【実施例】
【0051】
以下、本発明について、具体的な実施例及び比較例を挙げて説明する。本発明はこれらに限定されるものではない。
【0052】
実施例および比較例に用いた物性の測定方法及び原材料を以下に示す。
(1.原料ポリフェニレンエーテル粉体の還元粘度(ηsp/c)の測定方法)
ポリフェニレンエーテルを0.5g/dlのクロロホルム溶液として、30℃において、ウベローデ粘度計を用いて測定した。単位はdl/gで表す。
【0053】
(2.成形品中のポリフェニレンエーテルの還元粘度(ηsp/c)の測定方法)
実施例及び比較例により製造した樹脂組成物からなる成形品の破断片2gを、クロロホルム100gに溶解し、不溶物(ガラス繊維)を濾過して取り除いた後、濾液をスターラーで撹拌しながら、400gのメタノールを加えてポリマー成分を析出させた。析出させたポリマー成分を濾過、メタノール洗浄して、130℃真空揮発炉中で3時間乾燥させた後、乾燥ポリマーをトルエン100gに溶解して、20000rpmの遠心分離器に2時間かけて、HIPS中のゴム成分を沈降分離させてトルエン溶液成分を分離した。トルエン溶液をスターラーで撹拌しながら、400gのメタノールを加えてポリマー成分を析出させた後、濾過、メタノール洗浄してポリマー成分を分離した。130℃揮発炉中で3時間乾燥させたポリマー成分を50℃の塩化メチレン50g中に溶解した。−30℃の冷凍庫内で24時間放置した後、析出したポリフェニレンエーテルを濾過して−30℃の塩化メチレンで洗浄後、130℃真空揮発炉中で3時間乾燥させた。
乾燥して、得られた析出ポリフェニレンエーテルを用いて、上記の方法で還元粘度を測定した。単位はdl/gで表す。
【0054】
(3.成形品中のポリフェニレンエーテルの末端OH基数の測定方法)
上記で得られた析出ポリフェニレンエーテルを、紫外可視吸光光度計(機種:U―3210。日立社製)を用いて、測定波長318nmの吸光度を測定して、フェノール性OH基数を算出した。
【0055】
(4.ウレタン接着性)
実施例及び比較例により製造した樹脂組成物のペレットを、90℃の熱風乾燥機中で1時間乾燥した。
乾燥後の樹脂組成物を用いて、平板成形片金型を備え付けた射出成形機(IS−80EPN、東芝機械社製)により、シリンダー温度320℃、金型温度90℃、射出圧力70MPa(ゲージ圧)、射出速度200mm/sec、計量完了位置100mm、射出時間/冷却時間=10sec/30secに設定し、120×120×2.5mm平板成形片を成形した。
その後、上記平板成形片の上に、発泡ウレタン原料混合物(ポリエーテル/トリエタノールアミン/水/トリエチルアミン/粗メチレンジイソシアネート=58.1/3.0/1.5/0.6/36.8質量部。合計.100質量部)を塗布し、50℃/30分の条件で発泡硬化させた。発泡ウレタン層の厚さは約10mmであり、発泡密度は0.17であった。このように作製した上記平板成形片に発泡ウレタンが付着した成形品から、20mm幅×120mm長さの成形品を切り出し、その成形品の長さ方向の端部の一方を少し剥がした。成形品の発泡ウレタン層を下に向けて発泡ウレタン層の剥がした部分を手で摘み、もう一方の手で成形品を上方に反らせた。このとき、発泡ウレタンが平板成形片との界面で剥離せずにちぎれたものを○、一部剥離したものを△、剥離したものを×と判定した。評価基準は○のものが、本実施形態の成形品である自動車内装部品用途として望ましいと判定した。
【0056】
(5.滞留成形安定性)
実施例及び比較例により製造した樹脂組成物のペレットを、100℃の熱風乾燥機中で2時間乾燥した。
乾燥後の樹脂組成物を用いて、平板成形片金型を備え付けた射出成形機(IS−80EPN、東芝機械社製)により、シリンダー温度300℃、金型温度90℃、射出圧力70MPa(ゲージ圧)、射出速度200mm/sec、計量完了位置100mm、射出時間/冷却時間=10sec/30secに設定した。樹脂組成物を成形機シリンダー内に充填して30min滞留させた後、連続20ショット成形を実施して、平板成形片に目視でシルバー発生が無くなるまでの成形ショット数を測定した。評価基準は3ショット目までに、成形片にシルバーが無くなるものを○、6ショット目までにシルバーが無くなるものを△、6ショット以降もシルバーが出続けるものを×と判定した。評価基準は○のものが、本実施形態の成形品である自動車内装部品用途として望ましいと判定した。
【0057】
(6.成形外観)
実施例及び比較例により製造した樹脂組成物のペレットを、90℃の熱風乾燥機中で1時間乾燥した。
乾燥後の樹脂組成物を用いて、平板成形片金型を備え付けた射出成形機(IS−80EPN、東芝機械社製)により、シリンダー温度300℃、金型温度90℃、射出圧力70MPa(ゲージ圧)、射出速度200mm/sec、計量完了位置100mm、射出時間/冷却時間=10sec/30secに設定し、120×120×2.5mm平板成形片を成形した。その後、平板成形片の表面外観を目視で判定した。成形片表面にシルバーやガラス繊維の浮きによるささくれ、フローマークが見られず、平滑であるものを○、成形片表面にシルバーやささくれ、フローマークなどのいずれかが見られて、外観不良であるものを×と判定して、判定が○であるものが、本実施形態の成形品である自動車内装部品用途として望ましいと判定した。
【0058】
(7.荷重たわみ温度(DTUL))
実施例及び比較例により製造した樹脂組成物のペレットを、90℃の熱風乾燥機中で1時間乾燥した。
乾燥後の樹脂組成物を用いて、ISO物性試験片金型を備え付けた射出成形機(IS−80EPN、東芝機械社製)により、シリンダー温度300℃、金型温度90℃、射出圧力50MPa(ゲージ圧)、射出速度200mm/sec、計量完了位置55mm、射出時間/冷却時間=20sec/20secに設定し、ISO3167、多目的試験片A型のダンベル成形片を成形した。得られた多目的試験片A型のダンベル成形片を切断して、80mm×10mm×4mmの成形片を作製した。当該試験片を用いて、ISO75に準拠し、フラットワイズ法、1.82MPaで荷重たわみ温度(DTUL)を測定した。
評価基準としては、DTULが高い値であるほど、耐熱性が優れていると判定した。
【0059】
(8.成形流動性(MFR))
実施例及び比較例により製造した樹脂組成物のペレットを、90℃の熱風乾燥機中で1時間乾燥した。
乾燥後、メルトインデクサー(P−111、東洋精機製作所社製)を用いてシリンダー設定温度250℃、10kg荷重にて、MFR(メルトフローレート)を測定した。
評価基準としては、測定値が高い値であるほど、成形流動性が良好であると判定した。
【0060】
(9.引張強度)
上記7.で製造したISO3167、多目的試験片A型ダンベル成形片を用いてISO527に準拠し、引張強度を23℃で測定した。
評価基準としては、測定値が高い値であるほど、機械的物性に優れていると判定した。
【0061】
(10.曲げ強度)
上記7.で製造したISO3167、多目的試験片A型ダンベル成形片を切断して、80mm×10mm×4mmの成形片を作製した。当該試験片を用いて、ISO178に準拠し、曲げ強度を23℃で測定した。
評価基準としては、測定値が高い値であるほど、機械的物性に優れていると判定した。
【0062】
(11.シャルピー衝撃強度)
上記7.で製造したISO3167、多目的試験片A型ダンベル成形片を切断して、80mm×10mm×4mmの成形片を作製した。当該試験片を用いて、ISO179に準拠し、シャルピー衝撃強度を23℃で測定した。
評価基準としては、測定値が高い値であるほど、耐衝撃性に優れていると判定した。
【0063】
〔原材料〕
<ポリフェニレンエーテル(A)>
(PPE1)重合漕底部に酸素ガス導入のためのスパージャー、撹拌タービン翼およびバッフル、重合漕上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた20リットルのジャケット付き重合漕に1000ml/minの流量で窒素ガスを吹き込みながら、2.209gの塩化第二銅2水和物、9.460gの36%塩酸、84.379gのN,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミン、63.646gのジ−n−ブチルアミン、2528gのn−ブタノール、1088gのメタノール、7584gのキシレン、320gの2,6−ジメチルフェノールを入れて、均一溶液となり、かつ反応器の内温が40℃になるまで撹拌した。また貯蔵漕に窒素ガス導入のためのスパージャー、撹拌タービン翼およびバッフル、貯蔵漕上部のベントガスラインに還流冷却機を備えた8リットルの貯蔵漕に、400ml/minの流量で窒素ガスを吹き込みながら1440gのメタノール、2800gの2,6−ジメチルフェノールを入れ、均一溶液となるまで撹拌し、混合溶液とした。次いで、激しく撹拌した重合漕へ2000Nml/minの流量で酸素ガスをスパージャーより導入を始めると同時に、貯蔵漕から送液ポンプを用い、上記の混合溶液を33.1g/minの速度で逐次添加した。290min通気して、反応器の内温が40℃になるようにコントロールしながら重合した。なお、酸素ガスを供給開始140min後に共重合体が析出し、スラリー状の形態を示した。重合終結時の重合液の形態は沈殿析出重合である。酸素ガスの通気をやめ、重合混合物にエチレンジアミン四酢酸3カリウム塩(同仁化学研究所製試薬)の50%水溶液を23.0g添加して60min、重合混合物を撹拌し、次いでハイドロキノン(和光純薬社製試薬)を少量ずつ添加して、スラリー状のポリフェニレンエーテルが白色となるまで撹拌を続けた。反応器の内温は40℃になるようにコントロールした。その後、濾過して濾残の湿潤ポリフェニレンエーテルをメタノール12800gと共に20リットル洗浄漕にいれて分散させ、30min撹拌した後再度濾過し、湿潤ポリフェニレンエーテルを得た。洗浄漕の内温は40℃にコントロールした。これを3回繰り返し、次いで140℃で240分乾燥して、還元粘度0.41dl/gのポリフェニレンエーテル粉体を得た。
【0064】
(PPE2)重合漕底部に酸素含有ガス導入の為のスパージャー、撹拌タービン翼及びバッフルを備え、重合漕上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた40リットルのジャケット付き重合漕に、500ml/minの流量で窒素ガスを吹き込みながら、4.57gの酸化第二銅、24.18gの47質量%臭化水素水溶液、11gのジ−t−ブチルエチレンジアミン、62.72gのジ−n−ブチルアミン、149.92gのブチルジメチルアミン、20650gのトルエン、及び3120gの2,6−ジメチルフェノールを入れて、均一溶液となり、かつ重合漕の内温が25℃になるまで撹拌した。
次に、激しく撹拌した重合漕に、6500Nml/minの流量で95min、酸素ガスをスパージャーより導入して、重合終結時の内温が40℃になるようにコントロールして、重合混合物を得た。重合終結時の重合混合物は溶液状態であった。酸素ガスの吹き込みを停止して、重合混合物にエチレンジアミン四酢酸4ナトリウム塩(同仁化学研究所製試薬)の2.5質量%水溶液を10kg添加した。70℃で150min、重合混合物を撹拌し、その後20min静置し、液−液分離により有機相と水相とを分離した。該有機相は、ポリフェニレンエーテルとトルエン(沸点110.6℃)とを含んでいた。
得られた有機相を120℃に加熱し、有機相中のポリフェニレンエーテル濃度が36質量部になるまでトルエン蒸気を系外へ抜き出した。得られた有機相を室温まで冷却した後、メタノールを加えてポリフェニレンエーテルが析出したスラリーを作製した。その際スラリー温度は55℃であり、スラリー中のポリフェニレンエーテル濃度は21質量%であった。その後、前記スラリーを濾過し、濾残を更に20000gのメタノール中に分散させた後、再度濾過して、湿潤ポリフェニレンエーテルを得た。次いで、150℃、1mmHgで90min乾燥させて、還元粘度0.38dl/gのポリフェニレンエーテル粉体を得た。
【0065】
(PPE3)重合漕底部に酸素含有ガス導入の為のスパージャー、撹拌タービン翼及びバッフルを備え、重合漕上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた40リットルのジャケット付き重合漕に、500ml/minの流量で窒素ガスを吹き込みながら、4.02gの酸化第二銅、29.90gの47質量%臭化水素水溶液、9.72gのジ−t−ブチルエチレンジアミン、46.88gのジ−n−ブチルアミン、122.30gのブチルジメチルアミン、17530gのトルエン、及び1500gの2,6−ジメチルフェノールを入れて、均一溶液となり、かつ重合漕の内温が25℃になるまで撹拌した。
また貯蔵漕に窒素ガス導入のためのスパージャー、撹拌タービン翼およびバッフル、貯蔵漕上部のベントガスラインに還流冷却機を備えた8リットルの貯蔵漕に、400ml/minの流量で窒素ガスを吹き込みながら3120gのトルエン、1620gの2,6−ジメチルフェノールを入れ、均一溶液となるまで撹拌し、混合溶液とした。
次に、激しく撹拌した重合漕に、6500Nml/minの流量で90min、酸素ガスをスパージャーより導入し、同時にプランジャーポンプにより、上記の混合溶液を30min掛けて重合漕に追添し、重合終結時の内温が40℃になるようにコントロールして、重合混合物を得た。重合終結時の重合混合物は溶液状態であった。酸素ガスの吹き込みを停止して、以下、PPE2の作製と同様な操作を行い、還元粘度0.34dl/gのポリフェニレンエーテル粉体を得た。
【0066】
(PPE4)重合漕底部に酸素ガス導入のためのスパージャー、撹拌タービン翼およびバッフル、重合漕上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた20リットルのジャケット付き重合漕に1000ml/minの流量で窒素ガスを吹き込みながら、2.209gの塩化第二銅2水和物、9.460gの36%塩酸、84.379gのN,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミン、63.646gのジ−n−ブチルアミン、2528gのn−ブタノール、2528gのメタノール、7584gのキシレン、3120gの2,6−ジメチルフェノールを入れて、均一溶液となり、かつ反応器の内温が40℃になるまで撹拌した。次いで、激しく撹拌した重合漕へ2000Nml/minの流量で酸素ガスをスパージャーより導入し、290min通気して、反応器の内温が40℃になるようにコントロールしながら重合した。なお、酸素ガスを供給開始125min後に共重合体が析出し、スラリー状の形態を示した。重合終結時の重合液の形態は沈殿析出重合である。酸素ガスの吹き込みをやめ、以下、PPE1の作製と同様な操作を行い、還元粘度0.47dl/gのポリフェニレンエーテル粉体を得た。
【0067】
(PPE5)重合漕底部に酸素含有ガス導入の為のスパージャー、撹拌タービン翼及びバッフルを備え、重合漕上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた40リットルのジャケット付き重合漕に、500ml/minの流量で窒素ガスを吹き込みながら、4.57gの酸化第二銅、24.18gの47質量%臭化水素水溶液、11gのジ−t−ブチルエチレンジアミン、62.72gのジ−n−ブチルアミン、149.92gのブチルジメチルアミン、20650gのトルエン、及び3120gの2,6−ジメチルフェノールを入れ、均一溶液となり、かつ重合漕の内温が25℃になるまで撹拌した。
また貯蔵漕に窒素ガス導入のためのスパージャー、撹拌タービン翼およびバッフル、貯蔵漕上部のベントガスラインに還流冷却機を備えた8リットルの貯蔵漕に、400ml/minの流量で窒素ガスを吹き込みながら3120gのトルエン、1620gの2,6−ジメチルフェノール、21.56gのブチルジメチルアミンを入れ、均一溶液となるまで撹拌し、混合溶液とした。
次に、激しく撹拌した重合漕に、6500Nml/minの流量で90min、酸素ガスをスパージャーより導入し、同時にプランジャーポンプにより、上記の混合溶液を30min掛けて重合漕に追添し、重合終結時の内温が40℃になるようにコントロールして、重合混合物を得た。重合終結時の重合混合物は溶液状態であった。酸素ガスの吹き込みを停止して、重合混合物にエチレンジアミン四酢酸4ナトリウム塩(同仁化学研究所製試薬)の2.5質量%水溶液を10kg添加した。70℃で150min、重合混合物を撹拌し、その後20min静置し、液−液分離により有機相と水相とを分離した。該有機相は、ポリフェニレンエーテルとトルエン(沸点110.6℃)とを含んでいた。
得られた有機相を120℃に加熱し、有機相中のポリフェニレンエーテル濃度が39質量%になるまでトルエン蒸気を系外へ抜き出した。得られた有機相を室温まで冷却した後、メタノールを加えてポリフェニレンエーテルが析出したスラリーを作製した。その際スラリー温度は5℃であり、スラリー中のポリフェニレンエーテル濃度は22質量%であった。その後、前記スラリーを濾過し、濾残を更に20000gのメタノール中に分散させた後、再度濾過して、湿潤ポリフェニレンエーテルを得た。次いで、150℃、1mmHgで90min乾燥させて、還元粘度0.24dl/gのポリフェニレンエーテル粉体を得た。
【0068】
(PPE6)官能化ポリフェニレンエーテルの調整
上記(PPE4)を100質量部と、無水マレイン酸3質量部と、ジクミルパーオキシド0.5質量部とを、ZSK25二軸押出機(独国Werner&Pfleiderer社製、バレル10、スクリュー径25mm、ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:6個、ニーディングディスクN:2個を有するスクリューパターン)を用いて、バレル設定温度320℃、スクリュー回転数250rpmで溶融混練して、無水マレイン酸変性ポリフェニレンエーテルのペレットを得た。ナトリウムメチラートの滴定によって求めた、該変性ポリフェニレンエーテル100質量部当たりの無水マレイン酸付加量は1.5質量部であった。還元粘度は0.47dl/gであった。
【0069】
<ポリスチレン(B)>
(HIPS)ハイインパクトポリスチレン(商品名:PS6200〔登録商標〕、米国ノバケミカル社製)を用いた。
(GPPS)ゼネラルパーパスポリスチレン(商品名:スタイロン660〔登録商標〕、米国ダウケミカル社製)を用いた。
【0070】
<ガラス繊維(C)>
(GF1)アミノシラン化合物で表面処理され、ウレタン系収束剤で収束された平均繊維径10μm、カット長3mmのチョップドストランドを用いた。
(GF2)アミノシラン化合物で表面処理され、エポキシ系収束剤で収束された平均繊維径10μm、カット長3mmのチョップドストランドを用いた。
【0071】
[実施例1]
(PPE1)15質量部と、(HIPS)35質量部と、(GPPS)30質量部とを、独国Werner&Pfleiderer社製、バレル数10、スクリュー径25mmのZSK25二軸押出機(ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:6個、ニーディングディスクN:4個を有するスクリューパターン)の最上流部(トップフィード)から供給し、途中のバレル6から(GF1)20質量部をサイドフィードして、シリンダー温度320℃、スクリュー回転数250rpm、押出レート10kg/hで溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の成形品中のポリフェニレンエーテルの還元粘度は0.44dl/gで、末端OH基数は106μmol/gであった。該樹脂組成物の物性試験結果を表1に示す。
【0072】
[実施例2]
(PPE1)を(PPE2)に置き換えた以外は、実施例1と同様な混練条件で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の成形品中のポリフェニレンエーテルの還元粘度は0.42dl/g、末端OH基数は145μmol/gであった。該樹脂組成物の物性試験結果を表1に示す。
【0073】
[実施例3]
(PPE1)を(PPE3)に置き換えた以外は、実施例1と同様な混練条件で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の成形品中のポリフェニレンエーテルの還元粘度は0.37dl/g、末端OH基数は192μmol/gであった。該樹脂組成物の物性試験結果を表1に示す。
【0074】
[実施例4]
(GF1)を(GF2)に置き換えた以外は、実施例2と同様な混練条件で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の成形品中の還元粘度は0.42dl/g、ポリフェニレンエーテルの末端OH基数は147μmol/gであった。該樹脂組成物の物性試験結果を表1に示す。
【0075】
[実施例5]
(PPE2)15質量部の内の3質量部を、(PPE6)に置き換えた以外は、実施例4と同様な混練条件で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の成形品中のポリフェニレンエーテルの還元粘度は0.40dl/g、末端OH基数は144μmol/gであった。該樹脂組成物の物性試験結果を表1に示す。
【0076】
[実施例6]
(PPE2)15質量部の内の8質量部を、(PPE6)に置き換えた以外は、実施例4と同様な混練条件で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の成形品中のポリフェニレンエーテルの還元粘度は0.43dl/g、末端OH基数は134μmol/gであった。該樹脂組成物の物性試験結果を表1に示す。
【0077】
[実施例7]
(PPE2)21質量部と、(HIPS)34質量部と、(GPPS)30質量部とを、独国Werner&Pfleiderer社製、バレル数10、スクリュー径25mmのZSK25二軸押出機(ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:6個、ニーディングディスクN:4個を有するスクリューパターン)の最上流部(トップフィード)から供給し、途中のバレル6から(GF1)15質量部をサイドフィードして、シリンダー温度320℃、スクリュー回転数250rpm、押出レート10kg/hで溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の成形品中のポリフェニレンエーテルの還元粘度は0.43dl/g、末端OH基数は146μmol/gであった。該樹脂組成物の物性試験結果を表1に示す。
【0078】
[実施例8]
(PPE2)10質量部と、(HIPS)35質量部と、(GPPS)30質量部とを、独国Werner&Pfleiderer社製、バレル数10、スクリュー径25mmのZSK25二軸押出機(ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:6個、ニーディングディスクN:4個を有するスクリューパターン)の最上流部(トップフィード)から供給し、途中のバレル6から(GF1)25質量部をサイドフィードして、シリンダー温度320℃、スクリュー回転数250rpm、押出レート10kg/hで溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の成形品中のポリフェニレンエーテルの還元粘度は0.40dl/g、末端OH基数は143μmol/gであった。該樹脂組成物の物性試験結果を表1に示す。
【0079】
[実施例9]
(PPE2)28質量部と、(HIPS)30質量部と、(GPPS)32質量部とを、独国Werner&Pfleiderer社製、バレル数10、スクリュー径25mmのZSK25二軸押出機(ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:6個、ニーディングディスクN:4個を有するスクリューパターン)の最上流部(トップフィード)から供給し、途中のバレル6から(GF1)10質量部をサイドフィードして、シリンダー温度320℃、スクリュー回転数250rpm、押出レート10kg/hで溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の成形品中のポリフェニレンエーテルの還元粘度は0.44dl/g、末端OH基数は145μmol/gであった。該樹脂組成物の物性試験結果を表1に示す。
【0080】
[比較例1]
(PPE2)を(PPE4)に置き換えた以外は、実施例4と同様な混練条件で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の成形品中のポリフェニレンエーテルの還元粘度0.51、末端OH基数は89μmol/gであった。該樹脂組成物の物性試験結果を表2に示す。
【0081】
[比較例2]
(PPE4)15質量部の内、10質量部を(PPE6)に置き換えた以外は、比較例1と同様な混練条件で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の成形品中のポリフェニレンエーテルの還元粘度0.49dl/g、末端OH基数は93μmol/gであった。該樹脂組成物の物性試験結果を表2に示す。
【0082】
[比較例3]
(PPE4)を(PPE6)に置き換えた以外は、比較例1と同様な混練条件で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の成形品中の還元粘度0.48dl/g、ポリフェニレンエーテルの末端OH基数は94μmol/gであった。該樹脂組成物の物性試験結果を表2に示す。
【0083】
[比較例4]
(PPE2)を(PPE5)に置き換えた以外は、実施例4と同様な混練条件で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の成形品中のポリフェニレンエーテルの還元粘度0.27dl/g、末端OH基数は223μmol/gであった。該樹脂組成物の物性試験結果を表2に示す。
【0084】
[比較例5]
(PPE4)21質量部と、(HIPS)34質量部と、(GPPS)25質量部、スチレン−無水マレイン酸共重合体(SMA(商品名:ダイラークD332〔登録商標〕。無水マレイン酸共重合量15質量部。ノバケミカル・ジャパン社製))5質量部とを、独国Werner&Pfleiderer社製、バレル数10、スクリュー径25mmのZSK25二軸押出機(ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:6個、ニーディングディスクN:4個を有するスクリューパターン)の最上流部(トップフィード)から供給し、途中のバレル6から(GF2)15質量部をサイドフィードして、シリンダー温度320℃、スクリュー回転数250rpm、押出レート10kg/hで溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の成形品中のポリフェニレンエーテルの還元粘度0.52dl/g、末端OH基数は87μmol/gであった。該樹脂組成物の物性試験結果を表2に示す。
【0085】
[比較例6]
(PPE4)21質量部と、(HIPS)34質量部と、(GPPS)20質量部、テルペンフェノール樹脂(商品名:マイティーエースK125〔登録商標〕。ヤスハラケミカル社製)10質量部とを、独国Werner&Pfleiderer社製、バレル数10、スクリュー径25mmのZSK25二軸押出機(ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:6個、ニーディングディスクN:4個を有するスクリューパターン)の最上流部(トップフィード)から供給し、途中のバレル6から(GF2)15質量部をサイドフィードして、シリンダー温度320℃、スクリュー回転数250rpm、押出レート10kg/hで溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の成形品中のポリフェニレンエーテルの還元粘度0.50dl/g、末端OH基数は92μmol/gであった。該樹脂組成物の物性試験結果を表2に示す。
【0086】
[比較例7]
(PPE2)5質量部と、(HIPS)40質量部と、(GPPS)35質量部とを、独国Werner&Pfleiderer社製、バレル数10、スクリュー径25mmのZSK25二軸押出機(ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:6個、ニーディングディスクN:4個を有するスクリューパターン)の最上流部(トップフィード)から供給し、途中のバレル6から(GF1)20質量部をサイドフィードして、シリンダー温度320℃、スクリュー回転数250rpm、押出レート10kg/hで溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の成形品中のポリフェニレンエーテルの還元粘度0.42dl/g、末端OH基数は144μmol/gであった。該樹脂組成物の物性試験結果を表2に示す。
【0087】
[比較例8]
(PPE2)35質量部と、(HIPS)25質量部と、(GPPS)20質量部とを、独国Werner&Pfleiderer社製、バレル数10、スクリュー径25mmのZSK25二軸押出機(ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:6個、ニーディングディスクN:4個を有するスクリューパターン)の最上流部(トップフィード)から供給し、途中のバレル6から(GF1)20質量部をサイドフィードして、シリンダー温度320℃、スクリュー回転数250rpm、押出レート10kg/hで溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の成形品中のポリフェニレンエーテルの還元粘度0.46dl/g、末端OH基数は166μmol/gであった。該樹脂組成物の物性試験結果を表2に示す。
【0088】
[比較例9]
(PPE2)28質量部と、(HIPS)42質量部と、(GPPS)30質量部とを、独国Werner&Pfleiderer社製、バレル数10、スクリュー径25mmのZSK25二軸押出機(ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:6個、ニーディングディスクN:4個を有するスクリューパターン)の最上流部(トップフィード)から供給し、シリンダー温度320℃、スクリュー回転数250rpm、押出レート10kg/hで溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の成形品中のポリフェニレンエーテルの還元粘度0.45dl/g、末端OH基数は146μmol/gであった。該樹脂組成物の物性試験結果を表2に示す。
【0089】
[比較例10]
(PPE2)21質量部と、(HIPS)24質量部と、(GPPS)20質量部とを、独国Werner&Pfleiderer社製、バレル数10、スクリュー径25mmのZSK25二軸押出機(ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:6個、ニーディングディスクN:4個を有するスクリューパターン)の最上流部(トップフィード)から供給し、途中のバレル6から(GF1)35質量部をサイドフィードして、シリンダー温度320℃、スクリュー回転数250rpm、押出レート10kg/hで溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の成形品中のポリフェニレンエーテルの還元粘度0.45dl/g、末端OH基数は171μmol/gであった。該樹脂組成物の物性試験結果を表2に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
表1より、実施例1〜9の樹脂組成物は、樹脂組成物中のポリフェニレンエーテルの末端OH基数と、各原材料の配合量比がいずれも本発明の規定を満たしており、機械的物性(引張強度・曲げ強度)、耐衝撃性(シャルピー)、成形外観、ウレタン接着性、及び滞留成形安定性、その他の物性も良好であり、自動車内装部品用途に好適に使用可能である。特にウレタン系収束剤で収束したガラス繊維(GF1)を用いた実施例1〜3及び、実施例7〜9、無水マレイン酸変性ポリフェニレンエーテルを特定量配合した実施例5及び6は、物性バランスが良好であるため、自動車内装部品用途、特にインストルメントパネルに好適に使用可能である。
【0093】
表2より、比較例1は、樹脂組成物中のポリフェニレンエーテルの末端OH基数が本発明の規定の下限を外れているため、成形品のウレタン接着性が十分ではない。
比較例2及び3は、樹脂組成物中のポリフェニレンエーテルの末端OH基数が本発明の規定の下限を外れているため、成形品のウレタン接着性が十分ではない。比較例2は無水マレイン酸変性ポリフェニレンエーテルを規定量配合することで、ウレタン接着性が改良される傾向が見られるが十分ではない。比較例3は無水マレイン酸変性ポリフェニレンエーテルを更に規定量以上増量配合したが、ウレタン接着性は十分ではなく、逆に滞留成形安定性が低下する結果であった。
比較例4は、樹脂組成物中のポリフェニレンエーテルの末端OH基数が本発明の規定の上限を外れているため、樹脂組成物の滞留成形安定性、成形品の機械的物性や成形品外観(シルバー発生)が十分ではない。
比較例5は、樹脂組成物中のポリフェニレンエーテルの末端OH基数が本発明の規定の下限を外れているが、スチレン−無水マレイン酸共重合体を配合しているため、ウレタン接着性は良好である。しかし、樹脂組成物の滞留成形安定性や、機械的物性、耐衝撃性が十分ではない。
比較例6も、樹脂組成物中のポリフェニレンエーテルの末端OH基数が本発明の規定の下限を外れているが、テルペンフェノール樹脂を配合しているため、ウレタン接着性は良好である。しかし、樹脂組成物の滞留成形安定性や、耐衝撃性が十分ではない。
比較例7は、樹脂組成物中のポリフェニレンエーテルの配合量が本発明の規定の下限を外れているため、ウレタン接着性が十分ではない。
比較例8は、樹脂組成物中のポリフェニレンエーテルの配合量が、本発明の規定の上限を外れているため、成形品表面にフローマークやガラス繊維の浮きが見られ、成形品外観が十分ではない。
比較例9は、樹脂組成物中に本発明の(C)成分であるガラス繊維が配合されていないため、機械的物性やウレタン接着性が十分ではない。
比較例10は、樹脂組成物中のガラス繊維の配合量が、本発明の規定の上限を外れているため、成形品表面にフローマークやガラス繊維の浮きが見られ、成形品外観が十分ではない。
従って、比較例1〜10は、自動車内装部品用途、特にインストルメントパネル部品への使用は困難である。