(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6343487
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】恒温槽付水晶発振器およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H03B 5/32 20060101AFI20180604BHJP
【FI】
H03B5/32 A
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-99475(P2014-99475)
(22)【出願日】2014年5月13日
(65)【公開番号】特開2015-216579(P2015-216579A)
(43)【公開日】2015年12月3日
【審査請求日】2017年3月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232483
【氏名又は名称】日本電波工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】浅村 文雄
【審査官】
石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−119031(JP,A)
【文献】
特開2009−182881(JP,A)
【文献】
特開2014−022913(JP,A)
【文献】
特開2000−077938(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03B 5/30− 5/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水晶振動子を備える温度補償型水晶発振器と、
電力により発熱する発熱体を備えて前記発熱体での発熱を制御する温度制御回路と、
実装用基板と前記実装用基板に接合して前記実装用基板を覆う金属カバーとから構成されて前記温度補償型水晶発振器と前記温度制御回路とを収容する容器と、
支柱によって前記実装用基板に電気的かつ機械的に接続されて、前記実装用基板と前記金属カバーとによって囲まれた空間内に保持されることにより前記容器内に設けられた保持基板と、
を有し、
前記保持基板の一方の主面に前記温度補償型水晶発振器が搭載され、前記保持基板の他方の主面に前記発熱体が搭載され、
前記温度補償型水晶発振器は、前記水晶振動子を用いる発振回路と、温度センサと、該温度センサでの検出結果に基づいて前記発振回路の発振周波数の温度補償を行う温度補償回路と、温度と温度補償量との関係を記憶するための不揮発性メモリと、が設けられた集積回路をさらに有し、
前記集積回路は、前記関係に基づいて前記温度補償を実行し、
前記実装用基板は、前記温度補償型水晶発振器に電源電圧を供給する第1の電源端子と、前記温度制御回路に電源電圧を供給する第2の電源端子と、を備え、
前記第2の電源端子に電圧を印加しない状態で前記第1の電源端子に電源電圧を印加して前記発振周波数の周波数温度特性を測定した結果に基づいて、前記関係が前記不揮発性メモリに書き込まれ、
前記温度制御回路は、前記集積回路に設けられている前記温度センサの検出結果に基づいて前記水晶振動子の温度が一定となるように温度制御を行う、恒温槽付水晶発振器。
【請求項2】
水晶振動子を備える温度補償型水晶発振器と、電力により発熱する発熱体を備えて前記発熱体での発熱を制御する温度制御回路と、実装用基板と前記実装用基板に接合して前記実装用基板を覆う金属カバーとから構成されて前記温度補償型水晶発振器と前記温度制御回路とを収容する容器と、支柱によって前記実装用基板に電気的かつ機械的に接続されて、前記実装用基板と前記金属カバーとによって囲まれた空間内に保持されることにより前記容器内に設けられる保持基板と、を有し、
前記保持基板の一方の主面に前記温度補償型水晶発振器が搭載され、前記保持基板の他方の主面に前記発熱体が搭載され、
前記温度補償型水晶発振器は、前記水晶振動子を用いる発振回路と、温度センサと、該温度センサでの検出結果に基づいて前記発振回路の発振周波数の温度補償を行う温度補償回路と、温度と温度補償量との関係を記憶するための不揮発性メモリと、が設けられた集積回路をさらに有し、
前記集積回路は、前記関係に基づいて前記温度補償を実行し、
前記実装用基板は、前記温度補償型水晶発振器に電源電圧を供給する第1の電源端子と、前記温度制御回路に電源電圧を供給する第2の電源端子と、を備え、
前記温度制御回路は、前記集積回路に設けられている前記温度センサの検出結果に基づいて前記水晶振動子の温度が一定となるように温度制御を行う恒温槽付き水晶発振器の製造方法において、
前記第2の電源端子に電圧を印加しない状態で前記第1の電源端子に電源電圧を印加して前記温度補償型水晶発振器を作動させて前記発振周波数の周波数温度特性を測定し、
前記周波数温度特性の測定の結果に基づいて、前記関係を前記不揮発性メモリに書き込むことを特徴とする製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶振動子の温度を一定に保つようにした恒温槽付水晶発振器(OCXO:Oven Controlled Crystal Oscillator)
とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水晶振動子とこの水晶振動子を用いる発振回路が設けられた集積回路(IC:Integrated Circuit)とを備えてこれらを一体型の部品とした水晶発振器は、回路基板上などに実装し外部から電源電圧を供給するだけで所定の正確な周波数の発振信号を出力することから、各種の電子機器において、周波数や時間の基準源として広範に用いられている。
【0003】
水晶振動子の振動周波数は、高い安定度を有するものの、水晶に固有の周波数温度特性に基づき、温度に応じてわずかに変化する。そこで、温度センサを用いて温度を検出し、検出された温度に基づいて発振周波数の温度補償を行う温度補償型水晶発振器(TCXO:Temperature Compensated Crystal Oscillator)が、高い周波数安定度を有する用途に用いられている。温度補償型水晶発振器は、一般に、温度センサ、発振回路及び温度補償回路が少なくとも形成された集積回路と、発振回路に電気的に接続する水晶片とを容器に収容して一体の部品としたものであり、広く市販されている。このとき水晶片は、容器に気密封止されて水晶振動子として構成される。
【0004】
温度補償型水晶発振器よりもさらに高い周波数安定度を有する水晶発振器としては、ヒータ(発熱体)により温度が一定に保たれた恒温槽内に水晶振動子を収容した恒温槽付水晶発振器がある。恒温槽付水晶発振器は、水晶振動子の温度を一定に保つ制御を行うことによって高い周波数安定度を示すが、周波数安定度をより高めるためには恒温槽の温度制御を厳密に行う必要があって恒温槽や発熱体を駆動する温度制御回路の構成をより複雑なものとする必要がある。また、恒温槽付水晶発振器では、要求される周波数安定度によっては、水晶振動子に用いる水晶片としても一般的なATカットのものではなく例えばSCカットなどの特殊なカットのものを用いる必要がある。
【0005】
恒温槽付水晶発振器のこのような課題を解決するために、特許文献1,2には、温度センサと発熱体とを備え温度センサの検出値に基づく温度制御によって一定温度に保たれるようにした恒温槽内に上述した温度補償型水晶発振器を配置することによって、恒温槽付水晶発振器を構成することが提案されている。温度補償型水晶発振器を恒温槽内に配置することにより、温度補償型水晶発振器自体の温度補償機能を利用できるようになるので、恒温槽の温度制御がある程度の誤差を含むものであっても、高い周波数安定度を達成できるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2008−507174号公報
【特許文献2】特開2013−243629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
恒温槽内に温度補償型水晶発振器を格納して恒温槽付水晶発振器を構成した場合、温度補償型水晶発振器における一般的な構造に起因して、温度補償型水晶発振器に組み込まれている水晶振動子あるいは水晶片に対して、恒温槽の温度制御のために恒温槽に設けられる温度センサを熱的に強く結合させることが難しく、この温度センサと水晶振動子との間に温度差が生じやすい、という課題が生じる。また部品点数が増大しがちである、という課題もある。
【0008】
本発明の目的は、温度補償型水晶発振器を用いる恒温槽付水晶発振器であって、水晶振動子の実際の温度に基づいた恒温槽の温度制御を容易に行うことができるとともに、部品点数の削減が可能な恒温槽型水晶発振器
とその製造方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の恒温槽付水晶発振器は、水晶振動子を備える温度補償型水晶発振器と、電力により発熱する発熱体を備えて発熱体での発熱を制御する温度制御回路と、
実装用基板と実装用基板に接合して実装用基板を覆う金属カバーとから構成されて温度補償型水晶発振器と温度制御回路とを収容する容器と、
支柱によって実装用基板に電気的かつ機械的に接続されて、実装用基板と金属カバーとによって囲まれた空間内に保持されることにより容器内に設けられた保持基板と、を有し、
保持基板の一方の主面に温度補償型水晶発振器が搭載され、保持基板の他方の主面に発熱体が搭載され、温度補償型水晶発振器は、水晶振動子を用いる発振回路と
、温度センサと
、該温度センサでの検出結果に基づいて発振回路の発振周波数の温度補償を行う温度補償回路と
、温度と温度補償量との関係を記憶するための不揮発性メモリと、が設けられた集積回路をさらに有し、
集積回路は、関係に基づいて温度補償を実行し、実装用基板は、温度補償型水晶発振器に電源電圧を供給する第1の電源端子と、温度制御回路に電源電圧を供給する第2の電源端子と、を備え、第2の電源端子に電圧を印加しない状態で第1の電源端子に電源電圧を印加して発振周波数の周波数温度特性を測定した結果に基づいて、関係が不揮発性メモリに書き込まれ、温度制御回路は、集積回路に設けられている温度センサの検出結果に基づいて水晶振動子の温度が一定となるように温度制御を行う。
本発明の恒温槽付水晶発振器の製造方法は、水晶振動子を備える温度補償型水晶発振器と、電力により発熱する発熱体を備えて発熱体での発熱を制御する温度制御回路と、実装用基板と実装用基板に接合して実装用基板を覆う金属カバーとから構成されて温度補償型水晶発振器と温度制御回路とを収容する容器と、支柱によって実装用基板に電気的かつ機械的に接続されて、実装用基板と金属カバーとによって囲まれた空間内に保持されることにより容器内に設けられる保持基板と、を有し、保持基板の一方の主面に温度補償型水晶発振器が搭載され、保持基板の他方の主面に発熱体が搭載され、温度補償型水晶発振器は、水晶振動子を用いる発振回路と、温度センサと、該温度センサでの検出結果に基づいて発振回路の発振周波数の温度補償を行う温度補償回路と、温度と温度補償量との関係を記憶するための不揮発性メモリと、が設けられた集積回路をさらに有し、集積回路は、関係に基づいて温度補償を実行し、実装用基板は、温度補償型水晶発振器に電源電圧を供給する第1の電源端子と、温度制御回路に電源電圧を供給する第2の電源端子と、を備え、温度制御回路は、集積回路に設けられているセンサの検出結果に基づいて水晶振動子の温度が一定となるように温度制御を行う恒温槽付き水晶発振器の製造方法において、第2の電源端子に電圧を印加しない状態で第1の電源端子に電源電圧を印加して温度補償型水晶発振器を作動させて発振周波数の周波数温度特性を測定し、周波数温度特性の測定の結果に基づいて、関係を不揮発性メモリに書き込むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
温度補償型水晶発振器は、その発振周波数の温度補償を行うために水晶振動子に近接して配置された温度センサを備えている。本発明では、温度補償型水晶発振器に内蔵される温度センサでの検出結果に基づいて恒温槽の温度制御を行うことにより、水晶振動子の実際の温度により近い温度に基づく温度制御が実現されることとなる。また、恒温槽の温度制御のためのみに用いる温度センサが不要となるので、部品点数の削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】(a)は、本発明の実施の一形態の恒温槽付水晶発振器の構造を示す模式断面図であり、(b)は、(a)に示す水晶発振器の底面図である。
【
図2】
図1(a),(b)に示す水晶発振器の回路構成を示す回路図である。
【
図3】温度補償型水晶発振器の回路構成を示すブロック図である。
【
図4】(a),(b)は、それぞれ、温度補償型水晶発振器の構成を示す模式断面図と底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
本発明の実施の一形態の恒温槽付水晶発振器の構造及び回路構成がそれぞれ
図1及び
図2に示されている。この恒温槽付水晶発振器は、配線基板あるいは回路基板への表面実装に適した表面実装型のものとして構成されており、略矩形の平板状の実装用基板11と、凹部を有して実装用基板11を覆うように実装用基板11の外周に接合する金属カバー12とによって、恒温槽を画定する容器が形成されている。実装用基板11は、例えば積層セラミックによって構成されている。金属カバー12の外縁部は実装用基板11の外周の全周に対して接合しており、これによって容器内が外気から遮断されている。金属カバー12は、恒温槽における断熱及びシールドの機能も有する。
【0014】
恒温槽付水晶発振器の外底面、すなわち実装用基板11の一方の主面には、表面実装に際して電気的及び機械的接続のために用いられる複数の実装端子13が設けられている。図示したものでは、実装端子13は、2系統の電源端子(Vcc及びVcc2)と接地端子(GND)と発振信号の出力端子(OUT)と自動周波数制御(AFC:Automatic Frequency Control)信号の入力端子(AFC)とを含んでいる。図において「NC」と記載された実装端子13は、恒温槽付水晶発振器の内部回路とは電気的には接続しない端子であるが、制御信号の入力などのために用いるようにしてもよい。
【0015】
実装用基板11と金属カバー12とによって囲まれた空間内、すなわち容器内では、実装用基板11に立てられた支柱14によって保持基板15が支持されている。保持基板15は、恒温槽付水晶発振器を構成する各種の回路素子を搭載する配線基板として機能するものであり、保持基板15の一方の主面には、温度補償型水晶発振器20が表面実装されている。温度補償型水晶発振器20が実装されている位置に対応して保持基板15の他方の主面には、温度補償型水晶発振器20を加熱するための発熱体として機能するパワートランジスタTr及び抵抗R3,R4が設けられている。パワートランジスタTr及び抵抗R3,R4は、後述する温度制御回路16(
図2)を構成する回路素子でもある。温度制御回路16を構成する他の回路素子は、保持基板15の例えば一方の主面上に設けられている。支柱14は、保持基板15上の回路素子と、実装用基板11に設けられた各実装端子13との電気的接続に用いられる導電路としても用いられる。
【0016】
図2に示すように、本実施形態の恒温槽付水晶発振器は、大別すると、回路構成として温度制御回路16及び温度補償型水晶発振器20とからなっている。後述するように温度補償型水晶発振器20には、直流電源電圧(Vcc)、接地(GND)、発振出力(OUT)、AFC入力電圧(AFC)及び温度センサ出力(TSense)の各接続端子49が設けられている。図において「NC」と記載された接続端子49は、温度補償型水晶発振器20内で内部接続が行われない端子である。これらの接続端子49のうち、直流電源電圧(Vcc)、接地(GND)、発振出力(OUT)及びAFC入力電圧(AFC)の各端子は、それぞれ、実装用基板11に設けられた電源端子(Vcc)、接地端子(GND)、出力端子(OUT)及びAFC信号の入力端子(AFC)の各実装端子13に電気的に接続している。一方、温度センサ出力(TSense)の接続端子49は、温度補償型水晶発振器20内に設けられる温度センサ回路25(
図3参照)からの出力がそのまま表れる端子である。ここでは、温度センサ回路25で測定される温度が高いほど低い電圧が温度センサ出力TSenseとして得られるようになっており、この温度センサ出力は温度制御回路16に与えられる。
【0017】
温度制御回路16は、実装端子13に含まれる2系統の電源端子の内の他方(Vcc2)から直流電源電圧が供給されるものであって、その接地点は実装端子13の内の接地端子(GND)に電気的に接続している。ここで温度補償型水晶発振器20に対する電源端子(Vcc)と温度制御回路16に対する電源端子(Vcc2)とを分離しているのは、温度制御回路16の方が電力消費が大きいことに鑑み、電源ノイズが相対的に大きいが大電力を供給できる電源を温度制御回路16に割り当て、その一方で、温度制御回路16から温度補償型水晶発振器20へのノイズの回り込みを防止し、ノイズや変動が小さい電源を温度補償型水晶発振器20に割り当てることができるようにするためである。また、発振周波数の安定度はそれほど要求されないが、消費電力を少なくすることが求められる場合などには、一方の電源端子(Vcc)のみに電源電圧を供給して、この水晶発振器を温度補償型水晶発振器として動作させることもできる。
【0018】
温度制御回路16は、抵抗R1とコンデンサC1とからなる時定数回路(積分回路)と、エミッタが接地したダーリントン接続のパワートランジスタTrと、電源電圧Vcc2とパワートランジスタTrのベースとの間に設けられたバイアス用の抵抗R2と、パワートランジスタTrのコレクタと電源電圧Vcc2との間に並列に設けられた抵抗R3,R4と、電源電圧Vcc2と接地点との間に設けられたバイパス用のコンデンサC2とを備えている。この回路では、コンデンサC1が、パワートランジスタTrのベースと接地点との間に設けられ、温度センサ出力TSenseは、抵抗R1を介してパワートランジスタTrのベースに供給されている。したがって、温度センサ出力TSenseの電圧が低くなるほど、言い換えれば温度が上昇するほど、抵抗R3,R4及びパワートランジスタTrを流れる電流が小さくなり、発熱体としての抵抗R3,R4及びパワートランジスタTrでの発熱が小さくなることになる。周囲温度が上昇したときに温度センサ出力TSenseの電圧が下降し発熱量が小さくなるので、発熱体(抵抗R3,R4及びパワートランジスタ)と容器(実装用基板11及び金属カバー12)で構成される恒温槽の温度が一定に制御されることになる。
【0019】
なお、温度上昇に伴って温度センサ出力TSenseの電圧が伴って高くなるような温度補償型水晶発振器を用いる場合には、温度制御回路として、温度センサ出力電圧の上昇に伴って発熱体での発熱量が減少するような特性を有するものを使用すればよい。
【0020】
次に、温度補償型水晶発振器20について説明する。
【0021】
図3に示すように、温度補償型水晶発振器20は、回路構成として、水晶片31が気密封止されて構成されている水晶振動子30と、水晶振動子30を用いる発振回路などを集積したチップ状の集積回路であるICチップ21とによって構成されている。水晶振動子30としては、例えば、ATカットの水晶片31を用いたものを用いることができる。ICチップ21は、直流電源電圧Vccが供給されてICチップ21内の各回路に安定化された内部電源電圧を供給する定電圧回路22と、水晶振動子30が接続される水晶発振回路23と、AFC入力電圧(AFC)が供給されて周波数制御信号を生成し水晶発振回路23に供給する自動周波数制御入力調整回路24と、温度を測定する温度センサを含んで温度センサ出力(TSens)を発生する温度センサ回路25と、温度センサ回路25での温度の測定結果すなわち温度センサ出力に応じて水晶振動子30の周波数温度特性を補償する温度補償信号を生成して水晶発振回路23に供給する温度補償回路26と、温度補償信号の生成に用いるデータ(すなわち温度補償パラメータ)などを格納する不揮発性メモリ27と、水晶発振回路23からの発振出力を増幅して外部回路に供給する出力バッファ28と、を備えている。温度補償回路26は、例えば、温度センサ出力を入力とする関数発生回路であって、不揮発性メモリ27から供給される温度補償パラメータに応じて例えば5次関数で近似された周波数温度特性に基づいて温度補償信号を生成する。
【0022】
ICチップ21内に上述のように回路が配置されることに伴って、ICチップ21には、電源電圧が供給される電源端子(Vcc)、接地端子(GND)、水晶振動子30が電気的に接続する1対の水晶接続端子(X1,X2)、AFC信号が入力する入力端子(AFC)、及び出力バッファ28からの発振出力信号が現れる出力端子(OUT)が設けられるとともに、特に、温度センサ出力を温度制御回路16に供給するための端子(TSens)が設けられている。ICチップ21に設けられるこれらの端子のことを総称してIC端子と呼ぶ。
【0023】
ところで、水晶片を容器(パッケージ)内に密閉封入したものが水晶振動子である。したがって、水晶振動子の容器にICチップを固着させたり、水晶片とICチップとを同一容器内に密閉封入したり、あるいは、2か所の収納個所を有する容器を用いて一方の収納個所に水晶片を密閉封入し他方の収納個所にICチップを収納するようにしたりして、容器とICチップとを一体化させれば、パッケージ部品としての温度補償型水晶発振器が構成されることになる。本実施形態では、このようなパッケージ部品として構成された温度補償型水晶発振器20を使用する。
【0024】
図4(a),(b)は、本実施形態で用いられる温度補償型水晶発振器20の構造の一例を示している。
図4(a)は、
図4(b)のA−A’線に対応した断面図である。この温度補償型水晶発振器は表面実装型として構成されたものであり、両方の主面にそれぞれ凹部41a,41bが形成された扁平な略直方体の内部容器本体41を備えている。一方の凹部41aには、水晶片31が収容されており、蓋部材45によって凹部41aを閉じることによって、水晶片31が凹部41aに密閉封入され、水晶振動子30が形成されたことになる。水晶片31は、例えば、略矩形の形状を有するATカットの水晶片であり、その両方の主面に励振電極(不図示)をそれぞれ有し、水晶片31の一端部両側に向けて励振電極から引出電極が延出している。引出電極の延出した水晶片31の一端部両側は、内部容器本体41の一方の凹部41aの底面に設けられた水晶保持端子43に対して導電性接着剤44によって固着されている。
【0025】
内部容器本体41において他方の凹部41bを取り囲む端面には、この温度補償型水晶発振器20を保持基板15などに表面実装する際に用いられる接続端子49が設けられている。この例では、
図4(b)に示すように、端面の4隅部に、電源(Vcc)、接地(GND)、AFC信号入力用(AFC)及び発振出力(OUT)のための接続端子49が形成され、内部容器本体41の1対の長辺のそれぞれ中央部に、内部回路とは接続しない端子(NC)と温度センサ出力(TSens)のための実装端子49が形成されている。
【0026】
他方の凹部41bには、上述したICチップ21が収容されている。ICチップ21において、水晶発振回路23を含む電子回路は半導体基板の一方の主面に形成されているので、この主面のことを回路形成面と呼ぶ。回路形成面には、上述した各IC端子が設けられている。IC端子に対応して、凹部41bの底面には、接続パッド46が設けられている。ICチップ21は、バンプ47を用いたフリップチップボンディングによって凹部41bの底面に固着される。このとき、バンプ47によって、対応するIC端子と接続パッド46とが電気的かつ機械的に接続する。IC端子のうちの水晶接続端子X1,X2に対応する接続パッド46は、凹部41aの底面の水晶保持端子43に対し、内部容器本体41に形成された導電路によって電気的に接続する。これによって、水晶片31は、ICチップ21内の水晶発振回路23などに電気的に接続することになる。また、IC端子のうちの電源端子Vcc、接地端子GND、出力端子OUT、入力端子AFC及び温度センサ出力の端子TSensに対応する接続パッド46は、内部容器本体41に設けられた導電路を介して、対応する接続端子49に電気的に接続する。ICチップ21が固着された凹部41bには、ICチップ21を完全に覆うように保護樹脂48が充填されており、ICチップ21を外気から保護している。
【0027】
以上説明した本実施形態の恒温槽付水晶発振器では、恒温槽の温度制御を行うために専用の温度センサを設けるのではなく、恒温槽付水晶発振器内に設けられる温度補償型水晶発振器に内蔵された温度センサからの出力に基づいて恒温槽の温度制御を行う。温度補償型水晶発振器では、水晶振動子に近接した位置に温度センサが設けられるので、本実施形態の恒温槽付水晶発振器では、水晶振動子の実際の温度に極めて近い値に基づいて恒温槽の温度制御を行うことができるようになり、より周波数安定度が高い発振出力が得られるようになる。また、恒温槽の温度制御のためのみに用いられる温度センサが不要となるので、全体としての部品点数の削減を実現できる。
【0028】
次に、この恒温槽付水晶発振器における温度補償型水晶発振器20の不揮発性メモリ27への温度補償パラメータの書き込みについて説明する。本実施形態の恒温槽付水晶発振器に用いられる温度補償型水晶発振器20としては、各種の市販のものを用いることができる。そのような温度補償型水晶発振器では、温度補償を行って発振信号を出力する通常モードの他に、出荷時などに温度補償用のデータを不揮発性メモリに書き込むための書き込みモードを備えていることが多い。書き込みモードでは、温度補償型水晶発振器に備えられている複数の端子を多重に利用してデータを不揮発性メモリに書き込むことができるようになっている。そこで本実施形態の恒温槽付水晶発振器において、その組み立て後に不揮発性メモリ27に温度補償パラメータを書き込む場合には、温度制御回路16に接続する電源端子Vcc2には電源電圧を印加せずに温度補償型水晶発振器20に対して電源端子Vccを介して電源電圧を印加し、温度補償型水晶発振器20を動作させ、温度とそのときの発振周波数との関係から温度補償パラメータを決定し、決定した温度補償パラメータを不揮発性メモリ27に書き込めばよい。このように本実施形態の恒温槽付水晶発振器は、その完成後に温度補償データを電気的に書き込むことができる、という利点を有する。
【符号の説明】
【0029】
11…実装用基板;12…金属カバー;13…実装端子;14…支柱;15…保持基板;16…温度制御回路;20…温度補償型水晶発振器;21…ICチップ;22…定電圧回路;23…水晶発振回路;24…自動周波数制御入力調整回路;25…温度センサ回路;26…温度補償回路;27…不揮発性メモリ;28…出力バッファ回路;30…水晶振動子;31…水晶片;41…内部容器本体;41a,41b…凹部;43…水晶保持端子;44…導電性接着剤;45…蓋部材;46…接続パッド;47…バンプ;48…保護樹脂;49…接続端子;C1,C2…コンデンサ;R1〜R4…抵抗;Tr…パワートランジスタ。