特許第6343418号(P6343418)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6343418滑り軸受を形成するキャリア部、滑り軸受、キャリア部の製造方法、及び、滑り軸受を有する往復ピストン式燃焼機関
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6343418
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】滑り軸受を形成するキャリア部、滑り軸受、キャリア部の製造方法、及び、滑り軸受を有する往復ピストン式燃焼機関
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/12 20060101AFI20180604BHJP
   F16C 17/02 20060101ALI20180604BHJP
   F16C 33/14 20060101ALI20180604BHJP
   F16C 9/02 20060101ALI20180604BHJP
   F16C 9/04 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
   F16C33/12 A
   F16C17/02 Z
   F16C33/14 Z
   F16C9/02
   F16C9/04
【請求項の数】24
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-189098(P2012-189098)
(22)【出願日】2012年8月29日
(65)【公開番号】特開2013-53749(P2013-53749A)
(43)【公開日】2013年3月21日
【審査請求日】2015年7月31日
(31)【優先権主張番号】11179483.0
(32)【優先日】2011年8月31日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501082602
【氏名又は名称】ヴェルトジィレ シュヴァイツ アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディエトマール シュラガー
(72)【発明者】
【氏名】レト ツガー
【審査官】 日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−096741(JP,A)
【文献】 特開平04−002739(JP,A)
【文献】 特表2009−533630(JP,A)
【文献】 特表2009−534597(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 17/00−17/26,33/00−33/28
F16C 3/00− 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄を含む基材から作られるキャリア部であって、前記キャリア部の上の滑り面側に、軸受メタルを含む層システムが設けられており、
前記層システムの中のキャリア部層が、前記キャリア部に直接隣接して構築されており、前記キャリア部層は、Snを含む材料から構成されており、
前記キャリア部層は、接続ゾーンによって、FeSnが前記接続ゾーンの中に実質的に形成されることなく、前記基材に冶金的に接続されており、
前記キャリア部層及び/又は前記接続ゾーンにはSbが3%から12%の範囲で存在し、化学物質Ni及び/又はCuが1%から5%の範囲で存在し、Cdが0%から1.5%の範囲で存在する、
キャリア部。
【請求項2】
前記キャリア部は、滑り軸受の支持シェルである、
請求項1に記載のキャリア部。
【請求項3】
前記Snを含む材料は、ホワイトメタルである、
請求項1又は2に記載のキャリア部。
【請求項4】
前記キャリア部層及び/又は前記接続ゾーンは、Snに加え、As、P、Sb、Zn、Cd、Mn、及びNiで構成される一群の化学物質のうちの少なくとも1つの化学物質を含む、
請求項1乃至3の何れか一項に記載のキャリア部。
【請求項5】
Snは、前記キャリア部層及び/又は前記接続ゾーンに80%から95%の範囲で存在し、また、物質As及び/又はPは、3%以下の範囲で存在する、
請求項1乃至4の何れか一項に記載のキャリア部。
【請求項6】
Snは、前記キャリア部層及び/又は前記接続ゾーンに80%から95%の範囲で存在し、また、物質As及び/又はPは、0.1%から2%の範囲で存在する、
請求項1乃至4の何れか一項に記載のキャリア部。
【請求項7】
前記接続ゾーンの厚みは、最大で15μmになる、
請求項1乃至6の何れか一項に記載のキャリア部。
【請求項8】
前記接続ゾーンの厚みは、最大で0.1μmから10μmになる、
請求項1乃至6の何れか一項に記載のキャリア部。
【請求項9】
前記接続ゾーンの厚みは、0.01μmと5μmの間となる、
請求項1乃至6の何れか一項に記載のキャリア部。
【請求項10】
前記キャリア部の前記基材は、少なくとも、前記キャリア部層を占める領域で、マルテンサイトがない、
請求項1乃至9の何れか一項に記載のキャリア部。
【請求項11】
Snを含む前記層システムの部分層は、CuSn結晶及びSbSn結晶の一様な分布を持つ、実質的に等質な構造を有する、
請求項1乃至10の何れか一項に記載のキャリア部。
【請求項12】
前記部分層は、前記キャリア部層及び/又は前記接続ゾーンである、
請求項11に記載のキャリア部。
【請求項13】
請求項1乃至12の何れか一項に記載のキャリア部を有する滑り軸受。
【請求項14】
前記滑り軸受は、大型の2ストロークディーゼルエンジンの滑り軸受である、請求項13に記載の滑り軸受。
【請求項15】
鉄を含む基材から作られるキャリア部の製造方法であって、前記キャリア部の上の滑り面側に、軸受メタルを含む層システムが設けられており、
前記層システムのキャリア部層が、前記キャリア部に直接隣接して適用されており、前記キャリア部層は、Snを含むコーティング材料から構成されており、
前記キャリア部層は、接続ゾーンによって、FeSnが前記接続ゾーンの中に実質的に形成されることなく、前記基材に冶金的に接続されており、
前記キャリア部層及び/又は前記接続ゾーンにはSbが3%から12%の範囲で存在し、化学物質Ni及び/又はCuが1%から5%の範囲で存在し、Cdが0%から1.5%の範囲で存在する、
方法。
【請求項16】
前記キャリア部は、滑り軸受の支持シェルである、
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記Snを含むコーティング材料は、ホワイトメタルである、
請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記キャリア部層は、融解によって、鉄を含む前記基材上に適用され、
Snを含む前記コーティング材を融解するのに必要な熱エネルギは、コーティング工程中に、前記コーティング材のみが完全に融解し、且つ、鉄を含む前記基材が固体の状態のままとなるように制御される、
請求項15乃至17の何れか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記コーティング工程は、遠心鋳造工程、重力鋳造工程、ティグ溶接工程、レーザ溶接工程、はんだ付け工程、又は、爆発めっきである、
請求項18に記載の方法。
【請求項20】
Snを含む前記コーティング材は、粉末、及び/又は、バンド、及び/又は、ワイヤとして供給される、
請求項15乃至19の何れか一項に記載の方法。
【請求項21】
少なくとも、前記層システムにおける部分層は、プレス工程において、鉄を含む前記基材にプレスされ、或いは、加圧下で圧延される、
請求項15乃至20の何れか一項に記載の方法。
【請求項22】
請求項13又は14に記載の滑り軸受を有する、往復ピストン式燃焼機関。
【請求項23】
前記往復ピストン式燃焼機関は、大型の2ストロークディーゼルエンジンである、
請求項22に記載の往復ピストン式燃焼機関。
【請求項24】
前記滑り軸受は、クランクシャフト軸受、及び/又は、コネクティングロッド軸受、及び/又は、スラスト軸受、及び/又は、クロスヘッドピボット軸受、及び/又は、プロペラシャフト軸受である、
請求項22又は23に記載の往復ピストン式燃焼機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄を含む基材から作られるキャリア部に関し、具体的には、往復ピストン式燃焼機関、特に大型の2ストロークディーゼルエンジンの滑り軸受の支持シェル、キャリア部を有する滑り軸受、滑り軸受の製造方法、及び、独立請求項の前文にしたがった滑り軸受を有する往復ピストン式燃焼機関に関する。
【背景技術】
【0002】
滑り軸受は、機械工学におけるほとんど無数の実施例で使用されている。例えば、滑り軸受は、往復ピストン式燃焼機関で、クランクシャフト軸受、コネクティングロッド軸受、スラスト軸受、クロスヘッドピボット軸受、プロペラシャフト軸受として使用され、また、他の多くの用途で使用されている。
【0003】
滑り軸受、及び、滑り軸受の製造方法は、例えば、国際公開第00/23718号に開示されている。そこでは、ホワイトメタルで構成されるコーティングが、鉄材で構成されるキャリア部上に合金されている。しかしながら、合金の形成は、コーティング工程で大量の熱が適宜に放出されるように、液体合金成分の存在を必要とする。それによって、ホワイトメタルが融解するばかりでなく、溶融基材で構成される金属浴がキャリア部の上側のところで滑り面側に創出される。このようにして創出されるホワイトメタル及び鉄材の溶解物は、大量に発生するFeSnと共に、互いに合金し合う。したがって、比較的厚い接続ゾーンは、この点において発生するFeSnで大部分が構成される。この接続ゾーンは、確かに、基材とコーティングとの間の良好な冶金的接続をもたらすが、FeSnは、既知の軸受装置でのより小さな負荷でクラックの形成及び脆性破壊が既に発生しているように、極めて脆性の物質である。さらに、好ましくない冷却が発生した場合には、コーティングの近くにある鉄材のマルテンサイトへの変質が生じ、それは同様に極めて脆性であり、それによって、上述の不利点がさらに増幅されるという事実がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第00/23718号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2007/131742号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
その結果、上述の種類の軸受では、基材の鋼鉄とホワイトメタル支持層との間の比較的厚い中間領域内の高い脆性と低い伸縮性の結果として、相応に短い耐用年数に帰着する。
【0006】
これを回避するために、遠心鋳造工程で、ホワイトメタルのような軸受メタルで構成されるコーティングをキャリア部に適用することも知られている。この点において、溶融基材で構成される金属浴の形成は確かに抑えられる。しかしながら、遠心鋳造工程で適用されたホワイトメタルの固化の際に、合金成分の分離が生じ、CuSnで構成される針状結晶が最初に沈殿し、その後にSbSnで構成される立方晶系結晶、そして最後に残りの錫に富んだ母材(matrix)が固化する。
【0007】
CuSnの密度は、より長く液体である母材の密度より小さいSbSnの密度よりも大きい。したがって、CuSnの結晶は半径方向外側に移動し、そうすることにより、ホワイトメタルコーティングが基材に接触するところの領域を弱くする。それは、同様に、耐用年数に好ましくない影響を与え得る。
【0008】
この問題及びその関連の問題を回避するために、滑り軸受、及び、滑り軸受の製造方法が、国際公開第2007/131742号で提案されている。そこでは、せいぜい10μmの厚さの、FeSnを含む比較的薄い接続ゾーンが、純粋なホワイトメタルの層と鉄を含む基材との間に形成されている。
【0009】
しかしながら、この解決策は、妥協案を表すのみである。FeSn層は確かに比較的薄くはあるがそれでも存在していることに変わりはなく、脆性破壊及びクラック形成の問題は未だ最終的に解決されていないためである。脆性破壊及びクラック形成の問題は、特に、10000kW或いはそれ以上の駆動力がシリンダ毎に容易に創出され得る大型の2ストロークディーゼルエンジンにおけるクランクシャフト軸受のような、極端に高い応力にさらされる滑り軸受については、残ったままである。国際公開第2007/131742号にしたがったそれらの滑り軸受の変形能力は、決して十分なものではないためである。
【0010】
それ故に、本発明の目的は、FeSnの接続ゾーンによる問題がもはや生じることがなく、脆性破壊及びクラック形成が実質的に防止されるようにする、滑り軸受のための新たなキャリア部を提供することである。同時に、より単純な層構造を有する軸受が提供され、同時に、それ自体知られている製造工程が利用可能であり、その新たな軸受の製造のために新たな設備を準備する必要がないようにする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を満たす本発明の要旨は、各カテゴリにおける独立請求項の特徴によって特徴付けられる。
【0012】
従属項は、本発明に係る特に有利的な実施例に関する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
それ故に、本発明は、鉄を含む基材で作られるキャリア部に関し、特に、軸受メタルで構成され、且つ、少なくとも1つの部分層を含む層システムがキャリア部の滑り面側に提供されるところの滑り軸受の支持シェルに関する。この点において、そのキャリア部に直接的に隣接するその層システムにおける少なくとも1つのキャリア部層は、Snを含む物質、望ましくはホワイトメタルで作られる。本発明によると、そのキャリア部層は、接続ゾーンによって、実質的にFeSnがその接続ゾーンで形成されることなく、その基材に冶金的に接続される。
【0014】
FeSnで構成される接続ゾーンは事実上完全に抑えられ、それ故に、その接続ゾーンはまた、小さく、技術的に関連する程度になることがないため、本発明にしたがった滑り軸受の変形能力がもはや全体的に見て悪影響を受けることなく、脆性破壊及びクラック形成に対して十分に高い安全性が確保されるようにすることが保証される。
【0015】
全く意外にも、全ての確立された原理に反して、鉄を含むそのキャリア部の基材へのコーティングの良好な冶金的接続及びそれ故の高密着性が、FeSn層の存在なしであっても達成され得ることが示された。従来技術では常に存在するこの見解は、おそらく、FeSn層が必然的に且つ習慣の惰性で拡散工程によって液体ホワイトメタルによるコーティング上に形成されるという技術的先入観に基づく。この先入観は、本発明によって反証された。
【0016】
特に望ましい実施例では、そのキャリア部層及びその接続ゾーンのうちの少なくとも一方が、Snに加え、As、P、Sb、Zn、Cd、Mn、Cu、及びNiから構成される一群の化学物質のうちの少なくとも1つの化学物質を含む。この点について、特に、キャリア部層及び接続ゾーンのうちの少なくとも一方におけるP及びAsのうちの少なくとも一方の存在が、接続ゾーンにおける、先行技術から知られているFeSnの形成をほとんど抑制し、この効果のためには少量のP及びAsで既に十分であることが見出された。
【0017】
通常、キャリア部層及び接続ゾーンのうちの少なくとも一方は、80%から95%の範囲でSnを含み、化学物質As及び/又はPの割合は3%以下であり、望ましくは、FeSn層の形成を既に抑制することができる0.1%から2%の範囲である。
【0018】
この点において、3%から12%の範囲のSb、1%から5%の範囲の化学物質Ni及び/又はCu、0%から1.5%の範囲のCdといった別の化学物質もまた、キャリア部層内に存在することができ、そして、同様に、適切な組み合わせ及び量でFeSn層の形成を抑制することができる。
【0019】
この点において、本発明にしたがったキャリア部の層システムが、用途に応じて、耐腐食性、特に高い温度又は特に大きな機械的歪みへの耐性等の特定の役割を果たすことができる同じ又は異なる構成のさらに別の部分層を含み得ることが理解される。
【0020】
この点において、接続ゾーンにFeSnがないことが、ホワイトメタルコーティングの、すなわちキャリア部層の良好な冶金的接続に決して影響しないことが見出された。この先入観もまた本発明によって排除され得る。より優れているとはいわないまでも、鉄を含むそのキャリア部の基材へのキャリア部層の例外的な冶金的接続は、すなわち同様に、本発明をもたらし、その結果、より優れているとはいわないまでも、少なくとも同程度に良好な高密着性をもたらす。
【0021】
例えば、最大で15μm、具体的には0.1μmから10μm、好適には0.01μmと5μmとの間である接続ゾーンの厚みによる良好な密着性が、正確な化学組成にある程度依存する接続ゾーンの理想的な厚みによる良好な密着性に関与するという点が、むしろ本発明の認識である。
【0022】
この点において、キャリア部の基材は、少なくともキャリア部層を占める領域では、マルテンサイトを含まない。それによって、そのキャリア部層におけるその領域の密着性又は脆性はそれぞれ、先行技術において原則として既に知られているように、同様に良い影響を受ける。
【0023】
この点において、Snを含む層システムのうちの1つの、複数の、或いは、それぞれの部分層、特に、キャリア部層及び接続ゾーンのうちの少なくとも一方は、特に望ましいことには、CuSn結晶及びSbSn結晶の一様な分布を有する実質的に等質な構造を有する。
【0024】
本発明はさらに、鉄を含む基材のキャリア部の製造方法に関し、特に、滑り軸受の支持シェルの製造方法に関する。この点において、軸受メタルを含む層システムは、滑り面側のキャリア部上に提供される。そして、キャリア部に直接的に隣接する層システムであり、Snを含むコーティング材望ましくはホワイトメタルから作られる層システムにおけるキャリア部層が適用される。本発明によると、キャリア部層は、接続ゾーンで形成されるFeSnが実質的にない状態で、接続ゾーンによって、基材に冶金的に接続される。
【0025】
実際には、キャリア部層は、望ましくは、融解によって、鉄を含む基材に適用され、Snを含むコーティング材の融解に要する熱エネルギは、望ましくは、そのコーティング材のみが完全に融解し、コーティング工程中に、鉄、望ましくは鋼鉄を含む基材でのマルテンサイトの形成を防止すべく、鉄を含む基材が固体の状態のままとなるように制御される。この点において、マルテンサイトのない基材であり、Snを含む本発明に係る層システムが適用される基材が、本発明にしたがってキャリア部の製造に必然的に用いられることに言及する必要はほとんどないであろう。
【0026】
この点において、コーティング工程は、具体的には、遠心鋳造工程、重力鋳造工程、ティグ溶接工程、レーザ溶接工程、はんだ付け工程、又は、爆発めっき(explosive plating)であってもよい。また、プレス工程において、層システムにおける少なくとも1つの部分層が、鉄を含む基材にプレスされてもよく、特定の場合には加圧下で圧延されてもよい。原理的には、特に、有害なマルテンサイトの形成を防止し、且つ、接続ゾーンにおけるFeSnの形成を防止する他の任意の工程が利用され得ることは自明である。
【0027】
Snを含むコーティング材は、例えば、粉末、及び/又は、バンド、及び/又は、ワイヤとして供給されてもよい。
【0028】
本発明にしたがったキャリア部上に層システムを作る具体的な工程は、この点において、一部の例では、少なくとも部分的には原理的に従来技術、例えば国際公開第2007/131742号からそれ自体公知である。望ましい変形例では、例えば、コーティングの少なくとも第1層が、融解により、鉄を含む基材に適用される。上述のように、望ましくは使用されたコーティング材のみが完全に融解し、また望ましくは基材が完全に固体の状態のままとなるように制御された態様で、コーティングされる表面へのエネルギの移動がその融解のために起こり、且つ、そこに供給されるコーティング材へのエネルギの移動が起こる。
【0029】
それにより、基材へのそのような微小な熱入力が有利的に実現され、溶融基材で構成される金属浴の形成が、コーティングされる表面で好適に抑制される。すなわち、コーティング材は、鉄を含む固体金属ベース上に融解される。そして、マルテンサイトの形成なしに、基材へのコーティングの所望の冶金的接続を確かなものとする熱の存在の結果として、拡散が開始される。とりわけ基材の加熱に依存する拡散深度は、この点において、拡散の結果としてここで得られる接続ゾーンが、最大でも15μmであり、望ましくは0.5μm〜5μmである所望の制限範囲内となるよう、単純な方法で制御され得る。同時に、上述のように、基材の領域におけるマルテンサイトの形成、及び、コーティングの領域における一様でない結晶の分布が回避され得る。
【0030】
本発明にしたがった方法の有利的な局面は、例えば、錫を含むコーティング材が追加的に亜鉛を含むという事実を含み得る。その結果、結晶形成に影響を与えるために以前必要とされていたカドミウムは省略され得る。これは、環境適合性を向上させる。
【0031】
本発明はさらに滑り軸受に関し、特に、上述の特徴の1つにしたがったキャリア部を有する、大型の2ストロークディーゼルエンジンの滑り軸受に関する。また、本発明は、往復ピストン式燃焼機関に関し、特に、本発明にしたがった滑り軸受を有する大型の2ストロークディーゼルエンジンに関する。この点において、滑り軸受は、例えば、クランクシャフト軸受、及び/又は、コネクティングロット軸受、及び/又は、スラスト軸受、及び/又は、クロスヘッドピボット軸受、及び/又は、プロペラシャフト軸受、又は、原則として、他の任意の軸受であってもよく、また、往復ピストン式燃焼機関ではない他の任意の機関のための軸受であってもよい。
【0032】
本願に記載される発明にしたがったキャリア部及び滑り軸受の実施例、並びに、上述のそれらの製造方法が、単なる例示的なものとして理解され、また、特に、開示された実施例の全ての適当な組み合わせが本発明によってカバーされることは自明である。当業者は、この点において、本発明の単純な更なる変化を、たとえそれらが明示的に記載されていないとしても、容易に理解するであろう。