(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6343482
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】密封用容器およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 81/34 20060101AFI20180604BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20180604BHJP
B65D 77/20 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
B65D81/34 U
B32B27/36
B65D77/20 M
B65D77/20 H
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-89768(P2014-89768)
(22)【出願日】2014年4月24日
(65)【公開番号】特開2015-209215(P2015-209215A)
(43)【公開日】2015年11月24日
【審査請求日】2017年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208455
【氏名又は名称】大和製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(72)【発明者】
【氏名】村上 知行
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 和寛
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 正博
(72)【発明者】
【氏名】江藤 輝彦
【審査官】
家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】
実開平07−028866(JP,U)
【文献】
特開平08−174752(JP,A)
【文献】
特開2002−308332(JP,A)
【文献】
特開2010−269848(JP,A)
【文献】
特開平08−217069(JP,A)
【文献】
特開2013−203447(JP,A)
【文献】
特開2013−006607(JP,A)
【文献】
特開昭63−087225(JP,A)
【文献】
特開2012−030884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D81/34
B32B 1/00−43/00
B65D77/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を封止しかつストローによって開封される蓋体を有する密封用容器において、
前記蓋体は、前記ストローを突き刺すための脆弱部と、少なくとも金属を含む蒸着膜によって形成されていて電磁波の照射を受けて発熱する発熱体層とを有する第1基材層と、
前記第1基材層における一方側の面に、熱硬化性を有する合成樹脂材料によって形成された接着剤を介して積層されかつポリエステル系樹脂フィルムによって構成された第2基材層と、
前記第2基材層における前記第1基材層とは反対側の面に、熱可塑性を有する合成樹脂材料によって形成されかつ前記開口部に密着させられるシール層とを備え、
前記発熱体層は、前記第1基材層における前記第2基材層側の面に設けられていて、前記電磁波の照射を受けて発熱することにより前記シール層を軟化させるように構成され、
前記脆弱部は、前記第1基材層の少なくとも一部に形成されるとともに、前記第1基材層および前記発熱体層を貫通して前記接着剤に到る複数の貫通孔によって形成されており、
前記貫通孔を形成することによって前記貫通孔の内面に露出した前記発熱体層は、前記貫通孔内に浸入した前記接着剤によって覆われている
ことを特徴とする密封用容器。
【請求項2】
前記シール層は、前記熱可塑性を有する前記合成樹脂材料の塗膜であることを特徴とする請求項1に記載の密封用容器。
【請求項3】
開口部を封止しかつストローによって開封される蓋体を有する密封用容器の製造方法において、
前記蓋体は、第1基材層と、前記第1基材層の一方側の面に熱硬化性を有する合成樹脂材料によって形成された接着剤によって接着されかつポリエステル系樹脂フィルムによって構成された第2基材層と、前記第2基材層における前記第1基材層とは反対側の面に熱可塑性を有する合成樹脂材料によって形成されかつ前記開口部に密着させられるシール層とを備え、
前記第1基材層における前記第2基材層側の面に電磁波の照射を受けて発熱して前記シール層を軟化させる発熱体層を形成し、その後に、前記第1基材層および前記発熱体層をそれらの厚さ方向に貫通する複数の貫通孔を形成することによって前記貫通孔の内面に前記発熱体層を露出させ、かつ、前記ストローを突き刺すための脆弱部を形成する第1工程と、
前記第2基材層における前記第1基材層側の面に前記接着剤の層を形成し、かつ、前記第2基材層における前記第1基材層とは反対側の面に前記シール層を形成する第2工程と、その後に、
前記第1工程で前記第1基材層に形成された前記発熱体層と、前記第2工程で前記第2基材層に形成された前記接着剤の層とを互いに重ね合わせた状態で、それらを圧着させることよって前記貫通孔の内部に前記接着剤を浸入させると共に、前記貫通孔の内部に浸入した前記接着剤によって、前記貫通孔の内面に露出した前記発熱体層を覆いかつ、前記第1基材層と前記第2基材層とを前記接着剤によって接着する第3工程と、さらにその後に、
前記第2基材層と前記開口部とを前記シール層を介して接着する第4工程とを有する
ことを特徴とする密封用容器の製造方法。
【請求項4】
前記シール層は、前記熱可塑性を有する前記合成樹脂材料を塗装して形成されることを特徴とする請求項3に記載の密封用容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、開口部を封止しかつストローによって開封される蓋体を有する密封用容
器およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の容器に用いられる蓋体の一例が特許文献1に記載されている。その蓋体は、切り込み部が形成されたプラスチックフィルム基材層と、容器の開口部に接着されるイージーピール層とを備え、それらの層が接着剤を介して積層して構成されている。上記の切り込み部は、蓋体にストローを容易に突き刺すためのものであり、前記構成の蓋体にプラスチックフィルム基材層側からレーザー光を照射して形成されている。
【0003】
また特許文献2には、ストローを容易に突き刺すことができる積層フィルムの製造方法が記載されている。その積層フィルムは、ストローを差し込むための開口部が形成された第1積層フィルムと、ヒートシール性を有する第2積層フィルムとを備え、それらの積層フィルムが溶融ポリオレフィン系樹脂を介した押出ラミネート法によって積層されている。上記の第1積層フィルムは延伸プラスチックフィルムとポリオレフィン系プラスチックフィルムとをドライラミネート法によって積層して構成され、これと同様の方法によって金属箔とポリオレフィン系のヒートシール性プラスチックフィルムとを積層して上記の第2積層フィルムが構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−61469号公報
【特許文献2】特開昭59−178247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された構成では、製造のばらつきによってプラスチックフィルム基材層の厚さが変化すると、レーザーの出力あるいは光量が一定であるとすれば、プラスチックフィルム基材層の厚さに応じて切り込み部の深さが変化してしまう可能性がある。例えば、プラスチックフィルム基材層の実際の厚さがその設計値よりも薄い場合には、イージーピール層まで切り込み部が形成されてしまい、切り込み部が破損しやすくなる。これに対してプラスチックフィルム基材層の実際の厚さが上記の設計値よりも厚い場合には、切り込み部の深さが浅くなってしまい、ストローを突き刺しにくくなる。
【0006】
また、特許文献2に記載された構成では、予め開口部を形成した第1積層フィルムに第2積層フィルムを貼り合わせるため、第1積層フィルムのみに開口部を形成することができる。しかしながら、上記の貼り合わせは押出ラミネート法によって行うため、溶融したポリオレフィン系樹脂が開口部に浸入して開口部が塞がれてしまう可能性がある。その場合、上記構成の積層フィルムによって構成される蓋体にストローを突き刺しにくくなる可能性がある。また、前記貼り合わせ時の熱によって第2積層フィルムのヒートシール性プラスチックフィルムが劣化して変色したり、あるいは撓んで蓋体が歪んだりする可能性がある。その結果、蓋体のヒートシール性が悪化して容器を密封できない可能性がある。さらに、第2積層フィルムは金属箔を有しているため、上記の蓋体ごと容器に充填された内容物を電子レンジで加熱することができない。
【0007】
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであって、蓋体にストローを容易に突き刺すことができかつ電子レンジで加熱することができる密封用容
器およびその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために
、この発明は、開口部を封止しかつストローによって開封される蓋体を有する密封用容器において、前記蓋体は、前記ストローを突き刺すための脆弱
部と、少なくとも金属を含む蒸着膜によって形成さ
れていて電磁波の照射を受けて発熱する発熱体層とを有する第1基材層と
、前記第1基材層における一方側の面
に、熱硬化性を有する合成樹脂材料によって形成された接着剤を介して積層されかつポリエステル系樹脂フィルムによって構成された第2基材層と
、前記第2基材層における前記第1基材層とは反対側の面
に、熱可塑性を有する合成樹脂材料によって形成されかつ前記開口部に密着させられるシール層とを備
え、前記発熱体層は、前記第1基材層における前記第2基材層側の面に設けられていて、前記電磁波の照射を受けて発熱することにより前記シール層を軟化させるように構成され、前記脆弱部は、前記第1基材層の少なくとも一部に形成されるとともに、前記第1基材層および前記発熱体層を貫通して前記接着剤に到る複数の貫通孔によって形成されており、前記貫通孔を形成することによって前記貫通孔の内面に露出した前記発熱体層は、前記貫通孔内に浸入した前記接着剤によって覆われていることを特徴とするものである。
【0009】
この発
明におい
ては、前記シール層は
、前記熱可塑性を有す
る前記合成樹脂材料の塗膜であることを特徴とする密封用容器である。
【0012】
この発
明の製造方法は、開口部を封止しかつストローによって開封される蓋体を有する密封用容器の製造方法において、前記蓋体は、第1基材層と
、前記第1基材層の一方側の面
に熱硬化性を有する合成樹脂材料によって形成された接着
剤によって接着されかつポリエステル系樹脂フィルムによって構成された第2基材層と
、前記第2基材層における前記第1基材層とは反対側の面
に熱可塑性を有する合成樹脂材料によって形成されかつ前記開口部に密着させられるシール層とを備え、前記第1基材層
における前記第2基材層側の面に電磁波の照射を受けて発熱して前記シール層を軟化させる発熱体層を形成し、その後に、前記第1基材層および前記発熱体層をそれらの厚さ方向に貫通する複数の貫通孔を形成することによって前記貫通孔の内面に前記発熱体層を露出させ、かつ、前記ストローを突き刺すための脆弱部を形成する第1工程と、前記第2基材層における前記第1基材層側の面に前記接着剤の層を形成し、かつ、前記第2基材層における前記第1基材層とは反対側の面に前記シール層を形成する第2工程と、その後
に、前記第1工程で前記第1基材層に形成された前記発熱体層と、前記第2工程で前記第2基材層に形成された前記接着剤の層とを互いに重ね合わせた状態で、それらを圧着させることよって前記貫通孔の内部に前記接着剤を浸入させると共に、前記貫通孔の内部に浸入した前記接着剤によって、前記貫通孔の内面に露出した前記発熱体層を覆いかつ、前記第1基材層と前記第2基材層とを前記接着
剤によって接着する第3工程と、さらにその後
に、前記第2基材層と前記開口部とを前記シール層を介して接着する第4工程とを有することを特徴とする密封用容器の製造方法である。
【0013】
この発
明の製造方法におい
ては、前記シール層は、前
記熱可塑性を有す
る前記合成樹脂材料を塗装して形成されることを特徴とする密封用容器の製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、第1基材層のみに脆弱部が形成されるため、第2基材層は、その強度を維持することができる。そのため、ストローを容易に突き刺すことができ、かつ、所期の強度を有する蓋体を得ることができる。また、第2基材層は、ポリオレフィン系樹脂フィルムよりも優れた耐熱性を有するポリエステル系樹脂フィルムによって構成されている。そのため、熱によって第2基材層が劣化して変色したり、撓んだりしにくい。つまり、上記の蓋体の熱変形を抑制することができる。
【0015】
また、この発明によれば
、シール層が熱可塑性を有する合成樹脂材料の塗膜であるため、フィルムによってシール層を構成する場合に比較してその厚さを薄くすることができる。これにより蓋体全体の厚さを薄くすることができ、ストローによる開封性を向上させることができる。
【0016】
さらに、この発明によれば
、電磁波を受けて発熱する発熱体が設けられており、その発熱体が発する熱によってシール層を軟化させるようになっている。シール層が軟化すると、その接着強度が低下するため、蓋体を開口部から容易に引き剥がすことができる。例えば、電子レンジによって内容物を充填した密封用容器を蓋体ごと加熱し、その後に、開口部から蓋体を引き剥がして加熱した内容物を取り出すことができる。
【0017】
そして、この発明によれば
、脆弱部となる貫通孔内に接着剤が浸入しているため、第1基材層と第2基材層との接着性が向上されている。また、貫通孔周辺の第1基材層や第2基材層のいわゆる伸びが抑制されることにより、ストローによる開封性を向上することができる。
【0018】
この発
明の製造方法によれば、脆弱部を形成した第1基材層に、第2基材層を積層するため、各基材層を積層した後に第1基材層に脆弱部を形成する場合に比較して、第1基材層のみに脆弱部を形成することができる。また、第2基材層の強度を維持することができる。そのため、ストローを容易に突き刺すことができ、かつ、所期の強度を有する蓋体を得ることができる。また、上記の第2基材層が、ポリエステル系樹脂フィルムによって構成されているため、熱によって第2基材層が変色したり撓んだりすることを抑制できる。つまり、上記の蓋体の熱による変化を抑制することができる。
【0019】
また、この発
明の製造方法によれば
、シール層が塗膜であるため、フィルムによってシール層を構成する場合に比較してシール層および蓋体全体の厚さを薄くすることができる。これによりストローによる開封性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】この発明における蓋体
の参考例の断面図である。
【
図4】この発明における蓋体
の一例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
つぎに、この発明を具体的に説明する。この発明に係る密封用容器は、ストローによって蓋体を開封し、また電子レンジによって加熱した場合に蓋体を引き剥がして開封することが可能な食品包装用の容器である。
図5は、この発明に係る密封用容器の斜視図である。上記の容器1は、ここに示す例では、カップ状に形成されており、その開口部2から円形状の底部3に向けて外径が次第に小さくなるようにテーパ状に形成された胴部4を有している。その胴部4における開口部2側の端部に、フランジ部5が形成されていて、その上面5aに、フランジ部5よりも大径の蓋体6が熱圧着されるようになっている。こうすることにより容器1と蓋体6とによって形成される空間が密封されるようになっている。その蓋体6には、半径方向で外側に突出する摘み部7が形成されており、後述するように、蓋体6ごと容器1を加熱した場合に、その摘み部7を持ち上げることにより上面5aから蓋体6を引き剥がすようになっている。また、蓋体6の中央部には、ストローを刺し通すための挿入部8が形成されている。
【0022】
上記の容器1は、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂などのポリエステル系樹脂、ナイロン系樹脂、スチレン系樹脂などの熱可塑性樹脂材料などによって形成されることが好ましい。また、電子レンジで使用することができ、かつ電子レンジによって内容物ごと容器1を加熱した場合に、熱変形しにくく、つまり容器1の形状を維持できる材料によって形成されることが好ましい。
【0023】
図1は、この発明における蓋体6
の参考例の断面図である。その蓋体6は、外層である第1基材層9の一方側の面に、接着剤を介して第2基材層10を積層して構成されている。上記の接着剤は、
図1に示すように、第1基材層9と第2基材層10との間に接着剤層11を形成している。また上記の第2基材層における前記第1基材層9とは反対側の面に、上述したフランジ部5の上面5aに密着するシール層12が形成されている。
【0024】
上記の第1基材層9は、蓋体6の最も外側すなわち表面に配置される第1樹脂フィルム層13と、これよりも容器1の内側に配置される第2樹脂フィルム層14とを備えている。その第1樹脂フィルム層13は、ポリエチレンテレフタレート樹脂などのポリエステル系樹脂フィルムやナイロン系樹脂フィルムによって構成されている。上記の第1樹脂フィルム層13における一方側の面が、所定の印刷を行う印刷面となっており、その印刷による塗料の層が印刷層15となっている。
【0025】
上記の第2樹脂フィルム層14は、ポリエチレンテレフタレート樹脂などのポリエステル系樹脂フィルムによって構成されている。その第2樹脂フィルム層14における前記第1樹脂フィルム層13とは反対側の面に、電磁波を受けて発熱する発熱体層16が形成されている。その発熱体層16は、例えば、アルミニウム、錫、亜鉛、鉄、銅などの金属、または、それらの酸化物を蒸着して構成されている。
【0026】
発熱体層16を形成する方法について簡単に説明する。上述した各種の金属およびそれらの酸化物のうち1種類または2種類以上の金属あるいは酸化物を選択してこれを蒸着材料とし、その蒸着材料をチャンバー内で蒸発あるいは昇華させて第2樹脂フィルム
層14の一方側の面に蒸着させる。なお、樹脂フィルムに対する金属の蒸着方法は従来知られている方法であってよい。次いで、上記のようにして蒸着させた金属膜上にすなわち発熱体層16上に予め定めたパターンの保護層17を印刷あるいは塗装によって形成する。いわゆるマスキングを行う。その後、所定の薬剤によって保護層17が被覆されていない発熱体層16を除去する。その結果、予め定めたパターン形状の発熱体層16が第2樹脂フィルム層の一方側の面に形成される。例えば
図2に示すように、格子状に発熱体層16が形成される。
【0027】
上述した第1樹脂フィルム層13の印刷層15と、第2樹脂フィルム層14における他方側の面とが熱硬化性樹脂を主体とした接着剤を介して接着される。その接着方法はドライラミネート法などの従来知られた方法であってよい。その接着剤は、
図1に示すように、接着剤層18を形成している。そして、上記構成の第1基材層9の中央部における所定の範囲内に、
図3に示すように、貫通孔19が複数形成されており、前記所定の範囲における第1基材層9の強度が低下させられている。前記所定の範囲は一例として、ストローの外形形状に応じた範囲であり、そのため前記所定の範囲が、ストローを刺し通すための挿入部8となっている。また各貫通孔19は、例えばレーザー加工によって形成することができる。この挿入部8がこの発明における脆弱部に相当している。
【0028】
上記の第2基材層10は、ポリエチレンテレフタレート樹脂などのポリエステル系樹脂フィルムによって構成されている。その厚さは10μmから20μmの範囲であることが好ましい。第2基材層10の厚さが10μmよりも薄い場合には、蓋体6の強度に不足を生じる可能性がある。これに対して20μmよりも厚い場合には、蓋体6の強度を確保できるものの、ストローを刺し通しにくくなる可能性がある。
【0029】
第2基材層10における第1基材層9とは反対側の面すなわち容器1の内側に配置される面に、上述したシール層12が形成されている。そのシール層12は、ここに示す例では、ポリプロピレン樹脂やポリエチレン樹脂などの熱可塑性を有するポリオレフィン系樹脂の塗膜であって、例えば、ポリプロピレン樹脂を分散させた溶液を、第2基材層10における一方側の面に塗布し、その後、加熱することで、溶媒を乾燥すると共にポリプロピレン樹脂を溶融し、ポリプロピレン樹脂を薄膜状に形成している。なお、シール層12を形成する前に、第2基材層10に、コロナ放電処理を施してその表面を親水性にしたり、シリカやアルミナなどの酸化物の蒸着膜を形成したりしておくとよい。こうすることにより、第2基材層10に対するシール層12の密着性あるいは接着性を向上させることができる。なおまた、上記のシール層12の厚さは1μmから10μmの範囲であることが好ましい。シール層12の厚さが1μmよりも薄い場合には、蓋体6の接着強度に不足を生じる可能性があり、これに対して10μmよりも厚い場合には、蓋体6の接着強度が強くなりすぎて開蓋性が低下する可能性がある。
【0030】
第2基材層10における第1基材層9側の面に、熱硬化性樹脂を主体とした接着剤を介して第1基材層9が積層される。その接着剤は上述したように、接着剤層11を形成している。上記の接着剤は、一例として、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂とポリエステル樹脂との共重合樹脂などを主剤とし、これにメラミン樹脂、イソシアネート樹脂などの硬化剤を添加して構成される。この接着剤は、後述するように第2基材層10における他方側の面に塗布した後に加熱されて乾燥させられる。このようにして接着剤層11が形成され、その接着剤層11に第1基材層9が接着される。
【0031】
蓋体6の製造方法について簡単に説明する。第1樹脂フィルム13と、第2樹脂フィルム14とを上記のように積層して第1基材層9を構成する。その第1基材層9における所定の範囲内に複数の貫通孔19を形成する。各貫通孔19は例えばレーザー加工によって形成する。これとは別に、ポリエステル系樹脂フィルムを用意し、先ず、その一方側の面に上述した熱可塑性を有するポリオレフィン系樹脂を塗布して加熱溶融してポリオレフィン系樹脂を薄膜状に形成する。つまりシール層12を形成する。次に、第2基材層10の他方側の面に熱硬化性樹脂を主体とした接着剤を塗布する。その接着剤を、シール層12を構成しているポリオレフィン系樹脂の融点温度150℃よりも低い温度例えば100℃で5分間、乾燥させて接着剤層11を形成する。このようにして第2基材層10を構成する。その後、接着剤層11上に第1基材層9の第2樹脂フィルム14を重ね合わせ、その状態で第1基材層9と第2基材層10とを線圧50N/cmで回転する一対の圧着ローラ間を通過させることで圧着する。この圧着条件では、上記の接着剤層11を構成している接着剤は、貫通孔19に浸入しにくくなっている。このようにして積層構造のシートを構成し、そのシートを所定の形状に成形して蓋体6とする。そして、内容物を充填した容器1の開口部2を封止するように、フランジ部5の上面5aに蓋体6のシール層12を熱圧着する。これは例えば、170℃、2MPaで1秒間かけて行う。なお、上記の貫通孔19を形成する工程が、この発明における第1工程に相当し、第2基材層10にシール層12および接着剤層11を形成する工程が、この発明における第2工程に相当している。また、各基材層9,10を接着する工程が、この発明における第3工程に相当し、容器1に蓋体6を接着する工程が、この発明における第4工程に相当している。
【0032】
上記構成の容器1では
、第1基材層9のみに挿入部8を形成しているため、蓋体6の強度を特には損なうことがない。また、発熱体層16が設けられているため、電子レンジによって蓋体6ごと容器1を加熱した場合に、その発熱体層16を発熱させ、その熱によってシール層12を軟化あるいは融解することができる。これにより容器1から蓋体6を容易に剥離することができ、ストローを介さないで、例えば容器1内に充填した飲料を飲むことができる。なお、発熱体層16の熱は、接着剤層11および第2基材層10などを介してシール層12に伝達される
。接着剤層11は熱硬化性樹脂を主体として構成されているため、熱変形しにくく、また熱によって劣化しにくい。そして上記の第2基材層10はポリエステル系樹脂フィルムによって構成されているから、ポリオレフィン系樹脂によって第2基材層10を形成した場合に比較して、第2基材層10も熱変形しにくい。それらの結果、蓋体6は熱変形しにくくなっている。また接着剤層11を構成している接着剤を、シール層12を構成しているポリオレフィン系樹脂の融点温度よりも低い温度で乾燥させるため、シール層12の接着強度を損なうことがない。
【0033】
図4は、この発明における蓋体6
の一例の断面図である。ここに示す例は、各貫通孔19に接着剤層11を構成している接着剤が浸入するように、第1基材層9と第2基材層10とを圧着させた例である。上記のように接着剤層11を形成した後に、接着剤が貫通孔19内に浸入するように、各基材層9,10を線圧150N/cmで回転する一対の圧着ローラ間を通過させることで圧着する。
図4に示す構成の蓋体6では、貫通孔19のうち、接着剤層11に隣接する端部から貫通孔19の途中まで貫通孔19内に接着剤が浸入しているため、第1基材層9と第2基材層10との接着性が向上されている。また
、これにより、図1に示す例よりも、貫通孔19周辺の第2樹脂フィルム14や第2基材層10のいわゆる伸びが抑制さ
れ、それらの強度あるいは硬度が向上している。言い換えれば、挿入部8が
図1に示す例よりも、脆くなっている。それらの結果、挿入部8にストローを差し込むと、そのストローによって各フィルムを容易に破断することができ、ストローによる開封性を向上することができる。
【符号の説明】
【0034】
1…密封用容器、 2…開口部、 6…蓋体、 9…第1基材層、 10…第2基材層、 11…接着剤層、 12…シール層、 19…貫通孔。