特許第6343622号(P6343622)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6343622
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】燃料噴射システム用圧力制御弁
(51)【国際特許分類】
   F02M 55/02 20060101AFI20180604BHJP
   F02M 59/46 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
   F02M55/02 360Z
   F02M59/46 C
   F02M59/46 M
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-550015(P2015-550015)
(86)(22)【出願日】2013年11月7日
(65)【公表番号】特表2016-502031(P2016-502031A)
(43)【公表日】2016年1月21日
(86)【国際出願番号】EP2013073294
(87)【国際公開番号】WO2014102028
(87)【国際公開日】20140703
【審査請求日】2015年8月24日
(31)【優先権主張番号】102012224403.4
(32)【優先日】2012年12月27日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501125231
【氏名又は名称】ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(72)【発明者】
【氏名】シェルグ,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】カロリ,ヴィットリオ
【審査官】 堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−138650(JP,A)
【文献】 特表2002−515565(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/055638(WO,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第01967726(EP,A2)
【文献】 実開昭60−131663(JP,U)
【文献】 特開2000−018135(JP,A)
【文献】 特開平08−035462(JP,A)
【文献】 国際公開第2002/023036(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 39/00−71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
球状の閉弁要素(2)を操作するための磁気アクチュエータ(1)を含み、該磁気アクチュエータ(1)が往復動可能なアーマチュア(3)と協働し、該アーマチュアが、前記磁気アクチュエータ(1)の動力を前記球状の閉弁要素(2)へ伝達するためのアーマチュアピン(4)と結合されている、燃料噴射システム用の、特に燃料高圧アキュムレータ内の圧力を制御するためのコモンレール噴射システム用の圧力制御弁において、
前記球状の閉弁要素(2)および前記アーマチュアピン(4)が、前記球状の閉弁要素(2)と協働する弁座(6)を形成する弁部材(5)内で軸線方向に変位可能に案内されていて、
前記弁部材(5)が、前記球状の閉弁要素(2)の半径方向移動室を画成する案内面(7)を含む第1の案内領域(a)および前記アーマチュアピン(4)の半径方向移動室を画成する案内面(7)を含む第2の案内領域(b)を有していて、
少なくとも2つの案内面(7)が直接前記弁座(6)に接続し、該弁座が円錐状に形成されていて、
前記案内面(7)が半径方向に延在している細条部(8)に形成され、
前記第2の案内領域(b)の前記細条部(8)は前記弁座(6)の円錐面から隆起していることを特徴とする圧力制御弁。
【請求項2】
前記細条部が、互いに角度等間隔で配置され、および/または、複数の流動通路(9)を画成していることを特徴とする、請求項1に記載の圧力制御弁。
【請求項3】
前記複数の流動通路(9)の少なくとも一部がアーマチュア室(10)と液圧結合されていることを特徴とする、請求項2に記載の圧力制御弁。
【請求項4】
前記案内面(7)が弁部材(5)の横断面において、前記球状の閉弁要素(2)および/または前記アーマチュアピン(4)の外径に対する接線を形成していることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の圧力制御弁。
【請求項5】
前記弁部材(5)が金属粉末射出成形部材であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の圧力制御弁。
【請求項6】
前記弁部材(5)が、前記弁座(6)とは逆の側の支持面(11)に、食い込みエッジ(12)を有していることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の圧力制御弁。
【請求項7】
前記圧力制御弁が2ポート2位置切換え弁として構成されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の圧力制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文の構成を備えた、燃料噴射システム用の、特に燃料高圧アキュムレータ内の圧力を制御するためのコモンレール噴射システム用の圧力制御弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記種類の圧力制御弁は、磁気アクチュエータおよび該磁気アクチュエータと協働するアーマチュアが受容されている弁ケースと、該弁ケースと結合されている弁部材とを含んでいる。弁部材内には、球状の閉弁要素と協働する略円錐状の弁座が形成されている。アーマチュアはアーマチュアピンまたはアーマチュアボルトを有し、該アーマチュアピンまたはアーマチュアボルトは、動力伝達要素として用いられて、球状の閉弁要素に次のように作用し、すなわち磁気アクチュエータの通電の際にアーマチュアピンまたはアーマチュアボルトを介して弁座に対し球状の閉弁要素が押圧されるように作用する。アーマチュアピンまたはアーマチュアボルトは、通常、球状の閉弁要素を半径方向に案内するための球冠状の受容部を有し、この受容部はプレス成形を用いて製造される。アーマチュアピンまたはアーマチュアボルトは、弁ケース内で案内されているので、球冠状のプレス成形部を介して弁ケース内の案内部と弁座との間に軸ずれがあると、弁の閉鎖位置での球状の閉弁要素の過剰決定になる。その後、弁が開くと、半径方向にずれが発生し、この半径方向のずれにより、閉弁の際に球状の閉弁要素が弁座の円錐状の面を介してスリップして密封座内へ戻る(閉弁ヒステリシス)。その結果、開弁圧と閉弁圧との間の圧力差と、望ましくない騒音発生とが生じる。
【0003】
この種の圧力制御弁は特許文献1から読み取れる。この圧力制御弁は、アーマチュアボルトの案内部と弁座との間に軸ずれが生じた場合にこれを補償するために、少なくとも2つの部分から実施されるアーマチュアボルトを有している。アーマチュアボルトは好ましくは伝動棒と加圧部材とを含んでおり、加圧部材は、軸ずれが生じた場合にこれを補償するために、伝動棒内で半径方向に変位可能に受容されている。しかしながら、これによって望ましくない騒音の発生を効果的に阻止することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第102010043092A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、上記欠点を有していない圧力制御弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するため、請求項1の構成を備えた圧力制御弁が提案される。本発明の有利な更なる構成は従属請求項から読み取れる。
【0007】
提案される圧力制御弁は、球状の閉弁要素を操作するための磁気アクチュエータを含み、該磁気アクチュエータは往復動可能なアーマチュアと協働し、該アーマチュアは、磁気アクチュエータの動力を球状の閉弁要素へ伝達するためのアーマチュアピンと結合されている。本発明によれば、球状の閉弁要素および/またはアーマチュアピンは、球状の閉弁要素と協働する弁座を形成する弁部材内で軸線方向に変位可能に案内されている。有利には、少なくとも球状の閉弁要素は弁部材を介して次のように軸線方向に変位可能に案内されており、すなわち開閉時に当該球状の閉弁要素が半径方向の運動を実施できないように、軸線方向に変位可能に案内されている。これにより、閉弁要素が半径方向に運動したときに発生する望ましくない騒音を効果的に阻止できる。さらに、弁座に対する球状の閉弁要素の半径方向のずれが発生することがないので、閉弁ヒステリシスにならないよう保証されている。さらに、有利には、アーマチュアピンは補助的に弁部材を介して軸線方向に変位可能に案内されている。従って、アーマチュアピンと球状の閉弁要素との案内は同一の部材を介して行われる。これは、アーマチュアピンが圧力制御弁の他の部材、たとえば弁の弁ケース内で軸線方向に変位可能に案内されることを排除するものではない。弁ケース内の案内部と弁座との間に軸ずれがある限り、これは弁座に近い方にある弁部材内の案内部を介して補償される。
【0008】
球状の閉弁要素および/またはアーマチュアピンを弁部材内で案内することにより、アーマチュアピン内の球冠状のプレス成形部は不要である。これによって、提案された圧力制御弁の製造が簡単になる。
【0009】
本発明の有利な実施態様によれば、弁部材は、球状の閉弁要素および/またはアーマチュアピンの半径方向移動室を画成する少なくとも2つの案内面を有している。案内面の数量は偶数または奇数であってよい。案内面の数量が偶数である場合、好ましくは、球状の閉弁要素および/またはアーマチュアピンの半径方向移動室を画成する少なくとも2つの案内面は対向しあっている。この場合、これらの案内面は互いに平行に配向されている。
【0010】
さらに、有利には、少なくとも2つの案内面は直接弁座に接続し、該弁座は好ましくは円錐状に形成されている。すなわち、案内面は弁座から生じさせたものである。球状の閉弁要素および/またはアーマチュアピンの半径方向移動室を画成するため、案内面は軸線方向に配向されている。その結果、軸線方向に延在している案内面は、有利には弁座の円錐面上にある。
【0011】
好ましくは、弁座に直接接続している案内面を介して球状の閉弁要素が案内される。さらに、球状の閉弁要素よりも大きな外径を有するアーマチュアピンを案内するため、好ましくは、弁座に直接接続している案内面に比べてさらに半径方向外側に位置するように配置される案内面が設けられている。
【0012】
更なる有利な実施態様によれば、球状の閉弁要素および/またはアーマチュアピンを案内するための案内面は、半径方向に延在している細条部に形成されている。細条部の、弁座側の端面が、前記案内面を形成している。好ましくは、半径方向に延在する細条部は互いに角度等間隔で配置されている。3つの細条部の場合には、角度間隔(それぞれ細条部の中心軸線に関して)は120゜であり、4つの細条部の場合には90゜等々である。従って、4つの細条部は有利には十字状に配置され、5つの細条部は星状に配置されている。なお、これら細条部は、十字または星とは異なり、交差しない。
【0013】
これとは択一的に、または、これを補完して、これら細条部は複数の流動通路を画成している。すなわち、圧力制御弁を介して遮断制御された量の排出を保証するために細条部の間の自由空間を流動通路として利用可能である。
【0014】
更なる解決手段として、複数の流動通路の少なくとも一部がアーマチュア室と液圧結合されていることが提案される。従って、アーマチュア室は、少なくとも1つの流動通路を介して、弁部材内に形成されている圧力制御弁の弁室と結合されている。この結合は、弁室とアーマチュア室との間の圧力平衡を可能にする。
【0015】
弁部材の横断面を設定すると、球状の弁要素および/またはアーマチュアピンを案内するための案内面は、有利には、球状の閉弁要素および/またはアーマチュアピンの外径に対する接線を形成している。その結果、球状の閉弁要素は点接触領域を有し、筒状のアーマチュアピンは線接触領域を有し、そのそれぞれに案内面が割り当てられている。よって、接触領域は最少限に低減されている。
【0016】
有利には、弁部材は金属粉末射出成形部材である。このようなものは、金属粉末射出成形法(Metall Injection Molding、簡単にMIM)で製造されたものである。このような方法の適用は、案内面を含めて弁部材の製造を容易にする。
【0017】
有利には、弁部材は、弁座とは逆の側の支持面に、食い込みエッジを有している。支持面は、弁部材または圧力制御弁を高圧アキュムレータ本体の段付き孔に挿着する際の支持に用いる。このとき、食い込みエッジを介して密封作用を得ることができる。
【0018】
有利な実施態様では、提案された圧力制御弁は、2ポート2位置切換え弁として構成されている。この実施態様では、圧力制御弁は特に燃料高圧アキュムレータ内での使用に適している。圧力制御弁の開弁位置では、高圧アキュムレータと還路との結合が行なわれ、その結果高圧アキュムレータ内の圧力を低減させることができる。圧力制御弁の閉弁位置では、還路に対する高圧アキュムレータの結合は切り離され、その結果圧力を上昇させることができる。
【0019】
次に、有利な1実施形態を添付の図面を用いて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明による圧力制御弁の有利な1実施形態の縦断面図である。
図2】弁部材の領域における図1の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に図示した圧力制御弁は磁気アクチュエータ1を含み、磁気アクチュエータはリング状の磁気コイル17を有し、磁気アクチュエータは、本実施形態ではソレノイドプランジャーとして形成されている往復動可能なアーマチュア3と協働する。アーマチュア3はアーマチュアピン4と結合され、アーマチュアピンは、動力伝達部材として、磁気アーマチュア1が起動したときに、すなわち磁気コイル17が通電されたときに、磁気アクチュエータ1の動力を球状の閉弁要素2へ伝動させる。その際、アーマチュア3はアーマチュアピン4とともにばね15のばね力に抗して球状の閉弁要素2の方向へ移動する。そのときアーマチュアピン4は球状の閉弁要素2を円錐状の弁座6に対し押圧させ、その結果圧力制御弁が閉じ、高圧アキュムレータ13と還路接続部16との結合は行われない。高圧アキュムレータ13内の圧力が所定の限界値を越えて上昇すると、磁気コイル17の通電を終了させ、その結果ばね15のばね力はアーマチュア3をアーマチュアピン4とともに復帰させ、弁を、球状の閉弁要素に印加される圧力を介して開かせる。
【0022】
圧力制御弁は、本実施形態の場合、高圧アキュムレータ13の段付き孔18内に受容され、螺着部19を介してこれと結合されている。このため、圧力制御弁の弁ケース14には、段付き孔18の雌ねじと結合可能な雄ねじが形成されている。螺着部19を介して圧力制御弁は高圧アキュムレータの方向に、軸線方向へ予め緊張せしめられ、その際圧力制御弁は、弁部材5の支持面11を介して段付き孔18の段部で支持される。支持面11の領域に形成されている食い込みエッジ12は、高圧アキュムレータ13を外部に対し密封させる。
【0023】
図2から明らかなように、弁座6をも形成している弁部材5は、球状の閉弁要素2を案内するための第1の案内領域aと、アーマチュアピン4を案内するための第2の案内領域bとを有している。案内は、5つの案内面7を介してそれぞれ生じさせる。これらの案内面はそれぞれ、弁座6のまわりに星状に配置されている5つの細条部8によって形成される。1つの案内領域a,bの5つの細条部8は、それぞれ互いに角度等間隔で配置されており、その結果細条部8の間には、アーマチュア室10と液圧結合されている流動通路9が形成される(図1を参照)。球状の閉弁要素2はアーマチュアピン4よりも小さな外径を有しているので、案内面7は、球状の閉弁要素2を案内するために、アーマチュアピン4の案内に用いられる案内面7よりもさらに半径方向内側に位置している。アーマチュアピン4を案内するための案内面7は別個の細条部8によって形成され、これらの細条部は、本実施形態では、球状の閉弁要素2を案内するための案内面7を形成するための細条部8と同じ角度間隔で配置されている。このようにして、細条部8の間にそれぞれ形成されている流動通路9が覆われる。
【0024】
図2からさらに見て取れるように、細条部8は案内領域aの案内面7をも含めて直接弁座6の円錐面に接続している。細条部は弁座面からいわば隆起している。弁座6の円錐面はそれを越えており、その結果案内領域bの細条部8も弁座6の円錐面から隆起している。従って、両案内領域a,bの細条部8は円錐面を介して結合されている。
【符号の説明】
【0025】
1 磁気アクチュエータ
2 球状の閉弁要素
3 アーマチュア
4 アーマチュアピン
5 弁部材
6 弁座
7 案内面
8 細条部
9 流動通路
10 アーマチュア室
11 支持面
12 食い込みエッジ
図1
図2