特許第6343398号(P6343398)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6343398
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】航空機用タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 9/18 20060101AFI20180604BHJP
   B60C 9/20 20060101ALI20180604BHJP
   B60C 9/00 20060101ALI20180604BHJP
   D02G 3/48 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
   B60C9/18 H
   B60C9/18 A
   B60C9/20 F
   B60C9/00 C
   B60C9/00 G
   D02G3/48
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-522332(P2017-522332)
(86)(22)【出願日】2014年10月28日
(65)【公表番号】特表2017-536284(P2017-536284A)
(43)【公表日】2017年12月7日
(86)【国際出願番号】US2014062642
(87)【国際公開番号】WO2016068881
(87)【国際公開日】20160506
【審査請求日】2017年4月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】クレス ロナルド
(72)【発明者】
【氏名】シェーンメイカー ジェイソン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】モーク シャノン マーテル
(72)【発明者】
【氏名】キーフ ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィス ウェイン
【審査官】 岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−168783(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0137754(US,A1)
【文献】 国際公開第2006/035940(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0277037(US,A1)
【文献】 国際公開第03/061991(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0194081(US,A1)
【文献】 特表2002−539023(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0005239(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 9/00、9/18、9/20
D02G 3/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半径方向及び軸方向を画定する航空機用タイヤであって、
1対の対向するビード部と、
1対の対向する側壁部であって、各側壁部は個々の前記ビード部のうちの1つと接続する、1対の対向する側壁部と、
前記対向する側壁部の間で軸方向に延び、かつそれらを接続するクラウン部であって、トレッド部を含む、クラウン部と、
前記ビード部間に、かつ前記クラウン部及び前記対向する側壁部を通って延びる少なくとも2つのボディプライと、
前記トレッド部の半径方向で内方の、かつ前記ボディプライの半径方向で外方の位置で前記クラウン部に配置されたベルト補強構造体と、を備え、
であって、
該ベルト補強構造体は、
前記少なくとも2つのボディプライに対して半径方向に隣接して、かつ前記クラウン部の任意の他のベルトプライの半径方向で内方に配置された、前記クラウン部に位置する少なくとも2つのハイブリッドベルトプライであって、各ハイブリッドベルトプライは、対向する自由端間に延びる軸方向に沿った幅を有し、各ハイブリッドベルトプライは、前記ハイブリッドベルトプライ内で互いに平行に延び、かつ1つのバイブリッドベルトプライから次のハイブリッドベルトプライに交差するコード要素を備え、前記ハイブリッドベルトプライの前記コード要素は、前記タイヤの赤道面から18〜35度の範囲の角度を形成し、前記コード要素は、撚り合わせて作られた脂肪族ポリアミド糸と芳香族ポリアミド糸との組み合わせを備える、少なくとも2つのハイブリッドベルトプライと、
前記少なくとも2つのハイブリッドベルトプライの半径方向で外方に配置され、かつ前記少なくとも2つのハイブリッドベルトプライの軸方向に沿った前記幅より大きい軸方向に沿った幅を有する少なくとも1つの非ハイブリッドベルトプライであって、脂肪族ポリアミド糸を備えるコード要素を有する、少なくとも1つの非ハイブリッドベルトプライと、を備える、航空機用タイヤ。
【請求項2】
前記ハイブリッドベルトプライの半径方向で外方に配置される非ハイブリッド補助ベルトプライをさらに備える、請求項1に記載の航空機用タイヤ。
【請求項3】
前記非ハイブリッド補助ベルトプライが、脂肪族ポリアミド糸を含む螺旋状に巻き付けられたコードを含む、請求項2に記載の航空機用タイヤ。
【請求項4】
前記螺旋状に巻き付けられたコードが、前記タイヤの赤道面から3度未満の角度を形成する、請求項3に記載の航空機用タイヤ。
【請求項5】
前記非ハイブリッド補助ベルトプライが、前記ハイブリッドプライの半径方向で外方、及びすべての非ハイブリッドプライの半径方向で内方に位置する、請求項2〜4のいずれか一項に記載される航空機用タイヤ。
【請求項6】
前記少なくとも1つの非ハイブリッドベルトプライが、正弦曲線状に巻き付けられたコード要素を有する2つのプライからなる、請求項5に記載の航空機用タイヤ。
【請求項7】
前記ハイブリッドベルトプライの前記コード要素が、前記タイヤの赤道面から28〜32度の範囲の角度を形成する、請求項6に記載の航空機用タイヤ。
【請求項8】
前記少なくとも1つの非ハイブリッドベルトプライが、正弦曲線状に巻き付けられたコード要素を有する少なくとも2つのプライを備え、前記非ハイブリッド補助ベルトプライが、半径方向で、正弦曲線状に巻き付けられたコード要素を有する前記2つのプライの間に位置する、請求項2〜4のいずれか一項に記載の航空機用タイヤ。
【請求項9】
前記ハイブリッドベルトプライの前記コード要素が、前記タイヤの赤道面から18〜22度の範囲の角度を形成する、請求項8に記載の航空機用タイヤ。
【請求項10】
前記ハイブリッドベルトプライの各々の前記幅が、前記最も狭い非ハイブリッドベルトプライの前記幅の45〜90パーセントの範囲にある、請求項1〜9のいずれか一項に記載の航空機用タイヤ。
【請求項11】
前記ハイブリッドベルトプライの各々の前記幅が、前記最も狭い非ハイブリッドベルトプライの前記幅の70〜90パーセントの範囲にある、請求項1〜10のいずれか一項に記載の航空機用タイヤ。
【請求項12】
前記ベルト補強構造体の半径方向で外方の、かつ前記トレッド部の半径方向で内方の前記クラウン部に配置された少なくとも1つのプロテクタープライをさらに備える、請求項1〜11のいずれか一項に記載の航空機用タイヤ。
【請求項13】
前記少なくとも2つのボディプライが、脂肪族ポリアミド糸を備えるコード要素を各々含み、かつ芳香族ポリアミド糸を含まない、請求項1〜12のいずれか一項に記載の航空機用タイヤ。
【請求項14】
前記タイヤが子午線面を画定し、かつ前記少なくとも2つのボディプライの前記コード要素が前記子午線面から2度以下の角度を形成する、請求項13に記載の航空機用タイヤ。
【請求項15】
前記少なくとも2つのハイブリッドベルトプライの前記コード要素が、芳香族ポリアミドフィラメントの2つの糸と、脂肪族ポリアミドフィラメントの1つの糸と、を備える、請求項1〜14のいずれか一項に記載の航空機用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の主題は、一般に、タイヤのクラウン部に一定の補強材を有する航空機用空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
航空機での使用に適したタイヤは、高速及び大きな荷重下で作動することができなければならない。好ましくは、航空機用タイヤは、地上走行、離陸及び着陸の繰り返しに関連する摩耗条件に耐えることもできるべきである。また、航空機への使用及び収納に必要とされる、破裂圧力、サイズ、及び重量についての厳しい制限下で、このようなタイヤを製造しなければならない。
【0003】
航空機用タイヤは、一般的に、例えば12バール以上などの比較的高い膨張圧力に膨張される。タイヤのクラウン部に対するこのような高い膨張圧力及び従来の構造により、一般的には、子午線面に沿って視認されるような非常に丸みを帯びた形状が提供されてきた。丸みを帯びたトレッド部を含む、こうした丸みを帯びた形状は、例えば接触不良圧力分布に起因する、不要なトレッドの摩耗性能を提供する傾向がある。
【0004】
摩耗を改善するために航空機用タイヤのクラウン部を平らにしようと試みると、困難に直面する。例えば、平らな形状にするためにクラウン部に追加の材料を加えると、タイヤのサイズ及び質量を容認できないほど増大させる可能性がある。それを補うために他の位置にある材料を除去することは、サイズ及び質量を低減するのに役立ち得るが、例えば破裂圧力を航空機での使用に必要な最低限未満に低減させ得る。アラミドから構成されたコードなどの専用の材料を使用して強度を増すことはできる。しかしながら、こうした種類のコードは、タイヤのトレッド部の構成に一般的に使用されるゴムとの接着不良特性を有する傾向がある。また、こうした材料は、航空機のタイヤと関連する大きい偏向及び高速での適用中、タイヤのクラウン部の多様な材料間に局部的な張力差を生じさせることが知られている。このような局部的な張力差は摩耗の問題をさらに増大させる。
【0005】
したがって、航空機での適用に特に適したタイヤがあれば有益である。より具体的には、トレッドの摩耗を改善することができる、より平らなクラウン部を有するタイヤがあれば有益である。地上走行及び高速での離陸及び着陸に関連する応力に耐えることができる破裂圧力を有しながら、一般的に航空機用タイヤと関連する質量及びサイズの制限を満たすことができるタイヤがあれば、特に有益である。局部的な張力差を低減し、一部の実施形態において、質量の少ないタイヤを提供することもできるタイヤがあれば、非常に有益である。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、摩耗特性を改善した航空機用タイヤを提供する。当該タイヤは、より平らなクラウンを提供し、かつ局部的な張力を低減するベルト補強構造体を含む。ベルト補強構造体は、少なくとも1つの非ハイブリッドベルトプライの半径方向で内方に配置された、自由端を有する少なくとも2つのハイブリッドベルトプライを含む。ハイブリッドベルトプライは、航空機用タイヤの破裂圧力及びサイズに対する要件を依然として満たしながら、タイヤの全体的な質量の低減及び熱特性の改善を可能にする。本発明のさらなる目的及び利点は、下記の明細書に一部記載され、または本明細書から明らかであり得、もしくは本発明の実施を通して習得し得る。
【0007】
本発明の1つの例示的実施形態において、半径方向及び軸方向を画定する航空機用タイヤを提供する。当該タイヤは、1対の対向するビード部と、1対の対向する側壁部とを含み、各側壁部は個々のビード部のうちの1つと接続する。クラウン部は対向する側壁部の間で軸方向に延び、かつそれらを接続する。クラウン部はトレッド部を含む。少なくとも2つのボディプライは、ビード部間に、かつクラウン部及び対向する側壁部を通って延びる。ベルト補強構造体は、トレッド部の半径方向で内方の、かつボディプライの半径方向で外方の位置でクラウン部に配置される。
【0008】
本実施形態において、ベルト補強構造体は、少なくとも2つのボディプライに対して半径方向に隣接して、かつクラウン部の任意の他のベルトプライの半径方向で内方に配置された、クラウン部に位置する少なくとも2つのハイブリッドベルトプライを含む。各ハイブリッドベルトプライは、対向する自由端間に延びる軸方向に沿ってある幅を有する。各ハイブリッドベルトプライは、ハイブリッドベルトプライ内で互いに平行に延び、かつ1つのハイブリッドベルトプライから次のハイブリッドベルトプライに交差するコード要素を含む。ハイブリッドベルトプライのコード要素は、タイヤの赤道面から18度〜35度の範囲の角度を形成する。コード要素は、撚り合わせて作られた脂肪族ポリアミド糸と芳香族ポリアミド糸との組み合わせを含む。
【0009】
また、本例示的実施形態において、ベルト補強構造体は、少なくとも2つのハイブリッドベルトプライの半径方向で外方に配置され、かつ少なくとも2つのハイブリッドベルトプライの軸方向に沿った幅より大きい軸方向に沿った幅を有する少なくとも1つの非ハイブリッドベルトプライであって、脂肪族ポリアミド糸を含むコード要素を有する、少なくとも1つの非ハイブリッドベルトプライを含む。
【0010】
本発明のこれら及び他の特徴、態様及び利点は、下記の記載及び付属の請求項を参照すれば容易に理解される。本明細書の一部に組み込まれ、かつそれを構成する添付の図面は、本発明の実施形態を図示し、発明を実施するための形態と共に、本発明の原則を説明する役割を果たす。
【0011】
当業者を対象とするその最良の態様を含む、本発明の完全かつ実施可能な開示は、添付図を参照した本明細書に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のタイヤの例示的実施形態の断面図を図示する。断面図はタイヤの子午線面に沿って切り取られる。
図2】例示的タイヤの赤道面(EP)の片側に沿った図1の拡大断面図であり、タイヤの構造は赤道面の辺りで略対称であると理解される。
図3】本発明のタイヤの別の例示的実施形態の赤道面の片側に沿った拡大断面図であり、タイヤの構造は赤道面の辺りで略対称であると理解される。
図4】本発明の例示的実施形態の一定の幾何学的詳細を図示した概略図である。
図5】本発明の例示的実施形態の一定の幾何学的詳細を図示した概略図である。
図6】本発明の例示的コードの断面図である。
図7】本明細書に記載される特定のデータのプロット図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を記載する目的のために、本発明の実施形態を詳細に参照し、その1つ以上の例を図に図示する。本発明を限定するためではなく、本発明を説明するために各例を提供する。実際に、本発明の範囲または趣旨から離れることなく、本発明において多様な変更及び変形を行うことができることは当業者に明らかである。例えば、1つの実施形態の一部として図示または記載される特徴を別の実施形態と共に使用して、またさらなる実施形態を生み出すことができる。したがって、本発明は、付属の請求項及びそれに相当するものの範囲内にある変更例及び変形例を対象とすることを意図している。
【0014】
本明細書で使用するように、次に掲げる定義が適用される。
【0015】
「子午線面」とは、タイヤの回転軸にある平面である。図1、2、及び3はすべて、子午線面に沿って切り取った本発明の例示的タイヤの断面図である。
【0016】
タイヤの「中心線」(C/L)とは、子午線面で視認されるように、タイヤを二半分へと二等分する線である。
【0017】
「赤道面」とは、その中心線(C/L)に沿ってタイヤを二等分する子午線面に対して垂直な平面である。図1、2、及び3において、赤道面は、EPと称される。
【0018】
タイヤの「クラウン部」とは、タイヤの子午線面に沿って視認されるように、タイヤの側壁部間で軸方向A(タイヤの回転軸に対して平行な方向である)に沿って延び、かつタイヤの半径方向で内方に配置された部品を含む部分である。
【0019】
「半径方向」とは、タイヤの回転軸に対して垂直である。「半径方向で外方」とは、半径方向に沿って回転軸から離れて、という意味であり、「半径方向で内方」とは回転軸に向かう方向に沿って、という意味である。
【0020】
「ボディプライ」または「カーカス」もしくは「カーカスプライ」とは、タイヤの子午線面に沿って視認されるように、タイヤの対向する側壁部を通って、かつタイヤのクラウン部に渡ってタイヤの対向する側面のビード部間に、かつそこから延びるプライである。本明細書で使用するように、ボディプライは、より小さい角度を指定しない限り、例えば子午線面から10度以下の角度にあるコードなどの補強材を有する。
【0021】
「ベルトプライ」は、タイヤの子午線面に沿って視認されるように、トレッド部の半径方向で内方の、かつボディプライまたはプライの半径方向で外方のクラウン部に主に位置する。ベルトプライはタイヤのショルダー部を超えて延びない。
【0022】
破裂圧力は、側壁で確認される最大圧力などの定格圧力までタイヤに水を充填する破裂試験によって判定され得る。タイヤが破断しないと判定するのに十分な時間に渡って圧力を維持する。次に、より高い圧力まで圧力を高め、かつタイヤが破断しないと判定するのに十分な時間に渡って圧力を維持する。タイヤが破断または破裂する圧力(破裂圧力と表される)に達するまで本プロセスを繰り返す。
【0023】
本明細書中の、かつ以下の記載及び請求項中のベルト、ビード、及び/またはプライなどの用語の使用は、半製品から構成されたタイヤ、または平らな形状から環状体の形態での形状に変更しなければならない中間物から形成されたタイヤに本発明を限定するものではない。
【0024】
本発明のタイヤ100の例示的実施形態を図1及び2に子午線面に沿った断面図で示し、図2は、図1の断面図の片側のより拡大された図である。特定の形状を例示のために図示するが、本発明は図に示す全体の形状のみに限定されるものではない。タイヤ100は、1対の対向するビード部102及び104を含み、これらは、赤道面EPの対向する側面上にあるという意味で、対向している。ビード部102及び104は、例えばリングまたはフープの形態で回転軸辺りに巻かれた複数の金属コードその他の比較的非伸張性の材料から構成され得る、ビード芯120及び122をそれぞれ含む。ビード部102及び104は、タイヤ100をリムに着座させるように構成された形状及び構成を有する。
【0025】
タイヤ100は、赤道面EP辺りに配置された1対の対向する側壁部106及び108を含む。各側壁部106及び108は、個々のビード部102及び104にそれぞれ接続する。各側壁部106及び108は、半径方向Rに沿った全体に延びる。側壁部106及び108は、ボディプライ114及び116を保護する1つ以上のゴム材料を含む。
【0026】
クラウン部110は、対向する側壁部106及び108の間の、かつそれに接続する軸方向Aに沿って延びる。クラウン部110はトレッド部112を含む。本例示的実施形態において、トレッド部112は、溝124によって分離された複数のリブ126を含む。本発明は、トレッド部112について示す特定の形状、厚さその他の詳細に限定されるものではなく、また異なる特徴を有する他のトレッドを同じく含む。インナーライナー118はタイヤ100の内側に沿って延びる。インナーライナー118は、タイヤ100がリムに取付けられ、かつ膨張するとき気圧を維持するのに役立つ不透過層を提供する。
【0027】
本例示的実施形態において、タイヤ100は、対向する側壁部106及び108を通って、かつクラウン部110を通って対向するビード部102及び104から延びる少なくとも2つのボディプライ114及び116を含む。タイヤ100は2つを超えるボディプライを有し得るが、少なくとも2つのボディプライ114及び116が存在する。ボディプライ114及び116は、ビード芯120及び122の周りに巻かれた状態で、またはその半径方向で外方にめくれた端を有する状態で各々示される。しかしながら、本発明は、ボディプライ114及び116がビード芯120及び122辺りで各々必ずしも巻かれることなくビード部102及び104に延びる他の構成を含む。
【0028】
一定の実施形態において、ボディプライ114及び116は、脂肪族ポリアミド糸から形成されたコード要素CDを各々含む。さらなる他の実施形態において、ボディプライ114及び116は、脂肪族ポリアミド糸から形成されたコード要素CDを各々含み、かつ芳香族ポリアミド糸を含まない。図4に示すように、側壁部106及び108に沿って、ボディプライ114及び116のコード要素CDは、子午線面MPから+αまたは−αのいずれかの角度で半径方向Rに沿って延びる。一定の例示的実施形態において、角度αは2度以下の絶対値を有する。
【0029】
図1及び2に戻ると、タイヤ100は、タイヤの周方向C周りに延び、かつクラウン部110に配置されたベルト補強構造体128(図2)を含む。ベルト補強構造体128は、クラウン部110の半径方向で内方に、かつボディプライ114及び116の半径方向で外方に位置する。本例示的実施形態において、ベルト補強構造体128は、クラウン部110に位置する少なくとも2つのハイブリッドベルトプライ130及び132を含む。ベルトプライ130及び132は、ボディプライ114及び116に対して半径方向に隣接して配置され、これはベルトプライ130、132とボディプライ114、116との間に他のベルトプライが配置されないということを意味する。
【0030】
各ハイブリッドベルトプライ130及び132は、各個別のベルトプライ内で互いに平行に延びる複数のコード要素を含む。図5に示すように、各ハイブリッドベルトプライのコード要素CDは、赤道面EPから+βまたは−βのいずれかの角度を形成する。特定の実施形態において、ハイブリッドベルトプライ130及び132のコード要素に対するβの絶対値は、18〜35度の範囲にある。他の特定の実施形態において、ハイブリッドベルトプライ130及び132のコード要素に対するβの絶対値は、18〜22度の範囲にある。図1及び2に示されるベルト補強構造体128に関するさらに他の特定の実施形態において、ハイブリッドベルトプライ130及び132のコード要素に対するβの絶対値は、約20度である。
【0031】
ベルト補強構造体128内で、隣接するハイブリッドベルトプライのコード要素は、1つのベルトプライから次のベルトプライに交差する。例えば、ベルトプライ130のコード要素が赤道面EPから正の角度βにある場合、ベルトプライ132のコード要素は赤道面EPから負の角度βにある。ベルト補強構造体128が、2つを超えるハイブリッドベルトプライを含む例示的実施形態において、角度は半径方向Rに沿ってベルトプライからベルトプライに角度βの正の値と負の値との間を行ったり来たりするであろう。
【0032】
ハイブリッドベルトプライ130及び132のコード要素は、撚り合わせて作られた脂肪族ポリアミド糸と芳香族ポリアミド糸との組み合わせを含む。図6は、ハイブリッドベルトプライ130及び132に含まれ得るコード要素144の一例を提供する。本例示的実施形態において、コード要素144は、芳香族ポリアミドフィラメント147A及び149Aから各々構成された糸146A及び148Aをそれぞれ含む。一例として、各糸146Aまたは148Aは、330個の芳香族ポリアミドフィラメント147Aまたは149Aをそれぞれ含む。本実施形態において、コード要素144は、脂肪族ポリアミドフィラメント151Nから構成された糸150Nを含む。例えば、糸150Nは、188個の脂肪族ポリアミドフィラメント151Nを含み得る。他のフィラメントを同じく使用し得る。コード要素144はその長さに沿って撚られる。例えば、コード要素144は、その長さに沿ってメートル当たり250回転の割合で撚られ得る。脂肪族ポリアミド糸と芳香族ポリアミド糸との組み合わせを使用した他の構成のハイブリッドベルトプライも使用し得る。
【0033】
図1及び2に示すように、ハイブリッドベルトプライ130及び132は、赤道面EPのうちの対向する側面上の自由端130e及び132e間に軸方向Aに沿った幅を有する。一例としてベルトプライ130を使用すると、本明細書で使用する「自由端」とは、子午線面で視認されるように、ベルトプライ130の対向する端130eが任意の他のベルトプライによって包囲されず、または格納されないという意味であり、つまり別のベルトプライに交差することなく自由端130eからタイヤ100の外側に線(直線またはベルトプライ130と同じ曲線を有する)が描かれ得るという意味である。さらに、「自由端」とは、端130eがベルトプライ130に巻かれず、またはめくられず、かつクラウン部110の他のベルトプライに巻かれず、またはめくられないという意味である。
【0034】
特定の実施形態において、各ハイブリッドベルトプライ130及び132の軸方向Aに沿った幅は、ベルト補強構造体128の最も狭い非ハイブリッドベルトプライ(例えば、ベルトプライ134、136、138、及び140など)の対応する幅のうちの45〜90パーセントの範囲にある。他の特定の実施形態において、各ハイブリッドベルトプライ130及び132の軸方向Aに沿った幅は、ベルト補強構造体128の最も狭い非ハイブリッドベルトプライの対応する幅のうちの70〜90パーセントの範囲にある。
【0035】
また、ベルト補強構造体128は、ハイブリッドベルトプライ130及び132の半径方向で外方に配置された少なくとも1つの非ハイブリッドベルトプライ134を含む。非ハイブリッドベルトプライ134は、ベルトプライ130またはベルトプライ132の軸方向Aに沿った幅より大きい軸方向Aに沿った幅を有する。非ハイブリッドベルトプライ134は脂肪族ポリアミド糸から構成されたコード要素を含む。本例示的実施形態において、非ハイブリッドベルトプライ134は任意の芳香族ポリアミド糸を有するコードを含まない。
【0036】
周方向Cに沿って、非ハイブリッドベルトプライ134のコードは正弦曲線状に延びるより具体的には、非ハイブリッドベルトプライは、ベルトプライ134の幅(軸方向Aに沿った)に渡るコード要素を含むストリップ部材を正弦曲線状に付着させることによって形成される。これは、図1及び2に示される二層形をもたらすが、単一の非ハイブリッドベルトプライ134を生成する。ストリップ部材は、ゴムコーティング内にコード要素を含む。1つの実施形態において、ストリップ部材は、クラウン部110の対向する側面間に延びるとき、赤道面EPから8〜10度の角度を形成する。
【0037】
また、図1及び2に示される例示的実施形態において、ベルト補強構造体128は非ハイブリッドベルトプライ136及び140を含む。ベルトプライ136及び140は、非ハイブリッドベルトプライ134について先ほど記載した様式で構成される。ベルトプライ136及び140は、非ハイブリッドベルトプライ134の半径方向で外方に配置され、本実施形態において、非ハイブリッドベルトプライ134よりもわずかに小さいが、ハイブリッドベルトプライ130及び132よりも大きい軸方向Aに沿った幅を有する。
【0038】
図1及び2を用いて継続すると、ベルト補強構造体128は、補助ベルトプライ138を含み、このベルトプライもまた、ハイブリッドベルトプライ130及び132の半径方向で外方に配置される。補助ベルトプライ138は、回転軸の周りに螺旋状に巻き付けられたコードを含む。補助ベルトプライ138のコードは、脂肪族ポリアミド糸を含み、かつ特定の実施形態において、芳香族ポリアミド糸を含まない。再度図5を参照すると、補助プライ138のコードは、赤道面EPからの角度+βまたは角度−βを形成する。特定の実施形態において、角度βは、赤道面EPから3度未満の絶対値を有する。
【0039】
タイヤ100は、クラウン部110に配置された少なくとも1つのプロテクタープライ142を含む。プロテクタープライ142は、ベルト補強構造体128の半径方向で外方に、かつトレッド部112の半径方向で内方に位置する。特定の実施形態において、プロテクタープライ142は、45度の角度で配置された1つ以上の非伸張性の要素(例えば、ナイロンまたは金属ケーブル)を含み得る。一例として、プロテクタープライ142はクラウン部110に対するパンクからベルト補強構造体128を保護する。特定の実施形態において、プロテクタープライ142は芳香族ポリアミド糸を含まない。
【0040】
図3は、図1及び2の例示的実施形態とは異なって配置されたベルト補強構造体128を有するタイヤ100の別の例示的実施形態を提供する。図3の実施形態において、ベルト補強構造体は、ハイブリッドベルト130及び132、ならびに非ハイブリッドベルト134及び136を含み、そのすべては前述のように構成される。前述の実施形態のように、ハイブリッドベルトプライ130及び132は、非ハイブリッドベルトプライの半径方向で内方に、かつボディプライ114及び116に対して半径方向に隣接して位置する。
【0041】
図3の特定の実施形態において、ハイブリッドベルトプライ130及び132は、28〜32度の範囲の絶対値を有する赤道面EPからの角度+βまたは角度−βを形成するコード要素を有する。図3の別の特定の実施形態において、ハイブリッドベルトプライ130及び132は、30度の絶対値を有する赤道面EPからの角度+βまたは角度−βを形成するコード要素を有する。
【0042】
また、補助ベルト138は、前述のように構成されるが、すべての他の非ハイブリッドベルト134及び136の半径方向で内方に位置する。本特定の実施形態において、補助ベルト138は、ハイブリッドベルトプライ130及び132に対して半径方向に隣接する。図3のタイヤ100は、図1及び2に関して記載されるように、別途構成される。
【0043】
本明細書において記載される実施形態の各々は、改善されたトレッドの摩耗性能を有し、同時に破裂圧力、質量、及びサイズの要件を満たす先端的な航空機用タイヤを提供する。さらに、互いに比較すると、図1及び2の例示的実施形態は、改善されたトレッドの摩耗性能のためのさらなる最適化を提供し、一方、図3の例示的実施形態は、さらなる破裂圧力強度を提供する。より具体的には、図7を参照すると、3つのプロット300、302、及び304は、類似した構造を有するが、角度βを変化させた3つのタイヤについて図示される。示されるように、2つのハイブリッドベルトプライ(例えば、130及び132)の角度βの絶対値を低減させることによって、クラウン部をさらに抑制及び平板化することができ、これによりタイヤの摩耗性能が改善される。しかしながら、これはまた、ハイブリッドベルトプライ(例えば、130及び132)における張力を増加させ、これにより非ハイブリッドプライ(複数可)(例えば、134、136)における張力は低減される。逆に、2つのハイブリッドベルトプライ(例えば、130及び132)の角度βの絶対値を増加させることは、クラウン部の抑制を低減し、より円形の形状及び低減された摩耗性能をもたらすが、またベルト張力のよりバランスのとれた分布及び改善された破裂圧力値をもたらす。
【0044】
本発明の主題事項はその特定の例示的実施形態及び方法に関して詳細に記載されるが、前記の理解を図った当業者であれば、本実施形態の変更例、変形例及びそれと同等のものを容易に製造し得ると理解される。したがって、本発明の開示の範囲は限定するためではなく例示のためであり、かつ主題事項の開示は、本明細書で開示される教示を使用した当業者に容易に明らかであるような、本発明の主題事項に対する変更例、変形例及び/または追加例を含めることを除外するものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7