【実施例】
【0070】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。尚、反応生成物の純度はガスクロマトグラフィーを使用して測定した。
【0071】
実施例1
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下ロート、空気(酸素8%含有)バブリング通気ラインを備えた300mL4口フラスコにハイドロキノン0.6588g(5.98mmol)、メタクリル酸48.84g(567mmol)、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体2.36g(16.65mmol)を仕込んだ。
200mL滴下ロートにはジシクロペンタジエン50g(378.19mmol)とメタクリル酸48.84g(567.28mmol)を仕込み、混ぜて溶液にした。
窒素置換後、空気(酸素8%含有)を300mL/minで通気を開始し、70℃に加熱した。70℃で滴下ロート中の溶液を20分かけて滴下した。滴下開始時間を反応開始時間とし、反応開始1時間後、温水バスを冷却して反応液を室温まで冷却した。
反応液にノルマルヘプタンを68gと5%炭酸ナトリウム水溶液を134.78gを追加して分液ロートにて抽出操作を行った。下層(水層)抜取後、水134.78gとアセトニトリル33.69gを加えて抽出操作を行った。その後、再び下層を抜取した後、水134.78gを加えて抽出操作を行った。その後、更にまた下層を抜取した後、上層(有機層)を払い出し、有機層をエバポレーターにて70℃、20mmHg程度で粗濃縮を行い、有機層中のノルマルヘプタン、アセトニトリルを留去した。
更に粗濃縮液を単蒸留(バス温度:180℃)でゆっくり減圧して初留としてメタクリル酸を留去した。メタクリル酸の留出が止まると、さらに減圧(70〜100Pa)して留出ライン温度を100℃以上としたところ、ジシクロペンテニルモノメタクリレートの留出が始まった。留出が止まるまで待って、液体のジシクロペンテニルモノメタクリレート(=下記式(E1)で表される化合物における立体異性体と位置異性体の混合物)66gを得た。ジシクロペンテニルモノメタクリレートの純度は96%、収率は80%であった。
【0072】
【化30】
【0073】
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下ロート、窒素通気ラインを備えた500mL4口フラスコに、得られたジシクロペンテニルモノメタクリレート40g(183.23mmol)、酢酸エチル60gを仕込んだ。
別途、三角フラスコにメタクロロ過安息香酸(以後、「mCPBA」と称する場合がある)63.24g(256.53mmol)と酢酸エチル208.70gを入れ、撹拌して溶解し、mCPBA/酢酸エチル溶液を得た。
得られたmCPBA/酢酸エチル溶液を滴下ロートに仕込み、反応系内を窒素置換後、溶液温度を20℃になるように調整した。溶液温度20℃を維持した状態でmCPBA/酢酸エチル溶液の滴下を開始し、反応開始とした。mCPBA/酢酸エチル溶液は20分かけて滴下し、滴下開始後、7時間反応を行った。
反応終了後、反応液にノルマルヘプタンを186.97g、5%チオ硫酸ナトリウム水溶液240gを追加し、分液ロートにてクエンチ操作を行った。
下層(水層)抜取後、5%水酸化ナトリウム水溶液240gを加えて抽出するアルカリクエンチ操作を2回行った。
更に、下層抜取後、水185.97gを加えて水洗する操作を2回行った。
抽出上層液を払い出し、エバポレーターにて40℃以下で濃縮を行い、液体のエポキシ化ジシクロペンタニルモノメタクリレート(=下記式(E2)で表される化合物における立体異性体と位置異性体の混合物)76gを得た。エポキシ化ジシクロペンタニルモノメタクリレートの純度は94%、収率は86%であった。
エポキシ化ジシクロペンタニルモノメタクリレートの構造確認は
1H−NMR分析及び質量分析(MS)により行った。
1H-NMR(500MHz,CDCl
3):δ=6.06(d,1H), 5.54(d,1H), 4.68(m,1H), 3.47(d,1H), 3.28(d,1H), 1.34-2.37(m,13H)
Mass(EI,M
+):234,148,69
【0074】
【化31】
【0075】
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下ロート、空気(酸素8%含有)バブリング通気ラインを備えた300mL4口フラスコにハイドロキノン1.8697g(16.98mmol)、メタクリル酸カリウム6.30g(50.76mmol)、メタクリル酸73.49g(853mmol)を仕込んだ。
滴下ロートにはエポキシ化ジシクロペンタニルモノメタクリレート40g(170.72mmol)とメタクリル酸73.49g(853.91mmol)を仕込んだ。
反応系内を窒素置換後、空気(酸素8%含有)300mLのバブリングを開始し、オイルバスにて120℃まで加熱した。120℃にて滴下を開始し、反応開始とした。10分間かけて滴下を行った。そのまま12時間反応を行って、ヒドロキシジシクロペンタニルジメタクリレート(=下記式(E3)で表される化合物における立体異性体と位置異性体の混合物)、及びジシクロペンタニルトリメタクリレート(=下記式(E4)で表される化合物における立体異性体と位置異性体の混合物)を含む反応液を得た。ガスクロマトグラフィーを使用した面積百分率法(GC面積%)による、ヒドロキシジシクロペンタニルジメタクリレートの収率は83.5%、ジシクロペンタニルトリメタクリレートの収率は1%、エポキシ化ジシクロペンタニルモノメタクリレートの転化率は93%であった。
ヒドロキシジシクロペンタニルジメタクリレートの構造確認は
1H−NMR分析及び質量分析(MS)により行った。
1H-NMR(500MHz,CDCl
3):δ=6.12(d,1H), 6.07(d,1H), 5.60(d,1H), 5.53(d,1H), 4.82-4.87(m,1H), 4.63-4.64(m,1H), 3.70-3.74(m,1H), 3.20(br,1H), 1.17-2.44(m,16H)
Mass(EI,M
+):234,148,69
ジシクロペンタニルトリメタクリレートの構造確認は質量分析(MS)により行った。
Mass(EI,M
+):389(M+1),303,217,69
【0076】
【化32】
【0077】
分液ロートに反応液190gと飽和食塩水190gを入れて50℃で15分抽出した。下層液を抜き取り、その後、水190gとノルマルヘプタン190gを追加して室温で抽出を行った。下層液を抜取後、水190gを入れて再度抽出を行い、下層液を抜き取った。上層液にハイドロキノン0.1914gをアセトン2.4gに溶かした溶液を添加し、エバポレーターにて100℃、フル減圧にて濃縮を行い、溶媒とメタクリル酸を留去して、茶色の、不揮発分(ヒドロキシジシクロペンタニルジメタクリレートとジシクロペンタニルトリメタクリレート)を71重量%含む濃縮液を61g得た。
以上の操作を4回繰り返して濃縮液を合成した。
【0078】
得られた濃縮液189.6gについて、シリカゲル、展開溶媒(酢酸エチル:ヘキサン=1:2)を使用してカラム精製を行った。その結果、液体成分40gと固体成分30gが得られた。
【0079】
カラム精製を経て得られた液体成分及び固体成分をそれぞれガスクロマトグラフィー[商品名「GC−2010」((株)島津製作所製)、カラム:DB−1]を使用して分析した。結果を下記表にまとめて示す。尚、表1中の数値はGC面積%である。
【表1】
※ ジ体:ヒドロキシジシクロペンタニルジメタクリレート
トリ体:ジシクロペンタニルトリメタクリレート
【0080】
実施例2
カラム精製を経て得られた、ヒドロキシジシクロペンタニルジメタクリレート(ジ体)86.55GC面積%と、ジシクロペンタニルトリメタクリレート(トリ体)4.69GC面積%を含む液体成分(ジ体とトリ体の含有量の比[前者:後者(重量%)]=94.8:5.2)を使用して、下記表2に記載の処方に従って硬化性組成物を得、バーコーター(♯8)を使用して前記硬化性組成物の塗膜(ウェット膜厚:40μm)を形成し、窒素雰囲気下で紫外線を照射[2kW×2.25m/分、1パス(450mW/cm
2、1000mJ/cm
2)]して硬化物を得た。尚、紫外線の照射にはUV装置(アイグラフィックス(株)製、商品番号「ECS−401GX」)を使用した。
【0081】
得られた硬化物について振り子型粘弾性測定装置(DDV)を使用してガラス転移温度(Tg:℃)を測定した。
【0082】
更に、得られた硬化物について微小硬度計を使用してマルテンス硬度(N/mm
2)、押込み硬度(N/mm
2)、弾性率(N/mm
2)、及び塑性変形仕事(N・m)を測定した。
【0083】
比較例1、2
硬化性組成物を下記表2の処方に変更した以外は実施例2と同様に行った。
【0084】
【表2】
※トリプロピレングリコールジアクリレート:商品名「TPGDA」、ダイセル・オルネクス(株)製
トリシクロデカンジメタノールジアクリレート:商品名「IRR214−K」、ダイセル・オルネクス(株)製
5% Irg.184:ラジカル重合開始剤、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンの5%希釈液、商品名「IRGACURE 184」、BASFジャパン社製
【0085】
実施例3
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下ロート、空気(酸素6%含有)バブリング通気ラインを備えた2Lの4口フラスコにハイドロキノン3.18g(28.88mmol)、フェノチアジン0.1g(0.5mmol)、アクリル酸817.6g(11.3mol)、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体40.26g(283.6mmol)を仕込んだ。
1L滴下ロートにはジシクロペンタジエン500g(3.78mol)とアクリル酸272.5g(3.78mol)を仕込み、混ぜて溶液にした。
窒素置換後、空気(酸素6%含有)を750mL/minで通気を開始し、70℃に加熱した。70℃で滴下ロート中の溶液を30分かけて滴下した。滴下開始時間を反応開始時間とし、滴下後、反応温度を100℃に昇温した。滴下開始後6時間反応を継続した後、冷却して反応液を室温まで冷却した。
反応液にノルマルヘプタンを408gと5%炭酸ナトリウム水溶液を1663gを追加して5Lセパラブルフラスコにて抽出操作を行った。下層(水層)抜取後、水1663gとを加えて抽出操作を行った。その後、再び下層を抜取した後、水1663gを加えて抽出操作を行った。抽出後の有機層をエバポレーター50℃にて溶媒のノルマルヘプタンを留去して、透明感のある茶色のジシクロペンタニルジアクリレート(以下、「DCPDA」と称する場合がある)33重量%、ジシクロペンテニルモノアクリレート(以下、「DCPA」と称する場合がある)43重量%、高沸点成分23重量%からなる混合物(1)700gを得た。
得られた混合物(1)150gをアセトニトリル抽出に付して濃縮液を得、得られた濃縮液をノルマルヘプタン300g、アセトニトリル23g、及び水3gと混合し、分液ロートで抽出を行った。下層液(アセトニトリル層)を抜取後、上層液に再度アセトニトリルを10g入れる抽出操作を2回実施した。合計3回アセトニトリル抽出を行い、抜き取った下層液にノルマルヘプタンを約100g入れて逆抽出(下層液からの回収)を行った。回収の上層液(ノルマルヘプタン層)と抽出上層液を合わせて、エバポレーターにて50℃フル減圧にて溶媒のノルマルヘプタンを留去して、DCPDA29.6重量%、DCPA49.8重量%、高沸点成分20.6重量%からなる混合物(2)116gを得た。
得られた混合物(2)10重量部に、Irg.184を0.5重量部を添加して硬化性組成物を得た。
【0086】
実施例4
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下ロート、空気(酸素6%含有)バブリング通気ラインを備えた1Lの4口フラスコにハイドロキノン1.27g(11.55mmol)、フェノチアジン0.04g(0.2mmol)、アクリル酸327.0g(4.6mol)、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体16.10g(113.6mmol)を仕込んだ。
500mL滴下ロートにはジシクロペンタジエン200g(1.51mol)とアクリル酸109.0g(1.51mol)を仕込み、混ぜて溶液にした。
窒素置換後、空気(酸素6%含有)を320mL/minで通気を開始し、70℃に加熱した。70℃で滴下ロート中の溶液を30分かけて滴下した。滴下開始時間を反応開始時間とし、滴下後、反応温度を100℃に昇温した。滴下開始後2時間反応を継続した後、冷却して反応液を室温まで冷却した。
反応液にノルマルヘプタンを490gと5%炭酸ナトリウム水溶液を654gを追加して3L分液ロートにて抽出操作を行った。下層(水層)抜取後、水654gとを加えて抽出操作を行った。その後、再び下層を抜取した後、水654gを加えて抽出操作を行った。抽出後の有機層をエバポレーター50℃にて溶媒のノルマルヘプタンを留去して、透明感のある茶色のDCPDA24重量%、DCPA66重量%、高沸点成分10重量%からなる混合物(3)291gを得た。
得られた混合物(3)130gに高沸点溶媒(商品名「GR−175」、松村石油(株)製)を26g、フェノチアジン0.065gを入れて均一にした。WFE蒸留装置(薄膜蒸発装置、旭製作所、神鋼パンテック製)を使用して、140℃、120Paで薄膜蒸留を行い、無色の混合物(4)92gを得た。GC分析(島津製作所製)から、混合物(4)はDCPDA21重量%、DCPA78重量%を含むことがわかった。
得られた混合物(4)10重量部に、Irg.184を0.5重量部を添加して硬化性組成物を得た。
【0087】
実施例5
実施例3で得られた混合物(1)200gに高沸点溶媒(商品名「GR−175」、松村石油(株)製)40g、フェノチアジン0.1gを添加、混合し、145℃、100Paにて薄膜蒸留を行い、無色の混合物(5)110gを得た。GC分析から、混合物(5)はDCPDA38重量%、DCPA62重量%を含むことがわかった。
得られた混合物(5)10重量部に、Irg.184を0.5重量部を添加して硬化性組成物を得た。
【0088】
実施例6
実施例4で得られた混合物(4)130gにノルマルヘプタン650を入れて溶液にした。そこに、粉末活性炭13gを入れて、室温で30分撹拌した。その後、加圧ろ過を行い、活性炭を除去した。同様の方法で、活性炭処理を合計3回実施した。溶媒のノルマルヘプタンを50℃エバポレーターにて留去して、微黄色の混合物(6)101gを得た。GC分析から、混合物(6)はDCPDA21重量%、DCPA75重量%を含むことがわかった。
得られた混合物(6)10重量部に、Irg.184を0.5重量部を添加して硬化性組成物を得た。
【0089】
実施例7
実施例3で得られた混合物(1)21gをシリカゲルカラム精製(シリカゲル1000g、展開溶媒;ノルマルヘプタン95%、酢酸エチル5%)に付した。DCPA、DCPDAの順に検出し、DCPDA含有フラクションを濃縮して微黄色の混合物(7)(DCPDA90重量%、DCPA10重量%)を得た。
得られた濃縮液(7)10重量部に、Irg.184を0.5重量部を添加して硬化性組成物を得た。
【0090】
実施例8
実施例7で得られた混合物(7)と実施例3で得られた混合物(1)を混合して混合物(8)(DCPDA51重量%、DCPA49重量%)を得た。
得られた混合物(8)10重量部に、Irg.184を0.5重量部を添加して硬化性組成物を得た。
【0091】
評価
実施例3〜8で得られた硬化性組成物、及び比較例3、4として下記表3に記載の硬化性組成物(単位:重量部)について、塗膜(ウェット膜厚:40μm)を形成し、窒素雰囲気下で紫外線を照射[2kW×2.25m/分、1パス(450mW/cm
2、1000mJ/cm
2)]して硬化物を得、得られた硬化物について実施例2と同様の方法で評価した。尚、比較例4ではジシクロペンテニルモノアクリレートとして、商品名「FS−511AS」(日立化成(株)製)を使用した。
【0092】
【表3】
※トリシクロデカンジメタノールジアクリレート:商品名「IRR214−K」、ダイセル・オルネクス(株)製
5% Irg.184:ラジカル重合開始剤、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンの5%希釈液、商品名「IRGACURE 184」、BASFジャパン社製