【文献】
J. Am. Chem. Soc., 2011年,Vol.133,,p.10708-10711
【文献】
Nat. Chem., 2012年2月,Vol.4, No.4,p.298-304
【文献】
Angew. Chem. Int. Ed., 2010年,Vol.49,p.9422-9425
【文献】
Angew. Chem. Int. Ed., 2012年3月,Vol.51,p.4166-4170
【文献】
J. Am. Chem. Soc., 2012年(Published December 16, 2011),Vol.134,p.792-795
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリペプチドに、ビシクロ[6.1.0]ノナ−4−イン−9−イルメタノール(BCN)基を含むアミノ酸を遺伝学的に取り込むことを含む、BCN基を含むポリペプチドの生成方法であって、
ポリペプチドの生成が、
(i)BCN基を有するアミノ酸をコードする直交性コドンを含む、前記ポリペプチドをコードする核酸を提供すること;
(ii)前記直交性コドンを認識できる直交性tRNA合成酵素/tRNA対の存在下で前記核酸を翻訳し、BCN基を有する前記アミノ酸をポリペプチド鎖に取り込むこと
を含み、
前記BCN基を含むアミノ酸が、BCNリシンである、
前記方法。
ビシクロ[6.1.0]ノナ−4−イン−9−イルメタノール(BCN)基を有するアミノ酸を含むポリペプチドを提供すること、前記ポリペプチドをテトラジン化合物と接触させてインキュベートすることにより、逆電子要請型ディールス・アルダー付加環化反応によってテトラジンをBCN基に連結させることを含む、前記テトラジン基を含むポリペプチドの生成方法であって、
前記BCN基を有するアミノ酸が、BCNリシンである、
前記方法。
【背景技術】
【0002】
遺伝子コードの拡張を介したバイオ直交性基の部位特異的な取り込みは、あらゆるプローブでタンパク質を部位特異的に標識付けるための強力な総合戦略を提供する。しかしながら、遺伝学的にコードされ得るバイオ直交性官能基の遅い反応性が、この戦略の有用性を制限してきた。
【0003】
多様なプローブを用いたタンパク質の迅速で部位特異的な標識付けは、化学生物学者にとって未解決の課題であり続けている。酵素介在の標識付けアプローチは迅速かもしれないが、研究中のタンパク質に混乱を生じさせるタンパク質又はペプチド融合を使用しており、標識可能な部位を限定する可能性があり、一方で、構成要素が遺伝学的にコードされ得る「バイオ直交性」反応の多くは、多くの生物学的プロセスを研究するのに有用なタイムスケールで定量的且つ部位特異的なタンパク質の標識付けを達成するには遅すぎる。
【0004】
多様な状況でユーザー定義のプローブを用いてタンパク質を部位特異的に標識する一般的な方法への差し迫った必要性がある。
【0005】
迅速なバイオ直交性反応の重要なクラスとして、ノルボルネンやトランス−シクロオクテンなどの歪みアルケンとテトラジンとの逆電子要請型ディールス・アルダー反応が出現した(Devaraj, N. K.; Weissleder, R.; Hilderbrand, S. A. Bioconjug Chem 2008, 19, 2297、Devaraj, N. K.; Weissleder, R. Acc Chem Res 2011、Blackman, M. L.; Royzen, M.; Fox, J. M. J Am Chem Soc 2008, 130, 13518、Taylor, M. T.; Blackman, M. L.; Dmitrenko, O.; Fox, J. M. Journal of the American Chemical Society 2011, 133, 9646)。これらの反応の一部で報告された速度は極めて速い(Blackman, M. L.; Royzen, M.; Fox, J. M. J Am Chem Soc 2008, 130, 13518、Taylor, M. T.; Blackman, M. L.; Dmitrenko, O.; Fox, J. M. Journal of the American Chemical Society 2011, 133, 9646)。
【0006】
ごく最近、これらの反応を使用してタンパク質を特異的に標識付けるためのアプローチが3つ報告されている。
【0007】
− 2段階法で13アミノ酸のリポ酸リガーゼタグが結合したタンパク質を標識するために、トランス−シクロオクテン基質を受容するリポ酸リガーゼバリアントが使用されている(Liu, D. S.; Tangpeerachaikul, A.; Selvaraj, R.; Taylor, M. T.; Fox, J. M.; Ting, A. Y. Journal of the American Chemical Society 2012, 134, 792)。
【0008】
− テトラジンを、遺伝子コードの拡張を介して大腸菌(E. coli)で発現されるタンパク質中の特異的部位に導入して、歪みトランス−シクロオクテン−ジアセチルフルオレセインで誘導体化している(Seitchik, J. L.; Peeler, J. C.; Taylor, M. T.; Blackman, M. L.; Rhoads, T. W.; Cooley, R. B.; Refakis, C.; Fox, J. M.; Mehl, R. A. Journal of the American Chemical Society 2012, 134, 2898)。
【0009】
− 遺伝子コードの拡張に加えて、インビトロで、大腸菌中で、さらには哺乳動物細胞上でテトラジンフルオロフォアを用いて部位特異的に蛍光発生標識することによって、歪みアルケン(ノルボルネン含有アミノ酸)を取り込むことが実証されている(Lang, K.; Davis, L.; Torres-Kolbus, J.; Chou, C.; Deiters, A.; Chin, J. W. Nature chemistry 2012, 4, 298)。また近年ではノルボルネン含有アミノ酸の取り込みも報告されている(Kaya, E.; Vrabel, M.; Deiml, C.; Prill, S.; Fluxa, V. S.; Carell, T. Angewandte Chemie 2012, 51, 4466、Plass, T.; Milles, S.; Koehler, C.; Szymanski, J.; Mueller, R.; Wiessler, M.; Schultz, C.; Lemke, E. A. Angew Chem Int Edit 2012, 51, 4166)。
【0010】
固定細胞中で、ある種の蛍光標識を検出したところ、トランス−シクロオクテン(cycclooctene)含有アミノ酸(TCO)(2)取り込みの効率が低かったことが報告されている(Plass, T.; Milles, S.; Koehler, C.; Szymanski, J.; Mueller, R.; Wiessler, M.; Schultz, C.; Lemke, E. A. Angew Chem Int Edit 2012, 51, 4166)。
【0011】
有機溶媒中でのモデル反応を用いた近年の研究によれば、BCN(アジ化物との歪み促進反応(strain promoted reactions)で最初に説明された)(Dommerholt, J.; Schmidt, S.; Temming, R.; Hendriks, L. J. A.; Rutjes, F. P. J. T.; van Hest, J. C. M.; Lefeber, D. J.; Friedl, P.; van Delft, F. L. Angew Chem Int Edit 2010, 49, 9422)とテトラジンとの反応は、極めて迅速に進行する可能性があることが示唆されている(Chen, W. X.; Wang, D. Z.; Dai, C. F.; Hamelberg, D.; Wang, B. H. Chem Commun 2012, 48, 1736)。しかしながら、この反応は、それよりもかなり遅い単純なシクロオクチンと、アジ化物、ニトロン(McKay, C. S.; Blake, J. A.; Cheng, J.; Danielson, D. C.; Pezacki, J. P. Chem Commun 2011, 47, 10040、McKay, C. S.; Chigrinova, M.; Blake, J. A.; Pezacki, J. P. Organic & biomolecular chemistry 2012、Ning, X.; Temming, R. P.; Dommerholt, J.; Guo, J.; Ania, D. B.; Debets, M. F.; Wolfert, M. A.; Boons, G. J.; van Delft, F. L. Angewandte Chemie 2010, 49, 3065、Agard, N. J.; Prescher, J. A.; Bertozzi, C. R. Journal of the American Chemical Society 2004, 126, 15046、Sletten, E. M.; Bertozzi, C. R. Accounts of chemical research 2011, 44, 666)、及びテトラジン(Plass, T.; Milles, S.; Koehler, C.; Szymanski, J.; Mueller, R.; Wiessler, M.; Schultz, C.; Lemke, E. A. Angew Chem Int Edit 2012, 51, 4166、Karver, M. R.; Weissleder, R.; Hilderbrand, S. A. Angewandte Chemie 2012, 51, 920)との反応とは異なり、水性媒体中で、又は高分子の標識付けへの化学選択的な経路として調査されてこなかった。
【0012】
本発明は、従来技術に関連する問題(複数可)を克服することに努めている。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本明細書において本発明者らは、ビシクロ[6.1.0]ノナ−4−イン−9−イルメタノール(BCN)とテトラジンとの蛍光発生反応を実証する。これらの反応の速度は、多くの「バイオ直交性」反応に関する速度よりも3〜7桁速い。本発明者らは、大腸菌中で、さらには哺乳動物細胞中で発現されるタンパク質にBCN含有アミノ酸1、及びトランスシクロオクテン含有アミノ酸2(これもテトラジンと極めて迅速に反応する)を効率的に部位特異的に取り込むための、アミノアシル−tRNA合成酵素/tRNA対及びそれらの使用を説明する。本発明者らは、第一の測定可能なタイムポイントで(数秒又は数分後に)、インビトロで、大腸菌中で、さらには生きた哺乳動物細胞中で、1及び2を含有するタンパク質が部位特異的に蛍光発生標識で標識されることを証明する。さらに本発明者らは、プロテオームに関するテトラジンによる標識付けの特異性、加えて構成要素がコード可能な現行の「バイオ直交性」反応に関する本アプローチの利点を証明する。開発されたアプローチは、動物における部位特異的なタンパク質の標識付けに適用してもよく、さらにこれらは、標識付け及びイメージング研究においても有用性が見出されている。
【0054】
ジエノフィル基を有するアミノ酸を含むポリペプチドは、前記ジエノフィル基がビシクロ[6.1.0]ノナ−4−イン−9−イルメタノール(BCN)基を含むことを特徴とする。
【0055】
本発明者らは、インビトロで、生きた哺乳動物細胞中で、蛍光を発生するディールス・アルダー反応によりタンパク質を部位特異的に標識付けするために、ビシクロノニン及びトランス−シクロオクテンを遺伝学的にコードすることを説明する。
【0056】
本発明の方法は、インビボで実施してもよいし、又はインビトロで実施してもよい。
【0057】
一実施形態において、好適には、本発明の方法は、ヒト又は動物の体に適用されない。好適には、本発明の方法は、インビトロでの方法である。好適には、本方法は、ヒト又は動物の体の存在を必要としない。好適には、本方法は、ヒト又は動物の体の診断方法又は外科手術方法又は治療方法ではない。
【0058】
ジエノフィル/トランス−シクロオクテン(TCO)の態様
広範な態様において、本発明は、テトラジン基と反応できるジエノフィル基を有するアミノ酸を含むポリペプチドに関する。
【0059】
好適には、前記ジエノフィル基は、リシンアミノ酸の残基として存在する。
【0060】
一実施形態において、本発明は、ジエノフィル基を含むポリペプチドの生成方法に関し、前記方法は、ジエノフィル基を含むアミノ酸をポリペプチドに遺伝学的に取り込むことを含む。
【0061】
好適には、ポリペプチドの生成は、
(i)ジエノフィル基を有するアミノ酸をコードする直交性コドンを含む、ポリペプチドをコードする核酸を提供すること;
(ii)前記直交性コドンを認識できる直交性tRNA合成酵素/tRNA対の存在下で前記核酸を翻訳し、ジエノフィル基を有する前記アミノ酸をポリペプチド鎖に取り込むこと
を含む。好適には、ジエノフィル基を含む前記アミノ酸は、ジエノフィルリシン(dienophile lysine)である。
【0062】
好適には、前記直交性コドンが、アンバーコドン(TAG)を含み、前記tRNAが、MbtRNA
CUAを含み、ジエノフィル基を有する前記アミノ酸が、トランス−シクロオクテン−4−オール(TCO)含有アミノ酸を含み、前記tRNA合成酵素が、変異Y271A、L274M、及びC313Aを有するPylRS合成酵素(TCORS)を含む。
【0063】
好適には、前記PylRSのtRNA合成酵素は、変異Y271A、L274M、及びC313Aを含む、MbPylRSのtRNA合成酵素(TCORS)に対応する配列を有する。他の態様において、本発明は、トランス−シクロオクテン−4−オール(TCO)を含むアミノ酸をポリペプチドに取り込むための、本発明のPylRSのtRNA合成酵素(複数可)の使用に関する。
【0064】
他の態様において、本発明は、本発明のPylRSのtRNA合成酵素(複数可)を使用してトランス−シクロオクテン−4−オール(TCO)を含むアミノ酸を取り込むことを含む、トランス−シクロオクテン−4−オール(TCO)を含むアミノ酸をポリペプチドに取り込む方法に関する。
【0065】
本明細書で論じられる非天然アミノ酸にテトラジン化合物を連結させることに関する本発明の態様は、文脈によって特に他の指定がない限り、BCNアミノ酸に適用されるのと同等にTCOアミノ酸にも適用される。
【0066】
本発明者らは、室温での水性条件下における、BCNと様々なテトラジンとの、特別に迅速な蛍光発生反応を報告する。BCN−テトラジン反応の速度定数は、ノルボルネンと同じテトラジンとの反応の速度定数よりも500〜1000倍大きい。TCO−テトラジン反応の速度定数は、BCNと同じテトラジンとの反応の速度定数よりも10〜15倍大きい。歪みアルケンとテトラジンとの反応により、ジアステレオマー及び位置異性体の混合物、加えてジヒドロピリダジンの異性化による異性体が生じる可能性がある(Blackman, M. L.; Royzen, M.; Fox, J. M. J Am Chem Soc 2008, 130, 13518、Taylor, M. T.; Blackman, M. L.; Dmitrenko, O.; Fox, J. M. Journal of the American Chemical Society 2011, 133, 9646)。
【0067】
それに対して、BCNとテトラジンとの反応により、単一の生成物の形成が起こる。これは、単一分子分光法、及びFRETアプローチなどのプローブ結合の方向における均一性が重要となり得るような用途において利点となる可能性がある。
【0068】
本発明者らは、大腸菌中で、さらには哺乳動物細胞中でタンパク質に1及び2を効率的に部位特異的に取り込ませるための、アミノアシル−tRNA合成酵素/tRNA対及びそれらの使用を説明している。
【0069】
本発明者らは、タンパク質の特異的且つ定量的な標識付け、すなわちコードされたノルボルネンを用いた場合は数十分から数時間かかる過程(Lang, K.; Davis, L.; Torres-Kolbus, J.; Chou, C.; Deiters, A.; Chin, J. W. Nature chemistry 2012, 4, 298)や、アルキンプローブでの銅触媒によるクリックケミストリーによりコードされたアジ化物を用いた場合は数十時間かかる過程(Nguyen, D. P.; Lusic, H.; Neumann, H.; Kapadnis, P. B.; Deiters, A.; Chin, J. W. J Am Chem Soc 2009, 131, 8720)は、コードされたアミノ酸1及び2を使用すれば数秒以内に完了できることを実証している。本発明者らは、シクロオクチンを用いて哺乳動物細胞表面上のEGFRに取り込まれたアジ化物の標識付けを観察していないが(Lang, K.; Davis, L.; Torres-Kolbus, J.; Chou, C.; Deiters, A.; Chin, J. W. Nature chemistry 2012, 4, 298)、EGFR中のコードされたノルボルネンの標識付けにより、わずか2時間後にテトラジンでの標識付けが可能になり(Lang, K.; Davis, L.; Torres-Kolbus, J.; Chou, C.; Deiters, A.; Chin, J. W. Nature chemistry 2012, 4, 298)、ナノモル濃度のテトラジン−色素コンジュゲートを使用して測定された第一のタイムポイント(2分)でEGFRを取り込んだ1及び2による強く飽和した標識が観察された。これらの実験から、低分子物質を用いた実験で特徴付けられた迅速なBCN−テトラジンとTCO−テトラジンとのライゲーションは、多様な状況でのタンパク質の標識における実質的な向上であると解釈できることが確認される。本発明者らは、インビトロでの、大腸菌中での、さらには生きた哺乳動物細胞中でのこのアプローチの利点を実証してきたが、セノラブディティス・エレガンス(C.elegans)においてPylRS/tRNA
CUA対を使用して非天然アミノ酸を取り込む能力(Greiss, S.; Chin, J. W. J Am Chem Soc 2011)は、本明細書に記載されている標識付けアプローチを動物での部位特異的タンパク質標識付けに発展できる可能性があることを示唆している。
【0070】
遺伝学的な取り込み及びポリペプチドの生成
本発明に係る方法において、前記遺伝学的な取り込みは、好ましくは直交性又は拡張された遺伝子コードを使用しており、この場合、直交性tRNA合成酵素/tRNA対を使用することによってBCN基を有する特異的アミノ酸残基が遺伝学的に取り込まれるように、1又は2以上の特異的な直交性コドンを割り当ててそのような特異的アミノ酸残基をコードしている。直交性tRNA合成酵素/tRNA対は、原則的に、BCN基を含むアミノ酸でtRNAをチャージでき、さらに直交性コドンに応答してそのBCN基を含むアミノ酸をポリペプチド鎖に取り込むことができればどのような対であってもよい。
【0071】
直交性コドンは、直交性コドンのアンバー、オーカー、オパール又は四つ組コドン(quadruplet codon)であってもよい。コドンは単に、BCN基を含むアミノ酸を運搬するのに使用されると予想される直交性tRNAに対応してさえいればよい。直交性コドンは、好ましくはアンバーである。
【0072】
本明細書で示される具体的な実施例はアンバーコドンとそれに対応するtRNA/tRNA合成酵素を使用していることに留意されたい。上述したように、これらは変更が可能である。或いは、BCN基を含むアミノ酸と共に機能し得る代替のtRNA/tRNA合成酵素対を使用又は選択する手間をかけることなく他のコドンを使用するためには、tRNAのアンチコドン領域を、最適なコドンにとって望ましいアンチコドン領域で単に交換するだけでもよい。アンチコドン領域は、tRNAのチャージ又は取り込み機能にもtRNA合成酵素による認識にも関与しないため、このような交換は、全体として、熟練した作業者の技術的範囲内である。
【0073】
したがって、代替の直交性tRNA合成酵素/tRNA対を必要に応じて使用してもよい。
【0074】
好ましくは、直交性合成酵素/tRNA対は、メタノサルシナ・バーケリ(Methanosarcina barkeri)MSのピロリシンtRNA合成酵素(MbPylRS)及びそれと同源のアンバーサプレッサーtRNA(MbtRNA
CUA)である。
【0075】
メタノサルシナ・バーケリのPylT遺伝子は、MbtRNA
CUAのtRNAをコードする。
【0076】
メタノサルシナ・バーケリのPylS遺伝子は、MbPylRSのtRNA合成酵素タンパク質をコードする。特定のアミノ酸残基が数値アドレスを使用して記述されている場合、その番号付けは、参照配列としてMbPylRS(メタノサルシナ・バーケリのピロリシル−tRNA合成酵素)のアミノ酸配列(すなわち受託番号Q46E77の公共的に利用可能な野生型メタノサルシナ・バーケリのPylS遺伝子によってコードされたものなど)を使用してなされる:
MDKKPLDVLI SATGLWMSRT GTLHKIKHYE VSRSKIYIEM ACGDHLVVNN SRSCRTARAF RHHKYRKTCK RCRVSDEDIN NFLTRSTEGK TSVKVKVVSA PKVKKAMPKS VSRAPKPLEN PVSAKASTDT SRSVPSPAKS TPNSPVPTSA PAPSLTRSQL DRVEALLSPE DKISLNIAKP FRELESELVT RRKNDFQRLY TNDREDYLGK LERDITKFFV DRDFLEIKSP ILIPAEYVER MGINNDTELS KQIFRVDKNL CLRPMLAPTL YNYLRKLDRI LPDPIKIFEV GPCYRKESDG KEHLEEFTMV NFCQMGSGCT RENLESLIKE FLDYLEIDFE IVGDSCMVYG DTLDIMHGDL ELSSAVVGPV PLDREWGIDK PWIGAGFGLE RLLKVMHGFK NIKRASRSES YYNGISTNL。
【0077】
前記配列は、本明細書において以降、配列番号1と注釈が付けられる。
【0078】
必要があれば、当業者は、使用しようとするBCNのアミノ酸にとって最適になるようにMbPylRSのtRNA合成酵素タンパク質に変異を導入することによってそのタンパク質を適合させてもよい。変異の必要性は、使用されるBCNアミノ酸によって判断される。MbPylRSのtRNA合成酵素を変異させる必要があり得るような例は、BCNアミノ酸がMbPylRSのtRNA合成酵素タンパク質によって処理されない場合である。
【0079】
このような変異は、MbPylRSのtRNA合成酵素に、例えばMbPylRSのtRNA合成酵素中の以下に示す位置:M241、A267、Y271、L274、及びC313の1又は2以上に変異を導入することによって実行されてもよい。
【0080】
一例は、BCN基を有する前記アミノ酸が、ビシクロ[6.1.0]ノナ−4−イン−9−イルメタノール(BCN)リシンを含む場合である。好適には、前記tRNA合成酵素は、例えば変異Y271M、L274G、及びC313A(BCNRS)を有するMbPylRSなどのPylRS合成酵素を含む。
【0081】
一例は、ジエノフィル基を有する前記アミノ酸が、トランス−シクロオクテン−4−オール(TCO)含有アミノ酸を含む場合である。好適には、前記tRNA合成酵素は、例えば変異Y271A、L274M、及びC313Aを有するMbPylRS(TCORS)などのPylRS合成酵素を含む。
【0082】
tRNA合成酵素
本発明のtRNA合成酵素は様々であり得る。実施例では特定のtRNA合成酵素配列が使用されているかもしれないが、本発明は、そのような実施例のみに限定されることは意図されない。
【0083】
原則的には、同じtRNAチャージ(アミノアシル化)機能を備えていればどのようなtRNA合成酵素でも本発明で使用される。
【0084】
例えばtRNA合成酵素は、あらゆる好適な種に由来するもの、例えば古細菌から、例えばメタノサルシナ・バーケリMS;メタノサルシナ・バーケリ株フサロ(Methanosarcina barkeri str. Fusaro);メタノサルシナ・マゼイGo1(Methanosarcina mazei Go1);メタノサルシナ・アセチボランスC2A(Methanosarcina acetivorans C2A);メタノサルシナ・サーモフィラ(Methanosarcina thermophila);又はメタノコッコイデス・ブルトニイ(Methanococcoides burtonii)に由来するものであってもよい。或いはtRNA合成酵素は、細菌に由来するもの、例えばデスルフィトバクテリウム・ハフニエンスDCB−2(Desulfitobacterium hafniense DCB-2);デスルフィトバクテリウム・ハフニエンスY51;デスルフィトバクテリウム・ハフニエンスPCP1;デスルフォトマクルム・アセトキシダンスDSM771(Desulfotomaculum acetoxidans DSM 771)に由来するものであってもよい。
【0085】
これらの生物からの典型的な配列は、公共的に利用可能な配列である。以下の例を、ピロリシンのtRNA合成酵素に関する典型的な配列として示す。
【0086】
>M.バーケリMS/1〜419/
メタノサルシナ・バーケリMS
バージョンQ6WRH6.1 GI:74501411
MDKKPLDVLISATGLWMSRTGTLHKIKHHEVSRSKIYIEMACGDHLVVNNSRSCRTARAFRHHKYRKTCKRCRVSDEDINNFLTRSTESKNSVKVRVVSAPKVKKAMPKSVSRAPKPLENSVSAKASTNTSRSVPSPAKSTPNSSVPASAPAPSLTRSQLDRVEALLSPEDKISLNMAKPFRELEPELVTRRKNDFQRLYTNDREDYLGKLERDITKFFVDRGFLEIKSPILIPAEYVERMGINNDTELSKQIFRVDKNLCLRPMLAPTLYNYLRKLDRILPGPIKIFEVGPCYRKESDGKEHLEEFTMVNFCQMGSGCTRENLEALIKEFLDYLEIDFEIVGDSCMVYGDTLDIMHGDLELSSAVVGPVSLDREWGIDKPWIGAGFGLERLLKVMHGFKNIKRASRSESYYNGISTNL
【0087】
>M.バーケリF/1〜419/
メタノサルシナ・バーケリ株フサロ
バージョンYP_304395.1 GI:73668380
MDKKPLDVLISATGLWMSRTGTLHKIKHYEVSRSKIYIEMACGDHLVVNNSRSCRTARAFRHHKYRKTCKRCRVSDEDINNFLTRSTEGKTSVKVKVVSAPKVKKAMPKSVSRAPKPLENPVSAKASTDTSRSVPSPAKSTPNSPVPTSAPAPSLTRSQLDRVEALLSPEDKISLNIAKPFRELESELVTRRKNDFQRLYTNDREDYLGKLERDITKFFVDRDFLEIKSPILIPAEYVERMGINNDTELSKQIFRVDKNLCLRPMLAPTLYNYLRKLDRILPDPIKIFEVGPCYRKESDGKEHLEEFTMVNFCQMGSGCTRENLESLIKEFLDYLEIDFEIVGDSCMVYGDTLDIMHGDLELSSAVVGPVPLDREWGIDKPWIGAGFGLERLLKVMHGFKNIKRASRSESYYNGISTNL
【0088】
>M.マゼイ/1〜454
メタノサルシナ・マゼイGo1
バージョンNP_633469.1 GI:21227547
MDKKPLNTLISATGLWMSRTGTIHKIKHHEVSRSKIYIEMACGDHLVVNNSRSSRTARALRHHKYRKTCKRCRVSDEDLNKFLTKANEDQTSVKVKVVSAPTRTKKAMPKSVARAPKPLENTEAAQAQPSGSKFSPAIPVSTQESVSVPASVSTSISSISTGATASALVKGNTNPITSMSAPVQASAPALTKSQTDRLEVLLNPKDEISLNSGKPFRELESELLSRRKKDLQQIYAEERENYLGKLEREITRFFVDRGFLEIKSPILIPLEYIERMGIDNDTELSKQIFRVDKNFCLRPMLAPNLYNYLRKLDRALPDPIKIFEIGPCYRKESDGKEHLEEFTMLNFCQMGSGCTRENLESIITDFLNHLGIDFKIVGDSCMVYGDTLDVMHGDLELSSAVVGPIPLDREWGIDKPWIGAGFGLERLLKVKHDFKNIKRAARSESYYNGISTNL
【0089】
>M.アセチボランス/1〜443
メタノサルシナ・アセチボランスC2A
バージョンNP_615128.2 GI:161484944
MDKKPLDTLISATGLWMSRTGMIHKIKHHEVSRSKIYIEMACGERLVVNNSRSSRTARALRHHKYRKTCRHCRVSDEDINNFLTKTSEEKTTVKVKVVSAPRVRKAMPKSVARAPKPLEATAQVPLSGSKPAPATPVSAPAQAPAPSTGSASATSASAQRMANSAAAPAAPVPTSAPALTKGQLDRLEGLLSPKDEISLDSEKPFRELESELLSRRKKDLKRIYAEERENYLGKLEREITKFFVDRGFLEIKSPILIPAEYVERMGINSDTELSKQVFRIDKNFCLRPMLAPNLYNYLRKLDRALPDPIKIFEIGPCYRKESDGKEHLEEFTMLNFCQMGSGCTRENLEAIITEFLNHLGIDFEIIGDSCMVYGNTLDVMHDDLELSSAVVGPVPLDREWGIDKPWIGAGFGLERLLKVMHGFKNIKRAARSESYYNGISTNL
【0090】
>M.サーモフィラ/1〜478
メタノサルシナ・サーモフィラ、バージョンDQ017250.1 GI:67773308
MDKKPLNTLISATGLWMSRTGKLHKIRHHEVSKRKIYIEMECGERLVVNNSRSCRAARALRHHKYRKICKHCRVSDEDLNKFLTRTNEDKSNAKVTVVSAPKIRKVMPKSVARTPKPLENTAPVQTLPSESQPAPTTPISASTTAPASTSTTAPAPASTTAPAPASTTAPASASTTISTSAMPASTSAQGTTKFNYISGGFPRPIPVQASAPALTKSQIDRLQGLLSPKDEISLDSGTPFRKLESELLSRRRKDLKQIYAEEREHYLGKLEREITKFFVDRGFLEIKSPILIPMEYIERMGIDNDKELSKQIFRVDNNFCLRPMLAPNLYNYLRKLNRALPDPIKIFEIGPCYRKESDGKEHLEEFTMLNFCQMGSGCTRENLEAIIKDFLDYLGIDFEIVGDSCMVYGDTLDVMHGDLELSSAVVGPVPMDRDWGINKPWIGAGFGLERLLKVMHNFKNIKRASRSESYYNGISTNL
【0091】
>M.ブルトニイ/1〜416
メタノコッコイデス・ブルトニイDSM6242、バージョンYP_566710.1 GI:91774018
MEKQLLDVLVELNGVWLSRSGLLHGIRNFEITTKHIHIETDCGARFTVRNSRSSRSARSLRHNKYRKPCKRCRPADEQIDRFVKKTFKEKRQTVSVFSSPKKHVPKKPKVAVIKSFSISTPSPKEASVSNSIPTPSISVVKDEVKVPEVKYTPSQIERLKTLMSPDDKIPIQDELPEFKVLEKELIQRRRDDLKKMYEEDREDRLGKLERDITEFFVDRGFLEIKSPIMIPFEYIERMGIDKDDHLNKQIFRVDESMCLRPMLAPCLYNYLRKLDKVLPDPIRIFEIGPCYRKESDGSSHLEEFTMVNFCQMGSGCTRENMEALIDEFLEHLGIEYEIEADNCMVYGDTIDIMHGDLELSSAVVGPIPLDREWGVNKPWMGAGFGLERLLKVRHNYTNIRRASRSELYYNGINTNL
【0092】
>D.ハフニエンス_DCB−2/1〜279
デスルフィトバクテリウム・ハフニエンスDCB−2
バージョンYP_002461289.1 GI:219670854
MSSFWTKVQYQRLKELNASGEQLEMGFSDALSRDRAFQGIEHQLMSQGKRHLEQLRTVKHRPALLELEEGLAKALHQQGFVQVVTPTIITKSALAKMTIGEDHPLFSQVFWLDGKKCLRPMLAPNLYTLWRELERLWDKPIRIFEIGTCYRKESQGAQHLNEFTMLNLTELGTPLEERHQRLEDMARWVLEAAGIREFELVTESSVVYGDTVDVMKGDLELASGAMGPHFLDEKWEIVDPWVGLGFGLERLLMIREGTQHVQSMARSLSYLDGVRLNIN
【0093】
>D.ハフニエンス_Y51/1〜312
デスルフィトバクテリウム・ハフニエンスY51
バージョンYP_521192.1 GI:89897705
MDRIDHTDSKFVQAGETPVLPATFMFLTRRDPPLSSFWTKVQYQRLKELNASGEQLEMGFSDALSRDRAFQGIEHQLMSQGKRHLEQLRTVKHRPALLELEEGLAKALHQQGFVQVVTPTIITKSALAKMTIGEDHPLFSQVFWLDGKKCLRPMLAPNLYTLWRELERLWDKPIRIFEIGTCYRKESQGAQHLNEFTMLNLTELGTPLEERHQRLEDMARWVLEAAGIREFELVTESSVVYGDTVDVMKGDLELASGAMGPHFLDEKWEIVDPWVGLGFGLERLLMIREGTQHVQSMARSLSYLDGVRLNIN
【0094】
>D.ハフニエンスPCP1/1〜288
デスルフィトバクテリウム・ハフニエンス
バージョンAY692340.1 GI:53771772
MFLTRRDPPLSSFWTKVQYQRLKELNASGEQLEMGFSDALSRDRAFQGIEHQLMSQGKRHLEQLRTVKHRPALLELEEKLAKALHQQGFVQVVTPTIITKSALAKMTIGEDHPLFSQVFWLDGKKCLRPMLAPNLYTLWRELERLWDKPIRIFEIGTCYRKESQGAQHLNEFTMLNLTELGTPLEERHQRLEDMARWVLEAAGIREFELVTESSVVYGDTVDVMKGDLELASGAMGPHFLDEKWEIFDPWVGLGFGLERLLMIREGTQHVQSMARSLSYLDGVRLNIN
【0095】
>D.アセトキシダンス/1〜277
デスルフォトマクルム・アセトキシダンスDSM771
バージョンYP_003189614.1 GI:258513392
MSFLWTVSQQKRLSELNASEEEKNMSFSSTSDREAAYKRVEMRLINESKQRLNKLRHETRPAICALENRLAAALRGAGFVQVATPVILSKKLLGKMTITDEHALFSQVFWIEENKCLRPMLAPNLYYILKDLLRLWEKPVRIFEIGSCFRKESQGSNHLNEFTMLNLVEWGLPEEQRQKRISELAKLVMDETGIDEYHLEHAESVVYGETVDVMHRDIELGSGALGPHFLDGRWGVVGPWVGIGFGLERLLMVEQGGQNVRSMGKSLTYLDGVRLNI
【0096】
tRNA合成酵素に変異を導入することによって特定のtRNAチャージ(アミノアシル化)機能がもたらされる場合、例えば上記から選択されるものなどの別の野生型tRNA配列を単に使用するだけでは適切ではない場合がある。このような場合、同じtRNAチャージ(アミノアシル化)機能を保存することが重要であると予想される。これは、例えば上記から選択されるものなどの代替のtRNA合成酵素の主鎖に典型的なtRNA合成酵素中の変異(複数可)を移動させることによって達成される。
【0097】
このようにして、対応するtRNA合成酵素配列、例えば典型的なM.バーケリ配列及び/又はM.マゼイ配列以外の他の生物からの対応するpylS配列などに、選択された変異を移動させることが可能であると予想される。
【0098】
例えば典型的なM.バーケリ配列及び/又はM.マゼイ配列などの公知のtRNA合成酵素に対するアライメントによって、標的tRNA合成酵素タンパク質/主鎖を選択してもよい。
【0099】
以下、pylS(ピロリシンtRNA合成酵素)配列を参照することによって本発明の主題を例示するが、その原理は所望の特定のtRNA合成酵素にも等しく適用される。
【0100】
例えば
図6は、全てのPylS配列のアライメントを示す。これらの全体的な配列同一性%は低い可能性がある。したがって、例えば(単に低い配列同一性スコアを使用するのではなく)公知のtRNA合成酵素に配列を並べて、使用されている配列が実際にtRNA合成酵素であることを確認することによって、配列を研究することが重要である。
【0101】
したがって、好適には、配列同一性を検討する際に、
図6で示されるようにtRNA合成酵素全体にわたり検討することが好適である。好適には、同一性%は、
図6で定義された通りであってもよい。
図7は、tRNA合成酵素間の配列同一性示す図表である。好適には、同一性%は、
図7で定義された通りであってもよい。
【0102】
触媒領域に焦点を合わせることが有用な場合がある。
図8は、まさにその触媒領域を並べたものである。この目的は、高い同一性%を規定することが可能なtRNAの触媒領域を提供して、同じtRNAチャージ(アミノアシル化)機能、例えば新しい又は非天然アミノ酸の認識をもたらすために移植させた変異を受け入れるのに好適な主鎖骨格を捕捉/同定することである。
【0103】
したがって、好適には、配列同一性を検討する際に、
図8で示されるように触媒領域全体にわたり検討することが好適である。好適には、同一性%は、
図8で定義された通りであってもよい。
図9は、触媒領域間の配列同一性を示す図表である。好適には、同一性%は、
図9で定義された通りであってもよい。
【0104】
変異を代替のtRNA合成酵素主鎖に「移動」又は「移植」することは、tRNA合成酵素主鎖をコードするヌクレオチド配列の部位特異的変異誘発によって達成できる。この技術は当業界で周知である。本質的には、主鎖のpylS配列を選択して(例えば上記で論じられた活性部位アライメントを使用して)、選択された変異を対応する位置/相同な位置に移す(すなわちその中に作製する)。
【0105】
特定のアミノ酸残基が数値アドレスを使用して記述されている場合、明確に他の指定がない限り、その番号付けは、参照配列としてMbPylRS(メタノサルシナ・バーケリのピロリシル−tRNA合成酵素)のアミノ酸配列(すなわち受託番号Q46E77の公共的に利用可能な野生型メタノサルシナ・バーケリのPylS遺伝子によってコードされたものなど)を使用してなされる:
MDKKPLDVLI SATGLWMSRT GTLHKIKHYE VSRSKIYIEM ACGDHLVVNN SRSCRTARAF RHHKYRKTCK RCRVSDEDIN NFLTRSTEGK TSVKVKVVSA PKVKKAMPKS VSRAPKPLEN PVSAKASTDT SRSVPSPAKS TPNSPVPTSA PAPSLTRSQL DRVEALLSPE DKISLNIAKP FRELESELVT RRKNDFQRLY TNDREDYLGK LERDITKFFV DRDFLEIKSP ILIPAEYVER MGINNDTELS KQIFRVDKNL CLRPMLAPTL YNYLRKLDRI LPDPIKIFEV GPCYRKESDG KEHLEEFTMV NFCQMGSGCT RENLESLIKE FLDYLEIDFE IVGDSCMVYG DTLDIMHGDL ELSSAVVGPV PLDREWGIDK PWIGAGFGLE RLLKVMHGFK NIKRASRSES YYNGISTNL
【0106】
これを当業界でよく理解されている通りに使用して、所望の残基の位置が決定されるものとする。これは必ずしも厳密な計数作業とは限らず、すなわち状況又はアライメントに注意を払う必要がある。例えば、所望のタンパク質がわずかに異なる長さを有する場合、(例えば)L266に対応するその配列中の正しい残基の位置決定は、単に所望の配列の266番目の残基を使用するのではなく、その配列を並べてそれと等価な又はそれに対応する残基を選ぶことを必要とする場合がある。これは十分に、熟練した読者の技術的範囲内である。
【0107】
本明細書で使用される変異の表記法は、当業界において標準的なものである。例えばL266Mは、野生型の配列の266位におけるLに相当するアミノ酸がMで置き換えられていることを意味する。
【0108】
以下、典型的なM.バーケリ及びM.マゼイ配列を参照しながら代替のtRNA主鎖間の変異の移植を例示するが、他の主鎖への移植又は他の主鎖からの移植にも同じ原理が等しく適用される。
【0109】
例えばMb AcKRSは、AcKを取り込むための改変された合成酵素である。
親のタンパク質/主鎖:M.バーケリPylS
変異:L266V、L270I、Y271F、L274A、C317F
MbPCKRS:PCKを取り込むように加工された合成酵素
親のタンパク質/主鎖:M.バーケリPylS
変異:M241F、A267S、Y271C、L274M
【0110】
同じ基質特異性を有する合成酵素は、これらの変異をM.マゼイPylSに移植することにより得ることができる。2つの合成酵素の配列相同性は、
図10で見ることができる。したがって、Mb主鎖からMmのtRNA主鎖に変異を移植することによって、以下の合成酵素:
M.マゼイPylSに変異L301V、L305I、Y306F、L309A、C348Fを導入するMmのAcKRS、及び
M.マゼイPylSに変異M276F、A302S、Y306C、L309Mを導入するMmのPCKRS
の生成が可能である。
【0111】
これらの典型的な変異が移植された合成酵素の全長配列を以下に示す。
【0112】
>Mb_PylS/1〜419
MDKKPLDVLISATGLWMSRTGTLHKIKHHEVSRSKIYIEMACGDHLVVNNSRSCRTARAFRHHKYRKTCKRCRVSDEDINNFLTRSTESKNSVKVRVVSAPKVKKAMPKSVSRAPKPLENSVSAKASTNTSRSVPSPAKSTPNSSVPASAPAPSLTRSQLDRVEALLSPEDKISLNMAKPFRELEPELVTRRKNDFQRLYTNDREDYLGKLERDITKFFVDRGFLEIKSPILIPAEYVERMGINNDTELSKQIFRVDKNLCLRPMLAPTLYNYLRKLDRILPGPIKIFEVGPCYRKESDGKEHLEEFTMVNFCQMGSGCTRENLEALIKEFLDYLEIDFEIVGDSCMVYGDTLDIMHGDLELSSAVVGPVSLDREWGIDKPWIGAGFGLERLLKVMHGFKNIKRASRSESYYNGISTNL
>Mb_AcKRS/1〜419
MDKKPLDVLISATGLWMSRTGTLHKIKHHEVSRSKIYIEMACGDHLVVNNSRSCRTARAFRHHKYRKTCKRCRVSGEDINNFLTRSTESKNSVKVRVVSAPKVKKAMPKSVSRAPKPLENSVSAKASTNTSRSVPSPAKSTPNSSVPASAPAPSLTRSQLDRVEALLSPEDKISLNMAKPFRELEPELVTRRKNDFQRLYTNDREDYLGKLERDITKFFVDRGFLEIKSPILIPAEYVERMGINNDTELSKQIFRVDKNLCLRPMVAPTIFNYARKLDRILPGPIKIFEVGPCYRKESDGKEHLEEFTMVNFFQMGSGCTRENLEALIKEFLDYLEIDFEIVGDSCMVYGDTLDIMHGDLELSSAVVGPVSLDREWGIDKPWIGAGFGLERLLKVMHGFKNIKRASRSESYYNGISTNL
>Mb_PCKRS/1〜419
MDKKPLDVLISATGLWMSRTGTLHKIKHHEVSRSKIYIEMACGDHLVVNNSRSCRTARAFRHHKYRKTCKRCRVSDEDINNFLTRSTESKNSVKVRVVSAPKVKKAMPKSVSRAPKPLENSVSAKASTNTSRSVPSPAKSTPNSSVPASAPAPSLTRSQLDRVEALLSPEDKISLNMAKPFRELEPELVTRRKNDFQRLYTNDREDYLGKLERDITKFFVDRGFLEIKSPILIPAEYVERFGINNDTELSKQIFRVDKNLCLRPMLSPTLCNYMRKLDRILPGPIKIFEVGPCYRKESDGKEHLEEFTMVNFCQMGSGCTRENLEALIKEFLDYLEIDFEIVGDSCMVYGDTLDIMHGDLELSSAVVGPVSLDREWGIDKPWIGAGFGLERLLKVMHGFKNIKRASRSESYYNGISTNL
>Mm_PylS/1〜454
MDKKPLNTLISATGLWMSRTGTIHKIKHHEVSRSKIYIEMACGDHLVVNNSRSSRTARALRHHKYRKTCKRCRVSDEDLNKFLTKANEDQTSVKVKVVSAPTRTKKAMPKSVARAPKPLENTEAAQAQPSGSKFSPAIPVSTQESVSVPASVSTSISSISTGATASALVKGNTNPITSMSAPVQASAPALTKSQTDRLEVLLNPKDEISLNSGKPFRELESELLSRRKKDLQQIYAEERENYLGKLEREITRFFVDRGFLEIKSPILIPLEYIERMGIDNDTELSKQIFRVDKNFCLRPMLAPNLYNYLRKLDRALPDPIKIFEIGPCYRKESDGKEHLEEFTMLNFCQMGSGCTRENLESIITDFLNHLGIDFKIVGDSCMVYGDTLDVMHGDLELSSAVVGPIPLDREWGIDKPWIGAGFGLERLLKVKHDFKNIKRAARSESYYNGISTNL
>Mm_AcKRS/1〜454
MDKKPLNTLISATGLWMSRTGTIHKIKHHEVSRSKIYIEMACGDHLVVNNSRSSRTARALRHHKYRKTCKRCRVSDEDLNKFLTKANEDQTSVKVKVVSAPTRTKKAMPKSVARAPKPLENTEAAQAQPSGSKFSPAIPVSTQESVSVPASVSTSISSISTGATASALVKGNTNPITSMSAPVQASAPALTKSQTDRLEVLLNPKDEISLNSGKPFRELESELLSRRKKDLQQIYAEERENYLGKLEREITRFFVDRGFLEIKSPILIPLEYIERMGIDNDTELSKQIFRVDKNFCLRPMVAPNIFNYARKLDRALPDPIKIFEIGPCYRKESDGKEHLEEFTMLNFFQMGSGCTRENLESIITDFLNHLGIDFKIVGDSCMVYGDTLDVMHGDLELSSAVVGPIPLDREWGIDKPWIGAGFGLERLLKVKHDFKNIKRAARSESYYNGISTNL
>Mm_PCKRS/1〜454
MDKKPLNTLISATGLWMSRTGTIHKIKHHEVSRSKIYIEMACGDHLVVNNSRSSRTARALRHHKYRKTCKRCRVSDEDLNKFLTKANEDQTSVKVKVVSAPTRTKKAMPKSVARAPKPLENTEAAQAQPSGSKFSPAIPVSTQESVSVPASVSTSISSISTGATASALVKGNTNPITSMSAPVQASAPALTKSQTDRLEVLLNPKDEISLNSGKPFRELESELLSRRKKDLQQIYAEERENYLGKLEREITRFFVDRGFLEIKSPILIPLEYIERFGIDNDTELSKQIFRVDKNFCLRPMLSPNLCNYMRKLDRALPDPIKIFEIGPCYRKESDGKEHLEEFTMLNFCQMGSGCTRENLESIITDFLNHLGIDFKIVGDSCMVYGDTLDVMHGDLELSSAVVGPIPLDREWGIDKPWIGAGFGLERLLKVKHDFKNIKRAARSESYYNGISTNL
【0113】
同じ原理が他の変異及び/又は他の主鎖にも等しく適用される。
【0114】
望ましい機能/基質特異性が保存されていることを確認するために、この方式で生成された移植されたポリペプチドをテストすることが有利であると予想される。
【0115】
上述した方法のための所望のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを複製可能な組換えベクターに取り込むことができる。ベクターを使用すれば、適合する宿主細胞中で核酸を複製できる。したがって、さらなる実施形態において、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを複製可能なベクターに導入して、ベクターを適合する宿主細胞に導入して、ベクターの複製を引き起こす条件下で宿主細胞を増殖させることによって本発明のポリヌクレオチドを作製する方法を提供する。宿主細胞からベクターを回収してもよい。好適な宿主細胞としては、例えば大腸菌などの細菌が挙げられる。
【0116】
好ましくは、ベクター中の本発明のポリヌクレオチドは、宿主細胞によりコード配列を発現させることができる制御配列に機能するように結合しており、すなわちベクターは発現ベクターである。用語「機能するように結合する」とは、記載されている構成要素が、それらの意図した方式でそれらを機能させる関係にあることを意味する。コード配列に「機能するように結合した」調節配列は、制御配列に適合する条件下でコード配列の発現が達成されるような方式でライゲーションされる。
【0117】
本発明のベクターを、記載されているような好適な宿主細胞に形質転換又はトランスフェクトして、本発明のタンパク質を発現させてもよい。この過程は、タンパク質をコードするコード配列のベクターによる発現をもたらす条件下で上述したような発現ベクターで形質転換した宿主細胞を培養して、任意選択で発現されたタンパク質を回収することを含んでいてもよい。
【0118】
ベクターは、例えば、複製起点、任意選択で前記ポリヌクレオチドの発現のためのプロモーター、及び任意選択でプロモーターのレギュレーターを備えたプラスミド又はウイルスベクターであってもよい。ベクターは、1つ又は2以上の選択マーカー遺伝子、例えば細菌プラスミドの場合にはアンピシリン耐性遺伝子を含有していてもよい。ベクターは、例えば、宿主細胞をトランスフェクト又は形質転換するのに使用できる。
【0119】
本発明のタンパク質をコードする配列に機能するように結合した制御配列としては、プロモーター/エンハンサー、及び他の発現調節シグナルが挙げられる。これらの制御配列は、発現ベクターがそこで使用されるように設計されている宿主細胞に適合するように選択されてもよい。プロモーターという用語は当業界で周知であり、サイズ及び複雑度が最小のプロモーターから上流の要素及びエンハンサーなどのプロモーターまで様々な核酸領域を包含する。
【0120】
本発明の他の態様は、例えばインビトロにおいて、最適なタンパク質に、好適には真核細胞中に遺伝学的に且つ部位特異的にBCN含有アミノ酸(複数可)を取り込む方法などの方法である。前記方法による遺伝学的取り込みの利点の1つは、BCNアミノ酸を含むタンパク質を形成してからそれらを細胞に送達する必要性をなくすことであって、これはなぜなら、この実施形態では、BCNアミノ酸を含むタンパク質を標的細胞中で直接合成できるためである。本方法は、以下のステップ:
i)タンパク質をコードするヌクレオチド配列中の望ましい部位において、アンバーコドンなどの直交性コドンを導入するか、又は特定のコドンを、例えばアンバーコドンなどの直交性コドンで置き換えるステップ、
ii)細胞中に、例えばピロリシル(pyrollysyl)−tRNA合成酵素/tRNA対などの直交性tRNA合成酵素/tRNA対の発現系を導入するステップ、
iii)本発明に係るBCN含有アミノ酸を含む培地中で細胞を増殖させるステップ
を含む。
【0121】
ステップ(i)は、タンパク質の遺伝子配列中の望ましい部位において、特定のコドンを例えばアンバーコドンなどの直交性コドンで置き換えることを必然的に伴う。これは、単に例えばプラスミドなどのタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むコンストラクトを導入することだけで達成でき、その場合、BCN含有アミノ酸が導入される/置き換えられることが望ましい部位は、例えばアンバーコドンなどの直交性コドンが含まれるように変更される。これは十分に当業者の能力の範囲内であり、このようなものの例を以下に示す。
【0122】
ステップ(ii)は、望ましい位置(例えばアンバーコドン)にBCN含有アミノ酸を特異的に取り込むための直交性発現系を必要とする。したがって、例えば直交性ピロリシル−tRNA合成酵素などの特異的な直交性tRNA合成酵素と、それに対応する、BCN含有アミノ酸で前記tRNAを一緒にチャージできる特異的な直交性tRNA対とが必要である。これらの例を本明細書で示す。
【0123】
タンパク質の発現及び精製
本発明のポリヌクレオチドを含む宿主細胞を使用して、本発明のタンパク質を発現させることができる。本発明のタンパク質の発現をもたらす好適な条件下で宿主細胞を培養してもよい。本発明のタンパク質の発現は、本発明のタンパク質が継続的に生成されるように構成的であってもよいし、又は発現を開始させるための刺激を必要とする誘導型であってもよい。誘導型発現の場合、例えば、例えばデキサメタゾン又はIPTGなどの誘導物質を培地に添加することによって、必要に応じてタンパク質生成を開始させることができる。
【0124】
本発明のタンパク質は、例えば酵素、化学的及び/又は浸透圧溶解、並びに物理的な破壊などの当業界で公知の様々な技術によって宿主細胞から抽出が可能である。
【0125】
本発明のタンパク質は、例えば分取用クロマトグラフィー、親和性精製又は他のあらゆる好適な技術などの当業界で公知の標準的な技術によって精製が可能である。
【0126】
定義
用語「含む」(comprises、comprise、comprising)は、当業界におけるその通常の意味を有し、すなわち記載された特色又は特色の群が包含されるが、この用語は、それ以外の記載された特色又は特色の群のいずれかが存在することを排除しないと理解されるものとする。
【実施例7】
【0139】
哺乳動物細胞への適用
哺乳動物細胞中でのアミノ酸1及び2の取り込みを実証するために、本発明者らは、哺乳動物用に最適化したMbPylRSへの1又は2の取り込みを可能にする変異を移植することによって、BCNRS及びTCORSの哺乳動物用に最適化したバージョンを作製した。ウェスタンブロットによって、本発明者らは、BCNRS/tRNA
CUA対又はTCORS/tRNA
CUAを使用して、1及び2の両方を、哺乳動物細胞中のタンパク質に高効率で遺伝学的にコードできることを実証した(
図5a)。
【0140】
迅速なBCN−テトラジンのライゲーションが、哺乳動物細胞上のタンパク質を部位特異的に標識付けることに関して利点をもたらすかどうかを調査するために、本発明者らは、1(0.5mM)の存在下で培養したBCNRS/tRNA
CUA対を含有するHEK−293細胞中で、128位にアンバーコドンを有する上皮増殖因子受容体(EGFR)−緑色蛍光タンパク質(GFP)融合体(EGFR(128TAG)GFP)を発現させた。1の存在下で全長EGFR−1−GFPが生成され、その結果、細胞膜に明るい緑色蛍光が生じた。テトラジン−フルオロフォアコンジュゲートを用いてEGFRの128位(受容体の細胞外ドメイン上にある)で1を標識するために、本発明者らは11(400nM)と共に細胞をインキュベートし、培地を交換し、TAMRA標識から生じた赤色蛍光、加えて全長EGFR−GFPの発現から生じた緑色蛍光を画像化した。TAMRA蛍光は、細胞表面のEGFR−GFP蛍光と共にうまく局在化した。本発明者らが測定できた第一のタイムポイントの2分以内にEGFR−1−GFPを有する細胞の明確な標識付けが観察され、追加のタイムポイントから、標識付けは2分以内に飽和したことが実証され(
図5b及び補足の
図S11〜S14)、テトラジンフルオロフォア12でも類似の結果が得られた。EGFR−GFP融合体に2を取り込むことにより、テトラジンフルオロフォア11を用いた、同様に迅速且つ効率的な標識が起こった(
図5b及び補足の
図S15〜S16)。それに対して、本発明者らが同一な条件下でEGFR−4−GFPを有する細胞の何らかの特異的な標識付けを観察するまで2時間かかった(補足の
図S14)(Lang, K.; Davis, L.; Torres-Kolbus, J.; Chou, C.; Deiters, A.; Chin, J. W. Nature chemistry 2012, 4, 298)。対照実験において、本発明者らによれば、EGFR−5−GFPを有する細胞の標識付けも観察されず、さらにEGFR−GFPを発現していない細胞の非特異的な標識付けも検出されなかった。本発明者らは、BCNRS/tRNA
CUA対及び3の存在下で(EGFR(128TAG)GFP)からのHEK293細胞で発現されるEGFR−GFPの弱いが測定可能な標識付けを観察している(補足の
図S17)。これらの観察は、哺乳動物細胞中の3の一部の異性化と一致し、さらに本発明者らの大腸菌における観察とも一致する。
【0141】
哺乳動物細胞中での細胞内タンパク質の迅速な標識付けを実証するために、本発明者らは、JunB(jun)とmCherryとの間のリンカーにアンバーコドンを有する遺伝子から、転写因子、junをC末端mCherry融合体と共に発現させた。アミノ酸1及びBCNKRS/tRNA
CUA対の存在下で、HEK細胞中でjun−1−mCherryタンパク質を産生したところ、予想通りに、細胞の核に局所化した(
図5c及び補足の
図S18)。細胞透過性のジアセチルフルオレセインテトラジンコンジュゲート(200nM)での標識付けにより、分析された第一のタイムポイントで(15分の標識付け、それに続いて90分の洗浄)mCherryシグナルと共にうまく局在化する緑色蛍光が生じた。同じサンプル中のトランスフェクトされていない細胞中又はjun−5−mCherryを発現する対照細胞中では特異的な標識付けは観察されず、それにより細胞内の標識付けの特異性がさらに確認された。
【0142】
補足の実施例
タンパク質の発現及び精製
sfGFPと取り込まれた非天然アミノ酸1とを共に発現させるために、本発明者らは、大腸菌DH10B細胞を、pBKBCNRS(これは、MbBCNRSをコードする)及びpsfGFP150TAGPylT-His
6(これは、MbtRNA
CUAと、C末端にヘキサヒスチジンタグを有し150位にアンバーコドンを有するsfGFP遺伝子とをコードする)で形質転換した。1mlのS.O.B培地(0.2%グルコースが補充された)中で37℃で1時間、細胞を回収し、その後、アンピシリン(100μg/mL)及びテトラサイクリン(25μg/mL)を含有するLB(100ml)中でインキュベートした(16時間、37℃、230r.p.m)。この一晩培養したもの20mlを使用して、アンピシリン(50μg/mL)及びテトラサイクリン(12μg/mL)が補充された1LのLBを植え付け、37℃でインキュベートした。OD
600=0.4〜0.5で、最終濃度が2mMになるまで1の水溶液を添加した。30分後、最終濃度が0.2%になるまでアラビノースを添加することによりタンパク質発現を誘導した。誘導から3時間後、細胞を遠心分離によって回収し、必要になるまで−80℃で凍結した。細胞を氷上で融解させ、30mlの溶解緩衝液(10mMトリス−HCl、20mMイミダゾール、200mMのNaCl、pH8、1mMフェニルメタンスルホニルフルオリド、1mg/mLリゾチーム、100μg/mLのDNアーゼA、Roche社製のプロテアーゼ阻害剤)に懸濁した。タンパク質を4℃で超音波破砕することによって抽出した。抽出物を遠心分離(20分、21.000g、4℃)によって透明化し、抽出物に600μLのNi
2+−NTAビーズ(Qiagen社製)を添加し、この混合物を撹拌しながら4℃で1時間インキュベートした。ビーズを遠心分離(10分、1000g)によって収集した。ビーズを30mLの洗浄緩衝液(20mMトリス−HCl、30mMイミダゾール、300mMのNaCl、pH8)中に3回再懸濁し、1000gで沈降させた。その後、ビーズを10mLの洗浄緩衝液に再懸濁し、カラムに移した。タンパク質を200mMイミダゾールが補充された3mlの洗浄緩衝液で溶出させ、HiLoad 16/60 Superdex 75 Prep Gradeカラム(GE Life Sciences社製)を、1mL/分の流速(緩衝液:20mMトリス−HCl、100mMのNaCl、2mMのEDTA、pH7.4)で用いたサイズ排除クロマトグラフィーでさらに精製した。タンパク質を含有する画分をプールし、Amicon Ultra-15 3kDa MWCO遠心フィルターデバイス(Millipore社製)で濃縮した。4〜12%のSDS−PAGEによって、精製されたタンパク質を分析し、質量分析によってそれらの質量を確認した(補足の情報を参照)。細胞がpBKTCORS(これは、MbTCORSをコードする)及びpsfGFP150TAGPylT-His
6(これは、MbtRNA
CUAと、C末端にヘキサヒスチジンタグを有し150位にアンバーコドンを有するsfGFP遺伝子とをコードする)で形質転換されることを予測して、同じ方式で、2及び3が取り込まれたsfGFP、sfGFP−2、sfGFP−3を調製した。細胞がpBKPylRS(これは、MbPylRSをコードする)及びpsfGFP150TAGPylT-His
6(これは、MbtRNA
CUAと、C末端にヘキサヒスチジンタグを有し150位にアンバーコドンを有するsfGFP遺伝子をコードする)で形質転換されることを予測して、同じ方式で、4及び5が取り込まれたsfGFP、sfGFP−4、sfGFP−5を調製した。精製されたタンパク質の収量は最大6〜12mg/Lであった。
【0143】
タンパク質の質量分析
6130 Quadrupole分光計を備えたAgilent社製1200LC-MSシステムを使用して、ESI−MSを実行した。溶媒系は、緩衝液AとしてH
2O中の0.2%ギ酸及び緩衝液Bとしてアセトニトリル(MeCN)中の0.2%ギ酸からなっていた。Phenomenex社製Jupiter C4カラム(150×2mm、5μm)を使用してタンパク質へのLC−ESI−MSを実行し、サンプルをポジティブモードで分析し、続いてタンパク質のUV吸光度を214及び280nmで分析した。総タンパク質質量をMS Chemstationソフトウェア(Agilent Technologies社製)内のデコンボリューションにより計算した。
【0144】
加えて、エレクトロスプレーイオン化(ESI、Micromass社製)を用いたLCT飛行時間型質量分析計で総タンパク質質量を決定した。タンパク質を20mMの炭酸水素アンモニウムで再緩衝化し、1%ギ酸を含有するアセトニトリルと1:1で混合した。或いはサンプルをC4 Ziptip(Millipore社製)を用いて調製し、1%ギ酸を含有する50%水性アセトニトリルに直接注入した。サンプルを10μL/分で注入し、ウマ心臓ミオグロビンを使用したポジティブイオンモードで較正を行った。30回分のスキャンを平均して、MassLynxバージョン4.1(Micromass社製)を用いて最大エントロピーのデコンボリューションにより分子量を得た。Protparam(http://us.expasy.org/tools/protparam.html)を使用して野生型タンパク質の理論上の質量を計算し、非天然アミノ酸含有タンパク質の理論上の質量を手動で調整した。
【0145】
テトラジン−BCN又はテトラジン−TCO付加環化によるタンパク質の標識付け
インビトロでの様々なテトラジンを用いた精製されたタンパク質の標識付け
40μLの精製組換えタンパク質(20mMトリス−HCl、100mMのNaCl、2mMのEDTA、pH7.4中に約10μM)にテトラジン化合物6、7、8、又は9のMeOH中の1mM溶液4μLを添加した(約10又は20等量)。室温で30分インキュベートした後、溶液をLC−ESI−MSで分析した(補足の
図S9)。
【0146】
インビトロでのテトラジン及びテトラジン−色素コンジュゲートを用いた精製されたタンパク質の標識付け:
1又は2が部位特異的に取り込まれた精製組換えsfGFP、sfGFP−1又はsfGFP−2(20mMトリス−HCl、100mMのNaCl、2mMのEDTA、pH7.4中の約10μM)を、それぞれ10等量のテトラジン−色素コンジュゲート11、12、13、14、15又は16(DMSO中の2mM)と共にインキュベートした。溶液を室温でインキュベートし、30分〜3時間後にアリコートを取り、SDS PAGEで分析し、C4-ZIPTIPで脱塩した後、ESI−MSで分析した。SDS PAGEゲルをクーマシーで染色するか、又はTyphoonイメージャーでスキャンして、ゲル内蛍光を可視化した(
図4及び補足の
図S8)。
【0147】
インビトロでの時間の関数としてのテトラジン−色素コンジュゲートを用いた精製されたタンパク質の標識付け:
2nmolの精製されたsfGFP−1、sfGFP−2又はsfGFP−4(20mMトリス−HCl、100mMのNaCl、2mMのEDTA、pH7.4中の10μM)を、20nmolのテトラジン−色素コンジュゲート11(DMSO中の2mM溶液10μl)と共にインキュベートした。この溶液から様々なタイムポイント(0、30秒、1分、2分、5分、10分、30分、1時間、2時間、3時間)で8μLのアリコートを採取し、700倍過量のBCN又はTCOで消光させ、液体窒素に沈めた。サンプルを5%のβ−メルカプトエタノールが補充されたNuPAGE LDSサンプル緩衝液と混合し、10分で90℃まで加熱し、4〜12%のSDS pageで分析した。Typhoon Trioホスホイメージャー(GE Life Sciences社製)を用いて蛍光バンドをスキャンすることによって標識されたタンパク質の量を定量した。ラバーバンド(rubber band)でのバックグラウンド減算によるImageQuant(商標)TLソフトウェア(GE Life Sciences社製)を使用してバンドを定量した。ゲル内蛍光から、sfGFP−4の場合、10等量のテトラジン−フルオロフォア11を使用したところ標識付けは1時間以内に完了するが(
図4e)、それに対してsfGFP−1及びsfGFP−2の標識付けは、第一のタイムポイントを測定するためにかかった数秒のうちに完了したことが示される。
【0148】
テトラジン−色素コンジュゲートを用いた大腸菌プロテオーム全体の標識付け:
psfGFP150TAGPylT-His
6及びpBKBCNRS、又はpsfGFP150TAGPylT-His
6及びpBKPylRSのいずれかを含有する大腸菌DH10B細胞を、アンピシリン(pBKBCNRSの場合、100μg/mL)又はカナマイシン(pBKPylRSの場合、50μg/mL)、及びテトラサイクリン(25μg/mL)を含有するLBに植え付けた。細胞を、37℃、250rpmで一晩振盪しながらインキュベートした。一晩培養したもの2mLを使用して、アンピシリン(50μg/mL)及びテトラサイクリン(12μg/mL)、又はカナマイシン(25μg/mL)及びテトラサイクリン(12μg/mL)が補充された100mLのLBに植え付け、37℃でインキュベートした。OD
600=0.5で、3mlの培養物のアリコートを取り出し、様々な濃度(1mM、2mM、及び5mM)の1及び1mMの5を補充した。37℃で振盪しながら30分インキュベートした後、タンパク質の発現を30μLの20%アラビノースの添加により誘導した。3.5時間発現させた後、1mLの細胞懸濁液を遠心分離(16000g、5分)することによって細胞を収集した。細胞をPBS緩衝液に再懸濁し、再度沈降させ、上清を捨てた。この過程をさらに2回繰り返した。最後に、洗浄した細胞ペレットを100μLのPBSに懸濁し、3μLのテトラジン−色素コンジュゲート11(DMSO中の2mM)と共に室温で30分インキュベートした。未反応のテトラジン−色素を消光させるために200倍過量のBCNを添加した後、細胞を5%のβ−メルカプトエタノールが補充されたNuPAGE LDSサンプル緩衝液100μLに再懸濁し、90℃で10分加熱し、16000gで10分遠心分離した。未精製の細胞溶解産物を4〜12%のSDS−PAGEによって分析し、タンパク質レベルを査定した。ゲルをクーマシー染色するか、又はTyphoonイメージャーでスキャンして、蛍光バンドを可視化した(補足の
図S9及びS10)。ヘキサヒスチジンタグ(Cell Signaling Technology社製、Hisタグを有する27E8マウスmAb、番号2366)に対する抗体を用いてウェスタンブロットを行った。
【0149】
ストップトフローによる低分子物質の付加環化の反応速度定数の決定
ストップトフローデバイスを用いた(Applied Photophysics社製、補足の
図S2及びS3及び補足の表1)経時的な320、300又は280nmのテトラジンのUV吸光度における指数関数的減衰に従って、10倍〜100倍過量のメタノール/水混合物中のBCN又はTCOを用いて擬一次条件下における様々なテトラジンの速度定数kを測定した。各テトラジン(9/1の水/メタノール中の0.1mM)並びにBCN及びTCO(メタノール中の1〜10mM)に応じてストック溶液を調製した。測定前に、ストップトフローデバイスのシリンジ中でテトラジンとBCN及びTCO溶液の両方を温度調節した。ストップトフロー器具で等量の調製されたストック溶液を混合することにより、0.05mMのテトラジンの最終濃度と、10〜100等量のBCN又はTCOに相当する0.5〜5mMのBCN又はTCOの最終濃度を得た。以下の機器パラメーター:波長、6及び7には320nm;8には300nm、9には280nm;1秒当たり500〜5000のデータポイント)を使用してスペクトルを記録した。全ての測定は25℃で行われた。BCN−テトラジン反応については単一指数方程式にデータをフィッティングし、TCO−テトラジン反応については2つの単一指数方程式の合計にデータをフィッティングした。各測定を3〜5回実行し、観察された速度k’の平均(TCO−テトラジン反応の場合、第一の指数方程式)をBCN又はTCOの濃度に対してプロットして、プロットの傾きから速度定数kを得た。4種全てのテトラジンに関して完全な測定のセットを二連で行い、補足の表1に値の平均を報告する。全てのデータの加工をKaleidagraphソフトウェア(Synergy Software社製、Reading、UK)を使用して行った。
【0150】
哺乳動物細胞用途のためのクローニング
プラスミドpMmPylS-mCherry-TAG-EGFP-HA(Gautier, A. et al. Genetically encoded photocontrol of protein localization in mammalian cells. J Am Chem Soc 132, 4086-8 (2010)、Lang, K. et al. Genetically encoded norbornene directs site-specific cellular protein labelling via a rapid bioorthogonal reaction. Nature chemistry 4, 298-304 (2012))及びpMmPylRS-EGFR-(128TAG)-GFP-HA(Lang, K. et al. Genetically encoded norbornene directs site-specific cellular protein labelling via a rapid bioorthogonal reaction. Nature chemistry 4, 298-304 (2012))を両方とも酵素AflII及びEcoRV(NEB社製)で消化し、野生型MmPylRSを除去した。ミュータント合成酵素MbBCNRS及びMbTCORSの合成遺伝子を、GeneArtによって同じフランキング部位を用いて作製した。また合成MbBCNRS及びMbTCORSもAflII及びEcoRVで消化し、野生型合成酵素(MmPylS)の代わりにクローニングした。迅速ライゲーションキット(Roche社製)を使用して、ベクターpMbBCNRS-mCherry-TAG-EGFP-HA、pMbBCNRS-EGFR(128TAG)-GFP-HA、及びpMbTCORS-EGFR(128TAG)-GFP-HAを作製した。MmPylRSをMbBCNRSに変換することによってpCMV-cJun-TAG-mCherry-MmPylRSプラスミド(Fiona Townsley作製)からpCMV-cJun-TAG-mCherry-MbBCNRSプラスミドを作製した。pMbBCNRS-mCherry-TAG-EGFP-HAプラスミドに関してもこれを実行した。
【0151】
HEK293細胞におけるアミノ酸1、2、及び3の取り込み
ポリリシンでコーティングしたμ−ディッシュ(Ibidi社製)上でHEK293細胞を平板培養した。10%ウシ胎児血清(FBS)ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中でほぼコンフルエンスに増殖させた後、リポフェクトアミン2000(Life Technologies社製)を使用して、2μgのpMbBCNRS-EGFR(128TAG)-GFP-HA及び2μgのp4CMVE-U6-PylT(これは、野生型ピロリシルtRNAの4つのコピーを含有する)(Gautier, A. et al. Genetically encoded photocontrol of protein localization in mammalian cells. J Am Chem Soc 132, 4086-8 (2010)、Lang, K. et al. Genetically encoded norbornene directs site-specific cellular protein labelling via a rapid bioorthogonal reaction. Nature chemistry 4, 298-304 (2012))を細胞にトランスフェクトした。トランスフェクト後、10%FBS DMEM中、37℃及び5%CO
2で細胞をそのまま一晩増殖させた。ウェスタンブロット用に、細胞を24ウェルプレートで平板培養し、ほぼ集密状態に増殖させた。リポフェクトアミン2000を使用して、pMbBCNRS-mCherry-TAG-EGFP-HA、又はpMmPylRS-mCherry-TAG-EGFP-HA、又はpTCORS-mCherry-TAG-EGFP-HAコンストラクト、及びp4CMVE-U6-PylTプラスミドを細胞にトランスフェクトした。0.5mMの1、1mMの2又は1mMの5の存在下又は非存在下で16時間増殖させた後、RIPA緩衝液(Sigma社製)を使用して細胞を氷上で溶解させた。溶解産物を沈降させ、上清を4×LDSサンプル緩衝液(Life technologies社製)に添加した。サンプルをSDS−PAGEで泳動し、ニトロセルロースメンブレンに移し、一次ラット抗HA(Roche社製)及びマウス抗FLAG(Ab frontier社製)を使用してブロットし、ここで二次抗体はそれぞれ抗ラット(Santa Cruz Biotech社製)及び抗マウス(Cell Signaling社製)であった。
【0152】
哺乳動物細胞表面タンパク質の標識付け
ポリリシンでコーティングしたμ−ディッシュ上で細胞を平板培養し、ほぼコンフルエンスに増殖させた後、細胞にそれぞれ2μgのpMbBCNRS-EGFR(128TAG)-GFP-HA又はpMbTCORS-EGFR(128TAG)-GFP-HA、及びp4CMVE-U6-PylTをトランスフェクトした。0.5mMの1(0.5%DMSO)、1mMの2又は1mMの3の存在下で、37℃及び5%CO
2で、0.1%FBSを含むDMEM中で8〜16時間増殖させた後、細胞を0.1%FBSを含むDMEM中で洗浄し、次いで0.1%FBSを含むDMEM中で一晩インキュベートした。次の日、細胞をもう一度洗浄し、その後400nMのテトラジン(terazine)−色素コンジュゲート(conjuagate)11を2〜60分で添加した。培地を2回交換し、次いで細胞を画像化した。Zeiss社製780レーザースキャニング顕微鏡で、Planアポクロマート63倍油浸対物レンズ;スキャンの拡大率:1×又は2×;スキャン解像度:512×512;スキャン速度:9;平均化:16×によりイメージングを実行した。EGFPを488nmで励起させ、493〜554nmで画像化し、TAMRAを励起させ、それぞれ561nm及び566〜685nmで検出した。
【0153】
対照実験を同様にして行ったが、トランスフェクトは、pMbBCNRS-EGFR(128TAG)-GFP-HAの代わりにpMmPylRS-EGFR(128TAG)-GFP-HAで行われた。1mMの5の存在下で、さらに0.5%DMSOの非存在又は存在下で(アミノ酸1の場合と同様に)細胞を一晩増殖させた。
【0154】
哺乳動物の核タンパク質の標識付け
ポリリシンでコーティングしたμ−ディッシュ上で細胞を平板培養し、ほぼコンフルエンスに増殖させた後、細胞にそれぞれ2μgのpCMV-cJun-TAG-mCherry及びp4CMVE-U6-PylTをトランスフェクトした。0.5mMの1(0.5%DMSO)の存在下で、37℃及び5%CO
2で、0.1%FBSを含むDMEM中でおよそ16時間増殖させた後、細胞を0.1%FBSを含むDMEMで洗浄し、次いで0.1%FBSを含むDMEM中で一晩インキュベートした。次の日、2時間かけて2回の培地交換とそれに続く30分インキュベートを行うことにより細胞を繰り返し洗浄した。200nMテトラジン−色素コンジュゲート11を15分で添加し、次いで細胞を再度、90分かけて繰り返し洗浄した。細胞表面の標識付けに関してイメージングを実行した。
【0155】
化学合成:
一般的な方法:
Bruker Ultrashield(商標)400 Plus分光計(
1H:400MHz、
13C:101MHz、
31P:162MHz)でNMRスペクトルを記録した。化学シフト(δ)はppmで報告され、
1H−NMRスペクトルについてはCDCl
3(7.26ppm)、d
6−DMSO(2.50ppm)、
13C−NMRスペクトルについてはCDCl
3(77.0ppm)、d
6−DMSO(39.5ppm)の残留した非重水素化溶媒ピークが記載される。
13C−及び
31P−NMR共鳴は、プロトンデカップリングされている。結合定数(J)は最近接の0.1Hzに対して測定され、観察された通りに示される。分裂パターンは以下のように示される:s、一重項;d、二重項;t、三重項;q、四重項;quin、五重項;sext、六重項;m、多重項。シリカ60F-254プレートで分析薄層クロマトグラフィー(TLC)を実行した。紫外線(254nm)及び/又は過マンガン酸カリウム染色でスポットを可視化した。シリカゲル60(230〜400メッシュ又は70〜230メッシュ)でフラッシュカラムクロマトグラフィーを実行した。6130 Quadrupole分光計を備えたAgilent社製1200LC-MSシステムを使用して、ESI−MSを実行した。溶媒系は、緩衝液AとしてH
2O中の0.2%ギ酸及び緩衝液Bとしてアセトニトリル(MeCN)中の0.2%ギ酸からなっていた。Phenomenex社製Jupiter C18カラム(150×2mm、5μm)を使用して低分子物質のLC−MSを実行した。可変波長を使用し、ポジティブ及びネガティブイオンモードでMS獲得を実行した。Varian社製PrepStar/ProStar HPLCシステムを使用して分取用HPLC精製を実行し、Phenomenex社製C18カラム(250×30mm、5μm)から自動的に画分を収集した。191nmでのUV吸光度によって化合物を同定した。全ての溶媒及び化学試薬を商業的な供給元から購入し、さらなる精製を行わないで使用した。ビシクロ[6.1.0]ノナ−4−イン−9−イルメタノール(BCN、約4/1のエキソ/エンド混合物)をオランダのSynAffix社から購入した。特に他の指定がない限りアルゴンの不活性雰囲気下で、オーブンで乾燥させたガラス製品中で非水性反応を実行した。実験で使用した全ての水を蒸留した。ブラインは、塩化ナトリウムの飽和水溶液を指す。
【0156】
【化2】
【0157】
文献の手法に従って(Dommerholt, J. et al. Readily Accessible Bicyclononynes for Bioorthogonal Labeling and Three-Dimensional Imaging of Living Cells. Angewandte Chemie-International Edition 49, 9422-9425 (2010))、エキソ−ビシクロ[6.1.0]ノナ−4−イン−9−イルメタノール(エキソ−BCN、S18)を合成した。
【0158】
MeCN(10mL)中のエキソ−BCN−OH S18(538mg、3.58mmol)及びトリエチルアミン(2.0mL、14.3mmol)の撹拌溶液に、N,N’−ジスクシンイミジルカーボネート(1.38g、5.37mmol)を0℃で添加した。この溶液を室温に温め、3時間撹拌し、減圧下で濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィーの短いパッドを通過させて粗油を精製し(ヘキサン中の60%EtOAcで溶出)、エキソ−BCN−スクシンイミジルカーボネートを得て、これをそれ以上精製しないで使用した。DMF(10mL)中のFmoc−Lys−OH.HCl(2.61g、6.45mmol)及びDIPEA(1.49mL、8.58mmol)の撹拌溶液に、DMF(4mL)中のエキソ−BCN−OSu(1.25g、4.29mmol)をカニューレを介して添加した。この溶液を室温で14時間撹拌し、Et
2O(100mL)で希釈し、H
2O(3×100mL)で洗浄した。有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィーによって粗油を精製し(DCM(0.1%AcOH)中の0〜5%MeOH)、エキソ−Fmoc−BCNK−OH S19を白色の固体として得た(2段階で1.65g、85%)。δ
H(400MHz,d
6−DMSO)12.67〜12.31(1H,br s)、7.90(2H,d,J 7.5)、7.73(2H,d,J 7.4)、7.63(1H,d,J 7.8)、7.42(2H,t,J 7.4)、7.34(2H,t,J 7.4)、7.10(1H,t,J 5.7)、4.31〜4.19(3H,m)、3.95〜3.87(1H,m)、3.84(1H,d,J 6.4)、3.45〜3.25(br s,1H)、3.01〜2.91(2H,m)、2.52〜2.50(1H,m)、2.33〜2.15(4H,m)、2.11〜2.02(2H,m)、1.75〜1.54(2H,m)、1.46〜1.23(6H,m)、0.70〜0.58(2H,m);δ
C(101MHz,d
6−DMSO)174.4、156.9、156.6、144.30、144.27、141.2、128.1、127.5、125.7、120.6、99.4、68.1、66.1、54.3、47.1、33.3、30.9、29.5、23.9、23.4、22.7、21.3;LRMS(ESI
+):m/z 543(100%[M−H]
−)。
【0159】
DCM(10mL)中のエキソ−Fmoc−BCNK−OH S19(174mg、0.32mmol)の撹拌溶液に、ポリマーに結合したピペラジン(1.28g、1.28mmol、200〜400メッシュ、標識付けの程度:ローディング1g当たり1.0〜2.0mmol、2%がジビニルベンゼンで架橋された)を添加した。得られた混合物を室温で4時間撹拌し、濾過し、この試薬をCHCl
3/MeOH(3:1、3×50mL)で洗浄した。濾液を減圧下で蒸発させ、H
2O(100mL)中に溶解させ、EtOAc(3×100mL)で洗浄した。水相を減圧下で蒸発させ、凍結乾燥させて、エキソ−H−BCNK−OH1を白色の固体として得た(101mg、98%)。それに続く哺乳動物細胞を使用した全ての標識付け実験について、エキソ−H−BCNK−OH1を逆相HPLC(0:1のH
2O:MeCNから9:1のH
2O:MeCNの勾配)によってさらに精製した。HPLC(0:1 H
2O:MeCN〜9:1 H
2O:MeCN勾配)。δ
H(400MHz,d
6−DMSO/D
2O(1:1))4.14〜3.76(m,3H)、3.56〜3.29(m,2H)、3.18〜2.81(m,3H)、2.31〜1.98(m,5H)、1.71〜1.52(m,4H)、1.51〜1.29(m,4H)、1.29〜1.08(m,3H)、0.95〜0.66(m,2H);δ
C(101MHz,d
6−DMSO/D
2O(1:1))169.4、165.9、101.3、76.0、55.8、31.8、30.1、29.9、25.2、23.2、22.1、21.0、18.7;LRMS(ESI
+):m/z 323(100%[M+H]
+)。文献の手法に従って(Dommerholt, J. et al. Readily Accessible Bicyclononynes for Bioorthogonal Labeling and Three-Dimensional Imaging of Living Cells. Angewandte Chemie-International Edition 49, 9422-9425 (2010))、エンド−ビシクロ[6.1.0]ノナ−4−イン−9−イルメタノール(エンド−BCN)を合成し、1と類似の様式で対応するアミノ酸について詳述した。
【0160】
【化3】
【0161】
磁気式の撹拌棒を備えたガラス製バイアル(Biotage(登録商標)Ltd.)に化合物6(39.2mg、0.096mmol)を入れ、空気を通さないアルミニウム/ゴム製の隔壁で密封した。バイアルの内容物を真空中で乾燥させ、アルゴンガスでパージした(3回)。バイアルにMeOH(1ml)を添加し、続いてエキソ−ビシクロ[6.1.0]ノナ−4−イン−9−イルメタノール(エキソ−BCN、S18)(1mlのMeOH中に20.2mg、0.1344mmol)の溶液を添加した。この混合物を室温で撹拌した。2分以内に、この反応混合物は脱色し、内容物をさらに1分撹拌した。次いでこの混合物を減圧下で蒸発させ、シリカゲルクロマトグラフィー(DCM中の5%MeOH)で精製し、ピリダジンS20をかすかに黄色の半固体として得た(49mg、96%)。δ
H(400MHz,CDCl
3)9.16(1H,br s)、8.77〜8.71(1H,m)、8.67(1H,見かけd,J 2.1)、8.01(1H,br s)、7.97(1H,d,J 7.8)、7.89(1H,ddd,J 7.8,7.6,1.7)、7.75(1H,見かけd,J 8.4)、7.40(1H,ddd,J 7.4,4.9,1.1)、5.93(1H,br s)、4.02(2H,d,J 5.0)、3.49〜3.31(2H,m)、3.12〜2.88(4H,m)、2.68〜2.49(2H,m)、1.88〜1.60(1H,br s)、1.60〜1.50(1H,m)、1.48(9H,s)、0.92〜0.72(4H,m);δ
C(101MHz,CDCl
3)169.0、159.2、159.0、156.9、156.8、155.7、152.1、148.9、143.0、140.9、137.0、134.4、128.0、125.1、124.9、123.5、80.7、66.4、45.7、30.7、29.9、29.6、29.5、28.5(3xCH
3(
tBu))、28.0、27.8、21.7;LRMS(ESI
+):m/z 531(100%[M+H]
+)。
【0162】
【化4】
【0163】
H
2O(10mL)中のNaOH(1.50g、37.50mmol)及びジ−tert−ブチルジカーボネート(3.00g、13.75mmol)の撹拌溶液に、H
2O(10mL)中の市販の4−(アミノメチル)ベンゾニトリル塩酸塩S21(2.11g、12.50mmol)を室温で添加した。この混合物を16時間撹拌し、その後、白色の沈殿が形成された。この混合物を濾過し、H
2O(50mL)で洗浄し、得られた固体を真空中で乾燥させて、tert−ブチルカルバメートS22を白色の固体として得た(2.78g、96%)。δ
H(400MHz,CDCl
3)7.62(2H,d,J 8.2)、7.39(2H,d,J 8.2)、5.00(1H,br s)、4.37(2H,d,J 5.8)、1.46(9H,s);δ
C(101MHz,CDCl
3)155.9、144.7、132.4、127.8、118.9、111.1、80.1、44.2、28.4;LRMS(ESI
+):m/z 233(100%[M+H]
+)。
【0164】
文献の手法の改変法によりテトラジン10を合成した(Yang, J., Karver, M.R., Li, W., Sahu, S. & Devaraj, N.K. Metal-catalyzed one-pot synthesis of tetrazines directly from aliphatic nitriles and hydrazine. Angewandte Chemie 51, 5222-5 (2012))。1,4−ジオキサン(0.5mL)中のtert−ブチルカルバメートS22(98mg、0.44mmol)、酢酸ホルムアミジン(439mg、4.22mmol)、及びZn(OTf)
2(77mg、0.22mmol)の撹拌懸濁液に、ヒドラジン一水和物(1.024mL、21.10mmol)を室温で添加した。この反応液を60℃に加熱し、16時間撹拌した。この反応液を室温に冷却し、EtOAc(10mL)で希釈した。この反応液を1MのHCl(10mL)で洗浄し、水相をEtOAc(2×5mL)で抽出した。有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で蒸発させた。得られた未精製の残留物をDCMと酢酸との混合物(1:1、5mL)中に溶解させ、NaNO
2(584mg、8.44mmol)を15分かけてゆっくり添加したところ、その間に反応液が明るい赤色になった。活発な空気パージで亜硝酸ガス(nitrous fumes)を追い出し、次いでこの反応液をDCM(25mL)で希釈した。この反応混合物を、炭酸水素ナトリウム(飽和水溶液、25mL)で洗浄し、水相をDCM(2×10mL)で抽出した。有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で蒸発させた。得られた残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中の20%EtOAc)で精製し、テトラジン10をピンク色の固体として得た(85mg、70%)。δ
H(400MHz,CDCl
3)10.21(1H,s)、8.60(2H,d,J 8.2)、7.53(2H,d,J 8.2)、4.97(1H,br s)、4.45(2H,d,J 6.0)、1.49(9H,s);δ
C(101MHz,CDCl
3)149.4、142.6、141.1、132.1、120.8、119.2、118.8、51.8、39.0;LRMS(ESI
+):m/z 188(100%[(M−Boc)+2H]
+)。
【0165】
DCM(4mL)中のテトラジン10(75mg、0.26mmol)の撹拌溶液に、ジオキサン(2mL、8.0mmol)中の4MのHClを添加した。1時間後、この反応を完了させ、溶媒を減圧下で除去して、第一アミンの塩酸塩S23をピンク色の固体として得た(61mg、100%)。δ
H(400MHz,d
6−DMSO)10.64(1H,s)、8.54(2H,d,J 8.4)、7.79(2H,d,J 8.4)、4.18(2H,d,J 5.5);δ
C(101MHz,d
6−DMSO)165.2、158.2、138.9、131.9、129.8、127.9、41.8;LRMS(ESI
+):m/z 188(100%[M+H]
+)。
【0166】
E−5−ヒドロキシシクロオクテン及びE−エキソ−ビシクロ[6.1.0]ノナ−4−エン−9−イルメタノールを、これまでに述べられた光化学的な手法(Taylor, M.T., Blackman, M.L., Dmitrenko, O. & Fox, J.M. Design and synthesis of highly reactive dienophiles for the tetrazine-trans-cyclooctene ligation. Journal of the American Chemical Society 133, 9646-9 (2011)、Royzen, M., Yap, G.P. & Fox, J.M. A photochemical synthesis of functionalized trans-cyclooctenes driven by metal complexation. Journal of the American Chemical Society 130, 3760-1 (2008))、又は以下で記載されている非光化学的なプロトコールのいずれかによって作製した。
【0167】
【化5】
【0168】
DCM(300mL)中の市販の9−オキサビシクロ[6.1.0]ノナ−4−エンS24(10g、80.53mmol)の撹拌溶液に、ジイソブチルアルミニウムヒドリド(シクロヘキサン中の1.0M溶液、89mL、89mmol)を0℃で一滴ずつ添加した。この溶液を0℃で30分撹拌し、室温に温め、16時間撹拌した。この時間の後、この反応液を0℃に冷却し、プロパン−2−オール(50mL)、続いてHCl(1M水溶液、100mL)をゆっくり添加した。水相をDCM(3×200mL)で抽出した。合わせた有機物をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中の10〜20%EtOAc)で粗生成物を精製し、シクロオクテン−4−オールS25を無色の油として得た(8.42g、83%)。スペクトルデータは文献と合致していた(Zhang, K., Lackey, M.A., Cui, J. & Tew, G.N. Gels based on cyclic polymers. Journal of the American Chemical Society 133, 4140-8 (2011))。
【0169】
【化6】
【0170】
DCM(30mL)中のシクロオクテン−4−オールS25(5.6g、44.0mmol)、イミダゾール(7.5g、0.11mol)、及びDMAP(1結晶)の撹拌溶液に、tert−ブチル(クロロ)ジメチルシラン(13.3g、88.0mmol)を0℃で添加した。この溶液を室温に温め、90分撹拌し、その間に白色の沈殿が形成された。この反応液を0℃に冷却し、DCM(100mL)で希釈し、炭酸水素ナトリウム(飽和水溶液、100mL)を添加した。相を分離させ、水相をDCM(3×100mL)で抽出した。合わせた有機物をブライン(200mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中の10〜20%DCM)で粗生成物を精製して、シリルエーテルS26を無色の油として得た(10.55g、定量)。δ
H(400MHz,CDCl
3)5.71〜5.63(1H,m)、5.60〜5.52(1H,m)、3.80(1H,見かけtd,J 8.6,4.2)、2.34(1H,dtd,J 13.8,8.2,3.8)、2.25〜2.15(1H,m)、2.13〜2.05(1H,m)、2.02〜1.93(1H,m)、1.87〜1.52(5H,m)、1.47〜1.35(1H,m)、0.88(9H,s)、0.04(3H,s)、0.03(3H,s);δ
C(101MHz,CDCl
3)130.4、129.4、73.1、38.0、36.5、26.1、25.8、25.1、22.7、18.4、−3.4;LRMS(ESI
+):m/z 241(11%[M+H]
+)。
【0171】
【化7】
【0172】
DCM(80mL)中のシリルエーテルS26(10.6g、43.9mmol)及び炭酸ナトリウム(7.0g、65.8mmol)の撹拌溶液に、ペルオキシ酢酸(酢酸中の39%、10.3ml、52.7mmol)を0℃で一滴ずつ添加した。この混合物を室温に温め、14時間撹拌した。この反応液を0℃に冷却し、DCM(50mL)で希釈し、チオ硫酸ナトリウム(飽和水溶液、100mL)を添加した。この混合物を室温で10分撹拌し、次いでNaOH(2M水溶液)でpH12まで塩基性化した。相を分離させ、有機相をH
2O(100mL)、ブライン(100mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中の80%〜90%DCM)で粗生成物を精製して、エポキシドS27/S28をジアステレオマーの分離できない混合物として(
1H−NMRにより2.3:1)及び無色の油として(10.2g、91%)得た。主要なジアステレオマー:δ
H(400MHz,CDCl
3)3.90(1H,見かけ六重線,J 4.2)、2.90(2H,ddd,J 16.7,8.3,4.4)、2.21〜2.09(1H,m)、1.85〜1.60(6H,m)、1.50〜1.38(2H,m)、1.34〜1.23(1H,m)、0.88(9H,s)、0.04(3H,s)、0.03(3H,s);δ
C(101MHz,CDCl
3)171.9、55.5、55.4、36.3、34.3、27.7、26.0、25.8、22.6、18.3、−3.4;LRMS(ESI
+):m/z 257(8%[M+H]
+)。
【0173】
【化8】
【0174】
THF(80mL)中のエポキシドS27/S28(7.9g、30.8mmol)及びジフェニルホスフィン(6.43mL、37.0mmol)の撹拌溶液に、n−ブチルリチウム(ヘキサン中の2.5M、14.8mL、37.0mmol)を−78℃で15分かけて一滴ずつ添加した。得られた混合物を−78℃で1時間撹拌し、室温に温め、14時間撹拌した。この反応混合物をTHF(80mL)で希釈し、0℃に冷却した。酢酸(5.54mL、92.4mmol)、続いて過酸化水素(30%水溶液、7.68mL、67.7mmol)を添加した。この反応混合物を室温に温め、4時間撹拌した。チオ硫酸ナトリウム(飽和水溶液、100mL)を添加し、この混合物を10分撹拌した。水相をEtOAc(3×200mL)で抽出した。合わせた有機物をブライン(3×200mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、ホスフィンオキシドS29/S30/S31/S32を4種のジアステレオマーの混合物として得て、これをさらに精製しないで使用した。δ
P(162MHz,CDCl
3)45.2、44.8、44.4、43.8;LRMS(ESI
+):m/z 459(100%[M+H]
+)。
【0175】
【化9】
【0176】
DMF(100mL)中の未精製のヒドロキシルホスフィンオキシドS29/S30/S31/S32の撹拌溶液に、水素化ナトリウム(鉱油中の60%分散液、2.46g、61.5mmol)を0℃で添加した。得られた混合物を室温に温め、スズ箔で包み、2時間撹拌した。この反応液を0℃に冷却し、Et
2O(200mL)で希釈し、H
2O(200mL)を添加した。相を分離させ、合わせた有機物をブライン(2×200mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。未精製の混合物をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中の1〜15%DCM)で精製して、トランス−シクロオクテンS33/S34を、E型にのみ選択性を有するジアステレオマーの分離可能な混合物として、及び無色の油として得た(3段階で2.78g、1.2:1のジアステレオ異性体、38%)。S33:δ
H(400MHz,CDCl
3)5.64(1H,ddd,J 16.0,10.8,3.6)、5.45(1H,ddd,J 15.9,11.1,3.2)、4.01(1H,見かけdd,J 10.2,5.4)、2.41(1H,qd,J 11.5,4.4)、2.26〜2.19(1H,m)、2.09〜1.94(3H,m)、1.92〜1.73(2H,m)、1.71〜1.63(1H,m)、1.54(1H,tdd,J 14.0,4.7,1.1)、1.30〜1.08(1H,m)、0.94(9H,s)、0.03(3H,s)、0.01(3H,s);δ
C(101MHz,CDCl
3)135.9、131.5、67.6、44.0、35.2、34.8、29.7、27.7、26.2、18.4、−4.7、−4.8;LRMS(ESI
+):m/z 241(8%[M+H]
+)。S34:δ
H(400MHz,CDCl
3)5.55(1H,ddd,J 15.9,11.0,3.6)、5.36(1H,ddd,J 16.1,10.8,3.4)、3.42〜3.37(1H,m)、2.36〜2.28(2H,m)、2.22(1H,見かけqd,J 11.2,6.3)、2.02〜1.87(4H,m)、1.73(1H,dd,J 14.9,6.2)、1.67〜1.45(2H,m)、0.87(9H,s)、0.03(6H,s);δ
C(101MHz,CDCl
3)135.5、132.5、78.6、44.9、42.0、34.6、33.0、31.3、26.1、18.3、−4.4、−4.5;LRMS(ESI
+):m/z 241(12%[M+H]
+)。全ての追加の実験については、トランス−シクロオクテンS34が使用されており、その場合、エクアトリアル位はC4−酸素置換基で占有される。
【0177】
【化10】
【0178】
MeCN(5mL)中のシリルエーテルS34(573mg、2.38mmol)の撹拌溶液に、フッ化テトラブチルアンモニウム(THF中の1M溶液、23.8mL、23.8mmol)及びフッ化セシウム(1.08g、7.14mmol)を室温で添加した。得られた混合物をスズ箔で包み、室温で36時間撹拌した。この期間後、この反応液を0℃に冷却し、DCM(100mL)で希釈し、H
2O(100mL)を添加した。相を分離させ、有機相をブライン(2×100mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中の20%EtOAc)で粗生成物を精製して、第二アルコールS35を無色の油として得た(289mg、96%)δ
H(400MHz,CDCl
3)5.60(1H,ddd,J 16.0,10.7,4.2)、5.41(1H,ddd,J 16.0,11.1,3.7)、3.52〜3.45(2H,m)、2.40〜2.25(3H,m)、2.03〜1.90(4H,m)、1.75〜1.53(3H,m)、1.25〜1.18(1H,m);δ
C(101MHz,CDCl
3)135.1、132.8、77.7、44.6、41.1、34.3、32.6、32.1;LRMS(ESI
+):m/z 127(14%[M+H]
+)。
【0179】
【化11】
【0180】
DMF(7.5mL)中のFmoc−Lys−OH.HCl(303mg、0.75mmol)及びDIPEA(0.19g、1.50mmol)の撹拌溶液に、スクシンイミジル(Succimidyl)カーボネートS36(200mg、0.75mmol)を0℃で添加した。この溶液を室温に温め、スズ箔で包み、12時間撹拌した。この期間後、この溶液を減圧下で濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(DCM中の0〜10%MeOH)で精製して、Fmoc−TCOK−OH S37/S38を、依然としてDMF(350mg、81%)を含有する黄色の油として得た。δ
H(400MHz,CDCl
3)7.75〜7.69(2H,m)、7.63〜7.52(2H,m)、7.41〜7.33(2H,m)、7.32〜7.25(2H,m)、5.82〜5.34(3H,m)、5.27(1H,br s)、4.90〜4.50(1H,m)、4.47〜4.01(5H,m)、3.32〜3.30(1H,m)、2.39〜1.08(17H,m);δ
C(100MHz,CDCl
3)174.3、156.3、155.9、143.8、143.6、141.1、135.0、134.8、132.8、132.6、127.5、126.9、125.0、119.8、80.3、66.8、53.4、47.0、41.0、40.4、38.5、34.1、32.5、32.3、32.1、30.8、29.3、22.3;ESI−MS(m/z):C
30H
36N
2O
6Naの[M+Na]+計算値:543.2471、実測値:543.2466。
【0181】
DCM(4mL)中のFmoc−TCOK−OH S37/S38(0.269g、0.517mmol)の撹拌溶液に、ピペリジン(1mL)を添加した。この混合物をスズ箔で包み、室温で30分撹拌した。この反応混合物を減圧下で濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(DCM中の30〜50%MeOH)で粗生成物を精製して、H−TCOK−OH1を象牙色の固体として得た。δ
H(400MHz,d
4−MeOD)5.63〜5.56(1H,m)、5.50〜5.43(1H,m)、4.31〜4.25(1H,m)、3.60〜3.53(1H,m)、3.11〜3.03(2H,m)、2.37〜2.26(3H,m)、2.02〜1.36(13H,m);δ
C(100MHz,d
4−MeOD)174.3、159.0、136.3、133.9、81.8、56.0、42.4、41.4、39.8、35.4、33.7、32.3、32.1、30.9、23.6;ESI−MS(m/z):C
15H
25N
2O
4の[M−H]
−計算値:297.1814、実測値:297.1811。
【0182】
【化12】
【0183】
文献の手法に従ってエキソ−ビシクロ[6.1.0]ノナ−4−エン−9−イルメタノールS18を合成した(Taylor, M.T., Blackman, M.L., Dmitrenko, O. & Fox, J.M. Design and synthesis of highly reactive dienophiles for the tetrazine-trans-cyclooctene ligation. Journal of the American Chemical Society 133, 9646-9 (2011))。
【0184】
【化13】
【0185】
DCM(35ml)中のエキソ−ビシクロ[6.1.0]ノナ−4−エン−9−イルメタノールS18(2.75g、18.1mmol)、イミダゾール(2.15g、31.6mmol)及びDMAP(2.21g、18.1mmol)の撹拌溶液に、tert−ブチル(クロロ)ジフェニルシラン(7.45g、27.1mmol)を0℃で添加した。この溶液を室温に温め、24時間撹拌し、その間に白色の沈殿が形成された。この反応液を0℃に冷却し、DCM(100mL)で希釈し、炭酸水素ナトリウム(飽和水溶液、100mL)を添加した。相を分離させ、水相をDCM(3×100mL)で抽出した。合わせた有機物をブライン(200mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中の20%DCM)で粗生成物を精製して、シリルエーテルS39を無色の油として得た(6.85g、97%)。δ
H(400MHz,CDCl
3)7.79〜7.64(4H,m)、7.50〜7.32(6H,m)、5.63(2H,dm,J 11.5)、3.59(2H,d,J 6.2)、2.40〜2.21(2H,m)、2.18〜1.96(4H,m)、1.45〜1.33(2H,m)、1.07(9H,s)、0.72〜0.56(3H,m);δ
C(101MHz,CDCl
3)135.7、134.3、130.2、129.5、127.6、67.9、29.1、28.6、27.2、26.9、22.0、19.3;LRMS(ESI
+):m/z 408(10%,[M+NH
4]
+)。
【0186】
【化14】
【0187】
DCM(65mL)中のシリルエーテルS39(6.49g、16.6mmol)及び無水炭酸ナトリウム(2.64g、24.9mmol)の撹拌溶液に、ペルオキシ酢酸(3.38ml、酢酸中の39%、19.9mmol)を0℃で添加した。この混合物を室温に温め、24時間撹拌した。次いでこの反応液を0℃に冷却し、DCM(100mL)で希釈し、チオ硫酸ナトリウム(飽和水溶液、150mL)を添加した。この混合物を室温で30分撹拌し、次いでNaOH(2M水溶液)でpH12まで塩基性化した。相を分離させ、有機相をH
2O(200mL)、ブライン(200mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(100%DCM)で粗生成物を精製して、エポキシドS40及びS41を、ジアステレオマーの分離できない混合物として(
1H NMR分光分析によれば1:1)及び無色の油として(5.97g、88%)得た。δ
H(400MHz,CDCl
3)7.72〜7.63(8H,m)、7.47〜7.34(12H,m)、3.57(2H,d,J 5.6)、3.54(2H,d,J 5.9)、3.03〜3.10(2H,m)、3.02〜2.91(2H,m)、2.36〜2.24(2H,m)、2.21〜2.08(2H,m)、2.06〜1.85(6H,m)、1.35〜1.12(4H,m)、1.06(9H,s)、1.05(9H,s)、0.92〜0.80(2H,m)、0.78〜0.47(6H,m);δ
C(101MHz,CDCl
3)135.65、135.63、134.2、134.1、129.6(2×CH)、127.6(2×CH)、67.4、67.0、56.91、56.85、29.7、27.7、26.9(2×3CH
3)、26.6、26.5、23.31、23.25、21.7、20.4、19.2(2×2C);LRMS(ESI
+):m/z 407(9%,[M+H]
+)。
【0188】
【化15】
【0189】
THF(50mL)中のエポキシドS40/S41(5.47g、13.5mmol)及びジフェニルホスフィン(2.57mL、14.80mmol)の撹拌溶液に、n−ブチルリチウム(ヘキサン中の2.5M、5.92mL、14.8mmol)を−78℃で15分かけて一滴ずつ添加した。得られた混合物を−78℃で1時間撹拌し、室温に温め、追加で14時間撹拌した。この反応混合物をTHF(80mL)で希釈し、0℃に冷却した。酢酸(1.54mL、26.9mmol)を添加し、続いて過酸化水素(30%水溶液、3.05mL、26.9mmol)を添加した。この反応混合物を室温に温め、4時間撹拌した。チオ硫酸ナトリウム(飽和水溶液、100mL)を添加し、この混合物を10分撹拌した。水相をEtOAc(3×200mL)で抽出した。合わせた有機物をブライン(3×200mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。未精製の混合物をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中の40〜100%EtOAc)で精製して、ホスフィンオキシドS42/S43/S44/S45を、2種のジアステレオ異性体(diasteroisomers)の51:18混合物として得て(2段階で5.61g、69%)、これらはそれぞれ、位置異性体(S42/S45及びS43/S44)の1:1混合物である。主要なジアステレオマー:δ
H(400MHz,CDCl
3)7.82〜7.68(4H,m)、7.68〜7.58(4H,m)、7.52〜7.32(12H,m)、4.58〜4.45(1H,m)、4.16(1H,d,J 5.3)、3.54(2H,d,J 6.0)、2.47(1H,ddd,J 12.0,11.7,4.3)、2.21〜2.07(1H,m)、2.05〜1.85(2H,m)、1.78〜1.55(3H,m)、1.22〜1.05(1H,m)、1.03(9H,s)、0.91〜0.75(1H,m)、0.62〜0.35(3H,m);δ
P(162MHz,CDCl
3)39.7;LRMS(ESI
+):m/z 609[100%,(M+H)
+]。割合が低い方のジアステレオマー:δ
H(400MHz,CDCl
3)7.87〜7.77(2H,m)、7.74〜7.60(6H,m)、7.52〜7.30(12H,m)、4.26(1H,d,J 4.0)、3.89〜3.78(1H,m)、3.63(1H,dd,J 10.7,5.8)、3.54(1H,dd,J 10.7,6.2)、3.26〜3.10(1H,m)、2.22〜2.12(1H,m)、2.00〜1.78(3H,m)、1.70〜1.62(1H,m)、1.42〜1.28(1H,m)、1.04(9H,s)、1.04〜0.92(2H,m)、0.79〜0.65(1H,m)、0.55〜0.41(1H,m)、0.27〜0.12(1H,m);δ
P(162MHz,CDCl
3)39.6;LRMS(ESI
+):m/z 609[100%,(M+H)
+]。
【0190】
【化16】
【0191】
無水DMF(60mL)中のヒドロキシルホスフィンオキシドS42/S43/S44/S45(4.68g、7.69mol)の撹拌溶液に、水素化ナトリウム(鉱油中の60%分散液、0.46g、11.5mmol)を0℃で添加した。得られた混合物を室温に温め、スズ箔で包み、2時間撹拌した。この反応混合物を0℃に冷却し、Et
2O(200mL)及びH
2O(200mL)で希釈し、相を分離させ、水相をヘキサン(150mL)で抽出した。合わせた有機物をブライン(飽和水溶液、5×250mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。未精製の混合物をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中の1〜20%DCM)で精製して、トランス−シクロオクテンS46を、E型にのみ選択性を有する単一のジアステレオマーとして得た(2.08g、69%);δ
H(400MHz,CDCl
3)7.72〜7.62(4H,m)、7.46〜7.34(6H,m)、5.83(1H,ddd,J 16.1,9.2,6.2)、5.11(1H,ddd,J 16.1,10.6,3.3)、3.59(2H,d,J 5.7)、2.28〜2.40(1H,m)、2.12〜2.27(3H,m)、1.80〜1.95(2H,m)、1.04(9H,s)、0.74〜0.90(1H,m)、0.46〜0.60(1H,dm,J 14.0)、0.31〜0.42(2H,m)、0.18〜0.29(1H,m);δ
C(101MHz,CDCl
3)138.6、135.8、134.4、131.3、129.6、127.7、68.1、39.0、34.1、32.9、28.2、27.9、27.0、21.6、20.5、19.4。
【0192】
【化17】
【0193】
THF(5mL)中のシリルエーテルS46(0.78g、2mmol)の撹拌溶液に、フッ化テトラブチルアンモニウム(THF中の1M溶液、10.0ml、10.0mmol)を室温で添加し、スズ箔で包み、45分撹拌した。この期間後、この反応混合物を減圧下で濃縮し、DCM(100mL)で希釈し、ブライン(100mL)で洗浄した。相を分離させ、有機相をブライン(2×100mL)で洗浄した。合わせた有機物を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中の20%EtOAc)で粗生成物を精製して、第一アルコールS47を無色の油として得た(0.29g、96%);δ
H(400MHz,d
4−MeOD)5.87(1H,ddd,J 16.5,9.3,6.2)、5.13(1H,dddd,J 16.5,10.4,3.9,0.8)、3.39〜3.47(2H,dd,J 6.2,1.5)、2.34〜2.44(1H,m)、2.12〜2.33(3H,m)、1.82〜1.98(2H,m)、0.90(1H,dtd,J 12.5,12.5,7.1)、0.55〜0.70(1H,m)、0.41〜0.55(1H,m)、0.27〜0.41(2H,m);δ
C(101MHz,d
4−MeOD)139.3、132.2、67.5、39.9、34.8、33.8、29.2、28.7、23.0、21.9;MS−CI(NH
3):C
10H
15のm/z[M−OH]計算値:135.1174;実測値:135.1173。
【0194】
【化18】
【0195】
DMF(3mL)中のFmoc−Lys−OH.HCl(478mg、1.18mmol)及びDIPEA(0.27mL、1.58mmol)の撹拌溶液に、pNO
2−フェニルカーボネートS48(250mg、0.79mmol)を0℃で添加した。この溶液を室温に温め、スズ箔で包み、16時間撹拌した。この期間後、この溶液を減圧下で濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(DCM中の0〜5%MeOH)で精製して、Fmoc−エキソ−sTCOK S49を白色の発泡体として得た(373mg、87%)。δ
H(400MHz,d
6−DMSO)13.09〜12.06(1H,br s)、7.90(2H,d,J 7.5)、7.73(2H,d,J 7.5)、7.66〜7.56(1H,m)、7.43(2H,t,J 7.4)、7.34(2H,J 7.4)、7.08(1H,t,J 5.4)、5.84〜5.72(1H,m)、5.13〜5.01(1H,m)、4.31〜4.19(3H,m)、3.93〜3.79(3H,m)、3.00〜2.90(2H,m)、2.31〜2.07(4H,m)、1.91〜1.78(2H,m)、1.75〜1.49(2H,m)、1.45〜1.22(4H,m)、0.91〜0.75(1H,m)、0.62〜0.45(2H,m)、0.43〜0.32(2H,m);δ
C(101MHz,d
6−DMSO)173.9、156.4、156.1、143.8、140.7、137.9、131.0、127.6、127.0、125.2、120.1、79.1、67.9、65.6、53.8、46.6、38.1、33.4、31.9、30.4、29.0、27.2、24.3、22.8、21.2、20.2;LRMS(ESI
+):m/z 545(100%[M−H]
−)。
【0196】
THF:H
2O(3:1、8mL)中のエキソ−sTCOK S49の撹拌溶液に、水酸化リチウム一水和物(94mg、0.75mmol)を添加した。この溶液をスズ箔で包み、室温で4時間撹拌し、EtOAc(100mL)及びH
2O(100mL)を添加した。水相をAcOHの添加により慎重にpH4まで酸性化し、EtOAc(4×100mL)で抽出した。水相を減圧下で蒸発させ、凍結乾燥させて、エキソ−sTCOK3を白色の固体として得た。それに続く哺乳動物細胞を使用した全ての標識実験について、エキソ−H−bcnK−OH1を逆相HPLC(0:1のH
2O:MeCNから9:1のH
2O:MeCNの勾配)によってさらに精製した。δ
H(400MHz,d
6−DMSO)7.21〜7.09(1H,br m)、5.85〜5.72(1H,m)、5.14〜5.02(1H,m)、3.80(2H,d,J 2.6)、3.14〜3.05(1H,m)、2.98〜2.86(2H,m)、2.31〜2.08(4H,m)、1.92〜1.78(2H,m)、1.73〜1.65(1H,m)、1.55〜1.44(1H,m)、1.41〜1.25(4H,m)、0.90〜0.62(1H,m)、0.65〜0.45(2H,m)、0.43〜0.32(2H,m);δ
C(101MHz,d
6−DMSO)175.5、156.3、137.9、131.1、67.8、54.5、38.1、33.4、32.1、32.0、29.2、27.2、24.7、24.3、22.5、21.2、20.2;LRMS(ESI
+):m/z 325(100%[M+H]
+)。
【0197】
補足の実施例の参考文献:
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【0198】
本文の参考文献:
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(31) Gautier, A.; Nguyen, D. P.; Lusic, H.; An, W.; Deiters, A.; Chin, J. W. J Am Chem Soc 2010, 132, 4086.
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【0199】
上記の明細書で述べた全ての出版物は、参照により本明細書に組み入れられる。記載された本発明の態様及び実施形態の本発明の範囲から逸脱しない様々な改変及びバリエーションが当業者には明らかであると予想される。具体的な好ましい実施形態に関して本発明を説明したが、特許請求された発明は、このような具体的な実施形態に過度に限定されるべきではないことが理解されよう。実際に、説明された本発明を実行するための当業者にとっては明らかな様式の様々な改変は、以下の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。