(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記所与の周波数として,上記補聴器レシーバの電気インピーダンスの共振周波数を超える周波数を選択し,これによって上記補聴器レシーバの電気非線形インダクタンスの値を導出する,
請求項1に記載の方法。
上記補聴器レシーバに印加される異なるバイアス電圧の上記範囲が負のバイアス電圧と正のバイアス電圧とから構成される,請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
スイッチを用いて,正のバイアス電圧が上記補聴器レシーバの正または負の端子のいずれかに提供され,これによって正または負のバイアス電圧が上記補聴器レシーバに印加されるようにDC電圧供給を設定する,
請求項4に記載の方法。
上記非線形性の尺度が,上記所与の周波数における,ゼロのバイアス電圧で測定される上記補聴器レシーバの電気インピーダンスに対する,上記所与の周波数における,所定の非ゼロのバイアス電圧で測定される上記補聴器レシーバの電気インピーダンスの偏差である,請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
上記第1のトリガ・イベントが,マニュアルで始められる,所定時間間隔で自動的に開始される,または上記補聴器システムが電源オンされたことに応答して始められる,請求項9に記載の方法。
上記第1のトリガ・イベントに応答して通常の動作モードからレシーバ測定モードにスイッチングするステップをさらに含み,上記レシーバ測定モードにおいて上記補聴器システムの入力信号が上記補聴器システムのアナログ−デジタル変換器に与えられず,これによって上記アナログ−デジタル変換器を上記レシーバ測定モードにおいて用いることが可能とされる,請求項9または10に記載の方法。
上記補聴器システムのユーザを警告することに向けられたアクションが上記補聴器システムを用いて音響警告を発することを含む,請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
概略的には,この発明による補聴器システムは,ユーザによって音響信号として知覚される出力信号を提供しまたはそのような出力信号の提供に寄与し,上記ユーザの個々の聴覚損失を補償するまたは上記ユーザの聴覚損失の補償に貢献する,または上記聴覚損失を補償するように貢献するために用いられる手段を備える任意のシステムを意味するものとして理解される。このシステムは,身体または頭部に特に耳の上または耳の中に装着することができ,全体的にまたは部分的に埋め込むことができる補聴器を含む。しかしながら,主目的が聴覚損失を補償することではない家庭用電気製品(テレビ,ハイファイ・システム,携帯電話,MP3プレーヤなど)のような装置も,それらが個々の聴覚損失を補償するものであれば補聴器システムとみなすことができる。
【0003】
使用に先立ち,補聴器は,処方にしたがって補聴器フィッタによって調整される。上記処方は,いわゆるオージオグラムが得られる難聴者の裸耳聴能の聴覚検査に基づく。上記処方は,上記ユーザが聴覚欠損を蒙っている可聴周波数範囲の部分における周波数の音を増幅することによって聴覚損失を緩和することができる設定に上記補聴器が達するように構築される。
【0004】
伝統的な補聴器フィッティングでは,補聴器ユーザが補聴器フィッタのオフィスを訪問し,上記補聴器フィッタがオフィスに有しているフィッティング設備を用いて上記ユーザの補聴器が調整される。典型的なフィッティング設備は,関連する補聴器プログラミング・ソフトウェアを実行することが可能なコンピュータと,上記コンピュータと上記補聴器との間にリンクを提供するように構成されたプログラミング装置とを備えている。
【0005】
本願の開示において,補聴器は,聴覚障害者によって人の耳の後ろまたは耳の中に装着されるように設計された,小さい,電池駆動の,小型電子機器として理解することができる。補聴器は一または複数のマイクロフォン,電池,信号処理装置を備える小型電子回路,および音響出力トランスデューサを備えている。上記信号処理装置は好ましくはデジタル信号処理装置である。上記補聴器は,人の耳の後ろまたは耳の中にフィットするのに適するケース内に納められる。
【0006】
補聴器の機械的デザインは複数の概略的なカテゴリに発展している。その名前が示すように,耳掛け型(BTE:Behind-The-Ear)補聴器は耳の後ろに装着されるものである。より正確には,その主要電子部品を収容するハウジングを含む電子ユニットが,耳の後ろに装着される。補聴器ユーザに対して音を放射するためのイヤピースが,耳内,たとえば耳甲内または耳道内に装着される。伝統的なBTE補聴器では,音チューブが,補聴器用語において通常レシーバと呼ばれる,電子ユニットのハウジング内に配置される出力トランスデューサからの音を耳道内に伝達するために使用されている。近年の補聴器の中には,導電体を備える導電部材が,ハウジングから耳内のイヤピースに配置されたレシーバに電気信号を伝達する。このような補聴器は,一般に耳内レシーバ(RITE:Receiver-In-The-Ear)補聴器と呼ばれている。特定のタイプのRITE補聴器では,上記レシーバが耳道内に配置される。このカテゴリは耳道内レシーバ(RIC:Receiver-In-Canal)補聴器と呼ばれることがある。
【0007】
耳内(ITE:In-The-Ear)補聴器は,耳内,通常は外耳道の漏斗形状の外側部分に適合するように設計される。特定タイプのITE補聴器は,補聴器が実質的に外耳道内に配置される。このカテゴリは,完全耳内型(CIC:Completely-In-Canal)補聴器と呼ばれることがある。このタイプの補聴器は,補聴器の動作に必要な部品を収容しつつも,外耳道内に配置することを可能にするために特にコンパクトな設計を必要とする。
【0008】
本願の開示において,補聴器システムは,単一の補聴器(いわゆるモノラル補聴器システム)または補聴器ユーザの各耳に一つずつの2つの補聴器(いわゆるバイノーラル補聴器システム)を備えることができる。さらに,補聴器システムは,補聴器システムの他の装置と相互作用するように構成されるソフトウェア・アプリケーションを有するスマート・フォンのような外部装置を含むことができる。すなわち本願の開示において,用語「補聴器システム装置」は補聴器または外部装置を指すことができる。
【0009】
発明者は,通常の経年によって,特に補聴器システムが高湿度環境下において装着され,またはこれに加えて水もしくは汗に対して激しく晒されたときに,マイクロフォンおよびレシーバの性能が低下することがあることが,補聴器システムにとって重要な問題であることを認識した。上記性能は,乱暴な取扱いによって,たとえばユーザが補聴器を落としたことによっても低下する。さらに,レシーバひずみは,設計の性質上,ユニット毎に大きく相違することがある。補聴器システムの性能が低下すると,ユーザが補聴器システムを装着しなくなる,またはテストによって補聴器システムを使用しているユーザが補聴器を購入しないことを選択する結果が生じる可能性がある。
【0010】
欧州特許EP−B1−2177052は補聴器中のレシーバを識別する方法を開示するもので,上記補聴器を用いて上記レシーバのインピーダンスを測定し,上記インピーダンス測定に基づいて,上記レシーバを複数の所定のレシーバ・モデルの一つとして識別するステップを含む。
【0011】
欧州特許EP−B1−2039216はユーザの耳もしくは耳内または外耳道内に装着される電気音響出力トランスデューサを含む補聴装置をモニタリングする方法を開示するもので,上記出力トランスデューサの電気インピーダンスが計測されかつ解析され,これによって上記出力トランスデューサのステータスおよび/または上記出力トランスデューサと協働する音響システム,たとえばBTE補聴装置のチューブのステータスが,簡単かつ効率的なやり方で評価される。これによって,上記出力トランスデューサまたは上記出力トランスデューサと協働する音響システムが耳垢によってブロックされているとき,または上記出力トランスデューサが損傷しているときを,自動的かつ迅速に認識することができる。
【0012】
より詳細にはEP−B1−2039216は,計測された電気インピーダンスを補聴装置に記憶された参照データと比較することによって,計測された電気インピーダンスが周波数の関数として解析され,この参照データを上記補聴装置の製造工程において生成することができることを開示する。
【0013】
EP−B1−2039216の一実施態様では,自由空間内のスピーカの共振周波数が,製造工程中に補聴装置に記憶される。その後,上記補聴装置が動作すると,解析ユニットが上記記憶された共振周波数を生成し,この周波数において上記スピーカに関する抵抗上の電圧を計測する。上記測定値が大きい差を示す場合にアラーム信号が作成される。
【0014】
米国特許US−B2−7302069は,耳道内の音響条件,特に音響インピーダンスが,補聴器イヤピースの電気入力インピーダンスを計測することによって推定され,上記電気入力インピーダンスのグラフから機械的共振が決定され,これによって機械的共振の検出シフトを,その後に補聴器の通常の周波数曲線の自動補正に用いることができる方法を開示する。
【0015】
しかしながら,従来技術のいずれも,レシーバにおける非線形効果に起因する補聴器システムの性能低下を検出するまたは補償することを目的とするものではない。
【0016】
したがってこの発明の特徴は,過度のレシーバひずみの場合に適切なアクション(措置)を取るときにユーザを補助(アシスト)する補聴器システムの動作方法を提供することにある。
【0017】
この発明の別の特徴は,レシーバひずみに起因して性能が低下した補聴器レシーバの連続使用を防止する方法を提供することにある。
【0018】
この発明の別の特徴は,過度のレシーバひずみの場合に適切なアクションを取るための補聴器システムのユーザの能力(ability)を向上させるように構成される補聴器システムを提供することにある。
【実施例】
【0027】
本願の開示において,用語「バイアス電圧」は,動作状態を設定するために電子機器に加えられるDC電圧として解釈される。
【0028】
本願の開示において,用語「レシーバひずみ」は用語「レシーバ非線形性」と交換可能に使用することができ,これは補聴器レシーバによって与えられる音のひずみ(および対応する音質の低下)が典型的には補聴器レシーバにおける非線形効果の結果であるからである。
【0029】
本願の開示において,一般的に与えられる用語「レシーバ・インピーダンス」は,より詳細な用語「レシーバ・インピーダンスの大きさ」と交換可能に使用することができる。
【0030】
発明者は,大多数の補聴器システムのレシーバは,たとえばユーザが落下させることで音質の低下を蒙ることがあり,したがってこれに応答する適切なアクションが必要とされることを見出した。このようなアクションは,たとえば補聴器システムのユーザを警告することに基づくものとすることができ,または低下したレシーバの性能をアクティブに(能動的に)補償することに基づくものとすることができる。
【0031】
特に発明者は,補聴器システムにおいて広く用いられている,いわゆるバランスド・アーマチュア・レシーバ(balanced armature receivers)は,補聴器を落下させるといった乱暴な取扱いに対して非常にセンシティブであり得ることを見出した。これは,乱暴な取扱いによってアーマチュアが物理的に変形したり,上記バランスド・アーマチュア・レシーバの磁石間の空隙における最適位置からアーマチュアがずらされたりし,これによって付加的なひずみおよび音質の低下が生じることがあるからである。
【0032】
しかしながら,この発明はバランスド・アーマチュア・レシーバを備える補聴器システムにおける使用に限定されない。この発明による方法およびシステムは,可動コイル・レシーバ(moving coil receivers)のような他のレシーバ・トポロジーを備えるものに関して用いることもできる。
【0033】
さらに発明者は,短時間の複雑でない測定(a low complexity measurement of short duration)が,レシーバひずみを推定するために必要な基盤(the necessary foundation)を提供することができ,それによってさらなるアクションが必要とされるかどうかを提供することができることを見出した。特に発明者は,レシーバに与えられる複数の様々な値のバイアス電圧についての電気レシーバ・インピーダンスを測定することによって,レシーバひずみのかなり正確な推定を達成することができることを見出した。特に発明者は,正の値および負の値の両方のバイアス電圧を印加することによって,非線形レシーバ・パラメータの対称性を評価することが可能になるので,上記推定がさらに改善されることを見出した。
【0034】
さらにまた発明者は,上記ひずみを少なくとも部分的に補償することができるので,この発明は,より大きな初期ひずみを有するより安価なレシーバを使用することができるようにすることを見出した。
【0035】
概略的に上記従来技術は,様々な信号レベル,特に出力トランスデューサのひずみが問題となる高出力レベルにおける出力トランスデューサの性能を考慮していないという点において限定されている。
【0036】
欧州特許EP−B1−2039216は,ゼロ・バイアスにおける一つの出力レベルについての電気レシーバ・インピーダンスを計測するにすぎない点において少なくとも範囲が限定されている。
【0037】
米国特許US−B2−7302069は,音響インピーダンスの変化,すなわち外耳道残量の特性における主要変化を補償することに向けられているので,共振周波数のシフトだけが補償の基礎として用いられることに意味があるという限定がされている。
【0038】
はじめに
図1を参照して,
図1は,電気音響出力トランスデューサ103の電気インピーダンス(electric impedance)を測定(計測)する基本回路100をかなり概略的に示している。上記基本回路100は,正弦波発生器101,基準抵抗102,電気音響出力トランスデューサ103(以下において,スピーカないしレシーバとも言う)および第1の測定点104を備えている。
【0039】
上記基本回路100は,上記第1の測定点104における電圧を測定しながら周波数掃引を行うもので,既知の電圧を有する正弦波発生器101を用いることによって周波数の関数としてレシーバ・インピーダンスの測定を提供することができる。しかしながら,
図1の回路は,DC動作点におけるレシーバ・インピーダンスを測定するために使用することができるだけである。
【0040】
ここで
図2を参照して,
図2は,この発明の一実施態様による電気音響出力トランスデューサ103の電気インピーダンスを測定する回路200をかなり概略的に示している。上記回路200は,調整可能なDCバイアス電圧を提供するように構成される直流(DC)電圧源205が追加されている点を除いて,
図1の基本回路と同一の構成要素を備えており,これによって上記DC動作点から離れてシフトされた動作点(複数)(operating points that are shifted away from the DC operating point)について上記レシーバ・インピーダンスを測定することができる。
【0041】
図2を考慮すると,ゼロのDC電圧源(バイアス電圧)についての測定点104の電圧Vauxは,以下のように直接に導かれる。
【0042】
【数1】
【0043】
ここでVsignalは上記正弦波発生器101によって供給されるAC電圧であり,Zreceiverは決定されるレシーバ・インピーダンスであり,Rrefは上記基準抵抗102の抵抗値である。
【0044】
上記レシーバ・インピーダンスにおける変化に対する測定電圧の感度を最適化するために,以下のように,上記レシーバ・インピーダンスに対して電圧Vauxが微分され,これによって感度の尺度(程度)(a measure for the sensitivity)が見つけられ,上記基準抵抗の抵抗値に対して微分されることによって上記感度が最適化され,0に等しい微分感度の式を設定することによって最適値を見つけることができる。
【0045】
【数2】
【0046】
これに基づくと,上記基準抵抗102の抵抗値が,好ましくはレシーバ・インピーダンスの抵抗値の1〜2倍の範囲内になるように選択されることで上記レシーバ・インピーダンスの変化に対して測定電圧の感度が最適化され,他方において同時に可聴周波数の範囲にわたる上記レシーバ・インピーダンスの大きさが一般に上記レシーバ抵抗よりも幾分大きいことが念頭に置かれ,かつ同時に基準抵抗102の抵抗値を非常に小さく保つことによって,通常の動作中,上記レシーバに印加される駆動電圧に類似するDCバイアス電圧をレシーバに印加することができ,ここで基準抵抗は入力トランスデューサと出力トランスデューサの間の主信号部分から結合され(coupled out),上記レシーバからの出力レベルはその最大に近い。
【0047】
補聴器システムにおける使用に適するレシーバのインピーダンスは10〜1000オームの範囲とされ,したがって上記基準抵抗の抵抗値は10〜2000オームの範囲において選択される。しかしながら,この実施態様の変形例によると,上記基本回路200は,上記基準抵抗120の抵抗値が上記レシーバ・インピーダンスの大きさから大きく離れていることがVauxから示される場合に,スイッチング回路によって上記基準抵抗102の値を変更できるように構成される。上記レシーバ・インピーダンスZreceiveの大きさが基準抵抗Rrefの抵抗値と等しいときに,Vauxの大きさがVsignalの大きさの半分に等しくなるので,これを判定することができる。一例を挙げると,200オームの抵抗値を持つ第1の基準抵抗102が初期に用いられており,Vauxの大きさがVsignalの大きさの30%以下に降下したときに,上記第1の基準抵抗がスイッチ・アウトされ,たとえば1000オームの抵抗値を持つ第2の基準抵抗がスイッチ・インされ,上記基準抵抗に対する抵抗値のこの特定の組合せを有することによって,Vauxの大きさが,たとえば100〜2000オームの範囲のレシーバ・インピーダンス値に対してVsignalの大きさの30〜70%の範囲にとどめられる。
【0048】
さらなる変形例では,2つの基準抵抗の抵抗値がそれぞれ50〜250オームおよび1000〜3000オームの範囲とされる。
【0049】
しかしながら,
図2の回路は,ほとんどの補聴器において利用可能なDC電圧がゼロと電池電圧との間の正の電圧だけに制限される点において制限されている。これは,いくつかの重要な補聴器レシーバの欠陥が,上記DCバイアス電圧の符号の関数として非対称なレシーバ・インピーダンスとして検出されることがあるために不都合である。
【0050】
ここで
図3を参照して,
図3は,この発明の一実施態様による電気音響出力トランスデューサ103の電気インピーダンスを測定する回路300をかなり模式的に示している。上記回路300は,DC電圧源205と正弦波発生器101および補聴器出力トランスデューサ103との間に挿入されたスイッチング回路306が追加され,上記DC電圧源205の正電圧を上記補聴器出力トランスデューサ103の正端子または負端子のいずれかに供給することによって,正および負のDCバイアス電圧の両方を印加することができることを除いて,
図2の回路と同じ構成要素を備えている。
図3において,上記DC電圧源205の正電圧は上記正弦波発生器101に与えられ,他方,補聴器出力トランスデューサ205は接地されている。上記スイッチング回路306の破線は,どのようにして上記DC電圧源の正電圧が補聴器出力トランスデューサ205に直接に接続され,他方上記正弦波発生器101が接地されるかを示している。
【0051】
ここで
図4を参照して,
図4はこの発明の一実施態様による補聴器400をかなり概略的に示している。
【0052】
補聴器400は,入力音響電気トランスデューサ401,アナログ−デジタル変換器(ADC)402,個々の補聴器ユーザの聴覚欠損を緩和するように構成される聴覚損失補償器403,レシーバ非線形補償器404,出力変換器405,出力スイッチング回路406,信号発生器407,コントローラ408,レシーバ・パラメータ推定器409,信号検出器410,入力スイッチング回路411,第1の測定点104および電気音響出力トランスデューサ103を備えている。
【0053】
この実施態様では,上記補聴器400は,通常(ノーマル)動作モードとレシーバ測定モードとの間で切り換えできるように構成されている。
【0054】
この実施態様では,補聴器の動作モードが,外部装置たとえばリモート・コントロールもしくはスマート・フォンのインターフェースを用いて,または補聴器に収容されたセレクタを用いて直接に選択される。この実施態様の変形例では,何らかの所定時間間隔で,または静寂のようななんらかの特定の音環境の検出に応答して,または所定のトリガ・イベントに応答して,たとえば補聴器が電源オンされるたびに,上記レシーバ測定モードに自動的に入るように補聴器システムを設定することできる。ユーザが直接に測定モードを選択することができるオプションは,レシーバが故障しているかどうかをユーザがすぐに調査することができる利点がある。しかしながら,定期的な間隔で自動的にレシーバ測定モードに入るオプションも,劣化したレシーバの性能をレシーバ測定に応答して自動的に補償することができるので,ユーザが故障しているレシーバを知覚することを避けることができるために有利であり得る。
【0055】
この実施態様の変形例では,レシーバの非線形性の推定尺度(推定される程度)(an estimated measure of the receiver non-linearity)が所定の閾値を超えた場合に警告が発せられる。上記警告は補聴器によってまたは補聴器システムの外部装置によって提供される音響警告とすることができる。これに加えてまたは代えて,上記警告は,外部装置による視覚表示のために補聴器システムの外部装置へのレシーバ非線形性を示すデータの送信を含んでもよいし,さらに上記外部装置から補聴器フィッタまたは補聴器メーカーへのデータの送信を含んでもよい。
【0056】
さらに他の変形例では,レシーバの非線形性を示すデータが,補聴器中または補聴器システムの外部装置中のいずれかに収容されるログ中に記憶される。
【0057】
一の変形例では,上記非線形性の尺度はバイアス電圧レベルの範囲を最大限度とするものであり(said measure of the non-linearity is the maximum extent of a range of bias voltage levels),その範囲内において,共振周波数における補聴器レシーバの電気インピーダンスは所定の値から逸脱する(deviates less than a predetermined value)。
【0058】
他の変形例では,上記非線形性の尺度は正および負のバイアス電圧レベルの対称範囲に及ぶものであり(said measure of the non-linearity is the extent of a symmetric range of positive and negative bias voltage levels),その対称範囲内において,上記共振周波数における補聴器レシーバの電気インピーダンスが所定の値から逸脱する。
【0059】
さらに他の変形例では,上記非線形性の尺度は,上記共振周波数における,ゼロのバイアス電圧で測定される上記補聴器レシーバの電気インピーダンスに対する,上記共振周波数における,所定の非ゼロのバイアス電圧で測定される上記補聴器レシーバの電気インピーダンスの偏差(the deviation)である。
【0060】
さらなる変形例では,上記非線形性の尺度は,上記共振周波数を超える周波数における上記補聴器レシーバの電気インピーダンスの測定値(複数)に基づいて規定され,これによって上記非線形性の尺度が,非線形力係数(the non-linear force factor)ではなく,非線形電気インダクタンス(the non-linear electrical inductance)によって主に支配される。
【0061】
上記レシーバ測定モードが選択されると,上記コントローラ408が起動して測定が開始される。これは,上記信号発生器407,上記出力スイッチング回路406,上記入力スイッチング回路411,上記信号検出器410および上記レシーバ・パラメータ推定器409を制御するステップを含む。
【0062】
図4において,上記出力スイッチング回路406が,補聴器400がレシーバ測定モードとなる位置に設定される。上記信号発生器407は,
図3の実施態様において開示したように,測定信号を出力トランスデューサ103に与える。上記第1の測定点104における電圧が,上記コントローラ408によって制御される上記入力スイッチング回路411の相互作用を通じて上記ADC402に与えられ,これによって入力トランスデューサ401からの信号に代えて,上記第1の測定点104からの信号を上記ADC402に入力することができる。補聴器が2つの異なる動作モードに入ることができるにも関わらず,単一のADCだけが必要とされることが,この実施態様の特定の利点である。入力信号のスイッチングをADCのすぐ後段に実装することもできることは当業者には明らかである。この場合には,入力信号ごとに1つのADCと,デジタル領域における信号間の後続のスイッチングが必要とされよう。
【0063】
両方の動作モードにおいてADC402は,デジタル信号を出力し,そこで上記ADCへの上記入力信号のDC部が除去されることがさらなる利点であり,上記信号発生器407によって正のバイアス電圧または負のバイアス電圧が与えられたかどうかとは無関係に,同一のデジタル信号処理を適用することができるからである。この実施態様によると,上記ADC402への入力信号のDC部は上記ADC402の上流のハイパスフィルタを用いて除去される。
【0064】
補聴器が通常の動作モードにあると,上記出力スイッチング回路406は,上記正弦波発生器101(小信号発生器と言うこともできる),基準抵抗102,DC電圧源205およびスイッチング回路306が補聴器400の主要信号路の部分でないことを提供する。
【0065】
再び
図3を考慮すると,第1の測定点における電圧Vauxは以下のように表すことができることが直接に導かれる。
【0066】
【数3】
【0067】
ここでVbiasは上記DC電圧源205によって印加される電圧であり,Vsignalは上記正弦波発生器101によって供給されるAC電圧であり,Zreceiverは決定されるべきレシーバ・インピーダンスであり,Rrefは基準抵抗102の抵抗値である。
【0068】
上記スイッチング回路306が他方の位置に設定されると,これによってDC電圧源205が出力トランスデューサ103に直接に結合され,第1の測定点における電圧Vauxは以下のように表すことができる。
【0069】
【数4】
【0070】
しかしながら,DC電圧がフィルタリングされると,測定される電圧Vauxはいずれのケースにおいても以下のように表される。
【0071】
【数5】
【0072】
これから上記レシーバ・インピーダンスZreceiverを取得することができる。
【0073】
上記コントローラ408は,上記信号発生器407から与えられるアナログ信号および上記ADC402によって出力される対応するデジタル信号を追跡するように構成される。上記信号検出器410が上記信号発生器407によって供給されるアナログ信号に応答して提供されるデジタル信号をキャプチャしてそのデジタル信号の信号レベルを決定し,そこから,周波数の関数としての,かつ与えられるDCバイアス電圧の関数としてのレシーバ・インピーダンスを,上述した式を用いて取得することができる。決定された信号レベルはその後レシーバ・パラメータ推定器409に与えられる。
【0074】
上記レシーバ・パラメータ推定器409は,ゼロの印加DCバイアス電圧における3つのレシーバ・パラメータ,すなわちレシーバ抵抗,レシーバ・インダクタンス,およびレシーバ力係数を導出する。これらの3つのレシーバ・パラメータに基づいて,上記レシーバに与えられる信号の関数として“理想”レシーバ膜変位(“ideal” receiver membrane displacement)を予測可能なモデルを提供することができる。上記レシーバは,ゼロの印加DCバイアス電圧において測定されるときに非線形ひずみの影響を受けないと仮定することができるからである。
【0075】
このようにレシーバの“理想的”挙動はゼロの印加DCバイアス電圧における挙動を意味すると解釈され,以下において小信号挙動と言うことがある。
【0076】
小信号(すなわち,ゼロの印加DCバイアス電圧についてのもの)レシーバ抵抗は,ゼロの第1周波数におけるインピーダンス値として,測定されるレシーバ・インピーダンスから直接に導出されることが明らかである。
【0077】
小信号(すなわち,ゼロの印加DCバイアス電圧についてのもの)レシーバ・インダクタンスは,第2の周波数値におけるインピーダンス値として,測定されるレシーバ・インピーダンスから導出され,上記第2の周波数値は機械的レシーバ共振(a mechanical receiver resonance)を超え,周波数の関数としてのレシーバ・インピーダンスの曲線の傾きが20dB/decadeに近づくことを特徴とする。変形例では,上記第2の周波数値は,5kHzを超えるもの(または少なくとも2kHzを超えるもの若しくは共振周波数の少なくとも3倍)が選択される。
【0078】
小信号(すなわち,ゼロの印加DCバイアス電圧についてのもの)レシーバ力係数は,ほとんどの補聴器レシーバが示す共振周波数として決定される第3の周波数値におけるインピーダンス値に基づいて,測定されるレシーバ・インピーダンスから導出される。変形例では,上記第3の周波数値は500Hzから3kHzの範囲とされる。
【0079】
測定されかつ導出される上記レシーバ抵抗,インダクタンスおよび力係数の小信号値は,レシーバ・パラメータ推定器409に記憶され,上記レシーバに入力される信号の関数としてのひずみのない(無歪み)膜変位を予測するように適合される第1モデルにおけるパラメータとして用いられる。測定されかつ導出される上記レシーバ抵抗,インダクタンスおよび力係数の値(非ゼロの印加DCバイアス電圧についてのもの)もレシーバ・パラメータ推定器409に記憶され,上記レシーバに与えられる信号の関数としての非線形膜変位を予測するように適合される第2モデルにおけるパラメータとして用いられる。上記レシーバ・インダクタンスおよび力係数は非線形であり,これらの値は上記レシーバ膜の変位に依存し,他方,レシーバ抵抗はレシーバ膜変位に依存しない。
【0080】
一般に,所定の補聴器レシーバについての電気等価回路の物理的パラメータは容易に利用可能である。ほとんどの補聴器レシーバのメーカーはこのデータを提供している。したがって,この実施態様の変形例では,補聴器レシーバの非線形の膜変位を予測することを可能にするモデルを提供するためには,電気インダクタンスおよび力係数の非線形挙動を測定すれば十分である。
【0081】
しかしながら,この実施態様では,上記レシーバ抵抗も測定され,それはこの値が,製造公差,劣化,湿度および熱に対する露出のために,特に高出力レベルにおいて著しく変化することがあるからである。
【0082】
さらに,発明者は,電気インダクタンスおよび力係数の非線形挙動の変化に起因してひずみが過大になる場合に適切なアクションをとることができるようにするために,上記インダクタンスおよび力係数の非線形挙動を定期的に測定することが必要であることを見出した。
【0083】
ここで
図6を参照して,
図6はこの発明の一実施態様による動電トランスデューサ(an electro-dynamic transducer)の電気等価回路600を示している。上記電気等価回路は,バランスド・アーマチュア・タイプ(balanced armature type)の補聴器レシーバに与えられる信号の関数として膜変位を予測することが可能なモデルである。上記電気等価回路600は,上記レシーバに与えられる信号の電圧を表す電圧源601,上記レシーバの抵抗を表す第1の抵抗602,上記レシーバの非線形インダクタンスを表す第1のインダクタ603,力係数(伝達係数と言うこともある)とレシーバ・アーマチュアの機械的速度(上記電気等価回路の右側部における電流によって表される)との積に比例する誘導電圧を表す第1の依存電圧源604,上記力係数と上記電気等価回路の左側部における電流との積に比例する誘導電圧を表す第2の依存電圧源605,第2のインダクタ606,第2の抵抗607,レシーバ剛性の逆数(the inverse of the receiver stiffness)を表すキャパシタ608,および第3の依存電圧源609を備えている。一般に,上記電気等価回路の左側部はバランスド・アーマチュア・レシーバの電気部(electrical part)を表し,上記電気等価回路の右側部は機械部(mechanical part)を表す。
【0084】
図6を考慮すると,電気的レシーバ・インピーダンスZreceiverは次のように表現することができる。
【0085】
【数6】
【0086】
ここでReは
図6の第1の抵抗603の値を表し,Le(x)は
図6の第1のインダクタ602の値を表し,T(x)は力係数を表し,Zmは
図6の電気等価回路の機械部(すなわち右側部)のインピーダンスを表し,変数xはレシーバの膜変位を表す。
【0087】
図6の電気等価回路の機械部のインピーダンスZmは次のように表すことができる。
【0088】
【数7】
【0089】
ここでRmは
図6の第2の抵抗を表し,Lmは
図6の第2のインダクタを表し,Cmは
図6のキャパシタを表す。
【0090】
図6の電気等価回路の機械部は共振角周波数ωmを持つことが直接的に導かれる。
【0091】
【数8】
【0092】
したがって十分に小さい周波数についての電気的レシーバ・インピーダンスZreceiverは以下のように表されることが導かれる。
【0093】
【数9】
【0094】
機械的共振周波数ωmにおいて,電気的レシーバ・インピーダンスZreceiverは以下のように表すことができる。
【0095】
【数10】
【0096】
上記インダクタンスに起因するインピーダンスはωmにおいて小さいからである。
【0097】
上記共振周波数ωmよりも十分に大きい周波数については以下の通りである。
【0098】
【数11】
【0099】
第3項のT(x)
2 /jωLmに起因するインピーダンスは周波数が高くなると即座に重要でなくなるからである。
【0100】
上述した式から,3つの異なる周波数において電気レシーバ・インピーダンスを測定することによって,上記力係数T(x)および電気インダクタンスLe(x)の非線形挙動を決定することができることが直接に導かれる。
【0101】
図6の第1の抵抗Reの抵抗値が非線形ではないので,変形例では,たとえばレシーバのメーカーから取得されるReの値を用いることで十分となることも導かれる。
【0102】
この実施態様では,設計最大レシーバ電圧の半分のDCバイアス電圧が印加され,これによって,バイアス電圧と小信号電圧の組合せである上記レシーバ上の電圧が,設計最大レシーバ電圧を超えないことが提供される。しかしながら,変形例では,より大きいバイアス電圧を印加してもよく,さらなる変形例では,複数の上記レシーバ・インピーダンスの測定値(すなわち複数の非ゼロの印加DCバイアス電圧についてのもの)を得て,上記レシーバに入力される信号の関数として非線形膜変位を予測するためのさらに正確なモデルを提供してもよい。
【0103】
さらなる変形例では,線形状況からの非線形パラメータの偏差(the deviation)まで,またはレシーバ膜変位が所定の閾値を超えるまで,バイアス電圧の大きさを増加させることによって,印加されるべき最大バイアス電圧が見つけられる。これは適応的に行ってもよい。
【0104】
原理的には,ゼロの印加DCバイアス電圧を用いた測定と,非ゼロの印加DCバイアス電圧を用いた単一の測定とで,レシーバの非線形挙動を十分に特徴付けることができる。
【0105】
しかしながら,正の印加DCバイアス電圧を用いた測定と負の印加DCバイアス電圧を用いた測定を行うことによって,非対称性を補償することができるようになる。発明者は,性能が劣化した補聴器レシーバの上記非線形挙動がときに非対称であることを見出したので,これは特に有利である。
【0106】
この実施態様によるさらに他の変形例では,上記負および正のバイアス電圧の大きさが,補聴器電池電圧の少なくとも35%である。
【0107】
明らかではあるが,ひずみ補償の精度は,異なるバイアス電圧レベルにおける複数の測定を用いることで向上する。
【0108】
上記レシーバ膜変位のひずみのない第1のモデルと非線形の第2のモデルとに基づいて,補償利得(compensation gain)を所与の入力信号値の関数として導出することができる。
【0109】
ここで
図5を参照して,
図5はこの発明の一実施態様によるレシーバ非線形補償器404のいくつかの追加詳細をかなり概略的に示している。
【0110】
非線形補償器404は,変位推定器501,変位補正計算(算出)機502および乗算ユニット503を備えている。
【0111】
上記変位推定器501は,聴覚損失補償器403から提供される信号値の関数としてひずみのない(無歪みの)(distortion free)レシーバ膜変位(すなわち小信号測定に基づくもの)および非線形レシーバ膜変位のそれぞれを予測するように構成される第1および第2のモデルを保持する(分かりやすくするために,聴覚損失補償器403からの信号の値を提供する信号検出器は示されていない)。上記聴覚損失補償器からの出力信号は処理済入力信号ということもできるので,以下において,上記聴覚損失補償器403からの信号の値を処理済入力信号値と言うことがある。したがって,変位推定器501は,サンプルごとに(on a sample by sample basis),予測されるひずみのないおよび非線形のレシーバ膜変位を,変位補正計算機502に提供するように構成される。
【0112】
この実施態様では,上記変位補正計算機502は,サンプルごとに,非線形変位に対するひずみのない変位の比として補償利得(compensation gain)を算出し,サンプルごとに,上記乗算ユニット503を用いて,上記補償利得を聴覚損失補償器403から提供される信号に与える。このようにして非線形性が補償された信号が形成され,これが次に補聴器システム400の出力変換器405に与えられる。
【0113】
この実施態様の変形例では,レシーバ・パラメータ推定器409が,豊富な処理リソースにアクセスして,測定パラメータを外部装置に送信し,これによってルックアップ・テーブルが上記変位推定器501および変位補正計算機502に関して上述した機能を用いて算出される。すなわち上記ルックアップ・テーブルは,入力として聴覚損失補償器403からの信号値を,かつ出力として与えられる補償利得を有するもので,その後上記ルックアップ・テーブルが補聴器に送信されて,適用される補償利得を決定するために用いられる。ルックアップ・テーブルが用いられる場合,上記変位補正計算機は補間手段も含み,ルックアップ・テーブル内のテーブル値だけでなく,すべての入力信号値に対して補償利得を決定することもできる。このように,聴覚損失補償器からの信号値の関数として適用されるべき補償利得を導出する基本機能は,補聴器内,外部装置内,または上記外部装置がアクセス可能なインターネット・サーバに収納することができる。この機能を補聴器の外部に配置することによって,補聴器のリソースが少なくて済むことになる。
【0114】
この発明の変形例では,補聴器レシーバひずみ補償,すなわち補償利得の適用が,トリガ条件に応じてアクティベート(起動)され,上記トリガ条件は補聴器システムのマニュアル・アクティべーション,音レベル推定が所定の閾値を超えたこと,または補聴器レシーバひずみの測定値が所定の閾値を超えたことのいずれかとすることができる。
【0115】
変形例において,上記変位推定器502は,膜変位ではなく(than the membrane displacement)補聴器レシーバの音質またはひずみの別の尺度を最終的に計算する。すなわち,膜変位を推定することに代えて補聴器レシーバによって与えられる音圧を推定してもよい。しかしながら,本願の開示において,上記膜変位から導出することができる任意の尺度を明白な均等物とみなすことができ,膜変位と交換可能に使用することができる。
【0116】
この実施態様の他の変形例では,上記変位補正計算機502は,上記補償利得がひずみのある非線形膜変位に対するひずみのない膜変位の比よりもわずかに大きくなるように,上記非線形レシーバの挙動を考慮して,処理済入力信号値の関数として補償利得を算出する。より詳細な変形例では,上記レシーバ膜変位のモデルが有効であると仮定して,補聴器挙動の非線形挙動を完全に補償する利得補償を見つけるために,反復プロセスが上記レシーバ膜変位の非線形モデルを使用する。
【0117】
この実施態様の別の実施例では,処理済入力信号値の関数としての上記補償利得が,所与の周波数において,ゼロのバイアス電圧を含む複数のバイアス電圧について補聴器レシーバの電気インピーダンスを測定し,上記複数のバイアス電圧にわたる測定電気インピーダンス(the measured electrical impedance across said multitude of bias voltages)とゼロのバイアス電圧における測定電気インピーダンスとの差に基づいて補償利得を導出することによって決定され,これによって補償精度をほとんど犠牲にすることなく(at the cost of a less accurate compensation)より複雑ではない方法が提供される。
【0118】
この発明のさらに別の変形例では,上記変位推定器501および変位補正計算機502は,聴覚損失補償器から提供される対応する帯域分割信号の値(複数)の関数としての補償利得(複数)を提供する,複数の周波数についての複数のルックアップ・テーブルを備え,上記補償利得(複数)が上記対応する帯域分割信号(複数)に適用され,その後に結合されて,出力変換器405に与えられる。この発明のいくつかの実施態様は,レシーバ・パラメータを測定しかつ導出する特定の方法に関連して開示されている。変形例において他の方法を適用してもよく,この発明のレシーバひずみ補償方法は,レシーバ・インピーダンスを測定するやり方とは一般に無関係である。
【0119】
聴覚損失補償器403およびレシーバ非線形補償器404のようなさまざまな補聴器機能は,別々の電子ユニットとして実装されてもよいし,一または複数のデジタル信号処理装置に統合してもよい。
【0120】
次に
図7を参照して,
図7はこの発明の一実施態様による補聴器700をかなり模式的に示している。補聴器700は,上記レシーバ非線形補償器404が削除されている点と,上記補聴器レシーバの非線形性が所定の閾値を超えたかどうかを,非線形補聴器レシーバ・パラメータの決定された非線形挙動に基づいて決定するように構成され,かつ音響警告を提供することによって補聴器システムのユーザを警告することに向けられたアクションをトリガするように構成されるトリガ701が追加されている点を除いて,
図4の回路と同じ構成要素を備えている。変形例において,上記アクションは,補聴器システムの外部装置上に視覚警告を提供するものであってもよいし,補聴器システムにおいて決定された非線形性に関する情報を記憶し,これによって後日に聴覚ケアの専門家がデータを読み出して,適切なアクション(措置)を取ることができるようにするものであってもよい。さらなる変形例において,決定された非線形性に関する情報を,外部装置を用いて外部サーバに送信してもよく,これによって補聴器ケアの専門家はデータに即座にアクセスして必要であれば適切なアクションを取ることができるようにしてもよい。
【0121】
さらなる変形例では,上記アクションを,上記補聴器レシーバの非線形性を補償することに向けられたものとしてもよい。すなわち,上記トリガを,非線形補聴器レシーバ・パラメータの決定された非線形挙動に基づいて,上記補聴器レシーバの非線形性が所定の閾値を超えた場合に,上記トリガを,一つの,または選択されたアクションの組合せをトリガするように構成することができる。