燃料のペレットを製造できるようにする。カリウムや塩素の除去は、従来も見られる。しかし、発熱量を高めるために植物原料を
パーム油で揚げる改質工程は、カリウムや塩素を含む水分を脱水できるため、固体バイオマス燃料のカリウムや塩素をより少なくする。こうして、発熱量を高めつつ、ボイラーの高温腐食を避ける固体バイオマス燃料の製造が可能になる。
【0019】
粉砕工程を経た植物原料を熱水中で撹拌した後に濯ぐ除去工程は、カリウムや塩素を大幅に低減した固体バイオマス燃料の製造を可能にする。また、水素添加された
パーム油を融解させ
てペレットを揚げる改質工程は、
パーム油の融点を上げることにより、
パーム油が融解し
て固体バイオマス燃料から流れ出にくくしたりする
。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明を適用した固体バイオマス燃料の製造ラインの一例を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。本発明の固体バイオマス燃料は、例えば
図1に見られる製造ラインにより製造される。本例の製造ラインは、パーム油を絞り出した後に残るアブラヤシ種子殻(PKS)、空果房(EFB)、果肉繊維(PPF)やアブラヤシの古木(TRUNK)を植物原料として固体バイオマス燃料を製造す
る。アブラヤシ種子殻、空果房、果肉繊維やアブラヤシの古木は、それぞれ単独で植物原料としてもよいし、いくつか又は全部を混合させて植物原料としてもよい。また、アブラヤシ種子殻、空果房、果肉繊維やアブラヤシの古木と他の植物原料を混ぜてもよい。
【0022】
本例の製造ラインは、粉砕工程を実行する破砕装置11及び粉砕装置12と、除去工程を実行する洗浄装置21と、成形工程を実行する脱水装置31、乾燥装置32、定量供給装置33及び造粒装置34と、改質工程を実行するフライヤー41とから構成される。各工程を構成する各装置は、粉砕処理、除去処理、成形処理又は改質処理ができるものであれば自由であり、本例以外の構成や組み合わせであってもよい。例えば粉砕工程は粉砕装置12だけで構成したり、成形工程は造粒装置34だけで構成したりしてもよい。
【0023】
粉砕工程は、破砕装置11及び粉砕装置12により、粉砕された植物原料121を得る。アブラヤシ種子殻(PKS)、空果房(EFB)、果肉繊維(PPF)は、破砕装置11を経ることなく、直接粉砕装置12により粉砕してもよい。アブラヤシの古木(TRUNK)は、破砕装置11により破砕した後、粉砕装置12により粉砕する。破砕された植物原料は、最大幅で50mm以下を目安に破砕し、従来公知の搬送手段(コンベアや空気搬送)で粉砕装置12へ逐次送られる。粉砕された植物原料121は、最大幅で10mm以下、好ましくは6mm以下に粉砕し、従来公知の搬送手段(コンベアや空気搬送)で洗浄装置21へ逐次送られる。
【0024】
除去工程は、洗浄装置21により、カリウムや塩素が除去された植物原料211を得る。洗浄装置21は、80℃〜100℃の熱水を貯めた容器に粉砕された植物原料121を投入して撹拌することにより、前記植物原料121からカリウムや塩素を熱水中に溶出させ、除去する。熱水は、洗浄装置21外で別の装置により作られ、除去工程の開始に際して容器に移してもよいし、除去工程の開始に際して容器に貯めた水を加熱手段により沸かして作り出してもよい。加熱手段は、粉砕された植物原料121を熱水中で撹拌している間、前記熱水の温度が低下しないように、随時熱水を加熱する働きもある。
【0025】
熱水は、粉砕された植物原料121を投入した状態で、前記粉砕された植物原料121と一体に撹拌できればよい。このため、撹拌手段は、限定されない。本例の洗浄装置21は、容器の長手方向に3基の撹拌ローラを配置し、熱水と共に粉砕された植物原料121を一緒に撹拌する。このように、撹拌手段は、機械的な撹拌ローラのほか、熱水を沸騰させて生ずる対流を利用する構成であったり、熱水を断続的に吸水及び噴射させる構成であったりしてもよい。
【0026】
洗浄装置21は、所定の処理時間後、カリウムや塩素が溶け込んだ熱水を容器から排水し、別の熱水又は水を前記容器に供給して、カリウムや塩素が除去された植物原料211を濯ぐ。カリウムや塩素が除去された植物原料211は、容器に貯めた別の熱水又は水で濯いでもよいし、前記別の熱水又は水を供給及び排水し続けて、流水中で濯いでもよい。カリウムや塩素が除去された植物原料211は、濯ぎに利用した別の熱水又は水と分離してから、従来公知の搬送手段(コンベアや空気搬送)で脱水装置31へ送られる。
【0027】
成形工程は、造粒装置34により、所定形状に成形された植物原料のペレット341を得る。本例の成形工程は、アブラヤシ種子殻、空果房、果肉繊維やアブラヤシの古木である植物原料を、除去工程を終えて直ちにペレット化することが難しいことから、脱水装置31によりカリウムや塩素が除去された植物原料211を脱水し、続いて乾燥装置32により前記植物原料211の水分量を調整した後、定量供給装置33により植物原料211を造粒装置34へ定量ずつ送るようにしている。カリウムや塩素が除去された植物原料211は、種類によって、中間処理(脱水処理、乾燥処理、定量供給)を省略して、直接造粒装置34へ送ってもよい。
【0028】
カリウムや塩素が除去された植物原料211は、脱水装置31、乾燥装置32、定量供給装置33及び造粒装置34間を、従来公知の搬送手段(コンベアや空気搬送)で送られる。造粒装置34は、水分調整された植物原料211を、所定形状である植物原料のペレット341に成形する。造粒装置34は、大量の植物原料211を成形する観点から、リングダイを利用するものが好ましい。リングダイを利用する造粒装置34で成形されるペレット341は、通常円筒状である。こうして得られたペレット341は、従来公知の搬送手段(コンベアや空気搬送)でフライヤー41へ逐次送られる。
【0029】
改質工程は、フライヤー41により、
融解させたパーム油で揚げて改質されたペレット411を得る。本例のフライヤー41は、造粒装置34から逐次送られてくる植物原料のペレット341を連続して
パーム油で揚げるように、前記ペレット341をネットコンベアに載せて移動させながら、油槽に貯めて加熱された
パーム油に潜らせる構成である。植物原料のペレット341をネットコンベアに載せて移動させながら、油槽に貯めて加熱された
パーム油に潜らせるフライヤー41は、ネットコンベアの移動速度を加減することにより、
パーム油で揚げる時間を増減調整できる利点がある。
【0030】
油槽に貯める加熱された
パーム油は、植物原料のペレット341を揚げて脱水できるものであれば利用できる
。本例は、27℃〜35℃で融解するパーム油を190℃〜200℃に加熱して利用する。パーム油は、採取過程で植物原料となるアブラヤシ種子殻、空果房、果肉繊維が発生するので、植物原料と同時に調達できるほか、常温で固化す
ることから、本発明の利用が好ましい。
【0031】
植物原料のペレット341は、
パーム油で揚げると、カリウムや塩素を含む水分が脱水により除去され、硬質化すると共に、前記水分が除去された後の空隙に
パーム油を浸入させて、カリウムや塩素が少なく、発熱量の高められた固体バイオマス燃料のペレット411となる。固体バイオマス燃料のペレット411は、フライヤー41から逐次取り出されて屋内又は屋外に保管され、一定量単位で出荷される。
融解させたパーム油で揚げた固体バイオマス燃料のペレット411は、例えば降雨中の荷役においても
パーム油が流れ出さない。また、前記固体バイオマス燃料のペレット411は、外形を崩さないので、例えば降雨に晒される屋外での保管も可能である。
【実施例1】
【0032】
アブラヤシの空果房(EFB)を植物原料とし、上記例示に準拠した製造ラインを用いて固体バイオマス燃料(実施例1)を製造した。アブラヤシの空果房は、パーム油を採取した際に得られる植物原料である。用意したアブラヤシの空果房は、約2kgである。まず、空果房は、粉砕工程において、ほとんどが繊維長6mm以下となるように粉砕した。粉砕された空果房は、除去工程において、約100℃の熱水40L中に全て投入して約20分間撹拌し、その後前記熱水を排水してから、約15℃の流水で約20分間濯いだ。
【0033】
こうしてカリウムや塩素を除去した空果房は、成形工程において、外径6mm、長さ20mm〜25mmの円筒状のペレットに成形した。円筒状のペレットは、まだ水分を含み、若干柔らかい。円筒状のペレットは、改質工程において、約200℃のパーム油40L中に全て投入した状態で約20分間かけて揚げ、脱水した。得られた固体バイオマス燃料のペレット(実施例1)は、水分がほとんどなく、硬質化している。
【0034】
実施例1について、固体バイオマス燃料として重要な指標である低位発熱量を測定した。測定結果を表1に示す。実施例1の低位発熱量は、5286kcal/kg(JIS M8814により高位発熱量から計算。高位発熱量はJIS M8814によりポンプ式熱量系にて測定)であった。アブラヤシの空果房(EFB)を植物原料とする従来の固体バイオマス燃料は、高くても4000kcal/kg後半の低位発熱量であることを考えれば、本発明の固体バイオマス燃料は、低位発熱量が極めて高いと言える。
【0035】
【表1】
【0036】
また、実施例1に残存するカリウムは280mg/kg(ICP発光分光分析法による測定)、残存する塩素は測定器の測定限界(100mg/kg)未満である100mg/kg未満(JIS Z7302-6.10.1及び11.2燃焼イオンクロマトグラフ法による測定)であった。粉砕された空果房の状態では、残存するカリウムが5900mg/kg、残存する塩素が1400mg/kgであった。これから、本発明の固体バイオマス燃料は、残存するカリウム及び塩素が共に極めて少なく、ボイラーでの燃焼に際して高温腐食を起こしにくい利点が得られると考えられる。
【0037】
更に、実施例1の灰分は1.3%(下水試験方法第5編第1章第7節準拠、重量法による)、実施例1の水分は1.0%(W.B.)(下水試験方法第5編第1章第6節、重量法による)であった。粉砕された空果房の状態では、灰分が9.6%、水分が7.7%(W.B.)であった。これから、本発明の固体バイオマス燃料は、燃焼後に残る灰が少なくて済み、水分の影響による発熱量の減少も極めて少ないことがわかる。
【実施例2】
【0038】
アブラヤシの古木(TRUNK)を植物原料とし、上記例示に準拠した製造ラインを用いて固体バイオマス燃料を製造した。アブラヤシの古木は、アブラヤシの植え替えに際して得られる植物原料である。用意したアブラヤシの古木は、約2kgである。まず、古木は、粉砕工程において、最大幅が50mm以下となるように破砕してから、最大幅が10mm以下となるように粉砕した。粉砕された古木は、除去工程において、約100℃の熱水40L中に全て投入して約20分間撹拌し、その後前記熱水を排水してから、約15℃の流水で約20分間濯いだ。
【0039】
こうしてカリウムや塩素を除去した古木は、成形工程において、外径6mm、長さ20mm〜25mmの円筒状のペレットに成形した。円筒状のペレットは、まだ水分を含み、若干柔らかい。円筒状のペレットは、改質工程において、約200℃のパーム油40L中に全て投入した状態で約20分間かけて揚げ、脱水した。得られた固体バイオマス燃料のペレット(実施例2)は、水分がほとんどなく、硬質化している。
【0040】
実施例2について、固体バイオマス燃料として重要な指標である低位発熱量を測定した。結果を表2に示す。その結果、実施例2の低位発熱量は、4880kcal/kg(JIS M8814により高位発熱量から計算。高位発熱量はJIS M8814によりポンプ式熱量系にて測定)であった。木材から製造されるペレット状の固体バイオマス燃料の低位発熱量が4000kcal/kg〜4200kcal/kgであることを考えれば、本発明の固体バイオマス燃料は、既存の固体バイオマス燃料と比較しても低位発熱量が十分に高いと言える。
【0041】
【表2】
【0042】
また、実施例2に残存するカリウムは390mg/kg(ICP発光分光分析法による測定)、残存する塩素は測定器の測定限界(100mg/kg)未満である100mg/kg(JIS Z7302-6.10.1及び11.2燃焼イオンクロマトグラフ法による測定)であった。更に、実施例2の灰分は2.1%(下水試験方法第5編第1章第7節準拠、重量法による)、実施例2の水分は0.5%(W.B.)(下水試験方法第5編第1章第6節、重量法による)であった。
【0043】
実施例2に対して、除去工程及び改質工程の効果を見るべく、除去工程及び改質工程のない比較例1のペレット、改質工程のない比較例2のペレットを製造し、それぞれ低位発熱量、残存するカリウム及び塩素、灰分及び水分を測定した。結果を表2に示す。比較例1は、除去工程及び改質工程がなく、粉砕工程から成形工程に移ってペレットのみを成形したものである。比較例2は、改質工程がないことを除けば、製造条件が実施例2と同じである。
【0044】
比較例1(実施例2に対して除去工程及び改質工程のないペレット)は、低位発熱量が4090kcal/kg、残存するカリウムが7700mg/kg、残存する塩素が4400mg/kg、灰分が3.0%、そして水分が12.1%(W.B.)であった。また、比較例2(実施例2に対して改質工程のないペレット)は、低位発熱量が4210kcal/kg、残存するカリウムが450mg/kg、残存する塩素が測定限界(100mg/kg)未満、灰分が2.5%、そして水分が10.5%(W.B.)であった。
【0045】
実施例2は、低位発熱量が比較例1及び比較例2のいずれよりも高く、残存するカリウム、残存する塩素、灰分及び水分が比較例1及び比較例2のいずれよりも少ない。これから、本発明の固体バイオマス燃料が良質な燃料であることが理解される。実施例2は、低位発熱量が実施例1に及ばないまでも、空果房(EFB)を植物原料とする従来の固体バイオマス燃料と同等程度の固体バイオマス燃料を、アブラヤシの古木から製造できることを証明している。
【0046】
ここで、比較例1及び比較例2を比較すると、除去工程を加えた比較例2が粉砕工程のみの比較例1より低位発熱量が若干向上し、残存するカリウム及び塩素が大幅に低減していることがわかる。このことから、除去工程の有用性が確認される。また、実施例2及び比較例2を比較すると、改質工程を経た実施例2は、水分を大幅に減少させながら、残存するカリウムも若干減少させている。これは、改質工程による脱水が残存するカリウムの減少に寄与していることを推察させる。これから、本発明の固体バイオマス燃料は、除去工程と改質工程とを組み合わせた場合、最良の効果が得られると言える。
【符号の説明】
【0047】
11 破砕装置
12 粉砕装置
121 粉砕された植物原料
21 洗浄装置
211 カリウムや塩素が除去された植物原料
31 脱水装置
32 乾燥装置
33 定量供給装置
34 造粒装置
341 植物原料のペレット
41 フライヤー
411 固体バイオマス燃料のペレット
【要約】
【課題】植物原料を油で揚げて製造される固体バイオマス燃料において、運搬や長期の保管に際して油が流れ出さないようにすることを目的に、植物原料を揚げる油について検討した。
【解決手段】植物原料121から製造される固体バイオマス燃料411であって、植物原料121は、粉砕された状態で、常温で固化する植物油脂又は動物油脂を融解させた油で揚げたことを特徴とし、水又は熱水にカリウムや塩素を溶出させた状態かつペレット341に成形された状態で、油で揚げると好ましい。
【選択図】
図1