特許第6343516号(P6343516)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6343516強化ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物からなる自動車内装部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6343516
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】強化ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物からなる自動車内装部品
(51)【国際特許分類】
   C08L 25/04 20060101AFI20180604BHJP
   C08L 71/12 20060101ALI20180604BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20180604BHJP
   C08K 9/08 20060101ALI20180604BHJP
   B60K 37/00 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
   C08L25/04
   C08L71/12
   C08K7/14
   C08K9/08
   B60K37/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-156986(P2014-156986)
(22)【出願日】2014年7月31日
(65)【公開番号】特開2016-33196(P2016-33196A)
(43)【公開日】2016年3月10日
【審査請求日】2017年3月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100181272
【弁理士】
【氏名又は名称】神 紘一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100178685
【弁理士】
【氏名又は名称】田浦 弘達
(72)【発明者】
【氏名】山口 徹
【審査官】 楠 祐一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−279349(JP,A)
【文献】 特開平08−183902(JP,A)
【文献】 特開2011−246681(JP,A)
【文献】 特開平11−279347(JP,A)
【文献】 特開平03−229756(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/081705(WO,A1)
【文献】 特表2003−527462(JP,A)
【文献】 特開平11−029700(JP,A)
【文献】 特開平08−003435(JP,A)
【文献】 特開平09−328572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 25/04
B60K 37/00
C08K 7/14
C08K 9/08
C08L 71/12
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形品中の還元粘度(クロロホルム溶媒、30℃で測定)が0.30〜0.45dl/gのポリフェニレンエーテル(A)、スチレン系樹脂(B)、及びガラス繊維(C)を含有し、
前記(A)〜(C)成分の合計量100質量%中における、前記(A)成分の含有量が10〜30質量%、前記(B)成分の含有量が50〜85質量%、前記(C)成分の含有量が5〜25質量%であり、
成形品中の、前記(A)成分のポリフェニレンエーテルの末端OH基数が、100〜200μmol/gである、強化ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物からなる自動車内装部品。
【請求項2】
前記(C)成分が、ウレタン系収束剤で収束されたガラス繊維である、請求項1に記載の強化ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物からなる自動車内装部品。
【請求項3】
前記(B)成分が、ポリスチレンとゴム強化ポリスチレンとの混合物である、請求項1または2に記載の強化ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物からなる自動車内装部品。
【請求項4】
インストルメントパネル部品である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の強化ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物からなる自動車内装部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強化ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物からなる自動車内装部品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリフェニレンエーテルは通常、例えばスチレン系樹脂などの樹脂を、必要とされる耐熱性や成形流動性のレベルに応じて任意の割合で配合してポリフェニレンエーテル系樹脂とし、また、当該ポリフェニレンエーテル系樹脂に、更に必要に応じてエラストマー成分や、難燃剤、無機フィラー及び熱安定剤等の添加剤成分を配合した後、樹脂組成物として用いることがある。
ポリフェニレンエーテル系樹脂及びその樹脂組成物は、耐熱性、機械的物性、成形加工性、耐酸アルカリ性、寸法安定性及び電気特性等に優れるため、例えば、家電OA、事務機、情報機器及び自動車分野等に広く用いられている。特に、自動車の内装部品(例えばインストルメントパネル部品など)には耐熱性、機械的物性(例えば、耐衝撃性、剛性等)が必要とされる場合が多く、ポリフェニレンエーテル系樹脂及びその樹脂組成物の使用が検討されている。
【0003】
しかし、インストルメントパネル部品などを含めて自動車内装部品の多くは、製品の特性上、当該部品の周囲が発泡ウレタンで覆われるが、通常、ポリフェニレンエーテルとスチレン系樹脂からなるポリフェニレンエーテル系樹脂及びその樹脂組成物は、発泡ウレタンとの接着性(以下、「ウレタン接着性」とも称す)が必ずしも良好ではない。
【0004】
そしてこれまで、ポリフェニレンエーテル及びスチレン系樹脂を含む樹脂組成物と発泡ウレタンとの接着性を改善するために、ABS樹脂やSMA樹脂などの極性ポリマー成分を配合する方法(例えば特許文献1及び2を参照)や、テルペンフェノール樹脂を配合する方法(例えば特許文献3及び4を参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60−36554号公報
【特許文献2】特開昭63−118366号公報
【特許文献3】特開平2−199164号公報
【特許文献4】特開平9−157515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2に記載されるような極性ポリマー成分を配合する方法においては、極性ポリマーが、ポリフェニレンエーテル系樹脂との混和性が悪く、発泡ウレタンとの接着性改良のために十分な量を配合した場合、得られた成形品に層状剥離が生じたり、機械物性が著しく低下したりすることがある。
また、特許文献3及び4に記載されるようなテルペンフェノール樹脂を配合する方法においては、テルペンフェノール樹脂を十分な量配合することで、発泡ウレタンとの接着性や成形流動性は改良され得るが、例えば成形機内で滞留させた際の樹脂の安定性(以下、「滞留成形安定性」とも称す)が低下するため、インストルメントパネル部品のような成形サイクルの長い、大型の自動車内装部品を成形する場合、成形時にシルバーストリーク(銀条)が発生するなどして外観不良が生じることがある。
【0007】
本発明はこれらの課題に鑑み、ウレタン接着性に優れるとともに、成形後の外観、引張強度及び曲げ強度等の機械的物性並びに滞留成形安定性にも優れ、さらに十分な成形流動性を兼ね備えた強化ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物からなる自動車内装部品、特にインストルメントパネル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、樹脂組成物中のポリフェニレンエーテルの還元粘度を特定の数値に調整して特定量配合し、更にはガラス繊維を特定の量比配合することにより、樹脂組成物のウレタン接着性を改善するとともに、良好な、成形後の外観、機械的物性、滞留成形安定性、及び成形流動性を両立するので、自動車内装部品用途に有効に使用することが可能であることを見出し、本発明を提供できるに至った。
【0009】
即ち、本発明は、
〔1〕成形品中の還元粘度(クロロホルム溶媒、30℃で測定)が0.30〜0.45dl/gのポリフェニレンエーテル(A)、スチレン系樹脂(B)、及びガラス繊維(C)を含有し、
前記(A)〜(C)成分の合計量100質量%中における、前記(A)成分の含有量が10〜30質量%、前記(B)成分の含有量が50〜85質量%、前記(C)成分の含有量が5〜25質量%であり、
成形品中の、前記(A)成分のポリフェニレンエーテルの末端OH基数が、100〜200μmol/gである、強化ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物からなる自動車内装部品、
〔2〕上記〔1〕において、前記(C)成分が、ウレタン系収束剤で収束されたガラス繊維である、強化ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物からなる自動車内装部品、
〔3〕
上記〔1〕または〔2〕において、前記(B)成分が、ポリスチレンとゴム強化ポリスチレンとの混合物である、強化ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物からなる自動車内装部品、
〕インストルメントパネル部品である、上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の強化ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物からなる自動車内装部品、
である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の強化ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物からなる自動車内装部品によれば、ウレタン接着性に優れるとともに、成形後の外観、引張強度及び曲げ強度等の機械的物性滞留成形安定性、並びに成形流動性にも優れるため、自動車内装部品、特にインストルメントパネル部品として有効に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について詳細に説明する。本発明は、以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0012】
〔強化ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物〕
本実施形態の強化ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物(以下、「樹脂組成物」とも称す。)は、当該樹脂組成物を成形して得られた成形品中の還元粘度(クロロホルム溶媒、30℃で測定)が0.30〜0.45dl/gのポリフェニレンエーテル(A)、スチレン系樹脂(B)、及びガラス繊維(C)を含有し、前記(A)〜(C)成分の合計量100質量%中における、前記(A)成分の含有量が10〜30質量%、前記(B)成分の含有量が40〜85質量%、前記(C)成分の含有量が5〜30質量%である。
【0013】
(ポリフェニレンエーテル(A))
本発明の樹脂組成物に用いられるポリフェニレンエーテル(A)は、下記一般式(1)及び/又は(2)の繰り返し単位を有し、構成単位が一般式(1)又は(2)からなる単独重合体(ホモポリマー)、あるいは共重合体(コポリマー)であることが好ましい。
【化1】
【化2】
上記一般式(1)、(2)中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、ハロゲン及び水素等の一価の残基からなる群より選ばれるいずれかである。但しR5及びR6が同時に水素である場合を除く。
【0014】
また、前記アルキル基の好ましい炭素数は1〜3であり、前記アリール基の好ましい炭素数は6〜8であり、前記一価の残基の中でも水素が好ましい。
尚、上記一般式(1)、(2)における繰り返し単位数については、ポリフェニレンエーテル(A)の分子量分布により様々であるため、特に制限されることはない。
【0015】
ポリフェニレンエーテル(A)のうち、単独重合体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジ−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−n−ブチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−イソプロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−クロロエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−ヒドロキシエチル−1,4−フェニレン)エーテル及び、ポリ(2−メチル−6−クロロエチル−1,4−フェニレン)エーテル等が挙げられる。特に、原料入手の容易性及び加工性の観点から、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルが好ましい。
【0016】
ポリフェニレンエーテル(A)のうち、共重合体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体、2,6−ジメチルフェノールとo−クレゾールとの共重合体、及び2,3,6−トリメチルフェノールとo−クレゾールとの共重合体といった、ポリフェニレンエーテル構造を主体とするものが挙げられる。
特に、原料入手の容易性及び加工性の観点から、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体が好ましく、物性改良の観点から2,6−ジメチルフェノール90〜70質量%と2,3,6−トリメチルフェノール10〜30質量%との共重合がより好ましい。
上述した各種ポリフェニレンエーテル(A)は、一種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0017】
ポリフェニレンエーテル(A)は、ポリフェニレンエーテル(A)の耐熱性が低下しすぎない程度であれば、上記一般式(1)、(2)以外の他の種々のフェニレンエーテル単位を部分構造として含んでいてもよい。
かかるフェニレンエーテル単位としては、以下に限定されるものではないが、例えば、特開平01−297428号公報及び特開昭63−301222号公報に記載されている、2−(ジアルキルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテル単位や、2−(N−アルキル−N−フェニルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテル単位が挙げられる。
【0018】
ポリフェニレンエーテル(A)は、ポリフェニレンエーテルの主鎖中にジフェノキノン等が少量結合していてもよい。
【0019】
ポリフェニレンエーテル(A)は、更なるウレタン接着性改良の観点から、その一部を不飽和カルボン酸或いはその官能的誘導体で変性した官能化ポリフェニレンエーテルで置き換えることも可能である。この場合、変性は不飽和カルボン酸やその官能的誘導体の中の1種により行われてもよいし、2種以上の組み合わせによって行われてもよい。
上記の官能化ポリフェニレンエーテルの配合は、滞留成形安定性の観点から樹脂組成物全体において10質量%以下であることが好ましい。同様の観点から、当該配合は、より好ましくは5質量%以下であり、更により好ましくは3質量%以下である。
【0020】
本発明の成形品中におけるポリフェニレンエーテルの還元粘度(クロロホルム溶媒、30℃で測定)は、成形品の十分なウレタン接着性の観点から、0.30〜0.45dl/gの範囲内である必要がある。同様の観点から、当該還元粘度は、好ましくは0.32〜0.45dl/gの範囲内であり、より好ましくは0.32〜0.43dl/gの範囲内である。
尚、本発明において「還元粘度」は、ウベローデ粘度計を用いて、クロロホルム溶媒、30℃、0.5g/dl溶液で測定する。
【0021】
成形品中のポリフェニレンエーテル(A)の還元粘度は、以下の手順で成形品中からポリフェニレンエーテルを分離した後、上記のように、ウベローデ粘度計を用いて、クロロホルム溶媒、30℃、0.5g/dl溶液で測定することができる。まず成形品2g程度をクロロホルム100gに溶解し、不溶物(ガラス繊維、着色剤等)を濾過して取り除いた後、濾液をスターラーで撹拌しながら、3倍容量以上のメタノールを加えてポリマー成分を析出させる。析出させたポリマー成分を濾過、メタノール洗浄して、130℃真空揮発炉中で3時間乾燥させた後、乾燥ポリマーを更にトルエン100gに溶解させる。当該ポリマーを溶解させたトルエン溶液を、20000rpmの遠心分離器に2時間かけて、成形品内のポリフェニレンエーテル以外の不溶ポリマー成分、例えば不溶ゴム成分を沈降分離させ、遠心分離後の溶液からトルエン溶液成分を分離する。分離したトルエン溶液をスターラーで撹拌しながら、3倍容量以上のメタノールを加えてポリマー成分を析出させた後、濾過してポリマー成分を分離する。130℃揮発炉中で3時間乾燥させたポリマー成分を50℃の塩化メチレン50g中に溶解する。−30℃の冷凍庫内で24時間放置した後、析出したポリフェニレンエーテルを濾過して−30℃の塩化メチレンで洗浄後、130℃真空揮発炉中で3時間乾燥させて、乾燥ポリフェニレンエーテルが得られる。
【0022】
予め原料として使用するポリフェニレンエーテル重合紛体の還元粘度(クロロホルム溶液、30℃で測定)は0.27〜0.41dl/gの範囲内であることが好ましい。当該還元粘度を0.27dl/g以上とすることにより樹脂組成物の十分な機械的物性を保持することができ、当該還元粘度を0.41dl/g以下とすることにより押出加工時のポリフェニレンエーテル還元粘度を効率よく調整することができる。同様の観点から、当該還元粘度は、より好ましくは0.30〜0.40dl/gの範囲内であり、更により好ましくは0.33〜0.40dl/gの範囲内であり、特により好ましくは0.33〜0.38dl/gである。
【0023】
本発明の成形品中におけるポリフェニレンエーテル(A)は、成形品中の末端OH基数が100〜200μmol/gの範囲内にあるように調整することが好ましい。末端OH基数が100μmol/g未満の場合、樹脂組成物のウレタン接着性が低下して十分でなくなる虞がある。また、末端OH基数が200μmol/gを超える場合、ウレタン接着性は良好であるが、機械的強度や高温滞留成形安定性が低下して十分ではなくなる虞がある。同様の観点から、末端OH基数は、より好ましくは120〜180μmol/gの範囲内であり、更により好ましくは130〜170μmol/gの範囲内である。
【0024】
本発明の成形品中におけるポリフェニレンエーテル(A)の末端OH基数は以下の操作で求めることができる。上記で成形品中から分離したポリフェニレンエーテルを塩化メチレン溶液に調整した後、紫外可視吸光光度計を用いて、測定波長318nmの吸光度を測定することにより、フェノール性OH基数を算出することができる。
【0025】
ポリフェニレンエーテル(A)の重合方法は、特に限定されるものではないが、成形品中における還元粘度や末端OH基数の調整の観点から、溶液重合が好ましい。具体的には、溶液重合は、モノマー(例えば、2,6−ジメチルフェノール)を、第一銅塩とアミン化合物とを触媒として、トルエン等の溶媒中、酸素存在下で酸化重合反応させる。次いで、得られたポリフェニレンエーテル溶液に、例えば銅とキレート化合物を形成する化合物を添加する等の方法で触媒を失活させた後、酸素の混入を避けた雰囲気下、24〜70℃の温度条件下で、該ポリフェニレンエーテル溶液を撹拌する。その後、メタノール等を加えて、ポリフェニレンエーテルを析出させて、更に、当該ポリフェニレンエーテルを溶液と分離、洗浄、乾燥後、本樹脂組成物の原料となるポリフェニレンエーテル重合粉体を得ることができる。
【0026】
本実施形態の樹脂組成物において、成形品中の還元粘度(クロロホルム溶媒、30℃で測定)が0.30〜0.45dl/gのポリフェニレンエーテル(A)と、スチレン系樹脂(B)と、ガラス繊維(C)との合計量100質量%中における、ポリフェニレンエーテル(A)の含有量は、10〜30質量%の範囲内である。当該含有量を10質量%以上とすることにより十分な耐熱性とウレタン接着性を付与することができ、当該含有量を30質量%以下とすることにより成形流動性を向上させることができる。当該含有量は、同様の観点から、好ましくは10〜21質量%の範囲内、より好ましくは15〜20質量%の範囲内である。
【0027】
(スチレン系樹脂(B))
本実施形態の樹脂組成物において、スチレン系樹脂(B)は、スチレン系化合物を、またはスチレン系化合物及びそれと共重合可能な化合物を、ゴム質重合体存在下または非存在下に重合して得られる重合体である。
【0028】
前記スチレン系化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロロスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、エチルスチレン等が挙げられる。スチレン系化合物としては、特に原材料の実用性の観点から、スチレンが好ましい。
【0029】
スチレン系化合物と共重合可能な化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル化合物類等が挙げられる。
【0030】
ゴム質重合体としては、以下に限定されるものではないが、例えばポリブタジエンが挙げられる。
【0031】
スチレン系樹脂(B)としては、ポリスチレン、ゴム強化ポリスチレン(HIPS)又は、これらの混合物が、成形品の機械的物性の観点から好ましい。
【0032】
本実施形態の樹脂組成物において、成形品中の還元粘度(クロロホルム溶媒、30℃で測定)が0.30〜0.45dl/gのポリフェニレンエーテル(A)と、スチレン系樹脂(B)と、ガラス繊維(C)との合計量100質量%中における、スチレン系樹脂(B)の含有量は、40〜85質量%の範囲内である。当該含有量を40質量%以上とすることにより、本実施形態の樹脂組成物の成形流動性を改良することができ、当該含有量を85質量%以下とすることにより、十分な耐熱性を保持することができる。当該含有量は、同様の観点から、好しくは50〜80質量%、より好ましくは55〜75質量%の範囲内である。
【0033】
(ガラス繊維(C))
ガラス繊維(C)は、本実施形態の樹脂組成物において、更に機械的強度及びウレタン接着性を改良させる目的で配合される。
【0034】
ガラス繊維(C)のガラスの種類としては、公知のものが使用でき、例えばEガラス、Cガラス、Sガラス、Aガラスが挙げられる。ガラス繊維(C)の平均繊維径は5〜15μmの範囲内であることが好ましい。ガラス繊維(C)の平均繊維径を5μm以上にすることにより、押出、成形時の繊維破損による成形品の剛性、耐熱性、耐衝撃性、耐久性等の低下を防止し、生産安定性を向上させることができ、ガラス繊維(C)の平均繊維径を15μm以下にすることにより、十分な機械的物性を付与し、成形品表面の外観を保持することができる。ガラス繊維(C)の平均繊維径は、同様の観点から、より好ましくは7〜13μmの範囲内である。
【0035】
本実施形態の樹脂組成物に用いられるガラス繊維(C)は、取扱性、および樹脂との親和性改良の観点から、収束剤で収束されたガラス繊維とすることが好ましいところ、当該収束剤としては、ウレタン接着性改良の観点から、ウレタン系収束剤とエポキシ系収束剤が好ましく、より好ましくはウレタン系収束剤である。
【0036】
本実施形態に用いられるガラス繊維(C)は、表面処理したガラス繊維とすることができるところ、表面処理するのに用いられるシラン化合物の具体例としては、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のビニルシラン化合物、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のエポキシシラン化合物、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラサルファイド等の硫黄系シラン化合物、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシラン化合物、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−ユレイドプロピルトリエトキシシラン等のアミノシラン化合物等が挙げられる。本発明の目的である十分な機械的強度及びウレタン接着性改良のために、特に好ましいシラン化合物はアミノシラン化合物である。これらのシラン化合物は2種類以上を併用して用いてもよい。
また、本実施形態では、これらシラン化合物と、エポキシ系、或いはウレタン系等の収束剤とを予め混合したもので表面処理してもよい。
【0037】
本実施形態の樹脂組成物において、成形品中の還元粘度(クロロホルム溶媒、30℃で測定)が0.30〜0.45dl/gのポリフェニレンエーテル(A)と、スチレン系樹脂(B)と、ガラス繊維(C)との合計量100質量%中における、ガラス繊維(C)の含有量は、5〜30質量%の範囲内である。当該含有量を5質量%以上とすることにより、本実施形態の樹脂組成物の機械的物性およびウレタン接着性を改良することができ、当該含有量を30質量%以下とすることにより、成形品の外観を十分保持することができる。当該含有量は、同様の観点から、好ましくは10〜25質量%の範囲内であり、より好ましくは10〜20質量%の範囲内である。
【0038】
(その他の材料)
本実施形態の樹脂組成物においては、機械的物性、ウレタン接着性、滞留成形安定性、成形品表面の外観を著しく低下させない範囲において、耐衝撃性改良を目的としてエラストマー成分を含有させることが可能である。エラストマー成分の含有量は、耐衝撃性以外の機械的物性を十分保持する観点から、前記(A)、(B)、(C)成分の合計量100質量部に対して、10質量部以下が好ましい。当該含有量は、耐衝撃性をより改良しつつ耐衝撃性以外の機械的物性をより十分保持する観点から、好ましくは0.1〜8質量部の範囲内であり、より好ましくは0.5〜4質量部の範囲内である。
【0039】
本実施形態の樹脂組成物においては、耐熱性、機械的物性、ウレタン接着性、滞留成形安定性、成形品表面の外観を著しく低下させない範囲において、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤等の安定剤類や着色剤、離型剤等を、前記(A)、(B)、(C)成分の合計量100質量部に対して、更に0.001〜3質量部の割合で含有することが可能である。上記酸化防止剤等の含有量を、0.001質量部以上とすることにより、添加効果を十分発現させることができ、上記酸化防止剤等の含有量を、3質量部以下とすることにより、樹脂組成物の物性を保持することができる。上記酸化防止剤等の含有量は、同様の観点から、好ましくは0.01〜2質量部の範囲内であり、より好ましくは0.2〜1質量部の範囲内である。
【0040】
本実施形態の樹脂組成物においては、ウレタン接着性、滞留成形安定性、成形品表面の外観、及び耐衝撃性を著しく低下させない範囲において、更なる機械的物性向上の目的のため、ガラス繊維以外の無機質充填剤を、前記(A)、(B)、(C)成分の合計量100質量部に対して、0.5〜10質量部の割合で含有することが可能である。当該含有量を0.5質量部とすることにより、添加効果を十分発現させることができ、当該含有量を10質量部以下とすることにより、成形品の外観を十分保持することができる。当該含有量は、同様の観点から、好ましくは1〜10質量部、より好ましくは2〜8質量部である。
【0041】
尚、ガラス繊維以外の無機質充填剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、炭素繊維、マイカ、ガラスフレーク、タルク、ガラスミルドファイバー、クロライト、ワラストナイト等が挙げられる。
【0042】
〔樹脂組成物の製造方法〕
本実施形態の樹脂組成物は、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び必要に応じて、その他の材料を溶融混練することによって、製造することができる。
【0043】
本実施形態の樹脂組成物の製造方法は以下に限定されるものではないが、樹脂組成物を大量に安定して製造するには、製造効率の観点から二軸押出機が好適に用いられる。
【0044】
二軸押出機のスクリュー径は25〜90mmの範囲内が好ましく、量産性の観点から、より好ましくは40〜70mmの範囲内である。例えば、ZSK40MC二軸押出機(独国Werner&Pfleiderer社製、バレル数13、スクリュー径40mm、L/D=50;ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:6個、及びニーディングディスクN:4個を有するスクリューパターン)を用いた場合に、シリンダー温度270〜330℃、スクリュー回転数150〜450rpm、押出レート40〜220kg/hの条件で溶融混練する方法や、TEM58SS二軸押出機(東芝機械社製、バレル数13、スクリュー径58mm、L/D=53;ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:14個、及びニーディングディスクN:2個を有するスクリューパターン)を用いた場合に、シリンダー温度270〜330℃、スクリュー回転数150〜500rpm、押出レート200〜600kg/hの条件で溶融混練する方法が好適な方法として挙げられる。
ここで、前記「L」は、押出機の「スクリューバレル長さ」であり、前記「D」は「スクリューバレルの直径」である。
【0045】
本実施形態の樹脂組成物を、二軸押出機を用いて製造するに際して、材料の耐熱性及び機械的物性付与の観点から、(A)成分、(B)成分は押出機の最上流部の供給口(トップフィード)から供給して、(C)成分は押出機途中の供給口(サイドフィード)から供給することが好ましい。
【0046】
〔成形品〕
本実施形態の樹脂組成物からなる成形品は、自動車内装部品であり、上述の樹脂組成物を成形することにより得ることができる。
【0047】
樹脂組成物の成形方法としては、特に限定されるものでは無いが、例えば、射出成形、押出成形、真空成形及び、圧空成形等の方法が好適に挙げられ、特に成形品の外観および量産性の観点から、射出成形が好ましい。
尚、本実施形態の成形品である自動車内装部品の多くは、通常、上記樹脂組成物の成形体とポリウレタン(発泡ウレタン)とを接着して成る。
【0048】
ここで、ポリウレタンとは、ウレタン結合(−NHCOO−)を有する高分子すべてを包含し、ウレタン結合を有する重合体の一種単独でも、二種以上が組み合わされた共重合体でもよい。その分子構造、分子量等の特性に特に制限はない。すなわち、本実施形態の成形品に使用し得るポリウレタンは特定のものに限定されず、用途に応じた特性を有するポリウレタンを選択することが可能である。ポリウレタンは通常、発泡ウレタンである。ポリウレタンは慣用の添加剤を含むことができる。ポリウレタンの製造方法は当業者に周知である。
【0049】
本実施形態の成形品である自動車内装部品は、例えば、本発明の樹脂組成物の成形品を入れた成形型枠中にウレタン原料を入れて成形・硬化させる方法によって製造することができる。この方法において、本発明の樹脂組成物の成形品とポリウレタンとは、硬化の段階において接触していればよく、成形時から接触している必要はない。また、これとは別に、本発明の樹脂組成物の成形品にウレタン原料の液状物をスプレーフロスする方法もある。この方法において、ウレタン原料は成形直後の熱い成形品にスプレーされてもよく、ウレタン原料を温めながら、成形品にスプレーしてもよい。また、成形品にウレタン原料をスプレーした後に加温することによっても、両者の接着した成形品を得ることができる。その他、これらに限定されず、上記以外の方法を採用することも可能である。
本実施形態の成形品である自動車内装部品は、更にポリウレタンとの接着性を向上させることを目的に、成形品にフレーム処理を施してもよい。
フレーム処理は成形品表面を回転又は移動させながら、プロパンガス等の可燃性ガスの炎で適度にあぶることで、成形品表面に酸素結合や二重結合を導入する処理のことである。該フレーム処理方法としては、例えば特許文献(特開平9−31221号)に、米国フリンバーナー社製のフレーム(火炎)処理装置、イタリアのesseCI社製のフレーム処理装置等を用いてフレーム処理する方法が例示され、当該装置や方法を用いることができる。
【0050】
本実施形態の成形品は自動車内装部品であるところ、自動車内装部品としては、例えばインストルメントパネル部品、センターパネル部品、ダッシュボード部品等が挙げられる。中でも、特に好適な成形品としては、ウレタン接着性に優れて、高温滞留成形安定性、成形品の表面外観、耐衝撃性にも著しく優れることから、インストルメントパネル部品が挙げられる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明について、具体的な実施例及び比較例を挙げて説明する。本発明はこれらに限定されるものではない。
【0052】
実施例および比較例に用いた物性の測定方法及び原材料を以下に示す。
(1.原料ポリフェニレンエーテル粉体の還元粘度(ηsp/c)の測定方法)
ポリフェニレンエーテルを0.5g/dlのクロロホルム溶液として、30℃において、ウベローデ粘度計を用いて測定した。単位はdl/gで表す。
【0053】
(2.成形品中のポリフェニレンエーテルの還元粘度(ηsp/c)の測定方法)
実施例及び比較例により製造した樹脂組成物からなる成形品の破断片2gを、クロロホルム100gに溶解し、不溶物(ガラス繊維)を濾過して取り除いた後、濾液をスターラーで撹拌しながら、400gのメタノールを加えてポリマー成分を析出させた。析出させたポリマー成分を濾過、メタノール洗浄して、130℃真空揮発炉中で3時間乾燥させた後、乾燥ポリマーをトルエン100gに溶解して、20000rpmの遠心分離器に2時間かけて、HIPS中のゴム成分を沈降分離させてトルエン溶液成分を分離した。トルエン溶液をスターラーで撹拌しながら、400gのメタノールを加えてポリマー成分を析出させた後、濾過、メタノール洗浄してポリマー成分を分離した。130℃揮発炉中で3時間乾燥させたポリマー成分を50℃の塩化メチレン50g中に溶解した。−30℃の冷凍庫内で24時間放置した後、析出したポリフェニレンエーテルを濾過して−30℃の塩化メチレンで洗浄後、130℃真空揮発炉中で3時間乾燥させた。
乾燥して、得られた析出ポリフェニレンエーテルを用いて、上記の方法で還元粘度を測定した。単位はdl/gで表す。
【0054】
(3.成形品中のポリフェニレンエーテルの末端OH基数の測定方法)
上記で得られた析出ポリフェニレンエーテルを、紫外可視吸光光度計(機種:U―3210。日立社製)を用いて、測定波長318nmの吸光度を測定して、フェノール性OH基数を算出した。
【0055】
(4.ウレタン接着性)
実施例及び比較例により製造した樹脂組成物のペレットを、90℃の熱風乾燥機中で1時間乾燥した。
乾燥後の樹脂組成物を用いて、平板成形片金型を備え付けた射出成形機(IS−80EPN、東芝機械社製)により、シリンダー温度320℃、金型温度90℃、射出圧力70MPa(ゲージ圧)、射出速度200mm/sec、計量完了位置100mm、射出時間/冷却時間=10sec/30secに設定し、120×120×2.5mm平板成形片を成形した。
その後、上記平板成形片の上に、発泡ウレタン原料混合物(ポリエーテル/トリエタノールアミン/水/トリエチルアミン/粗メチレンジイソシアネート=58.1/3.0/1.5/0.6/36.8質量部。合計.100質量部)を塗布し、50℃/30分の条件で発泡硬化させた。発泡ウレタン層の厚さは約10mmであり、発泡密度は0.17であった。このように作製した上記平板成形片に発泡ウレタンが付着した成形品から、20mm幅×120mm長さの成形品を切り出し、その成形品の長さ方向の端部の一方を少し剥がした。成形品の発泡ウレタン層を下に向けて発泡ウレタン層の剥がした部分を手で摘み、もう一方の手で成形品を上方に反らせた。このとき、発泡ウレタンが平板成形片との界面で剥離せずにちぎれたものを○、一部剥離したものを△、剥離したものを×と判定した。評価基準は○のものが、本実施形態の成形品である自動車内装部品用途として望ましいと判定した。
【0056】
(5.滞留成形安定性)
実施例及び比較例により製造した樹脂組成物のペレットを、100℃の熱風乾燥機中で2時間乾燥した。
乾燥後の樹脂組成物を用いて、平板成形片金型を備え付けた射出成形機(IS−80EPN、東芝機械社製)により、シリンダー温度300℃、金型温度90℃、射出圧力70MPa(ゲージ圧)、射出速度200mm/sec、計量完了位置100mm、射出時間/冷却時間=10sec/30secに設定した。樹脂組成物を成形機シリンダー内に充填して30min滞留させた後、連続20ショット成形を実施して、平板成形片に目視でシルバー発生が無くなるまでの成形ショット数を測定した。評価基準は3ショット目までに、成形片にシルバーが無くなるものを○、6ショット目までにシルバーが無くなるものを△、6ショット以降もシルバーが出続けるものを×と判定した。評価基準は○のものが、本実施形態の成形品である自動車内装部品用途として望ましいと判定した。
【0057】
(6.成形外観)
実施例及び比較例により製造した樹脂組成物のペレットを、90℃の熱風乾燥機中で1時間乾燥した。
乾燥後の樹脂組成物を用いて、平板成形片金型を備え付けた射出成形機(IS−80EPN、東芝機械社製)により、シリンダー温度300℃、金型温度90℃、射出圧力70MPa(ゲージ圧)、射出速度200mm/sec、計量完了位置100mm、射出時間/冷却時間=10sec/30secに設定し、120×120×2.5mm平板成形片を成形した。その後、平板成形片の表面外観を目視で判定した。成形片表面にシルバーやガラス繊維の浮きによるささくれ、フローマークが見られず、平滑であるものを○、成形片表面にシルバーやささくれ、フローマークなどのいずれかが見られて、外観不良であるものを×と判定して、判定が○であるものが、本実施形態の成形品である自動車内装部品用途として望ましいと判定した。
【0058】
(7.荷重たわみ温度(DTUL))
実施例及び比較例により製造した樹脂組成物のペレットを、90℃の熱風乾燥機中で1時間乾燥した。
乾燥後の樹脂組成物を用いて、ISO物性試験片金型を備え付けた射出成形機(IS−80EPN、東芝機械社製)により、シリンダー温度300℃、金型温度90℃、射出圧力50MPa(ゲージ圧)、射出速度200mm/sec、計量完了位置55mm、射出時間/冷却時間=20sec/20secに設定し、ISO3167、多目的試験片A型のダンベル成形片を成形した。得られた多目的試験片A型のダンベル成形片を切断して、80mm×10mm×4mmの成形片を作製した。当該試験片を用いて、ISO75に準拠し、フラットワイズ法、1.82MPaで荷重たわみ温度(DTUL)を測定した。
評価基準としては、DTULが高い値であるほど、耐熱性が優れていると判定した。
【0059】
(8.成形流動性(MFR))
実施例及び比較例により製造した樹脂組成物のペレットを、90℃の熱風乾燥機中で1時間乾燥した。
乾燥後、メルトインデクサー(P−111、東洋精機製作所社製)を用いてシリンダー設定温度250℃、10kg荷重にて、MFR(メルトフローレート)を測定した。
評価基準としては、測定値が高い値であるほど、成形流動性が良好であると判定した。
【0060】
(9.引張強度)
上記7.で製造したISO3167、多目的試験片A型ダンベル成形片を用いてISO527に準拠し、引張強度を23℃で測定した。
評価基準としては、測定値が高い値であるほど、機械的物性に優れていると判定した。
【0061】
(10.曲げ強度)
上記7.で製造したISO3167、多目的試験片A型ダンベル成形片を切断して、80mm×10mm×4mmの成形片を作製した。当該試験片を用いて、ISO178に準拠し、曲げ強度を23℃で測定した。
評価基準としては、測定値が高い値であるほど、機械的物性に優れていると判定した。
【0062】
(11.シャルピー衝撃強度)
上記7.で製造したISO3167、多目的試験片A型ダンベル成形片を切断して、80mm×10mm×4mmの成形片を作製した。当該試験片を用いて、ISO179に準拠し、シャルピー衝撃強度を23℃で測定した。
評価基準としては、測定値が高い値であるほど、耐衝撃性に優れていると判定した。
【0063】
〔原材料〕
<ポリフェニレンエーテル(A)>
(PPE1)重合漕底部に酸素ガス導入のためのスパージャー、撹拌タービン翼およびバッフル、重合漕上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた20リットルのジャケット付き重合漕に1000ml/minの流量で窒素ガスを吹き込みながら、2.209gの塩化第二銅2水和物、9.460gの36%塩酸、84.379gのN,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミン、63.646gのジ−n−ブチルアミン、2528gのn−ブタノール、1088gのメタノール、7584gのキシレン、320gの2,6−ジメチルフェノールを入れて、均一溶液となり、かつ反応器の内温が40℃になるまで撹拌した。また貯蔵漕に窒素ガス導入のためのスパージャー、撹拌タービン翼およびバッフル、貯蔵漕上部のベントガスラインに還流冷却機を備えた8リットルの貯蔵漕に、400ml/minの流量で窒素ガスを吹き込みながら1440gのメタノール、2800gの2,6−ジメチルフェノールを入れ、均一溶液となるまで撹拌し、混合溶液とした。次いで、激しく撹拌した重合漕へ2000Nml/minの流量で酸素ガスをスパージャーより導入を始めると同時に、貯蔵漕から送液ポンプを用い、上記の混合溶液を33.1g/minの速度で逐次添加した。290min通気して、反応器の内温が40℃になるようにコントロールしながら重合した。なお、酸素ガスを供給開始140min後に共重合体が析出し、スラリー状の形態を示した。重合終結時の重合液の形態は沈殿析出重合である。酸素ガスの通気をやめ、重合混合物にエチレンジアミン四酢酸3カリウム塩(同仁化学研究所製試薬)の50%水溶液を23.0g添加して60min、重合混合物を撹拌し、次いでハイドロキノン(和光純薬社製試薬)を少量ずつ添加して、スラリー状のポリフェニレンエーテルが白色となるまで撹拌を続けた。反応器の内温は40℃になるようにコントロールした。その後、濾過して濾残の湿潤ポリフェニレンエーテルをメタノール12800gと共に20リットル洗浄漕にいれて分散させ、30min撹拌した後再度濾過し、湿潤ポリフェニレンエーテルを得た。洗浄漕の内温は40℃にコントロールした。これを3回繰り返し、次いで140℃で240分乾燥して、還元粘度0.41dl/gのポリフェニレンエーテル粉体を得た。
【0064】
(PPE2)重合漕底部に酸素含有ガス導入の為のスパージャー、撹拌タービン翼及びバッフルを備え、重合漕上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた40リットルのジャケット付き重合漕に、500ml/minの流量で窒素ガスを吹き込みながら、4.57gの酸化第二銅、24.18gの47質量%臭化水素水溶液、11gのジ−t−ブチルエチレンジアミン、62.72gのジ−n−ブチルアミン、149.92gのブチルジメチルアミン、20650gのトルエン、及び3120gの2,6−ジメチルフェノールを入れて、均一溶液となり、かつ重合漕の内温が25℃になるまで撹拌した。
次に、激しく撹拌した重合漕に、6500Nml/minの流量で95min、酸素ガスをスパージャーより導入して、重合終結時の内温が40℃になるようにコントロールして、重合混合物を得た。重合終結時の重合混合物は溶液状態であった。酸素ガスの吹き込みを停止して、重合混合物にエチレンジアミン四酢酸4ナトリウム塩(同仁化学研究所製試薬)の2.5質量%水溶液を10kg添加した。70℃で150min、重合混合物を撹拌し、その後20min静置し、液−液分離により有機相と水相とを分離した。該有機相は、ポリフェニレンエーテルとトルエン(沸点110.6℃)とを含んでいた。
得られた有機相を120℃に加熱し、有機相中のポリフェニレンエーテル濃度が36質量部になるまでトルエン蒸気を系外へ抜き出した。得られた有機相を室温まで冷却した後、メタノールを加えてポリフェニレンエーテルが析出したスラリーを作製した。その際スラリー温度は55℃であり、スラリー中のポリフェニレンエーテル濃度は21質量%であった。その後、前記スラリーを濾過し、濾残を更に20000gのメタノール中に分散させた後、再度濾過して、湿潤ポリフェニレンエーテルを得た。次いで、150℃、1mmHgで90min乾燥させて、還元粘度0.38dl/gのポリフェニレンエーテル粉体を得た。
【0065】
(PPE3)重合漕底部に酸素含有ガス導入の為のスパージャー、撹拌タービン翼及びバッフルを備え、重合漕上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた40リットルのジャケット付き重合漕に、500ml/minの流量で窒素ガスを吹き込みながら、4.02gの酸化第二銅、29.90gの47質量%臭化水素水溶液、9.72gのジ−t−ブチルエチレンジアミン、46.88gのジ−n−ブチルアミン、122.30gのブチルジメチルアミン、17530gのトルエン、及び1500gの2,6−ジメチルフェノールを入れて、均一溶液となり、かつ重合漕の内温が25℃になるまで撹拌した。
また貯蔵漕に窒素ガス導入のためのスパージャー、撹拌タービン翼およびバッフル、貯蔵漕上部のベントガスラインに還流冷却機を備えた8リットルの貯蔵漕に、400ml/minの流量で窒素ガスを吹き込みながら3120gのトルエン、1620gの2,6−ジメチルフェノールを入れ、均一溶液となるまで撹拌し、混合溶液とした。
次に、激しく撹拌した重合漕に、6500Nml/minの流量で90min、酸素ガスをスパージャーより導入し、同時にプランジャーポンプにより、上記の混合溶液を30min掛けて重合漕に追添し、重合終結時の内温が40℃になるようにコントロールして、重合混合物を得た。重合終結時の重合混合物は溶液状態であった。酸素ガスの吹き込みを停止して、以下、PPE2の作製と同様な操作を行い、還元粘度0.34dl/gのポリフェニレンエーテル粉体を得た。
【0066】
(PPE4)重合漕底部に酸素ガス導入のためのスパージャー、撹拌タービン翼およびバッフル、重合漕上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた20リットルのジャケット付き重合漕に1000ml/minの流量で窒素ガスを吹き込みながら、2.209gの塩化第二銅2水和物、9.460gの36%塩酸、84.379gのN,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミン、63.646gのジ−n−ブチルアミン、2528gのn−ブタノール、2528gのメタノール、7584gのキシレン、3120gの2,6−ジメチルフェノールを入れて、均一溶液となり、かつ反応器の内温が40℃になるまで撹拌した。次いで、激しく撹拌した重合漕へ2000Nml/minの流量で酸素ガスをスパージャーより導入し、290min通気して、反応器の内温が40℃になるようにコントロールしながら重合した。なお、酸素ガスを供給開始125min後に共重合体が析出し、スラリー状の形態を示した。重合終結時の重合液の形態は沈殿析出重合である。酸素ガスの吹き込みをやめ、以下、PPE1の作製と同様な操作を行い、還元粘度0.47dl/gのポリフェニレンエーテル粉体を得た。
【0067】
(PPE5)重合漕底部に酸素含有ガス導入の為のスパージャー、撹拌タービン翼及びバッフルを備え、重合漕上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた40リットルのジャケット付き重合漕に、500ml/minの流量で窒素ガスを吹き込みながら、4.57gの酸化第二銅、24.18gの47質量%臭化水素水溶液、11gのジ−t−ブチルエチレンジアミン、62.72gのジ−n−ブチルアミン、149.92gのブチルジメチルアミン、20650gのトルエン、及び3120gの2,6−ジメチルフェノールを入れ、均一溶液となり、かつ重合漕の内温が25℃になるまで撹拌した。
また貯蔵漕に窒素ガス導入のためのスパージャー、撹拌タービン翼およびバッフル、貯蔵漕上部のベントガスラインに還流冷却機を備えた8リットルの貯蔵漕に、400ml/minの流量で窒素ガスを吹き込みながら3120gのトルエン、1620gの2,6−ジメチルフェノール、21.56gのブチルジメチルアミンを入れ、均一溶液となるまで撹拌し、混合溶液とした。
次に、激しく撹拌した重合漕に、6500Nml/minの流量で90min、酸素ガスをスパージャーより導入し、同時にプランジャーポンプにより、上記の混合溶液を30min掛けて重合漕に追添し、重合終結時の内温が40℃になるようにコントロールして、重合混合物を得た。重合終結時の重合混合物は溶液状態であった。酸素ガスの吹き込みを停止して、重合混合物にエチレンジアミン四酢酸4ナトリウム塩(同仁化学研究所製試薬)の2.5質量%水溶液を10kg添加した。70℃で150min、重合混合物を撹拌し、その後20min静置し、液−液分離により有機相と水相とを分離した。該有機相は、ポリフェニレンエーテルとトルエン(沸点110.6℃)とを含んでいた。
得られた有機相を120℃に加熱し、有機相中のポリフェニレンエーテル濃度が39質量%になるまでトルエン蒸気を系外へ抜き出した。得られた有機相を室温まで冷却した後、メタノールを加えてポリフェニレンエーテルが析出したスラリーを作製した。その際スラリー温度は5℃であり、スラリー中のポリフェニレンエーテル濃度は22質量%であった。その後、前記スラリーを濾過し、濾残を更に20000gのメタノール中に分散させた後、再度濾過して、湿潤ポリフェニレンエーテルを得た。次いで、150℃、1mmHgで90min乾燥させて、還元粘度0.24dl/gのポリフェニレンエーテル粉体を得た。
【0068】
(PPE6)官能化ポリフェニレンエーテルの調整
上記(PPE4)を100質量部と、無水マレイン酸3質量部と、ジクミルパーオキシド0.5質量部とを、ZSK25二軸押出機(独国Werner&Pfleiderer社製、バレル10、スクリュー径25mm、ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:6個、ニーディングディスクN:2個を有するスクリューパターン)を用いて、バレル設定温度320℃、スクリュー回転数250rpmで溶融混練して、無水マレイン酸変性ポリフェニレンエーテルのペレットを得た。ナトリウムメチラートの滴定によって求めた、該変性ポリフェニレンエーテル100質量部当たりの無水マレイン酸付加量は1.5質量部であった。還元粘度は0.47dl/gであった。
【0069】
<ポリスチレン(B)>
(HIPS)ハイインパクトポリスチレン(商品名:PS6200〔登録商標〕、米国ノバケミカル社製)を用いた。
(GPPS)ゼネラルパーパスポリスチレン(商品名:スタイロン660〔登録商標〕、米国ダウケミカル社製)を用いた。
【0070】
<ガラス繊維(C)>
(GF1)アミノシラン化合物で表面処理され、ウレタン系収束剤で収束された平均繊維径10μm、カット長3mmのチョップドストランドを用いた。
(GF2)アミノシラン化合物で表面処理され、エポキシ系収束剤で収束された平均繊維径10μm、カット長3mmのチョップドストランドを用いた。
【0071】
[実施例1]
(PPE1)15質量部と、(HIPS)35質量部と、(GPPS)30質量部とを、独国Werner&Pfleiderer社製、バレル数10、スクリュー径25mmのZSK25二軸押出機(ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:6個、ニーディングディスクN:4個を有するスクリューパターン)の最上流部(トップフィード)から供給し、途中のバレル6から(GF1)20質量部をサイドフィードして、シリンダー温度320℃、スクリュー回転数250rpm、押出レート10kg/hで溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の成形品中のポリフェニレンエーテルの還元粘度は0.44dl/gで、末端OH基数は106μmol/gであった。該樹脂組成物の物性試験結果を表1に示す。
【0072】
[実施例2]
(PPE1)を(PPE2)に置き換えた以外は、実施例1と同様な混練条件で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の成形品中のポリフェニレンエーテルの還元粘度は0.42dl/g、末端OH基数は145μmol/gであった。該樹脂組成物の物性試験結果を表1に示す。
【0073】
[実施例3]
(PPE1)を(PPE3)に置き換えた以外は、実施例1と同様な混練条件で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の成形品中のポリフェニレンエーテルの還元粘度は0.37dl/g、末端OH基数は192μmol/gであった。該樹脂組成物の物性試験結果を表1に示す。
【0074】
[実施例4]
(GF1)を(GF2)に置き換えた以外は、実施例2と同様な混練条件で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の成形品中の還元粘度は0.42dl/g、ポリフェニレンエーテルの末端OH基数は147μmol/gであった。該樹脂組成物の物性試験結果を表1に示す。
【0075】
[実施例5]
(PPE2)15質量部の内の3質量部を、(PPE6)に置き換えた以外は、実施例4と同様な混練条件で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の成形品中のポリフェニレンエーテルの還元粘度は0.40dl/g、末端OH基数は144μmol/gであった。該樹脂組成物の物性試験結果を表1に示す。
【0076】
[実施例6]
(PPE2)15質量部の内の8質量部を、(PPE6)に置き換えた以外は、実施例4と同様な混練条件で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の成形品中のポリフェニレンエーテルの還元粘度は0.43dl/g、末端OH基数は134μmol/gであった。該樹脂組成物の物性試験結果を表1に示す。
【0077】
[実施例7]
(PPE2)21質量部と、(HIPS)34質量部と、(GPPS)30質量部とを、独国Werner&Pfleiderer社製、バレル数10、スクリュー径25mmのZSK25二軸押出機(ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:6個、ニーディングディスクN:4個を有するスクリューパターン)の最上流部(トップフィード)から供給し、途中のバレル6から(GF1)15質量部をサイドフィードして、シリンダー温度320℃、スクリュー回転数250rpm、押出レート10kg/hで溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の成形品中のポリフェニレンエーテルの還元粘度は0.43dl/g、末端OH基数は146μmol/gであった。該樹脂組成物の物性試験結果を表1に示す。
【0078】
[実施例8]
(PPE2)10質量部と、(HIPS)35質量部と、(GPPS)30質量部とを、独国Werner&Pfleiderer社製、バレル数10、スクリュー径25mmのZSK25二軸押出機(ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:6個、ニーディングディスクN:4個を有するスクリューパターン)の最上流部(トップフィード)から供給し、途中のバレル6から(GF1)25質量部をサイドフィードして、シリンダー温度320℃、スクリュー回転数250rpm、押出レート10kg/hで溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の成形品中のポリフェニレンエーテルの還元粘度は0.40dl/g、末端OH基数は143μmol/gであった。該樹脂組成物の物性試験結果を表1に示す。
【0079】
[実施例9]
(PPE2)28質量部と、(HIPS)30質量部と、(GPPS)32質量部とを、独国Werner&Pfleiderer社製、バレル数10、スクリュー径25mmのZSK25二軸押出機(ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:6個、ニーディングディスクN:4個を有するスクリューパターン)の最上流部(トップフィード)から供給し、途中のバレル6から(GF1)10質量部をサイドフィードして、シリンダー温度320℃、スクリュー回転数250rpm、押出レート10kg/hで溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の成形品中のポリフェニレンエーテルの還元粘度は0.44dl/g、末端OH基数は145μmol/gであった。該樹脂組成物の物性試験結果を表1に示す。
【0080】
[比較例1]
(PPE2)を(PPE4)に置き換えた以外は、実施例4と同様な混練条件で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の成形品中のポリフェニレンエーテルの還元粘度0.51、末端OH基数は89μmol/gであった。該樹脂組成物の物性試験結果を表2に示す。
【0081】
[比較例2]
(PPE4)15質量部の内、10質量部を(PPE6)に置き換えた以外は、比較例1と同様な混練条件で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の成形品中のポリフェニレンエーテルの還元粘度0.49dl/g、末端OH基数は93μmol/gであった。該樹脂組成物の物性試験結果を表2に示す。
【0082】
[比較例3]
(PPE4)を(PPE6)に置き換えた以外は、比較例1と同様な混練条件で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の成形品中の還元粘度0.48dl/g、ポリフェニレンエーテルの末端OH基数は94μmol/gであった。該樹脂組成物の物性試験結果を表2に示す。
【0083】
[比較例4]
(PPE2)を(PPE5)に置き換えた以外は、実施例4と同様な混練条件で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の成形品中のポリフェニレンエーテルの還元粘度0.27dl/g、末端OH基数は223μmol/gであった。該樹脂組成物の物性試験結果を表2に示す。
【0084】
[比較例5]
(PPE4)21質量部と、(HIPS)34質量部と、(GPPS)25質量部、スチレン−無水マレイン酸共重合体(SMA(商品名:ダイラークD332〔登録商標〕。無水マレイン酸共重合量15質量部。ノバケミカル・ジャパン社製))5質量部とを、独国Werner&Pfleiderer社製、バレル数10、スクリュー径25mmのZSK25二軸押出機(ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:6個、ニーディングディスクN:4個を有するスクリューパターン)の最上流部(トップフィード)から供給し、途中のバレル6から(GF2)15質量部をサイドフィードして、シリンダー温度320℃、スクリュー回転数250rpm、押出レート10kg/hで溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の成形品中のポリフェニレンエーテルの還元粘度0.52dl/g、末端OH基数は87μmol/gであった。該樹脂組成物の物性試験結果を表2に示す。
【0085】
[比較例6]
(PPE4)21質量部と、(HIPS)34質量部と、(GPPS)20質量部、テルペンフェノール樹脂(商品名:マイティーエースK125〔登録商標〕。ヤスハラケミカル社製)10質量部とを、独国Werner&Pfleiderer社製、バレル数10、スクリュー径25mmのZSK25二軸押出機(ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:6個、ニーディングディスクN:4個を有するスクリューパターン)の最上流部(トップフィード)から供給し、途中のバレル6から(GF2)15質量部をサイドフィードして、シリンダー温度320℃、スクリュー回転数250rpm、押出レート10kg/hで溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の成形品中のポリフェニレンエーテルの還元粘度0.50dl/g、末端OH基数は92μmol/gであった。該樹脂組成物の物性試験結果を表2に示す。
【0086】
[比較例7]
(PPE2)5質量部と、(HIPS)40質量部と、(GPPS)35質量部とを、独国Werner&Pfleiderer社製、バレル数10、スクリュー径25mmのZSK25二軸押出機(ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:6個、ニーディングディスクN:4個を有するスクリューパターン)の最上流部(トップフィード)から供給し、途中のバレル6から(GF1)20質量部をサイドフィードして、シリンダー温度320℃、スクリュー回転数250rpm、押出レート10kg/hで溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の成形品中のポリフェニレンエーテルの還元粘度0.42dl/g、末端OH基数は144μmol/gであった。該樹脂組成物の物性試験結果を表2に示す。
【0087】
[比較例8]
(PPE2)35質量部と、(HIPS)25質量部と、(GPPS)20質量部とを、独国Werner&Pfleiderer社製、バレル数10、スクリュー径25mmのZSK25二軸押出機(ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:6個、ニーディングディスクN:4個を有するスクリューパターン)の最上流部(トップフィード)から供給し、途中のバレル6から(GF1)20質量部をサイドフィードして、シリンダー温度320℃、スクリュー回転数250rpm、押出レート10kg/hで溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の成形品中のポリフェニレンエーテルの還元粘度0.46dl/g、末端OH基数は166μmol/gであった。該樹脂組成物の物性試験結果を表2に示す。
【0088】
[比較例9]
(PPE2)28質量部と、(HIPS)42質量部と、(GPPS)30質量部とを、独国Werner&Pfleiderer社製、バレル数10、スクリュー径25mmのZSK25二軸押出機(ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:6個、ニーディングディスクN:4個を有するスクリューパターン)の最上流部(トップフィード)から供給し、シリンダー温度320℃、スクリュー回転数250rpm、押出レート10kg/hで溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の成形品中のポリフェニレンエーテルの還元粘度0.45dl/g、末端OH基数は146μmol/gであった。該樹脂組成物の物性試験結果を表2に示す。
【0089】
[比較例10]
(PPE2)21質量部と、(HIPS)24質量部と、(GPPS)20質量部とを、独国Werner&Pfleiderer社製、バレル数10、スクリュー径25mmのZSK25二軸押出機(ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:6個、ニーディングディスクN:4個を有するスクリューパターン)の最上流部(トップフィード)から供給し、途中のバレル6から(GF1)35質量部をサイドフィードして、シリンダー温度320℃、スクリュー回転数250rpm、押出レート10kg/hで溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の成形品中のポリフェニレンエーテルの還元粘度0.45dl/g、末端OH基数は171μmol/gであった。該樹脂組成物の物性試験結果を表2に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
表1より、実施例1〜9の樹脂組成物は、樹脂組成物中のポリフェニレンエーテルの末端OH基数と、各原材料の配合量比がいずれも本発明の規定を満たしており、機械的物性(引張強度・曲げ強度)、耐衝撃性(シャルピー)、成形外観、ウレタン接着性、及び滞留成形安定性、その他の物性も良好であり、自動車内装部品用途に好適に使用可能である。特にウレタン系収束剤で収束したガラス繊維(GF1)を用いた実施例1〜3及び、実施例7〜9、無水マレイン酸変性ポリフェニレンエーテルを特定量配合した実施例5及び6は、物性バランスが良好であるため、自動車内装部品用途、特にインストルメントパネルに好適に使用可能である。
【0093】
表2より、比較例1は、樹脂組成物中のポリフェニレンエーテルの末端OH基数が本発明の規定の下限を外れているため、成形品のウレタン接着性が十分ではない。
比較例2及び3は、樹脂組成物中のポリフェニレンエーテルの末端OH基数が本発明の規定の下限を外れているため、成形品のウレタン接着性が十分ではない。比較例2は無水マレイン酸変性ポリフェニレンエーテルを規定量配合することで、ウレタン接着性が改良される傾向が見られるが十分ではない。比較例3は無水マレイン酸変性ポリフェニレンエーテルを更に規定量以上増量配合したが、ウレタン接着性は十分ではなく、逆に滞留成形安定性が低下する結果であった。
比較例4は、樹脂組成物中のポリフェニレンエーテルの末端OH基数が本発明の規定の上限を外れているため、樹脂組成物の滞留成形安定性、成形品の機械的物性や成形品外観(シルバー発生)が十分ではない。
比較例5は、樹脂組成物中のポリフェニレンエーテルの末端OH基数が本発明の規定の下限を外れているが、スチレン−無水マレイン酸共重合体を配合しているため、ウレタン接着性は良好である。しかし、樹脂組成物の滞留成形安定性や、機械的物性、耐衝撃性が十分ではない。
比較例6も、樹脂組成物中のポリフェニレンエーテルの末端OH基数が本発明の規定の下限を外れているが、テルペンフェノール樹脂を配合しているため、ウレタン接着性は良好である。しかし、樹脂組成物の滞留成形安定性や、耐衝撃性が十分ではない。
比較例7は、樹脂組成物中のポリフェニレンエーテルの配合量が本発明の規定の下限を外れているため、ウレタン接着性が十分ではない。
比較例8は、樹脂組成物中のポリフェニレンエーテルの配合量が、本発明の規定の上限を外れているため、成形品表面にフローマークやガラス繊維の浮きが見られ、成形品外観が十分ではない。
比較例9は、樹脂組成物中に本発明の(C)成分であるガラス繊維が配合されていないため、機械的物性やウレタン接着性が十分ではない。
比較例10は、樹脂組成物中のガラス繊維の配合量が、本発明の規定の上限を外れているため、成形品表面にフローマークやガラス繊維の浮きが見られ、成形品外観が十分ではない。
従って、比較例1〜10は、自動車内装部品用途、特にインストルメントパネル部品への使用は困難である。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の樹脂組成物からなる成形品は、ウレタン接着性に優れて、滞留成形安定性、成形品の表面外観、機械的物性、耐衝撃性にも著しく優れることから、自動車内装用部品、特にインストルメントパネル部品として有効に使用可能である。