特許第6343384号(P6343384)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6343384
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】配筋固定具
(51)【国際特許分類】
   E04C 5/18 20060101AFI20180604BHJP
   E04G 21/12 20060101ALI20180604BHJP
   F16B 35/00 20060101ALI20180604BHJP
   F16B 7/04 20060101ALI20180604BHJP
   F16B 7/18 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
   E04C5/18 103
   E04G21/12 105E
   F16B35/00 B
   F16B7/04 301M
   F16B7/18 C
   E04G21/12 105D
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-235208(P2017-235208)
(22)【出願日】2017年12月7日
【審査請求日】2017年12月25日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】新日鉄住金エンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593211636
【氏名又は名称】株式会社ニッケンフェンスアンドメタル
(73)【特許権者】
【識別番号】513133147
【氏名又は名称】有限会社旭鋲螺製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬場 広隆
(72)【発明者】
【氏名】常石 善博
(72)【発明者】
【氏名】酒巻 政明
【審査官】 土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−158213(JP,A)
【文献】 特開2013−040542(JP,A)
【文献】 実開昭60−082020(JP,U)
【文献】 特開平11−002027(JP,A)
【文献】 特許第5951981(JP,B2)
【文献】 特開2014−181514(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 5/18
E04C 5/16
E04G 21/12
E04H 17/00−17/26
F16B 7/04
F16B 7/18
F16B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
折曲部分で交差しかつ交差部分で相互に接続された2本のUボルトと、4つの挿通孔を有するベース部材とを有し、
2本の前記Uボルトは、各々の交差部分を貫通するピンにより接続され、
前記Uボルトの貫通孔は、前記ピンの軸径より太く形成され、2本の前記Uボルトは、前記ピンを軸として互いに回動可能、かつ、前記ピンで接続された部分を中心とした他の方向へ揺動可能であり、
前記挿通孔のうち隣接しない2つに一方の前記Uボルトの先端が挿通され、他の2つの前記挿通孔に他の前記Uボルトの先端が挿通され、前記挿通孔に挿通された前記Uボルトの先端にはそれぞれナットが螺合されていることを特徴とする配筋固定具。
【請求項2】
請求項1に記載の配筋固定具において、前記挿通孔は、前記Uボルトの挿通位置を選択可能な長孔であることを特徴とする配筋固定具。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の配筋固定具において、前記ベース部材は板材で形成され、前記ベース部材には表裏を連通する連通孔が形成されていることを特徴とする配筋固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配筋固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄筋コンクリート構造物においては、コンクリート打設前に鉄筋を交差状態で固定しておく配筋固定具が用いられる。また、現場打ちコンクリート杭などでは、鉄筋かごを構成する際に配筋固定具が用いられる。
このような配筋固定具として、1本のUボルトおよび2個のナットと締結プレートとを有し、複数の鉄筋の交差部をUボルトの内側に収めたうえ、ナットを締め付けて複数の鉄筋を固定するものが用いられている。
【0003】
特許文献1の鉄筋交差部締結金具では、両端の雄ねじ部とU字状折曲部との間にその折曲方向とは交差する方向へ折曲された円弧状折曲部を形成し、1本のUボルトで鉄筋を収容する2つのループを形成している。
特許文献2の鉄筋交差部締結金具では、プレートに係合溝を形成して鉄筋のうち1本を収容するとともに、係合溝を跨いで配置された2組のUボルトおよびナットにより、係合溝と交差方向に延びる別の鉄筋をプレートに締結している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5951981号公報
【特許文献2】特開2014−181514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1および特許文献2の締結金具では、交差方向の2本の鉄筋の締結固定が可能であるが、2本の鉄筋の交差角度は規定の角度(直交方向)に限定される。このため、締結すべき2本の鉄筋の交差角度が直角になっていない場合など、締結金具の取付けを円滑に行えない可能性があった。
また、鉄筋の設計によっては、縦横斜めなど、互いに方向が異なる3本以上の鉄筋が同一箇所で交差することもある。しかし、前述した特許文献1および特許文献2の締結金具は、直交する2本の鉄筋の締結を前提としており、異なる3方向以上の鉄筋を確実に締結することが困難であった。
【0006】
本発明の目的は、締結する配筋の交差角度に柔軟に対応でき、異なる3方向以上の配筋であっても確実に締結できる配筋固定具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の配筋固定具は、折曲部分で交差しかつ交差部分で相互に接続された2本のUボルトと、4つの挿通孔を有するベース部材とを有し、2本の前記Uボルトは、各々の交差部分を貫通するピンにより接続され、前記Uボルトの貫通孔は、前記ピンの軸径より太く形成され、2本の前記Uボルトは、前記ピンを軸として互いに回動可能、かつ、前記ピンで接続された部分を中心とした他の方向へ揺動可能であり、前記挿通孔のうち隣接しない2つに一方の前記Uボルトの先端が挿通され、他の2つの前記挿通孔に他の前記Uボルトの先端が挿通され、前記挿通孔に挿通された前記Uボルトの先端にはそれぞれナットが螺合されていることを特徴とする。
本発明の配筋固定具で固定される配筋としては、通常は棒鋼であるが、鋼材以外の他の材質の配筋であってもよい。
本発明において、Uボルトとしては、一連の棒鋼の中間部を折曲させ、両端側を平行に形成したものが利用できる。折曲される中間部は、円弧状であってもよく、略V字状など多角形状であってもよい。
本発明において、ベース部材としては、鋼板などのプレートのほか、平板状の格子材や網を用いることもできる。
【0008】
本発明の配筋固定具では、ベース部材の表面に、2本のUボルトが交差方向に配置され、いわば四つ足の「かご状体」が形成される。四つ足のかご状体においては、各Uボルトの2本の「足」(Uボルトのうちベース部材に固定される両端側の部分)の間に、配筋が挿通可能な「枠」が、かご状体の四方に向けて形成される。
これらの「枠」においては、対向する2つの枠(隣接しない2つの枠)を通るように配筋を通すことで、交差方向の配筋を締結することができる。交差方向の配筋は、交差する2本のUボルトの間を挿通できればよく、交差角度が直角からずれていても円滑に収容することができる。さらに、交差方向の配筋に対して斜めに延びる配筋については、隣接する2つの枠を通るように通すことで、交差方向の配筋と併せて締結することができる。
このように、交差配置されたUボルトで形成されるかご状体の各枠に、複数の配筋を適宜挿通したのち、ベース部材の反対側のナットを更に締め込むことで、挿通された状態で各配筋を締結することができる。
従って、本発明の配筋固定具によれば、締結する配筋の交差角度に柔軟に対応でき、異なる3方向以上の配筋であっても確実に締結することができる。
【0009】
さらに、本発明の配筋固定具では、2本の前記Uボルトは、各々の交差部分を貫通するピンにより接続され、前記Uボルトの貫通孔は、前記ピンの軸径より太く形成され、2本の前記Uボルトは、前記ピンを軸として互いに回動可能、かつ、前記ピンで接続された部分を中心とした他の方向へ揺動可能であり、
、配筋に応じた2本のUボルトの姿勢変更にも柔軟に対応できる。
【0010】
本発明の配筋固定具において、前記挿通孔は、前記Uボルトの挿通位置を選択可能な長孔であることが好ましい。
本発明では、2本のUボルトがベース部材に固定される位置を調整することができ、2本のUボルトの相互の姿勢を変化させることができ、直交していない配筋の締結固定や、異なる3方向以上の配筋の締結固定についても柔軟に対応することができる。
【0011】
本発明の配筋固定具において、前記ベース部材は板材で形成され、前記ベース部材には表裏を連通する連通孔が形成されていることが好ましい。
本発明では、配筋固定具で配筋を締結した状態で配筋の周囲にコンクリートを打設した際に、コンクリートスラリーが配筋固定具の内部まで充填されて配筋を埋設する。この際、ベース部材として板材(プレート)を用いる場合、このプレートによりコンクリートスラリーの流入が一部遮られることがある。しかし、ベース部材に連通孔が形成されていることで、連通孔を通してコンクリートスラリーを流入させることができる。これにより、配筋固定具の内部までコンクリートスラリーを確実に充填することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、締結する配筋の交差角度に柔軟に対応でき、異なる3方向以上の配筋であっても確実に締結できる配筋固定具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態の組立状態を上方から見た斜視図。
図2】前記実施形態の組立状態を下方から見た斜視図。
図3】前記実施形態の配筋固定具を示す分解斜視図。
図4】前記実施形態のUボルトを示す斜視図。
図5】前記実施形態のUボルトの接続部分を示す斜視図。
図6】前記実施形態のプレートを示す平面図。
図7】本発明の他の実施形態を示す斜視図。
図8】前記実施形態のプレートの変形例を示す平面図。
図9】前記実施形態のプレートの変形例を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。
図1および図2において、配筋固定具1は、配筋である複数の鉄筋2の交差位置に設置され、これらの鉄筋2を一括して締結するものである。
複数の鉄筋2のうち、2本の鉄筋2A,2Bは互いに直交配置され、他の2本の鉄筋2C,2Dも互いに直交配置されている。鉄筋2A,2Bは、鉄筋2C,2Dに対して斜め45度で配置されている。鉄筋2A,2Bの交差位置と鉄筋2C,2Dの交差位置とは、互いに同じ位置とされている。つまり、鉄筋2A〜2Dは、4本が平面上の一点で交差した状態で配置されている。これら4本の鉄筋2A〜2Dは、交差位置に配置された配筋固定具1により一括して締結される。
【0015】
図3において、配筋固定具1は、2本のUボルト11,12と、ベース部材であるプレート20と、4個のナット30とで構成される。
図4に示すように、Uボルト11,12は、それぞれ棒鋼を折曲して形成されたものであり、途中に折曲部分13が形成されるとともに、その両側に同方向へ平行に延びる一対の足部14,15が形成されている。足部14,15は直線状とされ、その先端にはそれぞれ雄ねじ16が形成されている。
折曲部分13は、中央折曲部131の両側に一対の直線部132,133を有し、一対の側方折曲部134,135を介して足部14,15に連続されている。これらの中央折曲部131、直線部132,133および側方折曲部134,135により、Uボルト11,12の折曲部分13はそれぞれ略V字状とされている。
【0016】
図5に示すように、Uボルト11,12には、それぞれ略V字状の頂点位置である中央折曲部131の中央に貫通孔18が形成されている。貫通孔18にはピン19が貫通され、ピン19はその先端191をカシメ加工等することにより、貫通孔18から抜け止めされている。
Uボルト11,12は、このピン19により、互いに折曲部分13で交差しかつ交差部分で相互に接続されている。貫通孔18は、ピン19の軸径に対して十分緩く形成されている。このため、Uボルト11,12は、ピン19を軸として互いに回動可能であるとともに、ピン19で接続された部分(貫通孔18が形成された部分)を中心とした他の方向への揺動も許容できる。
【0017】
図4に戻って、2つのUボルト11,12が、ピン19により頂点位置が交差した状態で接続されることで、四つ足のかご状体10が形成される。そして、かご状体10の四つ足の間には、それぞれ鉄筋2A〜2Dを挿通可能な枠G1,G2,G3,G4が形成される。
すなわち、Uボルト11の足部14とUボルト12の足部14との間に枠G1が形成され、Uボルト12の足部14とUボルト11の足部15との間に枠G2が形成される。さらに、Uボルト11の足部15とUボルト12の足部15との間に枠G3が形成され、Uボルト12の足部15とUボルト11の足部14との間に枠G4が形成される。
【0018】
図6に示すように、プレート20は、鋼板の打ち抜きおよび折り曲げ加工で形成されたものであり、矩形板状の本体21の両辺縁には折り曲げによるリブ22,23が形成されている。本体21の四隅には、計4つの挿通孔24,25が形成され、本体21の中央部には表裏を連通させる連通孔26が形成されている。
4つの挿通孔24,25は、一方の対角位置にある2つ(隣接しない2つ)の挿通孔24がリブ22,23と平行に延びる長孔とされ、他の対角位置にある2つ(他の2つ)の挿通孔25はリブ22,23と交差方向、つまり挿通孔24と交差方向に延びる長孔とされている。
【0019】
図3に戻って、プレート20には、前述した四つ足のかご状体10を形成する2つのUボルト11,12が装着される。
かご状体10は、4本の足部14,15がそれぞれ対応する挿通孔24,25に挿通され、裏側に通された雄ねじ16にナット30が螺合される。
すなわち、挿通孔24,25のうち隣接しない2つ(図3で左右に並んだ挿通孔24,25)に一方のUボルト11の先端が挿通され、他の2つの挿通孔24,25(図3で上下に並んだ挿通孔24,25)に他のUボルト12の先端が挿通される。これにより、2つのUボルト11,12は、四つ足のかご状体10の状態、つまりプレート20の上方から見て交差方向に配置された状態でプレート20に締結される。
【0020】
さらに、かご状体10をプレート20に締結する際に、各枠G1〜G4に鉄筋2A〜2Dを挿通しておくことで、かご状体10のUボルト11,12により鉄筋2A〜2Dがプレート20に締結される(図1および図2参照)。
締結にあたっては、鉄筋2A〜2Dは、直角に交差する一対が、それぞれ対向する枠G1〜G4(隣接しない枠)を通るように配置される。
すなわち、鉄筋2A,2Bについては、鉄筋2Aが枠G1から枠G3へと通され、鉄筋2Bは枠G2からG4へと通される。また、鉄筋2C,2Dについては、鉄筋2Cが枠G1から枠G3へと通され、鉄筋2Dは枠G2からG4へと通される。この状態で、枠G1〜G4には所定の幅があるため、同じ枠G1,G3を通る鉄筋2Aと鉄筋2C、および同じ枠G2,G4を通る鉄筋2Bと鉄筋2Dは、それぞれ45度の傾斜配置をとることができる。
【0021】
上述した本実施形態によれば、以下のような効果がある。
本実施形態の配筋固定具1においては、プレート20の表面に、2本のUボルト11,12が交差方向に配置され、四つ足のかご状体10が形成される。四つ足のかご状体10においては、各Uボルト11,12の2本の足部14,15の間に、配筋である鉄筋2(2A〜2D)が挿通可能な枠G1〜G4が、かご状体の四方に向けて形成される。
これらの枠G1〜G4においては、対向する2つの枠(隣接しない2つの枠G1と枠G3および枠G2と枠G4)を通るように鉄筋2A〜2Dを通すことで、2組の交差方向の鉄筋2A,2Bおよび鉄筋2C,2Dを締結することができる。交差方向の鉄筋2A〜2Dは、交差する2本のUボルト11,12の間を挿通できればよく、交差角度が直角からずれていても円滑に収容することができる。
【0022】
さらに、交差方向の鉄筋2A,2B(枠G1,G3を通る)に対して斜めに延びる鉄筋2C,2Dについては、隣接する他の2つの枠G2,G4を通るように通すことで、交差方向の鉄筋2A,2Bと併せて締結することができる。
このように、交差配置されたUボルト11,12で形成されるかご状体10の各枠G1〜G4に、複数の鉄筋2A〜2Dを適宜挿通したのち、プレート20の反対側のナット30を更に締め込むことで、挿通された状態で各鉄筋2A〜2Dを締結することができる。
従って、本実施形態の配筋固定具1によれば、締結する鉄筋2A〜2Dの交差角度に柔軟に対応でき、異なる3方向以上の鉄筋2A〜2Dであっても確実に締結することができる。
【0023】
本実施形態の配筋固定具1においては、2本のUボルト11,12が、各々の交差部分を貫通するピン19により接続されている。このため、2本のUボルト11,12が、ピン19を中心に互いに回動することができる。また、ピン19が貫通する貫通孔18を緩く(ピン19より太く)形成したため、ピン19回りの回動以外の他の方向の揺動により、配筋に応じた2本のUボルト11,12の姿勢変更にも柔軟に対応できる。
【0024】
本実施形態の配筋固定具1において、挿通孔24,25は、Uボルト11,12の挿通位置を選択可能な長孔とした。このため、2本のUボルト11,12がプレート20に固定される位置を調整することができ、2本のUボルト11,12の相互の姿勢を変化させることができ、直交していない配筋の締結固定や、異なる3方向以上の配筋の締結固定についても柔軟に対応することができる。
【0025】
本実施形態の配筋固定具1において、プレート20は、表裏を連通する連通孔26を有するものとしたため、連通孔26を通してコンクリートスラリーを配筋固定具1の内部まで容易に流入させることができる。
すなわち、配筋固定具1の実際の適用にあたっては、配筋固定具1で鉄筋2A〜2Dを締結した状態で、その周囲にコンクリートを打設し、コンクリートスラリーが配筋固定具1の内部(かご状体10の内側、鉄筋2A〜2Dどうしの隙間)まで充填されるようにして、鉄筋2A〜2Dを埋設する。この際、プレート20があるとコンクリートスラリーの流入が遮られるが、プレート20に連通孔26が形成されていることで、連通孔26を通してコンクリートスラリーを流入させることができる。これにより、配筋固定具1の内部までコンクリートスラリーを確実に充填することができる。
【0026】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形などは本発明に含まれる。
前記実施形態では、Uボルト11,12は棒鋼を折曲して形成したが、帯状体を折曲してもよい。また、Uボルト11,12は、長尺の素材の折曲加工により形成されるものに限らず、予め折曲部分を有するU型に成型された成型品であってもよい。さらに、Uボルト11,12は、鋼材以外の材質で形成してもよい。
前記実施形態では、Uボルト11,12をピン19で接続したが、ピン19の材質は任意であり、棒状に限らず鋼製のワイヤなどを貫通孔18に通して接続してもよい。
【0027】
前記実施形態では、Uボルト11,12の折曲部分13を略V字状としたが、これは通常の円弧状であってもよい。
図7に示す本発明の他の実施形態において、配筋固定具1Aはかご状体10Aを形成する2つのUボルト11A,12Aを有する。Uボルト11A,12Aは、折曲部分13Aが単純な円弧状とされている。折曲部分は、他の多角形状であってもよい。
【0028】
前記実施形態では、ベース部材としてのプレート20の挿通孔24,25の長孔の連続方向を、隣接するものが交互に交差方向とし、それぞれ対角位置に挿通孔24(リブ22,23に沿った方向の長孔)および挿通孔25(リブ23と交差方向の長孔)を配置した。
これに対し、図8に示すプレート20Bのように、リブ22側に挿通孔24(リブ22,23に沿った長孔)を配置し、リブ23側に挿通孔25(リブ22,23と交差方向の長孔)を配置してもよい。
また、図9に示すプレート20Cのように、プレート20Cの四隅に挿通孔24Cを配置し、この挿通孔24Cをプレート20Cの中心位置を中心とする仮想的な円周に沿って延びる長孔としてもよい。
このような図8あるいは図9のような形態であっても、それぞれの長孔24,25,24Cの長孔形状に沿ってUボルト11,12を変位させることができ、それぞれUボルト11,12のプレート20B,20Cに対する固定位置を調整することができる。
【0029】
さらに、前記実施形態では、ベース部材としてのプレート20の挿通孔24,25を長孔としたが、挿通孔24,25は長孔に限らず、他の形状であってもよい。
図7に示す本発明の他の実施形態において、ベース部材としてのプレート20Aは四隅にそれぞれ円形の挿通孔24Aを有する。挿通孔24Aは、内径がUボルト11A,12Aの外径よりも十分に大きく(ただしこれに螺合するナットよりも小径に)形成されている。このような挿通孔24Aであっても、Uボルト11,12のプレート20Aに対する固定位置を調整することができる。
【0030】
図7に示す他の実施形態のプレート20Aのように、連通孔26は省略してもよい。ただし、コンクリートスラリーの流通を妨げないことが望ましいため、ベース部材を板材とする場合には連通孔26を設けることが望ましい。
前記実施形態においては、ベース部材として鋼製の板材によるプレート20,20Aを用いたが、例えばベース部材は剛性を確保した格子や網などで形成してもよく、このようなベース部材であれば連通孔26を省略しても、それ自体でコンクリートスラリーの流通を確保できる。
前記実施形態において、ベース部材であるプレート20,20Aや、配筋固定具1,1Aで固定される配筋(鉄筋2A〜2D)としては、通常は棒鋼あるいは鋼板とすればよいが、鋼材以外の他の材質としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、鉄筋コンクリート構造物の鉄筋を固定する配筋固定具として利用できる。
【符号の説明】
【0032】
1,1A…配筋固定具、10,10A…かご状体、11,11A,12,12A…Uボルト、13,13A…折曲部分、131…中央折曲部、132,133…直線部、134,135…側方折曲部、14,15…足部、18…貫通孔、19…ピン、191…先端、2,2A,2B,2C,2D…鉄筋、20,20A,20B,20C…ベース部材であるプレート、21…本体、22,23…リブ、24,24A,24C,25…挿通孔、26…連通孔、30…ナット、G1,G2,G3,G4…枠。
【要約】
【課題】締結する配筋の交差角度に柔軟に対応でき、異なる3方向以上の鉄筋であっても確実に締結できる配筋固定具を提供する。
【解決手段】折曲部分13で交差しかつ交差部分で相互に接続された2本のUボルト11,12と、4つの挿通孔24,25を有するベース部材(プレート20)とを有し、挿通孔24,25のうち隣接しない2つに一方のUボルト11の先端が挿通され、他の2つの挿通孔24,25に他のUボルト12の先端が挿通され、挿通孔24,25に挿通されたUボルト11,12の先端にはそれぞれナット30が螺合されている。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9