(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1基材及び前記第2基材の少なくとも一方から突設されて他方に先端部が当接されたリブ部によって当該第1基材と当該第2基材との間に複数の区画領域が形成されている、
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の車両用シート。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された先行技術による場合、シートバックフレームが一枚の鋼材で構成されており、シートバックフレームの剛性をさらに向上させるには、シートバックフレームそのものの厚さを厚くする必要がある。このため、シートバックフレームの剛性の向上とシートバックフレームの重量の増加の抑制との両立を図ることが困難となる。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、剛性を向上させつつ、剛性向上による重量の増加を抑制することができる車両用シートを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明に係る車両用シートは、樹脂製の薄板材で形成され
ると共に、第1後壁部と一対の第1側壁部とを含んで構成された第1基材と、前記第1基材と対向して配置され、樹脂製の薄板材で形成され
ると共に、前記第1後壁部と対向する第2後壁部と前記一対の第1側壁部とそれぞれ対向する一対の第2側壁部とを含んで構成されて、前記第1基材と共に閉断面構造を構成する第2基材と、前記第1基材及び前記第2基材の少なくとも一方に形成され、発泡体の発泡原液を注入する注入ノズルを挿通可能な貫通部と、
前記発泡体で構成され、前記第1基材と前記第2基材との間に配置されて当該第1基材と当該第2基材とに接着され
ると共に、当該第1基材及び当該第2基材の少なくとも一方と略同一形状とされたコア部と、を含んで構成されたシートバックフレームを有している。
【0007】
請求項2記載の本発明に係る車両用シートは、請求項1に記載の発明において、前記コア部は、第1発泡部と当該第1発泡部よりも密度が大きい第2発泡部と
当該第1発泡部及び当該第2発泡部に隣接しかつ当該第1発泡部よりも密度が大きく当該第2発泡部よりも密度が小さい第3発泡部とを含んで構成されると共に、前記貫通部は、前記第1発泡部に対向する第1貫通部と、当該第1貫通部と離れた位置に形成され、前記第2発泡部に対向する第2貫通部と
、当該第1貫通部及び第2貫通部と離れた位置に形成され、前記第3発泡部に対向する第3貫通部とを含んで構成されている。
請求項3記載の本発明に係る車両用シートは、請求項2に記載の発明において、前記シートバックフレームは、前記一対の第1側壁部と前記一対の第2側壁部とを含んで構成された一対のサイドシェル部を備えており、前記コア部のうち前記サイドシェル部を構成する部分は、前記第1発泡部、前記第2発泡部及び前記第3発泡部を含んで構成されている。
【0008】
請求項
4記載の本発明に係る車両用シートは、請求項1
〜請求項3の何れか1項に記載の発明において、前記第1基材及び前記第2基材の少なくとも一方から突設されて他方に先端部が当接されたリブ部によって当該第1基材と当該第2基材との間に複数の区画領域が形成されている。
【0009】
請求項
5記載の本発明に係る車両用シートは、請求項
4記載の発明において、前記複数の区画領域のうち何れかの区画領域は、前記コア部の肉抜き部とされている。
【0010】
請求項1記載の本発明によれば、樹脂製の薄板材で形成された第1基材と対向して、同じく樹脂製の薄板材で形成された第2基材が配置されている。また、発泡体の発泡原液を注入する注入ノズルを挿通可能な貫通部が、第1基材及び第2基材の少なくとも一方に形成されており、当該貫通部に注入ノズルを挿通させると共に当該注入ノズルから発泡原液を注入し、発泡体を形成することができる。このため、第1基材と第2基材との間に発泡体で構成されたコア部が配置されると共に、当該コア部が第1基材と第2基材とに接着され、シートバックフレームが第1基材、第2基材及びコア部を含んで一体に構成される。
【0011】
ところで、シートバックフレームが一枚の基材のみによって構成されている場合、シートバックフレームの剛性を向上させるには、シートバックフレームそのものの厚さを厚くする必要がある。このため、シートバックフレームの剛性の向上とシートバックフレームの重量の増加の抑制との両立を図ることが困難となる。
【0012】
ここで、本発明では、第1基材と第2基材とがコア部を挟んで対向して配置されている。このため、シートバックフレームが第1基材及び第2基材の厚さの和と同じ厚さの一枚の基材によって構成される場合と比し、シートバックフレームの基材で構成された断面の断面2次モーメントを大きくすることができる。その結果、シートバックフレームを構成する基材の重量の増加に伴うシートバックフレームの剛性の上がり幅を大きくすることができる。
【0013】
請求項2記載の本発明によれば、第1貫通部と当該第1貫通部と離れた位置に形成された第2貫通部とを含んで貫通部が構成されている。このため、第1貫通部及び第2貫通部からそれぞれ密度の異なる発泡体の発泡原液を注入し、コア部を構成する発泡体を、それぞれ密度の異なる発泡部即ち、第1貫通部に対向する第1発泡部と第2貫通部に対向する第2発泡部とを含んだ構成とすることができる。
【0014】
ここで、本発明では、第1発泡部の密度よりも第2発泡部の密度の方が大きく設定されている。このため、コア部を構成する発泡体において、剛性が必要とされる部分を第2発泡部で構成し、剛性が必要とされない部分を第1発泡部で構成することができる。
【0015】
請求項
4記載の本発明によれば、第1基材及び第2基材の少なくとも一方からリブ部が突設されると共に他方に当該リブ部の先端部が当接されており、当該リブ部によって第1基材と第2基材との間に複数の区画領域が形成されている。このため、リブ部によってコア部を仕切ることができると共に、区画領域ごとにコア部の構成を変更することができる。
【0016】
請求項
5記載の本発明によれば、複数の区画領域のうち何れかの区画領域は、コア部の肉抜き部とされている。このため、コア部に第1基材及び第2基材を接着させつつ、当該コア部を軽量化することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、請求項1記載の本発明に係る車両用シートは、剛性を向上させつつ、剛性向上による重量の増加を抑制することができるという優れた効果を有する。
【0018】
請求項2記載の本発明に係る車両用シートは、シートバックフレームの剛性分布を調整することができるという優れた効果を有する。
【0019】
請求項
4記載の本発明に係る車両用シートは、シートバックフレームの剛性分布及び重量のバランスを好適に設定することができるという優れた効果を有する。
【0020】
請求項
5記載の本発明に係る車両用シートは、シートバックフレームの剛性を維持しつつシートバックフレームを軽量化することができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第1実施形態>
以下、
図1〜
図5を用いて、本発明に係る車両用シート10の第1実施形態について説明する。なお、各図中に適宜示される矢印FR、矢印UP、矢印LHは、それぞれ車両用シート10の前方向、上方向、左方向を示している。また、本実施形態では、車両用シート10の前方向、上方向、左方向は、この車両用シート10が搭載された車両の前方向、上方向、左方向と一致している。
【0023】
まず、本実施形態に係る車両用シート10の構成の一例について説明する。
図5に示されるように、車両用シート10は、車両の車室内における車両前方側に搭載されたフロントシートとされている。この車両用シート10は、乗員の臀部及び大腿部を支持するシートクッション12と、乗員の背部を支持するシートバック14と、乗員の頭部を支持するヘッドレスト16とを含んで構成されている。
【0024】
シートクッション12は、それぞれ図示しないクッションパン、クッションシェル及びクッションパッドを含んで構成されている。このシートクッション12におけるシート下方側に配置されたクッションパンは、板材で断面U字形状に形成されており、ウレタン等で構成された直方体状のクッションパッドを載置可能な構成とされている。なお、クッションパンは、図示しないガイドレール等を介して車体フロアに連結されている。
【0025】
一方、クッションシェルは、シート後方側がシート下方側へ窪むように湾曲された板材で構成されており、板厚方向がシート上下方向となるようにクッションパッドのシート上方側に配置されると共に、図示しない連結部材を介してクッションパンと連結されている。そして、シートクッション12のシート後方側の端部には、リクライニング機構18を介してシートバック14が回動可能に連結されている。
【0026】
シートバック14は、シートバックフレームとしてのシートバックシェル20と、クッション材26とを含んで構成されている。より詳しくは、シートバックシェル20は、バックシェル部22と、一対のサイドシェル部24とを含んで構成されており、シートバック14の骨格を成している。バックシェル部22は、シート上下方向を長手方向とされて、車両用シート10に着座した乗員の肩部から腰部に亘って当該乗員の後方側を覆うように構成されている。また、サイドシェル部24は、バックシェル部22の車両幅方向両側から車両前方側に延出されており、乗員の側部を覆うように構成されている。
【0027】
一方、クッション材26は、ウレタン等の発泡体によって弾性変形可能に構成されると共に、シートバックシェル20の前面側に配置されている。なお、クッション材26の表面は、表皮28によって覆われており、当該表皮28によってシートバック14におけるシート前方側の意匠面が構成されている。
【0028】
また、シートバックシェル20には、後述するように一対のホルダ部38が設けられており、当該ホルダ部38には、図示しないヘッドレストサポートが挿入されている。このヘッドレストサポートは、ヘッドレスト16の図示しないヘッドレストステーを挿通可能な構成とされると共に、ヘッドレストステー上下位置調整手段を備えている。これにより、ヘッドレストステーのシート上下方向の支持位置を調整でき、ひいてはヘッドレスト16のシート上下方向の位置を調整できるようになっている。
【0029】
ここで、本実施形態では、
図1に示されるように、シートバックシェル20が、第1基材30、第2基材52及びコア部62を含んで構成されると共に、これらの部材が一体に重ね合わされて所謂サンドイッチ構造とされている点に特徴がある。以下、本発明の要部であるシートバックシェル20の構成について詳細に説明する。
【0030】
まず、第1基材30の構成について説明する。この第1基材30は、一例として、ナイロン樹脂製の薄板材で形成されると共に、バックシェル部22を構成する
第1後壁部としての後壁部32と、サイドシェル部24を構成する
第1側壁部としての側壁部34とを含んで構成されている。後壁部32は、
図3にも示されるように、その上端部にシート後方側に延出された矩形板状の延出部36が形成されると共に、そのシート上下方向中央部よりもシート上方側の部分が、シート前方上側からシート後方下側に傾斜された傾斜部32Aとされている。この傾斜部32Aには、上述したホルダ部38及びヘッドレスト16のヘッドレストステーが収容される収容凹部40が形成されている。
【0031】
ホルダ部38は、シート上下方向が長手方向とされた四角筒状に形成されると共にシート幅方向中心線に対して対称となるように間隔を隔てて配置されており、その上端部が延出部36に開口されている。一方、収容凹部40は、それぞれのホルダ部38のシート下方側に配置されており、正面視でシート上下方向が長手方向とされた長方形状とされると共にシート下方側に開放された構成とされている。この収容凹部40は、そのシート上方側にホルダ部38の下端部が開口されており、ヘッドレスト16の支持位置がシート下方側に設定された状態において、ヘッドレストステーを収容可能とされている。
【0032】
また、側壁部34のシート下方側には、インサートカラー(締結具)42が配置されている。このインサートカラー42には、図示しない雌ねじ部が設けられており、当該雌ねじ部には、シートバックシェル20とリクライニング機構18とを締結するための図示しないボルト(締結部材)が螺合されている。なお、第1基材30には、第1基材30の縁部に沿って鍔部44が形成されており、後壁部32に設けられた延出部36もその一部とされている。
【0033】
さらに、第1基材30には、後述する注入ノズル82、84、86が挿通される第1貫通部46、第2貫通部48、第3貫通部50が形成されている。より詳しくは、第1貫通部46は、傾斜部32Aのシート上下方向中央において、収容凹部40同士の間に1つ、収容凹部40のシート幅方向外側にそれぞれ1つずつ配置されている。また、第2貫通部48は、後壁部32のシート下方側にシート幅方向に並んで3つ、当該後壁部32の中央部に1つ配置されている。そして、第3貫通部50は、側壁部34のシート上下方向中央から所定距離シート上方側の位置にそれぞれ1つずつ配置されている。
【0034】
一方、第2基材52は、一例として、ナイロン樹脂製の薄板材で形成されると共に、バックシェル部22を構成する
第2後壁部としての後壁部54と、サイドシェル部24を構成する
第2側壁部としての側壁部56とを含んで構成され、シートバック14におけるシート後方側の意匠面を構成している。また、後壁部54のシート上方側には、第1基材30の延出部36に対応する切欠部58が形成されており、この切欠部58の周縁部を含む第2基材52の縁部が、第1基材30の鍔部44に当接されている。なお、第1基材30の鍔部44と第2基材52の縁部とは、溶着されていてもよい。なお、第2基材52には、インサートカラー42に対応する孔部60が形成されている。
【0035】
そして、第2基材52は、
図2にも示されるように、第1基材30との間に隙間が形成された状態で、当該第1基材30のシート後方側を覆うことができるようにその形状が設定されている。これにより、第1基材30と第2基材52との間にコア部62を配置することが可能とされている。なお、第1基材30及び第2基材52は、熱プレスやレジントランスファーモールディング成形(RTM)等種々の方法で成形することができる。
【0036】
コア部62は、一例として、第1基材30と第2基材52との間に形成された隙間にウレタン発泡体が充填されて構成されている。つまり、
図1にはコア部62が第1基材30及び第2基材52と分離された状態で示されているが、実際には、コア部62は第1基材30及び第2基材52と接着されている。換言すれば、コア部62は第1基材30及び第2基材52と一体となってシートバックシェル20を構成している。なお、コア部62には、第1基材30のホルダ部38及び収容凹部40に対応する凹部64と、インサートカラー42に対応する孔部66とが形成されている。
【0037】
このように構成されたシートバックシェル20では、第1基材30の後壁部32が第2基材52の後壁部54に対して、第1基材30の側壁部34が第2基材52の側壁部56に対して、それぞれコア部62を挟んで対向して(離間して)配置されている。また、第1基材30と第2基材52とで構成されるシートバックシェル20の外殻の断面形状は、シート前方側が開放されたU字状とされると共に、閉断面構造を成している。
【0038】
次に、本実施形態のシートバックシェル20の成形方法について
図3及び
図4を用いて説明する。
【0039】
まず、シートバックシェル20の成形用モールド(以下、単に「モールド」ともいう)68の一例について説明する。なお、
図3及び
図4に適宜示される矢印FRはモールド前方を示し、矢印UPはモールド上方を示し、矢印LHはモールド左方を示している。
図3に示されるように、モールド68は、下型70、当該下型70に型合わせされる上型76及び下型70に内蔵された発泡原液注入部80を含んで構成されている。
【0040】
上型76は、第2基材52の形状に対応しかつ当該第2基材52が嵌合可能とされた凹部77と、上型76のモールド幅方向両側から突設された一対の係合部78とを含んで構成されている。
【0041】
一方、下型70は、第1基材30の形状に対応しかつ当該第1基材30が嵌合可能とされた凸部72と、上型76が下型70に型合わせされた状態において上型76の係合部78が係合される被係合部74とを含んで構成されている。
【0042】
また、発泡原液注入部80は、下型70の内部に配策された図示しない配管と、当該配管から分岐された注入ノズル82、84、86とを含んで構成されている。より詳しくは、発泡原液注入部80は、注入ノズル82を3本、注入ノズル84を4本、注入ノズル86を2本備えた構成とされている。
【0043】
これらの注入ノズル82、84、86におけるそれぞれの先端部は、凸部72の表面から突出されている。そして、
図4にも示されるように、第1基材30が下型70の凸部72に嵌合された状態において、当該先端部は第1貫通部46、第2貫通部48、第3貫通部50にそれぞれ挿通される。より具体的には、注入ノズル82、84、86は、注入ノズル82の先端部が第1貫通部46に、注入ノズル84の先端部が第2貫通部48に、注入ノズル86の先端部が第3貫通部50に、それぞれ挿通されるように配置されている。
【0044】
続いて、モールド68を用いてシートバックシェル20を成形する成形工程について説明する。
【0045】
まず、第1工程で、下型70の凸部72に第1基材30を嵌合させると共に、上型76の凹部77に第2基材52を嵌合させる。このとき、注入ノズル82の先端部が第1貫通部46に、注入ノズル84の先端部が第2貫通部48に、注入ノズル86の先端部が第3貫通部50に、それぞれ挿通された状態となっている。なお、下型の凸部72及び上型76の凹部77の表面には、第1基材30及び第2基材52の位置がずれないように、それぞれバインダーが塗布されている。
【0046】
次に、第2工程で、上型76の係合部78が、下型70の被係合部74に係合されるように、上型76と下型70とを型合わせする。このとき、モールド68の内部では、第1基材30の縁部が第2基材52の鍔部44に当接されると共に、第1基材30と第2基材52との間に空間部が形成された状態となっている。
【0047】
次に、第3工程で、注入ノズル82、84、86から第1基材30と第2基材52との間の空間部にウレタン発泡体の発泡原液を注入する。注入された発泡原液は、第1基材30及び第2基材52に沿って発泡及び膨張しつつ硬化していく。その結果、第1基材30と第2基材52との間の空間部がウレタン発泡体で充填され、シートバックシェル20のコア部62が構成される。なお、第1基材30と第2基材52との間の空間部における空気及び発泡原液の発泡によって生じるガスは、発泡原液が膨張していく過程で、当該発泡原液によって押し出され、第1基材30と第2基材52とのパーティングラインから排出される。つまり、第1基材30と第2基材52とのパーティングラインに沿ってバリが形成された状態となる。
【0048】
最後に、第4工程で、発泡原液が硬化した後に脱型し、成形されたシートバックシェル20を取り出す。なお、第1基材30と第2基材52とのパーティングラインに沿って形成されたバリは、このときに除去される。また、必要に応じて、第5工程として、第1基材30の縁部と第2基材52の鍔部44とを溶着してもよい。
【0049】
<本実施形態の作用及び効果>
次に、本実施形態の作用並びに効果を説明する。
【0050】
本実施形態では、
図1及び
図2に示されるように、樹脂製の薄板材で形成された第1基材30と対向して、同じく樹脂製の薄板材で形成された第2基材52が配置されている。また、ウレタン発泡体の発泡原液を注入する注入ノズル82、84、86を挿通可能な第1貫通部46、第2貫通部48、第3貫通部50が、第1基材30に形成されている。これにより、第1貫通部46、第2貫通部48、第3貫通部50に注入ノズル82、84、86を挿通させると共に、注入ノズル82、84、86から発泡原液を注入し、ウレタン発泡体を形成することができる。その結果、第1基材30と第2基材52との間にウレタン発泡体で構成されたコア部62が配置されると共に、コア部62が第1基材30と第2基材52とに接着され、シートバックシェル20が第1基材30、第2基材52及びコア部62を含んで一体に構成される。
【0051】
ところで、シートバックシェル20が一枚の基材のみによって構成されている場合、シートバックシェル20の剛性を向上させるには、シートバックシェル20そのものの厚さを厚くする必要がある。このため、シートバックシェル20の剛性の向上とシートバックシェル20の重量の増加の抑制との両立を図ることが困難となる。
【0052】
ここで、本実施形態では、第1基材30と第2基材52とがコア部62を挟んで対向して(離間して)配置されている。このため、シートバックシェル20が第1基材30及び第2基材52の厚さの和と同じ厚さの一枚の基材によって構成される場合と比し、シートバックシェル20の基材で構成された断面の断面2次モーメントを大きくすることができる。
【0053】
詳しく説明すると、第1基材30及び第2基材52で構成されるシートバックシェル20の外殻の断面2次モーメントは、所謂平行軸の定理によって、第1基材30及び第2基材52の単体の断面2次モーメントを足し合わせた値よりも大きくなる。具体的には、第1基材30及び第2基材52の単体の断面2次モーメントに、(第1基材30の断面積)×(中立軸から第1基材30までの距離の自乗)と、(第2基材52の断面積)×(中立軸から第2基材52までの距離の自乗)とを足した値となる。これはサンドイッチ構造の特徴の一つであり、この原理によって効率よく大きな曲げ剛性を得ることができる。
【0054】
このように、本実施形態では、シートバックシェル20を構成する基材の重量の増加に伴うシートバックシェル20の剛性の上がり幅を大きくすることができる。その結果、車両用シート10の剛性を向上させつつ、剛性向上による車両用シート10の重量の増加を抑制することができる。
【0055】
ところで、上述した平行軸の定理によれば、第1基材30と第2基材52とが離間された構成であれば、シートバックシェル20に剛性を付与することが可能である。しかしながら、実際には、第1基材30と第2基材52との間が空間部である場合には、シートバックシェル20に局部的な荷重がかかると、当該荷重をシートバックシェル20全体ではなく、第1基材30又は第2基材52即ち、樹脂製の薄板材で受けることとなる。つまり、第1基材30と第2基材52との間が空間部とされた構成において、局部的な荷重に対する剛性は、シートバックシェル20全体の剛性ではなく、第1基材30又は第2基材52単体の剛性に依存し、当該荷重を支持することが困難となる。
【0056】
ここで、本実施形態では、第1基材30と第2基材52との間にウレタン発泡体で構成されたコア部62が配置されている。このため、シートバックシェル20に局部的な荷重がかかっても、当該荷重を分散させ、シートバックシェル20全体で当該荷重を支持することができる。このように、本実施形態では、局部的な荷重に対するシートバックシェル20の剛性も確保することができる。
【0057】
また、本実施形態では、第1基材30と第2基材52との間に発泡原液が注入されてコア部62が構成されている。このため、ウレタン発泡体で構成された複数の部材を第1基材30又は第2基材52に貼り付けてコア部62を構成する場合と比し、シートバックシェル20の製造効率を向上させることができる。
【0058】
さらに、コア部62が複数の部材で構成される場合には、これらの部材同士が擦れて異音が発生することがあるが、本実施形態では、コア部62が一体で構成されているため、そのような異音が発生することがない。
【0059】
なお、本実施形態では、第1貫通部46、第2貫通部48、第3貫通部50が1つでもあれば、対応する注入ノズルから発泡原液を注入し、第1基材30と第2基材52との間にコア部62を配置することが可能である。
【0060】
<第2実施形態>
次に、
図6を用いて、本実施形態に係る車両用シート10の第2実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一の番号を付してその説明を省略する。
【0061】
この第2実施形態では、コア部62が、それぞれ異なる密度の異なる第1発泡部100、第2発泡部102及び第3発泡部104を含んで構成されている点に特徴がある。
【0062】
まず、本実施形態に係るシートバックシェル20の成形工程について説明する。本実施形態では、シートバックシェル20の成形工程における第3工程即ち、第1基材30と第2基材52との間の空間部に発泡原液を注入する工程において、注入ノズル82、84、86からそれぞれ密度の異なる発泡原液が注入される。詳しくは、注入ノズル82からは低密度発泡原液が注入され、注入ノズル84からは高密度発泡原液が注入され、注入ノズル86からは中密度発泡原液が注入される。
【0063】
上記工程を経て成形されたシートバックシェル20では、コア部62が、低密度発泡原液で形成された第1発泡部100と、高密度発泡原液で形成された第2発泡部102と、中密度発泡原液で形成された第3発泡部104とを含んで構成されている。なお、ウレタン発泡体の剛性は、密度と比例するため、第2発泡部102、第3発泡部104、第1発泡部100の順に剛性が低くなっている。
【0064】
次に、第1発泡部100、第2発泡部102及び第3発泡部104の配置について説明する。第1発泡部100は、バックシェル部22におけるシート上下方向中央よりもシート上方側及びサイドシェル部24におけるシート上方側に配置されている。一方、第2発泡部102は、バックシェル部22におけるシート上下方向中央よりもシート下方側及びサイドシェル部24におけるシート下方側に配置されている。そして、第3発泡部104はサイドシェル部24におけるシート上下方向中央部に配置されており、換言すれば、第3発泡部104は第1発泡部100と第2発泡部102との間に配置されている。
【0065】
<本実施形態の作用及び効果>
次に、本実施形態の作用並びに効果を説明する。
【0066】
本実施形態では、第1基材30に、第1貫通部46と、当該第1貫通部46と離れた位置に配置された第2貫通部48とが形成されている。このため、第1貫通部46及び第2貫通部48からそれぞれ密度の異なるウレタン発泡体の発泡原液を注入することができる。その結果、コア部62を構成するウレタン発泡体を、それぞれ密度の異なる発泡部即ち、第1貫通部46に対向する第1発泡部100と第2貫通部48に対向する第2発泡部102とを含んだ構成とすることができる。
【0067】
ここで、本実施形態では、第1発泡部100の密度よりも第2発泡部102の密度の方が大きく設定されている。このため、コア部62を構成するウレタン発泡体において、剛性が必要とされる部分を第2発泡部102で構成し、剛性が必要とされない部分を第1発泡部100で構成することができる。
【0068】
具体的には、車両衝突時等に負荷がかかるシートバックシェル20のシート下方側やリクライニング機構18との連結用のインサートカラー42の周辺部に第2発泡部102を配置することにより、シートバックシェル20の剛性を高めることができる。
【0069】
一方、大きな負荷がかからないシートバックシェル20のシート下方側には、低密度の第1発泡部100が配置されており、シートバックシェル20の軽量化が図られている。
【0070】
そして、第1発泡部100と第2発泡部102との間に中密度の第3発泡部104を配置することにより、シートバックシェル20におけるシート下方側からシート上方側にかけての急激な剛性の変化が抑制されている。このように、本実施形態では、シートバックシェル20の剛性分布を調整することができる。
【0071】
<第3実施形態>
次に、
図7を用いて、本実施形態に係る車両用シート10の第3実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態及び第2実施形態と同一構成部分については、同一の番号を付してその説明を省略する。
【0072】
この第3実施形態では、第2基材52にリブ部120、122、124、126が設けられている点に特徴がある。
【0073】
具体的に説明すると、リブ部120、122、124、126は、全て第2基材52から突設されると共にその先端部が、第1基材30に当接されている。なお、
図7では、リブ部120、122、124、126の構成が理解しやすいように、第1基材30を図示していない。
【0074】
リブ部120は、矩形板状に形成されると共にシート前後方向に延在しており、側壁部56のシート上方側端部から所定間隔隔てた位置及び当該側壁部56のシート下方側端部から所定間隔隔てた位置に配置されている。また、リブ部122は、矩形板状に形成されると共にシート上下方向に延在しており、リブ部120のシート後方側の端部間に架け渡されている。そして、リブ部122のシート上下方向中央部間には、矩形板状に形成されたリブ部124が架け渡されている。
【0075】
一方、リブ部126は、円筒形に形成されると共に、後壁部54における複数箇所に形成されている。これらのリブ部126は、一例として、第2基材52におけるシート幅方向の中心線に対して対称となるように配置されている。
【0076】
なお、本実施形態では、一例として、リブ部120、122、124、126は、射出成形によって第2基材52の一部として形成されているが、リブ部120、122、124、126を別部材で構成し、第2基材52に溶着する構成とすることもできる。また、リブ部120、122、124、126の先端部を振動溶着等によって第1基材30に接合してもよい。
【0077】
上記のように構成された第2基材52では、シートバックシェル20の成形工程における第2工程即ち、上型76と下型70とを型合わせする工程において、上型76と下型70との間に複数の区画領域が形成される。これは、リブ部120、122、124、126によって発泡原液の流路が形成されると捉えることもできる。
【0078】
具体的には、シートバックシェル20のシート上方側に、リブ部120、122、124で仕切られた第1区画領域128が形成される。また、シートバックシェル20のシート下方側に、リブ部120、122、124で仕切られた第2区画領域130が形成される。さらに、サイドシェル部24のシート上下方向中央部に、リブ部120、122で仕切られた第3区画領域132が形成される。そして、第2区画領域130の内部には、リブ部126で仕切られた複数の小区画領域134が形成される。
【0079】
なお、本実施形態におけるシートバックシェル20の成形工程では、上述した第2実施形態と同様に、第3工程において、注入ノズル82、84、86からそれぞれ密度の異なる発泡原液が注入されるようになっている。つまり、コア部62は、第1発泡部100、第2発泡部102及び第3発泡部104を含んで構成されている。
【0080】
<本実施形態の作用及び効果>
次に、本実施形態の作用並びに効果を説明する。
【0081】
本実施形態では、第2基材52からリブ部120、122、124、126が突設されると共に第1基材30にリブ部120、122、124、126の先端部が当接されている。これにより、リブ部120、122、124、126によって第1基材30と第2基材52との間に複数の区画領域を形成することができる。その結果、リブ部120、122、124、126によってコア部62を仕切ることができると共に、区画領域ごとにコア部62の構成を変更することができる。
【0082】
具体的に説明すると、第1区画領域128の内部には、注入ノズル82から低密度発泡原液が注入されて第1発泡部100が形成される。また、第2区画領域130の内部には、注入ノズル84から高密度発泡原液が注入されて第2発泡部102が形成される。さらに、第3区画領域132には、注入ノズル86から中密度発泡原液が注入されて第3発泡部104がされる。しかも、本実施形態では、リブ部120、122、124の形状を変更することで、第1発泡部100、第2発泡部102及び第3発泡部104の配置箇所を任意に設定することができる。
【0083】
また、本実施形態では、第1区画領域128、第2区画領域130及び第3区画領域132のうち何れかを空間部とすることも可能である。このように、本実施形態では、シートバックシェル20の剛性分布及び重量のバランスを好適に設定することができる。
【0084】
さらに、本実施形態では、リブ部126で仕切られた複数の小区画領域134が、コア部62の肉抜き部136とされている。このため、コア部62に第1基材30及び第2基材52を接着させつつ、当該コア部62を軽量化することができる。その結果、シートバックシェル20の剛性を維持しつつシートバックシェル20を軽量化することができる。
【0085】
加えて、本実施形態では、リブ部120、122、124、126を、シートバックシェル20の補強に用いることもできる。
【0086】
<上記実施形態の補足説明>
(1) 上述した実施形態では、第1基材30に第1貫通部46、第2貫通部48及び第3貫通部50を設ける構成としたが、第2基材52に第1貫通部46、第2貫通部48及び第3貫通部50を設ける構成としてもよい。また、上述した実施形態と同様に、第2基材52でシートバック14におけるシート後方側の意匠面を構成する場合には、第1貫通部46、第2貫通部48及び第3貫通部50を覆う化粧材を設ける構成としてもよい。さらに、シートバック14におけるシート後方側の意匠面を別部材で構成してもよい。
【0087】
(2) また、上述した実施形態では、第1基材30に鍔部44を形成し、第2基材52の縁部に当接させる構成としたが、第2基材52に鍔部を形成する構成としてもよいし、これらの何れにも鍔部を形成しない構成としてもよい。なお、第1基材30と第2基材52とに鍔部を設けない構成とする場合、コア部62の弾性変形によってシートバック14にかかる荷重を吸収することができる。
【0088】
(3) さらに、上述した実施形態では、第1基材30及び第2基材52がナイロン樹脂で形成されていたが、表面処理等を施すことにより、ポリプロピレン樹脂等で形成することもできる。なお、第1基材30及び第2基材52の形状や成形方法に応じて、繊維強化熱可塑性樹脂シートや熱硬化性樹脂シート等を用いることも可能である。
【0089】
(4) 加えて、上述した実施形態では、リブ部120、122、124、126が、第2基材52に設けられていたが、リブ部120、122、124、126を第1基材30に設ける構成としてもよい。
【0090】
(5) さらに加えて、上述した実施形態におけるシートバックシェル20の構成は、シートクッション12を構成するクッションパン及びクッションシェル等にも適宜応用することができる。また、ヘッドレストとシートバックとが一体化された車両用シートにもシートバックシェル20の構成を適用することができる。