特許第6343449号(P6343449)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6343449
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】新規な導電層一体型FPC
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20180604BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
   H05K1/02 P
   H05K9/00 R
【請求項の数】4
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2013-524665(P2013-524665)
(86)(22)【出願日】2012年7月10日
(86)【国際出願番号】JP2012067600
(87)【国際公開番号】WO2013011873
(87)【国際公開日】20130124
【審査請求日】2015年5月25日
【審判番号】不服2016-19082(P2016-19082/J1)
【審判請求日】2016年12月20日
(31)【優先権主張番号】特願2011-159363(P2011-159363)
(32)【優先日】2011年7月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】木戸 雅善
(72)【発明者】
【氏名】関藤 由英
【合議体】
【審判長】 冨岡 和人
【審判官】 滝谷 亮一
【審判官】 中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−294918(JP,A)
【文献】 特開2003−55583(JP,A)
【文献】 特開2011−71397(JP,A)
【文献】 特開2002−12841(JP,A)
【文献】 特開2003−238910(JP,A)
【文献】 特開2008−297440(JP,A)
【文献】 特開平9−255741(JP,A)
【文献】 特開2010−254760(JP,A)
【文献】 特開2009−292897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)電磁波シールド機能を有する導電層、(B)感光性樹脂組成物層、(C)配線パターン付きフィルムの順で構成された導電層一体型フレキシブルプリント基板であって、該(B)感光性樹脂組成物層が少なくとも(a)カルボキシル基含有樹脂、(b)光重合開始剤、(c)熱硬化性樹脂を含有し、
上記(c)熱硬化性樹脂が少なくとも一つのエポキシ基を有するものであり、
上記(c)熱硬化性樹脂に含まれるエポキシ基のmol数が(a)カルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基のmol数に対して1.8倍から2.7倍になる、アルカリ水溶液で現像可能な感光性樹脂組成物から得られることを特徴とする導電層一体型フレキシブルプリント基板。
【請求項2】
上記(B)感光性樹脂組成物層が、(d)リン、アルミニウム及びマグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する微粒子を含有していること特徴とする請求項1に記載の導電層一体型フレキシブルプリント基板。
【請求項3】
上記(d)リン、アルミニウム及びマグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する微粒子が、ホスフィン酸塩であることを特徴とする請求項2に記載の導電層一体型フレキシブルプリント基板。
【請求項4】
上記(A)電磁波シールド機能を有する導電層が、(e)銀、銅、アルミニウム及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電層一体型フレキシブルプリント基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は微細配線形成が可能であり、かつ繰り返し折り曲げに耐え得る柔軟性、難燃性、電気絶縁信頼性に優れ、反りが小さく、更に、電磁波シールド機能を有する導電層と感光性樹脂組成物層との密着性に優れることを特徴とする導電層一体型FPCに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、小型化・軽量化が急速に進む携帯電話、ビデオカメラ、ノートパソコンなどの電子機器において、柔軟で可撓性のあるフレキシブルプリント基板(以下、FPCと記載)は必要不可欠となっている。一方、電子回路の狭ピッチ化・高周波化に伴い、そこから発生する電磁波ノイズに対する対策がますます重要になってきている。そこで、FPCに、電子回路から発生する電磁波ノイズを遮蔽もしくは吸収する電磁波シールド材を構成させる取り組みが従来より行われている。電磁波シールド機能を有するFPCとしては、FPCの絶縁層上に導電性接着剤層や金属薄膜層等を有するシールド層を貼り合せると共に、FPCのグランドラインに金属薄膜層を電気的に接続したものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本国公開特許公報「特開2009−290103号公報(2009年12月10日公開)」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、電磁波シールド材に着目し、繰り返し屈曲・摺動が行われた場合でも、長期間の電磁波シールド効果を維持することを課題としている。しかし、電磁波シールド材は、電磁波シールド材一体型FPCを構成する要素ではあるが、電磁波シールド材の特性だけを向上させたとしても、電磁波シールド材一体型FPCの所望の特性を満足することは出来ない。例えば、電磁波シールド材とFPCの絶縁膜との密着性を向上させなければ、電磁波シールド材一体型FPCとして良好な特性を示さない。
【0005】
そこで、本発明者らは、FPCの絶縁膜に着目し、電磁波シールド材との密着性及び電磁波シールド材一体型FPCの柔軟性、難燃性、電気絶縁信頼性、反りに関して鋭意研究を行ってきた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、(A)電磁波シールド機能を有する導電層、(B)感光性樹脂組成物層、(C)配線パターン付きフィルムの順で構成された導電層一体型FPCであって、該(B)が少なくとも(a)カルボキシル基含有樹脂、(b)光重合開始剤、(c)熱硬化性樹脂を含有している感光性樹脂組成物から得られることを特徴とする導電層一体型FPCの構成をとることにより、微細配線形成が可能であり、かつ繰り返し折り曲げに耐え得る柔軟性、難燃性、電気絶縁信頼性に優れ、反りが小さく、更に、電磁波シールド機能を有する導電層と感光性樹脂組成物層との密着性に優れることを特徴とする導電層一体型FPCが達成可能であることを見出した。
【0007】
すなわち、本願発明にかかる導電層一体型FPCは、(A)電磁波シールド機能を有する導電層、(B)感光性樹脂組成物層、(C)配線パターン付きフィルムの順で構成された導電層一体型FPCであって、該(B)が少なくとも(a)カルボキシル基含有樹脂、(b)光重合開始剤、(c)熱硬化性樹脂を含有している感光性樹脂組成物から得られることを特徴としている。
【0008】
また、(B)感光性樹脂組成物層が、(d)リン、アルミニウム及びマグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する微粒子を含有していることが好ましい。
【0009】
更に、(c)熱硬化性樹脂が少なくとも一つのエポキシ基を有しており、(c)熱硬化性樹脂に含まれるエポキシ基のmol数が(a)カルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基のmol数に対して1.0倍から3.0倍になることを特徴とする感光性樹脂組成物から得られることが好ましい。
【0010】
また、(A)電磁波シールド機能を有する導電層が、(e)銀、銅、アルミニウム及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含有していることがより好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本願発明は以上のように、(A)電磁波シールド機能を有する導電層、(B)感光性樹脂組成物層、(C)配線パターン付きフィルムの順で構成された導電層一体型FPCであって、該(B)が少なくとも(a)カルボキシル基含有樹脂、(b)光重合開始剤、(c)熱硬化性樹脂を含有している感光性樹脂組成物から得られるために、微細配線形成が可能であり、かつ繰り返し折り曲げに耐え得る柔軟性、難燃性、電気絶縁信頼性に優れ、反りが小さく、更に、電磁波シールド機能を有する導電層と感光性樹脂組成物層との密着性に優れる導電層一体型FPCとしての効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】導電層一体型フレキシブルプリント基板(導電層一体型FPC)の構成図である。
図2】KEC法による電磁波シールド性評価図である。
図3】フィルムの反り量を測定している模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下で本願発明について詳細に説明する。本明細書中に記載された学術文献及び特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A〜B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を、それぞれ意味する。
【0014】
本願発明の導電層一体型FPCは、(A)電磁波シールド機能を有する導電層、(B)感光性樹脂組成物層、(C)配線パターン付きフィルムの順で構成された導電層一体型FPCであって、該(B)が少なくとも(a)カルボキシル基含有樹脂、(b)光重合開始剤、(c)熱硬化性樹脂を含有している感光性樹脂組成物から得られる導電層一体型FPCである。従来の電磁波シールドフレキシブルプリント基板は、電磁波シールド材に着目し、耐摩耗性・耐ブロッキング性更には、耐屈曲性に着目し改善を行ってきた。しかし、電子機器の小型化・軽量化に伴い、FPCの微細配線化・高密度化が必要とされている。したがって、微細配線化・高密度化の機能を有しかつ電磁波シールド機能を有したFPCが求められている。
【0015】
ところが、絶縁層の上に電磁波シールド機能を有する導電層を導入することにより、新たな問題点が生じることを本発明者らは見出した。一般的には非感光性の絶縁層(カバーレイフィルム)に比べて、感光性の絶縁層は感光性および現像性などの各種特性が必要とされるが、その特性を達成するために電気絶縁性との両立を図る必要がある。この感光性の絶縁層の上にさらに電磁波シールド機能を有する導電層を導入することにより、導入前に比べて非感光性のカバーレイフィルムでは確認されなかった厚み方向の電気絶縁性低下という新たな課題が生じた。本願発明ではこの新たな課題を(B)感光性樹脂組成物層が少なくとも(a)カルボキシル基含有樹脂、(b)光重合開始剤、(c)熱硬化性樹脂を含有している感光性樹脂組成物から得られることにより、解決している。更には、(c)熱硬化性樹脂に含まれるエポキシ基のmol数がカルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基のmol数に対して1.0倍から3.0倍になるように感光性樹脂組成物を設計する事により、電磁波シールド機能を有する導電層との密着性及び厚み方向の電気絶縁性が更に良好となることを見出した。これら知見により、本願発明の導電層一体型FPCが、微細配線形成が可能であり、かつ繰り返し折り曲げに耐え得る柔軟性、難燃性、電気絶縁信頼性に優れ、反りが小さく、更に、電磁波シールド機能を有する導電層と感光性樹脂組成物層との密着性に優れていると推察している。
【0016】
以下、本願発明の導電層一体型FPCについて説明する。また、(A)電磁波シールド機能を有する導電層、(B)感光性樹脂組成物層、(C)配線パターン付きフィルムについても説明する。
【0017】
[導電層一体型FPC]
本願発明の導電層一体型FPCの構成図を図1に示すが、これに限定されるものではない。先ず、配線パターン(2)およびベースフィルム(3)からなる(C)配線パターン付きフィルム(1)上に(B)感光性樹脂層(4)を形成し、FPC(5)を得る。続いて、(A)電磁波シールド機能を有する導電層(6)を(B)感光性樹脂層(4)上に形成する事で本願発明の導電層一体型FPC(7)を得ることができる。
【0018】
[(A)電磁波シールド機能を有する導電層]
本願発明における(A)電磁波シールド機能を有する導電層とは、10dB以上の電磁波遮断効果を示し、導電性を示す層である。一般的に、導電層の導電率が高いほど、電磁波シールド効果が高い。従って、導電率の高い金属、例えば、(e)銀、銅、アルミニウム及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含有していることがより好ましい。
【0019】
ここで、本願発明における(A)電磁波シールド機能を有する導電層の電磁波シールド効果の評価方法としては、特に限定されないが、例えば、KEC法が挙げられる。図2にKEC法による電磁波シールド性評価図を示す。KEC法とは、受信用アンテナ(9)と送信用アンテナ(10)の治具に分かれており、その間に測定試料(8)を入れ、受信側アンテナでどれだけ信号が減衰したかを評価する方法である。ここで、電磁波シールド効果は下記式1で求めることができる。
SE(シールド効果)=20log10Eo/Ex[dB](式1)
シールド材が無い場合の空間の電界強度:Eo
シールド材が有る場合の空間の電界強度:Ex
本願発明における(A)電磁波シールド機能を有する導電層は、特に限定されないが、例えば、(A−1)フィルムタイプ、(A−2)ペーストタイプ、又は(A−3)金属薄膜タイプなどが挙げられ、特に、フィルムタイプは導電層一体型FPCの柔軟性を損なうことなく、シールド特性を付与できるため好ましい。
【0020】
(A−1)フィルムタイプ
本願発明におけるフィルムタイプの電磁波シールド機能を有する導電層は、特に限定されないが、例えば、導電性粒子を樹脂に分散させたフィルムとしては、トウヨウケム株式会社社製の商品名TSS100−18、TSS100−22等が挙げられる。また、導電性接着剤/金属薄膜/絶縁層のように多層化した多層フィルムとしては、タツタ電線株式会社の商品名SF−PC5000、SF−PC5100、SF−PC5500、SF−PC5600、SF−PC5900、SF−PC6000等が挙げられる。
【0021】
本願発明におけるフィルムタイプの電磁波シールド機能を有する導電層を(B)感光性樹脂組成物層上に形成する方法は、特に限定されないが、例えば、熱プレスを用いた加圧・加熱形成法が挙げられる。熱プレスでの加圧・加熱成形条件は、特に限定されないが、例えば、熱プレス温度100〜180℃、熱プレス圧力0.5〜5.0kgf/cm、熱プレス時間10〜90分で加熱・加圧成形することにより電磁波シールド機能を有する導電層を(B)感光性樹脂組成物層上に形成することができる。上記範囲内に加圧・加熱成形条件を制御することが、(B)感光性樹脂組成物層との密着性を発現できるため好ましい。
【0022】
(A−2)ペーストタイプ
本願発明におけるペーストタイプの電磁波シールド機能を有する導電層は、特に限定されないが、例えば、銀粒子を樹脂に分散させたペーストとしては、トウヨウケム株式会社製の商品名RA FS039、藤倉化成株式会社製の商品名XA−9015が挙げられる。また、ニッケル粒子を樹脂に分散させたペーストとしては、藤倉化成株式会社製の商品名FN−101、ペルノックス株式会社製の商品名K−3435G等が挙げられる。
【0023】
本願発明におけるペーストタイプの電磁波シールド機能を有する導電層を(B)感光性樹脂組成物層上に形成する方法は、特に限定されないが、例えば、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、ロータリースクリーン印刷等、従来公知の印刷方法を用いて印刷することができる。上記印刷方法によって、塗膜を(B)感光性樹脂組成物層上に形成後、熱風循環式オーブンを用いて加熱温度25℃〜150℃、加熱時間10分〜180分加熱することにより電磁波シールド機能を有する導電層を絶縁膜上に形成することができる。上記範囲内に印刷・加熱条件を制御することが、導電性を発現できまた、(B)感光性樹脂組成物層との密着性を発現できるため好ましい。
【0024】
(A−3)金属薄膜タイプ
本願発明における金属薄膜タイプの電磁波シールド機能を有する導電層とは、(B)感光性樹脂組成物層上に直接金属薄膜を形成する事により得られる導電層である。本願発明における金属薄膜タイプの電磁波シールド機能を有する導電層を(B)感光性樹脂組成物層上に形成する方法は、特に限定されないが、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的気相成長法(PVD)、化学的気相成長法(CVD)又は、無電解めっき等の液相成長法が挙げられる。特に、量産性を考慮すれば真空蒸着が望ましく、安価で安定した金属薄膜を得ることができるため好ましい。本願発明における真空蒸着法とは、真空条件下で金属を加熱し、気化あるいは昇華させ、目的となる基材表面に金属薄膜を形成する方法である。蒸着金属としては、特に限定されないが、例えば、銀、銅、アルミニウム、金等が挙げられる。
【0025】
[(B)感光性樹脂組成物層]
本願発明における(B)感光性樹脂組成物層は、少なくとも(a)カルボキシル基含有樹脂、(b)光重合開始剤、(c)熱硬化性樹脂を含む感光性樹脂組成物から得られる材料であれば限定されない。また、本願発明における(B)感光性樹脂組成物層は、感光性樹脂組成物を露光・現像する事により、微細配線加工・高密度加工が可能であり、かつ電磁波シールド機能を有する導電層加工後も電磁波シールド機能を有する導電層との密着性を保持し、更に厚み方向の電気絶縁性を保持している。(B)感光性樹脂層の厚さは5〜100μmであることが好ましい。本願発明の(B)感光性樹脂組成物層の厚さは、任意の方法により測定することができるが、例えば、JIS K 5400 3.5に準拠した方法で測定することができる。上記範囲内に厚さを制御することにより、(B)感光性樹脂組成物層の柔軟性、電気絶縁信頼性が優れるため好ましい。厚さが5μm以下の場合は(B)感光性樹脂組成物層の電気絶縁信頼性が低下する場合があり、厚さが100μm以上の場合は(B)感光性樹脂組成物層の柔軟性が低下する場合がある。以下、(a)カルボキシル基含有樹脂、(b)光重合開始剤、(c)熱硬化性樹脂について説明する。
【0026】
[(a)カルボキシル基含有樹脂]
本願発明の(a)カルボキシル基含有樹脂は、(B)感光性樹脂組成物層の感光性樹脂組成物を構成する要素の一つである。本願発明にかかる(a)カルボキシル基含有樹脂は、分子内に少なくとも1つのカルボキシル基を有している材料であれば限定されない。更には、重量平均分子量が、ポリエチレングリコール換算で、3,000以上300,000以下の樹脂であることが好ましい。ここで、重平均分子量の測定方法としては、例えば、以下の方法で測定することができる。
使用装置:東ソーHLC−8220GPC相当品
カラム :東ソー TSK gel Super AWM−H (6.0mmI.D×15cm)×2本
ガードカラム:東ソー TSK guard column Super AW―H
溶離液:30mM LiBr+20mM HPO in DMF
流速:0.6mL/min
カラム温度:40℃
検出条件:RI:ポラリティ(+)、レスポンス(0.5sec)
試料濃度:約5mg/mL
標準品:PEG(ポリエチレングリコール)
上記範囲内に重量平均分子量を制御することにより、感光性樹脂組成物の現像性、(B)感光性樹脂組成物層の柔軟性、耐薬品性が優れるため好ましい。重量平均分子量が3,000以下の場合は、柔軟性や耐薬品性が低下する場合があり、重量平均分子量が300,000以上の場合は現像性が低下し、感光性樹脂組成物の粘度が高くなる場合がある。
【0027】
また、(a)カルボキシル基含有樹脂におけるカルボキシル基の含有量を示す指標である酸価は、例えば、JIS K5601−2−1で規定された方法で測定することができ、50〜200mgKOH/gとすることが好ましく、50〜150mgKOH/gとすることがより好ましい。酸価が50mgKOH/gより小さい場合では感光性樹脂組成物の現像性が低下する場合があり、200mgKOH/gより大きい場合では(B)感光性樹脂組成物層の吸湿性が高くなり電気絶縁信頼性が低下する場合がある。
【0028】
本願発明にかかる(a)カルボキシル基含有樹脂は、上記構成であれば特に限定されないが、例えば、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系共重合体、カルボキシル基含有ビニル系共重合体、酸変性ポリウレタン、酸変性ポリエステル、酸変性ポリカーボネート、酸変性ポリアミド、酸変性ポリイミド等が挙げられ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用できる。より好ましくは、少なくとも(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸アルキルエステルを共重合させたものが用いられる。このような構造とすることにより、感光性に優れ、得られる(B)感光性樹脂組成物層が優れた柔軟性、耐薬品性となるため好ましい。
【0029】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとは、(メタ)アクリル酸エステルのエステル鎖に炭素数1〜20のアルキル基を有する化合物であり、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ターシャリーブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用できる。これら(メタ)アクリル酸アルキルエステルの中でも、特に(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルを用いることが、(B)感光性樹脂組成物層の柔軟性と耐薬品性の観点から好ましい。
【0030】
上記、少なくとも(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸アルキルエステルを共重合させる反応は、例えば、ラジカル重合開始剤によりラジカルを発生させることにより進行させることができる。ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリルなどのアゾ系化合物、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどの有機過酸化物、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、過酸価水素等が挙げられ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用できる。
【0031】
上記、ラジカル重合開始剤の使用量は、使用するモノマー100重量部に対して0.001〜5重量部とすることが好ましく、0.01〜1重量部とすることがより好ましい。0.001重量部より少ない場合では反応が進行しにくく、5重量部より多い場合では、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸アルキルエステルを共重合させた樹脂の分子量が低下する場合がある。
【0032】
上記反応は、無溶媒で反応させることもできるが、反応を制御する為には、溶媒系で反応させることが望ましく、例えば溶媒としては、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどを挙げることができる。さらに必要に応じて、これらの有機極性溶媒とキシレンあるいはトルエンなどの芳香族炭化水素とを組み合わせて用いることもできる。
【0033】
更に、例えばメチルモノグライム(1,2-ジメトキシエタン)、メチルジグライム(ビス(2-メトキシエテル)エーテル)、メチルトリグライム(1,2-ビス(2-メトキシエトキシ)エタン)、メチルテトラグライム(ビス[2-(2-メトキシエトキシエチル)]エーテル)、エチルモノグライム(1,2-ジエトキシエタン)、エチルジグライム(ビス(2-エトキシエチル)エーテル)、ブチルジグライム(ビス(2-ブトキシエチル)エーテル)等の対称グリコールジエーテル類、メチルアセテート、エチルアセテート、イソプロピルアセテート、n―プロピルアセテート、ブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(別名、カルビトールアセテート、酢酸2-(2-ブトキシエトキシ)エチル))、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、1,3―ブチレングリコールジアセテート等のアセテート類や、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、トリピレングリコールn−プロピルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、1,3―ジオキソラン、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールものエチルエーテル等のエーテル類の溶剤を用いることもできる。中でも、副反応が生じにくいことから、対称グリコールジエーテル類を用いることが好ましい。
【0034】
反応の際に用いられる溶剤量は、反応溶液中の溶質重量濃度すなわち溶液濃度が5重量%以上90重量%以下となるような量とすることが好ましく、20重量%以上70重量%以下とすることがより好ましい。溶液濃度が5%より少ない場合では重合反応が起こりにくく反応速度が低下すると共に、所望の構造物質が得られない場合があり、また、溶液濃度が90重量%より多い場合では反応溶液が高粘度となり反応が不均一となる場合がある。
【0035】
上記反応温度は、20〜120℃とすることが好ましく、50〜100℃とすることがより好ましい。20℃より低い温度の場合では反応時間が長くなり過ぎ、120℃を超えると急激な反応の進行や副反応に伴う三次元架橋によるゲル化を招く恐れがある。反応時間は、バッチの規模、採用される反応条件により適宜選択することができる。
【0036】
[(b)光重合開始剤]
本願発明の(b)光重合開始剤とは、(B)感光性樹脂組成物層の感光性樹脂組成物を構成する要素の一つであり、UVなどのエネルギーによって活性化し、ラジカル重合性基含有樹脂の反応を開始・促進させる化合物である。本願発明の(b)成分としては、例えば、ミヒラ−ズケトン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’,4’’−トリス(ジメチルアミノ)トリフェニルメタン、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ジイミダゾール、アセトフェノン、ベンゾイン、2−メチルベンゾイン、ベンゾインメチルエ−テル、ベンゾインエチルエ−テル、ベンゾインイソプロピルエ−テル、ベンゾインイソブチルエ−テル、2−t−ブチルアントラキノン、1,2−ベンゾ−9,10−アントラキノン、メチルアントラキノン、チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジアセチルベンジル、ベンジルジメチルケタ−ル、ベンジルジエチルケタ−ル、2(2’−フリルエチリデン)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−S−トリアジン、2[2’(5’’−メチルフリル)エチリデン]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−S−トリアジン、2(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−S−トリアジン、2,6−ジ(p−アジドベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、4,4’−ジアジドカルコン、ジ(テトラアルキルアンモニウム)−4,4’−ジアジドスチルベン−2,2’−ジスルフォネ−ト、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−ケトン、ビス(n5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、ヨード二ウム,(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]−ヘキサフルオロフォスフェート(1−)、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2−エチルヘキシル−4−ジメチルアミノベンゾエート、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシオム)などが挙げられる。上記(b)光重合開始剤は適宜選択することが望ましく、1種以上を混合させて用いることが望ましい。
【0037】
本願発明にかかる(b)光重合開始剤は、(a)成分及び(c)成分の合計100重量部対して、0.1〜50重量部となるように配合されていることが好ましい。上記配合割合にすることで得られる感光性樹脂組成物の感光性が向上するので好ましい。(b)成分が上記範囲よりも少ない場合には、光照射時のラジカル重合性基の反応が起こりにくく、硬化が不十分となることが多い場合がある。また、(b)成分が上記範囲よりも多い場合には、光照射量の調整が難しくなり、過露光状態となる場合がある。そのため、光硬化反応を効率良く進めるためには上記範囲内に調整することが好ましい。
【0038】
[(c)熱硬化性樹脂]
本願発明の(c)熱硬化性樹脂は、(B)感光性樹脂組成物層の感光性樹脂組成物を構成する要素の一つであり、加熱により架橋構造を形成し、熱硬化剤として機能する化合物である。本願発明にかかる(c)熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、ビスアリルナジイミド樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ヒドロシリル硬化樹脂、アリル硬化樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂;高分子鎖の側鎖または末端にアリル基、ビニル基、アルコキシシリル基、ヒドロシリル基、等の反応性基を有する側鎖反応性基型熱硬化性高分子等を用いることができる。上記熱硬化性樹脂は、1種又は2種以上を適宜組み合わせて用いればよい。(c)成分としては、この中でも、エポキシ樹脂を用いることがより好ましい。エポキシ樹脂を含有することにより、(B)感光性樹脂組成物層に対して耐熱性を付与できると共に、配線パターン付きフィルムに対する接着性、更には電磁波シールド機能を有する導電層との密着性を付与することができるため好ましい。上記エポキシ樹脂とは、分子内に少なくとも1個のエポキシ基を含む化合物であり、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製の商品名jER828、jER1001、jER1002、株式会社ADEKA製の商品名アデカレジンEP−4100E、アデカレジンEP−4300E、日本化薬株式会社製の商品名RE−310S、RE−410S、大日本インキ株式会社製の商品名エピクロン840S、エピクロン850S、エピクロン1050、エピクロン7050、東都化成株式会社製の商品名エポトートYD−115、エポトートYD−127、エポトートYD−128、ビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製の商品名jER806、jER807、株式会社ADEKA製の商品名アデカレジンEP−4901E、アデカレジンEP−4930、アデカレジンEP−4950、日本化薬株式会社製の商品名RE−303S、RE−304S、RE−403S,RE−404S、DIC株式会社製の商品名エピクロン830、エピクロン835、東都化成株式会社製の商品名エポトートYDF−170、エポトートYDF−175S、エポトートYDF−2001、ビスフェノールS型エポキシ樹脂としては、DIC株式会社製の商品名エピクロンEXA−1514、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製の商品名jERYX8000、jERYX8034,jERYL7170、株式会社ADEKA製の商品名アデカレジンEP−4080E、DIC株式会社製の商品名エピクロンEXA−7015、東都化成株式会社製の商品名エポトートYD−3000、エポトートYD−4000D、ビフェニル型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製の商品名jERYX4000、jERYL6121H、jERYL6640、jERYL6677、日本化薬株式会社製の商品名NC−3000、NC−3000H、フェノキシ型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製の商品名jER1256、jER4250、jER4275、ナフタレン型エポキシ樹脂としては、DIC株式会社製の商品名エピクロンHP−4032、エピクロンHP−4700、エピクロンHP−4200、日本化薬株式会社製の商品名NC−7000L、フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製の商品名jER152、jER154、日本化薬株式会社製の商品名EPPN−201−L、DIC株式会社製の商品名エピクロンN−740、エピクロンN−770、東都化成株式会社製の商品名エポトートYDPN−638、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、日本化薬株式会社製の商品名EOCN−1020、EOCN−102S、EOCN−103S、EOCN−104S、DIC株式会社製の商品名エピクロンN−660、エピクロンN−670、エピクロンN−680、エピクロンN−695、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂としては、日本化薬株式会社製の商品名EPPN−501H、EPPN−501HY、EPPN−502H、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂としては、日本化薬株式会社製の商品名XD−1000、DIC株式会社製の商品名エピクロンHP−7200、アミン型エポキシ樹脂としては、東都化成株式会社の商品名エポトートYH−434、エポトートYH−434L、可とう性エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製の商品名jER871、jER872、jERYL7175、jERYL7217、DIC株式会社製の商品名エピクロンEXA−4850、ウレタン変性エポキシ樹脂としては、株式会社ADEKA製の商品名アデカレジンEPU−6、アデカレジンEPU−73、アデカレジンEPU−78−11、ゴム変性エポキシ樹脂としては、株式会社ADEKA製の商品名アデカレジンEPR−4023、アデカレジンEPR−4026、アデカレジンEPR−1309、キレート変性エポキシ樹脂としては、株式会社ADEKA製の商品名アデカレジンEP−49−10、アデカレジンEP−49−20等が挙げられる。
【0039】
本願発明における熱硬化性樹脂の硬化剤としては特に限定されないが、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフタレン型フェノール樹脂等のフェノール樹脂、アミノ樹脂、ユリア樹脂、メラミン、ジシアンジアミド等が挙げられ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用できる。
【0040】
また、硬化促進剤としては、特に限定されないが、例えば、トリフェニルホスフィン等のホスフィン系化合物;3級アミン系、トリメタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラエタノールアミン等のアミン系化合物;1,8−ジアザ−ビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムテトラフェニルボレート等のボレート系化合物等、イミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類;2−メチルイミダゾリン、2−エチルイミダゾリン、2−イソプロピルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2−ウンデシルイミダゾリン、2,4−ジメチルイミダゾリン、2−フェニル−4−メチルイミダゾリン等のイミダゾリン類;2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン等のアジン系イミダゾール類等が挙げられ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用できる。
【0041】
本願発明にかかる(c)成分は、(a)成分、及び(b)成分を合計した100重量部に対して、好ましくは0.5〜100重量部、さらに好ましくは、1〜50重量部、特に好ましくは、5〜20重量部である。上記範囲内に(c)成分の量を調整することにより、(B)感光性樹脂組成物層の耐熱性、耐薬品性、電気絶縁信頼性を向上することができるので好ましい。
【0042】
(c)成分が上記範囲よりも少ない場合には、(B)感光性樹脂組成物層の耐熱性、電気絶縁信頼性に劣る場合がある。また、熱硬化性樹脂成分が上記範囲よりも多い場合には、(B)感光性樹脂組成物層が脆くなり柔軟性に劣り、反りも大きくなる場合がある。
【0043】
一方、(c)成分におけるエポキシ基のmol数を(a)成分中のカルボキシル基のmol数の1.0倍から3.0倍にすることにより、電磁波シールド機能を有する導電層との密着性がより良好となる。更には、厚み方向の電気絶縁性に関してもより良好となる。また、(c)成分におけるエポキシ基のmol数を(a)成分中のカルボキシル基のmol数の1.8倍から2.7倍が電磁波シールド機能を有する導電層との十分な接着性と厚み方向の電気絶縁性の観点からより好ましい。(c)成分におけるエポキシ基のmol数が上記範囲よりも少ない場合には、電磁波シールド機能を有する導電層との十分な接着性が得られない、もしくは厚み方向の電気絶縁性を確保できない場合がある。また、(c)成分におけるエポキシ基のmol数が上記範囲よりも多い場合には、(B)感光性樹脂組成物層の架橋密度が過度に上がり、FPCとして反りが大きくなるもしくは、柔軟性が低下するといった場合がある。
【0044】
ここで、(c)成分におけるエポキシ基のmol数、及び(a)成分中のカルボキシル基のmol数は、下記式で与えられる。
エポキシ基のmol数=エポキシ等量の逆数×(c)成分の固形分 (式1)
(a)成分中のカルボキシル基のmol数=((a)成分の酸価÷水酸化カリウムの分子量÷1000)×(a)成分の固形分 (式2)
ここで、式1におけるエポキシ等量とは、1グラム当量のエポキシ基を含む樹脂のグラム数(g/eq)である。また、式2における(a)成分の酸価は、前述の方法によって与えられ、水酸化カリウムの分子量は56.11g/molである。
【0045】
[(d)リン、アルミニウム及びマグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する微粒子]
本願発明の(d)リン、アルミニウム及びマグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する微粒子とは、(B)感光性樹脂組成物層の感光性樹脂組成物を構成する要素の一つであり、構造中に少なくとも1つのリン、アルミニウム及びマグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を有している微粒子である。また、(d)リン、アルミニウム及びマグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する微粒子が難燃剤としての効果を奏することを特徴とする。
【0046】
本願発明における(d)成分の平均粒子径は、例えば、以下の方法で体積基準のメジアン径(積算分布値50%に対する粒子径)として測定することができる。
【0047】
(平均粒子径測定)
装置:株式会社堀場製作所製 LA−950V2相当品
測定方式:レーザー回折/散乱式
本願発明の(d)成分の平均粒子径は、特に限定されないが、1〜10μmの場合、(B)感光性樹脂組成物層の柔軟性、難燃性が優れるため好ましい。平均粒子径が1μmより小さい場合は、(B)感光性樹脂組成物層表面に効果的に凹凸が形成されず、(A)電磁波シールド機能を有する導電層との密着性に劣る場合があり、平均粒子径が10μm以上の場合は耐折れ性が低下する場合がある。
【0048】
本願発明の(B)感光性樹脂組成物層中に(d)成分が含有されることを確認する手段としては、任意の方法で確認することが可能であるが、例えば、下記のように(B)感光性樹脂組成物層を含む導電層一体型FPCを熱硬化性樹脂で包埋し、厚み方向の断面をイオンビームで研磨して(B)感光性樹脂組成物層の断面出しを行い、(B)感光性樹脂組成物層の断面を走査型電子顕微鏡で観察する方法が挙げられる。
【0049】
((B)感光性樹脂組成物層の断面出し)
導電層一体型FPCにおいて、5mm×3mmの範囲をカッターナイフで切り出し、エポキシ系包埋樹脂及びカバーガラスを使用して切り出した導電層一体型FPCの両面に保護膜層及びカバーガラス層を形成した後、(B)感光性樹脂組成物層の厚み方向の断面をイオンビームによるクロスセクションポリッシャ加工を行った。
【0050】
(クロスセクションポリッシャ加工)
使用装置:日本電子株式会社製 SM−09020CP相当品
加工条件:加速電圧 6kV
(絶縁膜の断面観察)
上記得られた(B)感光性樹脂組成物層の厚み方向の断面について、走査型電子顕微鏡により観察を行った。
【0051】
(走査型電子顕微鏡観察)
使用装置:株式会社日立ハイテクノロジーズ製 S−3000N相当品
観察条件:加速電圧 15kV
検出器:反射電子検出(組成モード)
倍率:1000倍
ここで用いた反射電子検出(組成モード)は、観察領域の平均原子番号の差がコントラストに強く反映されるため、重元素が存在する領域が明るく(白く)、軽元素が存在する領域が暗く(黒く)観察される。よって、(B)感光性樹脂組成物層中に含まれる元素よりも比較的重元素であるリン元素を含有する場合は薄暗い(グレーの)、アルミニウム、マグネシウム元素を含有する場合は明るい(白い)円状又は多角状領域として観察される。
【0052】
また、(B)感光性樹脂組成物層の厚み方向の断面中の(d)成分領域を走査型電子顕微鏡−X線マイクロアナライザー(SEM−EPMA)で分析することにより、(d)成分が含有する元素の情報を得ることができるため、リン、アルミニウム、マグネシウム元素が含有されることを確認することができる。
【0053】
(走査型電子顕微鏡−X線マイクロアナライザー分析)
使用装置:株式会社堀場製作所製 EMAX−7000相当品
分析条件:加速電圧 15kV 積算時間900秒。
【0054】
本願発明の(d)成分は、特に限定はされないが、例えば、リン元素を含有する微粒子としては、ポリリン酸アンモニウム、メラミンリン酸塩、ホスフィン酸塩等が挙げられ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用できる。
【0055】
上記リン元素を含有する微粒子の中でも、特にホスフィン酸塩を用いることが、(B)感光性樹脂組成物層に対して優れた難燃性を付与できると共に、(B)感光性樹脂組成物層からのブリードアウトが少ないため、接点障害や工程汚染を抑制することができるため好ましい。
【0056】
上記ホスフィン酸塩とは、下記一般式(1)で示される化合物である。
【0057】
【化1】
【0058】
(式中、R及びRは、それぞれ独立に直鎖状または枝分かれした炭素数1〜6のアルキル基またはアリール基を示し、Mは、Mg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Fe、Zr、Zn、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na及びKからなる群の少なくとも1種より選択される金属類を示し、tは1〜4の整数である。)
上記ホスフィン酸塩は、上記構造であれば特に限定はされないが、例えば、トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスメチルエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ビスジエチルホスフィン酸亜鉛、ビスメチルエチルホスフィン酸亜鉛、ビスジフェニルホスフィン酸亜鉛、ビスジエチルホスフィン酸チタニル、ビスメチルエチルホスフィン酸チタニル、ビスジフェニルホスフィン酸チタニル等を挙げることができ、これらは単独であるいは2種類以上を組み合わせて用いることができる。上記の中でも特に、リン元素及びアルミニウム元素を含有するトリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスメチルエチルホスフィン酸アルミニウムを用いた場合、高い難燃性が得られる点で好ましい。
【0059】
また、アルミニウム元素を含有する微粒子としては、ギブサイト型水酸化アルミニウム、ベーマイト型水酸化アルミニウム、トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスメチルエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスジフェニルホスフィン酸アルミニウムが挙げられ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用できる。
【0060】
また、マグネシウム元素を含有する微粒子としては、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウムが挙げられ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用できる。
【0061】
本願発明の(d)成分の含有量は、好ましくは(a)成分、(b)成分、及び(c)成分を合計した100重量部に対して20〜80重量部、より好ましくは25〜75重量部とすることにより、得られる(B)感光性樹脂組成物層の難燃性、電気絶縁信頼性に優れる。(d)成分が20重量部より少ない場合は難燃性に劣る場合があり、80重量部より多い場合は感光性樹脂組成物を塗工する際の塗工性が悪化し、塗工時の塗膜の発泡やレベリング不足による外観不良が発生する場合がある。
【0062】
[その他の成分]
本願発明の(B)感光性樹脂組成物層の感光性樹脂組成物には、更に必要に応じて、ラジカル重合性樹脂、着色剤、密着性付与剤、重合禁止剤、溶媒等の添加剤を用いることができる。
【0063】
本願発明にかかるラジカル重合性樹脂としては、(b)光重合開始剤により化学結合が形成される樹脂であれば限定されない。更には、ラジカル重合性基は、アクリル基(CH=CH−基)、メタアクリロイル基(CH=C(CH)−基)もしくはビニル基(−CH=CH−基)であることが好ましい。例えばビスフェノールF EO変性(n=2〜50)ジアクリレート、ビスフェノールA EO変性(n=2〜50)ジアクリレート、ビスフェノールS EO変性(n=2〜50)ジアクリレート、ビスフェノールF EO変性(n=2〜50)ジメタクリレート、ビスフェノールA EO変性(n=2〜50)ジメタクリレート、ビスフェノールS EO変性(n=2〜50)ジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、テトラメチロールプロパンテトラアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、テトラメチロールプロパンテトラメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、β−メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、β−メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、β−アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、ラウリルアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジメタクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタクリロキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2−ビス[4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン、2−ヒドロキシ−1−アクリロキシ−3−メタクリロキシプロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、メトキシジプロピレングリコールメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコールアクリレート、1−アクリロイルオキシプロピル−2−フタレート、イソステアリルアクリレート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルアクリレート、ノニルフェノキシエチレングリコールアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジメタクリレート、1,6−メキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールメタクリレート、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールジメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、2,2−水添ビス[4−(アクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシ・ポリプロポキシ)フェニル]プロパン、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート、エトキシ化トチメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トチメチロールプロパントリアクリレート、イソシアヌル酸トリ(エタンアクリレート)、ペンタスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタスリトールテトラアクリレート、プロポキシ化ペンタスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールポリアクリレート、イソシアヌル酸トリアリル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアリルエーテル、1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−s−トリアジン、トリアリル1,3,5−ベンゼンカルボキシレート、トリアリルアミン、トリアリルシトレート、トリアリルフォスフェート、アロバービタル、ジアリルアミン、ジアリルジメチルシラン、ジアリルジスルフィド、ジアリルエーテル、ザリルシアルレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルテレフタレート、1,3−ジアリロキシ−2−プロパノール、ジアリルスルフィドジアリルマレエート、4,4’−イソプロピリデンジフェノールジメタクリレート、4,4’−イソプロピリデンジフェノールジアクリレート、等が好ましいが、これらに限定されない。特に、ジアクリレートあるいはメタアクリレートの一分子中に含まれるEO(エチレンオキサイド)の繰り返し単位が、2〜50の範囲のものが好ましく、さらに好ましくは2〜40である。EOの繰り返し単位が2〜50の範囲の物を使用することにより、感光性樹脂組成物のアルカリ水溶液に代表される水系現像液への溶解性が向上し、現像時間が短縮される。更に、(B)感光性樹脂組成物層中に応力が残りにくく、(C)配線パターン付きフィルム上に積層した際に、(C)配線パターン付きフィルムのカールを抑えることができるなどの特徴を有する。
【0064】
特に、上記EO変性のジアクリレート或いは、ジメタクリレートと、アクリル基もしくは、メタクリル基を3以上有するアクリル樹脂を併用することが現像性を高める上で特に好ましく、例えばエトキシ化イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸EO変性トリメタクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、プロポキシ化ペンタエリストールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、2,2,2−トリスアクリロイロキシメチルエチルコハク酸、2,2,2−トリスアクリロイロキシメチルエチルフタル酸、プロポキシ化ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、プロポキシ化ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、ε−カプロラクトン変性トリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート、カプロラクトン変性ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等のアクリル樹脂が好適に用いられる。
【0065】
また、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノアクリレート、アクリル酸ダイマー、ペンタエスリトールトリ及びテトラアクリレート等の分子構造骨格中にヒドロキシル基、カルボニル基を有する物も好適に用いられる。
【0066】
この他、エポキシ変性のアクリル(メタクリル)樹脂や、ウレタン変性のアクリル(メタクリル)樹脂、ポリエステル変性のアクリル(メタクリル)樹脂等どのようなラジカル重合性樹脂を用いてもよい。
【0067】
尚、ラジカル重合性樹脂としては、1種を使用することも可能であるが、2種以上を併用することが、光硬化後の硬化膜の耐熱性を向上させる上で好ましい。
【0068】
本願発明におけるラジカル重合性樹脂は、(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び(d)成分の合計100重量部に対して、10〜200重量部となるように配合されていることが、感光性樹脂組成物の感光性が向上する点で好ましい。
【0069】
ラジカル重合性樹脂が上記範囲よりも少ない場合には、感光性樹脂組成物の耐アルカリ性が低下すると共に、露光・現像したときのコントラストが付きにくくなる場合がある。また、ラジカル重合性樹脂が上記範囲よりも多い場合には、感光性樹脂組成物を基材上に塗布し、溶媒を乾燥させることにより得られる塗膜のべたつきが大きくなるため生産性が低下し、また架橋密度が高くなりすぎることにより(B)感光性樹脂組成物層が脆く割れやすくなる場合がある。上記範囲内にすることで露光・現像時の解像度を最適な範囲にすることが可能となる。
【0070】
本願発明にかかる着色剤としては、フタロシアニン系化合物、アゾ系化合物、カーボンブラック、酸化チタンが挙げられる。また、密着性付与剤としては、シランカップリング剤、トリアゾール系化合物、テトラゾール系化合物、トリアジン系化合物が挙げられる。更に、重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル等が挙げられる。これら添加物を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、本願発明の感光性樹脂組成物には、配線パターン付きフィルムとの密着性、感光性樹脂組成物層の硬度を向上させる目的で、無機もしくは有機の充填剤を用いることができる。無機充填剤としては、特に限定はされないが、例えば、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、タルク、超微粒子状無水シリカ、合成シリカ、天然シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム等が挙げられ、有機充填材としては、架橋ウレタンビーズ、ポリイミドフィラー、アクリルビーズ、各種有機フィラー等が挙げられ、これら無機もしくは有機の充填剤を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用できる。
【0071】
本願発明における溶媒としては、(a)成分〜(c)成分を溶解させることができる溶媒であれば良い。例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、メチルモノグライム(1,2-ジメトキシエタン)、メチルジグライム(ビス(2-メトキシエテル)エーテル)、メチルトリグライム(1,2-ビス(2-メトキシエトキシ)エタン)、メチルテトラグライム(ビス[2-(2-メトキシエトキシエチル)]エーテル)、エチルモノグライム(1,2-ジエトキシエタン)、エチルジグライム(ビス(2-エトキシエチル)エーテル)、ブチルジグライム(ビス(2-ブトキシエチル)エーテル)等の対称グリコールジエーテル類、γ―ブチロラクトン、メチルアセテート、エチルアセテート、イソプロピルアセテート、n―プロピルアセテート、ブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(別名、カルビトールアセテート、酢酸2-(2-ブトキシエトキシ)エチル))、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、1,3―ブチレングリコールジアセテート等のアセテート類や、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、トリピレングリコールn−プロピルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、1,3―ジオキソラン、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類等を挙げることができ、これらは単独であるいは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0072】
本願発明における溶媒は、(a)成分、(b)成分、(c)成分、及び(d)成分を合計した100重量部に対して、10〜400重量部、より好ましくは、20〜200重量部、特に好ましくは、40〜100重量部である。
【0073】
上記範囲内に溶媒の量を調整することにより、感光性樹脂組成物の粘度や粘性をスクリーン印刷などの塗工に適切な範囲内に調整することができるので好ましい。
【0074】
溶媒が上記範囲よりも少ない場合には、感光性樹脂組成物の粘度が非常に高くなり、塗工が困難となり、塗工時の泡の巻き込み、レベリング性に劣る場合がある。また、溶媒が上記範囲よりも多い場合には、感光性樹脂組成物の粘度が非常に低くなってしまい、塗工が困難となり、回路の被覆性に劣る場合がある。
【0075】
本願発明の感光性樹脂組成物は、前記各成分(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分、及びその他の成分を均一に混合して得られる。均一に混合する方法としては、例えば3本ロール、ビーズミル装置等の一般的な混練装置を用いて混合すればよい。また、溶液の粘度が低い場合には、一般的な攪拌装置を用いて混合してもよい。
【0076】
本願発明の感光性樹脂組成物は、1)溶液のまま基板に塗布して、パターンを形成する方法と2)支持体上に製膜し、未硬化状態のフィルムを基板に貼り付けてパターンを形成する方法することができる。1)溶液のまま基板に塗布して、パターンを形成する方法としては、先ず上記感光性樹脂組成物を基板上に塗布し、乾燥して溶媒を除去する。基板への塗布はスクリ−ン印刷、ローラーコーティング、カ−テンコーティング、スプレーコーティング、スピンナーを利用した回転塗布等により行うことができる。塗布膜(好ましくは厚み:5〜100μm)の乾燥は120℃以下、好ましくは40〜100℃で行う。乾燥後、乾燥塗布膜にネガ型のフォトマスクを置き、紫外線、可視光線、電子線などの活性光線を照射する。次いで、未露光部分をシャワー、パドル、浸漬または超音波等の各種方式を用い、現像液で洗い出すことによりパタ−ンを得ることができる。なお、現像装置の噴霧圧力や流速、現像液の温度によりパターンが露出するまでの時間が異なる為、適宜最適な装置条件を見出すことが好ましい。上記現像液としては、アルカリ水溶液を使用することが好ましく、この現像液には、メタノ−ル、エタノ−ル、n−プロパノ−ル、イソプロパノ−ル、N−メチル−2−ピロリドン等の水溶性有機溶媒が含有されていてもよい。上記のアルカリ性水溶液を与えるアルカリ性化合物としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはアンモニウムイオンの、水酸化物または炭酸塩や炭酸水素塩、アミン化合物などが挙げられ、具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトライソプロピルアンモニウムヒドロキシド、N−メチルジエタノ−ルアミン、N−エチルジエタノ−ルアミン、N,N−ジメチルエタノ−ルアミン、トリエタノ−ルアミン、トリイソプロパノ−ルアミン、トリイソプロピルアミン等が挙げられ、水溶液が塩基性を呈するものであればこれ以外の化合物も使用することができる。
【0077】
本願発明の感光性樹脂組成物の現像工程に好適に用いることのできる、アルカリ性化合物の濃度は、好ましくは0.01〜10重量%、特に好ましくは、0.05〜5重量%とすることが好ましい。また、現像液の温度は感光性樹脂組成物の組成や、現像液の組成に依存しており、一般的には0℃以上80℃以下、より一般的には、20℃以上50℃以下で使用することが好ましい。
【0078】
上記現像工程によって形成したパタ−ンは、リンスして不用な現像液残分を除去する。リンス液としては、水、酸性水溶液などが挙げられる。
【0079】
次に、加熱硬化処理を行うことにより耐熱性及び柔軟性に富む(B)感光性樹脂組成物層を得ることができる。(B)感光性樹脂組成物層は配線厚み等を考慮して決定されるが、厚みが2〜50μm程度であることが好ましい。このときの最終硬化温度は配線等の酸化を防ぎ、配線と基材との密着性を低下させないことを目的として低温で加熱して硬化させることが望まれている。この時の加熱硬化温度は100℃以上250℃以下であることが好ましく、更に好ましくは120℃以上200℃以下であることが望ましく、特に好ましくは130℃以上190℃以下である。最終加熱温度が高くなると配線の酸化劣化が進む場合がある。
【0080】
2)支持体上に製膜し、未硬化状態のフィルムを基板に貼り付けてパターンを形成する方法としては、まず支持体上に感光性樹脂組成物を均一に塗布した後、加熱及び/又は熱風吹き付けを行う。これにより、溶媒を一部除去し、未硬化状態の感光性樹脂組成物のフィルムを得ることができる。
【0081】
上記加熱及び/又は熱風吹き付けを行うことによる溶媒を除去する時の温度は、感光性樹脂組成物に含有されるエポキシ基等が加熱により架橋反応しない程度であればよい。ここで、使用する支持体は、特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリイミドフィルムなど通常市販されている各種のフィルムが使用可能である。支持体のうち、ある程度の耐熱性を有し、比較的安価に手に入る点から、PETフィルムが多く用いられる。なお、支持体と感光性樹脂組成物との接合面については、密着性と剥離性を向上させるために表面処理されているものを用いてもよい。また、感光性樹脂組成物の上に保護フィルムを積層してもよい。感光性樹脂組成物の上に保護フィルムを積層することにより、空気中のゴミやチリが付着することを防ぎ、感光性樹脂組成物の乾燥による品質劣化を防ぐことができる。保護フィルムは、感光性樹脂組成物の表面に10℃〜50℃の温度でラミネートして積層することが好ましい。なお、ラミネート処理時の温度が50℃よりも高くなると、保護フィルムの熱膨張を招き、ラミネート処理後の保護フィルムのしわやカールが生じる場合がある。なお、保護フィルムは使用時には剥離するため、保護フィルムと感光性樹脂組成物との接合面は、保管時には適切な密着性を有し、且つ剥離性に優れていることが望ましい。
【0082】
保護フィルムの材料としては、特に限定されるのもではないが、例えば、ポリエチレンフィルム(PEフィルム)、ポリエチレンビニルアルコールフィルム(EVAフィルム)、「ポリエチレンとエチレンビニルアルコールの共重合体フィルム」(以下(PE+EVA)共重合体フィルムと略す)、「PEフィルムと(PE+EVA)共重合体フィルムの張り合わせ体」、もしくは「(PE+EVA)共重合体とポリエチレンとの同時押し出し製法によるフィルム」(片面がPEフィルム面であり、もう片面が(PE+EVA)共重合体フィルム面であるフィルム)等を挙げることができる。
【0083】
次いで、保護フィルム、感光性樹脂組成物、ベースフィルムを有してなるフィルムから保護フィルムを剥離する。そして、感光性組成物と配線パターン付きフィルムとが対向するように、配線パターン付きフィルムを感光性組成物のフィルムにて覆い、熱圧着によって貼り合わせる。この熱圧着による貼り合わせは、熱プレス処理、ラミネート処理(熱ラミネート処理)、熱ロールラミネート処理等によって行えばよく、特に限定されるものではない。貼り合わせを、熱ラミネート処理、熱ロールラミネート処理(以下、ラミネート処理と記載)によって行う場合、処理温度は、ラミネート処理が可能である下限の温度(以下、圧着可能温度)以上であればよい。具体的には、圧着可能温度は、50〜150℃の範囲であることが好ましく、60〜120℃の範囲であることがより好ましく、特に80℃〜120℃の範囲であることが好ましい。処理温度が150℃を超えると、ラミネート処理時に、感光性樹脂組成物の加熱による架橋反応が生じ、感光性樹脂組成物の硬化が進行する場合がある。一方、処理温度が50℃未満であると、感光性樹脂組成物の流動性が低く、パターン回路を埋め込むことが困難となる。
【0084】
ここで、フィルム化された感光性樹脂組成物は、未硬化状態で保ったものである。それゆえ、熱ラミネート処理等の熱圧着処理を行う場合は適度な流動性を持ち、配線パターン付きフィルムのパターン回路の埋め込みを好適に行うことができる。
【0085】
上記の熱圧着処理によって、配線パターン付きフィルム上に感光性樹脂組成物が積層され、さらにベースフィルムが積層されたサンプルが得られる。次いで、この貼り合わせサンプルについてパターン露光及び現像を行う。パターン露光及び現像に際しては、上記貼り合わせサンプルのベースフィルム上にフォトマスクパターンを配置し、フォトマスクを介して露光処理を行う。その後、ベースフィルムを剥離して現像処理を行うことにより、フォトマスクパターンに応じた穴(ビア)が形成される。その他の露光処理及び現像処理の内容及びその後の加熱処理工程は、1)溶液のまま基板に塗布して、パターンを形成する方法と同様である。
【0086】
[(C)配線パターン付きフィルム]
本願発明の(C)配線パターン付きフィルムとは、厚さ5〜100μmのベースフィルムの片面又は両面に配線パターンを有するフィルムである。本願発明における配線パターン付きフィルムの作製方法は、特に限定されないが、例えば、ベースフィルムに導体層を形成することにより、フレキシブル金属張積層板を作製し、導体層をパターンエッチングする事によって作製することができる。
【0087】
本願発明におけるベースフィルムは、柔軟性があり、かつ絶縁性を有するフィルムであれば特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン、架橋ポリエチレン、ポリエステル、ポリベンズイミダゾール、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトンなどが挙げられ、耐熱性を要求されない場合は、安価なポリエステルフィルムが好ましく、耐熱性が要求される場合にはポリイミドフィルムが好ましい。
【0088】
本願発明における導体層は、特に限定されないが、例えば、銅又は銅合金、ステンレス鋼又はその合金、ニッケル又はニッケル合金(42合金も含む)、アルミニウム又はアルミニウム合金を挙げることができる。一般的なフレキシブル金属張積層板では、圧延銅箔、電解銅箔といった銅箔が多用されるが、本発明においても好ましく用いることができる。なお、これらの金属箔の表面には、防錆層や耐熱層あるいは接着層が塗布されていてもよい。
【0089】
本願発明におけるベースフィルムに導体層を形成する方法、即ち、フレキシブル金属張積層板の作製方法は、特に限定されないが、例えば、キャスト法、ラミネート法、メタライジング法が挙げられる。キャスト法とは、液状のベースフィルム溶液を導体層上に塗布し、乾燥、熱硬化させる方法であり、ラミネート法とは、ベースフィルムと導体層を熱圧着により形成させる方法である。上記ラミネート法には、ベースフィルムと導体層との間に接着剤を介して作製する場合、所謂3層金属張積層板と接着剤を介しない場合、所謂2層金属張積層板がある。接着剤としては、エポキシ樹脂やアクリル樹脂等が挙げられる。また、メタライジング法とは、ベースフィルムに金属薄膜を真空蒸着法、又はスパッタリング法により形成し、湿式めっきにより導体層を形成する方法である。または、金属薄膜を形成せずに、湿式めっきにより導体層を形成する場合も有る。上記いずれの方法においても、ベースフィルムの片面もしくは両面に導体層を形成することができる。
【0090】
本願発明における導体層のパターンエッチング方法としては、特に限定されないが、例えば、フォトレジスト法が挙げられる。フォトレジスト法とは、フォトレジスト層を金属張積層板上に形成し、露光、現像、導体層のエッチング、ドライフィルムの剥離によって配線パターンを形成する方法である。フォトレジスト層としては、ネガ型やポジ型を用いることができ、液体状、フィルム状などを用いることができる。フォトレジストは、特に限定されないが、例えば、ネガ型のドライフィルムタイプのレジストを熱ラミネートにより、あるいはポジ型の液状タイプのレジストを塗工乾燥して金属張積層板上に形成する方法が挙げられる。ネガ型の場合は露光部以外が現像で除去され、一方ポジ型の場合は露光部が現像で除去される。ドライフィルムタイプのレジストは容易に厚膜化が可能である。ネガ型ドライフィルムタイプのフォトレジストとして例えば旭化成株式会社製の商品名SPG−152、日立化成工業株式会社製の商品名RY−3215などがあげられる。フォトレジスト層を現像除去する方法としては、公知のフォトレジスト層を除去するための薬剤を適宜選択して用いることができ、例えば炭酸ナトリウム水溶液(0.2〜1.5%等)等をスプレーしてフォトレジスト層を現像除去することができる。また、導体層のエッチングでは、公知の導体層エッチングを適宜選択して用いることができ、例えば、フェリシアン化カリウム水溶液、塩化鉄水溶液、塩化銅水溶液、過硫酸アンモニウム水溶液、過硫酸ナトリウム水溶液、過酸化水素水、フッ酸水溶液、及びこれらの組合せなどを用いることができる。
【0091】
本願発明の導電層一体型FPCは、電磁波シールド機能を有する導電層と感光性樹脂組成物層との密着性に優れ、更に繰り返し折り曲げに耐え得る柔軟性、難燃性、電気絶縁信頼性に優れ、反りが小さいため、小型携帯端末の液晶ディスプレイ、センサー、カメラモジュール用FPCとして特に適しているのである。また更には、ヒンジ屈曲、スライド屈曲、ケーブル、コネクター、ハードディスクの光ピックアップ用FPC等にも用いられる。
【0092】
本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、明細書に記載した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された文献の全てが参考として援用される。以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【実施例】
【0093】
以下本願発明を実施例により具体的に説明するが本願発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0094】
[(a)カルボキシル基含有樹脂]
〔合成例1〕
攪拌機、温度計、滴下漏斗、および窒素導入管を備えた反応容器に、重合用溶媒としてメチルトリグライム(=1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン)100.0gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら80℃まで昇温した。これに、室温で予め混合しておいた、メタクリル酸12.0g(0.14モル)、メタクリル酸ベンジル28.0g(0.16モル)、メタクリル酸ブチル60.0g(0.42モル)、ラジカル重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.5gを80℃に保温した状態で3時間かけて滴下漏斗から滴下した。滴下終了後、反応溶液を攪拌しながら90℃まで昇温し、反応溶液の温度を90℃に保ちながら更に2時間攪拌し、本願発明のカルボキシル基含有樹脂溶液を得た(a−1)。得られたカルボキシル基含有樹脂溶液の固形分濃度は48%、重量平均分子量は48,000、酸価は78mgKOH/gであった。尚、固形分濃度、重量平均分子量、酸価は下記の方法で測定した。
【0095】
<固形分濃度>
JIS K 5601−1−2に従って測定を行った。尚、乾燥条件は150℃×1時間の条件を選択した。
【0096】
<重量平均分子量>
合成した(a)カルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量を下記条件にて測定した。
使用装置:東ソーHLC−8220GPC相当品
カラム :東ソー TSK gel Super AWM-H(6.0mmI.D.×15cm)×2本
ガードカラム:東ソー TSK guard column Super AW-H
溶離液:30mM LiBr+20mM HPO in DMF
流速:0.6mL/min
カラム温度:40℃
検出条件:RI:ポラリティ(+)、レスポンス(0.5sec)
試料濃度:約5mg/mL
標準品:PEG(ポリエチレングリコール)
<酸価>
JIS K 5601−2−1に従って、合成した(a)カルボキシル基含有樹脂の酸価の測定を行った。
【0097】
(実施例1〜6及び比較例1)
<感光性樹脂組成物の調製>
合成例1で得られた(a)カルボキシル基含有樹脂、(b)光重合開始剤、(c)熱硬化性樹脂、(d)リン、アルミニウム及びマグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する微粒子及びその他の成分を添加して感光性樹脂組成物を作製した。それぞれの構成原料の樹脂固形分での配合量及び原料の種類を表1に記載する。なお、表中の溶媒である1,2-ビス(2-メトキシエトキシ)エタンは上記合成例1で合成した樹脂溶液等に含まれる溶剤等も含めた全溶剤量である。混合溶液を脱泡装置で溶液中の泡を完全に脱泡して下記評価を実施した。
【0098】
【表1】
【0099】
<1>チバ・スペシャルティーケミカルズ社製 光重合開始剤の製品名
<2>DIC株式会社製 グリシジルアミン型の多官能エポキシ樹脂の製品名
<3>クラリアントジャパン株式会社製 リン及びアルミニウム元素を含有する微粒子(ジエチルホスフィン酸アルミニウム塩)の製品名、平均粒子径2.5μm
<4>昭和電工株式会社製 アルミニウム元素を含有する微粒子(水酸化アルミニウム)の製品名、平均粒子径1.0μm
<5>タテホ化学工業株式会社製 マグネシウム元素を含有する微粒子(水酸化マグネシウム)の製品名、平均粒子径1.0μm
<6>新中村化学社製 製品名NKエステルA−9300(エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート)
<7>日本アエロジル株式会社製 シリカ粒子の製品名
[感光性樹脂組成物の評価]
<評価試験片の作製>
上記で調整した感光性樹脂組成物を、ベーカー式アプリケーターを用いて、75μmのポリイミドフィルム(株式会社カネカ製:商品名75NPI)に最終乾燥厚みが25μmになるように100mm×100mmの面積に流延・塗布し、80℃で20分乾燥した後、50mm×50mmの面積のライン幅/スペース幅=100μm/100μmのネガ型フォトマスクを置いて300mJ/cmの積算露光量の紫外線を照射して露光した。次いで、1.0重量%の炭酸ナトリウム水溶液を30℃に加熱した溶液を用いて、1.0kgf/mmの吐出圧で60秒スプレー現像を行った。現像後、純水で十分洗浄した後、160℃のオーブン中で90分加熱硬化させて(B)感光性樹脂組成物層を作製した。
【0100】
<(B)感光性樹脂組成物層の評価>
得られた感光性樹脂組成物層について、以下の項目につき評価を行った。評価結果を表2に記載する。
【0101】
(i)感光性評価
感光性樹脂組成物の感光性の評価は、上記<評価試験片の作製>の項目で得られた(B)感光性樹脂組成物層の表面観察を行い判定した。
〇:ポリイミドフィルム表面にくっきりとしたライン幅/スペース幅=100/100μmの感光パターンが描けており、ライン部の剥離に伴うラインの揺れが発生しておらず、スペース部にも溶解残りが無いもの
△:ポリイミドフィルム表面にくっきりとしたライン幅/スペース幅=100/100μmの感光パターンが描けており、ライン部に剥離に伴うラインの揺れが発生しているが、スペース部には溶解残りが無いもの
×:ポリイミドフィルム表面にくっきりとしたライン幅/スペース幅=100/100μmの感光パターンが描けておらず、ライン部が剥離しており、しかも、スペース部には溶解残りが発生しているもの
(ii)耐溶剤性
上記<評価試験片の作製>の項目で得られた(B)感光性樹脂組成物層の耐溶剤性の評価を行った。評価方法は25℃のメチルエチルケトン中に15分間浸漬した後風乾し、フィルム表面の状態を観察した。
○:塗膜に異常がない
×:塗膜に膨れや剥がれなどの異常が発生する
(iii)屈曲性
上記<評価試験片の作製>の項目と同様の方法で、25μm厚みのポリイミドフィルム(株式会社カネカ製アピカル25NPI)表面に(B)感光性樹脂組成物層を作製した。上記作製した試験片を30mm×10mmの短冊に切り出して、15mmのところで180°に10回折り曲げて(B)感光性樹脂組成物層を目視で確認してクラックの確認を行った。
○:(B)感光性樹脂組成物層にクラックが無いもの
△:(B)感光性樹脂組成物層に若干クラックがあるもの
×:(B)感光性樹脂組成物層にクラックがあるもの
(iv)半田耐熱性
上記<評価試験片の作製>の項目と同様の方法で、75μm厚みのポリイミドフィルム(株式会社カネカ製アピカル75NPI)表面に(B)感光性樹脂組成物層を作製した。上記作製した試験片を260℃で完全に溶解してある半田浴に(B)感光性樹脂組成物層面が接する様に浮かべて10秒後に引き上げた。その操作を3回行い、(B)感光性樹脂組成物層の接着強度をJIS K5400に従って碁盤目テープ法で評価した。
○:碁盤目テープ法で剥がれの無いもの
△:升目の95%以上が残存しているもの
×:升目の残存量が80%未満のもの
(v)反り
上記<評価試験片の作製>の項目と同様の方法で、25μm厚みのポリイミドフィルム(株式会社カネカ製アピカル25NPI)表面に(B)感光性樹脂組成物層を作製した。この(B)感光性樹脂組成物層を50mm×50mmの面積のフィルムに切り出して平滑な台の上に(B)感光性樹脂組成物層が上面になるように置き、フィルム端部の反り高さを測定した。測定部位の模式図を図3に示す。ポリイミドフィルム表面での反り量が少ない程、プリント配線板表面での応力が小さくなり、プリント配線板の反り量も低下することになる。反り量は5mm以下であることが好ましい。
【0102】
(vi)難燃性
プラスチック材料の難燃性試験規格UL94に従い、以下のように難燃性試験を行った。上記<評価試験片の作製>の項目と同様の方法で、25μm厚みのポリイミドフィルム(株式会社カネカ製アピカル25NPI)両面に(B)感光性樹脂組成物層を作製した。上記作製した試験片を寸法:50mm幅×200mm長さ×75μm 厚み(ポリイミドフィルムの厚みを含む)に切り出し、125mmの部分に標線を入れ、直径約13mmの筒状に丸め、標線よりも上の重ね合わせ部分(75mmの箇所)、及び、上部に隙間がないようにPIテープを貼り、難燃性試験用の筒を20本用意した。 そのうち10本は(1)23℃/50%相対湿度/48時間で処理し、残りの10本は(2)70℃で168時間処理後無水塩化カルシウム入りデシケーターで4時間以上冷却した。これらのサンプルの上部をクランプで止めて垂直に固定し、試験片下部にバーナーの炎を10秒間近づけて着火する。10秒間経過したらバーナーの炎を遠ざけて、試験片の炎や燃焼が何秒後に消えるか測定する。
○:各条件((1)、(2))につき、試験片からバーナーの炎を遠ざけてから平均(10本の平均)で5秒以内、最高で10秒以内に炎や燃焼が停止し自己消火したもの
×:1本でも10秒以内に消火しない試験片があったり、炎が試験片上部のクランプのところまで上昇して燃焼するもの
[導電層一体型FPCの評価]
<導電層一体型FPC評価試験片の作製>
配線パターン付きフィルム(銅箔の厚み12μm、ポリイミドフィルムは株式会社カネカ製アピカル25NPI、ポリイミド系接着剤で銅箔を接着している)上にライン幅/スペース幅=80μm/80μmの櫛形パターンを作製し、10容量%の硫酸水溶液中に1分間浸漬した後、純水で洗浄し銅箔の表面処理を行った。その後、上記で調整した感光性樹脂組成物を、ベーカー式アプリケーターを用いて、配線パターン付きフィルム上の櫛形パターンに最終乾燥厚みが25μmになるように流延・塗布し、80℃で20分乾燥した後、フォトマスクを置いて300mJ/cmの積算露光量の紫外線を照射して露光した。次いで、1.0重量%の炭酸ナトリウム水溶液を30℃に加熱した溶液を用いて、1.0kgf/mmの吐出圧で60秒スプレー現像を行った。現像後、純水で十分洗浄した後、160℃のオーブン中で90分加熱硬化させて(B)感光性樹脂組成物層を作製した。
次いで、得られた(B)感光性樹脂組成物層上に、電磁波シールド機能を有する導電層としてフィルムタイプの導電層であるタツタ電線株式会社の商品名SF−PC5500を150℃、2.5MPa、60分の熱プレスによって貼り合せて、導電層一体型FPC評価試験片を作製した。
【0103】
(vii)電磁波シールド機能を有する導電層との密着性
上記<導電層一体型FPC評価試験片の作製>方法で得られた試験片に、JIS K5400に従って碁盤目テープ法で評価した。
○:碁盤目テープ法で剥がれの無いもの
△:升目の95%以上が残存しているもの
×:升目の残存量が80%未満のもの
(viii)厚み方向の電気絶縁信頼性
上記<導電層一体型FPC評価試験片の作製>方法で得られた試験片に、85℃、85%RHの環境試験機中で試験片の両端子部分に20Vの直流電圧を印加し、絶縁抵抗値の変化やマイグレーションの発生などを観察した。
○:試験開始後、1000時間で10の8乗以上の抵抗値を示し、マイグレーション、デンドライトなどの発生が無いもの
×:試験開始後、1000時間でマイグレーション、デンドライトなどの発生があるもの
【0104】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明は、携帯電話、ビデオカメラ、ノートパソコン等の電子機器における電磁波ノイズ対策に用いられる。
【符号の説明】
【0106】
1 配線パターン付きフィルム
2 配線パターン
3 ベースフィルム
4 感光性樹脂組成物層
5 FPC
6 電磁波シールド機能を有する導電層
7 導電層一体型FPC
8 測定試料
9 受信用アンテナ
10 送信用アンテナ
11 平滑な台
12 反り量
13 反り測定用試験片


図1
図2
図3