(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載された誘導スロープは、冷却水を上部流路に誘導するための規制部材に相当し、同特許文献の
図10に示す例では、誘導スロープがゴム状弾性体からなり、その縁部がウォータジャケットの内壁に密着するように形成されている。このように、誘導スロープの縁部がウォータジャケットの内壁に密着するように形成されていると、当該ウォータジャケットスペーサをウォータジャケット内に挿入する際、ウォータジャケットの内壁との間で摩擦が発生し、誘導スロープの取付部分に応力が発生する。これによって、誘導スロープが外れたり破損が生じたりする懸念がある。
【0006】
本発明は、前記実情に鑑みなされたもので、ウォータジャケット内に安定的に挿入及び装着がなし得るとともに、冷却水の流通規制を的確に行うことができる新規なウォータジャケットスペーサを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るウォータジャケットスペーサは、シリンダブロックのウォータジャケット内に挿入され、当該ウォータジャケット内の冷却水の流れを調整するウォータジャケットスペーサであって、スペーサ本体と、当該スペーサ本体から前記ウォータジャケットの内壁に向け突出する弾性体リップを有する規制部材とを備え、前記規制部材は、前記弾性体リップを前記スペーサ本体に取付けるためのリップ基部を含み、前記リップ基部の少なくとも前記ウォータジャケットの深さ方向に沿った下端部は、当該規制部材が取付けられる側のスペーサ本体の面から反対側に及ぶよう形成され、前記弾性体リップは、前記スペーサ本体からの突出幅が前記スペーサ本体から前記内壁までの距離より大とされ、且つ、少なくとも下端部側が、ウォータジャケットの深さ方向に対して傾斜していることを特徴とする。
【0008】
本発明のウォータジャケットスペーサは、シリンダブロックのウォータジャケット内に挿入され、この挿入された状態では、規制部材によって当該ウォータジャケット内に導入される冷却水の流通が規制される。前記弾性体リップは、前記スペーサ本体からの突出幅が前記スペーサ本体から前記内壁までの距離より大とされているから、ウォータジャケット内に挿入された状態では、弾性体リップはウォータジャケットの内壁に弾接する。これによって、弾性体リップによる冷却水の規制がなされる。特に、前記弾性体リップは、少なくとも下端部側が、ウォータジャケットの深さ方向に対して傾斜しているから、ウォータジャケットへの挿入時にこの傾斜部分に倣って深さ方向の全体が内壁に均等に弾接し、前記冷却水の所期の規制機能が的確に発揮される。このとき、弾性体リップの先端部が内壁に対して弾性変形を伴い弾接するが、弾性変形は深さ方向に沿った挿入力の、前記少なくとも下端部側の傾斜角度による分力方向に湾曲した形状になされる。また、前記リップ基部の少なくとも下端部は、当該規制部材が取付けられる側のスペーサ本体の面から反対側に及ぶよう形成されているから、ウォータジャケットへの挿入時に前記弾性体リップの前記内壁に対する弾接に伴う応力がこの反対側に及ぶ部分に集中する。これによって、ウォータジャケットへの挿入時に、規制部材がスペーサ本体から外れたり破損したりする懸念も生じ難くなる。
【0009】
本発明において、前記弾性体リップは、上端部から下端部にかけ、ウォータジャケット内を流通する冷却水の設計上の流通方向上流側に位置するように傾斜しているものとしても良い。また、前記弾性体リップは、上端部から下端部側にかけウォータジャケットの深さ方向に沿って延び、下端部側が、ウォータジャケット内を流通する冷却水の設計上の流通方向上流側に向け反るように傾斜しているものとしても良い。
これによれば、ウォータジャケット内に冷却水が導入されると、冷却水の流通圧は、流通方向上流側より前記湾曲するよう弾性変形した弾性体リップの凹曲部側に作用する。そのため、弾性体リップの先端部は突っ支い状にさらに強く内壁に弾接する。これにより、冷却水の流通圧が弾性体リップに作用しても、弾性体リップの先端部が捲られるようにして内壁から遊離することがなく、冷却水の規制機能が安定的に維持される。
【0010】
本発明において、前記規制部材は、前記スペーサ本体の片側面に取付けられ、前記リップ基部の下端部は、前記スペーサ本体の下端面又は前記スペーサ本体に形成された切欠部分の切欠面に沿うようL字形に形成されているものとしても良い。
これによれば、リップ基部のL字形の下端部のスペーサ本体に対する係止作用によって、ウォータジャケット内への挿入時の前記応力がリップ基部の下端部に集中しやすくなる。これによって、ウォータジャケットへの挿入時に、規制部材がスペーサ本体から外れたり破損したりする懸念がより生じ難くなる。
【0011】
本発明において、前記規制部材は、前記スペーサ本体の片側面に取付けられ、前記リップ基部の下端部は、前記スペーサ本体の下端面又は前記スペーサ本体に形成された切欠部分の切欠面に沿い、さらにスペーサ本体の反対側面に及ぶようU字形に形成されているものとしても良い。
これによれば、リップ基部のU字形の下端部のスペーサ本体に対する係止作用によって、ウォータジャケット内への挿入時の前記応力がリップ基部の下端部に集中しやすくなる。これによって、ウォータジャケットへの挿入時に、規制部材がスペーサ本体から外れたり破損したりする懸念がより生じ難くなる。
【0012】
本発明において、前記規制部材は、前記スペーサ本体の片側面に取付けられ、前記リップ基部の下端部は、前記スペーサ本体に形成された透孔に係合する突起形状に形成されているものとして良い。
これによれば、透孔に対する突起形状のリップ基部の係合により、ウォータジャケットへの挿入時に、規制部材がスペーサ本体から外れたり破損したりする懸念がより生じ難くなる。
【0013】
本発明において前記規制部材は、前記スペーサ本体の両側面に取付けられ、前記リップ基部の下端部は、両側面の前記規制部材を連結しているものとしても良い。
これによれば、規制部材がスペーサ本体の両側面に取付けられているから、スペーサ本体の両側を流通する冷却水の規制がなされる。しかも、リップ基部の下端部は、両側面に取付けられた規制部材を連結しているから、ウォータジャケットへの挿入時に、規制部材がスペーサ本体から外れたり破損したりする懸念がより生じ難くなる。
この場合、前記スペーサ本体の両側面の前記規制部材は、前記スペーサ本体に対して、互いに、前記ウォータジャケットの周方向に沿った近傍位置に位置付けられているものとしても良い。
これによれば、両側面の規制部材の弾性リップが、ウォータジャケットの両側内壁に弾接するから、当該ウォータジャケットスペーサが所定の位置に安定的に位置づけられる。加えて、両側面の規制部材は前記周方向に近接しているから、ウォータジャケットへの挿入時の前記応力がリップ基部の下端部において両側面で等しくなり、規制部材がスペーサ本体から外れたり破損したりする懸念がより生じ難くなる。
【0014】
本発明において、前記リップ基部は、環状の弾性部材からなり、前記規制部材は、当該リップ基部を介して前記スペーサ本体に対して着脱可能な弾性的嵌合によって取付けられているものとしても良い。
これによれば、規制部材がスペーサ本体に対して着脱可能な弾性的嵌合によって取付けられているから、スペーサ本体と規制部材との一体化が安定的になされる。また、弾性体リップの先端部が摩耗等による不具合が生じた場合等においては、容易に交換することができる。さらに、仕様の異なる規制部材を各種準備しておけば、求められる冷却水の流通規制機能に適したものに適宜選択交換することもできる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のウォータジャケットスペーサによれば、ウォータジャケット内に安定的に挿入及び装着がなし得るとともに、冷却水の流通規制を的確に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1及び
図2は、本発明に係るウォータジャケットスペーサが適用される自動車用エンジンのシリンダブロックの一例を概略的に示している。
図1及び
図2に示すシリンダブロック1は、3気筒の自動車用エンジン(内燃機関)を構成するものであり、3個のシリンダボア2…が直列的に配列されている。1a…はシリンダヘッド(不図示)をシリンダブロック1に合体締結させるためのボルト(不図示)用挿通孔である。3個のシリンダボア2…の回りには、オープンデッキタイプのウォータジャケット(冷却水流路)3が一連に形成され、シリンダブロック1には、このウォータジャケット3に通じる冷却水(不凍液も含む)導入口4と冷却水排出口5とが設けられている。冷却水排出口5は不図示のラジエータに配管接続され、ラジエータのアウトレット側は、ウォータポンプ(不図示)を介して冷却水導入口4に配管接続される。これによって、ウォータジャケット3とラジエータとの間で冷却水が循環するように構成される。なお、シリンダヘッドにもウォータジャケット(不図示)が設けられる場合は、シリンダブロック1のウォータジャケット3と、シリンダヘッドのウォータジャケットとが連通するよう構成される。この場合は、シリンダブロック1には前記冷却水排出口5がなくても良く、シリンダヘッドに冷却水排出口が設けられ、これにラジエータに通じる配管が接続される。
【0018】
図1に示すウォータジャケットスペーサ6は、いわゆる部分スペーサであって、冷却水導入口4から導入される冷却水の設計上の流通方向aの下流側であって冷却水導入口4の近傍位置のウォータジャケット3内に配置される。また、
図2に示すウォータジャケットスペーサ6Aは、ウォータジャケット3の周方向全周に亘る環状スペーサである。両ウォータジャケットスペーサ6,6Aは、部分スペーサ及び環状スペーサである点で、スペーサ本体7、7Aの形態が異なる。しかし、以下の実施形態では、本発明の主題である主要部が共通するので、
図1のA部の構成について、
図2のA´部にも共通するものとして説明する。したがって、
図2の例で
図1と共通する分には同一の符号を付す。また、以下において、上及び下なる用語は、ウォータジャケット3の深さ方向b(
図4(a)参照)に沿って開口部側(
図1の紙面手前側)を上とし、ウォータジャケット3の開口部とは反対側、即ち、底部側(
図1の紙面奥側)を下として用いている。
【0019】
本発明に係るウォータジャケットスペーサの第一の実施形態について、
図3〜
図9をも参照して説明する。なお、
図4(b)(c)の断面図では、スペーサ本体7を便宜上直状の板状体に描いているが、実際には
図3に示すように、平面視した形状がシリンダボア2の中心を曲率中心とする円弧状の板状体である。これは、
図7(a)(b)、
図10(b)(c)、
図12(a)(b)、
図15(b)(c)、
図17(b)(c)においても同様である。
【0020】
本実施形態のウォータジャケットスペーサ6は、スペーサ本体7と、スペーサ本体7からウォータジャケット3のシリンダボア2側の内壁3aに向け突出する弾性体リップ8を有する規制部材10とを備える。スペーサ本体7は合成樹脂の成型体からなり、規制部材10は、弾性体リップ8をスペーサ本体7に取付けるためのリップ基部9を含み、リップ基部9の少なくともウォータジャケット3の深さ方向bに沿った下端部9aは、規制部材10が取付けられる側のスペーサ本体7の面(片側面)7aから反対側に及ぶよう形成されている。本実施形態の規制部材10は、弾性体リップ8とリップ基部9とが同材質のゴムによる一体の成型体からなり、スペーサ本体7に対して、接着剤(不図示)、或いは、合成樹脂−ゴムの二色成型等により一体とされている。リップ基部9は、ゴム材からなるものの他、弾性体リップ8を構成するゴムとは別材質の硬質ゴム、合成樹脂、金属等からなるものでも良く、この場合は、弾性体リップ8とリップ基部9とを二色成型或いはインサート成型して規制部材10を構成することが望ましい。規制部材10は、スペーサ本体7の片側面(シリンダボア2に向く側の面)7aに取付けられ、弾性体リップ8は、上端部から下端部にかけ、ウォータジャケット3内を流通する冷却水の設計上の流通方向aの上流側に位置するように傾斜している。スペーサ本体7の下端面7cは、上向きに切り欠かれ7d、リップ基部9の下端部9aが弾性体リップ8の下端部8aとともに、この切欠部分7dの切欠面に沿って、反対側面7bに面一状に及ぶようL字形に形成されている。また、規制部材10を構成する弾性体リップ8のスペーサ本体7(片側面7a)からの突出幅d1は、ウォータジャケット3内に配置されたときの、片側面7aから対向する内壁3aまでの距離d1oより大とされている。
【0021】
前記のように構成されるウォータジャケットスペーサ6は、ウォータジャケット3に対して、その上端の開口部30より挿入され、冷却水の設計上の流通方向aの下流側であって冷却水導入口4の近傍位置のウォータジャケット3内に配置される。このとき、弾性体リップ8の前記突出幅d1が、対向する内壁3aまでの前記距離d1oより大とされているから、ウォータジャケット3内に挿入される過程で、弾性体リップ8はウォータジャケット3の内壁3aに変形を伴い弾接する。また、弾性体リップ8は、上端部から下端部にかけ、ウォータジャケット3内を流通する冷却水の流通方向aの上流側に位置するように傾斜しているから、この傾斜に倣って深さ方向bの全体が流通方向aの上流側に向くよう弾性変形して内壁3aに均等に弾接する。即ち、弾性体リップ8の先端部の内壁3aに対する弾性変形を伴った弾接は、深さ方向bに沿った挿入力の前記傾斜角度による分力方向に湾曲した形状になされ、したがって、全体が流通方向aの上流側に向くよう変形する。
図3における弾性体リップ8の2点鎖線部は、弾性変形前の原形を示している。そして、ウォータジャケットスペーサ6が所定の深さ位置に配置されたときには、L字形に屈曲する弾性体リップ8の下端部8aは、ウォータジャケット3の底部側の内壁3bに当接乃至近接する。また、スペーサ本体7の前記反対側面7bは、ウォータジャケット3の外側(シリンダボア2とは反対側)の内壁3cに近接若しくは当接した状態とされる。また、リップ基部9の下端部9aは、スペーサ本体7の片側面7aから反対側面7bに及ぶようL字形に形成されているから、ウォータジャケット3への挿入時に弾性体リップ8の内壁3aに対する弾接に伴う応力がこの反対側面7bに及ぶ部分に集中する。これによって、ウォータジャケット3への挿入時に、規制部材10がスペーサ本体から外れたり破損したりする懸念も生じ難くなる。
【0022】
このように本実施形態のウォータジャケットスペーサ6が挿入され、所定位置に配置されたウォータジャケット3に冷却水導入口4より冷却水が導入されると、規制部材10を構成する弾性体リップ8によって冷却水の流通が規制される。特に、弾性体リップ8は、深さ方向bの全体が内壁3aに均等に弾接しているから、冷却水の所期の規制機能が的確に発揮される。そして、弾性体リップ8は、冷却水の流通方向aの上流側に凹曲部が向くよう湾曲した形状で内壁3aに弾接しているから、ウォータジャケット3内に冷却水が導入されると、冷却水の流通圧は、流通方向aの上流側より前記湾曲するよう弾性変形した弾性体リップ8の凹曲部側に作用する。そのため、弾性体リップ8の先端部は突っ支い状にさらに強く内壁3aに弾接する。これにより、冷却水の流通圧が弾性体リップ8に作用しても、弾性体リップ8の先端部が捲られるようにして内壁3aから遊離することがなく、冷却水の規制機能が安定的に維持される。また、本実施形態では、規制部材10は、その上端部から下端部にかけて冷却水の流通方向a側に位置するよう傾斜しているから、冷却水が上側に向け誘導され、冷却が必要なシリンダボア2の上部側の内壁3aの冷却が効果的になされ、シリンダボア2の下部側の内壁3aの過冷却が抑えられ、内壁3aの全体が適正な冷却状態とされる。さらに、リップ基部9の下端部9aが、スペーサ本体7の切欠部分7dに嵌り込んだ状態で係止されているから、冷却水の流通圧が弾性体リップ8の下端部8aに作用しても、この部分から外れる懸念がない。
【0023】
図6は、第一の実施形態の第1の変形例を示す
図5と同様図である。この例のウォータジャケットスペーサ6では、スペーサ本体7の下端部7cに前記例に示すような切欠部分7dが存在せず、リップ基部9の下端部9aは、弾性体リップ8の下端部8aとともに、スペーサ本体7の下端面7cに沿って、反対側面7bに面一状に及ぶようL字形に形成されている。この例においては、前記例のように切欠部分7dによるリップ基部9の下端部9aの係止作用はないが、弾性体リップ8を含む規制部材10の機能は前記例と同様に発揮される。
その他の構成は、前記例と同様であるから、共通部分に同一の符号を付し、その作用・効果等の説明を割愛する。
なお、
図5及び
図6に示す例において、リップ基部9の下端部9aは、スペーサ本体7の反対側面7bに面一状に及ぶようL字形に形成されている。このように、下端部9aを反対側面7bに面一状に及ぶように形成すれば、強度の点で有利であるが、これに限定されず、面一状でない場合も除外されるものではない。また、下端部9aは、反対側面7bに及んでU字形に形成されていても良い。
【0024】
図7(a)(b)及び
図8は、第一の実施形態の第2の変形例を示す
図4(b)(c)及び
図5と同様図である。この例では、スペーサ本体7の片側面7a及び反対側面7bの両面に規制部材10が取付けられ、両側の規制部材10は、スペーサ本体7の下端部において、リップ基部9の下端部9aによって互いに連結されている。この例のリップ基部9の下端部9aは、弾性体リップ8とともに、スペーサ本体7の下端面7cに形成された切欠部分7dの切欠面に沿い、片側面7aから反対側面7bに及ぶようU字形に形成されている。そして、スペーサ本体7の反対側面7bに取付けられる規制部材10も、弾性体リップ8が上端部から下端部にかけて、ウォータジャケット3の深さ方向bに沿って延び、冷却水の流通方向aの上流側に位置するよう傾斜している。さらに、前記と同様に、片側面7aに取付けられる規制部材10を構成する弾性体リップ8のスペーサ本体7(片側面7a)からの突出幅d1は、ウォータジャケット3内に配置されたときの、当該片側面7aから対向する内壁3aまでの距離d1oより大とされている。一方、反対側面7bに取付けられる規制部材10を構成する弾性体リップ8のスペーサ本体7(反対側面7b)からの突出幅d2は、反対側面7bから対向する内壁3cまでの距離d2oより大とされている。図例では、片側面7aからの前記突出幅d1と反対側面7bからの前記突出幅d2、片側面7aから内壁3aまでの前記距離d1oと反対側面7bから内壁3cまでの前記距離d2oが、ともに等しく描かれているが、これらは互いに異なっていても良い。
【0025】
本例のウォータジャケットスペーサ6も、前記と同様にウォータジャケット3内に挿入されて所定位置に配置される。このとき、両側の弾性体リップ8,8の前記突出幅d1,d2が、対向する内壁3a,3cまでの距離d1o,d2oより大とされているから、ウォータジャケット3内に挿入される過程で、両側の弾性体リップ8,8は、ウォータジャケット3の内壁3a,3cにそれぞれ変形を伴い弾接する。また、両側の弾性体リップ8,8は、上端部から下端部にかけ、ウォータジャケット3内を流通する冷却水の流通方向aの上流側に位置するように傾斜しているから、この傾斜に倣って深さ方向bの全体が流通方向aの上流側に向くよう弾性変形して内壁3a,3cに均等に弾接する。即ち、弾性体リップ8,8の先端部の内壁3a,3cに対する弾性変形を伴った弾接は、深さ方向bに沿った挿入力の前記傾斜角度による分力方向に湾曲した形状になされ、したがって、全体が流通方向aの上流側に向くよう変形する(
図3参照)。そして、ウォータジャケットスペーサ6が所定の深さ位置に配置されたときには、U字形に屈曲する弾性体リップ8の下端部8aは、ウォータジャケット3の底部側の内壁3bに当接乃至近接する。また、リップ基部9の下端部9aは、スペーサ本体7の片側面7aから反対側面7bに及ぶようU字形に形成されているから、ウォータジャケット3への挿入時に弾性体リップ8,8の内壁3a,3cに対する弾接に伴う応力がこの反対側面7bに及ぶ部分に集中する。これによって、ウォータジャケット3への挿入時に、両規制部材10,10がスペーサ本体7から外れたり破損したりする懸念も生じ難くなる。
【0026】
このように本例のウォータジャケットスペーサ6が挿入され、所定位置に配置されたウォータジャケット3に冷却水導入口4より冷却水が導入されると、両側の規制部材10,10を構成する弾性体リップ8,8によって冷却水の流通が規制される。特に、両側の弾性体リップ8,8は、深さ方向bの全体が内壁3a,3cに均等に弾接しているから、冷却水の所期の規制機能が的確に発揮される。また、当該ウォータジャケットスペーサ6が所定の位置に安定的に位置づけられる。そして、両弾性体リップ8,8は、冷却水の流通方向aの上流側に向くよう湾曲した形状で内壁3a,3cに弾接しているから、前記と同様に、冷却水の流通圧が弾性体リップ8に作用しても、両側の弾性体リップ8,8の先端部が捲られるようにして内壁3a,3cから遊離することがなく、冷却水の規制機能が安定的に維持される。また、本例では、両側の規制部材10,10は、その上端部から下端部にかけて冷却水の流通方向a側に位置するよう傾斜しているから、冷却水が上側に向け誘導され、冷却が必要なシリンダボア2の上部側の内壁3aの冷却がより効果的になされ、シリンダボア2の下部側の内壁3aの過冷却がより的確に抑えられ、内壁3aの全体が適正な冷却状態とされる。
その他の構成は
図3、
図4に示す例と同様であるから、共通部分に同一の符号を付し、その作用・効果等の説明を割愛する。
【0027】
図9は、第一の実施形態の第3の変形例を示す
図5と同様図である。この例のウォータジャケットスペーサ6は、第2の変形例において、スペーサ本体7の下端部7cに前記例に示すような切欠部分7dが存在しないものに相当する。即ち、本例のリップ基部9の下端部9aは、弾性体リップ8の下端部8aとともに、スペーサ本体7の下端面7cに沿って、反対側面7bに及ぶようU字形に形成されている。この例においては、前記例のように切欠部分7dによるリップ基部9の下端部9aの係止作用はないが、弾性体リップ8を含む規制部材10の機能は前記例と同様に発揮される。
その他の構成は、前記例と同様であるから、共通部分に同一の符号を付し、その作用・効果等の説明を割愛する。
【0028】
図10(a)(b)(c)及び
図11は、本発明に係るウォータジャケットスペーサの第二の実施形態を示す。本実施形態のウォータジャケットスペーサ6は、弾性体リップ8が、上端部から下端部側にかけウォータジャケット3の深さ方向bに沿って延び、下端部8a側が、ウォータジャケット3内を流通する冷却水の設計上の流通方向aの上流側に向け反るように傾斜している。また、本実施形態のウォータジャケットスペーサ6は、規制部材10が、スペーサ本体7の片側面7aに取付けられ、リップ基部9の下端部9aは、スペーサ本体7の下端面7cに形成された切欠部分7dの切欠面に沿うようL字形に形成されている。さらに、片側面7aに取付けられる規制部材10を構成する弾性体リップ8のスペーサ本体7(片側面7a)からの突出幅d3は、ウォータジャケット3内に配置されたときの、当該片側面7aから対向する内壁3aまでの距離d3oより大とされている。弾性体リップ8の下端部8aは下方に向け漸次スペーサ本体7の片側面7aに近づくよう反っているが、その最下端部の片側面7aからの突出幅d3´もなお前記距離d3oより大とされている。本実施形態の規制部材10も、弾性体リップ8とリップ基部9とが同材質のゴムによる一体の成型体からなり、スペーサ本体7に対して、接着剤(不図示)、或いは、合成樹脂−ゴムの二色成型等により一体とされている。また、リップ基部9は、ゴム材からなるものの他、弾性体リップ8を構成するゴムとは別材質の硬質ゴム、合成樹脂、金属等からなるものでも良く、この場合は、弾性体リップ8とリップ基部9とを二色成型し、或いはインサート成型して規制部材10を構成することが望ましい。
【0029】
本実施形態のウォータジャケットスペーサ6も、ウォータジャケット3に対して、その上端の開口部30より挿入され、冷却水の流通方向aの下流側であって冷却水導入口4の近傍位置のウォータジャケット3内に配置される(
図1参照)。このとき、弾性体リップ8の前記突出幅d3,d3´が、対向する内壁3aまでの距離d3oより大とされているから、ウォータジャケット3内に挿入される過程で、弾性体リップ8はウォータジャケット3の内壁3aに変形を伴い弾接する。また、弾性体リップ8の下端部8a側は、ウォータジャケット3内を流通する冷却水の設計上の流通方向aの上流側に反るように傾斜しているから、この傾斜に倣って深さ方向bの全体が流通方向aの上流側に向くよう弾性変形して内壁3aに均等に弾接する(
図3参照)。この場合も、弾性体リップ8の先端部の内壁3aに対する弾性変形を伴った弾接は、深さ方向bに沿った挿入力の前記傾斜による分力方向に湾曲した形状になされ、したがって、全体が流通方向aの上流側に向くよう変形する。そして、ウォータジャケットスペーサ6が所定の深さ位置に配置されたときには、L字形に屈曲する弾性体リップ8の下端部8aとスペーサ本体7の下端面7cは、ウォータジャケット3の底部側の内壁3bに当接乃至近接する。また、スペーサ本体7の前記反対側面7bは、ウォータジャケット3の外側(シリンダボア2とは反対側)の内壁3cに近接若しくは当接した状態とされる。また、リップ基部9の下端部9aは、スペーサ本体7の片側面7aから反対側面7bに及ぶようL字形に形成されているから、ウォータジャケット3への挿入時に弾性体リップ8の内壁3aに対する弾接に伴う応力がこの反対側面7bに及ぶ部分に集中する。これによって、ウォータジャケット3への挿入時に、規制部材10がスペーサ本体から外れたり破損したりする懸念も生じ難くなる。
【0030】
このように本実施形態のウォータジャケットスペーサ6が挿入され、所定位置に配置されたウォータジャケット3に冷却水導入口4より冷却水が導入されると、規制部材10を構成する弾性体リップ8によって冷却水の流通が規制される。特に、弾性体リップ8は、深さ方向bの全体が内壁3aに均等に弾接しているから、冷却水の所期の規制機能が的確に発揮される。そして、弾性体リップ8は、凹曲部が冷却水の流通方向aの上流側に向くよう湾曲した形状で内壁3aに弾接しているから、ウォータジャケット3内に冷却水が導入されると、冷却水の流通圧は、流通方向aの上流側より前記湾曲するよう弾性変形した弾性体リップ8の凹曲部側に作用する。そのため、弾性体リップ8の先端部は突っ支い状にさらに強く内壁3aに弾接する。これにより、冷却水の流通圧が弾性体リップ8に作用しても、弾性体リップ8の先端部が捲られるようにして内壁3aから遊離することがなく、冷却水の規制機能が安定的に維持される。また、本実施形態においても、規制部材10による冷却水の流通の規制作用によって、内壁3aの全体が適正な冷却状態とされる。さらに、リップ基部9の下端部9aが、スペーサ本体7の切欠部分7dに嵌り込んだ状態で係止されているから、冷却水の流通圧が弾性体リップ8の下端部8aに作用しても、この部分から外れる懸念がない。
【0031】
図12(a)(b)及び
図13は、第二の実施形態の第1の変形例を示す
図10(b)(c)及び
図11と同様図である。この例のウォータジャケットスペーサ6では、スペーサ本体7の片側面7a及び反対側面7bの両面に規制部材10,10が取付けられ、両側の規制部材10,10は、スペーサ本体7の下端部において、リップ基部9の下端部9aによって互いに連結されている。この例のリップ基部9の下端部9aは、スペーサ本体7の下端面7cに形成された切欠部分7dの切欠面に沿い、片側面7aから反対側面7bに及ぶようU字形に形成されている。そして、スペーサ本体7の反対側面7bに取付けられる規制部材10も、弾性体リップ8が上端部から下端部にかけて、ウォータジャケット3の深さ方向bに沿って延び、弾性体リップ8の下端部8a側が冷却水の流通方向aの上流側に向け反るように傾斜している。さらに、前記と同様に、片側面7aに取付けられる規制部材10を構成する弾性体リップ8のスペーサ本体7(片側面7a)からの突出幅d3及び下端部8aの最下端部の片側面7aからの突出幅d3´は、ウォータジャケット3内に配置されたときの、当該片側面7aから対向する内壁3aまでの距離d3oより大とされている。一方、反対側面7bに取付けられる規制部材10を構成する弾性体リップ8のスペーサ本体7(反対側面7b)からの突出幅d4及び下端部8aの最下端部の反対側面7bからの突出幅d4´は、反対側面7bから対向する内壁3cまでの距離d4oより大とされている。図例では、片側面7aからの前記突出幅d3,d3´と反対側面7bからの前記突出幅d4,d4´、片側面7aから内壁3aまでの前記距離d3oと反対側面7bから内壁3cまでの前記距離d4oが、ともに等しく描かれているが、これらは互いに異なっていても良い。
【0032】
本例のウォータジャケットスペーサ6も、前記各例と同様にウォータジャケット3内に挿入されて所定位置に配置される。このとき、弾性体リップ8,8の前記突出幅d3(d3´),d4(d4´)が、対向する内壁3a,3cまでの距離d3o,d4oより大とされているから、ウォータジャケット3内に挿入される過程で、両側の弾性体リップ8,8は、ウォータジャケット3の内壁3a,3cに変形を伴い弾接する。また、両側の弾性体リップ8,8は、下端部8a側がウォータジャケット3内を流通する冷却水の流通方向aの上流側に向け反るように傾斜しているから、この傾斜に倣って深さ方向bの全体が流通方向aの上流側に向くよう弾性変形して内壁3a,3bに均等に弾接する。この場合も、両側の弾性体リップ8,8の先端部の内壁に3a,3cに対する弾性変形を伴った弾接は、深さ方向bに沿った挿入力の前記傾斜による分力方向に湾曲した形状になされ、したがって、全体が流通方向aの上流側に向くよう変形する。そして、ウォータジャケットスペーサ6が所定の深さ位置に配置されたときには、U字形に屈曲する弾性体リップ8の下端部8a及びスペーサ本体7の下端面7cは、ウォータジャケット3の底部側の内壁3bに当接乃至近接する。また、リップ基部9の下端部9aは、スペーサ本体7の片側面7aから反対側面7bに及ぶようU字形に形成されているから、ウォータジャケット3への挿入時に弾性体リップ8,8の内壁3a,3cに対する弾接に伴う応力がこの反対側面7bに及ぶ部分に集中する。これによって、ウォータジャケット3への挿入時に、規制部材10がスペーサ本体から外れたり破損したりする懸念も生じ難くなる。
その他の構成は
図10〜
図11に示す例と同様であるから、共通部分に同一の符号を付し、その作用・効果等の説明を割愛する。
【0033】
図14は、同第二の実施形態の第2の変形例を示す
図11と同様図である。この例のウォータジャケットスペーサ6では、スペーサ本体7の片側面7a及び反対側面7bの両面に、
図10及び
図11に示す例と同様に、規制部材10,10が取付けられている。そして、スペーサ本体7の下端部側に片側面7a及び反対側面7bに貫通するよう透孔状に形成された切欠部分7dが形成されている。両側の規制部材10,10は、スペーサ本体7の下端部において、切欠部分7dの切欠面に沿ってリップ基部9の下端部9aによって互いに連結され、下端部9aはスペーサ本体7の片側面7aから反対側面7bに及ぶようU字形に形成されている。また、両側の規制部材10,10を構成する弾性体リップ8,8の下端部8a側は、
図10及び
図11に示す例と同様に、冷却水の流通方向aの上流側に向け反るように傾斜している。この例のウォータジャケットスペーサ6も前記各例と同様にウォータジャケット3内に挿入されて所定位置に配置されるが、このとき、ウォータジャケット3の底部側の内壁3bには、スペーサ本体7の下端面7cが当接乃至近接し、弾性体リップ8の下端部8aは内壁3bより上方に位置する。したがって、規制部材10,10は
図12及び
図13と同様の作用・効果を奏する。
その他の構成は
図12〜
図13に示す例と同様であるから、共通部分に同一の符号を付し、ここでもその作用・効果等の説明を割愛する。
【0034】
図15(a)(b)(c)及び
図16は、第二の実施形態の第3の変形例を示す。この例のウォータジャケットスペーサ6も、スペーサ本体7の片側面7a及び反対側面7bの両面に規制部材10,10が取付けられるが、スペーサ本体7に対する規制部材10,10の取付部に凹溝7e,7eが形成されている。そして、弾性体リップ8、8のリップ基部9,9は、この凹溝7e,7eにそれぞれ嵌り込むように形成され、凹溝7e,7eにリップ基部9,9を嵌め入れて前記と同様に接着剤等によって一体に固定される。これによって、両側の規制部材10,10がスペーサ本体7の片側面7a及び反対側面7bに取付けられている。そして、スペーサ本体7の下端部には
図10及び
図11に示す例と同様の切欠部分7dが形成されている。両側の規制部材10,10は、スペーサ本体7の下端部において、切欠部分7dの切欠面に沿ってリップ基部9の下端部9aによって互いに連結され、下端部9aは片側面7aから反対側面7bに及ぶようU字形に形成されている。また、両側の規制部材10,10を構成する弾性体リップ8,8の下端部8a側は、
図10及び
図11に示す例と同様に、冷却水の流通方向aの上流側に向け反るように傾斜している。この例では、規制部材10,10が、リップ基部9,9を凹溝7e,7eに嵌め入れ一体に固定することによってスペーサ本体7に取付けられているから、規制部材10,10のスペーサ本体7に対する取付状態がより安定化され、ウォータジャケット3への挿入時に、規制部材10,10がスペーサ本体7から外れたり破損したりする懸念がより生じ難くなる。
その他の構成は
図12〜
図13に示す例と同様であるから、共通部分に同一の符号を付し、ここでもその作用・効果等の説明を割愛する。
【0035】
図17(a)(b)(c)及び
図18は、第三の実施形態を示す。この例のウォータジャケットスペーサ6では、
図10及び
図11に示す例と同様に、スペーサ本体7の片側面7aに規制部材10が取付けられるが、スペーサ本体7に対する規制部材10の取付部に
図15及び
図16の例と同様の凹溝7eが形成されている。リップ基部9は、
図15及び
図16の例と同様に、この凹溝7eに嵌り込むように形成されている。さらに、この凹溝7eの底部には、スペーサ本体7の上端部側から下端部側にかけて適宜間隔毎に、反対側面7bに貫通する複数(図例では5個)の透孔7fが設けられている。シール基部9の下端部9aは、最下部の透孔7fに圧入によって係合して、反対側面7bに及ぶリベット状の突起形状に形成されている。最下部の透孔7f以外の透孔7fには、リップ基部9に形成されたリベット状の突起形状部9bが圧入によって係合して、反対側面7bに及ぶようになされている。この例では、リップ基部9の凹溝7eに対する嵌め入れと、下端部9a及び突起形状部9bの透孔7fに対する圧入を伴った係合とによって、規制部材10のスペーサ本体7に対する取付が接着剤等の固定手段を用いなくとも安定的になされ、ウォータジャケット3への挿入時に、規制部材10がスペーサ本体7から外れたり破損したりする懸念がより生じ難くなる。
その他の構成は
図10〜
図11、
図15〜
図16に示す例と同様であるから、共通部分に同一の符号を付し、ここでもその作用・効果等の説明を割愛する。
【0036】
図19(a)(b)は、本発明に係るウォータジャケットスペーサの第四の実施形態を示す。本実施形態のウォータジャケットスペーサ6は、規制部材10が、弾性体リップ8とリップ基部9とからなる点で、前記各実施形態のウォータジャケットスペーサ6と共通する。しかし、リップ基部9は、環状の弾性部材からなり、規制部材10は、スペーサ本体7に対してリップ基部9を介して着脱可能な弾性的嵌合によって取付けられている点で異なる。弾性体リップ8とリップ基部9とは、同じ弾性ゴムによる一体の成型体からなり、本実施形態では、弾性体リップ8がリップ基部9の周方向全周に亘り形成されている。スペーサ本体7は、前記各例と同様に合成樹脂の板状成型体からなるが、その深さ方向bに直交する中央部分には、深さ方向bに沿った環状凹溝7gがスペーサ本体7両面に亘り形成されている。この環状凹溝7gは、リップ基部9が嵌り込み得る形状とされ、環状のリップ基部9は弾性変形を伴い拡環可能とされている。これによって、スペーサ本体7を拡環されたリップ基部9の環内に挿通させ、規制部材10を、リップ基部9を介して環状凹溝7gに復元弾力を伴い弾性的に嵌合させることができる。さらに、リップ基部9の両面の弾性体リップ8,8は、リップ基部9の周方向に対して傾斜するよう形成されている。この傾斜は、当該ウォータジャケットスペーサ6がウォータジャケット3(
図1等参照)内に挿入されたときには、上端部から下端部にかけ冷却水の設計上の流通方向aの上流側に位置するように形成されている。スペーサ本体7の両側に位置する弾性体リップ8,8のスペーサ本体7からの突出幅も、図示は省略するが前記各例と同様に設定される。
【0037】
図19(a)は、スペーサ本体7に対して規制部材10が前記のように弾性的嵌合によって取付けられて構成されたウォータジャケットスペーサ6を示している。本実施形態のウォータジャケットスペーサ6も、
図1に示すようなウォータジャケット3内の所定位置に挿入されて用いられる。このとき、スペーサ本体7の両面の弾性体リップ8,8がウォータジャケット3の両内壁3a,3cに、前記例と同様に湾曲状に弾性変形して、均等に弾接する(
図3等参照)。また、リップ基部9の下端部9aは、スペーサ本体7の下端面7cに沿ってスペーサ本体7の両側面7a,7b(
図3等参照)間に及ぶU字形とされているから、この下端部9aも、前記と同様の機能を奏する。さらに、リップ基部9aの下端部9aに一体とされる弾性体リップ8の下端部8aは、ウォータジャケット3の底部側内壁3b(
図4(a)等参照)に当接乃至近接する。本実施形態のウォータジャケットスペーサ6は、規制部材10がスペーサ本体7に対して着脱自在に弾性的に嵌合可能とされる。これによって、弾性体リップ8の先端部が摩耗等による不具合が生じた場合等においては、容易に交換することができる。さらに、仕様の異なる規制部材10を各種準備しておけば、求められる冷却水の流通規制機能に適したものに適宜選択交換することもできる。その他の構成は、
図7〜
図9に示す例と同様であるので、共通部分に同一の符号を付し、その作用・効果等の説明を割愛する。
【0038】
図20は、本発明に係るウォータジャケットスペーサの第五の実施形態を示す。本実施形態のウォータジャケットスペーサ6は、スペーサ本体7の両側に規制部材10,10が取付けられている点で、
図7〜
図9、或いは、
図12〜
図16に示す例と共通するが、両規制部材10,10が、ウォータジャケット3の周方向近傍位置に互いにずれている点で異なる。そのため、両規制部材10,10を連結するリップ基部9の下端部9aは、スペーサ本体7の厚み方向を斜めに横断するようなU字形状とされる。この場合の下端部9aもスペーサ本体7に形成される切欠部分7dやスペーサ本体7の下端面7cに沿うように形成される。このようにスペーサ本体7の両側の規制部材10,10が周方向に互いにずれているものも可とすることにより、ウォータジャケット3の内壁3a,3b,3cの形状等に応じて、規制部材10,10の位置をこれら形状等に干渉しないように適宜設定することができる。加えて、両側面の規制部材10,10は、周方向に近接しているから、ウォータジャケット3への挿入時の応力がリップ基部9の下端部9aにおいて両側面で等しくなり、規制部材10,10がスペーサ本体7から外れたり破損したりする懸念がより生じ難くなる。
その他の構成は
図7〜
図9に示す例と同様であるので、共通部分に同一の符号を付し、ここでもその作用・効果等の説明を割愛する。
【0039】
図21は、本発明に係るウォータジャケットスペーサの適用例の別例を示す。この例のウォータジャケットスペーサ6は、第一の実施形態のウォータジャケットスペーサ6において、スペーサ本体7の片側面7aに取付けられた規制部材10の流通方向aの下流側に別の規制部材100が取付けられている点で特徴付けられる。自動車用エンジンにおいては、ウォータジャケット3を流通する冷却水の設計上の流通方向はaのように設定される。しかし、エンジンが稼働して、シリンダボア2内の温度が変動すると、ラジエータとの間で冷却水を循環駆動するウォータポンプの駆動制御によって、時に、ウォータジャケット3を流通する冷却水の流通方向が変動し、設計上の流通方向aとは反対の流通方向a´に冷却水が流通することがある。本適用例では、流通方向a´に流通する冷却水に対しても規制部材10と同様の機能を持たせるために、別の規制部材(以下、第2規制部材と言う)100を規制部材10に対して対称にスペーサ本体7の片側面7aに取付けている。第2規制部材100は、規制部材10を構成する弾性体リップ8及びリップ基部9(下端部9a)とそれぞれ対称となる第2弾性体リップ80及び第2リップ基部90(下端部90a)とから構成される。そして、第2弾性体リップ80のスペーサ本体7の片側面7aからの突出幅d1´は、弾性体リップ8の同突出幅と同じとされる。これによって、第2規制部材100は、流通方向a´に流通する冷却水に対して規制部材10と同様の機能を奏する。その他の構成は第一の実施形態と同様であるから、共通部分に同一の符号を付し、その作用・効果等の説明を割愛する。なお、この適用例は、第二〜第五の実施形態にも適用可能である。
【0040】
図22(a)(b)は、本発明に係るウォータジャケットスペーサの適用例のさらに別の例を示す。これらの例のウォータジャケットスペーサ6は、
図1及び
図2に示すウォータジャケット3における隣接するシリンダボア20,20間のくびれ部3dに設置されるものである。図示のウォータジャケットスペーサ6におけるスペーサ本体7の平面形状は、くびれ部3dの形状に沿うよう湾曲した形状とされている。(a)(b)の例では、いずれも、スペーサ本体7の中央部から、くびれ部3dにおける内壁3aの最奥部壁に向け張出すように形成された板状の延出部70を備えている。この延出部70はスペーサ本体の一部をなすもので、スペーサ本体7と一体の合成樹脂或いはゴムの成型体や、スペーサ本体7に接着剤やインサート成型等の手段で一体とされる金属板であっても良い。図例では、延出部70がスペーサ本体7と一体の合成樹脂の成型体であることを示している。
【0041】
図22(a)の例では、規制部材10が、弾性体リップ8とリップ基部9とからなり、リップ基部9を介してスペーサ本体7の延出部70の片側面70a(冷却水の設計上の流通方向aに対向する側の面)に取付けられている。弾性体リップ8はゴムの成型体からなり、ウォータジャケット3の深さ方向b(
図4(a)等参照)に沿って延びるようリップ基部9を介して延出部70の片側面70aに一体に形成されている。そして、弾性体リップ8は、上端部から下端部にかけ、冷却水の流通方向aの上流側に位置するように傾斜している。また、リップ基部9の下端部(図示省略)は、延出部70の片側面70aから反対側面70bに及ぶようL字形に形成されている。この例でも、弾性体リップ8のスペーサ本体7からの突出幅d5が、スペーサ本体7から内壁3aまでの距離d5oより大とされている。したがって、第一の実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0042】
図22(b)の例では、(a)の例に加えて、延出部70の反対側面(弾性体リップ8が形成されていない面)70bに別の弾性体リップ80が一体に形成され、この弾性体リップ80とリップ基部90とにより別の規制部材100が構成されている。この規制部材100における弾性体リップ80もゴムの成型体からなり、上端部から下端部にかけ、
図21の例で示したと同様の流通方向a´の上流側に位置するように傾斜している。また、この例でも、弾性体リップ80のスペーサ本体7からの突出幅d5´が、スペーサ本体7から内壁3aまでの距離d5oより大とされている。さらに、リップ基部9の下端部(図示省略)は、延出部70の片側面70aから反対側面70bに及ぶようU字形に形成されている。したがって、規制部材10による作用・効果に加えて、
図21の例で説明したように、シリンダボア2の温度変化等によるウォータジャケット3内の冷却水の流通方向の変動にも対応して、冷却水の規制機能が適正に発揮される。
なお、
図22(a)(b)に示す例において、弾性体リップ8,80は、上端部から下端部にかけのウォータジャケット3の深さ方向bに沿って延び、それぞれの下端部側が、ウォータジャケット3内を流通する冷却水の流通方向a,a´の上流側に向け反るように傾斜しているものであっても良い。
【0043】
なお、本発明のスペーサが適用される内燃機関として3気筒の自動車用のエンジンを例に採ったが、他の気筒数の自動車用のエンジン、或いは、自動車用以外の内燃機関にも適用されることは言うまでもない。さらに、シリンダブロック1における冷却水導入口4の設置位置は、
図1及び
図2の例に限定されず、設計上の冷却水の流通方向aが適正に設定される限り、ウォータジャケット3の周方向のいずれの位置であっても良い。図示の弾性体リップ8(80)及びリップ基部9(90)等の形状は概念的に示すものであり、実際の形状と異なることも言うまでもない。
また、例えば、冷却水の流通規制の目的に応じて、スペーサ本体7の中間部又は下部に部分的に設けられた規制部材10についても、リップ基部9の下端部9aがスペーサ本体7の反対側に及ぶよう形成することで上述した効果が同様に得られる。