特許第6343421号(P6343421)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6343421トンネル管理システム、トンネル管理方法、およびトンネル管理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6343421
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】トンネル管理システム、トンネル管理方法、およびトンネル管理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01D 21/00 20060101AFI20180604BHJP
   E21D 9/00 20060101ALI20180604BHJP
   E21F 17/00 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
   G01D21/00 D
   E21D9/00 Z
   E21F17/00
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-5598(P2013-5598)
(22)【出願日】2013年1月16日
(65)【公開番号】特開2014-137270(P2014-137270A)
(43)【公開日】2014年7月28日
【審査請求日】2015年12月18日
【審判番号】不服2017-10138(P2017-10138/J1)
【審判請求日】2017年7月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】畑 浩二
【合議体】
【審判長】 小林 紀史
【審判官】 須原 宏光
【審判官】 中塚 直樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−56277(JP,A)
【文献】 特開平6−3145(JP,A)
【文献】 里優,土木分野における計測、リモートセンシング技術の高度化と自動化,土木技術,日本,土木技術社,2012年 4月 1日,P.36−41
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 21/00
E21D 9/00
E21F 17/00
G01V 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル軸線が所定間隔で区分された各要素の位置範囲情報を格納した記憶部と、
トンネルに関する各種情報とその発生位置情報を含むデータを入力部で受け付け、各データが示す発生位置情報を、記憶部における各要素の位置範囲情報に照合し、発生位置が位置範囲に含まれて該当データを関連付けるべき要素を特定し、当該特定した要素に該当データを関連付けて記憶部に格納する処理と、
データ表示要求を入力部で受け付け、当該データ表示要求が示すトンネル軸線上の指定位置情報に応じた要素を記憶部にて特定し、該当要素に関連付けられたデータを読み出して出力部に表示する処理とを実行する演算部と、
を備えることを特徴とするトンネル管理システム。
【請求項2】
前記演算部は、前記データ表示要求に応じてデータを表示する際、該当要素に関連付けられたデータのうち切羽観察データを記憶部より抽出し、出力部において、前記切羽観察データに応じた切羽表示上に、前記要素に関連付けられた他の各データを表示するものである、ことを特徴とする請求項1に記載のトンネル管理システム。
【請求項3】
前記演算部は、トンネル軸線を区分する前記所定間隔の指示を入力部で受け付け、当該受け付けた所定間隔でトンネル軸線を要素に区分し、該当各要素の位置範囲情報を記憶部に格納する処理を更に実行するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のトンネル管理システム。
【請求項4】
前記要素の夫々に含まれるデータの数が所定数以上となるように、前記要素の範囲を修正する手段を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のトンネル管理システム。
【請求項5】
トンネル軸線が所定間隔で区分された各要素の位置範囲情報を格納した記憶部を備える情報処理装置が、
トンネルに関する各種情報とその発生位置情報を含むデータを入力部で受け付け、各データが示す発生位置情報を、記憶部における各要素の位置範囲情報に照合し、発生位置が位置範囲に含まれて該当データを関連付けるべき要素を特定し、当該特定した要素に該当データを関連付けて記憶部に格納する処理と、
データ表示要求を入力部で受け付け、当該データ表示要求が示すトンネル軸線上の指定位置情報に応じた要素を記憶部にて特定し、該当要素に関連付けられたデータを読み出して出力部に表示する処理と、
を実行することを特徴とするトンネル管理方法。
【請求項6】
トンネル軸線が所定間隔で区分された各要素の位置範囲情報を格納した記憶部を備える情報処理装置に、
トンネルに関する各種情報とその発生位置情報を含むデータを入力部で受け付け、各データが示す発生位置情報を、記憶部における各要素の位置範囲情報に照合し、発生位置が位置範囲に含まれて該当データを関連付けるべき要素を特定し、当該特定した要素に該当データを関連付けて記憶部に格納する処理と、
データ表示要求を入力部で受け付け、当該データ表示要求が示すトンネル軸線上の指定位置情報に応じた要素を記憶部にて特定し、該当要素に関連付けられたデータを読み出して出力部に表示する処理と、
を実行させることを特徴とするトンネル管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル管理システム、トンネル管理方法、およびトンネル管理プログラムに関するものであり、具体的には、トンネル施工に関する種々のデータを統合し、効率的で迅速なデータ利用が可能となるトンネル管理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
施工対象の地山を掘削し、トンネルを構築する際、施工中の切羽観察、各種計測(内空変位計測、ロックボルト軸力計測、鋼製支保工応力計測、吹付けコンクリート応力計測、地中変位計測など)を実施し、切羽における亀裂や湧水の有無、各種計測値が適正範囲内か否か、といった事項を踏まえた施工管理を行う。一方、近年の情報処理技術の進化に伴い、こうした施工管理に用いる切羽観察や計測値等の各種データをコンピュータに保存し、必要に応じて処理する技術が提案されている。該当技術としては、トンネル切羽画像を撮影し、このデータを取り込んで画像処理すると共に、画像処理したトンネル切羽画像データを撮影時期、撮影位置とともに蓄積し、必要に応じて切羽画像データから必要部分を切り出して表示し、観察データや解説を付与して出力するトンネル切羽画像収録処理システム(特許文献1)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−3145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが従来技術において、処理対象となる各データに時期等を関連づけすることはあっても、各データを互いに関連した情報ソースとして統合化し管理することはなかった。また、トンネル施工に際して得られる、地形や地質に関するデータ、トンネルの設計データ、掘削や支保工等の施工データ、施工面等の劣化データらは、トンネル進行方向に沿って連続或いは断続しており、従来技術においてこれらを統合することは出来ない。
【0005】
一方、トンネル施工中ないし竣工後の管理業務に際し、施工時のデータを迅速に把握するニーズがあるが、上述したように各データは統合化されておらず、担当者が必要とするデータを探し当てるためには、各データに関してそれぞれに検索を行い、担当者の知識や経験などに基づいて膨大なデータの統合作業を行う必要があった。従って、データを特定するだけでも相当な時間や手間がかかり、場合によっては必要なデータにたどり着けない事もあった。
【0006】
そこで本発明では、トンネル施工に関する種々のデータを統合し、効率的で迅速なデータ利用が可能となるトンネル管理技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明のトンネル管理システムは、トンネル軸線が所定間隔で区分された各要素の位置範囲情報を格納した記憶部と、トンネルに関する各種情報とその発生位置情報を含むデータを入力部で受け付け、各データが示す発生位置情報を、記憶部における各要素の位置範囲情報に照合し、発生位置が位置範囲に含まれて該当データを関連付けるべき要素を特定し、当該特定した要素に該当データを関連付けて記憶部に格納する処理と、データ表示要求を入力部で受け付け、当該データ表示要求が示すトンネル軸線上の指定位置情報に応じた要素を記憶部にて特定し、該当要素に関連付けられたデータを読み出して出力部に表示する処理とを実行する演算部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
これによれば、施工対象の地山の地形や地質に関するデータ、トンネルの設計データ、掘削や支保工等の施工データ、施工面等の劣化データといった、トンネル進行方向に沿って連続或いは断続したデータを、要素毎に統合、管理することが可能となり、ユーザとしては、所望要素を指定することで、管理に必要なデータを効率的かつ迅速に利用可能となる。
【0009】
なお、上述のトンネル管理システムにおける演算部は、データ表示要求に応じてデータを表示する際、該当要素に関連付けられたデータのうち切羽観察データを記憶部より抽出し、出力部において、切羽観察データに応じた切羽表示上に、要素に関連付けられた他の各データを表示するものである、としてもよい。これによれば、施工対象の地山の地形や地質に関するデータ、トンネルの設計データ、掘削や支保工等の施工データ、施工面等の劣化データといった各種データを、切羽面と併せてユーザに提示することが出来る。ユーザは切羽状態と共に、該当区間(要素)における地形、地質、支保工、変位といった情報を総合的に理解可能となる。
【0011】
また、上述のトンネル管理システムにおける演算部は、トンネル軸線を区分する所定間隔の指示を入力部で受け付け、当該受け付けた所定間隔でトンネル軸線を要素に区分し、該当各要素の位置範囲情報を記憶部に格納する処理を更に実行するものである、としてもよい。これによれば、施工進度等の施工条件やデータ管理上の都合などに応じて、データ管理の単位となる要素の範囲をユーザが任意に設定、変更出来ることとなる。
更に、前記要素の夫々に含まれるデータの数が所定数以上となるように、前記要素の範囲を修正する手段を備える、としてもよい。
【0012】
また、本発明のトンネル管理方法は、トンネル軸線が所定間隔で区分された各要素の位置範囲情報を格納した記憶部を備える情報処理装置が、トンネルに関する各種情報とその発生位置情報を含むデータを入力部で受け付け、各データが示す発生位置情報を、記憶部における各要素の位置範囲情報に照合し、発生位置が位置範囲に含まれて該当データを関連付けるべき要素を特定し、当該特定した要素に該当データを関連付けて記憶部に格納する処理と、データ表示要求を入力部で受け付け、当該データ表示要求が示すトンネル軸線上の指定位置情報に応じた要素を記憶部にて特定し、該当要素に関連付けられたデータを読み出して出力部に表示する処理と、を実行することを特徴とする。
【0013】
また、本発明のトンネル管理プログラムは、トンネル軸線が所定間隔で区分された各要素の位置範囲情報を格納した記憶部を備える情報処理装置に、トンネルに関する各種情報とその発生位置情報を含むデータを入力部で受け付け、各データが示す発生位置情報を、記憶部における各要素の位置範囲情報に照合し、発生位置が位置範囲に含まれて該当データを関連付けるべき要素を特定し、当該特定した要素に該当データを関連付けて記憶部に格納する処理と、データ表示要求を入力部で受け付け、当該データ表示要求が示すトンネル軸線上の指定位置情報に応じた要素を記憶部にて特定し、該当要素に関連付けられたデータを読み出して出力部に表示する処理と、を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、トンネル施工に関する種々のデータを統合し、トンネル管理のための効率的で迅速なデータ利用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A】本実施形態におけるトンネル管理システムの適用例を示す図である。
図1B】本実施形態において管理対象たるトンネルの側断面図である。
図1C】本実施形態において管理対象たるトンネルの平面図である。
図2】本実施形態における管理サーバ(トンネル管理システム)のハードウェア構成例を示す図である。
図3】本実施形態における要素情報テーブルの例を示す図である。
図4】本実施形態における切羽観察データの例を示す図である。
図5】本実施形態における計測値データの例を示す図である。
図6】本実施形態におけるトンネル管理方法の処理フロー例1を示す図である。
図7】本実施形態における出力画面例1を示す図である。
図8】本実施形態における出力画面例2を示す図である。
図9】本実施形態におけるトンネル管理方法の処理フロー例2を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
−−−トンネル管理方法の適用例およびシステム構成の例−−−
以下に本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。図1Aは、本実施形態におけるトンネル管理システムの適用例を示す図であり、図1Bは本実施形態において管理対象たるトンネルの側断面図、図1Cは本実施形態において管理対象たるトンネルの平面図である。
【0017】
本実施形態のトンネル管理方法は、トンネル施工に関する種々のデータを統合し、効率的で迅速なデータ利用が可能となるトンネル管理技術に対応したものであり、施工対象の地山の地形や地質に関するデータ、トンネルの設計データ、掘削や支保工等の施工データ、施工面等の劣化データといった、トンネル進行方向に沿って連続或いは断続したデータを、要素毎に統合、管理することが可能となり、ユーザとしては、所望要素を指定することで、管理に必要なデータを効率的かつ迅速に利用可能となる。
【0018】
こうしたトンネル管理方法はトンネル管理システムたる管理サーバ100が実行する。この管理サーバ100はネットワーク120を介して種々の装置とデータ通信可能に結ばれており、切羽観察データや計測値データなどのデータの取得や処理結果の出力等の処理を実行可能である。この管理サーバ100が実行するトンネル管理方法にて管理対象となるのは、図1Aに例示するように、地山10に施工されるトンネル20となる。
【0019】
トンネル20の施工がなされる地山10は、図1Bに示すように種々の性状を有する堆積物が積層し、所定標高の地層を形成している。このような地山10に関しては、トンネル施工前にコンサルタント等が探査を行い、図1Bの如き地質図や各種の地形情報(GISデータ:Geographic Information System data)のデータが得られている。また、トンネル20の設計図、施工図の各データも予めトンネル施工企業などで用意されている。これら地質図や地形情報のデータ、設計図、施工図のデータは、施工企業等のユーザが入力部105を介して管理サーバ100の記憶部101に格納しておくものとする。
【0020】
なお、本実施形態において管理対象となるトンネル20に関しては、図1Cに示すように、トンネル軸線22を所定間隔で区分した要素23が設定される。この要素23に関する情報は、後述する要素情報テーブル125に格納されている。要素23は、トンネル20のうち、ユーザが、各種のデータ(地形図のデータ、切羽観察データ、各種の計測値データ等)を参照したい所望位置を管理サーバ100上で指定する際の指定対象となる。こうした処理内容の詳細については後述する。
【0021】
上述の地山10に対する掘削作業が開始されると、掘削作業で生じた切羽面21の観察業務が現場担当者により行われる。この切羽観察の手法としては、現場担当者が、切羽面21の状態、ハンマによる割れ方、風化変質、割れ目間隔、割れ目形態、割れ目状態、及び湧水等の観察や該当箇所の撮影を行い、この観察結果や該当箇所の撮影画像を情報処理端末200に保存し、所定の評価基準に基づき切羽面21の健全度を評価するものとなる。或いは、担当者が上述の観察結果を紙の記入表に記入し、これをあらためて情報処理端末200(ないし管理サーバ100の入力部105)に入力するとしてもよい。
【0022】
また、地山10における掘削進行に伴って、地山10の岩塊がトンネル壁面の吹付けコンクリートやトンネル躯体等を押圧し、ひいてはトンネル壁面に打設したロックボルトの軸力や鋼製支保へ作用する応力が増大する。そこで、施工中のトンネル20においては、内空変位計測、ロックボルト軸力計測、鋼製支保工応力計測、吹付けコンクリート応力計測、地中変位計測などの各種計測が所定のセンサーシステム300にて実施されており、この計測値が、トンネル管理方法における処理対象のデータとして管理サーバ100にて取得されているものとする。
【0023】
上述の切羽観察のデータについては切羽観察を行う現場担当者の情報処理端末200から、また、各種計測値のデータについては計測を実行しているセンサーシステム300から、いずれもネットワーク120を介して管理サーバ100が、一定期間毎或いはデータが送られてくる度に取得するとしてよい。或いは、ユーザが入力部105を介して管理サーバ100の記憶部101に格納するとしてもよい。
【0024】
従って上述の情報処理端末200、センサーシステム300は、いずれも通信インターフェイスを具備しており、一定時間毎またはデータ発生毎のデータ送信をネットワーク120を介して管理サーバ100に行うものである。屋外の、しかも山岳地帯などでの通信を行う場合、ケーブル回線よりも無線による通信回線を採用したほうが、急峻な地形や風雨等の条件に対応して通信を確立しやすい。よって、ネットワーク120は無線中継器で構成された無線ネットワークであると好適である(勿論、無線ではなく有線回線に対応したものであってもよい)。
【0025】
続いて、管理サーバ100のハードウェア構成について説明する。図2は、本実施形態における管理サーバ100のハードウェア構成例を示す図である。管理サーバ100は、ハードディスクドライブなど不揮発性の記憶部101、RAMなどの不揮発性の記憶手段であるメモリ103、記憶部101に保持しているプログラム102をメモリ103に読み出して実行するCPUなどの演算部104、キーボードやマウスといった入力部105、ディスプレイやスピーカー、プリンタ等の出力部106、および、NIC(Network Interface Card)やモデム、携帯電話モジュールなど、他装置と通信する通信部107を備えている。管理サーバ100が本実施形態のトンネル管理方法の実行に必要な機能は、演算部104がプログラム102を実行することで実装される機能と言える。なお、情報処理端末200についても管理サーバ100と同様の一般的なコンピュータ装置としてのハードウェアを備えるものとする。
【0026】
上述の記憶部101には、プログラム102の他に、管理対象となる上述のトンネル20におけるトンネル軸線22の形状と当該トンネル軸線22が所定間隔で区分された各要素23の位置範囲情報とを対応付けた要素情報テーブル125を格納している。また、記憶部101には、このほかにも、処理対象となるデータとして、切羽観察データ126、計測値データ127(内空変位計測、ロックボルト軸力計測、鋼製支保工応力計測、吹付けコンクリート応力計測、地中変位計測など)が記憶部101に格納されている。記憶部101に格納されたこれらデータの具体例については後述する。
【0027】
続いて、管理サーバ100の演算部104がプログラム102により実現する処理について説明する。管理サーバ100は、トンネルに関する各種情報とその発生位置情報を含むデータを、入力部105、或いは、通信部107を介して情報処理端末200ないしセンサーシステム300から受け付け、各データが示す発生位置情報を、記憶部101の要素情報テーブル125における各要素23の位置範囲情報に照合し、発生位置が位置範囲に含まれて該当データを関連付けるべき要素23を特定し、当該特定した要素23に該当データを関連付けて記憶部101に格納する機能を備えている。
【0028】
また、管理サーバ100は、ユーザによるデータ表示要求を入力部105で受け付け、当該データ表示要求が示すトンネル軸線22上の指定位置情報に応じた要素23を、記憶部101の要素情報テーブル125にて特定し、該当要素23に関連付けられたデータを読み出して出力部106に表示する機能を備えている。
【0029】
なお、管理サーバ100は、上述のデータ表示要求に応じてデータを表示する際、該当要素23に関連付けられたデータのうち切羽観察データ126を記憶部101より抽出し、出力部106において、切羽観察データ126に応じた切羽表示上に、該当要素23に関連付けられた計測値データ127など他の各データを表示する機能を更に備えている。
【0030】
また、管理サーバ100は、上述の他の各データに予め付与されている、データ間の階層関係の情報に基づいて、切羽観察データ126に応じた切羽表示上に、他の各データを階層表示する機能を備えているとすれば好適である。階層関係の情報としては、計測値データ127を構成する各データの概念上の包含関係に応じた、上位下位を示すフラグなどが想定できる。例えば、「項目A」に関する計測値データとして、「項目a」〜「項目c」の3種の計測値データが存在する場合、「項目A」に関する計測値データには、階層関係上の上位フラグが付与されており、「項目a」〜「項目c」の計測値データには、「項目A」と比べて階層関係上の下位フラグが付与されている。或いは、情報処理端末200ないしセンサーシステム300から受け付けたデータが、データ項目毎およびデータ発生位置毎に計測値データを格納したフォルダ構造をなしている場合、管理サーバ100は、例えば、データ項目のフォルダに、該当データ項目に関してデータ発生位置毎に計測値データを格納した各フォルダを入れ子構造で格納し、そうした各データ項目のフォルダを切羽観察データ126に応じた切羽表示上に表示するとしてもよい。
【0031】
また、管理サーバ100は、トンネル軸線22を区分する所定間隔のユーザ指示を入力部105、ないし情報処理端末200から受け付け、当該受け付けた所定間隔で、要素情報テーブル125が示すトンネル20におけるトンネル軸線22を区分して要素23を特定する機能を備えているとしてもよい。この場合、管理サーバ100は、要素情報テーブル125におけるトンネル軸線22の形状情報(トンネル軸線22の座標情報、或いはトンネル軸線22を示す曲線の数式)が示すトンネル軸線22の線分を、上述のユーザ指定の所定間隔の線分長毎に区分して要素23を決定する。また、管理サーバ100は、決定した各要素23に対応したトンネル軸線22の形状情報から、トンネル軸線22の座標情報を抽出し、これを該当要素23の位置範囲情報と特定する。管理サーバ100は、ユーザ指定の所定間隔に応じて特定した各要素23の位置範囲情報を記憶部101の要素情報テーブル125に格納することとなる。
【0032】
なお、管理サーバ100は、入力部105、或いは情報処理端末200やセンサーシステム300からデータを得た際に、トンネル軸線22上の或る位置範囲(記憶部101にてデフォルトで仮定してある座標範囲)に含まれるデータ数が所定数以上となるよう、デフォルトの位置範囲をトンネル軸線22上でトンネル進行方向前後にずらす或いは伸縮するなどして特定する機能を備えているとしてもよい。この場合、管理サーバ100は、各データの発生位置を示す座標と、位置範囲を示す座標範囲とを照合し、該当座標範囲中に座標が含まれるデータの数をカウントし、このカウント値が上述の所定数に達するまで、位置範囲(を示す座標範囲)をトンネル軸線22上でトンネル進行方向前後にずらす或いは伸縮することとなる。管理サーバ100は、こうして特定した位置範囲に対応するトンネル軸線22の区分を要素23とし、当該要素23に位置範囲情報を対応付けて記憶部101の要素情報テーブル125に格納するとしてもよい。これによれば、施工進度等の施工条件に対応する形で、データ管理の単位となる要素23の範囲が設定されることとなる。また、施工条件の変化に応じて要素23の範囲が自動修正される効果も奏する。
【0033】
ここで、管理サーバ100が演算部104によりプログラム102を実行することで、必要な機能を実装する例をあげたが、必要な機能を実現する電子回路等を管理サーバ100が備えていて、同様の処理を実行するとしても勿論問題ない。
【0034】
−−−データの例−−−
次に、本実施形態において処理するデータの具体例について説明する。図3は本実施形態における要素情報テーブル125の例を示す図である。要素情報テーブル125は、管理対象となるトンネル20におけるトンネル軸線22の形状を示す座標群ないし数式と、当該トンネル軸線22が所定間隔で区分された各要素23(図1C参照)の位置範囲情報(例:要素23に対応するトンネル軸線22の両端座標)とを対応付けたテーブルである。
【0035】
また、図4は、本実施形態における切羽観察データ126の例を示す図である。切羽観察データ126は、トンネル軸線22上での切羽の位置座標、該当切羽の状態、ハンマによる割れ方、風化変質、割れ目間隔、割れ目形態、割れ目状態、及び湧水等の観察結果と、観察箇所に対する撮影画像とが対応付けて格納されたテーブルである。
【0036】
また、図5は、本実施形態における計測値データ127の例を示す図である。計測値データ127は、トンネル20に関してセンサーシステム300が実行した、内空変位計測、ロックボルト軸力計測、鋼製支保工応力計測、吹付けコンクリート応力計測、地中変位計測の各計測値データを、計測位置すなわち計測値データの発生位置と対応付けて格納したテーブルである。
【0037】
−−−処理フローの例−−−
次に、本実施形態のトンネル管理方法の処理フローについて説明する。図6は、本実施形態のトンネル管理方法の処理フロー例1を示す図である。管理サーバ100は、トンネル20に関する処理対象のデータを、入力部105、或いは、通信部107を介して情報処理端末200ないしセンサーシステム300から受け付ける(s100)。ここで受け付けるデータとしては、上述したように、地山10の地質図や地形情報のデータ、および、切羽観察データ、計測値データがあげられる。これらのデータは、それぞれの発生した位置、或いは取得された位置を示す座標値を付帯しているものとする。
【0038】
続いて管理サーバ100は、上述のステップs100で得たデータが示す発生位置情報たる座標値を、記憶部101の要素情報テーブル125における各要素23の位置範囲情報に照合し、発生位置の座標値が位置範囲情報たる所定の座標範囲に含まれており、該当データを関連付けるべきである要素23を特定する(s101)。例えば、或るデータが示す発生位置情報たる座標値が「100、100」である場合、これを、要素情報テーブル125における各要素23の位置範囲情報に照合し、発生位置の座標値「100、100」を座標範囲「50、50」〜「150、150」に含んでいる或る要素23を、該当データを関連付けるべき要素23として特定する。
【0039】
管理サーバ100は、ステップs101で特定した要素23に、該当データを関連付けて記憶部101に格納する(s102)。この格納処理は、要素情報テーブル125における該当要素23のレコードに、該当データを格納する処理としてもよい。
【0040】
その後、管理サーバ100は、ユーザによるデータ表示要求を、入力部105で受け付けるか、或いは、ネットワーク120を介した情報処理端末200など所定のユーザ端末から受け付け(s103)、当該データ表示要求が示すトンネル軸線22上の或る座標値に応じた要素23を、記憶部101の要素情報テーブル125にて特定する(s104)。このデータ表示要求を受け付ける際、管理サーバ100は、記憶部101の要素情報テーブル125から、トンネル軸線22の形状のデータを読み出し、これを出力部106において、トンネル軸線22上の所望位置の指定受け付け可能に表示し(例:クリッカブルに表示)、入力部105ないし所定端末を介し、トンネル軸線22上の或る座標値に関するデータ表示要求をユーザから受け付けるとすれば好適である。
【0041】
トンネル施工中に切羽や支保等の状況確認を行う場合や、トンネル竣工後に生じた問題箇所について確認を行う場合などに、ユーザは入力部105や情報処理端末200を用いて管理サーバ100にアクセスし、確認したい所望位置について、該当トンネル20に関する上述の軸線表示に沿って軸線22上の各位置を指定し、データ表示要求を順次行うこととなる。
【0042】
ステップs104にてデータ表示要求に応じた要素23を特定した管理サーバ100は、該当要素23に関連付けられたデータを記憶部101から読み出し、これを出力部106に表示する(s105)。この時、管理サーバ100は、特定した要素23に関連付けられたデータのうち切羽観察データ126を記憶部101より抽出し、この切羽観察データ126が含む切羽面の撮影画像73を主たる表示物とし、これに切羽状態や風化変質、湧水等の切羽観察結果のデータ74を加え、出力部106にて切羽表示70を行う。管理サーバ100は、この切羽表示70上に、該当要素23に関連付けられた計測値データ127など他の各データ71を表示する(図7参照)。該当要素23に関連付けされる切羽観察データ126が複数ある場合、例えば図7で例示するように、複数の切羽観察データ126の存在をユーザが認識できるよう、切羽観察結果のデータ74や切羽面の撮影画像73らをデータ毎に重ねて表示する。同様に、該当要素23に関連付けされる計測値データ127のセット(1つの発生位置に対応付けされた計測値データのセット)が複数ある場合、例えば図7で例示するように、複数の計測値データ127の存在をユーザが認識できるよう重ねて表示する。ユーザは、必要に応じて、最前面に表示されている撮影画像73や切羽観察結果のデータ74、計測値データ127の下に重ねられている、他の撮影画像73や切羽観察結果データ74や計測値データ127をクリックし、管理サーバ100に対して、最上面での表示対象の変更を指示するものとできる。管理サーバ100では、この指示を受けた撮影画像73や切羽観察結果のデータ74、計測値データ127を最前面に表示させる。
【0043】
こうして切羽表示70上に表示される計測値データ127は、各データに予め付与されているデータ間の階層関係の情報に基づいて、図8に例示するように、各項目がツリー形式で連関するツリー構造80、或いは、内部に計測値データをそれぞれ格納したフォルダ81、などの階層表示がなされるとすれば好適である。
【0044】
図8に示したツリー構造80は、「切羽観察結果」なるアイコンを最上位とし、これの直下に「切羽位置」が、そして「切羽位置」の下位に「切羽状態」、「割れ方」、「風化変質」等のアイコンが並列して従属したツリー構造となっている。また、「切羽状態」、「割れ方」、「風化変質」の下位には、それぞれの観察結果の値が従属しており、図8の例では、「切羽状態」のアイコンをユーザがクリックし、その値として「自立するが多少肌落ち・・」なる表示がなされている。該当要素23に関連付いた切羽観察データ126が複数ある場合、図7の場合と同様に、複数の切羽観察データ126の存在をユーザが認識できるよう、切羽観察結果のデータ74の「切羽位置」に関するアイコンや、切羽面の撮影画像73らをデータ毎に重ねて表示し、ユーザによる表示対象の入れ替えを受け付けるとすればよい。
【0045】
また、フォルダ81は、その内部に、各発生位置に対応付けされた計測値データのセットを保持する各フォルダを更に格納している。ユーザは参照したい発生位置に対応したフォルダをクリックして開き、計測値データを参照出来る。
【0046】
なお、トンネル軸線形状の表示や、切羽観察データ125に基づく出力部106での切羽表示70の出力に際し、管理サーバ100は、トンネル軸線22を示す座標値や、切羽観察データ125が示す切羽形状やその位置の座標値(いずれも三次元座標系に対応したもの)を、三次元CADプログラムに適用し、トンネル軸線22や切羽面21の三次元表示を行うとすれば好適である。
【0047】
また、切羽表示70と併せて表示される計測値データのうち、例えば、ロックボルト軸力計測、鋼製支保工応力計測、吹付けコンクリート応力計測の計測値データについては、管理サーバ100が、ロックボルト、鋼製支保工、吹付けコンクリートの各仕様や施工データといった、いわゆるBIM(Building Information Modeling:ビルディング・インフォメーション・モデリング)用のデータを、予め入力部105を介してユーザから取得しておくと良い。この場合、管理サーバ100は、これらのBIM用データ72を該当要素23の計測値データと共に出力部106で表示する。こうした処理を更に実行することで、切羽変化やそれに対応した支保構造等の変化、地山特徴変化等が視覚化され、ユーザとしては、施工上の問題或いは事故発生原因となった箇所の特定が更に迅速化出来る。
【0048】
なお、上述してきた要素23の範囲、すなわちトンネル軸線22を区分する間隔についてユーザから指示を受け、管理サーバ100が要素23を特定する処理を行うとしてもよい。図9は、本実施形態のトンネル管理方法の処理フロー例2を示す図である。
【0049】
この場合、管理サーバ100は、トンネル軸線22を区分する間隔に関するユーザ指示を入力部105、ないし情報処理端末200から受け付ける(s200)。管理サーバ100は、ステップs200で受け付けた間隔、例えば、トンネル軸線22の所定の線分長で、要素情報テーブル125におけるトンネル軸線22の形状情報(トンネル軸線22の座標情報、或いはトンネル軸線22を示す曲線の数式)が示すトンネル軸線22の線分を区分し、要素23を決定する(s201)。
【0050】
管理サーバ100は、決定した各要素23(上述の線分長に対応したトンネル軸線22の一部)に対応したトンネル軸線22の形状情報(要素情報テーブル125が保持)から、トンネル軸線22の座標情報を抽出して、これを該当要素23の位置範囲情報と特定し(s202)、記憶部101の要素情報テーブル125に格納する(s203)。
【0051】
なお、上述したようにユーザが指示した間隔に応じて要素23を特定するのではなく、管理サーバ100において、トンネル軸線22上の或る位置範囲(記憶部101にてデフォルトで仮定してある座標範囲)に含まれるデータ数が所定数以上となるよう、デフォルトの位置範囲をトンネル軸線22上でトンネル進行方向前後にずらす或いは伸縮するなどして特定するとしてもよい。この場合、管理サーバ100は、各データの発生位置を示す座標と、位置範囲を示す座標範囲とを照合し、該当座標範囲中に座標が含まれるデータの数をカウントし、このカウント値が上述の所定数に達するまで、位置範囲(を示す座標範囲)をトンネル軸線22上でトンネル進行方向前後にずらす或いは伸縮することとなる。管理サーバ100は、こうして特定した位置範囲に対応するトンネル軸線22の区分を要素23とし、当該要素23に位置範囲情報を対応付けて記憶部101の要素情報テーブル125に格納するとしてもよい。これによれば、変化する可能性のある施工進度等の施工条件に対応する形で、データ管理の単位となる要素の範囲が設定されることとなる。また、施工条件の変化に応じて要素の範囲が自動修正される効果も奏する。
【0052】
以上、本実施形態によれば、トンネル施工に関する種々のデータを統合し、トンネル管理業務に際し効率的で迅速なデータ利用が可能となる。
【0053】
以上、本発明の実施の形態について、その実施の形態に基づき具体的に説明したが、これに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0054】
10 地山
20 トンネル
21 切羽面
22 トンネル軸線
23 要素
100 管理サーバ(=トンネル管理システム)
101 記憶部
102 プログラム
103 メモリ
104 演算部
105 入力部
106 出力部
107 通信部
120 ネットワーク
125 要素情報テーブル
126 切羽観察データ
127 計測値データ
200 情報処理端末
300 センサーシステム
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9