(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記予測航路算出部は、前記船舶情報取得部が取得した前記船舶情報が示す前記船舶の位置に基づいて、前記典型航路算出部が算出した複数の前記典型航路のうちいずれかの典型航路を選択し、選択した典型航路を含む航路を前記予測航路として算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の航行支援装置。
前記予測航路算出部は、前記船舶情報取得部が取得した前記船舶情報が示す前記船舶の対地針路と、前記典型航路算出部が算出した複数の前記典型航路の針路方向とに基づいて、典型航路の針路方向が対地針路の所定角度以内である典型航路を選択する
ことを特徴とする請求項2に記載の航行支援装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような航行支援システムでは、船舶の現在位置を把握できることに留まっており、安全な航行のためにより有用な情報を提供することが望ましい。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたもので、船舶の航行を支援する航行支援装置、航行支援方法、航行支援プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、所定の海域内を通過した船舶の航路を示す
情報と前記船舶の種別を表す船舶種別を含む船舶情報の履歴を
複数の船舶からそれぞれ取得する船舶情報履歴取得部と、前記船舶情報履歴取得部が取得した前記船舶情報の履歴
のうち算出対象の船舶種別が含まれる船舶情報の航路の出現度合に基づいて、前記海域内の典型航路を
前記船舶の船舶種別毎に算出する典型航路算出部と、
前記海域内に存在する船舶から送信される船舶情報を取得する船舶情報取得部と、前記船舶情報取得部が取得した前記船舶情報と、前記典型航路算出部が算出した前記典型航路のうち前記船舶取得部が取得した船舶情報に含まれる船舶種別に対応する典型航路とに基づいて、前記海域内に存在する船舶の予測航路を算出する予測航路算出部と、を備えることを特徴とする航行支援装置である。
【0008】
また、本発明の一態様は、予測航路算出部が、船舶情報取得部が取得した船舶情報が示す船舶の位置に基づいて、典型航路算出部が算出した複数の典型航路のうちいずれかの典型航路を選択し、選択した典型航路を含む航路を予測航路として算出することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の一態様は、予測航路算出部が、船舶情報取得部が取得した船舶情報が示す船舶の対地針路と、典型航路算出部が算出した複数の典型航路の針路方向とに基づいて、典型航路の針路方向が対地針路の所定角度以内である典型航路を選択することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一態様は、前記典型航路算出部が、複数の前記船舶情報の履歴に基づいて、
前記船舶情報に含まれる船舶種別毎にカーネル密度推定
を行なうことにより前記典型航路を算出することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一態様は、前記海域内に存在する船舶の位置が、前記典型航路算出部が算出した前記典型航路
のうち前記海域内に存在する船舶の船舶種別に対応した典型航路から所定領域内であるか否かを判定する船舶位置判定部と、
前記船舶位置判定部の判定結果において前記海域内に存在する船舶の位置が前記所定領域内ではないと判定された場合に警告を出力する出力部と、を備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の一態様は、船舶情報には、船舶の位置と
、対地針路とのうち少なくともいずれかの情報が含まれることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の一態様は、
船舶情報履歴取得部が、所定の海域内を通過した船舶の航路を示す
情報と前記船舶の種別を表す船舶種別を含む船舶情報の履歴を
複数の船舶からそれぞれ取得するステップと、
典型航路算出部が、前記船舶情報履歴取得部が取得した前記船舶情報の履歴
のうち算出対象の船舶種別が含まれる船舶情報の航路の出現度合に基づいて、前記海域内の典型航路を
前記船舶の船舶種別毎に算出するステップと、
船舶情報取得部が、前記海域内に存在する船舶から送信される船舶情報を取得するステップと、予測航路算出部が、前記船舶情報取得部が取得した前記船舶情報と、前記典型航路算出部が算出した前記典型航路のうち前記船舶取得部が取得した船舶情報に含まれる船舶種別に対応する典型航路とに基づいて、前記海域内に存在する船舶の予測航路を算出するステップと、を備えることを特徴とする航行支援方法である。
【0014】
また、本発明の一態様は、航行支援装置のコンピュータに、
船舶情報履歴取得部が、所定の海域内を通過した船舶の航路を示す
情報と前記船舶の種別を表す船舶種別を含む船舶情報の履歴を
複数の船舶からそれぞれ取得するステップと、
典型航路算出部が、前記船舶情報履歴取得部が取得した前記船舶情報の履歴
のうち算出対象の船舶種別が含まれる船舶情報の航路の出現度合に基づいて、前記海域内の典型航路を
前記船舶の船舶種別毎に算出するステップと、
船舶情報取得部が、前記海域内に存在する船舶から送信される船舶情報を取得するステップと、予測航路算出部が、前記船舶情報取得部が取得した前記船舶情報と、前記典型航路算出部が算出した前記典型航路のうち前記船舶取得部が取得した船舶情報に含まれる船舶種別に対応する典型航路とに基づいて、前記海域内に存在する船舶の予測航路を算出するステップと、を実行させる航行支援プログラムである。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、航行支援装置が、所定の海域内を通過した船舶の航路を示す船舶情報の履歴を取得する船舶情報履歴取得部と、船舶情報履歴取得部が取得した船舶情報の履歴に基づいて、海域内の典型航路を算出する典型航路算出部と、を備えるようにしたので、船舶の航行を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態による航行支援システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態による船舶情報のデータ例を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態による航行支援装置が表示する地図の例を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態により監視対象海域における過去の航路を地図上に配置した例を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態により監視対象海域における典型航路を地図上に配置した例を示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態によるカーネル密度推定を説明する図である。
【
図7】本発明の一実施形態による典型航路を地図上に配置した例を示す図である。
【
図8】本発明の一実施形態により対地針路を抽出条件とする場合の例を説明する図である。
【
図9】本発明の一実施形態により船舶種別を抽出条件とする場合の例を説明する図である。
【
図10】本発明の一実施形態による追従航路決定処理を説明する図である。
【
図11】本発明の一実施形態による予測航路算出処理を説明する図である。
【
図12】本発明の一実施形態により予測航路や予測位置を出力部に表示する例を示す図である。
【
図13】本発明の一実施形態により出力部に警告を表示させる例を示す図である。
【
図14】本発明の一実施形態による航行支援装置の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態による航行支援システム1の構成を示すブロック図である。航行支援システム1は、自動船舶識別装置10と、航行支援装置20とを備えている。
自動船舶識別装置10は、航行する船舶に搭載されるコンピュータ装置であり、船舶情報送信部11を備えている。船舶情報送信部11は、自装置が搭載された船舶に関する船舶情報を、無線通信により航行支援装置20に送信する。ここでは、自動船舶識別装置10は、いわゆる海上人命安全条約(SOLAS(The International Convention for the Safety of Life at Sea)条約)に基づくAIS機器であり、所定の項目を含むAIS情報を船舶情報として送信する。
【0018】
図2は、船舶情報送信部11が送信する船舶情報のデータ例を示す図である。船舶情報には、静的情報と、動的情報と、航海関連情報とが含まれる。
静的情報には、MMSI番号と、IMO番号と、コールサインと、船名と、船舶種別と、船体長と、船体幅とが含まれる。MMSI(Maritime Mobile Service Identity)番号は、海上移動業務識別のためにそれぞれのAIS機器に付けられた識別番号である。IMO(International Maritime Organization:国際海事機関)番号は、IMOが付けた船舶識別番号である。コールサインは、無線局を一意に識別するための文字列であり、呼出番号である。船名は、船舶の名称である。船舶種別は、船舶の形状や目的、用途に応じた種別であり、例えば、タンカー、コンテナ、旅客船、漁船、などの情報である。船体長は、船舶の長さを示す。船体幅は、船舶の幅を示す。
【0019】
動的情報には、自船位置(緯度)と、自船位置(経度)と、世界標準時と、対地針路と、対地速度と、回頭率と、航海ステータスとが含まれる。自船位置(緯度)は、自動船舶識別装置10が搭載された船舶の現在位置における緯度を示す。自船位置(経度)は、自動船舶識別装置10が搭載された船舶の現在位置における経度を示す。世界標準時は、協定世界時(UTC(Coordinated Universal Time))による現在時刻である。対地針路は、船舶の進行方向である。対地速度は、船舶の移動速度である。回頭率は、船舶の回頭率である。航海ステータスは、船舶の状態を示す情報であり、例えば、航海中、停泊中、運転不自由、動作制限等の状態を示す。
【0020】
航海関連情報には、喫水と、目的地と、到着予定時刻(ETA(Estimated Time of Arrival))とが含まれる。喫水は、水上の船舶において、水面から船底の最深部までの垂直距離である。目的地は、その船の目的地を示す。到着予定時刻は、船舶が目的地に到着する予定時刻である。
【0021】
図1では、1台の自動船舶識別装置10を示しているが、複数の船舶のそれぞれが自動船舶識別装置10を搭載しており、それぞれの自動船舶識別装置10の船舶情報送信部11が、所定時間ごと(例えば、移動中は3秒に1回、停泊中は3分に1回)に、国際VHF(Very High Frequency)により送信する。
【0022】
航行支援装置20は、複数の自動船舶識別装置10から送信される船舶情報を受信するコンピュータ装置であり、受信した船舶情報に基づいて、監視対象海域における船舶の位置を地図上に配置した情報を表示する。航行支援装置20は、このように表示した地図を見た監視者からの操作に応じて、例えば船舶に海難情報や航行管制のための情報を送信することができる。
図3は、航行支援装置20が表示する地図の例を示す図である。この地図では、船舶3a、船舶3bの位置を示しており、船舶3a、船舶3bがそれぞれ進行する予測航路3c、予測航路3dを示している。このような予測航路は、例えば現在の船舶の対地針路と対地速度とに基づいて、その船舶が等速直線運動を行うと仮定して算出することが考えられるが、船舶は必ずしも等速直線運動により航行するわけではなく、予測精度が低い場合がある。例えば、この図においても、船舶3aの予測航路3cは陸地に乗り上げるように示されており、予測精度は低い。このような予測航路では、監視者は、複数の船舶の未来における状況を把握し難い。
【0023】
そこで、本実施形態の航行支援装置20は、過去において監視対象海域を通過した船舶から送信された船舶情報の履歴を記憶しておき、これらの船舶情報の履歴に基づいて統計的な分析を行うことにより、監視対象海域における船舶の典型航路を算出する。例えば、
図4は、監視対象海域における過去の航路を地図上に配置した例を示す図である。符号4aの領域に、監視対象海域における過去の航路を示している。このような航路から、例えば最頻値となる航路を、典型航路として算出する。
図5は、監視対象海域における典型航路を地図上に配置した例を示す図である。符号5aは、監視対象海域における典型航路を示している。航行支援装置20は、このような典型航路を算出することにより、監視対象海域の状況を把握するためにより有用な情報を提供することが可能となる。以下、このような航行支援装置20を詳細に説明する。
【0024】
図1に戻り、航行支援装置20は、船舶情報履歴記憶部21と、出力部22と、船舶情報取得部23と、船舶情報履歴取得部24と、典型航路算出部25と、予測航路算出部26と、船舶位置判定部27とを備えている。
船舶情報履歴記憶部21には、複数の船舶のそれぞれの自動船舶識別装置10から送信される船舶情報の履歴が記憶される。船舶情報履歴記憶部21に記憶されるデータの容量が大きくなる場合には、船舶情報履歴記憶部21は、例えば外部のコンピュータ装置が備えるように構成することもできる。
出力部22は、情報を出力する出力デバイスであり、例えば、ディスプレイである。
【0025】
船舶情報取得部23は、監視対象海域に存在する船舶に搭載された自動船舶識別装置10の船舶情報送信部11から送信される船舶情報を受信し、取得する。船舶情報取得部23は、取得した船舶情報を、履歴として船舶情報履歴記憶部21に記憶させる。
【0026】
船舶情報履歴取得部24は、船舶情報履歴記憶部21に記憶された、監視対象海域内を通過した船舶の航路を示す船舶情報の履歴を読み出し、取得する。
典型航路算出部25は、船舶情報履歴取得部24が取得した船舶情報の履歴に基づいて、監視対象海域内の典型航路を算出する。例えば、典型航路算出部25は、複数の船舶情報の履歴に基づいて、カーネル密度推定(以下、KDE(Kernel density estimation)ともいう)により典型航路を算出する。カーネル密度推定は、確率変数の確率密度関数を推定する手法であり、与えられた標本から母集団のデータを外挿するのに用いられる。カーネル密度推定では、ひとつひとつの観測値を中心としたカーネル関数(通常はガウス関数)の積み上げを行うことで母集団の推定を行う。これにより、従来の度数分布により階級を分割して行う統計分析に比べて、データの分布形状が選択するメッシュサイズにより分布が不正な形状となることを回避でき、分布量を滑らかに可視化できる。
【0027】
図6は、本実施形態におけるカーネル密度推定を説明する図である。ここでは、緯度を固定とし、縦軸を分布量とし、横軸を経度としている。式(1)の左辺は、座標xにおけるカーネル密度推定量を示す。カーネル密度推定量は、図における曲線の高さを表す。右辺におけるnは、標本数であり、カーネル密度推定を行う船舶情報の数である。hは、バンド幅であり、平滑化パラメータである。X
iは、観測値であり、ここでは経度(例えば、4.6Eなど)である。すなわち、X
iは、n個の標本のうち、i番目の標本の経度の値である。K、K(x)は、カーネル関数である。カーネル関数としては、例えば、標準的なガウス関数(平均0、分散1)を適用することができる。式(2)は、このようなカーネル関数の例である。
【0028】
このようなカーネル密度推定を行うことにより、典型航路算出部25は、船舶情報履歴記憶部21に記憶されている船舶情報の履歴に基づいて、監視対象海域の緯度、経度ごとの航路の最頻値(または中央値)を算出し、最頻値を結ぶことで典型航路を算出することができる。
図7は、典型航路算出部25が算出した典型航路を地図上に配置した例を示す図である。ここでは、監視対象海域における船舶7aと、典型航路7bおよび典型航路7cと、KDE境界線7dとを示している。KDE境界線7dは、例えば、カーネル密度推定における分布のうち、カーネル密度推定量が所定の閾値(例えば、80%)を超える領域の境界である。
【0029】
ここで、典型航路算出部25は、船舶情報履歴記憶部21に記憶されている複数の船舶情報のうち、任意の特性を抽出条件として船舶情報を抽出し、抽出した船舶情報を標本としてカーネル密度推定を行うことができる。これにより、特性に応じた典型航路を算出することができ、典型航路の確度を向上させることが可能となる。例えば、典型航路算出部25は、期間、対地針路、船舶種別、目的地、航海ステータス、時間帯等の項目のいずれかまたは複数の項目の情報ごとに、同様の特性を持つ船舶情報を標本としてカーネル密度推定を行うことで、特性に応じた典型航路を算出することができる。
【0030】
図8は、対地針路を抽出条件とする場合の例を説明する図である。対地針路を抽出条件として抽出した船舶情報を標本としてカーネル密度推定を行うことにより、監視対象海域における往路方向、復路方向のそれぞれでカーネル密度推定を行った典型航路を算出することができる。また、明らかに想定されない針路方向の船舶情報を排除でき、標本となる船舶情報を絞り込むことで典型航路の精度を向上させることができる。例えば、図に示すように、監視対象海域における船舶情報の対地針路の幅を180度ごとに2つの針路方向に分割し、分割した針路方向ごとに典型航路を算出することができる。具体的には、例えば、監視対象海域における船舶情報に含まれる対地針路が、0度から180度未満であるグループと、180度から360度未満であるグループとの2つに船舶情報をグループ化し、グループ化した標本ごとに典型航路を算出する。ここでは、対地針路の幅を180度ごとに2つの針路方向に分割する例を示したが、例えば90度ごとに4つの針路方向に分割して典型航路を算出することもできる。
【0031】
図9は、船舶種別を抽出条件とする場合の例を説明する図である。航行する船舶は、その船舶種別ごとに航路の傾向があると考えられるため、船舶種別を抽出条件として抽出した船舶情報を標本としてカーネル密度推定を行うことにより、監視対象海域において船舶種別ごとにカーネル密度推定を行った典型航路を算出することができる。例えば、図に示すように、監視対象海域における船舶情報の船舶種別がコンテナであるものと旅客船(フェリー等)であるものとをそれぞれ抽出条件として抽出した船舶情報を標本としてカーネル密度推定を行うことができる。ここでは、例えばコンテナは外洋から湾内に入ってくる航路を典型航路として算出できることに対し、旅客船は半島間を往復する航路を典型航路として算出できる。
【0032】
また、典型航路算出部25は、例えば同一の目的地であることを抽出条件として抽出した船舶情報を標本としたり、午前や午後等の時間帯を抽出条件として抽出した船舶情報を標本としたり、航海ステータスが停泊中である間に移動している船舶情報は排除したりすることによってカーネル密度推定を行うことで、特性に応じた典型航路を算出することができる。
【0033】
ここで、典型航路算出部25は、このような典型航路を、監視対象海域を航行中の予測対象の船舶から送信された船舶情報に応じてリアルタイムに算出することもできるが、不定期(例えば、ユーザからの操作に応じて)または定期的(例えば、1日ごとや1週間ごとなど)に、船舶情報履歴記憶部21に記憶されている船舶情報の履歴に基づいて、所定の特性ごとの典型航路を算出し、典型航路の情報を予め自身の記憶領域に記憶させておくことができる。
【0034】
予測航路算出部26は、船舶情報取得部23が取得した船舶情報と、典型航路算出部25が算出した典型航路とに基づいて、海域内に存在する船舶の予測航路を算出する。ここで、予測航路算出部26は、船舶情報取得部23が取得した船舶情報が示す船舶の位置に基づいて、典型航路算出部25が算出した複数の典型航路のうちいずれかの典型航路を選択し、選択した典型航路を含む航路を予測航路として算出する。ここで、予測航路算出部26は、船舶情報取得部23が取得した船舶情報が示す船舶の対地針路と、典型航路算出部25が算出した複数の典型航路の針路方向とに基づいて、典型航路の針路方向が対地針路の所定角度以内である典型航路を選択する。例えば、予測航路算出部26は、監視対象海域を航行中の船舶の自動船舶識別装置10から送信された船舶情報を船舶情報取得部23が取得すると、典型航路算出部25が算出した典型航路のうち、船舶情報取得部23が取得した船舶情報の特性に最も合致する典型航路を追従航路として決定する追従航路決定処理を行う。また、予測航路算出部26は、船舶情報取得部23が取得した船舶情報が示す船舶の位置から、追従航路決定処理により決定した追従航路を結んだ航路を、予測航路として算出する予測航路算出処理を行う。
【0035】
図10は、予測航路算出部26による追従航路決定処理を説明する図である。ここでは、監視対象海域において、航行中の船舶10aに対し、典型航路10bと、典型航路10cと、典型航路10dとが存在する。この場合、例えば、予測航路算出部26は、船舶10aの現在位置から最も近い典型航路10dを、追従航路の候補として選択する。予測航路算出部26は、追従航路の候補として選択した典型航路10dの針路方向と、船舶10aの針路方向とを比較する。例えば、典型航路10dの針路方向が、船舶10aの針路方向の所定角度以内(例えば、±90度)であるか否かを判定する。ここでは、典型航路10dの針路方向が、船舶10aの針路方向の所定角度以内でないため、典型航路10dの次に近い典型航路10cを、追従航路の候補として選択する。予測航路算出部26は、追従航路の候補として選択した典型航路10cの針路方向と、船舶10aの針路方向とを比較し、針路方向の所定角度以内であると判定すると、典型航路10cを追従航路として決定する。
【0036】
図11は、予測航路算出部26による予測航路算出処理を説明する図である。ここでは、船舶11aに対して、典型航路11bを追従航路として決定した例を示している。予測航路算出部26は、船舶11aから送信された船舶情報に示される対地針路と対地速度と回頭率とから、船舶11aが追従航路に向かう最短ルートを算出し、その最短ルートと追従航路とを結んだ予測航路11cを算出する。また、予測航路算出部26は、対地速度と所定予測時間(例えば、30分)とを乗じて、予測航路上における船舶11aの所定予測時間後の位置を、予測位置として算出する。このようにすれば、監視対象海域における過去の船舶情報の履歴から、典型航路を算出し、航行中の船舶の特性に応じた典型航路を選択することで、その船舶の未来における航路や位置の予測精度を向上させることができる。また、予測航路算出部26は、このように算出した予測航路や予測位置を出力部22に表示させる。
図12は、予測航路算出部26が予測航路や予測位置を出力部22に表示させる例を示す図である。これにより、監視対象海域を監視する監視者は、監視対象海域における船舶の状況をより的確に把握することができ、例えば海難情報の提供や航行管制に役立てることができる。これにより、例えば、安全な航行を支援することが可能となる。
【0037】
図1に戻り、船舶位置判定部27は、船舶情報取得部23が取得した船舶情報が示す船舶の位置が、典型航路算出部25が算出した典型航路から所定領域内であるか否かを判定する。所定領域とは、例えば、KDE境界線内の領域である。船舶位置判定部27は、例えば、船舶情報取得部23が取得した船舶情報が示す船舶の位置が、典型航路算出部25が算出した典型航路から所定領域内でないと判定した場合、警告を出力することができる。例えば、
図13は、予測航路算出部26が出力部22に警告を表示させる例を示す図である。ここでは、典型航路から大きく外れた船舶の航路を、警告として出力部22に表示させている。このような警告により、監視対象海域を監視する監視者は、典型航路から大きく外れて航行している船舶が存在することを簡単に把握することができる。これにより、例えば、安全な航行を支援することが可能となる。
【0038】
次に、図面を参照して、本実施形態による航行支援装置20の動作例を説明する。
図14は、本実施形態による航行支援装置20の動作例を示すフローチャートである。
航行支援装置20の入力部(監視対象海域入力部)は、ユーザから監視対象海域の緯度および経度を示す情報の入力部を受け付ける。監視対象海域の緯度および経度を示す情報は、ユーザが直接指定して入力してもよいし、地図上においてユーザによって選択された描画領域に基づいて算出してもよい。航行支援装置20の船舶情報履歴取得部24は、ユーザにより入力された監視対象海域の緯度および経度を示す情報に基づき、船舶情報履歴記憶部21に記憶されている船舶情報であって、自船位置が、ユーザが指定した監視対象海域内である船舶情報の履歴を読み出す(ステップS10)。
【0039】
典型航路算出部25は、船舶情報履歴取得部24が取得した船舶情報に基づいて、監視対象海域内の典型航路を算出する(ステップS20)。具体的には、典型航路算出部25は、まず、船舶情報履歴取得部24が取得した船舶情報から、監視対象海域のエリア内の船舶情報を選択する(ステップS21)。また、典型航路算出部25は、選択した船舶情報のうちから、所定の分析対象期間内の船舶情報を選択する(ステップS22)。所定の分析対象期間とは、例えば現在日時から所定期間内(例えば、1年以内)でもよいし、監視者からの操作に応じて入力される期間でもよい。
【0040】
典型航路算出部25は、選択した船舶情報のうちから、所定の船舶種別を示す船舶情報を選択する(ステップS23)。典型航路算出部25は、選択した船舶情報のうちから、所定角度の対地針路を示す船舶情報を選択する(ステップS24)。典型航路算出部25は、選択した船舶情報に基づいてカーネル密度推定を行い(ステップS25)、分析結果を出力部22に表示させる(ステップS26)。典型航路算出部25は、このようなカーネル密度推定を、船舶種別ごと、対地針路ごとに行う。
【0041】
典型航路算出部25は、カーネル密度推定の結果に基づいて、典型航路を算出する(ステップS30)。例えば、典型航路算出部25は、カーネル密度推定による最頻値を算出し(ステップS31)、最頻値を結ぶことで典型航路を算出する(ステップS32)。典型航路算出部25は、算出した典型航路を自身の記憶領域に記憶する。
【0042】
船舶情報取得部23が、監視対象海域に存在する予測対象の船舶に搭載された自動船舶識別装置10の船舶情報送信部11から送信される船舶情報を受信すると、予測航路算出部26は、その船舶情報に基づいて追従航路決定処理を行う(ステップS40)。例えば、予測航路算出部26は、典型航路算出部25が算出した典型航路から、予測対象の船舶の船舶情報が示す船舶種別に一致する船舶情報に基づいて算出された典型航路を選択する(ステップS41)。予測航路算出部26は、選択した典型航路のうちから、予測対象の船舶の現在位置から最も近い典型航路を選択する(ステップS42)。
【0043】
予測航路算出部26は、選択した典型航路が、予測対象の船舶の船舶情報が示す対地針路の所定角度以内であるか否かを判定する(ステップS43)。予測航路算出部26は、選択した典型航路が、予測対象の船舶の船舶情報が示す対地針路の所定角度以内でないと判定すると(ステップS43:No)、ステップS42に戻り、次に近い典型航路を選択する。選択した典型航路が、予測対象の船舶の船舶情報が示す対地針路の所定角度以内であると判定すると(ステップS43:Yes)、予測航路算出部26は、その典型航路を追従航路として決定する(ステップS44)。
【0044】
予測航路算出部26は、予測対象の船舶の予測位置を算出する(ステップS50)。例えば、予測航路算出部26は、予測対象の船舶の位置から、ステップS44で決定した追従航路までを最短ルートで結んだ航路を、予測航路として算出する(ステップS51)。また、予測航路算出部26は、予測航路上における予測対象の船舶の所定予測時間後の位置を予測位置として算出する(ステップS52)。
【0045】
以上説明したように、本実施形態によれば、過去の船舶情報の履歴に基づいてカーネル密度推定を行って典型航路を算出し、航行中の船舶が典型航路を追従するものとして船舶の予測航路を算出することにより、未来における船舶の位置の予測精度を向上させることができる。また、カーネル密度推定を行う標本とする船舶情報を特性によって変化させることで、用途に応じた適切な典型航路を算出することができる。例えば、海域全体(広いエリア)の典型航路を把握したり、港湾中心(狭いエリア)の典型航路を把握したりすることができる。また、このような典型航路を大きく外れて航行する船舶を発見することができ、例えば、海上交通の安全上留意すべき船舶を絞り込むことが可能となる。
【0046】
なお、本発明における処理部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより航行支援を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、インターネットやWAN、LAN、専用回線等の通信回線を含むネットワークを介して接続された複数のコンピュータ装置を含んでもよい。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、ネットワークを介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0047】
また、上述した機能の一部または全部を、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路として実現してもよい。上述した各機能は個別にプロセッサ化してもよいし、一部、または全部を集積してプロセッサ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、または汎用プロセッサで実現してもよい。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いてもよい。